2008・秋
10/19  秋華賞敗戦記──3連単一千万馬券!

 ずっと海外にいて帰国したばかり。競馬勘が戻らないまま適当に参加したので、この歴史的一千万馬券にまつわる物語に乗り遅れてしまった。そういう視点からの回顧譚。



プロヴィナージュとポルトフィーノ
 エアグルーヴの娘であり話題馬のポルトフィーノが賞金が足らずこの秋華賞に出られない。それで秋華賞前の1600万条件清水ステークスに出走。見事に勝った。自己条件のレースが出たいのに出られない秋華賞の直前のレースというのも出来すぎた話である。と、これぐらいは土日のスポーツ紙を読んで知っていた。だが帰国したばかりで競馬をやる態勢になっていない私は、その周囲の事情をまったく知らなかった。つまり、そのポルトフィーノを出走させなかった張本人がプロヴィナージュだということをである。

 小島茂之厩舎のブラックエンブレムとプロヴィナージュは栗東留学して本番にそなえていた。2頭とも秋華賞を目ざすということだが、オークス4着のブラックエンブレムが主役であり、プロヴィナージュが帯同馬であったことは否めまい。
 プロヴィナージュもポルトフィーノも同じ2勝馬だが、獲得賞金からプロヴィナージュの方が優先出走できた。武豊騎乗でエアグルーヴの娘に出走させたいファンは、2勝とはいえダートでしかないプロヴィナージュの出走辞退を望む。なにしろ前走はダート2000メートルに出走して16頭立て16着なのだ。その気持ちはわかる。競馬ロマンとしてはプロヴィナージュよりも断然ポルトフィーノ出走の方がおもしろい。
 しかし小島調教師は、体調が良いことからプロヴィナージュの出走に踏みきる。2頭出しである。そのことからポルトフィーノは出走不可となり、小島調教師の、というか小島厩舎のブログには、ポルトフィーノファンからの非難が殺到した。

 という事前の流れを私はまったく知らなかった。残念でならない。こんなドラマチックな話題を知らずにこの秋華賞を見たなんて、まことにもったいないことをした。知っていたなら佐藤哲三の逃げをもっともっとドキドキしつつ見られた。

 私は種牡馬ウォーエンブレムのファンである。種付けが嫌いで好きな牝馬にしか欲情しないというのが言い。数少ない産駒からGⅠが出てサイアーラインとして残って欲しいと願っている。もちろんそのためには牡馬が勝たねばならないが牝馬も応援している。桜花賞もオークスもブラックエンブレムを応援してきた。今回の秋華賞ももちろんである。

 馬券はブラックエンブレム、リトルアマポーラを軸に、レジネッタ、レッドアゲート、ソーマジック、ムードインディゴ、アロマキャンドルで組んだ。プロヴィナージュは出走していることすら忘れていた。
 人気でも軽視したのはトールポピー。この一族はあの審議ありのオークス勝利で燃えつきていると読んだ。エフティマイアは人気薄の桜花賞、オークスで2着。こういう馬は人気になったら来ない。今回は3番人気。消えるだろう。
 あれやこれや組み合わせて、3連単、3連複をバラバラと買う。ひさしぶりの競馬だ。ほろ酔い機嫌で楽しんだ。



 7枠の馬が逃げている。なんだこれは。おおプロヴィナージュ。私の本命ブラックエンブレムと同厩舎である。これが逃げてペースを作りブラックエンブレムが差してくるなら望み通りだ。でも勝つのはオークス1番人気のリトルアマポーラのような気がする。鞍上が心配だが。リトルアマポーラを軸にした馬券もたっぷりもっている。ブラックエンブレムは心情馬券、こっちが本気。

 ゴール前、ごっちゃになった内から力強くブラックエンブレムが抜けだす。追いこんでくるムードインディゴ。このときまず思ったのは「馬連を買っていない!」だった。対抗と単穴ぐらいの高評価をした2頭なのに馬券を買っていない。その絶望が一瞬掠め、次いで「3着はだれだ、大穴が当たるぞ!」という希望が浮かんでくる。ブラックエンブレム、ムードインディゴと絡む3連複ならかなりつく。相手候補は5頭いる。だがオレンジの帽子の15番が逃げ粘るのが確認できたし、きわどい4着も無視した黄色帽子の10番であることを確認していた。ほんの1、2秒のあいだに自分の買った馬券の反省とハズレを確認するのだから、私の頭の回転もまだ捨てたもんじゃないと思った。

 当たったのは記念に買ったブラックエンブレムの単勝100円のみ。それはそれでしかたないが、この馬連と馬単は取りたかった。本命リトルアマポーラ、対抗ブラックエンブレム、単穴ムードインディゴだったのだから。



 秋華賞の翌日、プロヴィナージュ出走の経緯、小島調教師のブログへの非難等を知る。小島調教師の出走に踏みきるまでのブログ文を読んだり、小島厩舎ファンのおめでとうの声、よろこびのコメントを聞いたりして、後付けで楽しんだ。これはやはりレース前に知りたかった。すると味わいがまったく違うし、私はブラックエンブレムとリトルアマポーラの2頭軸流し3連複の相手にぜったいプロヴィナージュを挿れていた。挿れても外れるのだが、それは関係ない。レースでの興奮度合が違う。この「物語」を知らなかったので、歴史的大波乱を半分しか楽しめなかったようで悔しい。





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梶山さんの一千万馬券

 馬券生活者の梶山徹夫さんがこの一千万馬券を取り逃がした。

 梶山さんは秋華賞前日のブログで以下の文を書いていた。「同窓会仲間」とは高校生時代の友人。GⅠのとき、みんなで千円ずつ出しあって遊び馬券を買っている。
 秋華賞で自分の馬券が外れたのを確認したとき、すぐに前夜読んだ梶山さんのブログが浮かんできた。たしかその中にプロヴィナージュの名があった。「梶山さん、一千万馬券、取ったんじゃないか!?」と。急いで確認に飛んだ。

http://www.aikeiba.com/kajiyama/2008/10/post_635.html#more

同窓仲間7名の共同買いの3連単が当たれば、来年の還暦旅行の費用が一気に出る指名馬となり、博打屋の本命が入ってないがそれはそれで当たって欲しい。


博打屋は指名しないこととなっており、6名の指名は
ムードインディゴ、ソーマジック、ブラックエンブレム、マイネレーツェル、トールポピー、プロウ゛ィナージュである。


5頭ボックスしか買えないので1頭博打屋決裁で削除する。


これは大変な責任である。

デタラメ買いだからこそ意味があるのであり、下手に選ぶと当たらない。


大波乱とはそう言うものだ。

生きた心地がしないのを承知で一番人気のないプロウ゛ィナージュを外し、余った1000円で単複を買う決断をした。


さて、夢の3連単となるか楽しみだが、博打屋の心境は複雑だ。


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 資金は7人で7千円。6人の友人が指名する馬は6頭。そこから梶山さんの権限で1頭削除し、5頭の3連単ボックス60点買いをし、残りの千円は同じく梶山さん権限で何かの単複を買ったりする。
 今回梶山さんは6頭の中からプロヴィナージュを消して、残り5頭のボックスとした。餘った千円はプロヴィナージュの複勝にした。これが6210円ついたので7千円の資金は6万2千100円になり、10倍近くに増えたのだが……。
 もしも梶山さんの権限で消す1頭がプロヴィナージュではなくソーマジック、マイネレーツェル、トールポピーだったなら1098万円を手にしていたことになる。

 逃した一千万は大きい。でもそんなもの自分だけだったらなんてことはない。身悶えするほど悔しいが単純な悔しさである。この話できついのは「共同馬券」であり、プロヴィナージュを外したのが梶山さんの決断だったということだ。
 こういうとき、当たったらおめでとうを、かすったら残念でしたねとよく電話するが、今回は出来なかった。梶山さんの気持ちを思ったらとてもじゃないが電話は出来なかった。

 翌日、梶山さんは「哀・愁・華賞」と題して、その辺の心境を書いたが、なんとも、我が事のように胸が痛んで読むのが辛かった。

http://www.aikeiba.com/kajiyama/2008/10/post_638.html#more

 小島厩舎の「プロヴィナージュ物語」に乗り遅れてしまった私には、梶山さんのこの「痛恨の取り逃がし」が心に残る秋華賞となった。

10/26  菊花賞敗戦記──それはわかっていたけれど……

 皐月賞馬もダービー馬もいないむずかしい菊花賞だった。しかもダービー馬はトライアルの神戸新聞杯を快勝して天皇賞(秋)に向かった。そのことは血統的にあちらの方が向いているだろうから賛成だ。菊花賞はつまらないが秋天はおもしろくなった。

