へたれ馬券記録



05/2/20
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 フェブラリーステークス敗戦記

 きょうはメインしかやるつもりはなかった。そこに絞って賭けて、とりあえず3万を10万にする予定である。
 午後2時20分競馬場着。
 電車の中でずっとサンスポと報知を読み続けてきた。そうしてどうしても10レースが無視できなくなっていた。アメジストステークス。先週1番人気で5着に敗れたアサクサキニナルが連闘で出ている。鞍上は岡部にチェンジ。勝負掛かりだ。先週ここからいって負けている身としてパスは出来ない。1番人気の武豊ダイワレイダースも抜群の出来。前走は武を鞍上に京都で1番人気3着に敗れている。重がうまい。勝つのはこれだろう。あとは牝馬のヤマニンアラバスタ。昨年九月、紫苑ステークスで1着降着になっている。それ以来の江田照が乗ってきた。これも勝負掛かり。だれもがそんなとはわかっているからこの3頭がそれぞれ1.2.3番人気。
 気になるのは成績からも狙い目はなくどの新聞でも無印の12番シゲルゴットハンドが4番人気だったこと。表示当初は9倍で、やがて票数が増えると同時に落ちていったのだが、こういうのはいわゆる関係者の票が入ってるってヤツだ。無視は出来ない。
 武ダイワレイダースから馬単で4点。ダイワ1着固定、2着にアサクサ、ヤマニン、3着に4頭選んでの3連単8点勝負。
 武は完璧な騎乗で圧勝。岡部アサクサがすいぶんと後ろの位置取りで冷や冷やしたが無事2着につっこんでくる。3着に復調気配のタイガーカフェ。馬単1760円、3連単5740円的中。シゲルゴッドハンドは5着に来ていた。こわい。
 が恥ずかしながらこれ、やる予定のなかったレースだったので200円ずつの購入。勝負の3万円以外にあまっていた小銭でやった。投資2400円が1万5千円になる。ここに2万4千円入れておけば15万になって目的達成だった。なさけない。それもこれもよけいなものに手を出して失敗するのできょうはフェブラリーしかしないと新聞を読まなかったから。こんな日もある。


 フェブラリーステークス。今年初のGⅠとあって小雨交じりの天候ながらパドックはたいへんな混雑。やっぱりみんなGⅠが好きなんだな。
 一目見て気になったのはアドマイヤドンの元気のなさ。なんだかしぼんでしまっておじいさんになったよう。あとで識者に問うとあの馬はいつもあんなふうだというのだが、でもまったくオーラが感じられない。ルドルフとオペラオーのGⅠ7勝をこの馬が更新するとは思わない。だいたいがGⅠ7勝といっても地方の統一GⅠが含まれていたりして格落ちだ。ルドルフとオペラオーとは内容が違う。すべての相撲記録を塗り替えた最強の談合横綱・千代の富士は大鵬の優勝回数32回にだけは遠慮して31回でやめた。それと同じ事が馬社会にもある。ルドルフ・オペラオーのGⅠ7勝を超えられるのは、だれもがそれに納得する馬だけであろう。さしずめ無敗でダービーを勝つことが最低条件になるだろう。今回アドマイヤドンの勝ちはないと前々から決めていた。だが2着はある。
 頭はメイショウボーラーと決めている。それに迷いはない。パドックの気配で真っ先に選んだのは5番パーソナルラッシュ。7番シーキングザダイヤ。買うつもりはなかったのに12番ハードクリスタルの出来がよく見える。
 フォーメイション勝負。1着メイショウ固定。2着にパーソナルとシーキング。3着に5頭。これが厚め。あと押さえに3着にタイムパラドックス等パドックでは無視した4頭を追加した馬券を少額で追加。残金でメイショウからの馬単を買う。それで3万。
 これで大楽勝のはずだった。結果的にu言うとこの買いかたをしていたら馬単、3連単とも的中である。が、が、が、オロカモノはここから迷う。
 アドマイヤドンの勝利はなくてもやはり2着はあるのではないかと考え始めたのだ。2着候補に3番を追加する予算餘裕はない。とするとどちらかを削らねばならない。5番パーソナルか7番シーキングか。だいぶ悩んだが、私はペリエ騎乗で世間的にもそこそこ人気であり前々から狙い筋でもあったシーキングより、まったく意識していなかったのにパドックで訴えるものがあったパーソナルを選んだ。痛恨の二者択一。
 結果、メイショウ完勝。アドマイヤ出遅れての5着。2着シーキング。3着ヒシアトラスで120倍。迷わなければ当初の豫想で的中、24万になっていた。毎年フェブラリーではこればかりやっている。書斎豫想で当たっているのだが現場で馬を見て変更し外れているのだ。だが馬を見て当てるのはデータ豫想とは快感の度合いが違うのでどうしてもこっちに走ってしまう。

 ほんのすこし救いもあった。馬単がメイショウ・シーキングの1540円を的中していたから被害が半分ですんだのである。さらには10レースの儲けもある。この時点では財布はほとんど痛んでいない。

 ということで予定になかった最終レースに突入。といってこれもまったくの無前提ではない。たとえばこれが私の最も苦手とするダートの長距離だったりしたらやらなかった。たまにダート2100が最終に組まれたりする。だったら負けが半分ですんだだけでよしとして帰路についた。いやほとんど負けていない。しかし得意の芝1400。しかもここのところずっと追いかけては外しているタツショウワ、ウインドヴェインが出ていたのだ。私には勝つときも負けるときもよく見えてしまう馬がいる。いわば好みの馬体だ。この2頭は現役馬ではそれに当たり、毎回惚れ込んで買っては負けている。ここ一年馬券はセミリタイア状態だったのだが、昨年の11月下旬からけっこう通っている。この2頭とはよほど縁があるらしくここ3走ほど間近に見ている。そして3走とも買い外している。だって2頭とも大負けなんだもの当たるはずがない。
 その2頭がフェブラリーで負けた最終に出てきた。もう競馬の神様が行けと言っている。ひさしぶりに貯金をどんとおろしなさいと肩をたたいている。ゆきました。この2頭軸のマルチ。2頭とも人気薄だがそれほど根拠のない無謀でもない。たとえば報知にはこんな豫想があった。《3連単の寺西豫想=「ここはデータ重視で1000万クラスですでに2勝をあげている馬、オレハマッテルゼ、タツショウワ、グランリーオ、トールハンマー、ウインドヴェインの争いと読む》
 データ的には格上なのだ。問題は体調だけ。それはいいと私は読んだ。もう人気薄2頭軸だから3000倍5000倍は当たり前。百万馬券もあったはず。2千万も払いもどし受けたらバッグに入るかなと心配した。
 勝ったのは断然人気のオレハマッテルゼ。これは私もそう思っていたから3連単豫想の相手筆頭にしていた。2着がトールハンマー、3着がグランリーオ。「寺西の豫想」大当たり。彼が名をあげた有力5頭のうち私の選んだ2頭が消え、あとの3頭で決まった(泣笑)。まあ3頭は上位人気馬。私の選んだのは人気薄。しかたない。考えようによっては狙いはわるくなかった。壮絶に散ってスッカラカン。とにかくこの馬が勝つときは馬券にせねばならない。意地だ。


【附記】1着固定でいいのか!?
 サトシのブログ「闇夜の卍固め」を読んで思った。ぼくは「2頭軸」やフォーメイションにこだわりすぎていたようだ。勝つのはメイショウボーラーと決めていたのだから、それの1着固定に相手として「パーソナルラッシュ、シーキングザダイヤ、ヒシアトラス、ハードクリスタル、おまけでアドマイヤドン」の相手5頭20点でよかったのだ。1頭軸1着固定というこういう買いかたがあるのを忘れていた。(2/21)
05/10/2
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  スプリンターズステークス

 考えに考え抜いて結論を出し、部屋でマークカードを塗りつぶし、WINSに向かう。

 1着⑬サイレントウイットネス、2着④デュランダル固定。
 3着候補──⑤ケープオブグッドホープ
            ⑥シーイズトウショウ
         ⑦シルキーラグーン
             ⑧プレシャスカフェ
         ⑫アドマイヤマックス
 の5点勝負。
 WINSに着くとちょうどパドックを映していた。すぐに購入するかと思うがとりあえずパドックを見ることにする。
 今夏、実験のため毎週缺かさず通い詰めた福島新潟開催で、こういうふうにテレビのパドックを見て、軸馬や3連単の連下を変更したことが何度かある。勝敗の影響度合いはちょうど半々。
 アタマ候補の1,2番人気馬をどっちにするか決めないまま行き、パドックを見て自信をもって2番人気馬にしたら1番人気に楽勝されたこともあれば、データ的なチェックではまったく引っかかってこないのだが、どうにもいい気配に見え、3着候補に加えたら見事に突っ込んできて4万馬券を当てたりもした。両刃の剣だ。

 きょうはGⅠということからたいそうな混雑であり、時間も差し迫っていたのでゆっくりは見ていられない。確認したのはシーイズトウショウの馬体重30キロ減。
 こういうおおきな馬体減の原因はふたつ。ひとつは乾坤一擲の大勝負に来たとき。究極の仕上げ。もうひとつは疲れが抜けていないとき。シーイズトウショウはスプリントレースをレコード勝ちを含む連勝中。そして三ヶ月の休養明け。どうみてもこれは疲れのほうだ。急仕上げとも伝えられている。消すことにする。これはちょっと勇気がいった。というのは全出走馬で好きな馬は一にデュランダル、二にシーイズトウショウだったからだ。もしも来られたら、と不安になる。
 オッズペーパーを印刷し、ふだんは気にしない馬体重なんてのを意識したら、アドマイヤマックスも16キロ減だ。これも消すことにする。これは未練なし。

 代わりに①小牧太のゴールデンキャストと⑯ヨコテンのギャラントアローを3着候補に加えた。
 結果、力強く抜け出したサイレントウイットネスの完勝に、後方から突っ込んできた名刀デュランダルの切れ味。そこまではよかったが3着にアドマイヤマックスで、典型的な「よけいなことをしなければ……」となった。

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 当たっていた33倍を逃したがまったく悔しくない。
 理由その一は、アドマイヤマックスが好きではないこと。これで好きなシーイズトウショウに来られたら、日頃まったく無視している馬体重なんてものに振り回された自分に臍を噬んだろう。外れて悔しいより好きな馬を信じなかった惨めさが辛い。
 馬体重にこだわるのは愚だ。減ってようと増えてようと来るときは来る。来ないときは来ない。さんざん経験してきた。一番の証拠は本家はそんなもの気にしていないってことだ。パドックで「12キロ減か、ちょっと細いな」なんてしたり顔で言ってる人を見るとバッカじゃないのと思う。
 馬体重で消したのは表向きの理由作り。3連単なら最低でも100倍は当てたい。右回りは巧くなくて惨敗の可能性もあり、かといって鞍上武豊でGⅠ高松宮記念を勝っているのだから無下には出来ないという、非常にあやふやな人気馬であるアドマイヤマックスを切りたかったのだ。敗れて悔いなし。さすが武だ。
 これが理由のその一。でもその重みは10%もない。大半はその二。

 負けて悔いなしといっても、これでむかしのようにメイン一発勝負で30万だ50万だとやっていたなら、最低でも1万は買っていたろうからたとえトリガミでも逃した30万は大きかった。これまた何度やったことか。50万買って33万の払いもどしに悔しがるどころかほっとしたりしていた。今はそうではない。小銭のコロガシだ。
 外れて悔しくない理由のその二は、決め事通りこれでドボンとして買わなかったのだが、最終レースが結果的に外れていたこと。これがほとんどすべて。
 いま私のやっているのは小銭でスタートする「メインと最終のコロガシ勝負」である。
 詳しくは別項とするが、二段ロケットであるから、ここで当たっていても、全額つっこむ最終の17万3連単を外しているから、結果的にオケラであることにかわりはないのである。スッキリしている。これでメインをこういう理由で外し、買わなかった最終が大本線の200倍で決まっていたりしたら、なんで馬体重なんか見たんだろうと今頃熱を出してうなっていた。こんなことを書いている餘裕などあるはずもない。

 むしろ最終の17万馬券は、フォーメーション24点購入予定で外しているが、気になる馬を足して2頭軸マルチ30点にすると当たっていたと、まったくの人気薄の2着馬にチェックを入れていた自分に妙な自信が湧いて来ている。
 先週の馬場まで行ったオールカマーもそうだった。まずは第一弾のメインをホオキパウェーヴからの馬単で28倍を当て、それを第二弾の最終に全額入れた。これも28倍を当てた金を入れるので24点に絞ったのだが、最後の最後に絞って消した馬に3着に来られて270倍を逃した。30点にすれば軽く大勝だった。しかしそれは決め事だらフォームは守らねばならない。

