雲南-2013年-冬
雲南の山奥の
狂乱物価のこと
 なにもかもが大嫌いなシナの話なのでもうあまり書く気もないのだが、誤解されている物価について書いておきたい。書かずにはいられない。
 
 言いたいのはただひとつ「とんでもなく物価が高い」ということである。シナの山奥でしばらく暮らすと言うと、半端に外国のことを知っているひとは皆、「激安物価で快適生活」みたいな勘違いをする。どうしようもなく下衆なシナ人のことは誰もが嫌っているから、「快適」とは思わないまでも、「激安」であることは確信している。それが事実ならこちらも不満もないし、いやそれどころか最愛の妻子はいるし、その家に住むから家賃もかからないし、「ね、いいでしょ」と自慢したいぐらいだ。だが実態は苦労ばかり、腹立つことばかりなのである。なにしろ「ちっとも安くない」のである。

 愉しいことは愉しい、苦しいことは苦しいと本音で語ることを常としている私としては、苦しいを愉しいと思われることはうれしくない。実態を正確にここに書くことになんの意味があるのだと問われると私自身も首を傾げるが、とにかく、ビンボな日本人でも日本とは比較しようがないほど物価が安いので気楽な生活、のように思われる誤解だけは解いておきたい。



 たとえばむかし──いまは知らないが──タイに「渡り鳥」と呼ばれる連中がいた。そのひとたちのことはここに書いた。

 私の雲南山奥での暮らしを、この「渡り鳥」と同じように捉えるひとがいる。実際、「月5万もあれば悠々でしょう」とある知人から言われた。テレビ等で知る日本とシナの収入、物価の差から、それぐらいの金で悠々自適の、かつてタイで私がやっていたように、月20万30万も使ったら贅沢三昧のような想像をしている。とんでもない話である。雲南での私は、日本にいるときよりも出費が多く、それでいて何もかもが不愉快な状況で、大袈裟じゃなく、毎回ノイローゼになるぐらい悩み、腹立ち、不愉快な日々を過ごしている。妻子がいなかったらここは、世界で一番来たくない場所である。その実態を今から聞いてもらうわけだが……。



 ただし、である。
 あくまでもこれは私の体験している「雲南山奥での特別な生活」での話ではある。ここがひどい場所であり、やたら物価が高く、暮らしがきついのは事実だ。そのことを譲る気はないのだが、もしかしたらシナのどこか田舎では、かつてのタイのように、月に3万から5万もあれば快適な暮らしが出来る場所があるのかも知れない。私はそれを知らない。

 しかしまた、まず人間性として、チャイニーズは最低最悪の人種であり、まともな日本人はとてもじゃないがつき合いきれない連中である。この地で、かつてのタイのように、日々のんびりとくつろいだ愉しい生活を送っている日本人がいるとは思えない。
 雲南省は少数民族の地であり、シナの人口13億人──戸籍のない黒孩子(ヘイハイズ)を加えれば実質15億人と言われている──の民が暮らすシナでも特別の地である。全人口の96%がチャイニーズ(漢民族)の国だが、少数民族の地である雲南省はその割合が格別に低い。よって漢民族のあつかましさ、毒々しさがすくなく、シナの中では別天地、格別に暮らしいやすい地と言う日本人旅行者、外国人旅行者は多い。でも要所要所は漢民族が押えているし、少数民族でもみな漢民族化している。教育、テレビラジオがそうであり、すべてを仕切っているのが漢民族なのだから、弱者が朱に染まってゆくに決まっている。別項で書いたが、無学な少数民族は、無学であるからこそ、テレビで知る「悪虐日本人、正義の毛沢東」にすんなり染められて行く。大学まで行ったそういう教育を徹底的に受けたシナ人(チャイニーズ)に因縁をつけられてもしかたがないと覚悟しているが、真実を何も知らない文盲の少数民族に日本を憎まれるとかなしくなる。それが教育であり政事だが。

 少数民族が多く、旅行通からは別天地とまで讃えられる雲南ですらこの状況である。だからかつてのタイのように、とてもとてもこの国で小予算の気楽な愉しい暮らしをしている日本人がいるとは思えない。ましていま、両国はこんな状態である。それはもうシナにいてひしひしと肌で感じる。

 だがそこはまたひとそれぞれだ。好んでこのシナに来るような日本人には、私などには理解できない感覚のひとも多いに違いない。チャイニーズと気が合うのだ。だからそういうひとが、かつての「渡り鳥」のように、月5万円ぐらいで気楽に暮らしている場所もあるのかも知れない。そこは、一歩譲っておく。私の知っている「シナでの暮らし」はこの雲南省の山奥だけなのだ。でもその他の地域も旅行者としてはけっこう歩いているが、どこもかしこも最悪で、とてもとてもこの国で気楽に暮らしている日本人がいるとは思えないのだが……。

 ま、以下の文は、雲南省山奥でのごく個人的な体験であることをお断りしておく。ごく個人的な狭小な体験記ではあるが、私としては絶対的に譲れない気の重い真実である。



 以下、ガソリン話を代表として個別に語るが、とにかく基本として「シナの物価は安くない」を覚えて頂きたい。それは「中華料理はうまくない」と同じく、私の語るシナの二大基本となる。


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