『お言葉ですが…』最終回

が、ネットで復活!

 すっかり「週刊ノナカ」になった『週刊文春』に愛想を尽かし買わなくなって数年経った。その間も高島さんの『お言葉ですが…』だけは立ち読みしてきた。
 2ちゃんねるの「マスコミ板──週刊文春」を読むと、私と同じくその思想的偏向に愛想を尽かして買わなくなったが『お言葉ですが…』だけは立ち読みしているという書き込みを何度か見かけ意を強くしたものだった。

 2006年の7月、突如『お言葉ですが…』の文中にヘンな表記が入った。それは「預言」ということばの回だった。「もっと徹底的に書くつもりだったが、あと数回で終ると知ったので」のような表現だった。(あとで正しく直します。)
 そこから判るのは95年4月から始まった『お言葉ですが…』があと数回で終るということであり、どうやらそれは高島さんにとっても納得ずくではないらしいということだった。愕然とした。なんでそんなことになるのだろう。目の前真っ暗である。

 数ヶ月前のアレがなかったら私はもっとおどろいていた。アレとは高島さんが最新刊『お言葉ですが…第十巻』について触れた回である。4000部しか印刷されず、すこしでも売り上げに協力せねばと高島さんが200冊を買い取って友人に贈呈しているとの話だった。信じがたい。全国の図書館や学校が揃えたりするだけで2万や3万は出ると思っていた。そのころTBSのヤラセ番組「大家族青木家」の長女が書いた本が発売すぐに20万部突破と報じられていた。そういう本が売れる一方で高島さんの本がこんな目に遭っている。悪書が良書を駆逐している。タレント本が30万部突破とやっているから本が売れないわけではない。メディアミックスでテレビと連動しないと売れない時代なのだ。いや「バカの壁」や「国家の品格」のようなベストセラーもあるから一概には言えないとしても。

 盆と正月、ゴールデンウィークが連載の切り替え時だ。7月にあと数回と言うのだから旧盆が最終回かと思った。やはりそうだった。写真はその8月17・24日夏の特大号。これが最終回となった。数年買っていなかった『週刊文春』をこの号だけは買った。臥薪嘗胆の記念として。忘れまじ、週刊ノナカの恨み!

 最後の単行本十一巻は文藝春秋社は出さず連合出版だった。第七巻まで出ている文庫本も今後は出ないらしい。しみじみ文春には失望する。


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 と昨夏に『お言葉ですが…』の連載が終ったので[感想]を書かねばと思いつつ書かずに過ごしてきた。気落ちして書く気になれなかった。
 そこに朗報。ネット上で『お言葉ですが…』が再開されるという。今年一月からだ。

植村昌夫さんの「翻訳ブログ」より引用

『お言葉ですが…』が再開されます。今度は草思社のWeb草思に載る。掲載開始は来年1月末ごろの予定。
 きのう高島俊男先生からお手紙をいただいたのだ。『お言葉ですが…』を再開して欲しいという読者がたくさんいて、その一人一人に手紙を出されたらしい。手書きをコピーしたものである。1. 先生が原稿を書いて、編集プロ「アイランズ」の赤岩さんがコンピュータ入力したものをWeb草思に横書きで載せる。ない字は伏字。
2. 別に縦書き印刷版(伏字を手書きで埋める)を作り、希望する人にはこれを郵送する。1回200円。10回ごとに赤岩さんに送る。
101-0051 東京都千代田区神田神保町1-18 三光ビル3階 アイランズ赤岩「お言葉」 Tel 03-5283-3373  Fax 3376 先生は2について「料金を徴収するというのが気がひける。もっとよい方法があったらご教示ください」とおっしゃる。
 お手紙には私の名前と「お持ちのパソコンで見て下さい。ご意見おきかせ下さい。」が先生のペンで書き添えてあった。 私は『お言葉ですが…第11巻』を読んで連合出版にメールで感想を送ったのである。全11巻の通巻索引を作った八尾さんから返事をいただいた。すぐに増刷になったという。広告もしないのに売れるのだ。いいものは匂いでかぎつける読者がいるのだ。八尾さんも「みなさんのおかげです」とおっしゃっている。(連合出版のサイトには11巻の正誤表あり。)



http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/cat5598292/index.html


 植村さんにかってに引用した非礼をお詫びし、「御気分を害する箇所があったらすぐに削除します」とメールを出したら、すぐに、「気分を害するなんてとんでもない。うれしい、よかったと思います。高島先生ファン同士ですもの」とのお返事を頂きました。植村さん、ありがとうございます。今後ともよろしくおねがいします。(1/30)

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 草思社のWebでの連載である。以下の「執筆者」の欄にもうすぐ高島先生の名が加わるわけだ。目のお加減はどうなのだろう。ご自愛して活躍していただきたい。なんとも楽しみなことである。
 草思社は前々からいい本を出してくれるすばらしい出版社だと思っていたが益々ファンになった。感謝感激である。連載がまとまって本になる日が待ち遠しい。そう、ネットで読めることは禍福だが、やはり活字の本を寝転がって(これは高島先生がそうだから無礼ではないのだ)読みたい。




