競馬雑記

2015

有馬記念が当たるまで
12/20(日)

●買ったはずの馬券が……


 FSは、「武豊の全G1制覇を寿ぎたい、武豊エアスピネル1着固定3連単で勝負」という思いと、「大好きなシーザリオの仔のリオンディーズはエアメサイアの仔のエアスピネルより強いぞ」の思いが錯綜し、となると、2頭の1、2着固定で3着は手広く行くか、いやいやそれはみっともない、勝負するならどっちかの1着固定にしなければ、とさんざん迷った。しかしいずれにせよ配当が低い。当然だエアスピネルは単勝1.7倍の断然人気、リオンディーズも2番人気。3連単の30倍なんて儲からないのを当てても意味はない。長年接してきた武豊のG1完全制覇のレースを当てたい、という気持ちはあるが、それ以上に、こんな安いのを当てても意味はない、のほうが強かった。馬券は儲けねばならないのだ。

 よって、『東スポ』の虎石が「中山最終のベストドリームは確勝!」と押していたこともあり、あえてG1のFSをケンして、中山最終勝負とした。



 買ったのは以下の3連単フォーメーション36点。断然人気は2番のゴットフリート。私流のチェックだと戸崎騎乗の11番ビヨンジオールが必ず来る。そしてデータチェックではサトノアッシュになる。この3頭が軸の3連単。
 自信はあるが、万が一を考え、同じフォーメーションの3連複16点も買う。万が一とは、虎石が強烈に推してきたが私なりの検討では3着候補にしかならなかったベストドリームが勝った場合だ。そのときは元取りの、いやトリガミかな、3連複のみで我慢しよう。3連単3連複合計52点均等買いだから、3連複のみの的中だと52倍つかないとガミになる。まあしかたない。保険だ。というか、虎石が絶対というので真剣に検討したがベストドリームが勝つとは思えない。勝つのは人気のゴットフリートか戸崎のビヨンジオールだろう。3着の撰び間違いでハズれたらあきらめる。



 FSは買わなかったが、買えば1着リオンディーズ、2着エアスピネル、3着シャドウアプローチで3連単385倍が取れていた。同い年のオークス馬と秋華賞馬の仔の一騎討ち。見事なレースだった。そしてやはり母と同じく、シーザリオの仔はエアメサイアの仔より強かった。これからのライバル物語が楽しみだ。
「しまった、こっちで勝負で良かったのか」と思う。しかしそれは結果論。シュウジが残って30倍程度のトリガミの可能性も高かった。さらには4着の人気薄ユウチェンジが届いていたらハズレだ。この決断のケンに悔いはない。問題はここ。「頼むぞ!」と中山の最終をBS11で観る。



 1番人気◎ゴットフリートが勝ち、戸崎の4番人気▲ビヨンジオールが2着、3着に虎石の押していた8番人気△ベストドリームで決着。虎石はベストドリームが厩舎筋からも確勝で単勝から行くと書いていたが、私なりの検討では3着候補でしかなかった。3着枠にのみいれた。3-3-8の軸の3を、ビヨンジオールではなくベストドリームにすべきかと迷ったが、虎石の厩舎情報より自分流の検討を信じた。ゴール前、戸崎のビヨンジオールが2着に飛びこみ、3着のベストドリームを確認した。買えば当たっていたFSをケンし、勝負の最終で負けたらピエロである。

 ただし勝ったゴットフリートが抜けた1番人気だったので、3連単36点、3連複16点を同じフォーメーションで買っていたが、3連単で120倍、3連複で30倍程度の低配当と読んでいた。よろこびも中ぐらいである。
 ところが配当が発表になると、3連複でも85倍、3連単は365倍だという。いまだになぜこんなにつくのかわからない。恥ずかしい話だが、ビンボな今、ひさびさの快勝にガッツポーズをしてしまった。



 ところがところが、わくわくしつつ払戻金を覗くと3連複の分しかない。血が引いた(笑)。なにごとが起きたのかと「照会」で確認すると、なんと私は上の画像にある10番ベストドリームをチェックし忘れ、36点ではなく30点で買っていた。そんなはずはないと何度も見るが、どうやらそうらしい。諦めるしかない。こんなミスは43年の馬券生活で初めてだ。3連複85倍のほうは正しく買っていたようで、収支的にはプラスなのだが、「これでHDDを修理にだせる!」「サイレントギターを買うか」と思ったのが水泡に帰したのだから落胆は大きい。いまこれを書いているのは22:45、16時以降の記憶がないほど落ちこんだ(笑)。

