初版4千部!?

『週刊文春』の編集長がノナカヒロム後援会長の息子であるキマタになり、文春が「週刊ノナカ」になってからすっかり読まなくなった。20年以上読み続けてきた週刊誌だから多少未練はあったが、いつしかまったく平気になった。週刊誌との縁なんてこんなものなのだろう。

 それでも缺かさず『お言葉ですが…』だけは立ち読みを続け、2ちゃんねるのマスコミ版で、私と同じように「週刊ノナカ」を嫌い、『お言葉ですが…』だけを立ち読みしているという同志を見つけると心強く思ったものだった。

 というわけで今週も立ち読みしたのだが、一読して絶句してしまった。

 『お言葉ですが…』10冊目の単行本「ちょっとヘンだぞ四字熟語」が発売になったのでよろしくお願いしますと冒頭であいさつしたあとである。なんとその数字が4千部とあるのだ。4千部……。
 誤植かと思った。しかし、苦しい情況であり、高島さん自身もせめてその一割を負担せねばと思ったとあり、一割は無理なのでせめてその半分をと友人諸兄に自らの手で本を送るのだが、その一割の半分の数字として「200冊」とあるのだから間違いない。初版4千部なのである。まさか……と、しばし茫然とした。

 高島さんは、今までそういう状況を知りつつなにもしてこなかったので、これからはせめて……と、懸命に不慣れな宣伝を誌上で繰り広げていた。信じられない話である。確実に数を捌く、ヒットとは呼べなくても手堅く稼ぐ優良商品だと思っていた。4千部では、それこそいつ打ち切りになってもおかしくない。むしろ今までよく文春は出し続けてくれていると感謝する数字だ。

 思えば今回のこのタイトル「ちょっとヘンだぞ四字熟語」も高島さんの好みとは違っているはずである。おそらく高島さんは自分の気に入っている章(=世間受けしない)をタイトルにしようとした。しかし担当者が「四字熟語」に敏感に反応する世間がある事を計算し、一冊でも多く売るためにこれにしたのだ。第3巻だったかの文庫本タイトルに『広辞苑』をもってきたように。これはもちろん編集者が正しい。高島さんのタイトル感覚は浮世離れしている(笑)。
 以前は単行本は高島さん好みのタイトル、文庫本になるとき編集者のつけるタイトルだった。今回単行本からして編集者感覚になったのは、それだけ売れないから編集者が強気に出たということだろう。高島さんも妥協せざるを得なかった。逼迫しているのである。高島さんを知らない四字熟語好きがなにかのまちがいでこの本を購入することを心から祈る。

 同じ号にあのTBSの大家族番組「青木家」のことが書いてある。16歳で未婚の母となった長女だが実は中学生の時にもう子供を産んでいたとか、長女ではなく上に何人も兄弟がいるとか、さらには離婚した女房の連れ子であり父とは血縁でないとか、相変わらずのやらせ体質TBSのいいかげんさを報じている。坂本弁護士事件から石原真太郎発言捏造にいたるまでどうしようもない最低のテレビ局である。

 その青木家の長女、誰だっけあざみちゃん? が先日本を出したら一週間で20万部突破とあるものだから、ますます高島先生の本の4千部にめいってしまった。もちろん本人は書いていない。ゴーストライターを使用したやっつけ本である。それがあっという間に20万部か。まさに「テレビの力」である。でもそれはそれでいい。世の中とはそんなものだ。ただもう一方で『お言葉ですが…』も確実に読まれる国であって欲しい。いくら何でもこの差には愕然とする。

 それが現実であり世の中そういうものだとわかっていても、『お言葉ですが…』は毎回初版で3万程度は出ていると思っていたから、ほんと、絶句としか言いようがない……。

 だけどやっぱり不思議である。だってあれだけの本なのだから、全国の図書館に収めるだけでも2千や3千はすぐに行くだろう。いくらなんでも4千はすくなすぎる。図書館で仕事をする人にまともな感覚があるなら必ずリストに入れるはずだ。いかにも図書館向きの良書である。そうじゃないのか、もう今の時代は。
 リクエストの時代だと図書館勤務時代のらいぶさんに聞いたことがある。リクエストの多い「ハリーポッター」を10冊まとめて入れたりするという。それが図書館の現状であるらしい。「無料レンタルショップですよ」とらいぶさんは自嘲気味に言っていた。そういう時代にはこんな良書が揃えられることはないのか。

 かくいう私自身、毎回出るとすぐに買うわけではない。何年も前のを思いつきで読み返したり、旅先に持っていくのに急いで買ったりと、高島さんを敬愛していることに関しては人後に落ちないつもりだが、決してよい購入者ではなかった。そのことは反省するとしても……。
 しかしなあ、どう考えても『週刊文春』での長期連載、固定読者層、世間の高い評価と考えていったら、最低でも初版3万部の本と思うのだが……。

 なんだか憂鬱になってしまった。早速明日にでも買ってこよう。私一人が買ってもなにも変るわけではないが、私淑しているものとして、それぐらいしかすることがない。
(06/4/14)







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