 上がり馬のオウケンブルースリが1番人気だが、そのトライアルで3着に完敗しているのだから熱はあがらない。2着のブラックシェルも不出走。1、2着不出走での人気だ。
 お手馬のいなくなった武豊はスマートギアに乗ってきた。1000万条件を勝ったばかりのこの馬が鞍上の魅力から穴馬になるレヴェル。
 モチベーションを無理に高めれば好きな内田の初クラシック制覇、のみ。



 どこからでも入れる混戦模様。こんなときこそ血統だ。そして菊花賞の血統遊びといえばリアルシャダイになる。この辺は長年競馬をやっていれば誰でも思いつく。母の父にリアルシャダイがいるのは1枠1番のフローテーション。それは私にもわかっていた。何人かの血統好きがこの馬に重い印を打っているのを見掛けた。それを見る前から血統に詳しくない私も「菊花賞──長距離血統=リアルシャダイ→フローテーション」は気づいていた。春の天皇賞を勝ったアドマイヤジュピタも母父がリアルシャダイである。珍しくその春天をアドマイヤジュピタが好きなものだから当てていた。そのときもフレンチデビュティに3200は無理かと思ったが、母父リアルシャダイで本命に出来た。フローテーションはリアルシャダイにスペシャルウィーク。長距離適性はアドマイヤジュピタ以上だろう。

 しかしここのところの成績が悪すぎる。皐月賞11着、ダービー8着、神戸新聞杯12着。根性なしの私にはこの馬から馬券を組むことが出来なかった。
 結局私は、内田のオウケンブルースリも信じられず、フローテーションから行く根性もなく、面識のある小桧山厩舎に初のGⅠを、とスマイルジャックとベンチャーナイン(これは騎手の武士沢も大好き)を、皐月賞、ダービーでも本命にしたマイネルチャールズと組合せて3連単を組み、いいところなくハズれた。そのことにはまったく悔いはない。これはこれで私の菊花賞だった。



 私がこの3連単52万馬券をハズしたいちばんの理由は、オウケンブルースリを信じられなかったことにある。2着フローテーションも3着ナムラクレセントもピックアップしてあったから、「1着は内田のオウケンブルースリだ」と、内田の中央初クラシック制覇を願って1着固定にすれば当たっていた。だが神戸新聞杯の1、2着が抜け、3着から押しだされるようにして人気になったこの馬は、私には典型的な「あぶない人気馬」に思えてしまった。馬券をハズしたその事よりも、大好きな内田の中央初クラシック制覇を当てられなかったことが悔しい。これはアンカツのザッツザプレンティの時にも思った。
 馬単のフローテーションとマイネルチャールズやスマイルジャックを持っているのだから、せめてオウケンブルースリとフローテーションの馬単は取りたかった。



 東京競馬場で、友人のIさん夫妻と一緒に見ていた。
「菊花賞はリアルシャダイだ!」という読みをした何人もが帯封をゲットしていたようだ。
 こういうタイプの菊花賞は、そのうちまたあるだろう。そのときもきっとレース後に「わかってはいたんだけど」になるような気がする。何度繰り返してきたことか。

 ともあれ、勝てる菊花賞を落としたジャングルポケットが息子で仇討ちしたことは目出度い。あれで角田はジャングルポケットを下ろされ、ペリエが乗ったジャンポケは見事にオペラオーを負かしてジャパンカップを勝つ。そして翌年、角田は人気薄のヒシミラクルで菊花賞を勝って降板させられた恨みを晴らした。連続ドラマだなあ、競馬は。
 





 ジャンポケを負かして菊花賞を勝ったマンハッタンカフェは、その後有馬記念、天皇賞春を勝って菊花賞勝ちがフロックでないことを証明した。種牡馬としても成功している。アグネスタキオン、クロフネ、ジャングルポケット、マンハッタンカフェと、みな種牡馬でも成功しているのだからすごい世代だ。
11/2  天皇賞・秋、的中記──歴史的名勝負!

 2008年の私の最大の失敗はディープスカイをマイナーと決めつけたことだった。さすがにダービー、神戸新聞杯と見て、この馬の力を見直した。しかし同世代との戦いのみ。まだ信じていない。とはいえ府中の2000は大丈夫だろう。

 ウオッカ派とダイワスカーレット派。私はウオッカ派である。
 阪神JF。1勝馬のウオッカは抽籤で出られるかどうか未定だったが、この馬に乗りたい四位は他馬の騎乗依頼を断り、空けて待っていた、とスポーツ紙にあった。見事抽籤を突破しての出走。そこまで四位が惚れているなら応援しようと、それで私は、断然人気の武豊騎乗アストンマーチャンというふざけた馬名の馬より、本来はタニノウオッカなのに、あえて冠号をとって「より強く」とウオッカにしたこの馬に賭けてみた。3連単1着固定。相手5頭の20点勝負。とはいえメインは馬を見て買う中山だから、100円ずつのいわば遊び馬券、心情馬券だった。

 中山にいた。勝負はターコイズステークス。穴馬券を千円ずつあれやこれや食いちらかしたら、3連単で3600円という低配当。オケラになってしまった。
 JFは心情馬券のようなものだからまったく期待していなかった。さして期待することもなくモニターで見た。なのにウオッカが見事に勝つ。「しまった、千円単位で勝負するのはこっちだったか」と悔いた。この配当14240円はうれしかった。といっても、すぐに中山の最終につっこんでまたオケラに戻るのだが。
 以来いまにいたるまで、ウオッカは格別にいとしい馬である。ダービで初対面したが神々しいほどに光り輝いていた。あのウオッカは永遠に忘れない。
 前哨戦毎日王冠の逃げもよかった。万全の調子で本番に臨める。



 ウオッカ1着固定の3連単を組む。相手本戦はもちろんダイワスカーレットとディープスカイだが、可能性のある馬はいくらでもいる。エアシェイディ、カンパニー、サクラメガワンダー。アサクサキングスの復活もありそうだし、内田の乗るポップロックも押さえておきたい。
 というわけでウオッカ1着固定、相手7頭の42点勝負。均等買い。と書けばもうオチは明白。結果3250円だったのでガミってしまったのである。だったら大落胆かとなるが、そうでもなかった。

 ウオッカは負けたと思った。どこからどうみてもダイワスカーレットが勝っていた。まずこういうときの見まちがいはない。いままで見まちがえたのは、スペシャルウィークの有馬記念ぐらいだ。ぜったいにグラスワンダーを交わしていた。武と一緒にガッツポーズをやった。あの負けはいまだに納得できない。あれさえなきゃ年度代表馬も文句なしだった。

 愕然としていた。届いていない。勝負判定の長いことが不思議だった。誰の目にも勝ったのはダイワスカーレットなのは明らかだ。武よ、仕掛けが遅すぎる。あの馬を負かすにはもっと早めに並びかけて叩きあわねばダメだ。それにしてもダイワスカーレットという馬のなんと強いことだろう。あんな激戦になりながらアンカツは横を見てライバル達の脚を計っていた。ウオッカは名牝だがダイワスカーレットはバケモノだ。がっくりと肩を落とし、私は意気消沈していた。といって悔いはない。ウオッカ1着固定かダイワスカーレット1着固定しかない馬券だ。迷うことなく好きな方のウオッカ1着固定で組んだ。いや本当は迷いに迷った。最後は自分に「どっちが好きか?」と問い掛けウオッカにした。それで負けた。ハズれて悔しいけど悔いはない。

 以前の血気盛んな私だったら馬券を破りすてていた。負けは確定しているのだから。長い長い勝負判定。その間、もしかしたらと思うことすらなかった。なんでこんなに長くなるのか判らないが、結局はダイワスカーレットである。決まっている。しかし強い馬だ。負けたけど、ここはダイワスカーレットを賞讃しよう。自分でペースを作り、あの時計で勝つ。あんな凄い馬はいない。狙いのカンパニー、エアシェイディ、サクラメガワンダーがみんな来ていたから、あれでディープスカイの3着がなくウオッカが勝っての穴馬券的中だったら未練が残ったかも知れない。でも三強がすばらしい時計で上位独占した歴史的天皇賞だ。ディープスカイも強かった。マイラーだと思っていた自分を恥じる。ダイワスカーレット、ウオッカとあの時計で差のない勝負をした。見事だ。1、3着はともにアグネスタキオンの仔。サンデーの後継ぎ一番手はこの馬だと認めねばならないようだ。
 いまの私にはずいぶとん高い観戦料となったがいいものを見せてもらった。今日はダイワスカーレットに乾杯しよう。