 ただ今の時代の金言として、「買い目はケチるな」と言えそうだ。
 小心者の私は、低配当の枠連しかない時代、外れたくなくて、勝負の3点馬券を、5点や7点に買い足して行き、トリガミや儲けなしをよくやっていた。今は馬券の種類が違う。配当が違う。私のような小心者にはいい時代になった。
 100万馬券をとった人が取材に応えてボックスの370点買いとかそんな戦術を披露していた。そこまで行く気はないが、3連単30点勝負のとき、気になる馬がいたら、迷うことなく1点あたりの金額を下げても42点、60点にすべきだろう。そういう時代である。
 私の場合、パドックの直感以外は極めて理詰めで追いつめているから、100万馬券は無理だが、今夏の実験結果通り、コロガシ成功は目前と確信している。
05/10/16
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 完敗予想──秋華賞

 トライアルのローズステークスを観て確信した。本番の秋華賞を勝つのはラインクラフトだと。
 福永はマイラーだと言われるラインクラフトが2000メートルをもつかどうか自信がなかった。それで脚を計るような乗り方をした。ゴール前、後ろから来た武エアメサイアに差されたが、あんな乗り方をしたのだから当然だ。上々の2着だった。あれで後続に一気に詰め寄られて5着ぐらいに負けたら、陣営は秋華賞を取りやめてまっすぐマイルCSに向かったろう。

 ラインクラフトは2000メートルOKと結論が出た。本番は餘裕を持って乗れる。トライアルのような早めに抜け出し逃げ粘れたらもうけもののような乗り方はしない。する必要がない。それこそさあ来いと武の追い出しを待って一騎討ちにもちこみ、見事にエンドスィープの切れ味で一蹴するだろう。

 と結論した。自信満々だった。ラインクラフト、エアメサイアの1,2着固定の3連単勝負である。 当日になり、1着エアメサイアの馬券も買いたくなる。なにしろ鞍上は武だ。エアメサイア、ラインクラフト1,2着のラインも押さえるべきではないのか。その弱気を無理矢理押し込める。いかな武といえどラインクラフトの切れ味にはかなわないと。牡馬との戦いになるNHKマイルCでもラインクラフト1着固定だったではないかと。
 3着候補にはもちろんニシノナースコールは入っていた。

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 結果、まるでローズステークスの再現フィルムを観ているかのようなレース。悪夢。完敗。
 ローステークスを観たときから勝つのはラインクラフトと決めていたのだから悔いはない。3着候補に4着になった人気薄のオリエントチャームを持っていたから、これが届いて万馬券だったらすこし悔しかったか。いや頭をかきむしったろう。なんだか3連単の30倍はキレイサッパリどうでもいや。

 エアメサイアは桜花賞の時ラインクラフトと2頭軸マルチで行ったら4着だった。外に持ち出した武の下手な乗り方である。
 オークスはシーザリオ1着、エアメサイア2着固定で行って当てた。これは武、満点の騎乗である。勝ったシーザリオが怪物だ。でも3着にも3番人気馬が来て堅かったのでたいしてもうからず。あれも30倍だった。どうでもいい。
 今回の負けでエアメサイア絡みは負け越し。好きな馬、騎手なのにどうも相性が良くない。
 これで武は福永に今年のGⅠ4勝で並んでしまった。来週ディープインパクトで追い越すことは確実。やっぱり最後は武か。

 馬券が外れたことに文句はないが、福永のあの乗り方はないだろう。あれじゃローズステークスとまったく同じだ。なんで武を待っていなかったのか。武を待ち、一騎討ちに持ち込んだらぜったい負けないという自信が福永にはあったはずである。なぜあんなに焦ったのだ。根底に距離不得手の意識があったのか。疑問である。並んだらラインクラフトはエアメサイアには負けなかった。わからない。なんであんな臆病な乗り方をしたのだろう。
 武は相手の強さを認め、満点の乗り方をしないと勝てないと言っていた。満点の乗り方とは私の言いかたで、実際は「ひとつのミスも許されない」だったか。そしてその騎乗をした。
 追い切りのあとの記者会見で、福永は「馬はあちらのほうが強いけど、なんとか騎手の腕で逆転したい」と武が言ったと暴露し、「武さん、かなりキツいんですよ」と記者連の笑いを誘った。
 私はそのことも含め、その武の腕ですらどうしようもないラインクラフトの切れ味を期待した。どうにもあの福永の乗り方には納得しがたい。ラインクラフトの能力にいちばん自信をもっていたのは福永だ。だけどあの乗り方は距離に自信のない乗り方ではなかったか。

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【附記】 スティルインラブにスティルインラブ

 府中牝馬ステークスでスティルインラブ最下位。17頭立て17着。引退させてやれよ、なんで三冠牝馬をそんなにこきつかうんだ。恥をかかせるんだ。取り返しのつかないことになるぞ。いい繁殖の条件は使いべりをしないことだろう。

 と書いて、もしかして会員制の馬で6歳(いまの表記だと5歳か)まで走らねばならないのかと思う。むかしのダイナがそうだった。
 が確認するとノースヒルだ。だったらもう4歳三冠で繁殖にあげて仔を楽しみにする方が正道だろう。先輩メジロラモーヌは三冠のあとの有馬を花道にしている。マエコーさんよ、なにを考えているんだ。そんなに台所が苦しいのか。

 大好きな馬だけに私にも「今度こそ」と思う気持ちがないでもないが、いいかげんにしてくれ。あまりにつらい。
(なお私は彼女の敗退したレースで馬券を買っていないので、これはいわゆる馬券を外した恨み辛みではない。まあ誤解する人もいないと思うけど。念のため。)

03年牝馬3冠スティルインラブ引退

 03年にメジロラモーヌ以来17年ぶり史上2頭目の牝馬3冠を達成したスティルインラブ(牝5、栗東・松元省)が、現役を引退し来春から繁殖牝馬になることになった。

 当初は来週のエリザベス女王杯に出走し、それを引退レースとするプランを立てていたが、前走の府中牝馬S(17着)のレース中に肩の筋肉をひねったことから同レースを回避した。松元省師は「牝馬3冠を取ってくれたし、十分走ってくれた。いい子供を出して欲しい」。今後はいったん鳥取県の大山ヒルズに放牧に出され、来年1月に京都競馬場で行われる予定の引退式に備える。その後は生まれ故郷である北海道門別町の下河辺牧場にもどり来春の種つけに備える。通算16戦5勝。G1は桜花賞、オークス、秋華賞の3勝。総収得賞金は4億3777万8000円だった。(ニッカンスポーツ11/2)

07/2/18

 フェブラリーステークス2007

 朝まで激しい雨。朝の7時に寝て10時に起きる。うつらうつらしつつ将棋番組を見る。
 11時半出発。雨は上がり日が差していたが、ポツポツと雨粒が落ちてくる。
 駅まで自転車。これからこんな生活が続くのか。

 今年最初のGⅠなので府中は混んでいた。いつもならガラガラの6階のトイレが行列だったのでおどろく。世間的にはそんなにGⅠてだいじなのか。今年はほんと、重賞のない土曜日に皆勤し、GⅠの日曜は昼酒をやりつつテレビ観戦というひねくれもの路線を歩もう。GⅠの日は混んでいてすこしもたのしめない。人混みをかき分けて報道陣用の席に行くまでがたいへんだ。

 フェブラリーステークスの本命はブルーコンコルド。JCDでも東京大賞典でも迷うことなく本命にしてきた。私好みの馬体なのである。JCDでの前が詰まっての敗戦はしかたないとしても、1着固定で勝負した東京大賞典でクーリンガーを加えず19万馬券を逃したのは痛恨の極み。1着固定の相手5頭20点勝負だった。あれを6頭にして30点にするとクーリンガーが加わった。馬群を突き抜けてブルーコンコルドが獨走状態になったとき快哉を叫び、懸命に2着に粘る真冬の芦毛を買っていないことで蒼ざめた。思い出すだけで悔しい。あれで190万作っていたら暮れから正月の生活が変っていた。

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 今回もブルーコンコルドを1着固定にして3連単を買う。
 次に同じく気配最高のサンライズバッカスとの2頭軸マルチを買う。
 サンライズバッカスが勝ってブルーコンコルド2着、ビッググラス3着。マルチのほうが当たって5万4千円的中。

 簡単な的中のようで実は冷や汗もの。1着固定を買い、そのあと7番ブルーコンコルドと12番サンライズバッカスの2頭軸マルチを買った。窓口を離れた後、馬券を確認したら、なんと7番と13番(ダイワバンディット)の2頭軸マルチになっていたのだ。
 普段の私だと「買い間違えたのは自分の責任」とこの馬券をもって勝負する。本線はあくまでも1着固定の方だ。間違えて買った馬券が来ないとは限らない。来たら大穴だ。だが今回だけは急いで買い直した。いや買い直しは出来ないから買い足した。ブルーコンコルドは2着だから1着固定は外れたし、ダイワバンディットは13着だったから2頭軸マルチも外れている。気づいて買い足さなかったらと思うと冷や汗が出る。もしも確認せず、当たったと思って馬券を見たら12番ではなく13番だったとなったらどんな気持ちだったろう。ここのところよくそんなミスをやっている。そう、今の私にとっていちばんの大敵は本人のうっかりである。

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 3連単をよく当てるのだがどうにも大もうけに繋がらない。勝負勘が悪いのだ。本日の運試しと100円単位で買うと簡単に当たる。それを元手に、さあ勝負と張り切ると外れる。またやり直しと100円単位にもどると当たる。さあ勝負と……で外れる。3連単の的中率ならどんな専門誌記者にも負けないだろう。
 先週もやる予定のない8レースだったが、友人が勝負レースだというので、見学料として気配の良い馬に100円ずつ馬連を5点買ったら250倍が当たった。馬が見えているのだ。次の9レースも勝負レースではないので同じく100円で3連単を買ったら1万9千円が当たった。いきなり4万5千円のプラスである。出費は2千円もない。そして、さあ勝負とそれをつぎ込む10レースと11レースは外れるのである。これが毎度の私。
 世の中には3連単などぜんぜん当たらないという人も多い。気の毒なほど下手な人もいる。それだと自分に見切りをつけられるだろうが、へんに当たるから後を引く。

 ともあれ、今日は当たった。
 しかしあらためて思うのは、こんな取りやすい馬券で540倍もついたのは(誰もが軸馬にしたのであろう武のシーキングが消えたことをべつにすれば)3着がビッググラスだったからだろう。それはもうパドックで見たら無視できない出来だった。この馬はトライアルの根岸ステークスでも抜群の気配だった。あのときも急いで候補に加えた。3着を外して40万馬券は逃したが。そのとき以上の出来なのだから絶好の狙いである。東京ダートは2戦2勝だ。当てたものの驕りとしてこの馬を無視する人の気が知れないぐらい言いたいが、だけどPATでも買えたかとなると自信がなくなる。あくまでもパドックで選んだ馬なのである。当てたいと思ったらやはり私は競馬場に行かなければ無理か。中山ははるか彼方。来週から中山の皐月賞開催だ。遠いな、片道2時間以上……。

 じつはそれより往復の電車賃3千円が惜しい。だって3千円は2頭軸マルチ相手5頭30点買いの資金、つまりこの金額で1レースの馬券が買えるのである。この買いかたこの予算で5万程度は毎度、最高18万まで当てたことのある身としてはもったいなく思ってしまう。だけどPATに入り、自宅で電車賃で馬券を買って外れたとき、そしてそれが大穴だったとき、間違いなく私はこう思う、「競馬場に行っていればこの人気薄馬を見つけられたのではないか!?」と。やはり行くしかない。たとえ1レースしか買わないとしても。
07/6/1

▲枠連の理由

 以下のようなことを今年のダービーの馬券記録として書いた。


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 競馬は枠連(笑)
 ここのところずっと3連単しか買わなくなっていた。いつからだろう。ざっと振り返っても丸二年はもうそればかりである。たまに馬連や馬単を買うとすくない点数で当たり、その魅力を見直すこともある。だが3連単をバラバラと30点、40点と買うと、的中しても1万円の時もあるが10万円を超すときもある。この配当の魅力には逆らいがたい。実際100円の50点買い、5千円が100倍を当てても2倍でしかない。そんなの複勝で簡単に手に入る的中馬券だ。だけどその50点の中には1000倍も2000倍も含まれている。その楽しみは大きい。
 3連単は10回に1回当たれば9回負けていても一気に浮きになる。しかし手元不如意の私はここのところもうその「9回の負け」に堪えられなくなっていた。

