人馬往来的中抄



■異観-セントライト記念00


 競馬会が四月から行ってきた「20世紀の名馬大投票」の集計結果が出た。一位はナリタブライアンだった。

 平成6年の三冠馬であるナリタブライアンは、二世代の仔を遺して急死した。この件で私が思い出すのは、故・大川慶次郎さんのことである。

 ナリタブライアンが死んだ週、テレビの競馬中継では当然そのことを話題として取り上げる。「二世代しか子供は遺せませんでしたけど、この中から父を越える馬が出て欲しいですね」と、出演者の誰かが言った。競馬ファンなら誰もが考える常識的な発言だったろう。すると大川さんが、苦笑するような感じで「それは無理ですよ、そんな期待をしちゃかわいそうです」と言下に否定したのだった。

 しんみりを装いつつ、約束事の言葉で盛り上がっていた場に、水を差すようなひとことだった。大川さんの発言を聞きながら私はホウヨウボーイのことを思い出していた。

 有馬記念、天皇賞を勝ったホウヨウボーイは、昭和55年、56年と年度代表馬になっている。種牡馬入りした後、一年だけ種つけして急死した。その二年後、私は取材で日高を訪れた。お墓に手を合わせた後、「遺された仔から大物が出て欲しいですね」と口にした。競馬ファンとして素直な気持ちだったし、種馬場の人たちも賛同してくれるものと思いこんでいた。するとホウヨウボーイの世話をしていた人が言ったのだ。「おれは……、出ない方がいいな。出たら、そんなすごい種馬をなぜ死なせたんだって、また責められるもの」と。

 新鮮だった。ものの見方にはいくつもの切り口がある。私は、常套句をいかにも常套句としてしゃべっている自分のつまらなさを恥じた。

 ナリタブライアンの時、司会者、競馬評論家がお決まりの言葉を連発している中で、平然とそれを拒む一言を放った大川さんはすごい。私も嫌われ者小言幸兵衛を目指したい。今の世の中に不足しているのは、それのはずだから。


 さてセントライト記念。京都新聞杯が移動になり、菊花賞トライアルとして注目度が増すと思っていたのだが、ダービーから来た二頭と良血のアドマイヤボスに印を打ったら、他に興味のある馬がいないとは何とも寂しい。


◎ジョウテンブレーブ
○トーホウシデン
▲アドマイヤボス



■結果

1着アドマイヤボス
2着トーホウシデン
3着ジョウテンブレーブ

○▲で的中。馬連540円1番人気。トーホウとジョウテンのワイドで大勝負して280円が御の字だったことを覚えている。

※ アサ芸の的中カウントは○▲のタテメをとってくれるので、本命よりもむしろこの目に気を遣う。低配当でもとにかく当てねばならない。


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