 買い間違いがなければ、有馬の資金にも苦労しなかったし、いやそれどころか、「有馬で勝負せず、おいしい酒と酒菜で年を越そう」ぐらいの餘裕ができたはずだった。
 毎度毎度書くが、かすりもしなかったハズレなんてぜんぜん悔しくない。かすったのが悔しい。まして買ったつもりだったのに買ってなかったはきつい。ベストドリームを消してのハズレなら、「虎石を信じればよかった」と悔いる程度だが、買ったつもりで、当たったとガッツポーズをして、なのに記入ミスでのハズレである。前日のHDDトラブルと同じく、何十年も経験したことのない痛みが二日連続となった。どこまで続くぬかるみぞ。

【追記】──ホープフルステークスはやる!
 買い間違いをせず当たっていたら、ほんとに有馬をケンしてもよかった。で、有馬をケンなら競馬はやらないのかとなるが、やる。ホープフルステークスはやる。ロードクエストが出るからだ。サンデー最後の種牡馬マツリダゴッホが送り出した傑物だ。FSの結果で「来春のクラシックはリオンディーズとエアスピネルの一騎討ち」との見解が多くを占めたが、いやいやこのロードクエストは大物だ。まるでディープみたいに「もったまま」で差し切る。断然人気になるだろうが、ここは3連単1着固定で行く。FSの二強とロードクエストはどっちが強いのだろう。まずは皐月賞か、来年が楽しみだ、とこうなるから競馬はやめられない。
12/26(土)

●有馬記念馬券購入、土曜に終了


 いま土曜の23時。
 急遽日曜に出かけねばならなくなった。リアルタイムで有馬記念を観られない。帰宅してからの録画観戦だ。
 真剣に検討し、土曜の夜に有馬記念の馬券を買った。有馬記念に限らず「前日買い」なんてしたことがない。
 有馬記念は見学というか、ほんのすこしだけ心情馬券を買い、勝負はホープフルステークスのつもりだったが、思った通りロードクエストは断然人気となり、1番人気ロードクエスト1着固定では3連単が30倍50倍の100倍以下ばかり。これでは話にならない。予定変更で、ホープフルステークスをケン、有馬で勝負、となった。

 先週、馬券生活43年目にして初の買い間違いをしてしまった。はっきりと原因はある。昼から一杯やっていたからだ。その状態で、昼前にメインレースを、いやメインレースをやめるという決断をし、最終レースをIPATで買った。それに買い間違い、というか買い洩らしがあって的中を逃した。いまの私にはとても大きな金額で、なんとも悔やまれる買い間違いとなった。



 ここ数年、馬券を買う時間が早くなっている。以前はぎりぎりだった。絞めきりギリギリまで迷って買った。競馬場での癖が残っていたのだろう。メインレースを午前中に買うなんてとんでもないことだったし、まして前日買いなんてとてもじゃないができない。やったことがない。
 いまも思い出す。あのロジユニヴァースのダービー。前日からの検討で買い目が決まっていた。それをそのまま買っていれば3連単21万馬券が500円的中だった。なのに最後の最後まで真剣に考え、迷い、15時からのテレビ中継が始まっても、まだ買っていなかった。そこでフジテレビのデータ「(ここ十年だったか、そんな感じの)皐月賞馬が馬券対象から外れたことはない」を観て、ロジユニヴァース1着固定を1番人気の皐月賞馬アンライバルドに替え、ロジを2着候補に落としたのだった。目の前から消えた105万。テレビの前で茫然としていた。ろくでもないデータを流したフジテレビを恨んだ。しかし責任はそんなものに揺らぐ自分にある。以降、馬券を買うのが早くなった。あれはかなり影響しているのだろう。