 1レースに100円単位の3連単を50点買うとする。5千円。9レース連続で負けて4万5千円のマイナス。3連単発売のレースは一日4レースしかない(私は生きている馬を見て馬券を買うのが基本なので他場のレースは買わない)。それをぜんぶ買うわけではないから、この4万5千円を失うのには土日とも参加しても2週間はかかる。それでも1回当たれば5万にはなるから一気に負けを取りもどす。時にはそれは10万だったり15万だったりするから簡単に浮く。
 しかしいまの私はその「5千円連続9回負け=二週間ひとつも当たらない」に堪える体力がない。毎回勝ちたいのである。勝たねばならない。5千円が8千円になる程度でもいい。とにかく確実に勝ちたい。

 そう思ったらどうなるか。そう、まずは複勝である。連複馬券は枠連だ。3連単しか買わない反動からここのところの私はそうなっていた。
 iPatの5千円の資金から複勝を3千円買う。それが2.5倍に当たって7千円になる。残金全部で9千円。その中から元金の5千円を引いた4千円でまた勝負する。これなら外れても元金は残って負けにはならない。今度は軸馬から千円ずつ枠連で4点勝負。それがうまく8倍に当たって……。一日の儲けが1万2千円。いいアルバイトをしたと満足する。ここのところiPatでそんな競馬をしていた。

 我ながらセコくていやになるが崖っぷちなのだからしかたない。3連単夢馬券をバラバラと買い、外れてもそのうちデカいのが当たると笑っている餘裕がない。
 この戦法でいいのは買い目が少ないことだ。複勝は一点、枠連は3点程度にする。缺点は配当が少ないことだ(笑)。いや最大の特徴は、配当は少ないけれど「的中率が高い」ことだろう。当たる快感に飢えている私にはいい馬券になる。5千円買って1.8倍の複勝的中。9千円の払いもどし。4千円の浮き。倍にすらならない。でも真剣に検討すればこんな馬を見つけることぐらいは出来る。もちろんダービーでフサイチホウオーの複勝を買うようなことはしない。そういうのとは馬券検討の立場がちがう。ここの説明はむずかしい。

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 そういう複勝と枠連で「負けない競馬」を心がけているところに、今年の春のGⅠは100万馬券の大嵐が連続した。そのことによって弱気なそれは意外なほどの効力を発揮した。
 3連単900万馬券となったNHKマイルカップをもちろん私は外した。だけどあのとき私の勝負馬券はエクスキューズとマイネルシーガルという好きな馬が同居した3枠からの枠連馬券だった。(岡田さんとマイネルという同一馬主枠になる。)
 3連単900万馬券という結果を見ても欲張った感覚はまったく芽生えなかった。思ったのはひたすら「やはりローレルゲレイロの5枠を軸にすべきだったか」であり、配当への未練は枠連5-7の1440円を取り逃がしたことだった。そういう自分が不思議だった(笑)。
 枠連は1-3、3-5、3-7勝負であり、最後まで3枠5枠のどっちを軸にするか迷っていた。5枠軸だと5-7が当たっている。3連単900万馬券という大嵐は昔風に枠連しかなかったら1440円の平凡な配当のレースでもあるのだ。
 馬連馬単が導入され3連単が桁違いに売れているのに、なんでいまだに枠連なんて前世紀の遺物を売っているのだとついこのあいだまで立腹していたのに、変れば変るものだ。おはずかしい。しかしこれ、今の時代うまく使えばかなり有効な赤字対策になる。(後略)


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▲これを書いたあと、なんで枠連とか複勝なんて始めたのだろうと考えていた。馬券を初めて三十四年になるが、枠連しかない時代でも複勝なんて勝った記憶がない。配当のすくない枠連なんか大嫌いだった。馬連が発売になったときは、やっとまともな時代になったと喜んだ。以来、枠連も単複も勝ったことがない。なのになぜいま……。

 それで思いついた。それはいま住んでいる地とiPatのせいだった。(私はiPatと書いてしまうのだが正しくはIPATらしい。iPatと書いてしまう癖がiTunesやiPodから来ているのは言うまでもない。)

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 今年二月いまのところに引っ越した。今まで住んだことのない地域である。都会でもなく田舎でもなく半端な地域だった。田舎ということなら親と暮らしていた茨城のほうが周りに田圃や畑がありはるかにひなびていた。でもそれはそれで景色がよく、なによりクルマがあったから、不便を感じたことはなかった。
 私はその田舎と東急沿線の目黒品川しか住んだことがない。今回のこういうサラリーマンがローンで家を買い、二時間かけて都心に通うような地に住むのは初めてだった。こういう地も、そういう我が家とか家族とか定年まで勤め上げる会社とかがあると楽しいのだろう。男一人で住むにはまことにせつない地であると確認した。
 歓楽街を飲み歩くなんてのはもう二十年前に引退している。引退したから海外放浪が始まった。ネオンは恋しくない。だからそういう意味でのさびしさはないのだが、近くのコンビニに行くのにも自転車、ましてTSUTAYAとかホームセンターに行くとなったらもう遠征である。初めての経験にとまどった。
 とはいえそういう場所に数キロ走って行くのは運動不足解消にちょうどよかったし、町を歩けばなんらかの発見はある。どんなところも住めば都だ。その辺は前向きに考えるようにしている。私なりにこの町に楽しみを見つけ、さして不満は感じていなかった。

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 と思っていたのだが、実は確たる不満があったと知る。それが複勝と枠連でわかった。
 この町からは競馬場が遠くて通いがたい。往復の時間と電車賃がもったいない。
 それでこの春、初めて電話投票の発展型であるiPatなるものに加入した。いやはや便利なのでおどろいた。
 それでしばらく遊んでいた。そこから、負け続けることに耐えられない、どんな低配当でもいいからとにかく当てたい、そうだ複勝を買おう、連複は枠連だ、という発想が生まれてきたのである。

 前日の馬柱チェック。朝早く競馬場に向かう。電車の中での検討。競馬場。特観席とパドックの往復。オッズペーパーの印刷、馬券購入、レース観戦、すぐに次のパドックへ、という一連の流れ。オケラになっての重い足取りでの帰り道。競馬仲間との飲み会。帰りの電車。予想紙、スポーツ紙を読み返す、ついうとうとする。帰宅。
 これら一連の流れの中でどんなにすくなく見積もっても7キロは歩いている。中山だと競馬場までが遠いから10キロ歩くのではないか。
 帰宅したらくたくたになってバタンキューである。翌日、宿酔い気味で起床する。心はもう週末の競馬に向かっている。昨日の傷はもう癒えた。それが私の競馬だった。だから「9回外れても1回当たればいい3連単が好き」と言えたのである。

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 この春からiPatによる在宅競馬を始めた。競馬場にいると時の流れが速くて速くて、あれこれやっていると、まだ最終決定をしていないのに締め切り時間になってしまう。なんでこんなにあわただしいんだと思う。それが在宅競馬だと、コーヒーを飲みつつ、ディスプレイのオッズを見て検討し、それから投票に移っても、時間はまだたっぷりとあるのだった。

 負けてオケラになる。その悔しさは競馬場でも在宅競馬でも同じである。しかしあちらは大勢の人に囲まれているし(そりゃまあ誰と話すわけでもなし、群衆の中の孤獨といえばそれまでだが)とにかくあちこち歩き回るから、負けたという精神的に落ち込みと同時に肉体的疲労もあり、仲間との会話もあり、しょんぼりしている暇もない。負けた悔しさが体中に染み渡り心底しょんぼりするのは帰宅したときなのだが、そのときにはもう疲れてへろへろになっている。寝てしまう。翌日起きるともう忘れている。そういう性格でないと馬券など長年やっていられない。

 ところが在宅競馬だと、投票までの時間がゆったりしているのと同じように、負けてから寝るまでの時間もまたゆったりたっぷりあるのだ。周囲に人はいない。ずっとひとりである。
 最終レースが終って午後4時半。朝入金した金がゼロになった。ふうとため息をついても春の日はまだ高い。しょんぼり買い物に行き、晩酌の肴など買い、静かな町の静かな部屋で獨酌をする。
 専門紙を広げ、まさかこの鉄板だと思った軸馬がブービー負けするとは……などと嘆いてみる。「陣営も必勝態勢なので1着固定で勝負!」なんて書いてる予想欄に「ばーか」と言って赤ペンで×をつけたりする。
 ほどよく酔ってきて時計を見るとまだ午後6時半。ふてくされて寝ようにもぜんぜん眠くない。まだ明るい。カーテンを閉めて暗くする。ごろんと横になり読みかけの本を手にしても流れが頭に入ってこない。出るのはため息ばかり。3連単は10レースのうち1回当たればいい。先週から通算してもまだ4レースしか負けていない。まだまだだ。とはいえなんだか当たる気がしなくなってきた。明日もだめだろうなあ、来週も、当たらないような……。
 このわびしさが耐え難かった。これを毎週繰り返すのがきつかった。
 たとえるなら競馬場での負けは夏の夕立。びしょ濡れになってもわいわいやっているうちに晴れている。体も乾く。在宅競馬の負けは冬の霖雨。じっとりとしみこんできて芯まで冷えてくる。

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 それで私はやったこともない複勝コロガシを思いついたのである。これは今までも何度もやろうと思っていたことだった。だけど競馬場に行き、目についた馬同士の馬連で50倍なんてのを見ると2倍程度の複勝なんかどうでもよくなってしまう。さらにはその2頭を軸にしての3連単……と考え始めたら複勝なんてやっていられなかった。

 iPatだと、生で馬を見られないから穴馬を発見出来ない。それは誘惑が少ないことになる。同時に冒険が出来ない、にも通じる。データで選んだ馬の複勝コロガシが簡単に出来た。
 初めてこれをやったとき、5千円が9千円に、9千円が2万円になった。競馬場にいたらこんなもの当てたうちに入らないのだが、静かな町の静かな部屋での在宅競馬だと、それはなんだかじんわりとうれしいのだった。
 いつものよう競馬が終り買い物に行くときも、「1番人気の3番で行こうと思ったけど、思い切って2番人気の5番にして正解だった」「あの1番人気、4着だったもんな」「持ち時計から5番にしたけど、あれはパドックで見たら好みの歩様じゃないからきっと買わなかった」「iPatだから買えた馬券だ」「180円は御の字だよ」と頭の中でつぶやいたりしてご機嫌である。
 肴も当たったからといつもより奮発する。
 獨酌が一息ついて6時半、まだ明るいことが気持ちよかったりする。
 ほろ酔い機嫌で手にした小説もすいすい入ってくる。

 この静かな町でひっそり生きる私は、そんな馬券を選んだ。

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 長年、私は中央の夏競馬はやらなかった。その間は南関東に通った。田舎に住み海外旅行ばかりしている時期はそれすらもしなかった。
 国立に住んだ一年半、夏競馬が二回あった。毎週立川WINSまで自転車で通った。小銭で遊ぶ夏競馬を覚えた。
 いよいよ来週からその夏競馬である。今年はiPatがある。ウインズまで行かなくてもすむ。
 土曜の朝にジャパンネット銀行に1万円入れて、それで土日を遊び、日曜の最終レースが終ったとき3万円にすることを目標にしよう。とにかく絶対目標はその1万円を死守することだ。失くしてはならない。
 
 引き出しの中から古い馬券が出てくる。十数年前のなにが勝ったか思い出せないオークス(当時の馬券でもGⅠのレース名は入っている)に20万円も使っている自分が他人のようだ。ミホノブルボンのダービーのように50万買って外れても、それなりに小説のネタになってくれたものはいいが、こういう馬券はもったいないと思う。4万円の5点買い。この軸馬はなんだろう。調べる気にもならない。

 秋競馬が始まり馬場に通うようになったら、私の馬券の主はまた3連単になるだろう。それでももう無茶買いをすることはないように思う。ここまで来てやっとまともになれた気がする。(シミズケンタローの覚醒剤やめましたと同じぐらい信憑性はない。)
 福島新潟の夏競馬も、複勝と枠連で地道に遊ぼう。資金が少しふくらんだら、たまには3連単にも手を出してみよう。なにかおおきいのが引っかかるようないい予感がしている。

