当たりまっかいな!






以下の出馬表は2002年1月13日の京成杯のものである。
  印は『週刊アサヒ芸能』での私の豫想。◎と▲の二つしかないが、気取って一点豫想をしたわけではない。豫想した馬の中から2頭しか出てこなかったのである。それでも本命が出ているだけまだいい。一点ではあれ当たる可能性があるからだ。ひどい時は本命対抗みんないなかったりする。


2002年 1月13日 1回東京 5日11R 京成杯(GⅢ)

枠馬 馬名      重量 騎手  調教師         豫想印

1 1マイネルアムンゼン  55  村田一誠   (東)田中清隆
2 2サンデーサンサン    55  柴田善臣  (西)森秀行 
3 3ヤマニンセラフィム   55  蛯名正義  (西)浅見秀一     ▲
4 4ブリガドーン       53  木幡初広  (東)小西一男
4 5ダディーズドリーム   55  橋本美純  (西)松田博資
5 6サスガ          55  横山典弘  (東)藤沢和雄     ◎
5 7ゲンパチミラクル     55  ファロン    (東)加藤修甫
6 8カゼニフカレテ     55  後藤浩輝   (西)佐々木晶
6 9シルキーゲイル    55  大西直宏   (東)高市圭二
710トーセンサクシード  55  江田照男   (東)稗田研二
711ローマンエンパイア  55  武幸四郎   (西)古川平
812ビッグスマッシュ    55  小野次郎   (東)池上昌弘
813サクラエクセレント   55  田中勝春   (東)小島太




アサ芸誌上で実際に印を打ったのが下記のもの。ひじょうに汚いがご容赦願いたい。というのは、一読すれば解るように想定出馬表からほとんどの馬が出てこなかったのである。しかも、欄外のその他の出走登録馬からも出てこず、実際に出てきた馬の名をスポーツ紙を見ながら書き込んだりしたものだから、こんなに汚くなってしまった。

 土曜日の夕方に『日刊ゲンダイ』『東スポ』『日刊競馬』を買ってきて、アサ芸の豫想と現実を比べるのだが、この週などは、「これも出ない、これも出ない」と赤ペンで消してゆき、思わず「こんなので当たるわけないよ!」と声に出してしまったほどだった。
 見にくいかもしれないが、上段右端が豫想家の名前。上から、水戸、東、油来、本誌、となっている。私の場合、本命にしたサスガと、単穴のヤマニンセラフィムの2頭だけが現実に出走してきて、後はみな不出走だった。
 周囲に赤サインペンで汚く記入してあるのは、実際の出走馬である。勝ち馬はその中にいた。当たるはずがない。






想定出馬の枠に入っているのが14頭。これは全出走予定馬、登録馬の中から、勝ち負けになりそうな馬を編集部が選んで表にする。ここまで本格的に毎週やっている週刊誌は他にないし、アサ芸の競馬欄は充実していると評判である。さらに、その他の出走予定馬として欄外にある馬名が18頭。
 しかあし、この想定出馬表から現実に出走したのはたった2頭。その他の出走予定馬からも1頭でしかなかったのである。つまりここに掲載されている馬は合計32頭いて、その中から現実の競馬に出てきたのはたった3頭だったのである。いったい後の29頭はどこへいったのだ。

 常以上に流動的な年始競馬であることから、いつも以上に慎重に印を打った。11頭である。今までこんなに印を打ったことはない。まともな競馬なら8頭、ちょっとメンバーが不確定なら9頭にしている。おそらく11頭も印を打っても、5頭ぐらいしか出てこないだろうと豫想していた。現実はもっとすごかった。2頭のみである。それでも、ここに掲載された32頭の内からたった3頭しか出走してこないのに、私の印を打った馬が2頭いたことはスゴイ(?)とも言える。よって豫想は結果的に一点勝負となった。
 勝ったのは欄外に赤字で書いてあるローマンエンパイアと出走予定馬からかろうじて出てきたヤマニンセラフィム。珍しい同着1着という、じつにいいレースであった。

 この出走予定馬選定の仕事をしているのは、サンスポの水戸記者である。彼の仕事がいいかげんだとは毛頭思わない。いくら一所懸命にやっても競馬の出走馬なんてのはこんなものなのだ。むしろ他の週刊誌よりはよくできているだろう。