 先週も、朝からきちんと検討し、昼前に「メインはケンにして最終で勝負だ」と決めた。そうして早々に昼前に購入した。
 酒を飲みながら検討し、そういう状態で馬券を買ったことはない。もちろん競馬場ではある。それはそれであそびだからいい。今日はそういうことをするぞと決めて出かけた日だ。きちんと勝負する日はもちろんそんなことはしない。
 IPAT馬券師になってからは、ない。先週も検討は素面で、した。だがキイボードを操作し、買い目と金額を入力するときは酒が入っていた。それが買い洩らしの原因だろう。
 今までは、素面で午後2時ぐらいに購入し、それから風呂に入り、酒菜の用意をして、飲みながら15時からのテレビ観戦が多かった。なのに先週はなぜか一足早く昼前から飲み始めてしまった。これが27日の有馬記念の日ならまだわかる。もう本業もバイトも終了していて休暇になっているからだ。先週はまだ両方とも残っていたし気を抜ける状態ではない。なぜ飲んでしまったのだろう。隙があったとしか言いようがない。私は酒に強い体質だし、まして昼前からそんなに飲むはずもない。醉ってはいない。だが原因がそこにあるのはたしかだ。素面なら36点買いを30点買いにして気づかないはずがない。同時に書きこんでいる日記には「36点買いで勝負、念のための同一買い目の3連複16点も購入」と書いてあるのだ。Snipping Toolで切り取ったいつものオッズ画像もある。なんであんなミスをしたのだろう……。



 なぜここから的中馬券の目になる3着10番だけを消してしまったのだろう。どうせなら他の馬を消せばいいのに、よりによってこのレースを買うきっかけとなり、3着に飛びこんできた馬を消すとは……。
 これから、馬券購入を終えるまでは飲酒はしない。逃した魚があまりに大きいので、すくなくとも数年は厳守するだろう。



 今年の有馬記念馬券は、あれこれ考えた末、当たりよりも情を撰んだ。年末のオールスター有馬記念だし、ずっと馬券を買って応援して来た馬、私に的中馬券をプレゼントしてくれた馬の組合せに、清き1票を捧げることにした。それと毎回の愛猫の名にちなんだケントク馬券。それだけだ。
 当たるとは思わない。当たったら高配当なので楽しみではあるが(笑)。

 有馬記念は毎年「年末のオールスター戦」である。今年からそうなったのではない。なら毎年「好きな馬に清き1票」でなければおかしいが、けっこう儲けたいがために生臭い馬券を買って負けてきた気がする。好きな馬応援より当たり馬券重視だ。これで思い出すのは、あのグラスワンダーが最初に勝った有馬記念。グラスワンダー大好きなのに、サイレンススズカを負かしに行って負けた毎日王冠はともかく、アルゼンチン共和国杯の敗戦が気に入らず、なんとしても当てたくて1、2番人気のセイウンスカイとエアグルーヴから行った。大好きなグラスワンダーと同じく大好きなメジロブライトで決まり、馬連(当時はまだ馬券は馬連まで)44倍をハズし、中山で、がっくしと首を落としていた。44倍はおいしい配当だった。知りあいの血統評論家吉澤譲治が5000円取ったと聞いて、その22万はおれの買った金だなと思ったものだ。思えばあのころはずいぶんとバカな金の使いかたをしていた。G1は必ず30万から50万買っていた時代だ。一番つっこむ有馬に22万だからおとなしい年だった。と今にして思う。

 いやそればかりでもないな。たとえば三冠馬オルフェーブルが勝った年は、ブエナビスタを応援して散っている。あれなんか完全な心情馬券だ。JC馬ブエナビスタは2番人気だったけど完全に燃えつきているのがわかった。絶好の消しの人気馬である。だけど大好きな馬のラストランで外すことはできなかった。7着に敗れ、国内では初の掲示板を外したラストランだった。外して納得したレースである。けっこう心情馬券も買っているか。

 昨年のジェンティルドンナはえらかった。初の中山コースで牝馬の引退レースである。まずふつうはこない。歴史的名馬のブエナビスタですら来なかった。だがジェンティルドンナは来た。たいしたもんだ。強い牝馬でありJC連覇を成し遂げた文句なしの一流馬だが、さすがに4番人気まで落ちていた。あの8.7倍の単勝馬券はとったひとはえらいなと思う。私は買えない。

 私もむかしは心情派だった。あのトウカイテイオーもライスシャワーもみんな消えた有馬記念で100万すってからおかしくなった。あの翌年からはもう有馬などやらんと師走半ばには外国に出かけていた。翌年、トウカイテイオーが一年ぶりの競馬で有馬を制する感動はタイのチェンマイで知った。しみじみと追い掛けねばだめだ、あきらめてはだめだと思った。その後も直ってはいないが。