2007
2007秋のGⅠ敗戦記

敗戦記──スプリンターズステークス──キングストレイル

 選んだ馬はキングストレイル、サンアディユ、アストンマーチャン、アイルラヴァゲイン。これが本線。

 あとはもういないのだけれど、ハートマークの3着候補に、調子が悪いらしいが好きなのでスズカフェニックス、これまた条件馬のころから好きなので大敗続きだが一発があるかもしれないオレハマッテルゼ。

 フォーメーション予定だったがパドックを見てキングストレイルの勝利を確信。1着固定3連単。

 1着アストンマーチャン、2着サンアディユ、3着アイルラヴァゲイン。そして4着にキングストレイル。3連単15960円。

 ボックスなら簡単に当たっていたという泣きが入りそうだが、ボックスは基本的に買わないことにしているのでそれはない。

 そんなことより、パドックを見ずに、たとえばフォーメーションで前日購入していたら当たっていた、がかなしい。

 キングストレイル……秋初戦の京成杯を快勝してスプリンターズステークス負けは、藤沢厩舎の先輩ゼンノエルシドと同じパターンになった。京成杯ではゼンノエルシドの仔の大好きなマイネルシーガルにも痛い目にあったし、このへん因果が巡っている。京成杯はキングストレイル、マイネルシーガルを大本線にした。幸いキングストレイル、カンファーベストを抑えておいたのでマイナスはなかったが……。
 でもゼンノエルシドは、そのあと人気を落としてマイルCSを勝つのだった。本命にした。鞍上はペリエ。キングストレイルがマイルCSに出てくるなら、もちろん本命で行く。

 秋GⅠ初戦、まずは敗戦。

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●敗戦記──秋華賞──ナリタトップロージの遺児にかける

三強の好きな順はウォッカ、ベッラレイア、ダイワスカーレット。

ウォッカは阪神ジュブナイルで3連単1着指名の馬券をとったこともあり、会う前から好きだったが、ダービーのパドックで見てさらに惚れた。最高の馬だった。あのダービーパドックでいちばん輝いていた馬だ。

父タニノギムレットも大好きだった。机上の血統からだとルションの肌を好きになることはなかったろうがパドックで見て惚れた。やはり馬は現実に見なければならない。

ベッラレイアは早世したナリタトップロードの仔。最初で最後の傑作になるかもしれない。勝てたオークスを秋山の腕で落とした。今秋から武が乗りかわっている。ローズステークスは完敗だったが逆転の目も見えた。

ダイワスカーレットの戦法は完璧。安定している。でも長年社台が嫌いだったのでノーザン肌にアグネスタキオンはあまり好きになれない。とはいえ全兄のダイワメジャーは大好きだからこの辺が難しい。なんで好きかと言えば目の前で見て惚れたのだ。だからダイワスカーレットも間近に見ればきっと好きになる。いい馬にちがいない。しかし関西の馬。まだ見たことがない。

三強馬券は買いたくない。なにかあいだに割り込ませたい。まずその前に三強のどれを軸にするかだ。大好きなウォッカだが一頓挫あった。ここは武が乗ってきたナリタトップロードの遺児に懸けたい。オークスでも1着固定で買ったのだ。

ベッラレイア1着固定で、2着3着にウォッカ、ダイワスカーレットを配置し、あいまに何頭か入れる。ラブカーナ、レインダンス、カレンナサクラ。新潟2歳ステークスで世話になった必殺秘密兵器が大好きなマイネルーチェ。最低人気。ウォッカとダイワを外した、ベッラレイア──ラブカーナ──マイネルーチェも買う。250万馬券。
オークス馬ローブデコルテ、NHKマイルカップ馬ピンクカメオは無視。そこまで手を広げられない。

ダイワスカーレット完勝。2着にレインダンス、3着ウオッカ。ベッラレイアは4着。スプリンターズステークスに続いてまたも私の本命は4着。3連単は37630円。

武はなんであんなに後方から行ったのだろう。ハイペースになり、直線では前に行った馬がばったり止まり、差し脚の活きる展開になると読んだのか。いくらなんでも4角最後方は後ろ過ぎると思うが……。

すなおに、先に行って勝ちきったダイワスカーレットの強さを讃えるべきか。兄と同じ戦法だ。先に行き、抜けだし、後方からの追撃を抑えるというのは最強馬だけが出来る王道戦法だ。強い兄妹である。アンカツの自信も揺るぎない。夢の兄妹対決の可能性が浮かんできた。どちらも傷つけたくないからオーナーはしないと思うけれど。

3連単1着固定はリスクが大きく下級条件戦では怖くて出来ない。いつも根性のないフォーメーションを組んでいる。GⅠなら出来る。負けはしたが悔いのないのに救われる。あのナリタトップロードの仔と心中したのだから。

菊花賞はロックドウカンブの1着固定でゆく。

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●敗戦記──菊花賞──ロックドゥカンブ1着固定

 ロックドゥカンブ1着固定の3連単勝負。
「心配なのは鞍上の柴山だけだ」と、この馬を本命にした予想家が口を揃える。たしかに不安だ。だが岩田のデルタブルースの例もある。柴山の不慣れを、半年遅れ、南半球生まれのこの馬の強運が克服すると確信して1着固定。
 というかこのレース、あちこち手を広げたらきりがなくなる。思いこみで行くしかない。

 連下候補。一番手はトライアルを勝った実力馬のドリームジャーニー。母父がマックイーン、父がステイゴールドだから血統的には長距離馬だが体系的にはマイラーのように思う。去年九月の芙蓉ステークスから何度も関東で見ている。8戦中6戦が関東なのだからなじみ深い。鞍上が大嫌いなエビナなので軽視してきた。それで朝日杯も外している。皐月賞もダービーも無視。でも武に乗り代わり前走の鮮やかさを見せつけられると話は違う。いかな武でもこの馬で菊花賞を勝つことはないと思う。だけど必ず上位には来るだろう。彼の腕で。

 次いでアサクサキングス。ダービー2着馬は菊花賞に強い。ホワイトマズルだから距離も問題なし。出来るなら鞍上は福永がいいが四位も以前乗っていたし、トライアルでも2着しているからだいじょうぶだろう。この馬、好きでも嫌いでもないが、ここは候補に入れねばならない。

 3番手にアルナスライン。この馬も正月に中山で見ている。同期生とのトライアルを捨て、京都大賞典3着という別路線は毎回嵐を巻き起こす。セイウンスカイはここを勝ってスペシャルウィークとの決戦に臨んだのだった。若駒なのに天皇賞馬のメジロブライトを負かしているのだからあの世代は強かった。テイエムオペラオーもここから始動した。3着だった。古くはテンポイントも神戸新聞杯、京都新聞杯を完勝するトウショウボーイとは別路線のここで3着して菊花賞に進んだ。3着に敗れるのに、テンポイント大好きの杉本アナは「ここはこれで十分だ、テンポイント!」と叫んでいた(笑)。あれほどの私心丸出しに匹敵する実況は、内藤亀田戦のアナぐらいである。
 馬の臨戦態勢もいいし、もうひとつ「長距離の和田」は信頼できる。いいジョッキーだ。

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 オペラオーで取材したとき、私はオペラオーがいなくなったら和田騎手は苦労するだろうけど、三十歳ぐらいには是否とも大成して欲しいと失礼なことを言ってしまった。そのときの私にはオペラオーがいなくなったら、彼はしばらくGⅠとは無縁のように思えたのだ。言下に彼は「いえ、来年にはもう」と言い返してきた。勝負師である。強気の固まりだ。失礼なライターの質問を即座に否定した。
 しかし残念ながらそれ以後彼にGⅠ勝ちはない。今年、私の願った三十歳になった。大成の時期だ。

 むかしデビュウ以来GⅠ勝ちがなく、やっとタマモクロスで天皇賞を勝った南井が、そのことを問われ、「騎手は、強い馬に出会えれば誰でもいつでも勝てるんです。たまたまいままでそんな馬と出逢わなかっただけで」と言い返していたことを思い出す。強い口調であり信念だった。南井が言いたかったのは、自分は業界に係累がなく強い馬、評判馬に乗せてもらえなかったから、たまたまいままで勝てなかっただけだということだった。その意見の裏には、一族が多くよい馬を回してもらえる騎手への憤懣がある。タマモクロスも評判馬ではなかった。なかなか未勝利すら勝てなかった安馬が突如として変身する。だから南井が乗れた。

 和田が次にGⅠを勝つのはいつだろう。今回勝てるとは思わないがこの馬は無視できない。もしも馬連勝負ならロックドゥカンブ、アルナスラインは本線になる。

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 ここまでがメイン。あとは気分であり好き嫌いだ。3連単30点買いの予定なのでもうすこし入れられる。
 まずサンツェッペリン。勝てるとは思わない。でも父テンビーの100万円の安馬がドラマを作るなら見学料金は払っておきたい。松岡の強気一辺倒も好ましい。

 あとはタスカータソルテ。理由は菊花賞トライアル京都新聞杯勝ち馬だから(笑)。まあこんな時代錯誤オヤジがひとりぐらいいてもいい。

 もう1頭で悩んだ。候補は毎年2着に来る横山のホクトスルタン。ダービーを1番人気で敗れているフサイチホウオー。青葉賞勝ち馬のヒラボクロイヤル。上がり馬のデュオトーン。ヒラボクとデュオの父はタニノギムレット。ダービー馬ウォッカの父がタニノギムレットだから、その流れもあるのではないかと。つまり、ウォッカは出ていないが、同じ父の仔が来たという……。
 悩みに悩んだ末、ホクトスルタンにした。これまた前代未聞の横山の菊花賞2着記録が刻まれるとしたら、参加料を払っておきたかった。

 上位人気馬で無視したのはヴィクトリー。近藤夫婦とは関わり合いたくない。

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 4コーナーで内に包まれ、出るに出られなくなっている柴山ロックドゥカンブを見て負けを覚悟した。あそこに入っちゃダメだ。でも内枠で、あの位置取りならああなるか……。


 寒気がするほどかっこよかったのが武豊。4角から一気にまくって行く。あの位置取り、あの脚いろ、なんてかっこいいんだ。ああ、ドリームジャーニーに勝たれる、と思った。馬券は外れるがあんなかっこいい仕掛けに負けるなら負けて本望とすら思った。なのに意外に伸びず5着だったのだからやはり3000メートルの馬ではないのだろう。前走の2400も武の腕で勝ったようなものだ。

 アサクサキングスとアルナスラインの叩き合いは壮絶だった。アルナスラインが勝てば和田はオペラオー以来のGⅠ勝ちとなる。三十歳にして新たな地平に立てる。だが勝利の女神は新ダービージョッキーの方にほほえんだ。

 私はロックドゥカンブだけを見ていた。内のごちゃごちゃをやっと抜け出してきたロックドゥカンブは、3着に追い込むのがやっとだった。武の得意な「菊花賞、イン突き」を柴山がマスターしていたら、楽々と突き抜けて勝っていたろう。柴山の初めての菊花賞という不安が的中してしまった。
 もしも私が武豊ドリームジャーニーを本命にしていたら、外れたけれど悔いはなかった。思った通りの騎乗をしてくれたからだ。馬も人も精一杯力を出し切っている。ロックドゥカンブがそうでないところがすこし悔しい。だけどその武豊だって先週は納得できない4角最後方の競馬をしているのだ。
(私と同じくベッラレイア本命だったある評論家が、あの騎乗を「武君、芸術しちゃったね」と評していた。ごく普通に乗れば2着3着にはなれたかもしれない。でも武はそんな安易な方法ではなく、ダイワメジャーとウォッカを鮮やかに差し切る芸術的騎乗にはしったらしい。たしかに他の馬が止まって見えるかのような鮮烈な追い込みだったが、どこかに計算違いがあり届かずの4着だった。)
 だから愚痴は言うまい。そうなることもあり得ると覚悟しての1着固定本命だった。この馬、順当に育ったら来年は大仕事をやる。

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 配当が意外につかなかった。たった2万7千円である。ロックドゥカンブとアサクサキングスの2頭軸マルチで買った人が大勢いたのだろうか。最近の3連単の配当の低さ=競馬ファンの3連単馬券上手、には、驚かされる。発売当初だったら、武が消え、ロックドゥカンブが3着だったのだから、もっともっと荒れていた。
 そしてまた逆に馬連、馬単がつくことにおどろく。馬単は6300円である。このレースの真の馬券勝利者は、何十点も買って3連単を当てた人ではなく、絞ってこの馬単をとった人だろう。

