2007秋のGⅠ敗戦記
●敗戦記──スプリンターズステークス──キングストレイル
選んだ馬はキングストレイル、サンアディユ、アストンマーチャン、アイルラヴァゲイン。これが本線。
あとはもういないのだけれど、ハートマークの3着候補に、調子が悪いらしいが好きなのでスズカフェニックス、これまた条件馬のころから好きなので大敗続きだが一発があるかもしれないオレハマッテルゼ。
フォーメーション予定だったがパドックを見てキングストレイルの勝利を確信。1着固定3連単。
1着アストンマーチャン、2着サンアディユ、3着アイルラヴァゲイン。そして4着にキングストレイル。3連単15960円。
ボックスなら簡単に当たっていたという泣きが入りそうだが、ボックスは基本的に買わないことにしているのでそれはない。
そんなことより、パドックを見ずに、たとえばフォーメーションで前日購入していたら当たっていた、がかなしい。
キングストレイル……秋初戦の京成杯を快勝してスプリンターズステークス負けは、藤沢厩舎の先輩ゼンノエルシドと同じパターンになった。京成杯ではゼンノエルシドの仔の大好きなマイネルシーガルにも痛い目にあったし、このへん因果が巡っている。京成杯はキングストレイル、マイネルシーガルを大本線にした。幸いキングストレイル、カンファーベストを抑えておいたのでマイナスはなかったが……。
でもゼンノエルシドは、そのあと人気を落としてマイルCSを勝つのだった。本命にした。鞍上はペリエ。キングストレイルがマイルCSに出てくるなら、もちろん本命で行く。
秋GⅠ初戦、まずは敗戦。
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●敗戦記──秋華賞──ナリタトップロージの遺児にかける
三強の好きな順はウォッカ、ベッラレイア、ダイワスカーレット。
ウォッカは阪神ジュブナイルで3連単1着指名の馬券をとったこともあり、会う前から好きだったが、ダービーのパドックで見てさらに惚れた。最高の馬だった。あのダービーパドックでいちばん輝いていた馬だ。
父タニノギムレットも大好きだった。机上の血統からだとルションの肌を好きになることはなかったろうがパドックで見て惚れた。やはり馬は現実に見なければならない。
ベッラレイアは早世したナリタトップロードの仔。最初で最後の傑作になるかもしれない。勝てたオークスを秋山の腕で落とした。今秋から武が乗りかわっている。ローズステークスは完敗だったが逆転の目も見えた。
ダイワスカーレットの戦法は完璧。安定している。でも長年社台が嫌いだったのでノーザン肌にアグネスタキオンはあまり好きになれない。とはいえ全兄のダイワメジャーは大好きだからこの辺が難しい。なんで好きかと言えば目の前で見て惚れたのだ。だからダイワスカーレットも間近に見ればきっと好きになる。いい馬にちがいない。しかし関西の馬。まだ見たことがない。
三強馬券は買いたくない。なにかあいだに割り込ませたい。まずその前に三強のどれを軸にするかだ。大好きなウォッカだが一頓挫あった。ここは武が乗ってきたナリタトップロードの遺児に懸けたい。オークスでも1着固定で買ったのだ。
ベッラレイア1着固定で、2着3着にウォッカ、ダイワスカーレットを配置し、あいまに何頭か入れる。ラブカーナ、レインダンス、カレンナサクラ。新潟2歳ステークスで世話になった必殺秘密兵器が大好きなマイネルーチェ。最低人気。ウォッカとダイワを外した、ベッラレイア──ラブカーナ──マイネルーチェも買う。250万馬券。
オークス馬ローブデコルテ、NHKマイルカップ馬ピンクカメオは無視。そこまで手を広げられない。
ダイワスカーレット完勝。2着にレインダンス、3着ウオッカ。ベッラレイアは4着。スプリンターズステークスに続いてまたも私の本命は4着。3連単は37630円。
武はなんであんなに後方から行ったのだろう。ハイペースになり、直線では前に行った馬がばったり止まり、差し脚の活きる展開になると読んだのか。いくらなんでも4角最後方は後ろ過ぎると思うが……。
すなおに、先に行って勝ちきったダイワスカーレットの強さを讃えるべきか。兄と同じ戦法だ。先に行き、抜けだし、後方からの追撃を抑えるというのは最強馬だけが出来る王道戦法だ。強い兄妹である。アンカツの自信も揺るぎない。夢の兄妹対決の可能性が浮かんできた。どちらも傷つけたくないからオーナーはしないと思うけれど。
3連単1着固定はリスクが大きく下級条件戦では怖くて出来ない。いつも根性のないフォーメーションを組んでいる。GⅠなら出来る。負けはしたが悔いのないのに救われる。あのナリタトップロードの仔と心中したのだから。
菊花賞はロックドウカンブの1着固定でゆく。
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●敗戦記──菊花賞──ロックドゥカンブ1着固定
ロックドゥカンブ1着固定の3連単勝負。
「心配なのは鞍上の柴山だけだ」と、この馬を本命にした予想家が口を揃える。たしかに不安だ。だが岩田のデルタブルースの例もある。柴山の不慣れを、半年遅れ、南半球生まれのこの馬の強運が克服すると確信して1着固定。
というかこのレース、あちこち手を広げたらきりがなくなる。思いこみで行くしかない。
連下候補。一番手はトライアルを勝った実力馬のドリームジャーニー。母父がマックイーン、父がステイゴールドだから血統的には長距離馬だが体系的にはマイラーのように思う。去年九月の芙蓉ステークスから何度も関東で見ている。8戦中6戦が関東なのだからなじみ深い。鞍上が大嫌いなエビナなので軽視してきた。それで朝日杯も外している。皐月賞もダービーも無視。でも武に乗り代わり前走の鮮やかさを見せつけられると話は違う。いかな武でもこの馬で菊花賞を勝つことはないと思う。だけど必ず上位には来るだろう。彼の腕で。
