2006
5/23
中島みゆきのタイ

 先日図書館で、「決して買うことはないが、たまにはこんなものも読んで見聞を拡げておこうと思う本」を借りてきた。リミットの10冊。
 それがテリー伊藤の「永田町無頼伝」だったりした。
 そんな中に中島みゆきの小説があった。読むのは初めてである。

 私は中島みゆきを最高クラスのシンガーソングライターだと思っている。かといって呉智英さんのような信奉者ではない。CD1枚もっていない。それでも代表曲10曲ぐらいは口ずさめるから、いかに彼女が息長くヒット曲を出してきたかである。
 彼女に最大の敬意を払っているとはいえ、ある中小企業の社長が「プロジェクトX」と「地上の星」に惚れ込んでしまい、毎朝社歌として全社員に「地上の星」を歌わせるなんて実話を聞くと気の毒と思う(笑)。「地上の星」はいい歌だが毎朝歌いたくはない。

 彼女の歌を聴けば秀逸なストーリィテラーであることはわかる。どんな小説を書いているのだろうと手にしてみた。まことにこういう勉強に関して図書館は便利である。

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「問う女」にタイが出てきたのでおどろいた。いやタイは出てこない。「ナムターン」というタイ料理屋と、そこで春をひさいでいる女が出てくる。出身はメーサイである。
 北海道札幌のラジオ局を舞台にし、主人公の女ディレクターの高校時代の話から始まるストーリィは、終盤、メーサイからやってきた売春婦とスキー場での事故による彼女の死へと展開して行く。その問題で局を馘首になった主人公が、メーサイに彼女の遺骨を届けに行く、というラストは意外だった。
 札幌とタイスナックが結びつかなかった。たぶん彼女のようなタイ娘は日本中にいるのだろう。とすると、言葉はその地で覚えるから、「大阪弁をしゃべるタイ女」なんてのもいるのか。奇妙な気がする。どうも関東中心に物事を考えすぎるようだ。反省。

 「中島みゆきとタイ」が結びつかなかった。中島みゆきの書いた小説に「メーサーイ」とあるのが新鮮だった。
 私のこのホームページには「チェンマイ日記」関係から、タイ好きな人が多いので、もしも知らない人がいたらお勧めしようと思い書いてみた。

 でも1997年の発刊だからタイ好きはみな知っているのか。有名?
 私がタイという文字にこだわってタイ関係の本を読みあさったのは80年代末から90年にかけてだった。この時期はもうそんなことはしていない。まったくあのころはスポーツ紙の釣り情報で「タイ」という文字を見ると、それが「鯛」のことだとわかっていても反射的に反応した。寝ても覚めてもタイのことばかり考えていた。帰国したその日から目標は次の訪タイだった。

 死んでしまうタイ娘が明るく純で泣ける。
 娼婦娼婦と騒いでいるバカを彼女の分までもう一発多く殴ることにした。

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 小説としては初の長篇小説だという、これの前作に当たる「2/2」のほうが完成度は高い。三十五歳の女編集者が二重人格に苦しむ話。じつは彼女は双子のかたわれであり、生まれるとき死んだもうひとりの存在に苦しむという謎解き。ちょっとオカルトの味つけもある。でもハッピーエンド。
 東京と旅行先のインドネシアが舞台。インドネシアの描きかたがうまい。女を助けるイラストレイターの恋人が魅力的だ。巧みである。

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 後日記入。なんで中島みゆきの本なんか借りたのだろうと不思議だった。あたらしいものに出会えたのはうれしいが、私が彼女の名前を意識して本棚を探すはずがない。
 今日行ったら、近くに永倉万治の本があったので納得した。思い出した。永倉さんの本を探していて、同じ「な」だから目にとまったのだった。


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