08夏

 今回最も懸念していることにDVD問題があった。何度も送った日本のDVDが見られないというのだ。と書くと誤解が生じるので正確に書く。「数年前、妻が私の仕送りでDVDプレイヤを購入した。その機械で妻の持っている中国製DVDは見られる。なのに私の送る日本のDVDが見られない」ということだ。つまり「以前は見られた、というわけではない」。ずっと見られないのである。ポイントはそこだ。

 リージョンの問題だろうか。しかし中共の話である。世界最高最悪のコピー天国の国だ。ハリウッド映画が封切りと同時に100円のDVDになって出まわっている。そんな国で日本製DVDが再生できないとは信じられない。

 地域的に日本はリージョン2、中共は1。かといってそれが障碍となって再生できない国ではあるまい。そんなことは最初から無視するお国柄だ。それにそもそもリージョンは機械で切り替えられる。日本のPC用DVDプレイヤだと5回までと制限がある。中共製品にそんな殊勝な心懸けがあるとは思わない。もしもあるなら、どうせ妻の家のDVDは私の送るものしかないのだから、リージョン2専用にしてしまってもいい。あるいは専用のそれを一台買ってもいい。

 しかし妻が言うように、中国製は再生出来るが私の送るものだけがだめというのなら、何らかの規制で日本製品が再生できない可能性もある。となると今回のことに限らずこれからを考えるとかなり困ったことになる。私は妻子の日本語学習には日本のテレビ番組を見るのがいちばんだと思っているからだ。


 
 今回テレビ録画やコピーした映画DVDを持参する。市販品にコピー防止機能をつけても、次々とそれを破るテクニックが開発されるから鼬ごっこだ。この辺、十字軍時代の貞操帯屋と合い鍵屋からひとはあまり進歩していない。

 私は映像に興味がないのでこの種のテクニックに長けていない。ふだんレンタルDVDで映画を見てもコピーを取ったことはない。それをしたくなるのは今回のようなときだけだ。なのに簡単に出来てしまった。などと書くと私を誹謗中傷することが大好きなCNXと名乗るキチガイにまた著作権違反だと2ちゃんねるあたりに書きこまれそうだ。キチガイというのは自分のやっていることが正気でないことに気づいていないから怖い。もっとも今の時代、そういうことで私を弾劾しようとそんなことをしても、「おれもやってるよ」で終りか。





 町の電機屋に日本製のDVDをもって出かけた。録画したテレビ番組と時代劇映画DVDをコピーした2枚を持って行き再生できるかどうかを確認する。出来ない物を買ってもしょうがない。簡単に出来た。あまりに簡単に解決したのでかえって気落ちしたほどだ。さすがコピー天国中共である。リージョンなど最初からすべてフリーになっている。

 ということから確認してみたら、数年前妻の買った機械は映像CDの再生までのようだ。DVD非対応なのだ。なら再生できなくて当然である。
 一番の心配事があっさりとクリアされた。

 写真のDVD再生機は350元。日本円にして6千円。あとで妻の親戚連中からそんなものは半額で買えると笑われた。たしかにこういう中国製の再生専用機が日本で5千円程度で買える時代だ。物価差を考えたら、私はこの再生専用機を日本で3万円で買ったことになる。バカだ。相変わらず買い物は下手でだまされている。物価差を考えたらたしかに高い買い物をした。光機系の再生機は構造が簡単で安く作れるので中国の貧しい庶民にも驚くほど普及している。輸出規制品にも引っ掛かるほど複雑な構造のヴィデオデッキとは対象的である。



 おもしろかったのは妻の対応。写真の品は市場の電機屋で客寄せのために使われていたもの。ほこりだらけ。薄汚れている。これで日本のDVDを再生したら映った。買うことにした。
 すると妻は箱に入った美麗な新品ではなく、この品をくれと言ったのである。それは「この機械では再生できた。確認した。信じられる。しかし他の製品で再生できるという保証はない」ということらしい。つまり製品を信じていないのである。もしも箱に入った新商品を買うなら、それももう一度接続して再生できるかどうか確認せねばならない。商人もそんな面倒なことは嫌うだろうし、なら「確実に再生できる」と確認できたその賞品がよいとなる。