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●敗戦記──天皇賞・秋──武豊メイショウサムソン1着固定

 武豊メイショウサムソン1着固定。2着にペリエ・ポップロック。相手5頭。3着にポップロックで2着候補に5頭。以上、3連単10点勝負。大好きな騎手二人を軸に出来るのだからこんな楽しいGⅠもない。

 ペリエのコメントで思い出すのはジャングルポケットで勝ったジャパンカップだ。「タケさんに着いていったから、タケさんのおかげ」と、にこにこしながらそればかり言っていた。このことは競馬の欄に「柏木さんのペリエ論」としてまとめてある。柏木さんによれば、ペリエはヨーロッパとは全然流れの違う日本の競馬ペースをわかっていない。むしろペース音痴にちかいのだとか。だけど、だったらそれに長じる誰かに着いてゆけばいいという知恵がある。それが武だった。その方法であれだけの成績を残して来た。

 今回もしっかり武をマークし、2着に来るだろう。万が一3着になったときのことも考え、それも想定する。勝つことはない。勝つのは武だ。
 我ながら完璧な予想である。この予想が破綻するのは武メイショウが勝てなかったときだが、それはもうそれできれいに諦められる。予想の最初の読みから間違っているのだ。そういうのは悔しいとは言わない。
 武メイショウが勝つと読んだ。武が勝てば必ずオリビエは、おっとおフランス風になってしまったざんす、おフランスではペリエじゃなくてみんな「オリビエ~」と声援するざます。ペリエの乗っていないレースでも「オリビエ~」と声が飛ぶので何事かと思ったら彼以外にもオリビエがいたのだった。フランスじゃ平凡な名なのか。
 去年の有馬記念も大本命馬は順当に勝ったが、馬券はある種の波乱だったと言える。立役者はペリエのポップロックだった。


 とにかくまあまちがいなく武メイショウが勝つ。そして2着か3着にペリエのポップロックが来る。問題は3着候補と、万が一を假定して2着候補に入れる5頭の馬だ。
 
 自信を持って、いや正直に言うとあまり自信はなくてこわごわだが、それでも思い切って消したのがアドマイヤムーン。

 馬は大好きなのだが鞍上が嫌いなので消したのがマツリダゴッホ。サンデー産駒好きとしてはかなり思い切った選択だ。これはいい馬だ。ヨコテンだったら買っていた。だけどエビナだから消し。来たらあきらめる、と決断。
 チョウサンも下級条件馬のときから好きな馬だが今回は消す。大殊勲だった松岡が騎乗停止で乗れないというあたりにこの馬の運を見る。
 よって、好きな馬、デルタブルース、コスモバルク、シャドウゲイト、ブライトトゥモロー。好きではないがその強さをよく知っているつもりのアグネスアークを選ぶ。これで5頭。

 とにかくこのレース、メイショウサムソンが勝つと決めている私にとって、あとは「ポップロックが2、3着に来ること」がすべてだった。

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 武豊メイショウサムソンは見事に勝った。王者のレースだった。武はこれで2999勝。さすがにこれが区切りの3000とは行かなかったか。
 しかし必ず2着3着に来ると期待したペリエ・ポップロックは4着だった。
 位置取りが悪かった。フジテレビ解説のヨシダヒトシさん(ポップロック本命)も、「位置取りが後ろ過ぎた、いくらなんでもあそこからでは届かない」とペリエの位置取りの悪さを責めていた。
 ただ、メイショウが前に行って抜け出すという全盛期のダイワメジャーみたいな王者のレースをしたから、差し脚を活かすポップロックは、あまり武マークをしたらつぶれたかもしれない。しかたなかったか。でもちょっと後ろ過ぎたと思う。

 GⅠ4連敗。でも初めて1着固定の馬が1着に来た。希望的。
 競馬を知らない人は4戦4敗を心配してくれているようだが、大丈夫。3連単勝負だから1勝9敗でもプラスが可能。もちろん10戦10敗ではたいへんなことになる(笑)。枠連の時代だったら、最低でも1勝1敗のペースで行かないと「秋のGⅠ総合プラス」は無理だった。
 4戦の中で今回がいちばん自信があったので、この外れはちょっとショックだ。

 3連単は18万馬券。この高配当はわかる。誰もがメイショウ以上に3着以内は確実とアドマイヤムーンを重視していたのだ。おそらく3連単をこまめに分析すると、アドマイヤムーン絡みが中心のはずである。そういう馬が消えると1番人気が勝っても簡単にこんな配当になる。


 外れたが今回の10点勝負は気に入っている。

 

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【附記】

3時40分からのレースで負けて、すぐに書き出し、4時20分にUP。すごく早い(笑)。これじゃまるで記者の速報だ。

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【附記・2】

 柴山エイシンデピュティが降着。五十嵐コスモバルクも斜行で福永が激怒、と問題の多かったレースのようである。
 福永カンパニーは大きな不利を受けての3着で激怒だから、それがなかったら2着もあったってことか。となるとますます当たるはずのないレースになるから諦めもつく。

 

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◎的中記──アルゼンチン共和国杯──『東スポ』のこと、コスモプロデュースのこと

 11月3日。土曜夕方、新聞休刊日で『夕刊フジ』がない。『日刊ゲンダイ』も休み。『東スポ』はあった。買う。久しぶり。

 私は競馬を『東スポ』で覚えた。強い物が好きなので競馬はシンザンから知っていたが馬券は買ったことがない。上京していちばん嬉しかったのは毎日苦もなく『東スポ』が簡単に買えて読めることだった。田舎時代、30キロも離れた国鉄の駅売店までバイクで走って買いに行っていた。毎日は行けない。プロレスで大きな試合があった翌日のみである。どれほどプロレスが好きだったことか。こうして書いているだけで胸が熱くなる。そしてまた興味をなくした今を思いしみじみとかなしみが拡がってくる。

 毎日読むプロレス新聞の『東スポ』が週末には競馬新聞に変る。大レースの時には翌日の見出しも競馬だった。そこから競馬を覚えて行く。読み物として。でもまだ馬券には繋がらない。
 ある日、渋谷の喫茶店で、『東スポ』を教科書に馬柱の読みかたを教えてもらった。十九の秋。土曜日だった。先生は読売新聞に就職した宮本さん。一見ごちゃごちゃとしたあの数字にどんな意味があるのかと理解したときの感激は今も覚えている。すべてはあのときから始まった。

 私にとって長年競馬新聞とは『東スポ』のことだった。それが獨立して専門紙「レースポ」になる。300円のレースポを買って競馬場に通った。昭和五十年代。思えばむかしから競馬専門紙は高かった。ラーメン一杯よりずっと高かった。競馬ブームで売れまくっていたころは「札を印刷している」とまで言われたものだ。いま秋風が吹いている。驕れるものは久しからず。今後もっと淘汰されるだろう。されてしかるべきだ。
「レースポ」は撤退し、元の『東スポ』の競馬欄にもどる。いまの『東スポ』は120円の中に、410円の専門紙が入っている。この価値は絶大だ。

 ところが私は「レースポ」がなくなった時期に『日刊競馬』を愛用するようになっていた。『東スポ』も、いきなり「レースポ」を全面的に取り入れたわけではない。最初はあくまでもスポーツ紙内の競馬欄に過ぎなかった。この時期、私は「レースポ」に代わる愛用専門紙を探さねばならなかった。しかも南関東競馬にまで手を出し始めていた。
 それ以前にも『東スポ』は普及している方式を廃した獨自の馬柱を考案したりして試行錯誤していた。その心意気はよかったがこれは大不評で早々にもとにもどる。私もそういう試みは評価しても、この馬柱にはどうにもついてゆけなかった。
 廃刊になった「レースポ」に代わって私が選んだのは『日刊競馬』だった。これは地方競馬場に日参するとき、地方競馬用『日刊競馬』を愛用していたことに由来する。私は新聞に色を塗り、あれこれチェックするから紙質の悪いスポーツ紙では無理だった。地方も中央も『日刊競馬』を使うようになる。

 『東スポ』が「でもそれ、『東スポ』の記事だからなあ」と笑われることにステイタスを求める路線に走ったこと(そのことで見事に生き残ったのだから成功だったのだろう)もあり、私は次第に『東スポ』から離れて行く。まだプロレスは好きだった。でもかつてなら一面にすべきプロレスの試合があっても、それを中面にちいさく載せるだけで、一面を芸能スキャンダルや人面魚(笑)等にする『東スポ』から次第に興味が失せていった。

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 今回買ったのはひさしぶりだ。しかも『夕刊フジ』が休刊だったからしかたなく買ったに過ぎない。本紙予想担当の渡辺さんは今も尊敬する数少ない予想家であるが。
 ひさしぶりに見る『東スポ』は、『日刊競馬』と『夕刊フジ』、サンスポに慣れた目には、見づらい新聞になっていた。こんなものである。すべては慣れなのだ。

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 その『東スポ』にこんな記事があった。トラックマン情報というヤツである。京都の10レース。京洛ステークス。「調教師が2頭登録に行った。1頭はなんとしても出したい馬。もう1頭は翌週のレースに出したいので、ここで除外になり、翌週のレースの優先出走権を得るのが望み」。それが見事に決まり、勝てそうだからなんとしても出したい馬が通り、もう1頭は望み通り除外になって優先出走権を得た。通った馬で勝負だと。
 新聞を拡げ馬柱を見ると、そこそこの成績で前走は5着。鞍上は岩田。でも人気になり過ぎかとインターネットで確認すると5番人気で単勝は8倍、複勝が2倍から3倍つく。買うことにする。情報信ずべし。これはこれでひさしぶりに『東スポ』を買わねば決して接することのなかった情報である。これも縁なのだろう。すなおに乗ってみることにした。

 アルゼンチン共和国杯は最愛のコスモプロデュースが出てくる。5枠。買わねばならない。恩義がある。
 同枠に夏の新潟で一年半ぶりの復帰戦を40キロ増で勝ったアドマイヤジュピタ。当てた。今年は夏競馬を熱心にやったので馴染みのある馬だ。その後1000万条件を2着、前走で勝ち上がり、今回が重賞初挑戦になる。軸はここ。一点買いなら枠連の5-5だ。といって盲目の愛ではない。コスモプロデュースは全勝ち鞍4勝が東京の府中専門馬だし、実力馬のネヴァブションとトウショウナイトが調子に不安があるなら、アドマイヤジュピタでも勝てるだろう。

 馬柱を見ているうちに、狙い目のあるヤマニンアラバスタがただ1頭の牝馬であることに気づく。昨夜、アルゼンチンでエビータを思わせる女性大統領が誕生したことを知った。単勝は18倍。複勝でも3倍以上。買うべし。

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 歩いて一分のコンビニに行き入金。IPAT。帰宅するともう反応している。JRAに入れる。速い。もう買える。ほんとにこれは便利だ。今は府中に近い場所だからさほど感じないが、これ、山奥だったら感激ものだ。かつての電話投票がいかに面倒だったか知っているものには。いやかつての電話投票も地方の人には驚嘆ものだったのだろうが。

 京都10レース京洛ステークス15番マッチメイトの単複を買う。3番人気まで伸してきた。まずはここで勝負だ。

 アルゼンチン共和国杯のほうは、女性大統領からのヤマニンアラバスタ勝負はあまりにベタに感じたのでやめる。来たなら来たで酒席の話題になる。ケントク買いはそんなものでいい。
 予定通り5枠からの枠連にする。枠連とは弱気だが、こんなときこそ枠連だ。勝って欲しいのはコスモプロデュース。だけど鞍上が大嫌いなエビナなので安心できない。勝つだろうと思うのは上がり馬のアドマイヤジュピタ。かといってここから馬単勝負するほどの自信もない。だったら2頭が同居した5枠を枠連の軸にする。日本にしかないみっともない枠連は、こんなとき日本にしかないすばらしいシステムになる。

 コスモプロデュースの府中4勝はデビュウ戦がカツハル。14番人気だった。3連複32万馬券で窮地の私を助けてくれた。ゼンノロブロイ、コスモバルク、デルタブルースで決まるジャパンカップの日だった。ジャパンカップも本線で当て私の馬券生活では最良の一日になる。この日から意識がなくなった父がくれたプレゼントだったようにも思う。それから二週間後に父は逝く。
 2勝目の東京はエビナ。3勝目がアンカツ。4勝目がペリエ。エビナは勝った実蹟はあるのだが、私はどうにもこの人とは相性が悪く、誰が乗ってきても恩義のあるコスモプロデュースは買うのだが、エビナでは大勝負に行く気にはなれなかった。阪神、中山と惨敗しての東京はまちかねた勝負レースなのだが……。