次いでアサクサキングス。ダービー2着馬は菊花賞に強い。ホワイトマズルだから距離も問題なし。出来るなら鞍上は福永がいいが四位も以前乗っていたし、トライアルでも2着しているからだいじょうぶだろう。この馬、好きでも嫌いでもないが、ここは候補に入れねばならない。
3番手にアルナスライン。この馬も正月に中山で見ている。同期生とのトライアルを捨て、京都大賞典3着という別路線は毎回嵐を巻き起こす。セイウンスカイはここを勝ってスペシャルウィークとの決戦に臨んだのだった。若駒なのに天皇賞馬のメジロブライトを負かしているのだからあの世代は強かった。テイエムオペラオーもここから始動した。3着だった。古くはテンポイントも神戸新聞杯、京都新聞杯を完勝するトウショウボーイとは別路線のここで3着して菊花賞に進んだ。3着に敗れるのに、テンポイント大好きの杉本アナは「ここはこれで十分だ、テンポイント!」と叫んでいた(笑)。あれほどの私心丸出しに匹敵する実況は、内藤亀田戦のアナぐらいである。
馬の臨戦態勢もいいし、もうひとつ「長距離の和田」は信頼できる。いいジョッキーだ。
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オペラオーで取材したとき、私はオペラオーがいなくなったら和田騎手は苦労するだろうけど、三十歳ぐらいには是否とも大成して欲しいと失礼なことを言ってしまった。そのときの私にはオペラオーがいなくなったら、彼はしばらくGⅠとは無縁のように思えたのだ。言下に彼は「いえ、来年にはもう」と言い返してきた。勝負師である。強気の固まりだ。失礼なライターの質問を即座に否定した。
しかし残念ながらそれ以後彼にGⅠ勝ちはない。今年、私の願った三十歳になった。大成の時期だ。
むかしデビュウ以来GⅠ勝ちがなく、やっとタマモクロスで天皇賞を勝った南井が、そのことを問われ、「騎手は、強い馬に出会えれば誰でもいつでも勝てるんです。たまたまいままでそんな馬と出逢わなかっただけで」と言い返していたことを思い出す。強い口調であり信念だった。南井が言いたかったのは、自分は業界に係累がなく強い馬、評判馬に乗せてもらえなかったから、たまたまいままで勝てなかっただけだということだった。その意見の裏には、一族が多くよい馬を回してもらえる騎手への憤懣がある。タマモクロスも評判馬ではなかった。なかなか未勝利すら勝てなかった安馬が突如として変身する。だから南井が乗れた。
和田が次にGⅠを勝つのはいつだろう。今回勝てるとは思わないがこの馬は無視できない。もしも馬連勝負ならロックドゥカンブ、アルナスラインは本線になる。
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ここまでがメイン。あとは気分であり好き嫌いだ。3連単30点買いの予定なのでもうすこし入れられる。
まずサンツェッペリン。勝てるとは思わない。でも父テンビーの100万円の安馬がドラマを作るなら見学料金は払っておきたい。松岡の強気一辺倒も好ましい。
あとはタスカータソルテ。理由は菊花賞トライアル京都新聞杯勝ち馬だから(笑)。まあこんな時代錯誤オヤジがひとりぐらいいてもいい。
もう1頭で悩んだ。候補は毎年2着に来る横山のホクトスルタン。ダービーを1番人気で敗れているフサイチホウオー。青葉賞勝ち馬のヒラボクロイヤル。上がり馬のデュオトーン。ヒラボクとデュオの父はタニノギムレット。ダービー馬ウォッカの父がタニノギムレットだから、その流れもあるのではないかと。つまり、ウォッカは出ていないが、同じ父の仔が来たという……。
悩みに悩んだ末、ホクトスルタンにした。これまた前代未聞の横山の菊花賞2着記録が刻まれるとしたら、参加料を払っておきたかった。
上位人気馬で無視したのはヴィクトリー。近藤夫婦とは関わり合いたくない。
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4コーナーで内に包まれ、出るに出られなくなっている柴山ロックドゥカンブを見て負けを覚悟した。あそこに入っちゃダメだ。でも内枠で、あの位置取りならああなるか……。
寒気がするほどかっこよかったのが武豊。4角から一気にまくって行く。あの位置取り、あの脚いろ、なんてかっこいいんだ。ああ、ドリームジャーニーに勝たれる、と思った。馬券は外れるがあんなかっこいい仕掛けに負けるなら負けて本望とすら思った。なのに意外に伸びず5着だったのだからやはり3000メートルの馬ではないのだろう。前走の2400も武の腕で勝ったようなものだ。
アサクサキングスとアルナスラインの叩き合いは壮絶だった。アルナスラインが勝てば和田はオペラオー以来のGⅠ勝ちとなる。三十歳にして新たな地平に立てる。だが勝利の女神は新ダービージョッキーの方にほほえんだ。
私はロックドゥカンブだけを見ていた。内のごちゃごちゃをやっと抜け出してきたロックドゥカンブは、3着に追い込むのがやっとだった。武の得意な「菊花賞、イン突き」を柴山がマスターしていたら、楽々と突き抜けて勝っていたろう。柴山の初めての菊花賞という不安が的中してしまった。
もしも私が武豊ドリームジャーニーを本命にしていたら、外れたけれど悔いはなかった。思った通りの騎乗をしてくれたからだ。馬も人も精一杯力を出し切っている。ロックドゥカンブがそうでないところがすこし悔しい。だけどその武豊だって先週は納得できない4角最後方の競馬をしているのだ。