 私としてはこんな展示品の汚れたものより新品が欲しかった。日本だったらアウトレットということで特価の安物になる品である。が、これから胃袋が飛びでるような悪路を2時間も耕運機に揺られて帰り、接続したら映りませんでしただったらひどい。そしてまたそういうことが日常的なのがこの国だ。おとなしく妻の意見に従うことにした。中共で生きて行くには中共のやりかたに従うのがいちばんだ。
 まあとにかく、これで妻の家でも日本のヴィデオを見られることになった。
08夏

 活字と違い映像に餓えることはないのでたいした話もない。むしろ見たくて見たというより、「せっかく持ってきたのだから見なくちゃ」ぐらいの感覚だった。

 ジャッキー・チェンは大好きだが「ラッシュアワー」シリーズはあまり好きではない。持っていながら見ないままになっていたので3を持って来た。私はハリウッドのアクション映画の火薬爆発ものがバカらしてく嫌いなので、観ない。むかしは観た。これは比較的火薬が使われていないので見られる。
 クリス・タッカーは「フィフス・エレメント」のおかま役が強烈すぎていまだに引きずっている。まあまあかな。「ダイハード4」を見たときのような「んなアホな」感がなかったのだけが救い。



 数年前に日本から送ったまま見られないままになっていた「隠し剣 鬼の爪」を見られたのはうれしかった。何年ぶりだろう。二度目になる。

 あらためてヤマダヨウジ批判を書かねばと思った。藤沢原作が壊されている。それでも「たそがれ清兵衛」→「隠し剣 鬼の爪」→「武士の一分」と、すこしずつまともになってきてはいる。「たそがれ清兵衛」がいちばんひどい。心底腹立っているのにいつまで経っても批判を書かないのは、それが評論だからだ。熱烈な藤沢ファンとして絶対に書かねばと思うのだが……。評論は虚しい。
 永瀬は今回もすばらしかった。



 同じく送ったままになっていた「ロード・オブ・リングス2」を見る。これは妻の家族が、近所から集まってきた連中も含めて、みな夢中になってみていた。英語が分からなくても字幕が読めなくても、映像を見ているだけで楽しめるから当然だろう。この数数の賞を受賞した作品、私は完結編の3を見ていない。なんだかこういう壮大な作品に興味をなくしてしまっているのだ。そのうち小津作品しか見ないようになるのかも知れない(笑)。

 1も2も見ているのに完結編の3を見なくても平気なのだから、私がこの種の映画に興味を失くしたのはほんとうのようだ。ましてこの作品はもろに「続く」の感覚だった。大好きな「パイレーツ・オブ・カリビアン3」ですらあまり燃えなかったのだからしょうがない。



北野武作品で唯一見ていなかった「監督ばんざい」を見た。おもしろかった。彼の作品はむしろ正規の作品よりこういう仕掛けの、力の抜けている作品の方が楽しいと知る。そういうお遊び作品なのだろうと敬遠していたことを悔いた。

 昭和三十年代の「コールタールの力道山」には笑った。井手らっきょのがんばりも。たけしによると、井手はかなり空回りしてがんばったらしく、みんな編集で取ってしまったらしいが(笑)。
 最新作「アキレスと亀」はレンタルになったら見よう。



 北欧フィンランドのヘルシンキが舞台ということから、見たいと思っていた「かもめ食堂」を見る。期待通りの出来で、最近ハリウッドの爆破映画にうんざりして一切見なくなっている身には、こんなほのぼの系はくつろげてよかった。地味な上映だったこういう作品がロングランになったことにほっとする。

 妻が片桐はいりについて素朴に「このひとはきれいではない。なのになぜ映画に出ているのだ」と問うてきた。答に窮する。妻からすると素朴に不思議なのだろう。
 前々から怪優として顔だけは知っていた片桐が大女なのでおどろいた。帰国してから調べたら172センチだとか。東京大田区出身で成蹊大卒も初めて知った。ああいう個性派役者はみな関西出身で吉本関係かと思っていた。

 西原理恵子原作の「ぼくんち」は凡庸。期待していただけに残念。映像化したくなる気持ちはわかるが、配役とかむずかしいよね。西原作品の映像化ってどうなんだろう。残念だけどこれは失敗作になる。観月ありさはがんばっていたが。

