2018

●将棋A級順位戦──信じがたい夢のような結果に!

 3月2日、A級順位戦最終対局。一斉に五局が行われた。ここまでの星は下のようになっている。




 成績順に並べるとこうなる。羽生もなあ、稲葉か佐藤に勝っていれば楽々と挑戦者になれていたのに……。


 唯一羽生だけがすでに全対局を終えて結果待ちになっている。これは昨年の「三浦冤罪事件」で本来の10名が11名になったことによって起きた。降級も本来の二名が三名と特殊になっている。
 降級は屋敷だけが確定。あと一人は行方が濃厚。もうひとりは混沌。挑戦者争いも同じく。

 私の描いた理想は、現在トップの久保と豊島に深浦と廣瀬が勝つことである。そのことによって羽生と廣瀬も久保・豊島と同じ6勝4敗になり、四人によるプレーオフが実現する。佐藤と稲葉も行方・屋敷に勝つと6勝4敗になり、そうなると6人のプレーオフだ。プレーオフは、二人か四人か、五人か六人か、のよっつのパターンになる。6人は無理としても4人のプレーオフを見たいが、それもまあかなりの無理筋。順当に久保と豊島が勝ち、ふたりの決定戦になるだろう。どちらかが敗れたとしても片方は勝つ。つまりは名人挑戦者は久保か豊島、どちらかである。その場合、私としては豊島が挑戦者になり、佐藤天彦から名人位を奪うことを願う。豊島と佐々木勇気は藤井聡太以前に中学生棋士になるべきひとだった。この辺で豊島はタイトルを取らねばならない。今回も5連勝した時点で「今年は豊島」と言われていたのだ。

 私の願いは4人のプレーオフだ。そこから羽生が勝ちあがり、佐藤天彦から名人位を取り返して、羽生竜王名人になることなのだが、それはちょっと虫が良すぎるか。

 可能性としては以下のようになる。将棋連盟の記事より引用。
 しかしいくらなんでも最後の「最大6名によるプレーオフ」は実現しないだろう。なったらおもしろいけど。





 この「将棋界の一番長い日」と呼ばれるA級順位戦最終対局はアサヒシンブンが有料中継している。私はアサヒに金を払う気はないので毎年2ちゃんねるの将棋板での書きこみを見て結果を追っていた。それが今年はAbema TVがなんと全局無料中継である。それも最初から最後まで。終局は深夜になるはずだ。そこまで徹底して中継してくれる。なんともありがたい。
 しかし毎度思うのだが、これをやられたらアサヒに金を払って観るひとはいなくなるだろう。それは今どきそんなことをしているアサヒがアホなのであって(竜王戦を始め他棋戦はみな無料中継している)ザマーミロなのだが、私がわからないのは、Abema TVはテレ朝系なのである。そんなことをして親会社のアサヒシンブンと対立しないのだろうか。有料中継で稼いでいるアサヒシンブンのサイトが大きく減収になったのはまちがいない。クレジットカードで月契約している人はともかく、コンビニからウェブマネーで支払い毎年これや名人戦だけを観るひとは多い。私も金を払う相手が国賊アサヒシンブンでなければ近所のコンビニでウェブマネーを払って観ていたろう。そういうひとたちはみなAbema TVに行き、アサヒのほうは皆無になったのではないか。だって若手棋士による解説、聞き手に女流棋士を揃え、5局一斉に盤面を映しての豪華な無料中継なのだ。誰がわざわざ金を払ってアサヒのサイトを観るだろう。ニコニコでは対局のない羽生の大盤解説もあり、ネットの盛りあがりはたいへんなものだ。



 挑戦者は最終局を勝った久保か豊島、星が縺れても久保か豊島の決定戦まで、と思っていた。
 そしてそれ以上と言えるほど興味を持っていたのが降級者争いだ。いや興味を持っていたのはその中のただ一点、「渡辺対三浦」である。この因縁の対決は冤罪事件後すでに一戦があり、渡辺が勝っている。だが、なんとしてもここは三浦に勝って欲しい。
 既に屋敷の降級が決定している。もうひとりはたぶん行方だろう。そして11人という変則態勢なので三人降級の最後のひとりがいる。この変則態勢は「三浦冤罪事件」により、特別に不戦敗で負け越した三浦を残留としたことから生まれている。不戦敗は三浦の責任ではない。将棋連盟が三浦を出場停止、対戦不可にしたのだ。
 最終局で渡辺・三浦戦が実現した。負けたほうが降級だ。三浦は負けたら降級。渡辺も負けると、深浦が勝った場合は降級になる。竜王位を失い、因縁の三浦に負けて降級は冤罪事件の元兇である渡辺には、まことに相応しい流れである。ただし渡辺は負けても、深浦が久保に負けると残留できる。久保も「三浦冤罪事件」の主犯格である。こっちも深浦に勝って欲しいが、どうか。というか「鍵を握る主役は深浦」か!