(私と同じくベッラレイア本命だったある評論家が、あの騎乗を「武君、芸術しちゃったね」と評していた。ごく普通に乗れば2着3着にはなれたかもしれない。でも武はそんな安易な方法ではなく、ダイワメジャーとウォッカを鮮やかに差し切る芸術的騎乗にはしったらしい。たしかに他の馬が止まって見えるかのような鮮烈な追い込みだったが、どこかに計算違いがあり届かずの4着だった。)
だから愚痴は言うまい。そうなることもあり得ると覚悟しての1着固定本命だった。この馬、順当に育ったら来年は大仕事をやる。
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配当が意外につかなかった。たった2万7千円である。ロックドゥカンブとアサクサキングスの2頭軸マルチで買った人が大勢いたのだろうか。最近の3連単の配当の低さ=競馬ファンの3連単馬券上手、には、驚かされる。発売当初だったら、武が消え、ロックドゥカンブが3着だったのだから、もっともっと荒れていた。
そしてまた逆に馬連、馬単がつくことにおどろく。馬単は6300円である。このレースの真の馬券勝利者は、何十点も買って3連単を当てた人ではなく、絞ってこの馬単をとった人だろう。
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●敗戦記──天皇賞・秋──武豊メイショウサムソン1着固定
武豊メイショウサムソン1着固定。2着にペリエ・ポップロック。相手5頭。3着にポップロックで2着候補に5頭。以上、3連単10点勝負。大好きな騎手二人を軸に出来るのだからこんな楽しいGⅠもない。
ペリエのコメントで思い出すのはジャングルポケットで勝ったジャパンカップだ。「タケさんに着いていったから、タケさんのおかげ」と、にこにこしながらそればかり言っていた。このことは競馬の欄に「柏木さんのペリエ論」としてまとめてある。柏木さんによれば、ペリエはヨーロッパとは全然流れの違う日本の競馬ペースをわかっていない。むしろペース音痴にちかいのだとか。だけど、だったらそれに長じる誰かに着いてゆけばいいという知恵がある。それが武だった。その方法であれだけの成績を残して来た。
今回もしっかり武をマークし、2着に来るだろう。万が一3着になったときのことも考え、それも想定する。勝つことはない。勝つのは武だ。
我ながら完璧な予想である。この予想が破綻するのは武メイショウが勝てなかったときだが、それはもうそれできれいに諦められる。予想の最初の読みから間違っているのだ。そういうのは悔しいとは言わない。
武メイショウが勝つと読んだ。武が勝てば必ずオリビエは、おっとおフランス風になってしまったざんす、おフランスではペリエじゃなくてみんな「オリビエ~」と声援するざます。ペリエの乗っていないレースでも「オリビエ~」と声が飛ぶので何事かと思ったら彼以外にもオリビエがいたのだった。フランスじゃ平凡な名なのか。
去年の有馬記念も大本命馬は順当に勝ったが、馬券はある種の波乱だったと言える。立役者はペリエのポップロックだった。
とにかくまあまちがいなく武メイショウが勝つ。そして2着か3着にペリエのポップロックが来る。問題は3着候補と、万が一を假定して2着候補に入れる5頭の馬だ。
自信を持って、いや正直に言うとあまり自信はなくてこわごわだが、それでも思い切って消したのがアドマイヤムーン。
馬は大好きなのだが鞍上が嫌いなので消したのがマツリダゴッホ。サンデー産駒好きとしてはかなり思い切った選択だ。これはいい馬だ。ヨコテンだったら買っていた。だけどエビナだから消し。来たらあきらめる、と決断。
チョウサンも下級条件馬のときから好きな馬だが今回は消す。大殊勲だった松岡が騎乗停止で乗れないというあたりにこの馬の運を見る。
よって、好きな馬、デルタブルース、コスモバルク、シャドウゲイト、ブライトトゥモロー。好きではないがその強さをよく知っているつもりのアグネスアークを選ぶ。これで5頭。
とにかくこのレース、メイショウサムソンが勝つと決めている私にとって、あとは「ポップロックが2、3着に来ること」がすべてだった。
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武豊メイショウサムソンは見事に勝った。王者のレースだった。武はこれで2999勝。さすがにこれが区切りの3000とは行かなかったか。
しかし必ず2着3着に来ると期待したペリエ・ポップロックは4着だった。
位置取りが悪かった。フジテレビ解説のヨシダヒトシさん(ポップロック本命)も、「位置取りが後ろ過ぎた、いくらなんでもあそこからでは届かない」とペリエの位置取りの悪さを責めていた。
ただ、メイショウが前に行って抜け出すという全盛期のダイワメジャーみたいな王者のレースをしたから、差し脚を活かすポップロックは、あまり武マークをしたらつぶれたかもしれない。しかたなかったか。でもちょっと後ろ過ぎたと思う。
GⅠ4連敗。でも初めて1着固定の馬が1着に来た。希望的。
競馬を知らない人は4戦4敗を心配してくれているようだが、大丈夫。3連単勝負だから1勝9敗でもプラスが可能。もちろん10戦10敗ではたいへんなことになる(笑)。枠連の時代だったら、最低でも1勝1敗のペースで行かないと「秋のGⅠ総合プラス」は無理だった。
4戦の中で今回がいちばん自信があったので、この外れはちょっとショックだ。
3連単は18万馬券。この高配当はわかる。誰もがメイショウ以上に3着以内は確実とアドマイヤムーンを重視していたのだ。おそらく3連単をこまめに分析すると、アドマイヤムーン絡みが中心のはずである。そういう馬が消えると1番人気が勝っても簡単にこんな配当になる。
外れたが今回の10点勝負は気に入っている。