 同じく業田良家のマンガを原作にした「自虐の詩」を首を傾げつつ見た。大のマンガ好きだからもちろん週刊宝石に連載されていた原作は読んでいる。だけどこれを映画にする感覚が分からない。「ぼくんち」はそれがわかったから、どんな仕上がりになっているのだろうとわくわくしつつ見た。こちらにそれはない。期待したのはアベカンの演技のみ。

 感想は、やはり???になる。中谷美紀もアベちゃんも好演なのだが、この作品から「しあわせとは何かと問う作品」(ネットの映画紹介コーナーの惹句)と言われても……。でもまあスローで再生される卓袱台返しのあたりはすなおに楽しんだけれど。

 見ようと思いつつ見ないままになっていた「あゝ!一軒家プロレス」を見る。まあこれも何もなかったけど、死んじゃった橋本を見ていたら感傷的になった。



 作品数は、この倍ぐらい見ている。なにしろDVDは嵩張らず、中身があるから、限られた荷物としては最適なのだ。でも感想を書くのはこれぐらいか。ベッドの中で明け方まで読んだり、時には川のほとりにすわって読んだりした本と比べると感想は薄い。それだけ私は映像人間ではないのだろう。

 とは今だから言える冷めた感想。日本語の映画が云南の山奥で見られたことにはすなおに感謝せねば。
08夏

 むしろ名作映画よりこちらに感激した(笑)。
 私は今テレビをリアルタイムではほとんど見ない。こういう「踊る!さんま御殿」とか「クイズヘキサゴン2」「爆笑レッドカーペット」のような番組を録画しておき、仕事にひと区切り着いた深夜や夜明に見るのを楽しみにしている。

 今回映画DVDと一緒にこれらを数枚持っていった。LPモードで1枚につき3時間=3回分入っている。云南でDVD再生は無理かも知れないがノートパソコンで再生できるので、万が一の無聊を慰めてくれるだろうと期待していた。



 妻は私がこういう日本語のおしゃべり=自分がまったく理解できないもの=を私が楽しむことを好まない。それはまあ私が逆の立場でもそうだ。
 妻が畑仕事に出かけたあと、こっそり見た。パソコンではなくDVDプレイヤのテレビで。
 云南の片田舎でさんまやシンスケのしゃべりを聞くのは思った以上に楽しく、まっ昼間だというのに私は妻が作っておいてくれた薬酒(朝鮮人参にれいの56度の酒を入れたもの)を持ちだして飲んだ。つまみは町で買ってきたサキイカがあった。いやあ楽しかった。クイクイやニウニウが隣にいた。やつらにペットフードをあげつつ、サキイカを食い、薬酒を飲む。

 まっ昼間のそれは言うまでもなく働いているひとたちに対して無礼なことであり、汗びっしょりになって畑から帰ってきた妻には眉を顰められた。私自身わかっていたから妻が帰ってくるころには酒を片づけ、テレビも消していたのだが、雰囲気で何をしていたのかは判ったのだろう。



 これは後に町の旅社で暮らすようになってからも、たまにノートパソコンで再生してみた。すでに以前見たものだし、さらには妻の家で再生して見ているから中身はもう覚えてしまっている。それでも日本の自分の部屋にいる雰囲気がよみがえり寛げた。そういう効果の高いものだと知った。

 二十年ほど前、外国に赴任している友人に、こういう番組を録画して送りよろこんでもらった。そのとき彼が望んでいたのもドラマ等ではなくこの種の番組だった。その意味がこうしているとわかる。くつろぐとはこういうことなのだ。そういやあのころチェンマイでも、この種の番組を録画してビデオレンタルする店がいくつも出来たものだった。

 今後海外に出かけるとき、私は缺かさずこういうものを持って行くだろう。これからはますますHDDが大容量になるから直接HDDに入れて行くことも可能だ。とはいえやはりテレビ画面で見るからこそ楽しいのだが。

 云南の旅社でこれを見つつ、しみじみと便利な時代になったと思ったものだった。今回の映像話はこれに尽きる。


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