 と思っているときに場内がウオーっという喊声で沸き、1着の欄にウオッカの14番が灯ったのである。トリガミなのに背筋がゾクゾクするほど感激した。42000円の損が1万円に減ったのだからうれしい。

 スペシャルウィークで万歳していたらグラスワンダーの馬番が点灯し、「えええ!?」となったのと逆である。
 そんなわけでトリガミだったが感激した心に残る天皇賞となった。牝馬の1、2着は歴史的快挙だが、それは牡馬が弱ければ起きることだ。そうじゃなく、タイムがすばらしい。牡馬は牡馬でがんばったのだ。それよりも強い牝馬がいたのだ。ダイワスカーレットがすばらしい。それに尽きる。ここで通常の文だと、「そしてそのダイワスカーレットを破ったウオッカはもっとすばらしい」となるのだが、ウオッカ派でも私は書かない。この天皇賞の「すばらしい」はダイワスカーレットにのみ捧げる。10着のキングストレイルまでが1分57秒台という天皇賞だった。

 私は今でもスペシャルウィークが勝っていたと信じているように、あの天皇賞もダイワスカーレットが勝っていたのではないかと思っている。





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 頭固定の薄目馬券

 好きな馬を1着固定にしての3連単。相手は薄目に流す。
 この天皇賞ではやった。しかし固く決まった。それがあって有馬記念は出来なかった。有馬記念も「強い馬が頭のときはヒモが狂う」で手広く行けばよかったのだが……。

11/16  エリザベス女王杯的中記──反省を活かして

 オークスの項に書いたが、牝馬クラシックというのは回顧すると極めて単純である。桜花賞で人気を裏切り、人気の落ちた馬がオークスで来る。秋もそう。牝馬クラシックは「春の人気裏切り馬が秋に来る」の世界なのだ。
 それをわかっていながら、毎年その季節になると忘れてしまい、終ってから、今年もこれでよかったのかと反省する。今年こそ、もうその轍は踏まず、この法則を活かすことにした。

 勝つのは最強のカワカミプリンセスか、桜花賞を2番人気5着、オークスを1番人気で7着のリトルアマポーラだ。武幸四郎じゃ心配だがルメールに乗り替ってきた。この2頭が本命対抗。
 もう1頭ハートマークをつけて応援したいのが秋山のベッラレイア。この3頭を軸にして、万が一の3着候補にレジネッタやアルコセニョーラ、レッドアゲートを加えた。
 
 対して消せるのは、反則でオークスを勝ったトールポピー。非運の兄フサイチホウオーと違ってGⅠは勝ったが、かといって2勝できるほどの運はもっていまい。そして人気薄で桜花賞、オークスを2着し、ここに来て人気の出て来たエフティマイア。こういう馬は人気になると消える。
 秋華賞に出られず話題になったポルトフィーノが出走してきた。どれほど強いのか。これはわからない。でも押さえねばならない。

 いきなりポルトフィーノの武が落馬する大波乱。見事にリトルアマポーラが勝ち、2着3着も本戦的中という私にしては年に一度あるかないかの快挙となった。カラ馬のポルトフィーノが1着でゴールインする珍しい光景。

 しかし落馬した武が心配で喜ぶどころではない。スローヴィデオが流され、発馬してすぐの落馬なのでそれほどの衝撃でもなく、彼が上手に受身を取っているのが確認できた。あれなら大丈夫だ。大怪我はしていない。よかった。
 そう思ってから的中のよろこびが込みあげてきた。

 ポルトフィーノの4角で大外に脹れての、追いこんでの勝利にもすなおに笑えた。





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 このときの落馬と比すと、あの二度目の落馬は、レース中でスピードが乗っていたことでもあり、大怪我をしたのではないかと肝を冷やした。腕の骨折だけで済んだのは不幸中のさいわいだった。騎手はかっこいいけど危険な職業なのだと痛感した。
11/23  マイルCS敗戦記──惚れているのだからそれで良い

 サンデーの直仔、スズカフェニックスとマルカシェンクから行く。ずっと買い続けている。今回のスズカフェニックスはアンカツ騎乗。後藤のサイレントプライド。岩田のスマイルジャック。これらが好きな馬。一応、昨年の2着馬スーパーホーネットには敬意を表するが、この馬、今年も2着か3着なのではないかと思える。失礼ながら、トライアルホースのような気がするのだ。肝腎のGⅠには手の届かない。





 ここまできれいにハズレるとなんの悔いもない。残り少なくなってきたサンデーの直仔を応援し続けるのだ。それでいい。競馬場からサンデーの仔がいなくなるのはいつだろう。



 勝ったブルーメンブラットは、これを最後のレースとして引退した。いいお母さんになるだろう。父はアドマイヤベガ。あらためて早世が惜しまれる。

11/30  JC敗戦記──行かなきゃ当たってたのになあ……

 考えに考えぬいた結果、人気の日本馬と心中することに決めた。魅力的な外国馬もいないし、今回も日本馬のものだろう。最近有力な外国馬が来なくなったが、いちばんの理由は「勝てないから」だそうだ。金が稼げなければ日本まで来る意味はない。それだけ本当に日本馬は強くなったのだ。第一回から見ている私には隔世の感がする。
 今回も勝つのは日本馬だろう。最有力候補はウオッカとディープスカイ。今回はディープの逆転があるかも知れない。今年の私の最悪の不明はディープスカイをマイラーと決めつけダービーで軽視したことだ。NHKマイルカップでは1着固定の本命にしたのに。それはみなアグネスタキオンは2000メートルまでと決めたことから来ている。無事ダービーに出たとしても府中の2400ではジャングルポケットに逆転されたのではないかと思っているのだが、産駒の活躍を見れば不明を恥じそろそろ白旗を揚げるべきか。



 ウオッカ、ディープスカイの2頭軸マルチ3連単。相手は心情的に石橋の乗るメイショウサムソン、東京でも強いはずのマツリダゴッホ、内田の乗る菊花賞馬オウケンブルースリ、菊花賞以後不調だがこの辺で一発がありそうなアサクサキングス、オクトーバーS、アルゼンチン共和国杯と府中で安定した走りのスクリーンヒーロー。
 500円ずつ30点の合計15000円。これを今年のJC参加費としてIPATで購入し、昼酒を飲みつつ部屋で観戦する予定だった。それが朝の八時。IPATに接続し、オッズも見て、ボタンを押す寸前だったが、焦ることもないと、寝た。投票は直前でいい。



 目覚めて昼。すばらしい秋日和。窓から秋の陽射しが降りそそいでいる。
 これはなあ、やはり行くべきだ。来週から中山だ。ここのところあまりに遠い中山は敬遠している。今日行かなかったら後々まで後悔する。そう思えた。(後々まで「行ったことを後悔する」ことになるのだが、それはそのときは知らない。)

 ジャパンカップも今年で28回目。ほとんど行っている。行ってないのは、メジロマックイーンが完敗した(4着だが完敗)年、ゴールデンフェザントが勝った年か。あのときはチェンマイのロイカトーン(燈篭流し)が見たくて出かけてしまったのだった。あとはいつだ。ファルブラヴが勝った年はなぜか後楽園で馬券を買っていた。モニターを見ていて、ファルブラヴとシンボリクリスエスで取ったと思ったら、内側にもう1頭買っていないサラファンがいたのだった。
 ということは27回中25回見ているのか。だったらこの28回目も行くべきだ。そう思って起き出した。

 つけっぱなしのデスクトップPCはIPATが表示され、ウオッカ、ディープスカイ2頭軸マルチ3連単30点、合計15000円がボタンを押すだけになっている。現場に行くのだ。馬も見ていないこんな馬券はもう必要ない。消す。PCの電源を落として、出かけた。