 枠連の1-5,2-5,5-5で勝負。
 2枠の1番人気ネヴァブションは好きな馬。切れない。同枠に実力馬トウカイトリックもいる。アドマイヤジュピタが2番人気。コスモプロデュース惨敗の確率は高いがこの馬が来てくれるだろう。5枠はだいじょうぶ。問題はコスモが来るかどうかだ。5-5は120倍。これが来ると万々歳になる。
 1枠のリキアイサイレンスも狙いだ。前走のオクトーバーステークスは鮮やかだった。こちらの鞍上は大好きな後藤。
 思い切って切ったのが武士沢との出世を目の当たりにしてきた8枠のトウショウナイト。下級条件戦のころから買ってきた。現役馬では好きな馬ベストテンに入る。昨年の覇者。馬はもちろん騎手も初めての重賞制覇だった。好きだからわかる。どうみても本調子ではない。昨年の出来ではない。8枠にはカツハルのカゼノコウテイもいて怖いが、消した。
 7枠の5番人気ダークメッセージ、4枠の4番人気ダンスアジョイを消す。怖い関西馬。外れるとしたらこれが来たときだ。
 枠連3点勝負だがそれなりに決断は要った。

 京都10レースが当たったら、そのぶんをヤマニンの単複に入れる。この転がしは楽しみだ。京都はまず当たるだろう。最悪でも複勝はかたい。ヤマニンは来るかどうかわからない。でも左回りは得意だ。楽しみではある。

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 テレビでは3時10分からの京都10レースをやらなかった。急いでたんぱを聞く。もう終っていた。レース回顧をしている。するとどうにも感想にマッチメイトが出てこない。来なかったようだ。まず絶対に複勝は大丈夫と思っていたのでこの落胆は大きい。これでヤマニンアラバスタの単複は買えなくなった。

 アルゼンチン共和国杯はアドマイヤジュピタが勝つ。強い勝ちかただった。条件馬から連勝で一気にGⅡ制覇。このあとは有馬か。
 2着にトウカイトリック。帽子の色で当たったのはわかったが、すぐに1番人気のネヴァブションと同枠と思い出す。3着リキアイサイレンスが2着に届いていたら大勝になったが3/4馬身はあったから未練もない。当たりはしたが単勝1、2番人気の枠連という最低配当になってしまった。いや代役で当たったことを喜ぶべきか。枠連2-5は1040円。

 コスモプロデュースは直線でいい位置にいた。もしかしたら、と思ったがそこからズルズル沈む。18頭中17着。いつかまた穴を開けるだろう。その日を待つ。
 見事だったのはヤマニンアラバスタ。大外から真っ白な馬体が飛んできたときは、ああやっぱり来た! と勝利を確信した。しかし内で先に抜け出していたアドマイヤジュピタが粘り、トウカイトリック、リキアイサイレンスとの叩き合いまでは届かずの5着。惜しかった。馬券は買えなかったが芦毛の馬体がとんできたときは単勝を買って応援しているかのようにゾクゾクした。

 情報信ずべしで買った京都のレースはハズレ。
 思いこみで買った東京のレースは当たったが、トウカイトリックが代役で来たという枠連特有の当たり。しかも単複で負けているからたいした浮きでもない。自慢すべきものはなにもない。
 それでも当たったから、うれしい。これは真実。

【附記】
 京洛ステークスの3番人気マッチメイトは8着。1、2番人気も消えて3連単57万の大荒れだった。JRAのレース映像を見ると、マッチメイトは先行し、わたし的には文句のない競馬をしていた。その他の上位人気馬も同様。ところがゴール前でガラっと変る展開。実況アナも「様相一変」と叫んでいる。1200メートルの芝。「短距離の差し馬」が決まったレースか。ハズレはハズレだが、映像で見て不満のないレースだった。この納得はおおきい。


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◎的中記──エリザベス女王杯──にがい夜……

 日曜の朝、東京は雨。深夜からかなりの降りだ。京都はどうなのだろう。
 予想は、ウォッカ1着固定、相手にダイワスカーレット、スイープトウショウ、この2頭はしかたない。勝負はウォッカが勝ち、この2頭が消えたときの相手。そのスケベ馬券が3連単の醍醐味。

 まずはデアリングハートとディアデラノビア。府中牝馬ステークスで4枠にいた2頭。アサヒライジングとの枠連を一点で仕留めた。勝ったのがデアリングハート、2着がアサヒライジング、ディアデラノビアは4着。的中はしたが4枠の2頭でどちらかに◎を打つとしたらディアデラノビアだったので威張れない。なあに、それが枠連。気にすることはない。
 これで4頭。1着固定だから相手6頭で30点。今週はこれで行こう。同じ30点でもバラしたフォーメーションよりスッキリしている。さて、あと2頭。
 アサヒライジング確定。馬場が悪いなら先に行く馬が残る。残り1頭。候補はアドマイヤキッスとフサイチパンドラ。馬ならアドマイヤだが鞍上の魅力でフサイチにする。ルメールだ。
 むかし、騎手などまったく考慮せずに馬券をやっていた。かわればかわるものである。

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 午前九時。IPATに繋ぐ。「ウォッカ取り消し」を知る。焦る。最初から馬券を組み立て直さねばならない。いつも締め切りぎりぎりまで馬券を買わないのに、今回はさっさと上記の馬券を購入して昼酒でもやりながら見ようと思っていた。どうしよう。こんなに混乱するのも珍しい。酒どころじゃなくなった。雨はかなり激しく降っている。

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 2歳時からスイープトウショウが大好きだった。なのに彼女が作った大穴馬券をひとつもとっていない。オークスで恥じたのにそれ以後も変ることはなかった。それでいて惨敗するときは本命にしたりする。もう6歳。むかしなら7歳牝馬。いいおばさんだ。ダイワスカーレットとの対決は、人間で言うなら、十八と四十の対決になる。今年で引退だろう。繁殖として成功するだろうか。強すぎるだけにかえって心配だ。
 ウォッカが出ないのならスイープトウショウで心中すべきように思う。だけどアンカツダイワをスイープが差し切る映像が浮かんでこない。毎度当たらないのだからこの脳内映像にあまり意味はないのだが。

 スイープトウショウ1着固定、ダイワスカーレット2着固定の3連単。
 ダイワスカーレット1着固定。スイープトウショウ2着固定の3連単。
 相手6頭で合計12点。

 ここまではよかったと思う。
 しかしそのあと、ダイワの安定味とスイープの力の衰えを考慮して(それは昨年のエリザベス女王杯でもう解っていた。あれは完敗の3着だった)、ダイワ1着、スイープ3着固定の3連単を買い足した。6点。合計18点になった。
 角居厩舎のウォッカが取り消したなら同じ角居の武豊ディアデラノビアが飛んでくるのではないか。アサヒライジングが逃げ粘るのではないか。デアリングハートの藤田が……。いつしかスイープトウショウ1着固定の思いは消え、穴馬が台頭する光景ばかりが浮かんでくる。

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 1着ダイワスカーレット、2着フサイチパンドラ、3着スイープトウショウの3連単62倍を当てた。買い足した6点……。

 土曜日、日曜の資金を作ろうと複勝コロガシをした。三回。コロガシが見事成功して資金が出来た。あのときのよろこび。わくわく感。なのに今回当たったのに喜びはない。

 にがい。
 飲みたくもない酒を飲み、早々にふて寝した。
 惨敗した気分の夜。

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●敗戦記──マイルチャンピオンシップ──馬券はむずかしい

 枠順を見て口笛を吹く。大好きなキングストレイルとマイネルシーガルが2枠に同居した。枠連は迷うことなく2枠から行く。なんというありがたい枠だろう。
 おまけにこれまた大好きなスズカフェニックスと、好きではないのだが無視できず困ったなあと思っていたアグネスアークが6枠に同居した。これまたラッキーである。もう枠連は2-6の一点勝負。いや2-2と6-6も少々。

 3連単は、キングストレイル、マイネルシーガル、スズカフェニックスの3頭軸フォーメーションに、2着候補としてダイワメジャー、スーパーホーネット、アグネスアークを加える。マイネルシーガルが頭でくると楽々と30万馬券になる。

 人気馬で切ったのはカンパニー。『日刊競馬』の本誌予想飯田さんと最上段の柏木さんがともに本命にしていた。この二人の本命がそろった馬は消える。何度も役立たせてもらった。逆に分かれた本命同士で決まっておいしい馬券になることも多い。見事に『日刊競馬』のジンクス(正しい用語の使いかた)に嵌ったから自信を持って消し。
 これはもう金曜日に出た結論だった。なんの迷いもない。

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 土日にあれこれ検討しているうちに、「じつは楽々とダイワメジャーが連覇するのではないか」との思いが強くなる。昨年もダイワ1着固定で当てている馬券だ。なにより私はパドックで見るダイワメジャーが大好きなのだから、昨年当てているのに連覇する今年ハズしたら恥ずかしい。それで今までの予想とはまったくちがった馬券を組み立てた。ダイワメジャー1着固定、2着にキングストレイル、マイネルシーガル、スズカフェニックス。3着にスーパーホーネット、アグネスアーク、である。

 このころになって私はキングストレイルの鞍上が田中ではなく岩田になっていることにやっと気づいた。藤沢師はなぜこんなことをするのだろう。キングストレイルは北村か田中でいい。カツハルで京成杯を買っているのになんでテンノリの岩田に変るのだ。こういうのは鞍上強化ではない。キングストレイルと岩田はあわない。たしかにカツハル騎乗でスプリンターズステークスを4着、スワンステークスを2番人気で6着に負けているが、だからこそ京都コースを確かめたカツハルで勝負だろう。スプリンターズステークスのときから1着固定と決めていたキングストレイルに対する思い入れがだいぶ薄まってしまった。
 ならダイワ1着固定で行くか。

 かといって以前に組んだ馬券も捨てがたい。好配当が目白押しだ。悩んだ末、みっともないがここは二刀流で行くことにした。共通しない馬券を両方買う。

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 1着ダイワメジャー、2着スーパーホーネット、3着スズカフェニックス。3連単配当は2万4千円。絵に描いたような見事なハズレ。これまたボックスなら簡単に当たっているが、とにかくボックスはやらないので仕方ない。しかし選んだ馬同士で決まっているのに当たり目がないというのも悔しいものだ。むしろまったくノーマークの馬に来られて外れたほうがすっきりしている。私にとって今年のマイルチャンピオンシップは18頭立てでも実質6頭立てだった。そのうちの3頭で決まっているのに当たっていない。馬券は難しい。

 狙いの馬では、マイネルシーガルはいいレースをした。負けは力が足りなかったのだろう。録画しておいたテレビで「競馬エイト」の吉田さんが本命にしていたと知る。なんとなくうれしい(笑)。キングストレイルは岩田に乗り変ったことで私にはもう運がなかったのだろう。スズカフェニックスは追い込んでの3着。あんなものか。武は「前走よりはずっといい。でも最高潮の出来でもない」と言っていた。結果的に正直なコメントになる。

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●敗戦記──JC──競馬情報の是非

 天皇賞・秋と同じ買い目になった。すなわち「1着メイショウサムソン、2着、3着ポップロック固定」である。天皇賞・秋のときも自信があったが(ポップロック4着でハズレ)、そのハズレを基礎土台として、今回は自乗の自信。まず間違いない。武マークのペリエは必ずポップロックを2着3着にもってくる。かといってポップロックがサムソンを負かしJC馬になるとも思えない。彼は目黒記念的GⅡ馬だろう。些細な不安があるとしたらポップロックの2、3着よりむしろあまり切れのないサムソンが確実に勝ってくれるかどうかだ。天皇賞・秋が唯一まったく不利のないレースだったことは事実。なにかに巻き込まれたらそれでも抜けているというほどでもない。2000でも強い競馬を見せているけど基本はオペラハウスの重厚さだろう。切れるウォッカあたりに差されるかもしれない。「あたり」と書いたが、とはいえ今回、それが出来る馬はウオッカぐらいしか思いつかない。じゃあやっぱりサムソン優勝に2、3着にポップロック固定で3連単は当たる。