 今年、なんとしても当てて儲けたいと思いつつも、ひさしぶりに心情馬券に走った理由は、言うまでもなく、HDDクラッシュと先週の買い間違いである。あれによってバクチをする気力が萎えてしまった。2teraHDDからのデータレスキュー費用捻出のためにも、買い間違えて儲け損なった出直しの一戦としても、「今度こそ!」と燃えねばならないのだが、傷はあまりに深く、有馬記念だというのに、「ああ、そう」という程度。資金も乏しいし、なんだかどうでもいい気分になっている。
 傷が癒えるまではおとなしくしていようと思った。いまHDDデータ復旧の資金をなんとしても作らねばと焦っても悪い結果が続くだろう。傷が癒えるまでは巣穴に籠もる。そう決めた。そう決めたら、馬券のことなどどうでもよくなってきた。いま心中にあるのはDAWのことだけだ。HDDクラッシュにより、マンガが読めない、落語が聞けない、早く復旧せねばと考えたらなにも手に着かなくなる。いまは忘れるしかない。目の前のやるべき音楽制作に邁進するのみだ。こちらの機材は揃っている。必要なのは私の気力だけだ。それは競馬ではなくこちらに向けよう。そう思ったら自然に「博奕路線」から「清き1票路線」になっていた。



 ごく私的に、とても興味深いことがある。先週買い間違いをしなかったら、と想定する。すると私はこの有馬記念で30万を300万にする勝負に出ている。以前はともかく、今の私にはかなりヒリヒリする勝負だ。すると自分はどんな馬券を買ったろう。どうしても当てたいから人気馬に頼ったりするのか。30万勝負でも今回の心情馬券みたいなのに撤すると、それはそれでリッパなのだが(でもそれだと300万じゃなくて当たったら3000万になる)、当てたいとなるとそうも行かなくなる。嫌いな馬でも人気馬に頼ったりする。果たして結果はどうなるのか。そういうごくごく私的な意味で興味深い有馬記念だ。先週買い間違いをせず儲けて今週大勝負をする自分を眺める、もうひとりの自分がいる。
12/27(日)
●有馬記念──清き1票的中記

 いまもって去年の菊花賞敗戦の口惜しさが去らない。詳しくは別項に纏めるが、レープロ「名馬の肖像」はディープインパクト。そのタイトルコピーは「風は颯爽!」だった。私はその暗号を完全解読した。「なぜディープインパクトに『風は颯爽』なのか!?」。鍵はここにある。

「颯爽」ということばは、唐の偉大な詩人杜甫の作った熟語なのである。これは高島俊男先生の「李白と杜甫」で学んだ。「颯」という字も「爽」という字ももちろんそれまで存在していたが、この二文字を組み合わせて「颯爽」ということばを作ったのは杜甫なのである。杜甫の詩で初めて使われた熟語なのだ。なぜその「颯爽」が菊花賞当日のレープロに使われてきたのか。
 杜甫、トホ、トホジャッカル。勝ち馬トーホウジャッカルを暗示するために使われたのが「颯爽」なのだった。私はこれを完全に見抜いていた。というか、このコピーを書いてから思いついたのだけど(笑)。でもよくできてるでしょ。

 ここまで見抜いていながら私は、ダービーを勝たせてくれた恩に殉じて、◎ワンアンドオンリー1着固定、相手▲トーホウジャッカル、○サウンズオブアース、△ゴールドアクター、△マイネルフロストという馬券で散った。トーホウジャッカルを頭にすれば簡単に取れた590倍だった。いまも思うのは「なぜ二本路線にしなかったのか!?」だ。両方買っても十分プラスだったのに。
 単に恩に殉じたわけではなく、ワンアンドオンリーには「昭和48年のタケホープ以来41年ぶりのダービー、菊花賞制覇」が掛かっていた。あのスペシャルウィークでも達成できなかった記録だ。昭和48年のそれを鮮明に覚えている身として、41年ぶりのそれを観たかった思いもあった。



 今年のジャパンカップ。本命はサウンズオブアース。吉田照哉さんの持ち馬である。京都大賞典はラブリーデイの2着ながら、鞍上ミルコがここで大殊勲を挙げると読んでいた。
 思い出すのは照哉さんの持ち馬スクリーンヒーローだ。2008年、グラスワンダーの仔のスクリーンヒーローは、アルゼンチン共和国杯を勝ち、そのまま一気にジャパンカップも制した。