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【附記】
3時40分からのレースで負けて、すぐに書き出し、4時20分にUP。すごく早い(笑)。これじゃまるで記者の速報だ。
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【附記・2】
柴山エイシンデピュティが降着。五十嵐コスモバルクも斜行で福永が激怒、と問題の多かったレースのようである。
福永カンパニーは大きな不利を受けての3着で激怒だから、それがなかったら2着もあったってことか。となるとますます当たるはずのないレースになるから諦めもつく。
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◎的中記──アルゼンチン共和国杯──『東スポ』のこと、コスモプロデュースのこと
11月3日。土曜夕方、新聞休刊日で『夕刊フジ』がない。『日刊ゲンダイ』も休み。『東スポ』はあった。買う。久しぶり。
私は競馬を『東スポ』で覚えた。強い物が好きなので競馬はシンザンから知っていたが馬券は買ったことがない。上京していちばん嬉しかったのは毎日苦もなく『東スポ』が簡単に買えて読めることだった。田舎時代、30キロも離れた国鉄の駅売店までバイクで走って買いに行っていた。毎日は行けない。プロレスで大きな試合があった翌日のみである。どれほどプロレスが好きだったことか。こうして書いているだけで胸が熱くなる。そしてまた興味をなくした今を思いしみじみとかなしみが拡がってくる。
毎日読むプロレス新聞の『東スポ』が週末には競馬新聞に変る。大レースの時には翌日の見出しも競馬だった。そこから競馬を覚えて行く。読み物として。でもまだ馬券には繋がらない。
ある日、渋谷の喫茶店で、『東スポ』を教科書に馬柱の読みかたを教えてもらった。十九の秋。土曜日だった。先生は読売新聞に就職した宮本さん。一見ごちゃごちゃとしたあの数字にどんな意味があるのかと理解したときの感激は今も覚えている。すべてはあのときから始まった。
私にとって長年競馬新聞とは『東スポ』のことだった。それが獨立して専門紙「レースポ」になる。300円のレースポを買って競馬場に通った。昭和五十年代。思えばむかしから競馬専門紙は高かった。ラーメン一杯よりずっと高かった。競馬ブームで売れまくっていたころは「札を印刷している」とまで言われたものだ。いま秋風が吹いている。驕れるものは久しからず。今後もっと淘汰されるだろう。されてしかるべきだ。
「レースポ」は撤退し、元の『東スポ』の競馬欄にもどる。いまの『東スポ』は120円の中に、410円の専門紙が入っている。この価値は絶大だ。
ところが私は「レースポ」がなくなった時期に『日刊競馬』を愛用するようになっていた。『東スポ』も、いきなり「レースポ」を全面的に取り入れたわけではない。最初はあくまでもスポーツ紙内の競馬欄に過ぎなかった。この時期、私は「レースポ」に代わる愛用専門紙を探さねばならなかった。しかも南関東競馬にまで手を出し始めていた。
それ以前にも『東スポ』は普及している方式を廃した獨自の馬柱を考案したりして試行錯誤していた。その心意気はよかったがこれは大不評で早々にもとにもどる。私もそういう試みは評価しても、この馬柱にはどうにもついてゆけなかった。
廃刊になった「レースポ」に代わって私が選んだのは『日刊競馬』だった。これは地方競馬場に日参するとき、地方競馬用『日刊競馬』を愛用していたことに由来する。私は新聞に色を塗り、あれこれチェックするから紙質の悪いスポーツ紙では無理だった。地方も中央も『日刊競馬』を使うようになる。
『東スポ』が「でもそれ、『東スポ』の記事だからなあ」と笑われることにステイタスを求める路線に走ったこと(そのことで見事に生き残ったのだから成功だったのだろう)もあり、私は次第に『東スポ』から離れて行く。まだプロレスは好きだった。でもかつてなら一面にすべきプロレスの試合があっても、それを中面にちいさく載せるだけで、一面を芸能スキャンダルや人面魚(笑)等にする『東スポ』から次第に興味が失せていった。
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今回買ったのはひさしぶりだ。しかも『夕刊フジ』が休刊だったからしかたなく買ったに過ぎない。本紙予想担当の渡辺さんは今も尊敬する数少ない予想家であるが。
ひさしぶりに見る『東スポ』は、『日刊競馬』と『夕刊フジ』、サンスポに慣れた目には、見づらい新聞になっていた。こんなものである。すべては慣れなのだ。
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その『東スポ』にこんな記事があった。トラックマン情報というヤツである。京都の10レース。京洛ステークス。「調教師が2頭登録に行った。1頭はなんとしても出したい馬。もう1頭は翌週のレースに出したいので、ここで除外になり、翌週のレースの優先出走権を得るのが望み」。それが見事に決まり、勝てそうだからなんとしても出したい馬が通り、もう1頭は望み通り除外になって優先出走権を得た。通った馬で勝負だと。
新聞を拡げ馬柱を見ると、そこそこの成績で前走は5着。鞍上は岩田。でも人気になり過ぎかとインターネットで確認すると5番人気で単勝は8倍、複勝が2倍から3倍つく。買うことにする。情報信ずべし。これはこれでひさしぶりに『東スポ』を買わねば決して接することのなかった情報である。これも縁なのだろう。すなおに乗ってみることにした。
アルゼンチン共和国杯は最愛のコスモプロデュースが出てくる。5枠。買わねばならない。恩義がある。