 パドックで馬券生活者(最近は競馬以外にも競輪や競艇も買うので「博奕屋」と称しているらしい)梶山徹夫さんと一緒に馬を見る。私はよく梶山さんに「どの馬から行くんですか」と問う。といって梶山さんの結論に従うわけではない。古いファイルにあるが、梶山さんはフサイチホウオーの強さを絶讃していた。私はそのとき4戦4勝の彼の馬体に大物感を感じず首を傾げていた。感覚は違う。とはいえ梶山さんの名誉のために附け加えれば、私が「なんでサンデー肌にトニービンでこんな感じの身体なんでしょうか」に、梶山さんも「そうだよね」と言っていた。トニービンのすんなりした感じの馬ではなかった。いまも不思議である。フサイチホウオーとは何だったのだろう。

 この日は梶山さんに狙いの馬を聞かなかった。失敗だった。梶山さんの狙いはスクリーンヒーローだったのだ。それはあとでブログでも自慢している。梶山さんはスクリーンヒーローから行って儲けた。このとき聞いていれば私ももっと重視したかも知れない。

 テレビディレクタの高橋さんも隣にいる。アサクサキングスの馬体が最高に充実している、これから行くと鼻息が荒い。私のウオッカとディープスカイの相手にもアサクサキングスは入っているのでこれは問題ない。

 目の前をスクリーンヒーローが通る。鞍上のデムーロに「デムーロ!」と声が掛かり、彼が馬上からキョロキョロした。こういう場合、外国人騎手にはファーストネームで「ミルコ!」が正しいのだろう。ロンシャンで見ているときも、ペリエにはペリエではなく「オリビエ~」と声が掛かっていたから。



 馬券を買うとき、私は、勝つのはウオッカかディープスカイだと決めていた。その他の日本馬が来ても3着だ。唯一メイショウサムソンの「石橋、涙の優勝」に心を引かれるが、充実一途の2頭と比べ、サムソンはもっさりしているように感じた。ピークは過ぎたのだろう。

 部屋では「2頭軸マルチ」と考えていたが、マルチは必要ない。2頭を1-2着固定にした。相手は5頭。すると買い目は一気に10点に減る。3千円10点買いにした。



 デムーロのスクリーンヒーローが抜けだして勝ったとき、ハズレを確認しつつ真っ先に思ったのが、「家で買っていれば当たっていた」だった。JC史上最高の680倍の配当。IPATで2頭軸マルチ30点を買い、昼酒を飲みつつテレビ観戦していたなら、34万の払戻にバンザイしていた。出無精がせっかくの好天だからと穴蔵から抜けだしてきたら、こんな残酷な結末が待っていた。しかも金額は倍にして負けた。





 最終レース。アプローズ賞。1着テイエムアタックは固い。ここから3連単の大穴を組む。単勝1.7倍のテイエムアタックが勝っても2、3着が狂えば50万馬券、100万馬券はいくらでもある。
 中でも狙いは1番のノープロブレムだ。丸一年前、同じこのアプローズ賞に出走し、2番人気で12着大敗。そこから丸一年の休養。一年ぶりのレースがこれ。そして13番人気。絶好の穴馬である。
 テイエムアタックの1着固定にノープロブレムを2、3着につけてバラバラと買う。あれやこれや憑かれたように買い、有り金全部16000円を投じた。電車賃もないがSuicaがあるからとりあえず帰れる。

 結果、2、3着も人気馬が来て7860円の配当。それを100円持っていた。いやこれも家にいたときは大本線。テイエムアタック、ライブコンサートの1、2着固定でほぼ決まりと思っていた。部屋で買っていたなら、JCの34万的中に気をよくし、ほろ酔い機嫌で気楽にこの3連単も千円ずつ10点ぐらい参加して、楽々と78倍を当てていた。捩れた時空は悪い方へと流れて行く。

 狙いのノープロブレムが4着に来ている。3着に届いていたら12-16-2で400倍。2番人気のライブコンサートが消えていたら(そんなこと考えてもしょうがないけど、パドックでの出来はよく見えず、軽視した)12-5-2で780倍。むなしい。



 払戻しの全財産7860円を持って飲み会に行く。ワリカンは5千円程度。なんとかなるだろう。

 JCはハズレっぱなし。いい思いをしていない。苦い記憶ばかり。思い出の的中馬券もない。古傷をつっつくのは厭だが思いきって今調べてみたら、当たったのはルドルフの勝った昭和60年のみ。ハズレかたは色々だが毎年ほぼ完敗。こういう「家でIPATで買っていれば当たっていた」は初体験。これはこれで忘れられないJCになった。
 来年は絶対「家でIPATのJC」にしよう。

12/7  JCダート敗戦記──世代交代、という読み間違い

国内のダートGⅠ連勝中の王者ヴァーミリアンの防衛劇と読むか!?
 ドバイWCの4着を挟んで6連勝中。前走の園田では、小回りコースなのにきっちりサクセスブロッケンを捉え、突き放した。あれは新境地だった。武は「馬体が斜めに傾ぐような感じでコーナーを廻った」と語っている。あのコースでサクセスブロッケンを完封するのだから藝域は広い。
 素直に断然人気のヴァーミリアンを軸にして馬券を組むか。相手筆頭は3歳ナンバーワンのサクセスブロッケン。ダービーでも単勝を買ったぐらい応援している。あとはダートGⅠ常連のサンライズバッカス、ブルーコンコルドあたり。

カネヒキリ、復活劇と読むか!?
 しかしそれほど強いヴァーミリアンだが、私にはこの馬に対する畏敬の念がない。というのは同期のカネヒキリの方が強かったからだ。元々は芝馬でラジオたんぱ杯を勝っている。クラシック路線で大敗してダートに変更したが、カネヒキリが勝ったフェブラリーステークスでは5着。それから強くなってダート路線で連勝するが、それはカネヒキリが休んでいたあいだだ。同期の王者はカネヒキリという感が強い。こちらはペリエが騎乗したデビュー3戦目、中山初登場のぶっちぎりからずっと目の当たりにしているので強さを体感している。

 屈腱炎を新治療法で克服しての2年半ぶりの前走、武蔵野ステークスは9着に敗れたが、内に包まれたままなにもしていなかった。なにも出来なかったというのが正しい表現だろうが、なにもしなかったように思えた。脚もとの確認で一周してきた感じだ。武が「JCDでヴァーミリアンの敵になるのはこの馬かも」と言ったそうだ。両方とも武のお手馬だった。復活の手ごたえを感じとったのだろう。私も武蔵野ステークスでカネヒキリを買い、9着だから大敗なのだが、不思議に負けた気がしなかった。能力の30%しか出していない感じだった。
 カネヒキリ1着固定。2、3着にヴァーミリアンを置いて、相手に何頭かを選ぶ。カネヒキリが頭なら相手に7頭ぐらい選んでの14点買いでも充分にプラスになる。

世代交代の時期と読む
 ヴァーミリアンもカネヒキリも6歳、むかしでいうと7歳だ。ここは生きの良い世代との交代があってもいい。その代表はサクセスブロッケン。前走の園田での着順を逆転して、サクセスブロッケン1着、ヴァーミリアン2着で組む3連単。

 しかし今回それよりもさらに魅力的な世代交代の楽しみが出て来た。世界的名血カジノドライヴの参戦だ。本来は国内ではまだ条件馬だがアメリカでのGⅡ勝ちが考慮されての特別参戦。鞍上にはアンカツを配置してきた。カジノドライヴがぶっちぎりの楽勝をして、桁違いの強さを発揮することもあろう。それはそれで楽しい。それでこそ競馬の楽しみだ。
 
 私は血統評論家・笠雄二郎さんのメールマガジンを拝読しているのだが、笠さんは「この馬が日本で走るだけで奇蹟。JCDはだまってこの馬の単勝を買って、見る競馬」とまで言っている。たしかによくこの血統の馬を買えたものだ。本来ならアメリカで兄姉と同じようにベルモントステークスを勝ち、来年か再来年に鳴り物入りでJCDにやってくる目玉商品のような馬である。それが日本馬として、しかもJRAの計らいで特別参加として出走するのだ。これは競馬的楽しみとして買わねばならない。

 だったらここは私もカジノドライヴの3連単1着固定にして、相手に同期の代表としてサクセスブロッケン、旧世代の代表としてヴァーミリアン、カネヒキリ、サンライズバッカス、ブルーコンコルド等を選んで買ってみるか。

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 正解はだった。カネヒキリが見事に復活し、2着にメイショウトウコン、3着がヴァーミリアンだった。一応、的中のパターンを読んでいたことにはなる……。

