漫画


2010

8/10  
 「のだめカンタービレ」を読みながら

 何の自慢にもならないのだが、かなりの量のマンガを読んでいる。それは「過去に読んできた」という意味ではなく(過去にもかなり読んできたと言える自信はあるが)、現在進行形で「日々多くのマンガを読んでいる」という意味だ。
 でもホームページにそのことを書くことはない。いくつもある私のホームページの中でもこの「マンガ」の項目が最も充実していない。理由は簡単だ。評論が好きではないからだ。何事も嫌いな作品には触れない。嫌いなものをいかに嫌いかと書いてもつまらない。かといって好きなものをいかに好きかと誉めてもしょうがない。いや、好きなものをいかに好きかと誉めまくることでより深い満足を得る人もいるのだろうし、そのことにケチをつけるつもりはない。私の場合、好きなものは「ああ、いいなあ、好きだなあ」と思って自分で愉しめばそこで充分なのである。

 じゃあ小説や音楽はどうなんだとなる。けっこう好き勝手なことを長々とあれこれ書いている。これもまあ簡単なリクツで、小説や音楽ならクチバシを突っこんでもいいと思っている。文章の出来やその切り口、メロディや歌詞に対して意見を言える資格!?があると自分で思っているのだ。ここで「なんじゃ、その資格ってのは!?」となると長くなるので省く。とりあえず私の場合、マンガに関してはその資格がないので「ああ、おもしろかった」とか「ここがこうならもっとよかったのに」ぐらいしか言えないのである。ということでこの件は終りにしたい。

 そんなことをホームページに延々と書いてもしょうがない。いやいや元々老後に読み返すことを楽しみにやっているようなものだからそれでいいのだけれど、それでも数少ない読者に対して「そこそこのもの」であるようには努力している。マンガの感想はその「そこそこ」にすらならないので自粛しているわけだ。自粛ってのもウソか。書く気になれないだけだ。本や音楽だって触れたものの百分の一も書いていない。マンガは千分の一もない。
 だから、たとえば、「白川道の小説がタバコのシーンばかりで煙くてたまらない。なんとかしろや」なんてのは、じつにもうどうでもいい軽いイチャモンみたいでテキトーに書いているようだけど、評論が嫌いで百冊読んでもそのうちの一冊の感想も書かないような私が長文で延々と書くというのは、それはもうそれでたいへんな怒りだが嫌悪だか励ましだか知らんけど、特別なエネルギーを発揮したものになる。逆に言うと発揮せねばならなかったほどの作品なのだ。良きにつけ悪しきにつけ。



 遅まきながら「のだめカンタービレ」を読んだ。雑誌連載は2001年から2009年まで。テレビドラマになったのが2006年とか。テレビはどうでもいいが、「クラシック音楽をテーマにしたおもしろいマンガ」と2003年には知っていたのだから、だいぶ遅れた。
 以前から適当には読んではいた。「PCと一緒にまとめ読み」をしたのは今回が初めてだ。この「PCと一緒」が肝。

「おもしろかったたのしかったぐらいの感想しか書けないのでマンガの評は書かない」が基本なのだが、そこにプラスアルファがあると話が違ってくる。この作品にはそれがあった。作中に登場する音楽とのコラボである。登場する曲を聴きながら読むという楽しみだ。

 いま一巻を読みおえたところ。その中から引くと、ラストは試験の課題曲として「Beethoven Violin Sanata Op.24 F-dur Allegro」のシーン。これを聞きながら読んだ。マンガの中でヴァイオリンを弾くのは音大生。中華料理店の息子の龍太郎。ピアノで伴走するのは主人公(主人公はのだめか?)の千秋。
 iTunesでこの曲を呼びだす。私の持っているのはGidon Kremerのヴァイオリン、Marth Argerichのピアノ。「ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ24番。ヘ長調。春」ってヤツですね。



