はじめに


 『小説 チェンマイのさくら』は、1991年11月に取材し、1992年4月に書き上げたものです。未発表作品であり、今回が初めての公表となります。

 主人公・佐藤平吉のモデルは、さくらのパパこと有山基氏です。佐藤平吉の年譜及びエピソードは、有山氏の実人生を忠実になぞっています。
 『宇宙堂』の店主・小島のモデルは、実在する『宇宙堂』の経営者・渡辺兼久氏ですが、特に取材はしていません。ですから、主人公以外の登場人物及びエピソードは、すべて私の創作と解釈してください。特別なモデルはいません。

 文中の数字は書いた当時のままにしてあります。例えば「今から三年前のことであった」などとある場合の「今」とは1992年のことになります。

 当時、まだタイ語が片言しか話せなかったので、パパの恋人であるシーちゃんに関する詳しい記述がほとんどなく、この作品の弱点となっています。シーちゃんの実家はもちろん、フランスに嫁いだお姉さんの家にまで何度も泊めてもらったりしている今だったら、あれこれと書けるのですが、当時はそんな程度でした。

 未熟な作品ですが、敢えて手直しせず、そのまま発表します。作者としては、タイに対する温かい視点に、手厳しい今との差を感じ、そこに愛しさを見いだしたりしています。楽しんでいただけたら幸いです。

 2000年春 吉日 【油来亀造 YUKI KAMEZO】


inserted by FC2 system