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 人気馬で軽視したのはインティライミ。父スペシャルウィークは馬券人生の中でもベストテンに入るぐらい好きな馬だったし、鞍上の佐藤も好きだし、最高の臨戦過程からも嫌う理由はない。あまり活躍していないディープ世代の代表としてがんばってほしいとも思っている。あのインを突いたダービー2着馬だ。
 ただ、日本最強馬が二流の外国馬に歯が立たないという、それがジャパンカップだというレースを見てきた私には、レガシーワールドやマーベラスクラウンが軽々と勝ったジャパンカップを容認できない感覚がある。インティライミも馬の格としてその範疇にはいる。日本のGⅠをひとつも勝っていない馬がその他もろもろのGⅠ馬を負かしたら、ジャパンカップとはなんぞや、になってしまう。まして今回はGⅠ馬のサムソン、ウォッカ、ムーンがいる。(いきなりムーンと書くといがらしみきおみたいでわかりづらいな。む~ん。)デルタがいる。、コスモがいる。ヴィクトリーがいる。GⅠ勝ちのないドリームパスポートでもインティライミよりは格上だろう。ここでインティライミがいきなりJCを勝ったら、JCとはなんだろう、GⅠホースの格ってなんだろう、になってしまう。いやもうなっているし、どうでもいいんだけどね、でもわたし的にはそこにこだわりたかった。だから軽視した。

 一時真剣に「ポップロック1着、サムソン2着、3着固定」の馬券も考えた。しかしインティライミに関する前記のリクツで、いくらペリエでも、いきなりポップロックがJC制覇ではあるまいと1着固定は消した。(假に買っていてもポップロックはアドマイヤムーンを交わせなかったから外れていたことになる。)

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 タイトルの「競馬情報の是非」とは、2着馬3着馬を検討しているときに知った「データ」だった。「JCで、6番人気以下の日本馬が馬券に絡んだのは、53頭出走して3着が1頭のみ」と知る。ああそう、人気薄の日本馬は来ないんだ。

 サムソン1着固定、ポップロック2、3着固定だと配当が低い。これでなんとしても高配当を射止めたい。とすると2着と3着に穴馬を入れねばならない。私が自力で選んだ穴馬はデルタブルースだった。出来がよい。大外は菊花賞と同じでゲンがいい。JC3着の実蹟もある。まったく人気がない。14番人気。10-2-18の700倍。10-18-2の1600倍が本線である。

 あとはわからない。高配当を狙いたいがどうすればいい。そのとき前記のデータを知った。拡大解釈する。「6番人気以下の日本馬は来ない」とは、「外国馬は低人気でも来る」ということだ。そうかそうか。思い出すのはスペシャルウィークの勝ったJCである。2、3着に低人気の外国馬が来た。馬連でもう2万馬券だった。12番人気の香港馬(7歳セン馬)がモンジューに先着すると誰が思ったろう。

 そうか、サムソンとポップロックの下、あいだには人気薄の外国馬を入れればいい。人気薄の17番が来れば千倍以上になる。と、そういう馬券を組んだ。配当から馬券を組むという最低の方法である。こんな買いかたをした時点で私はもう負けていたのだろう。
 こういう場合、2頭の馬単、馬連勝負、あるいはさらに万が一のことを思って「ワイド一点勝負」という手もある。でも3連単の時代、軸を決めて、「あとは何が来てもいい」という高配当狙いが楽しい。(いま調べたら2-10のワイドは230円。1番人気だった。これじゃ大金を突っ込まないと一点勝負でも話にならない。)

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 逃げたチョウサン、抜け出たアドマイヤムーンを残り100メートルで一気に交わすかと思ったサムソンがもたついている。外を回った分、前回ほどの伸びがない。背中が寒くなった。ここで私の馬券は外れた。サムソンが1着でなければ何がどうなろうとハズレである。どう考えても勝てる脚いろではない。こういうこともあろうと覚悟はしていたが画に描いたような「府中2400向けの馬ではないサムソン」が出てしまった。

 1着アドマイヤムーン、2着ポップロック、3着メイショウサムソン。私がこの馬券を当てるには「サムソンとポップロックの2頭軸マルチ」しかなかったことになる。2頭軸マルチの相手5頭、30点買いで1万5千円を当ててもしょうがない。よくやるけど。
「なにかダークホースが飛んでくる」と読んだのに、何も来なかったのだから完敗だ。さして悔いもない。
 中山の2500ならメイショウサムソンで堅いだろう。ポップロックも得意だし、もう今から買い目は決まっているようなものだ(笑)。でもこれもつかない馬券だ。断然人気だろう。

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 今回もペリエは見事だった。馬の行く気に任せて先行し、4角では内に入ったが、いつものようしっかりと馬場の真ん中を行く武を捕らえていた。馬体を併せて行く。私はそのときにもう「出来た!」と思った。だが肝腎のサムソンがとまってしまった。
 ポップロックは内から先に抜け出したアドマイヤムーンを捕らえきれなかったが、もしもミスというなら、勝つのはサムソンと決めつけて勝負に行ったからだろう。でもそれは正しい。ペリエでなければ出来ない騎乗だ。

 アドマイヤムーンの勝利は至極当然である。それだけの実力馬だ。サンデー肌にエンドスイープというアドマイヤムーンは、パドックで見るたびにほれぼれするいい馬だった。私がアドマイヤの馬で惚れたのは瞳がかわいらしかったアドマイヤコジーンに次いで2頭目である。

 ドバイと宝塚記念とJCを勝ったすごい馬だ。これで種牡馬入りするらしい。いい種馬になって欲しい。アドマイヤコジーンが安田記念を勝ったとき(後藤の初GⅠ制覇)後藤がオーナーと抱き合って泣いていたが、今回は岩田が抱き合っていた(笑)。いいシーンである。

 いま「敗戦記──天皇賞・秋」を読んだら、「今回は思い切ってアドマイヤムーンは消し。激走は次走だろう」と書いている。だったら買え。

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 角居厩舎は3頭出し。JCに3頭出しするだけですごいが、それがみな2着、4着、5着と敢闘したのだからすばらしい。5着に来たデルタブルースはやはり体調が良かったのだろう。有馬でもそこそこ人気になりそうだ。
 サムソンと並んでウォッカがあがってきたときはワクワクした。あのメンバーの中で4着は立派。高校生の女の娘が二十代、三十代、四十代の男と競走したようなものだ。

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 JCが当たったらつっこむはずだった買えない最終レースの結果が、見事に予想通りに決まり3連単が12万馬券。じつはこれがいちばんつらかった。
 私はGⅠを見(ケン)して最終の条件戦で勝負したりすることが多い。でもそれはそのGⅠが見えないとき。今回はサムソン1着に自信があったのでそれは考えもしなかった。資金を残しておくべきだった。

12/2 ◎的中記──阪神JFの日

 中山のターコイズステークスは大好きなペリエが騎乗してきたキストゥヘヴンを素直に本命にする。ここは格の違いで勝つのだろうと。
 が、燃え尽きた牝馬の復活はむずかしい。いかなペリエでもそう簡単でもあるまいと、中山巧者のコスモマーベラスと安定度抜群のカタマチボタンの3頭軸でフォーメーションを組む。
 悩んだのはその他の4頭を2着つけにするか3着つけにするか。いつもここで運命が分かれる。

 私のフォーメーションの買いかたは、
1着 ①②③
2着 ①②③
3着 ①②③
 という軸馬3頭に、④⑤⑥⑦の穴馬4頭を絡めるものだ。

1着 ①②③
2着 ①②③
3着 ①②③ ④⑤⑥⑦

 これで30点。軸馬3頭を決めているのだからこれが自然である。これにすべきである。
 ところが、

1着 ①②③
2着 ①②③ ④⑤⑥⑦
3着 ①②③

 という買いかたで当たる場合も多い。これも捨てがたい。
 ①②③が人気馬である場合、2着に人気薄を持ってきたほうが配当はつく。が、軸馬が人気薄の場合もあり、そのときは2着に4頭をつけた組み合わせが、本命路線の低配当になったりもする。

 今回キストゥヘヴンは1番人気だが、2番人気のランペイア、3番人気のタイキマドレーヌを軸から蹴っ飛ばしているので、そこそこの配当が着くことになっている。迷った末、私は「穴馬3着つけパターン」にした。

 結果、キストゥヘヴンはいいところなしの惨敗。なにがあったのか。いやあんなものか。
 勝ったのはコスモマーベラス。一昨年柴田で2着、昨年後藤で1着、今年松岡で1着、ターコイズステークスを勝つための生まれてきたような馬である(笑)。
 2着にザレマ、3着にカタマチボタン。配当は5万円弱。これは悔しい。ザレマはもちろん選んでいた。「2着つけパターン」で楽勝だった。両方のパターンを買う60点買いはしないので、いつもこの選択が勝敗の分かれ目になる。当たったときが気持ちいい。このハズレは仕方ない。ふたつにひとつの選択によるハズレだ。

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 思えば昨年も中山競馬場にいて、勝負を懸けたこのターコイズステークスを外し、オケラになってもう帰ろうと思っていたら、それほど期待をしていなかった阪神JFが当たり、息を吹き返したのだった。
 武騎乗のアストンマーチャンが断然人気だったが、どうも私はこの馬に桜花賞やオークスを勝つGⅠホースのイメージを抱けない。当時からデルタブルースやポップロックと五分の稽古をすると話題になっていた4番人気ウォッカを本命にし、そこからの馬単と、2番人気ルミナスハーバーとの2頭軸マルチ3連単で穴を狙った。アストンマーチャンが消えたら大きい。
 1着ウオッカ、2着アストンマーチャン、3着ルミナスハーバー。断然人気のアストンマーチャンが絡んだので荒れなかったがそれでも馬単が29倍、3連単が140倍ついた。

 それ以来のウオッカファン。今年ダービーで初めて生で見たときはそのオーラに感激した。なのに馬券は外した。あれは2着のアサクサキングスが目に入らなかったのだからしかたない。あれが菊花賞馬か。

 今秋、アストンマーチャンは3歳牝馬の身で古馬をなぎ倒しスプリンターズステークスを勝つのだから私の解釈はまちがっていたことになる。思った以上の馬だった。ともあれこのときは大きく買ったターコイズステークスは外れたが、100円単位でしょぼく勝っていたJFの馬単と3連単が当たり、とりあえず最終レースで勝負! まで持ち込めたのだった。早々とオケラになり最終を買えずに帰るときほど惨めなものはない。
 今年もまた同じ形になった。JFよ、当たってくれ。

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 JF。本命はトールポピー。オディールとエイムアットビップを絡ませてフォーメーションを組んだ。2着に来たレーヴダムールは3着候補には入れていたが2着候補になく、ハズレ。予想段階からよくわからないレースだったので悔いはない。
 いいレースだった。ゲストの岡部がこの時期の2歳牝馬だからあまり無理なレースは出来ないし、のようなことを言っていたが、古馬顔負けの激しいレースとなり、ゴール前の迫力と一気に順位がひっくり返る様相は今秋のGⅠでも特筆ものだった。

 収穫は本命にしたトールポピーが好みの馬だったこと。昨秋、連勝するフサイチホウオーを府中で見ながら、どうしても私はその馬体が好きになれなかった。トールポピーは全妹である。だがテレビで見ただけでもタイプが違うことがわかった。これからもすなおに応援できそうだ。

 何頭もの馬から「抜群の海苔味」、またATOKが、「乗り味」とトールポピーを選んだ池添はどんなもんだのガッツポーズ。よほどうれしかったのか、くどいほど、しつこいほどやっていた(笑)。レジネッタもヤマカツオーキッドも池添で2勝している。なのに1勝馬のトールポピーを選んだ。こういう勝利はうれしいだろう。

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 と、二場のレースを外したのだからマイナスのはずだがこの日は中京もあった。父内国産限定GⅢ中日新聞杯。父内国産限定は今年で最後とか。
 デムーロ騎乗のサンライズマックス1着固定。そういえばこれも池添で連勝してきている。池添はサンライズマックスも捨ててトールポピーに勝負を懸けたのだ。このサンライズマックス1着固定はだいぶ前から決めていたので迷いはない。デムーロでなくても1着固定にしたが彼ならより心強い。相手5頭の3連単20点勝負。1番人気のサンライズマックスが勝ち、3着にも2番人気のタスカータソルテと堅い結果なのだが、2着ダイレクトキャッチに人気がなかったのか、230倍もついた。それで三場トータルプラス。
 なんだか必死に考えたターコイズステークスは二年連続で外し、昨年はJF、今年は中京と、深く考えず小銭を投じているレースが当たって救われている。考えるだけむだって結論か?