 ところで、私は音楽家の綴りを覚えるようにと、ここ数年アルファベットで書くことを心懸けてきた。ここのところその成果がすこしずつ出て来て、主だったところは書けるようになってきた。うれしい。バッハは誰でも知っていてもBachというスペルとは無縁だ。ショパンもChopinとショピンである。ベートーヴェンはBeethoven。この綴りを覚えていればベートーンと書くことはない。メンデルスゾーンはMendelssohn。メンデルスまではなんとか行けてもそのあとのゾーンは覚えないと無理。けっこうこんがらがったのは簡単なハイドンで、正しくはHaydnなのだが、むかしからなぜかHydonと覚えてしまっていて直すのに時間が掛かった。ドビュッシーのDebussy、ドヴォルザークのDvorak、チャイコフスキーのTchaikovskyとか、一通り覚えておくと楽になる。もっともこれらは英語綴りであり、フランス、ドイツ、ロシア、チェコと微妙にまたちがうから正確ではない。本当は英語綴りと同時にその国の本来の綴りも覚えるべきなのだろう。ただPCの方も文字化けするレヴェルだから、いまのところは英語綴りで精一杯だ。



 その他、第一巻に出て来た音楽は、のだめと千秋の出会いのシーン。ゴミタメのようなのだめの部屋。千秋は宿酔いでベッドで潰れている。そこでのだめが弾いているのがベートーヴェンの「悲愴」。これはまあだれもが知っている有名曲。ピアノソナタの8番。
 このシーンで私は「悲愴」を探して流した。ひさしぶりに聞いた。そこで、「このマンガはこんな楽しみ方ができるんだ」と知った。

 次ぎに出て来るのがMozartの「二台のピアノのためのソナタ ニ長調」。教授に言われてのだめと千秋が連弾することになった課題曲。私はこの曲に憶えがない。のだめと千秋も「こんな曲知らない」と劇中で言っている。しかしモーツァルトはぜんぶ持っているからあるはずと確信して探す。ケッヘルナンバー448と解ったのですぐに出た。まあこれはその名の通りモーツァルトが女弟子と連弾するために作った曲だ。有名でもないし、さほどモーツァルト研究で重要とも思わない。どうでもいいや。

 念のためWikipediaを引いたら、以下のような文があった。

クラシック音楽をテーマとした二ノ宮知子の漫画作品『のだめカンタービレ』で主人公の千秋真一と野田恵(のだめ)が初共演した曲として登場し、知名度が上がった。

 すごいね、影響力大である。でもそうだよな、その程度の曲だ。ああ、やはり主人公は千秋でいいんだな。タイトルが「のだめ」でも話の主役は千秋だもの。



 テレビドラマにもなった超有名作品のストーリイ等に触れる気はない。私にとって勝負!?は、これから23巻までに出て来る曲を、どれぐらい知っているか、持っているか、である。当然、かなり凝った、マイナーな曲も出て来るのだろう。果たしてどうなるか。それだけが楽しみだ。

 たぶん、「あ、ない!」ってのが出て来るんだろうな。何巻のなんて曲だろう。



 浅田舞、真央のスケーティング・ミュージックCDが発売されているように(それはつまりそこそこ売れるということだ)、テレビの「のだめ」で使った曲を集めたCDが発売なんてこともあったのだろうか。知らないし調べる気もないけど、いつもの意見として、どんな形であれクラシック曲が身近になるのはよいことだと思っている。

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 と思いつつ調べてしまった。やはりあった。というかこんなおいしい商売を逃がすはずがないか。



 最初私はこのブラームスを演奏したCDを知り、自分の保っている曲ばかりだから入手の必要もないかと思っていた。つまりこれ1枚と、あとはテレビ関係のが1枚あるぐらいだと思っていた。ところがあるわあるわ、なんと今調べたら34枚ものCDが発売されているのだった(笑)。