同枠に夏の新潟で一年半ぶりの復帰戦を40キロ増で勝ったアドマイヤジュピタ。当てた。今年は夏競馬を熱心にやったので馴染みのある馬だ。その後1000万条件を2着、前走で勝ち上がり、今回が重賞初挑戦になる。軸はここ。一点買いなら枠連の5-5だ。といって盲目の愛ではない。コスモプロデュースは全勝ち鞍4勝が東京の府中専門馬だし、実力馬のネヴァブションとトウショウナイトが調子に不安があるなら、アドマイヤジュピタでも勝てるだろう。
馬柱を見ているうちに、狙い目のあるヤマニンアラバスタがただ1頭の牝馬であることに気づく。昨夜、アルゼンチンでエビータを思わせる女性大統領が誕生したことを知った。単勝は18倍。複勝でも3倍以上。買うべし。
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歩いて一分のコンビニに行き入金。IPAT。帰宅するともう反応している。JRAに入れる。速い。もう買える。ほんとにこれは便利だ。今は府中に近い場所だからさほど感じないが、これ、山奥だったら感激ものだ。かつての電話投票がいかに面倒だったか知っているものには。いやかつての電話投票も地方の人には驚嘆ものだったのだろうが。
京都10レース京洛ステークス15番マッチメイトの単複を買う。3番人気まで伸してきた。まずはここで勝負だ。
アルゼンチン共和国杯のほうは、女性大統領からのヤマニンアラバスタ勝負はあまりにベタに感じたのでやめる。来たなら来たで酒席の話題になる。ケントク買いはそんなものでいい。
予定通り5枠からの枠連にする。枠連とは弱気だが、こんなときこそ枠連だ。勝って欲しいのはコスモプロデュース。だけど鞍上が大嫌いなエビナなので安心できない。勝つだろうと思うのは上がり馬のアドマイヤジュピタ。かといってここから馬単勝負するほどの自信もない。だったら2頭が同居した5枠を枠連の軸にする。日本にしかないみっともない枠連は、こんなとき日本にしかないすばらしいシステムになる。
コスモプロデュースの府中4勝はデビュウ戦がカツハル。14番人気だった。3連複32万馬券で窮地の私を助けてくれた。ゼンノロブロイ、コスモバルク、デルタブルースで決まるジャパンカップの日だった。ジャパンカップも本線で当て私の馬券生活では最良の一日になる。この日から意識がなくなった父がくれたプレゼントだったようにも思う。それから二週間後に父は逝く。
2勝目の東京はエビナ。3勝目がアンカツ。4勝目がペリエ。エビナは勝った実蹟はあるのだが、私はどうにもこの人とは相性が悪く、誰が乗ってきても恩義のあるコスモプロデュースは買うのだが、エビナでは大勝負に行く気にはなれなかった。阪神、中山と惨敗しての東京はまちかねた勝負レースなのだが……。
枠連の1-5,2-5,5-5で勝負。
2枠の1番人気ネヴァブションは好きな馬。切れない。同枠に実力馬トウカイトリックもいる。アドマイヤジュピタが2番人気。コスモプロデュース惨敗の確率は高いがこの馬が来てくれるだろう。5枠はだいじょうぶ。問題はコスモが来るかどうかだ。5-5は120倍。これが来ると万々歳になる。
1枠のリキアイサイレンスも狙いだ。前走のオクトーバーステークスは鮮やかだった。こちらの鞍上は大好きな後藤。
思い切って切ったのが武士沢との出世を目の当たりにしてきた8枠のトウショウナイト。下級条件戦のころから買ってきた。現役馬では好きな馬ベストテンに入る。昨年の覇者。馬はもちろん騎手も初めての重賞制覇だった。好きだからわかる。どうみても本調子ではない。昨年の出来ではない。8枠にはカツハルのカゼノコウテイもいて怖いが、消した。
7枠の5番人気ダークメッセージ、4枠の4番人気ダンスアジョイを消す。怖い関西馬。外れるとしたらこれが来たときだ。
枠連3点勝負だがそれなりに決断は要った。
京都10レースが当たったら、そのぶんをヤマニンの単複に入れる。この転がしは楽しみだ。京都はまず当たるだろう。最悪でも複勝はかたい。ヤマニンは来るかどうかわからない。でも左回りは得意だ。楽しみではある。
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テレビでは3時10分からの京都10レースをやらなかった。急いでたんぱを聞く。もう終っていた。レース回顧をしている。するとどうにも感想にマッチメイトが出てこない。来なかったようだ。まず絶対に複勝は大丈夫と思っていたのでこの落胆は大きい。これでヤマニンアラバスタの単複は買えなくなった。
アルゼンチン共和国杯はアドマイヤジュピタが勝つ。強い勝ちかただった。条件馬から連勝で一気にGⅡ制覇。このあとは有馬か。
2着にトウカイトリック。帽子の色で当たったのはわかったが、すぐに1番人気のネヴァブションと同枠と思い出す。3着リキアイサイレンスが2着に届いていたら大勝になったが3/4馬身はあったから未練もない。当たりはしたが単勝1、2番人気の枠連という最低配当になってしまった。いや代役で当たったことを喜ぶべきか。枠連2-5は1040円。
コスモプロデュースは直線でいい位置にいた。もしかしたら、と思ったがそこからズルズル沈む。18頭中17着。いつかまた穴を開けるだろう。その日を待つ。
見事だったのはヤマニンアラバスタ。大外から真っ白な馬体が飛んできたときは、ああやっぱり来た! と勝利を確信した。しかし内で先に抜け出していたアドマイヤジュピタが粘り、トウカイトリック、リキアイサイレンスとの叩き合いまでは届かずの5着。惜しかった。馬券は買えなかったが芦毛の馬体がとんできたときは単勝を買って応援しているかのようにゾクゾクした。
情報信ずべしで買った京都のレースはハズレ。