 結論として私は、「カネヒキリ1着固定──カネヒキリ復活!」と、「カジノドライヴ1着固定──新星誕生!」という2種類の3連単馬券で勝負した。いやいや後々のために正確に書いておこう、勝負はしていない、小銭参加である。初の阪神JCD、アメリカ馬初体験の右回り、1800という距離、不確定要素が多すぎる。

「右回りも左回りもたいして関係ない。アメリカ馬に人気のない今回こそ穴馬券のチャンスだ」と言っていた馬券上手の友人もいた。思わずアメリカ馬から大穴3連単を買いまくりたくもなったが我慢した。もちろん基本中の基本はJCで負けて資金がなかったからである。当てていたらきっとろくでもない馬券(それはレース後の結果論でしかないが)を買いまくっていたことだろう。事実レース前に「ろくでもない馬券」なんてものはない。すべてが可能性と夢を含んだまともな馬券なのだ。

 どちらかひとつにすべきであり、まったく傾向の違う2種類の馬券を買うのはみっともないとも思う。でも好きな馬、応援する馬ひとすじの馬券も競馬なら、共通性のないこういうものを買うのも(買えるのも)競馬的な遊びの醍醐味だろう。そしてそれが出来るようになったのは、100円で流して遊べる馬券が出来たからである。枠連しかない時代だったら、枠連を2点と、カジノドライヴの単勝を買うぐらいしか遊べない。いい時代になった。



 ふたつの馬券の内、「カネヒキリ復活!」が正解であり、「カネヒキリ1着固定で、ヴァーミリアン2、3着固定」だから、見事的中のようだが外れた。これに限らず、5種類も6種類も想定したバターンの中に2着メイショウトウコンが入っていなかった。好きなワンダースピード、関東から参戦するワイルドワンダー、28戦目にして初ダートに挑むアドマイヤフジ、地方代表としてフリオーソ、格下ながら抜群の安定度を誇るアメリカのティンカップチャリスと、伏兵陣をあれこれ検討したが、なぜかメイショウトウコンが最初から抜けおちていた。園田の3着を見て、メンバー強化の今回はどう考えても4着以下と判断したのだろう。
 ゴール前、カネヒキリを交わすほどの末脚を見せたこの馬を完全に無視していたのだから、どのパターンになっても絶対に当たらないレースだった。3連単どころか馬連でも3連複でも、なにを買っても当たらない。2着馬を完全無視している。馬券的にはなんともむなしいJCDとなった。

 4着までを6歳馬が独占し、5着も8歳馬のブルーコンコルドだった。
「カネヒキリ復活」と「世代交代」馬券は金銭的には50%ずつで同等だが、気分的、というか期待度的には、「世代交代」8割、「復活」2割ぐらいだった。カジノドライヴとサクセスブロッケンの一騎討ちになり、カネヒキリとヴァーミリアンという旧王者がそれにすがりつくという、鮮やかな「世代交代劇」が、私がこのJCDに描いた映像だった。完敗である。

 ところが、そういうまったく傾向の違う2種類の馬券での小銭参加だったから、終った後、いい映画を見たような満足感があった。もしかして、競馬ってこういうふうに楽しむのが横道なのではないかとすら思った。こういうふうに小銭参加して、負けつづけてもたいした金額ではないし、10回に1回も当たればほとんど回収できる。もっとか。3連単の時代のいま、20回に1回、30回に1回でも可能だ。へんに律義な馬券に絞らず、こんなものでいいのかもしれない。と、いろいろ考えた初阪神JCDだった。



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 カネヒキリ、完全復活!

 年末の大井の東京大賞典でもカネヒキリは完勝した。2着にヴァーミリアン。これで完全に、両者の力関係ははっきりした。失礼な表現ながらヴァーミリアンの活躍は「空き巣狙い」「鬼のいぬ間に」であったことが証明されてしまった。カネヒキリ陣営は鼻高々だろうが、ヴァーミリアン陣営の意気消沈を思うと気の毒になる。3着にサクセスブロッケン。鞍上を内田に強化してのこの結果だから、これまた現時点での古豪との力関係が確定した。
 この3連単は16倍。取りはしたが儲からない。やはりJCDの690倍を当てないと。

 年が明けて、カジノドライヴは1600万条件のアレキサンドライトステークスに出走し、断然の支持を得る。アメリカでGⅡを勝っているのだが日本ではまだ賞金的にこんなものだ。「人気先行」「絶好のカモ」と言って喜んだひねくれ者もいたが、それを嘲笑うかのように楽勝した。本物である。そうなるとますますカネヒキリの強さが光る。

 年明けて、カネヒキリは川崎記念も楽勝。これは戸崎のフリオーソがうまく逃げて、後ろを気にすると届かないパターンになってしまう展開だったが、ルメールは平然とフリオーソに絡んで行き、捕まえた。前も後ろも心配していない。馬の力を信頼している一流ジョッキーの騎乗がうつくしかった。3着に離れてサクセスブロッケン。

 復帰後GⅠ3連勝、通算7勝という数字も立派だが、不治の病である屈腱炎から2年半ぶりに復帰しての活躍がすばらしい。カネヒキリは歴史的名馬になったと言えよう。脚もとの心配があるので外国遠征はせず、そっちは若駒のカジノドライヴが果敢に挑戦するようだ。

 順調ならカネヒキリは楽々と日本のGⅠ最多勝記録を更新するだろう。ただその点に関しては、ルドルフ、オペラオー、ディープとは中身が違うので手放しで礼讃する気はない。
 Racing Viewer体験記

伝説の新馬戦──アンライバルド、リーチザクラウン、ブエナビスタ


 私はBroadbandで常時接続しているけれどインターネットの競馬情報とは無縁である。情報過多でむしろ私にはじゃまになる。今まで通りのスポーツ紙で情報を得つつ週末を待つ形で充分だった。POGにも興味がないしもちろんやっていない。馬券の主体は古馬戦であり、私にとって2歳馬とは、新馬や特別、2歳ステークスを勝って「話題になってから目を留めるもの」だった。むかしからの習慣で、年が明け「クラシックの足音」が聞こえてきてから気にする存在だった。

 もともと大方の競馬ファンにとって新馬戦や未勝利戦はそういうものであり、それに一喜一憂するのは厩舎や馬主、牧場等の関係者だけだった。ところが昨今は共同馬主やPOGがブームなものだから新馬戦が大人気である。なにしろ愛読しているサンスポなど、記者自身が「いよいよぼくの期待馬がデビューします」と紙面で書いているほどなのだ。正直、うんざりする。あれはやめてもらいたい。こども自慢をする親と同じでみっともない。それでもこどもはまだ本当に自分のものだからいいが、POGって假想である。
 旧知の丹下日出夫さんが「馬」社がつぶれ毎日新聞に移ったというので彼のブログを探して行ってみた。するともう「おれの馬」「やつの馬」の話題ばかりだった。そういや丹下さんはPOG方面では大御所なのだった。



 世がそういうこともあり、私はますますそれらから遠ざかっていった。私も新馬戦や未勝利戦の馬券は買ってきたが、それは競馬場で馬を見てである。いま競馬場に皆勤していないし、このごろは行くときも、午後のいくつかのレースに絞るようになってしまった。新馬戦のニュースはスポーツ紙で見る程度だった。

 Browserの「お気に入り」は項目別にまとめてある。いま「競馬」の項にあるのは、JRAとniftyやYahooのデータベースのみである。唯一毎日読んでいるブログが梶山徹夫さんのものになる。梶山さんのは現場主義の馬券話であり、POG等と無縁であるのがすっきりしていていい。
 私にとって新馬戦や2歳ステークスは縁遠いものとなった。編輯者のYさんが2歳ステークスで100万馬券を当てた話を聞けばうらやましいとは思うが、それはまた逆に100万馬券が出るのが2歳ステークスなのであり、POGもやっていず、血統にも疎い私は、そういう不確実なレースにはちかよらないのが無難なのだった。

 だからスポーツ紙の「リーチザクラウン大差ぶっちぎり──期待のダービー候補」を読んでも、そのリーチザクラウンを新馬戦で負かしたアンライバルドや、その新馬戦で1番人気になり3着に敗れたブエナビスタのことを知っても、「そうかそうか、来春の有力馬として覚えておこう」で終りだった。私にとって彼らの話題はその程度である。本当に凄い馬なのか、それとも2歳時の一発のみなのかはクラシックシーズンになればわかることであり、こんな時期からそういう智識を積む必要はなかったのである。