 いつも気の毒に思うのは、『週刊現代』の藤代三郎さんである。藤代さんは1ペイジの豫想コラムを書いている。出走予定馬に関してコラムを持っている専門誌Gallopから情報を得ていると思うが、毎週毎週ものの見事に外れている。外れているのは豫想ではない。豫想した馬が出てこないのだ。当たり外れ以前の問題である。有力馬と目される馬の一長一短を書いたりして、結論として3頭ぐらいの馬の名を挙げる。それがもうことごとく出てこないのだから気の毒になってしまう。
 私の書いているアサ芸は火曜発売で、締め切りは基本的に十日前である。祝日があると二週前になることもある。現代は月曜発売(都内の一部では土曜に購入することも可能)だから、ほとんどいつも二週前の豫想なのだろう。これはキツいことである。

 ただしキツいというのは、事後のことであり、週刊誌豫想で的中したいという欲求を持った場合のことである。つまり、藤代さんの月曜であれ、私の場合の火曜であれ、その時点で読む読者には、どの馬が出てくるかたいしてわかっていない。藤代さんの文章や私の文章等を読んで、「そうか今週は××賞か、なるほどこの馬がねらえるのか」と思い、さらにスポーツ紙を読んだりして週末へと闘志をかき立ててゆくのだ。
 競馬とは、土曜日曜に負けたのに、月曜になったら早速その痛みを忘れ、週末に向けて気持ちを切り替え、徐々に徐々に鼻息を荒くしてゆく楽天的マゾヒストの遊びである。その徐々に徐々にの部分に関わるのが週刊誌の豫想であり、的中不適中を争うのは前日に豫想するスポーツ紙、専門紙の記者の話である。所詮十日も二週間も前に豫想する週刊誌の場合、当たり外れなどどうでもいいことなのであろうし、読者もまた月曜、火曜に買った週刊誌が当たっていようが外れていようが読み返したりはしないだろう。こんな場での豫想もどきなのに、やる以上は当てたいと思っている私のほうが異常なのだ。



一方、こんな週もある。以下は今年の弥生賞のもの。本命が三つ並んだモノポライザーが熱発で回避したのはご存じの通り。
 もしもここで、「◎が回避の場合は○を◎に格上げする」という規則でもあったなら、私は「○ローマンエンパイア(2着)と△バランスオブゲーム(1着)」という17倍を5点豫想で的中していることになる。両馬を無印にしている水戸さんの異能感覚も相変わらずスゴイ(笑)。

 現場でも当てたし、なにより大好きなタイガーカフェが3着したので、ローマンとタイガーの勝負馬券、ワイド10倍でたっぷりと儲けた。しかし現実にはこういう場合はノーカウントである。こんなレースをくぐり抜けて当てるのだから、ほんとたいへんなのだ。






「はじめに」に書いた、「豫想したのは120レースぐらいで、的中は35レースぐらい、これは我ながらスゴイと思う」の意味がわかっていただけたかと思う。こういうレースをたくさん含んでいるので、ちょっと当たるほうがおかしく(?)、当たらなくて当然なのである。また、私が的中しているレースのほとんどがGⅡとGⅠであるというのも、レースのグレードが上がれば上がるほど豫想した馬が出走してくる確率が高いという理由からである。

 私がアサ芸のこの仕事を受けたのは、未体験の豫想という仕事をやってみたいと思ったからだった。逆にこの仕事を始めて頭を抱えてしまったのが、この豫想した馬が出てこないということであった。パドックで決断する現場派に、十日前の豫想はキツかった。前記した、月曜から週刊誌やスポーツ紙を読みつつ週末に向けて闘志を高めてゆくというのが、三十年にわたる私の習慣だった。それが高めさせるほうに回ったのである。読ませるコラムが目的なので的中は二の次でいいともいえる。それでもやはりやる以上は当てたいと思ってしまう。現実に私の文章では、豫想はほんの数行だが、かなり力を入れてああでもないこうでもないとやっている。

 というわけで、こういう想定出馬の現実を知らないと、そんなの簡単だと思われるかもしれない。いやほんと、よくぞこれだけ当たったものだと当人も驚くぐらいの状況での出来事なのである。
(02/4/27)

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