思いこみで買った東京のレースは当たったが、トウカイトリックが代役で来たという枠連特有の当たり。しかも単複で負けているからたいした浮きでもない。自慢すべきものはなにもない。
それでも当たったから、うれしい。これは真実。
【附記】
京洛ステークスの3番人気マッチメイトは8着。1、2番人気も消えて3連単57万の大荒れだった。JRAのレース映像を見ると、マッチメイトは先行し、わたし的には文句のない競馬をしていた。その他の上位人気馬も同様。ところがゴール前でガラっと変る展開。実況アナも「様相一変」と叫んでいる。1200メートルの芝。「短距離の差し馬」が決まったレースか。ハズレはハズレだが、映像で見て不満のないレースだった。この納得はおおきい。
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◎的中記──エリザベス女王杯──にがい夜……
日曜の朝、東京は雨。深夜からかなりの降りだ。京都はどうなのだろう。
予想は、ウォッカ1着固定、相手にダイワスカーレット、スイープトウショウ、この2頭はしかたない。勝負はウォッカが勝ち、この2頭が消えたときの相手。そのスケベ馬券が3連単の醍醐味。
まずはデアリングハートとディアデラノビア。府中牝馬ステークスで4枠にいた2頭。アサヒライジングとの枠連を一点で仕留めた。勝ったのがデアリングハート、2着がアサヒライジング、ディアデラノビアは4着。的中はしたが4枠の2頭でどちらかに◎を打つとしたらディアデラノビアだったので威張れない。なあに、それが枠連。気にすることはない。
これで4頭。1着固定だから相手6頭で30点。今週はこれで行こう。同じ30点でもバラしたフォーメーションよりスッキリしている。さて、あと2頭。
アサヒライジング確定。馬場が悪いなら先に行く馬が残る。残り1頭。候補はアドマイヤキッスとフサイチパンドラ。馬ならアドマイヤだが鞍上の魅力でフサイチにする。ルメールだ。
むかし、騎手などまったく考慮せずに馬券をやっていた。かわればかわるものである。
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午前九時。IPATに繋ぐ。「ウォッカ取り消し」を知る。焦る。最初から馬券を組み立て直さねばならない。いつも締め切りぎりぎりまで馬券を買わないのに、今回はさっさと上記の馬券を購入して昼酒でもやりながら見ようと思っていた。どうしよう。こんなに混乱するのも珍しい。酒どころじゃなくなった。雨はかなり激しく降っている。
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2歳時からスイープトウショウが大好きだった。なのに彼女が作った大穴馬券をひとつもとっていない。オークスで恥じたのにそれ以後も変ることはなかった。それでいて惨敗するときは本命にしたりする。もう6歳。むかしなら7歳牝馬。いいおばさんだ。ダイワスカーレットとの対決は、人間で言うなら、十八と四十の対決になる。今年で引退だろう。繁殖として成功するだろうか。強すぎるだけにかえって心配だ。
ウォッカが出ないのならスイープトウショウで心中すべきように思う。だけどアンカツダイワをスイープが差し切る映像が浮かんでこない。毎度当たらないのだからこの脳内映像にあまり意味はないのだが。
スイープトウショウ1着固定、ダイワスカーレット2着固定の3連単。
ダイワスカーレット1着固定。スイープトウショウ2着固定の3連単。
相手6頭で合計12点。
ここまではよかったと思う。
しかしそのあと、ダイワの安定味とスイープの力の衰えを考慮して(それは昨年のエリザベス女王杯でもう解っていた。あれは完敗の3着だった)、ダイワ1着、スイープ3着固定の3連単を買い足した。6点。合計18点になった。
角居厩舎のウォッカが取り消したなら同じ角居の武豊ディアデラノビアが飛んでくるのではないか。アサヒライジングが逃げ粘るのではないか。デアリングハートの藤田が……。いつしかスイープトウショウ1着固定の思いは消え、穴馬が台頭する光景ばかりが浮かんでくる。
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1着ダイワスカーレット、2着フサイチパンドラ、3着スイープトウショウの3連単62倍を当てた。買い足した6点……。
土曜日、日曜の資金を作ろうと複勝コロガシをした。三回。コロガシが見事成功して資金が出来た。あのときのよろこび。わくわく感。なのに今回当たったのに喜びはない。
にがい。
飲みたくもない酒を飲み、早々にふて寝した。
惨敗した気分の夜。
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●敗戦記──マイルチャンピオンシップ──馬券はむずかしい
枠順を見て口笛を吹く。大好きなキングストレイルとマイネルシーガルが2枠に同居した。枠連は迷うことなく2枠から行く。なんというありがたい枠だろう。
おまけにこれまた大好きなスズカフェニックスと、好きではないのだが無視できず困ったなあと思っていたアグネスアークが6枠に同居した。これまたラッキーである。もう枠連は2-6の一点勝負。いや2-2と6-6も少々。
3連単は、キングストレイル、マイネルシーガル、スズカフェニックスの3頭軸フォーメーションに、2着候補としてダイワメジャー、スーパーホーネット、アグネスアークを加える。マイネルシーガルが頭でくると楽々と30万馬券になる。
人気馬で切ったのはカンパニー。『日刊競馬』の本誌予想飯田さんと最上段の柏木さんがともに本命にしていた。この二人の本命がそろった馬は消える。何度も役立たせてもらった。逆に分かれた本命同士で決まっておいしい馬券になることも多い。見事に『日刊競馬』のジンクス(正しい用語の使いかた)に嵌ったから自信を持って消し。