 さらには、私はいまだにグリーンチャネルなるものを見たことがない。契約したことがないのはもちろん、「見たことすらない」のである。これを契約していて「話題の2歳馬」を見ているとまた感覚は違ってくるのだろう。だが私にとって競馬とは競馬場で馬を見てやるものであり、基本は後半4レースでの勝負だ。データは自分の見たレースの記憶頼みである。在宅競馬の今、新馬戦や未勝利戦の時間は、まだ熱心に勝負レースの検討をしたりしている。とまあ、それほど私には2歳の大物は無縁の存在だった。

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 そういうBS、CSと無縁な私(私はBSアンテナすらもっていない。たまに将棋の名人戦や竜王戦の時、NHK-BSを見たいと思う)に、今年ひとつの変化があった。JRA RACING VIEWERというやつである。インターネットで過去のレースがぜんぶ見られるのだ。もちろん有料。グリーンチャンネルすら見たことのない私がそんなもの契約するはずがない。なのに見られるようになった。仕事先の編輯者が特別にそう手配してくれたからだ。ありがたいことである。あちらとしては「もっときっちり仕事せいよ」ということなのだろう。

 たしかにそれを見ると、たとえば「ゲートが開いてから一気の逃げ切り」だと長年思っていたレースが、正しくは「ゲートが開いてすぐに先頭に立ったが、100メートルほどで先頭を譲り、2コーナーまでは2番手だった」というような記憶違いに気づくのだった。だから原稿を「一気の逃げ切り」ではなく、「先行し、2番手から抜けだしての逃げ切り」に改める。すなおにそれまでの不勉強を反省し、便利な時代になったと感謝した。

 私はそのレースのヴィデオをもっている。しかしわずか一行の確認のために15年前のヴィデオを確認するのは骨である。それは怠惰とはすこし違う。確認の意味あいである。だって私の中では120%逃げ切りなのだ。15年間そう思ってきた。目の前で見ているレースなのだ。それを万が一、億の一の確認のために山のようなヴィデオの中から捜しだして見るというのはしんどい。言い訳だけれど、そのレースのことを書くのならもちろん見る。捜しだして何度も見る。そうじゃなくて文章の中でほんの一行、その他大勢のレースとして、「一気に逃げきった」と触れているだけなのである。なのに私の担当編輯者は、それに対して「2コーナーまで2番手の位置取りですが、"逃げ切り"でいいですか?」と問うてくるのである。なんちゅう仕事熱心なひとでしょう。そう指摘されてから私は、RACING VIEWERで確認し、「一気に逃げきった」を「先行し、2番手から抜けだして逃げきった」に直すのである。

 そういうことが続けば、ふとワタクシ事でも、「あれって、どうだったんだっけ?」と思ったとき、調べるようになる。するとまた「ゲートが開いてすぐに先頭で逃げ切り」だと思っていたものが「最初の100メートルは2番手」だと判ったり、「大外から一気に」と思い込んでいたものが、思ったほど大外ではないと気づいたりする。ずいぶんと思い込み違いをしていると知った。



 レーシングビュウアで見ていないレース、特に関西のレースを確認できるようになり、私はその「伝説の新馬戦」とやらを見に行った。
 1番人気は牝馬のブエナビスタ、アンカツ騎乗。2番人気がリーチザクラウン、武豊騎乗。ともにスペシャルウィーク産駒。3番人気がアンライバルド。岩田騎乗。こちらは新種牡馬ネオユニヴァース産駒。
 勝ったのはアンライバルド。3番人気とはいえ1、2番人気の2頭が2倍台だったのと比べると7倍だからずいぶんと離れた人気だった。2着リーチザクラウン、3着ブエナビスタ。

 この新馬戦を見て最も印象的だったのは、3着に敗れたブエナビスタの差し脚だった。いわゆる「他の馬が止まって見える」というヤツで、まるでディープインパクトである。ビワハイジの娘だが、これは大物だろう。あの脚を持っていながら3着とはアンカツが失敗したのか、それともうまく抜けだした岩田がうまいのか。

 2歳馬なんて、年が明けてクラシックトライアルに出て来てから意識する程度だった。2歳の重賞で缺かさず参加するのは阪神JFと朝日杯FS程度。それも阪神JFなんて見たことのない馬を買っていた。私はウオッカのファンであり彼女の勝った阪神JFを当てているが、それ以前の彼女の2走を見ていない。生はもちろんヴィデオですら見ていない。グリーンチャンネルもなく、関西の2歳牝馬なのだから見ていなくて当然だ。

 今までそうであり、これからもそのはずだった。なのにレーシングビュウアでこの新馬戦を見てしまった。3頭の印象は強烈だった。それで私は今まで無縁だった関西の2歳戦、アンライバルド、ブエナビスタ、リーチザクラウンのレースに参戦することになってしまったのだった。馬券歴35年にして初の珍事だった。



 新馬戦のレースを見ることなく、血統や前評判だけでの参加だったらつまらない。というか、しない。そうではなく何度も新馬戦を見ての参加だったから、未勝利戦でも古馬重賞並に楽しめた。レーシングビュウア様々である。これで今年のクラシック戦線は例年以上に楽しめる。

 こういうことをした理由がレーシングビュウア以外にもある。それは3頭の父がスペシャルウィーク、ネオユニヴァースという好きな馬の産駒だったことだ。これは大きい。これらの馬がどんなに大物と噂があっても、見知らぬ血統の外国産馬だったら馬券を買ったりはしなかった。内国産でもあまり興味のない種馬の仔だったらやはり同じだったろう。サンデー産駒の中でも特に好きなスペシャルウィークとネオユニヴァースの仔だった。
 スペシャルウィークの場合は、ちょっと落ち目の時期だったが、孝行娘シーザリオの大活躍でよい牝馬に恵まれたという「物語」もある。ネオユニヴァースも初年度がとにかく勝負だから、よい牝馬が用意されたのだろう。これで走らないと一気にランクが落ちる。これが走ると安泰となる。ネオユニヴァース産駒の活躍はすばらしい。サンデーはまたしてもすごいのを送りこんできた。ゼンノロブロイもディープインパクトも楽しみだ。



 私はもうこれ以上競馬の情報はいらないと思っている。特に不要なのが他者の見解だ。だからもしグリーンチャンネルを引いたとしても、馬券検討番組のようなものは見ないだろう。
 しかしそれとは別に過去のレースは見るべきだ。もっと見て確認したい、すべきだと前々から思っていた。専門紙で「前走7着だが、前が塞がりほとんど競馬になっていない。この敗戦は気にしなくていい」なんてのを読むと、無性にそれを確認したくなった。誰が見てもそうなのか? この馬を本命にして穴馬券を取りたい記者の無理矢理の解釈ではないのか?

 でも条件戦であるからメディアをもたない私には出来なかった。グリーンチャンネルを録画していた場合でも、捜しだすのはそれなりにたいへんだろう。特集番組が流してくれるにせよ、自分で好きな箇所を好きなだけ見たいのとはまた違う。

 それがレーシングビュウアで出来るようになった。好きな時間に好きなだけ。すると、それら記者の解釈は、確かにどうしようもない不利があった場合もあれば、ちょっとこじつけ臭いと思われるレースもあった。いずれにせよ自分の目で確認すれば納得できる。
 週末に気になるレースがあると、出走馬の前走、前々走をレーシングビュウアで確認に行くようになった。まことに便利だと感嘆している。

12/14  JF的中記──惚れた馬のいる歓び

←阪神JF。サンスポより拝借。感謝。

 今までの流れを整理しておこう。
 伝説の新馬戦が10月26日。
 ブエナビスタの2走目が11月15日の土曜日、未勝利戦。
 リーチザクラウンの大差勝ちが11月16日の未勝利戦。エリザベス女王杯の日。
 アンライバルドの2走目が11月29日の京都2歳ステークス。JC前日。新馬勝ちしているこちらはいきなり重賞戦。
 リーチザクラウンの3走目が12月7日の千両賞。JCDの日。
 ブエナビスタの3走目がGⅠ阪神JF。12月14日。
 リーチザクラウンの4走目がラジオNIKKEI杯で12月27日。有馬記念の前日。
 アンライバルドの3走目が年明けて1月24日の若駒ステークス。

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 11月15日。ブエナビスタ2走目の未勝利戦の馬券を取る。3連単1着固定。的中。ただし配当は1260円。ほとんど儲からず(笑)。あの新馬戦で1番強いと思ったのはこの馬の切れ味だったから安心してみていられた。今度はきれいに届いた。すさまじい切れ味である。JFには行けるのか。行ったらこの馬の頭で勝負だと確信する。出られないか?