 というわけで自慢できることは何一つないがとりあえず浮くには浮いた日曜日。

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 今週、なにがうれしかったといって騎手の充実。メインで敗れはしたがペリエがいたから中山は盛り上がった。残念ながら最終も1番人気で負けてしまったが、この日3勝2着2回の活躍だった。
 中京のサンライズマックスはデムーロ、タスカータソルテはルメールだった。この三人がいなかったら私はターコイズも中京も買わずJFだけにしていたかもしれない。するとハズレだけの日だった。

 ペリエが関西に移籍したのは藤沢調教師となにかあったかららしいが、この日は藤沢厩舎の馬に乗り勝っている。関係修復か。よかった。なんとかまた関東所属になってくれないだろうか。ペリエが関東所属になり、来年内田がこちらに来たら、関東の騎手界もずっと充実するのだが。
 
12/9

●敗戦記──朝日杯FS

 よくわからんレースだがアポロドルチェの連絡みは確実と読む。3連単は買い切れない。アポロドルチェから馬連で勝負。
 1枠のゴスホークケン。これが逃げて粘る。前走で稼がせてもらった私好みの馬体の2枠のレッツゴーキリシマ。これも先行するから有力だ。世話になっている友人が一口馬主になっている3枠のウイントリガー。義理で買わねばならない。4枠のフォーチュンワードは、だいすきだったビクトリアクラウンの孫であり、唯一の牝馬。先日千代田牧場の飯田社長が亡くなっている。弔い合戦。6枠のヤマニンキングリー。武が初めて朝日杯を勝つのなら馬券を当てたい。と、相手に5頭を選ぶ。

 軽視したのは1番人気のスズジュピター。後藤が乗り、新潟と東京で3戦2勝2着1回のこの馬は、父がタニノギムレットであり、たぶん左利きだ。後藤は3頭の騎乗馬からアポロドルチェを選んできた。先週の池添と同じく、後藤が選んだ馬を信じよう。かなり強気の発言もしている。
 8枠のサブジェクトは外すぎる。アンカツが怖いが来たらあきらめる。
 4枠のキャプテントゥーレはGⅡデイリー杯勝ち馬だが内容はよくない。消す。

 単勝人気はスズジュピター、アポロドルチェ、ゴスホークケン、キャプテントゥーレ、ヤマニンキングリーの順。

 オッズを見て、念には念を入れて枠連にする。1-7,2-7,3-7,4-7,6-7の5点勝負。最低配当の1-7でも16倍あるから充分勝負になる。枠連1番人気は5-7の6倍。これは切ってある。ここで資金を5倍に増やして最終で3連単勝負。の予定。

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 パドックで馬を見たら、最高によく見えたのが消したキャプテントゥーレ。この柔らかさは私好み。こんなにいい馬だったのか。これは来るなあ。
 次に大物感たっぷりなのがゴスホークケン。これが一気に逃げ切るのではないか。
 前走馬体が気に入り複勝勝負をして稼がせてもらったレッツゴーキリシマも、いつ見てもいい馬だ。私はこういう馬体が好きだ。父のライアンに似ているか?
 3頭の馬名にぐりぐりと赤丸をつける。

 よくないのが軸のアポロドルチェ。まいった。入れ込んでいる。発汗もかなりだ。むしろ消したスズジュピターの方がまだいい。迷う。わからなくなってきた。机上検討ではなく自分の目を信じるべきか。

 7枠からの枠連をやめ、ゴスホークケンとキャプテントゥーレの2頭軸マルチで3連単を買いたくなる。しかしそれをやって外れたことも多い。前日検討のままなら当たっていた、という。いやもちろんそれに負けないぐらい自分の目を信じていれば当たっていたのに、という悔いも山とある。どうしよう。

 迷った末、真ん中を取った。枠連5点勝負はそのままにして、その金額を減らし、その分でキャプテントゥーレとゴスホークケンの馬連を買った。30倍。どっちが来てもプラスになる。

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 ゴスホークケンの逃げ切りが決まりそうになる。外枠の追い込み勢はぜんぶ届かない。アポロドルチェは絶望。枠連は消えた。こうなったら希望は一点勝負の馬連しかない。内では先行したレッツゴーキリシマが粘っている。冷や汗が出る。パドックでも最高の出来と判断した好きな馬なのに買ってない。そういやゆうべ、「わからないレースだから大好きなレッツゴーキリシマの複勝を買って見てようかな」と思ったっけ。
 でもキャプテントゥーレが追い込んできたのでほっとする。脚いろが違う。交わして2着にあがるだろう。なんとか馬連が当たる。自分の目を信じて良かった。

 ところがあんた、交わせないでやんの。粘ったレッツゴーキリシマが偉いのか、届かないキャプテントゥーレがだらしないのか。競馬の常識として絶対に交わすパターンなのに交わせなかった。
 ゴスホークケン1着、レッツゴーキリシマ2着、キャプテントゥーレ3着。ゴスホークケン、レッツゴーキリシマの馬連は82倍。
 3頭を選んだならなんで三角買いをしない。1点買いならなんでワイドにしない。ゴスホークケンとキャプテントゥーレのワイドは12倍もついた。これでも大幅ブラスだ。これで充分だった。前夜にふと思った「レッツゴーキリシマの複勝」も730円もついた。これでもよかった。

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 外れ馬券には一片の悔いもないものと、頭をかきむしりたくなるようなものとがある。
 今回は後者。パドックで選んだ3頭で3連単13万馬券なのだから。
 だけど私はあそこでアポロドルチェを切ることが出来なかった。自分の選んだ馬に切り替えられなかった。自分の目を信じなかった。それは所詮そこまでのニンゲンなのだからしょうがないけど、この馬連は取りたかった。ワイドでもいい。とにかくチャラにしたかった。ひどい負けかたである。

 当然最終はやらなかった(出来なかった)けど、買っても外れていた。なにをしてもだめな日。もう寝ます。

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附記】健坊、大当たり!

『日刊ゲンダイ』連載の「止まり木ブルース」の主人公健坊が、「ゴスホーク1頭軸マルチ36点買い」で、この3連単を1万円当てた。払もど額は1396万円である。スーパークリークの菊花賞等、今までも劇中での何百万円の払いもどしはあったが、千万を超えたのは長年連載されている「止まり木ブルース」でも初めてではないか。健坊の紙上での今年の負け分は600万だったが一気に大逆転である。3連単のすごみだ。これからはこの「1頭軸マルチ3連単」が劇中でも馬券の主役になるだろう(笑)。
 むかしなら30万程度の金でこんなことは起きなかった。穴の一点買いはあり得ない。過去の健坊の大もうけも固い馬券に100万束をつっこんでのものだった。36点買いをしたら当たってもトリガミである。健坊の久々の大的中を喜ぶとともにあらためて3連単のすごみを思い知る。
(健坊の的中は紙上での出来事だが、筆者の塩崎さんも同じ目で買っていたはずだから、今頃ほくほくであろう。)


12/16


◎的中記──阪神カップ──すこしだけかっこいい日

 悩んだ。本命予定のスズカフェニックスが17番枠に入ってしまった。阪神内回りの外は不利だ。対してエイシンドーバーは絶好の7番枠。福永は昨年勝ったフサイチリシャールではなくこちらを選んできた。1400専門のような馬だ。

 買いたい馬券はスズカフェニックス1着固定の3連単。しかしスズカフェニックス1着固定の不安よりも先に相手が絞りきれないのでこの馬券は諦める。

 スズカフェニックス頭の馬単で勝負したい。怖い。届かない2着、いや3着の可能性すらある。先に行ったエイシンドーバーが抜け出しての完勝、武スズカは届かずの3着。2着に狙いの人気薄の馬、エイシンドーバーから行っていれば……という悔い。

 ならスズカ、エイシン2頭軸マルチの3連単でどうだ。これならかなりの確率で当たりそうだ。だが相手が絞りきれない。それにこれは「スズカフェニックスが3着以内にくればいい」という、あまり好みの馬券ではない。
 だったらと、点数が少なくてすむ3連複を組んでみる。オッズを見る。低い。そりゃそうだ、抜けた人気の2頭軸3連複だ。大好きなマイネルシーガルやジョリーダンス、ダンスフォーウインでも来てくれないと儲けにならない。来ても50倍程度。

 届いてくるのはエイシンドーバー絶好の話題ばかり。先週1300万儲けた健坊もエイシンドーバー1頭軸マルチらしい。
 エイシンドーバーからの馬単を組み、オッズを見る。単勝人気の差でスズカフェニックスよりもつくと思ったが意外につかない。同じぐらい。それだけ軸として信頼されているのだろう。
 スズカフェニックスからよりこちらの方が当たる確率は高いように思える。まるで1400のGⅡであるここを勝つために生まれてきたような馬だ。エイシンドーバーからの馬単勝負にするか。

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 結局決め手は好き嫌いだった。武豊とスズカフェニックスとサンデーサイレンスが好きだ。福永は好きだしエイシンドーバーは安田記念でも買ったし、そこそこ好きだ馬ではある。けれど父親にはなじみがない。エイシンドーバーはマル外だ。

 悔いを考える。どっちから行っても当たればうれしい、外れたら悔しい。
 問題はその質だ。エイシンドーバーから行って外れ、スズカフェニックスが勝ったらどうする。これは悔やむ。好きな馬を消し世の流れにしたがって外した自分が恥ずかしくていられない。武にもスズカフェニックスにも会わせる顔がない。会う予定はないが。
 スズカフェニックスから行ってエイシンドーバーが快勝し外れたらどうする。あ、こりゃなんてことない。しかたないと思う。外れたのが悔しくて、あのときエイシンドーバーからにすれば、とは思うだろうが、それは金を失った悔しさ。情は絡まない。スズカフェニックスが勝ったときの悔いとはまったく質が違う。
 
 これで決まった。スズカフェニックスから行く。エイシンドーバーが来て負けたらしょうがない。2頭軸の3連複なんてことは考えず、潔くスズカフェニックスからの馬単勝負としよう。もちろん相手にはエイシンドーバーも買う。当たってもそれほど儲からない馬券だが消す理由もない。あとは好きな馬に流す。

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 スタートからゴールまでスズカフェニックスだけを見ていた。武はいつもよりも前につける。よし、これで外枠の不利はもう克服した。野平の祐ちゃん先生は武のぴたっと決まったフォームを評し、「武君はどこにいてもわかる」と賞賛した。私にも武だけはわかる。長身を折り曲げた、背中の揺れないあのフォーム。

 武が来る。スズカフェニックスが差してくる。前でマイネルシーガルが粘っている。シーガルが粘っているところにスズカが届けと願う。それが私の第一馬券。一気にスズカフェニックスが差し、がらりと様相が変る。黒い帽子のジョリーダンスを連れてきた。ブルーメンブラッドも来ている。なにがどうなろうと当たる馬券。勝つときはこんなもの。

 1着スズカフェニックス、2着ジョリーダンス、3着ブルーメンブラッド。4着エイシンドーバー。狙ったマイネルシーガルは6着。

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 馬券の感想で私は、「このレースの馬券の勝者は、3連単ではなく、この馬単を取った人だろう」と書くことが多い。もちろん頭を決めて3連単を取った人が一番えらいが、フォーメーションやボックス等で何十点も買って2万円程度の3連単を当てるより、勝ち馬を決め、すくない点数で5千円前後の馬単を当てる人が、私からすると「かっこいい」のである。それは願望だった。何十点も食い散らかして安い3連単を当てるかっこわるいのの代表がすなわち自分だった。

 今日はすこしだけかっこいいことが出来た。今からヴィデオを見よう。武とスズカフェニックスだけを見ていたのでその他の馬の位置取りなどまったく記憶にない。
 忘れられないレースになった。

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【附記】
 3連単も買っていれば簡単に当たっていた。つまり「3連単を当てたかったらまず馬単を当てろ」という馬券の真実である。馬単が的中すればかなりの確率で3連単も当たる。これからしばらくは馬単を主として、3連単をおかずに買うようにして修行しよう。生活のためには枠連だが(笑)。

【附記.2】
 フジテレビは阪神カップのパドックも見せなければ武の優勝インタビュウもなかった。今の時代、そういうものを望む人はグリーンチャンネルを契約しろってことなのか。
 来年から大きく模様替えをしてより娯楽色の強い番組になるらしい。あのくだらない「チャレンジ・ザ・競馬」の再来か。だったらもうその時間をUHFに渡せばいい。無理なことをしてまでフジが続ける必要はない。利権とかいろいろあるのだろうが。
 グリーンチャンネルだけは関わり合いたくなかった。いよいよ契約せねばならないようだ。


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