これはもう金曜日に出た結論だった。なんの迷いもない。
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土日にあれこれ検討しているうちに、「じつは楽々とダイワメジャーが連覇するのではないか」との思いが強くなる。昨年もダイワ1着固定で当てている馬券だ。なにより私はパドックで見るダイワメジャーが大好きなのだから、昨年当てているのに連覇する今年ハズしたら恥ずかしい。それで今までの予想とはまったくちがった馬券を組み立てた。ダイワメジャー1着固定、2着にキングストレイル、マイネルシーガル、スズカフェニックス。3着にスーパーホーネット、アグネスアーク、である。
このころになって私はキングストレイルの鞍上が田中ではなく岩田になっていることにやっと気づいた。藤沢師はなぜこんなことをするのだろう。キングストレイルは北村か田中でいい。カツハルで京成杯を買っているのになんでテンノリの岩田に変るのだ。こういうのは鞍上強化ではない。キングストレイルと岩田はあわない。たしかにカツハル騎乗でスプリンターズステークスを4着、スワンステークスを2番人気で6着に負けているが、だからこそ京都コースを確かめたカツハルで勝負だろう。スプリンターズステークスのときから1着固定と決めていたキングストレイルに対する思い入れがだいぶ薄まってしまった。
ならダイワ1着固定で行くか。
かといって以前に組んだ馬券も捨てがたい。好配当が目白押しだ。悩んだ末、みっともないがここは二刀流で行くことにした。共通しない馬券を両方買う。
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1着ダイワメジャー、2着スーパーホーネット、3着スズカフェニックス。3連単配当は2万4千円。絵に描いたような見事なハズレ。これまたボックスなら簡単に当たっているが、とにかくボックスはやらないので仕方ない。しかし選んだ馬同士で決まっているのに当たり目がないというのも悔しいものだ。むしろまったくノーマークの馬に来られて外れたほうがすっきりしている。私にとって今年のマイルチャンピオンシップは18頭立てでも実質6頭立てだった。そのうちの3頭で決まっているのに当たっていない。馬券は難しい。
狙いの馬では、マイネルシーガルはいいレースをした。負けは力が足りなかったのだろう。録画しておいたテレビで「競馬エイト」の吉田さんが本命にしていたと知る。なんとなくうれしい(笑)。キングストレイルは岩田に乗り変ったことで私にはもう運がなかったのだろう。スズカフェニックスは追い込んでの3着。あんなものか。武は「前走よりはずっといい。でも最高潮の出来でもない」と言っていた。結果的に正直なコメントになる。
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●敗戦記──JC──競馬情報の是非
天皇賞・秋と同じ買い目になった。すなわち「1着メイショウサムソン、2着、3着ポップロック固定」である。天皇賞・秋のときも自信があったが(ポップロック4着でハズレ)、そのハズレを基礎土台として、今回は自乗の自信。まず間違いない。武マークのペリエは必ずポップロックを2着3着にもってくる。かといってポップロックがサムソンを負かしJC馬になるとも思えない。彼は目黒記念的GⅡ馬だろう。些細な不安があるとしたらポップロックの2、3着よりむしろあまり切れのないサムソンが確実に勝ってくれるかどうかだ。天皇賞・秋が唯一まったく不利のないレースだったことは事実。なにかに巻き込まれたらそれでも抜けているというほどでもない。2000でも強い競馬を見せているけど基本はオペラハウスの重厚さだろう。切れるウォッカあたりに差されるかもしれない。「あたり」と書いたが、とはいえ今回、それが出来る馬はウオッカぐらいしか思いつかない。じゃあやっぱりサムソン優勝に2、3着にポップロック固定で3連単は当たる。
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人気馬で軽視したのはインティライミ。父スペシャルウィークは馬券人生の中でもベストテンに入るぐらい好きな馬だったし、鞍上の佐藤も好きだし、最高の臨戦過程からも嫌う理由はない。あまり活躍していないディープ世代の代表としてがんばってほしいとも思っている。あのインを突いたダービー2着馬だ。
ただ、日本最強馬が二流の外国馬に歯が立たないという、それがジャパンカップだというレースを見てきた私には、レガシーワールドやマーベラスクラウンが軽々と勝ったジャパンカップを容認できない感覚がある。インティライミも馬の格としてその範疇にはいる。日本のGⅠをひとつも勝っていない馬がその他もろもろのGⅠ馬を負かしたら、ジャパンカップとはなんぞや、になってしまう。まして今回はGⅠ馬のサムソン、ウォッカ、ムーンがいる。(いきなりムーンと書くといがらしみきおみたいでわかりづらいな。む~ん。)デルタがいる。、コスモがいる。ヴィクトリーがいる。GⅠ勝ちのないドリームパスポートでもインティライミよりは格上だろう。ここでインティライミがいきなりJCを勝ったら、JCとはなんだろう、GⅠホースの格ってなんだろう、になってしまう。いやもうなっているし、どうでもいいんだけどね、でもわたし的にはそこにこだわりたかった。だから軽視した。
一時真剣に「ポップロック1着、サムソン2着、3着固定」の馬券も考えた。しかしインティライミに関する前記のリクツで、いくらペリエでも、いきなりポップロックがJC制覇ではあるまいと1着固定は消した。(假に買っていてもポップロックはアドマイヤムーンを交わせなかったから外れていたことになる。)