 11月16日。リーチザクラウンの未勝利戦。3連単1着固定で的中。ただし配当は1450円。これまた儲からず。でもこの大差勝ちには感動した。なにしろ時計がいい。1分47秒4は3歳の重賞のきさらぎ賞の勝ちタイムといっても通用する。それでいて持ったままの大差勝ち。来年のダービー馬は決まったと話題になるのも当然だ。鞍上は父と同じ武豊。ダービー5勝目にリーチである。馬主がスペシャルウィークの臼田さんで勝負服が同じ。これも判別がしやすくていい。内国産のダービー馬からダービー馬が出るといつ以来だろう、ルドルフ・テイオー以来か? (確認したらタニノギムレットとウオッカもそうだった。これワタシ的には盲点になる。)

 11月29日。となったらアンライバルドの2戦目京都2歳ステークスが大本命になるのは当然。この2頭を破っているのだ。私も、3連単の頭が決まっているのだからほってはおけないと参加した。せっかく縁のあった3頭だからクラシックまでずっと追おうと思っていた。京都2歳ステークスなんて馬券を買った記憶がない。この時期の関西の若駒のレースなんて買ったことがない。それでも参加した。もちろん3連単1着固定で。
 ところが負けるのである、3着に。これには落胆した。簡単な馬券であり、「もしかして負けるかも」とフォーメーションにすれば当てられた。しかしそれは出来ない。ブエナビスタとリーチザクラウンの勝利を見て、それを負かした馬の2戦目なのだから1着固定だろう。
 京都の9レース、2時35分発走。テレ東の土曜競馬中継で見られた。(当時は午後2時半から、現在は3時から。地上波競馬ファンには厳しい時代だ。)

 ジャパンカップの前日、これには激しく落ちこんだ。アンライバルドはこのまま無敗で突っ走り、来年リーチザクラウンとどこかでぶつかる。それを楽しみにしていた。なのにここで3着はひどい。これでは新馬戦での勝利がフロックになってしまうし、なによりブエナビスタとリーチザクラウンの勝利にケチがつく。がっかりした。





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 12月7日。リーチザクラウンの3戦目。千両賞。500万条件。初めて阪神で行われるJCDの日である。武豊落馬負傷でアンカツ騎乗。3馬身差楽勝。持ったままの逃げ切り。アンライバルドの実力にはハテナマークが着いてしまったが、こちらは文句なしのようだ。1着固定3連単的中。しかし1580円。穴を狙ったのでトリガミ。うれしいやら恥ずかしいやら。





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 そして阪神JF。ブエナビスタの問題は1勝馬として出走できるか否か、それだけだった。運よく抽籤を潜りぬけて出走できた。あとはもう迷うことなく3連単の頭に固定する。未勝利を勝ったばかりなのに2勝馬を凌いで断然の1番人気となる。当然だ、強さがちがう。この馬を軽視した人の見識を疑うほどに。

 しかし、そう言えるのもレーシングビュウアで新馬と未勝利戦を見ているから。もしも見ていなかったら、私は人気先行とばかりに、この馬を消して穴狙いに行った可能性もある。ただGⅠであるから、地上波の放送でも未勝利戦を流していた。あれは一度見れば誰でもただ者ではないと気づく。
 だから軽視無視はなかったと思う。大好きなスペシャルウィークの娘であるし。それでも「もしもレーシングビュウアを見ていなかったら」は、それはそれで興味深い想像になる。私は2009年の牝馬路線はすべてブエナビスタ本命だが、もしもレーシングビュウアで新馬戦、未勝利戦を見ていず、軽視してJFをハズしたなら、アンチになっていた可能性もあるのだ。好きな血統の強い馬をすなおに好きになれて、あらためてレーシングビュウアに感謝したくなる。

 今度はバカな馬券は買わなかった。いや「大本命がいるときはヒモには薄目が来る」という確言もあるから、バカな馬券なんてのはあり得ないのだが。
 1着ブエナビスタ、2着3着にダノンベルベール(3番人気)を固定した3連単、合計8点が本線。好きな後藤の乗る関東馬ダノンベルベールを信じた。あと、念のためにブエナビスタ1着固定相手5頭の3連単20点を小銭で押える。

 またもあのブエナビスタの切れ味が炸裂。2着にもダノンベルベールが来て、3連単11760円とあまり高くはなかったが、馬券下手の私としては本線的中の快挙となった。なんといっても頭固定で当たる馬券は気持ちがいい。それはボックスとは比較にならない。私はボックス馬券は買わない。ボックスだったら当たっていた、がどれほどあったことか。でもなんかあれは、ちょっと的中のときに恥ずかしい感じがするので買わない。







 誰もがもう「来年の牝馬クラシックはブエナビスタで決まり」と言いだした。いまのところライバルはいない。これからどんな馬が名乗りを挙げてくるか。なんとも切れ味が魅力的な馬だ。
 競馬は不確定要素が多い。何が起きるかわからない。それでもこの馬を本命にして桜花賞、オークスを負けてもなんの悔いもない。願うのは、故障せず出て来て欲しいということだけだ。


◎ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

 ブエナビスタとはスペイン語の「美しい景色」。よくある地名だ。南米の馬には同名が多々いると思うのだがどうなのだろう。英語圏の表示ではBuena Vistaだが、スペイン語圏ではVuena Vistaの場合も多い。この馬はどっちだろう。すなおにBか。

 音楽ファンには、ライ・クーダーが発掘して世界的に有名にしたブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの名で親しい。キューバで社会主義体制になる以前から活動していた筋金入りの老ミュージシャンたちをライ・クーダーがプロデュースし、その卓越したテクニックと枯れた味わいが世界的話題となった。写真はその1枚目のアルバムジャケット。ドキュメント映画にもなっている。

 話題になったのはちょうどブエナビスタの父スペシャルウィークの活躍時期と重なる。ともに1997年にデビュウ。スペシャルウィークが最高の活躍を見せる1999年に映画が作られている。この偶然からも応援したくなる馬だ。

 この文章は彼らのアルバムを聞きながら書いた。
 


◎セイウンスカイへの想い

 ブエナビスタ、リーチザクラウンの活躍を見て、シーザリオが父スペシャルウィークにもたらした栄光を思う。大好きなスペシャルウィークの活躍を思うたびに、ライバルだったセイウンスカイのことを思ってせつなくなる。今じゃスペシャルウィークのライバルといえば、グラスワンダー、エルコンドルパサーになってしまい、セイウンスカイは忘れられた存在に近い。あの世界レコードで逃げきった菊花賞、そしてあの長期休養明けから復帰し、逃げ、最下位になった春天を思うと胸が熱くなる。

 鵡川の西山牧場がアラブの馬主に売却されたそうだ。内情が苦しかったとか。セイウンスカイが種馬として成功していたらそれもなかったろう。セイウンスカイが元気な内に会いに行かないと。

12/21  朝日杯FS敗戦記──早期復帰、武と心中!