ホームページ


 私が『週刊文春』に愛想を尽かしたのはノナカヒロムと結託した政治的偏向が目立ったからだった。小泉政権批判とヤマタクのスキャンダル発掘等にはうんざりした。
 今回、高島さんに活躍の場を与えてくれたのが、現在の『週刊文春』(と限定的に解釈したい)とは思想的に対立する感覚の草思社であったことは自然な流れであった。


 草思社はこんな本で知っていた。

 今回、こんな本も出していると知った。

 アサヒシンブンにアサヒ嫌いが文章を書くことも大切なのだろうが、気が置けない感覚の場でのびのびと書くことの方がより勝るのは言うまでもない。高島さんの草思社での活躍を心から願う。


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 第十一巻のあとがきが連合出版のホームページに掲載されている。引用させていただく。

あ と が き

 一九九五年の春に船出した「お言葉ですが…」は、十一年後の二〇〇六年夏にいたるも依然順調航行、書くことはいくらでもあるし、当然まだまだつづくもの、と筆者勝手に楽観していたら、突然中止の通告を受けた。
 「読者のみなさまがお手紙をくださっているあいだは大丈夫、やめさせられることはない」と言い言いし、実際そう思っていた。その読者来信はとぎれることなく来ていたのだが……。
 「なんでやめさせられたんだろう?」と以後考えつづけている。
 週刊誌連載の一年分が単行本一冊になる。これは十年十冊つづいた。最後の一年分の一冊を作ってやろう、と連合出版の八尾正博さんが申し出てくださったのでお願いすることにした。
 どちらにしても最後の一年分は本の形にまとめるつもりであった。その本の自分なりのイメージもできていた。――一、自費出版ないし事実上自費出版で出す。二、第十冊までとはまったく体裁のことなるものにする。ソフトカバー。表紙は「お言葉ですが⑪」とそっけない活字体の題のみ、等々。三、値段はつけるとしてもうんとやすくする。四、部数はせいぜい五百部。
 つまり、版元には初めから損になるにきまっている本を出してもらい、その損は全額著者が負担する、という心づもりであった。
 ところが出版を申し出てくれた八尾さんがこの方針にあまり賛成でない。
 そこへ兵庫県太子町立図書館長の小寺啓章さんから「十一巻目は、必ず今までと同じ形で出してください」と手紙が来た。
 小寺さんは日ごろから種々お世話になっているかたである上に、本に関しては最も信頼すべきプロである。
 「小寺さんからこんな手紙が来たよ」と八尾さんに知らせたら、「ぼくも初めからそのつもりでした」との返事。こちらが体裁について注文をつける前に、さっさと藤枝リュウジさんに表紙の絵をお願いしていた。
 結局、すっかり八尾さんにおまかせすることにした。餅は餅屋だ。著者はギヴ・アップである。
 八尾さんは、全十一冊の通巻索引をつけてくれた。
 これには由来がある。すでに第七冊か八冊くらいの段階から八尾さんは通巻索引を作ってくれ、筆者重宝していた。
 通巻索引は、「あれはどこに書いてあったっけ?」とさがす際に、しごく便利なものである。どうぞ御活用ください。
 本文の校正と通巻索引をつくる実際の作業は原田雅樹さんがやってくださった。
 八尾さん、原田さん、それに従来の版元の手をはなれた『お言葉ですが…』のためにこころよく表紙をかいてくださった藤枝リュウジさんに、お礼を申しあげます。

   二〇〇六年十月             高島俊男


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 この「あとがき」からも今回の連載中止が極めて不本意だったことがわかる。
 今回「高島俊男」で検索し、あらためて私と同感覚の多くの支持者を知ってうれしくなると同時に、アンチ高島さんの存在を知ったことがおもしろかった。
 最初から真反対の人ではない。支那と言ってはならないと思っている人は最初から高島さんとは合わないだろう。そうではなく、学者肌の人(学者そのものもいたが)で高島さんを肯定しつつ否定する人の存在である。しみじみつまらない人だと思った。学者先生はえらい人たちであるが、一面において盲であることも事実である。それを確認した。高島さんは学者であるが象牙の塔にこもらなかった。こもりきれなかった。だからこそ持っている感覚が大きい。アンチの存在によりそれを学ばせてくれるのだからネットの価値は高い。

 2ちゃんねるでも高島さんのスレが立ったことがあると知る。まったく伸びずに終っている。でもこれはこれで貴重だからコピーして自分のところに保存した。なんでもありの2ちゃんねるにはその水準の高さに驚かされることも多いが、さすがに高島さんに関しては80程度のレスでとぎれている。(テーマ06/8 文07/1)


2ちゃんねるの高島さん






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