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タイトルの「競馬情報の是非」とは、2着馬3着馬を検討しているときに知った「データ」だった。「JCで、6番人気以下の日本馬が馬券に絡んだのは、53頭出走して3着が1頭のみ」と知る。ああそう、人気薄の日本馬は来ないんだ。
サムソン1着固定、ポップロック2、3着固定だと配当が低い。これでなんとしても高配当を射止めたい。とすると2着と3着に穴馬を入れねばならない。私が自力で選んだ穴馬はデルタブルースだった。出来がよい。大外は菊花賞と同じでゲンがいい。JC3着の実蹟もある。まったく人気がない。14番人気。10-2-18の700倍。10-18-2の1600倍が本線である。
あとはわからない。高配当を狙いたいがどうすればいい。そのとき前記のデータを知った。拡大解釈する。「6番人気以下の日本馬は来ない」とは、「外国馬は低人気でも来る」ということだ。そうかそうか。思い出すのはスペシャルウィークの勝ったJCである。2、3着に低人気の外国馬が来た。馬連でもう2万馬券だった。12番人気の香港馬(7歳セン馬)がモンジューに先着すると誰が思ったろう。
そうか、サムソンとポップロックの下、あいだには人気薄の外国馬を入れればいい。人気薄の17番が来れば千倍以上になる。と、そういう馬券を組んだ。配当から馬券を組むという最低の方法である。こんな買いかたをした時点で私はもう負けていたのだろう。
こういう場合、2頭の馬単、馬連勝負、あるいはさらに万が一のことを思って「ワイド一点勝負」という手もある。でも3連単の時代、軸を決めて、「あとは何が来てもいい」という高配当狙いが楽しい。(いま調べたら2-10のワイドは230円。1番人気だった。これじゃ大金を突っ込まないと一点勝負でも話にならない。)
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逃げたチョウサン、抜け出たアドマイヤムーンを残り100メートルで一気に交わすかと思ったサムソンがもたついている。外を回った分、前回ほどの伸びがない。背中が寒くなった。ここで私の馬券は外れた。サムソンが1着でなければ何がどうなろうとハズレである。どう考えても勝てる脚いろではない。こういうこともあろうと覚悟はしていたが画に描いたような「府中2400向けの馬ではないサムソン」が出てしまった。
1着アドマイヤムーン、2着ポップロック、3着メイショウサムソン。私がこの馬券を当てるには「サムソンとポップロックの2頭軸マルチ」しかなかったことになる。2頭軸マルチの相手5頭、30点買いで1万5千円を当ててもしょうがない。よくやるけど。
「なにかダークホースが飛んでくる」と読んだのに、何も来なかったのだから完敗だ。さして悔いもない。
中山の2500ならメイショウサムソンで堅いだろう。ポップロックも得意だし、もう今から買い目は決まっているようなものだ(笑)。でもこれもつかない馬券だ。断然人気だろう。
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今回もペリエは見事だった。馬の行く気に任せて先行し、4角では内に入ったが、いつものようしっかりと馬場の真ん中を行く武を捕らえていた。馬体を併せて行く。私はそのときにもう「出来た!」と思った。だが肝腎のサムソンがとまってしまった。
ポップロックは内から先に抜け出したアドマイヤムーンを捕らえきれなかったが、もしもミスというなら、勝つのはサムソンと決めつけて勝負に行ったからだろう。でもそれは正しい。ペリエでなければ出来ない騎乗だ。
アドマイヤムーンの勝利は至極当然である。それだけの実力馬だ。サンデー肌にエンドスイープというアドマイヤムーンは、パドックで見るたびにほれぼれするいい馬だった。私がアドマイヤの馬で惚れたのは瞳がかわいらしかったアドマイヤコジーンに次いで2頭目である。
ドバイと宝塚記念とJCを勝ったすごい馬だ。これで種牡馬入りするらしい。いい種馬になって欲しい。アドマイヤコジーンが安田記念を勝ったとき(後藤の初GⅠ制覇)後藤がオーナーと抱き合って泣いていたが、今回は岩田が抱き合っていた(笑)。いいシーンである。
いま「敗戦記──天皇賞・秋」を読んだら、「今回は思い切ってアドマイヤムーンは消し。激走は次走だろう」と書いている。だったら買え。
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角居厩舎は3頭出し。JCに3頭出しするだけですごいが、それがみな2着、4着、5着と敢闘したのだからすばらしい。5着に来たデルタブルースはやはり体調が良かったのだろう。有馬でもそこそこ人気になりそうだ。
サムソンと並んでウォッカがあがってきたときはワクワクした。あのメンバーの中で4着は立派。高校生の女の娘が二十代、三十代、四十代の男と競走したようなものだ。
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JCが当たったらつっこむはずだった買えない最終レースの結果が、見事に予想通りに決まり3連単が12万馬券。じつはこれがいちばんつらかった。
私はGⅠを見(ケン)して最終の条件戦で勝負したりすることが多い。でもそれはそのGⅠが見えないとき。今回はサムソン1着に自信があったのでそれは考えもしなかった。資金を残しておくべきだった。
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