 右腕を骨折している武豊が、このレースのブレイクランアウトに乗るために早期復帰してきた。土日で騎乗は1頭だけである。関東の馬だ。戸田調教師はどうしても武に乗ってもらいたくて、「復帰が間に合わなければ出走を見送ってもいい」とまで言ったとか。つまりGⅠの朝日杯FSを見送り、年明けのGⅢとか、それでもいいとまで言ったのだ。それに応えて武も脅威の恢復力で復帰してきた。いい話である。ここで応援しなくては武ファンとは言えない。



 馬券は迷うことなく3連単1着固定。相手はセイウンワンダー、フィフスペトル、シェーンヴァルト。エイシンタイガー。3番人気のミッキーパンプキンという馬には正直魅力を感じなかったのだが、内枠の強い朝日杯FSであり、鞍上がペリエなので相手に入れた。3連単1着固定相手5頭20点勝負。

 直前になって、パドックで馬はすこしもよくは見えなかったが、セイウンワンダーが怖くなり、セイウンワンダー1着、ブレイクランアウト2着の3連単を買い足す。4点。

 力強く武ブレイクランアウトが抜けだし、会心の勝利かと思ったが、すこしばかり仕掛けが早く、強引だったのと、内から抜けだした岩田セイウンワンダーの好騎乗があり、武は交わされてしまう。馬券を買い足しておいてよかったとほっとしたのも束の間、強襲してきたルメールのフィフスペトルにも交わされて3着に落ちた。これには「あっ!」とちいさく声が出てしまった。

 まあ、しかたない。好きな本命馬の2着づけまでは抑えに買えるが、3着固定はしない。したくない。
 本命対抗にした2頭がいるレースでフォーメーションを組む場合も、私はその2頭を「1、2着固定」にして本線とし、抑えに「1、3着固定」をすこし買うことはあるが、「2、3着固定」はしたことがない。本命馬を1着になることから外したら、それはもはや本命ではない。それをすれば当たっていたというレースは多々あるが、これぐらいの信念を持たないと。

 武ブレイクランアウトの次のレースは何になるのだろう。もういちど3連単1着固定で行く。そのうち今日の負けを取りもどせるだろう。そう確信している。



12/27  ラジオNIKKEI杯2歳S的中記──ほろ苦い的中

 もちろんリーチザクラウン1着固定3連単で勝負だ。2着もロジユニヴァースで固い。低配当ばかりだが、3着はあやふやだ。すこしぐらい荒れる可能性もある。

 1着リーチザクラウン、2着ロジユニヴァース、3着に相手5頭を選び、2千円ずつ流した。
 IPATに残金500円と出た。
 たいした意味もなく、ロジユニヴァース1着、リーチザクラウン2着の3連単を100円ずつ5点買った。これで残金ゼロ。
 ふだん私がこういうことをするのは、締切直前の虫の知らせだったりする。あまり当たったことはなくなんの頼りにもならない虫の知らせだが。

 このときはそれではなく、かといって念のため、というのでもなく、なんというか、「IPATに500円だけ残しておいてもしょうがない」という感覚だった。土曜日でもあり、明日が有馬記念、私の参加するレースはこれだけだった。勝つにせよ負けるにせよ(もちろん勝つ気なのだが)IPATの残額10500円をきれいに全額投入し、いよいよ明日は決戦の有馬記念だ、という、そんな気分だった。



 リーチザクラウンまさかの敗戦。しかも4馬身も突きはなされた完敗である。呆然としていた。先日のアンライバルドといい、いったいどういうことだ。せっかくブエナビスタがあんな強い勝ちかたをしてあの新馬戦の価値を高めたのに、牡馬2頭がだらしない。失望した。来年のクラシックはリーチザクラウン本命で行こうと決めたのに、その決心が揺らぐ。

 いやいやそれよりも、ロジユニヴァースのなんと強いことよ。ネオユニヴァース産駒は走るなあ。むかしの私なら関東馬のロジユニヴァースと横山を応援し、この馬から買っていたところだ。というか、馬を見られない関西の3歳重賞なんて参戦していないか。関東にもクラシックを狙える凄い馬が現れた。これは楽しみだ。ブレイクランアウトはマイラーだろうし、外国産馬だから、クラシックの関東のエースはこっちだ。ロジユニヴァースの強さに感嘆しつつ、馬券勝負に敗れたことに落胆していた。



 それでもしっかり3着馬は確かめていたから、あの100円が当たったなと思う。うまくゆけば50倍ぐらいついて半分もどってくるだろう。
 リーチザクラウン、ロジユニヴァース、トゥリオンファーレの3連単は30倍。6万になっていたのになあと、今さらながらの未練が湧いてくる。でもここまで完敗ではどうしようもない。なんとかうまく5千円だけでももどってこないだろうか。興味もなく買った馬券なのでオッズを見ていない。

 11050円もついた。10500円買ったので550円の儲けである。うれしかった。溜め息が出た。苦笑しつつ泣きたくなった。なんともほろ苦い結末のラジオNIKKEI2歳Sだった。それでもオケラになるよりはいい。これから忘年会だ。オケラとプラマイゼロ(正しくは550円プラス)には雲泥の差がある。そう自分に言いきかせ、私は忘年会に向かった。勝負はあしただ。

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12/28  有馬記念敗戦記──これは買えません

 いくつものパターンを考えて予想してみた。誰でも同じだろうが、中心はダイワスカーレットとマツリダゴッホである。
 ダイワスカーレットとマツリダゴッホの2頭軸マルチ3連単。しかしこれはつかない。かなり相手を拡げないと。
 デムーロのスクリーンヒーロー。ペリエのアルナスライン。ラストランの武メイショウサムソンとみな人気になっている。ルメールはフローテーション。なんとも騎手が豪華な有馬記念。



 ダイワスカーレットが逃げきり、後方の馬は牽制し合っている内に仕掛けが遅れる。みな前残り。となると、先行するだろうアサクサキングスやメイショウサムソンとの絡みか。
 いやいや、ダイワスカーレットが逃げきる場合には、追い掛けた馬はズブズブになり、連下は荒れるのではないか。となると相手は差し馬、ドリームジャーニーやエアシェイディ。

 しかしそれよりも、JCで4着になり、左回りでも強いところを見せたマツリダゴッホがやはり中山では最強ではないのか。逃げたダイワスカーレットが絡んでくる先行馬とやりあって沈没する。そこから力強く抜けだしたのがマツリダゴッホ。2、3着には、前との争いとは無縁だった後方待機馬。これがいちばん可能性があるように思える。



 JCDで、「カネヒキリ復活」と「新星カジノドライヴ登場」の2種類の馬券を買ったように、ここも「ダイワスカーレット逃げ切り、相手は人気薄差し馬」と、「マツリダゴッホ楽勝、相手は人気薄差し馬」の2種類の3連単馬券を買うことにした。人気2頭の絡みで決まる確立は高いが、それでは儲からない。

 人気でも軽視したのはスクリーンヒーロー。この馬、東京の馬だと思う。中山には似合わない。実際実績もないし、デムーロ騎乗でもここは軽視した。
 大好きな馬でありぜひとも穴馬として取りあげたいが切ったのはベンチャーナイン。鞍上が柴田だからだ。武士沢なら買ったが。
 好きな後藤のエアシェイディは▲評価。



 結果。JCDと同じく、いくつもの予想パターンの中の「3連単ダイワスカーレット1着固定、相手は人気薄の差し馬」が当たりだったが、メイショウトウコンを無視したJCDと同じく、2着のアドマイヤモナークを無視していたので当たるはずのない馬券だった。
 といって完全無視ではない。馬柱チェックのとき、たしかに「アドマイヤモナークって中山巧者なんだよな」と確認し、「これが来たらすごい馬券になるなあ」と思ったことを今も覚えている。そこから踏みだすか、とどまるかで、運命は分かれるのだが。いやいや運命なんて大げさな言葉を使うもんじゃない。競馬という、馬券という遊びの世界の話だ。
 1.3.4着のダイワスカーレット、エアシェイディ、ドリームジャーニー(954倍)はもっていたので多少悔しい思いもしたが、アドマイヤモナークは文句なしのきれいな2着だったので諦めもつく。

 関西の競馬を始めて数ヵ月の芸人が「ダイワスカーレットから1万円ずつ馬単総流し」をして、334万円をゲットし話題になっていた。しかしこれはマツリダゴッホが来たら7万円でありトリガミだ。あまり誉められた馬券ではない。と、そのときは思ったのだが、確認したら、トリガミはマツリダゴッホとの7倍と、スクリーンヒーローとの12倍のみ。あとはもうメイショウサムソンとでも24倍と倍近くなり、エアシェイディとだったら60倍、ドリームジャーニーでも48倍だから、13万円投資する価値はあったのか。まあとにかく、馬券は当てた人が偉い。
 どこかのIT関係の社長もこれを5万円当てて1500万取ったと新聞に載っていた。ブログに公表したようだ。あれだけ公にすると税金の対象になるが、それでも公開してみたかったのだろう(笑)。

 それにしてもマツリダゴッホのエビナの騎乗は最悪だった。
 去年、人気薄マツリダゴッホが勝って3連単80万馬券が出たときは、当分更新されない記録だろうと思ったが、今年、そのマツリダゴッホが今度は人気でこけるという失態で98万馬券となった。いやはやヘンな馬である。

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