 こういう「TVオリジナルサウンドトラック版」なんてのが出るのは当然としても、

 これは漫画としては番外の24巻になる「巴里篇」というヤツ。でもテレビでは特別編として放送したらしいから注目され、これだけのCDが出来る。

 実在のモデルとなった野田恵の演奏するもの。

 これは「のだめカンタービレBest100」だそうだから、23巻の中に出て来る音楽の中から100曲を選んだのか。100曲をまともに収めたらたいへんだろうなと思ったら、なんとCD8枚組。577分とか。それで4800円は安い。

 これは「キャラクターセレクション」とか。漫画(というかこれはテレビだが)の登場人物に関わる音楽をチョイスしてあるわけだ。いやはやすごい商売根性。

 これらのレヴュウを読むと、「クラシックはまったく知らなかったが、ドラマを観たあとにCDを買って聞いて好きになった」のようなものがおおい。とにかくどんな形であれ触発されて知るのはよいことだ。「のだめ」の果たした功績は──うっすらとはわかっているつもりでいたけれど──私なんかの思っていたのよりもはるかに大きいようだ。クラシック音楽業界はCDが売れてうれしかったろうなあ。特需だ。

 この辺のCDを取りあげて感想を書いていったら切りがない。なにしろ34種類もあるのだ。
 Best100ということは、もっと登場ているのだろうか。いまのところ1巻で3,4曲なので、23巻で100は行くまいと思っていたのだが……。

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 さて私はそれらとは関係なく、「のだめに登場する音楽をどの程度知っているか、もっているか」を続けることにしよう。





 おお、早くも第二巻で持ってないものに遭遇。「マーラーの8番」。MahlerのSymphony No.8か。ドイツ、オーストリア系のマーラーは綴りにMahlerとhが入る。私はマーラーは好きではない。ずっと前に聞いたが合わなかった。

 交響曲とがっぷり四つになる元気がない私にSymphony勝負はきつい。しかし千秋は指揮者志望なのだから、これからもオーケストラナンバーがどんどん出て来るのだろう。私は室内管弦楽好きだからかなり不利になる。なんだか振りまわされそうな予感。私のたっぷり持っている路線は逆に出て来ないだろう。
(【後日記】マーラーの8番を入手して聞いた。やはり以前聞いて自分には合わないと思ったものだった。一度PCにmp3にして取りいれたが、好きな音楽ではないので削除した。受けつけないものはしょうがない。この辺は正直に行く。)

 やはり、思った通り次ぎに出て来たのがベートーヴェンの7番。交響曲もベートーヴェンも遠ざけている。今の私にはハードすぎるのだ。とはいえ一応5番(運命)、6番(田園)、9番(合唱つき)は持っている。あと3番が「英雄」。覚えているのはその四つぐらい。でも世間一般そんなものだろう。7番てなんだっけ。メロディが浮かばん。そのあと課題曲は7番から3番に変更される。
(後に「のだめカンタービレが有名にしたベートーヴェンの7番」と言われるほど、この曲とこの漫画の深い繋がりを知る。)



 第四巻。師匠のシュトレーゼマンから千秋が課題曲として出されるのが「ラフマニノフピアノ協奏曲第2番」。Rachmaninovは大好きだ。たっぷりもっている。いくつもの映画音楽に使われた超有名曲。
 私の一番好きなラフマニノフはOp.43の「パガニーニのラプソディ」。映画「ある日どこかで」で使われた曲。あれは映画と合っていて、なんともたまらん雰囲気だった。タイムスリップ物の悲恋。好きな映画だ。

 ロシア人のラフマニノフのアルファベット綴りはRachmaninoffとなっている場合もある。私はいつもこのffの部分をvにして来たのだが、いまWikipediaを読んでいたら、ラフマニノフ自身は英語圏でのアルファベットサインはffにしていたとか。じゃあそうすべきなのか。でも分裂していたそれらをiTunesでvに統一したばかり。こまる。このiTunesのタグ整理というのはかなり煩雑な仕事なので、この種のやりなおしは面倒なのだ。




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