人馬往来的中抄



■愛憎-スプリングステークス00


資料を整理していたら、十年ほど前の、ある夫婦者の競馬文章が出てきた。こちらが赤面してしまうほどの熱々さである。亭主は女房を「ワイフ」と呼び、のろけている。二人は夫婦で競馬を書くことで有名になった。競馬場でもよく見かけたものだった。

 そして今、二人は別れた。男は若くて美しい女と四回目の結婚をした。捨てられた女は錯乱し、慰謝料を巡り裁判中であるという。

 あんなに熱く燃え、一緒に夢を語っていた仲なのに、時が過ぎると、愛は消え、それどころかどろどろとした憎しみの中にいる。当時の「ワイフ」を連発する文章を読んでいると、なんとも空しくなってくる。男と女ってなんだろう。愛情ってなんだろう。

 そう考えていると、女に縁のない私なのに、なぜかそれをよく知っているような気がしてきた。なぜだ。
「ひとときは熱々で一緒に夢を見るが、時が過ぎると、愛どころかむしろ憎しみさえ感じたりする……」

 なーんだ、馬券と同じだ。パドックで一目惚れし「おまえだよ、おまえしかいない。おれの全てをおまえに賭ける」と熱々になり、高配当馬券をしこたま買い込み、うん百万になったらどうしよう、いやいやこっちが来たらうん千万だ、いやはやまいったなあ。どうしよう。しあわせすぎる。短くも美しく燃える夢の時間。

 が、いいとこなしの惨敗。すると一転して「あんな馬が来るはずないんだよ。信じたおれがバカだった」と悔やみ、惚れた愛しい存在のはずだった馬をボロクソに罵る。おお、これだったら四回どころか何千回も経験している。そうか、そういうことだったのか。

 その夫婦者は、今は夫婦ではなくなったが、相変わらず二人とも競馬文章を書いている。あの熱々の時期のことなど無かったかのように。

 私もまた今日も懲りずに、パドックで惚れ込み、高配当を夢見、外れては自己嫌悪を繰り返している。電車賃までスり、歩いて帰った日のことなど忘れたかのように。まこと、愛と馬券は似ている。

 さてスプリングS。ダイタクリーヴァで行く。弥生賞はフジキセキの弟を応援してひどい目にあった。今度は息子である。これまた懲りない。




◎ダイタクリーヴァ
○エリモブライアン
▲カーネギーダイアン
△トッププロテクター
△パープルエビス
△ジーティボス


■結果

1着ダイタクリーヴァ
2着パープルエビス

     1970円的中。

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