 しかしまあ藤井聡太のデビュー戦が、それまでの最年少記録をもっていた加藤一二三との竜王戦だった奇蹟と同じく、このA級順位戦最終対局が「渡辺対三浦」になり、しかも「負けたほうが降級」(の可能性がかなり高い)になるとは、これまた奇蹟的である。最終対局自体はずっと前に決まっていたが、二人の星がそうなるというのが、出来すぎたドラマだ。なんとしても三浦に勝って欲しい。意地を見せて欲しい。「6人プレーオフ」はあり得ないこととして諦めるが、三浦勝ちだけは実現して欲しい。三浦、勝てよ。

 いちばんつまらない形は、久保が深浦に勝って挑戦者になり、渡辺が三浦に勝って、降級が屋敷、行方、三浦になるパターンだ。三浦が渡辺に勝っても、深浦が久保に負け、久保が挑戦者、降級は屋敷、行方、深浦、というのもつまらない。三浦が勝つのは嬉しいが、渡辺の降級がないと物足りない。でもまあこの流れが一番強い。そうなるのかなあ……。



 3月2日、金曜日は、朝すこし観て外出。帰宅して昼もすこし観て、そこから用事があって外出。夕方にもどってまた観た。だが決着がつくのは深夜。土曜の早朝から出かけねばならない用事があるし、なにより長年早朝型生活なので夜更かしはきつい。後ろ髪を引かれる思いでいつも通りの早めの就寝となった。土曜の朝、4時起床してAbema TVに行くともう番組が代わっていた。2ちゃんねる将棋板に行って結果を見る。なんとなんとなんと驚愕の結果。6人プレーオフが実現し、三浦が勝って、深浦も勝って、渡辺降級となっていた。「そう願うけど、いくらなんでも」が全部実現してしまった。書いている今も信じがたい気分だ。6人プレーオフは史上初である。私は2ちゃんねるの将棋板でこのプレーオフ組合せ表を見たとき、こうなることを願う将棋ファンが願望で書いたものと思った。だがそうじゃない。本当にこれが実現したのだ。

 羽生は勝ちあがってきた誰かと稲葉と二局勝てばいい。
 順位1位の稲葉は6局目まで2勝4敗、昨年の挑戦者から一転して降級の可能性が高かった。だがその後、連勝して6勝4敗。こうなると順位1位だけに有利だ。勝ちあがってきた誰かと一戦して勝てば連続挑戦となる。しかし稲葉と佐藤名人の戦いはつまらなかった。昨年ほど名人戦に興味のなかった年はない。藤井旋風があったからだけど、ふたりの将棋にもあまり興味を感じなかった。
 だからここは羽生が挑むのが一番、あとは豊島が一番下から勝ちあがっての挑戦者、次いで廣瀬の初挑戦、佐藤康光の挑戦は何年ぶりになるだろう。久保と稲葉は応援しない。



 とはいえ、もうここまで来ればこれ以上は望まない。明日の日曜、3月4日、早速「久保・豊島戦」があり、これまたAbema TVが中継してくれる。一日中Abema TVを観ることになりそうだ。 明日は競馬も弥生賞がある。無敗の最強3歳馬が勢揃いしている。この一戦で一番強い馬が見えるだろう。たのしい日曜だ。
 しかし羽生は「もっている」なあ。まさかこんな形で名人復位の希望がやって来るとは、彼自身も思っていなかったろう。と、「これ以上は望まない」と言ったばかりなのに、羽生の挑戦を望んでいる自分がいる。

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【追記】──Abema TVの映像は圧巻!──深浦、よくやった!



 3月3日、土曜日、午後。
 YouTubeで、全局の終盤を観ることができた。
 早々と廣瀬が豊島を破り、稲葉、佐藤も勝ち、ここで6人プレーオフの目が見えてきた。深浦が久保に勝てば、史上初のそれが実現する。残った盤面は「渡辺対三浦」「久保対深浦」の二局。
 三浦が勝つ。完勝だ。魅せたなあ、三浦。ネットに三浦讃歌が溢れる。

 6人プレーオフ、渡辺降級、すべては深浦に託された。深浦自身も降級か残留かを懸けた一番だ。最後までこの勝負が残った。盤面五局で中継していた画面が、この一局のみになる。
 深浦優勢。しかし久保が耐える。〝捌きのアーティスト〟のもうひとつの顔、師匠・淡路から受け継いだ〝不倒流〟の粘り。

 これは4枚目の銀を2八銀と埋めた局面。こんな守り、見たことない。2ちゃんねるでは銀多伝ならぬ銀多多伝と盛りあがっていた。



 深浦の必至連続に、ついに久保が倒れる。この瞬間、史上初の6人プレーオフ、三浦冤罪事件の主謀者・永世竜王のB級降級が決まった。

 すごい夜だった。リアルタイムで五局を、順次の終了、深夜の久保投了まで観られた人がうらやましい。後追いでこんなに昂奮するのだ。リアルタイムでこれを観たならどれほど感動したろう。藤井聡太の活躍、羽生の永世竜王で盛りあがっていた将棋界だが、その効果か、廣瀬、深浦も魅せてくれた。

3月2日 22時19分 豊島投了
3月2日 23時23分 行方投了
3月2日 23時41分 屋敷投了
3月3日 00時05分 渡辺投了(三浦残留)
3月3日 00時15分 久保投了(渡辺降級)

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●羽生、挑戦者へ!──平成30年3月21日(水)

 いま22:58。Abema TVで勝った羽生、敗れた稻葉へのインタビューが終ったところ。
 豊島が、久保、佐藤康光、廣瀬と破って勝ちあがる。このまま5連勝で一気に挑戦者となるかと思われたが、羽生が負かした。決勝戦は稲葉。それも破る。まるで全盛期の羽生がもどってきたかのような、本戦では負けている豊島、稲葉に圧勝した。

 私は、豊島が五連勝で挑戦者となるのはよいと思っていた。だがその豊島を羽生が破ったなら、なんとしても羽生に勝ってもらわねばならない。稲葉では名人戦が盛りあがらない。羽生が勝った。これで今年の名人戦は盛りあがる。ここまで来たら佐藤天彦から名人位を奪りもどし、前人未到、空前絶後の記念すべきタイトル100期を名人位で達成して欲しい。しかしまあ誰がどう考えても「久保か豊島が勝って挑戦者」だったろう。それが史上初の六人によるプレーオフ。そしてすでにすべての対局を終えていた一番不利な羽生が挑戦者となった。まさに「作っても作れないようなストーリー」である。そりゃブームにもなる(笑)。

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