 あのときもまた直前の馬券変更で当たり馬券を逃した。毎度こればっかし。書いていて泣きたくなる。
 前日まで3-3-5の3連単フォーメーションで、ウオッカ、ディープスカイ、スクリーンヒーローを軸3頭にしていた。そのまま家で購入していたら確実に当たっていた。しかし当日がすばらしい秋晴れで、「これは行かないとなあ」と競馬場に出かけ、馬券を買う段になって「いきなりここでスクリーンヒーローのJC制覇はないよな」と、ウオッカ、ディープスカイの頭2頭にして、2-3-5に変えたのだ。スクリーンヒーロー、ディープスカイ、ウオッカで決まって3連単689倍。家で買っていればまちがいなく千円取れた馬券だった。変更してハズれる自分がなさけなかった。その夜の飲み会では競馬仲間に嗤われた。

 しかし、外国の牧場の生産馬であるグラスワンダー、の仔をしっかりと自分のものとし、それでG1を勝つ照哉さんの眼力と強運にはおそれいった。馬主覧の吉田一族は注目せねばならない。むかしからそうだった。ケガがもとで売れのこったアンバーシャダイ、脚が曲がっていて売れなかったベガ、みな吉田一族が馬主になり、あの大活躍をしている。
 それは今年のモーリスでもわかる。零細牧場が生産したスクリーンヒーロー産駒の安馬だ。だがそれに注目し買ったのは吉田勝巳さん。名義は奥さんの吉田和美さん。吉田一族に目をつけられた時点でモーリスの前に活躍の大海原が拡がった。



 対抗はゴールドアクター、とこれは出走前から決めていた。7月、菊花賞3着から9ヵ月ぶりに復活し、1000万、1600万を連勝すると、一気にGⅡアルゼンチン共和国杯も突破した。アルゼンチンは辛勝だが、1600条件のオクトーバーステークスの強さは際立っていた。格の違いを見せつけていた。大物だなと確信した。鞍上は吉田隼人。昨夏の不祥事から低迷しているが、この馬でG1を狙う。この馬に自分を乗せてくれている関係者に感謝の意を表し、大仕事をしたいと希望を語っていた。アルゼンチン共和国杯を制して一気にG1ジャパンカップ制覇は、父スクリーンヒーローと同じ歩みになる。ジャパンカップは、◎サウンドオブアース、○ゴールドアクターで勝負! と思っていたらゴールドアクター回避。なら有馬に来るのか、ファン投票はだいじょうぶか、出られるのか、出たら買うぞ!

 本命サウンズオブアース5着でハズしたジャパンカップだったが、馬券圏内に届いていたとしても勝ち馬を「朝鮮人馬主だから」という理由で最初から消しているのだから絶対に当たらないレースだった。

 ジャパンカップの数日後、競馬好きの知人と会話した。偶然出会い、町中での立ち話だった。彼はアドマイヤデウスから大穴を狙ってくだけちっていた(笑)。有馬でも追うと言う。なかなかの根性だ。私はなにを狙っているのかと訊かれたので「おれも意地で、ジャパンカップと同じくサウンズオブアース本命で行く」と言った。日本人には言霊信仰がある。私も典型的なそれなので、ことばにすることをためらう。一ヵ月も先のレースの本命をここで口にしたら来るものも来なくなるのではないかという感覚だ。だから今までこんな形で本命にする馬を口にしたことはない。唯一と言っていいのはスペシャルウィークが勝った秋天になる。あのとき府中の五階で通り掛かった『最強の法則』の岩神編集長から「なにが本命ですか?」と問われ、宝塚記念でのグラスワンダーの2着、京都大賞典での7着からすっかり評判を落としていたスペシャルウィークを意地でも買うつもりでいたから思わず即答していた。岩神さんにそう言ってしまったものだから元々スペシャルウィーク本命だったけどめったに買わない単勝まで買った。結果は2着に人気薄の香港の馬がとんできて馬連はハズレ。その単勝があってなんとか損失補填となったのだった。他人様に本命馬を言うなんてあれ以来になる。とはいえあれは競馬場での当日昼頃だ。こちらはまだJCが終ったばかり。有馬記念はまだずっと先である。

 だが彼がアドマイヤデウスと断言したことに誘発され、思わず「サウンズオブアース」と言っていた。「相手は?」に、「出て来られたらゴールドアクター」と応じる。このときから「絶対に買う、買わねばならない」と思い込んだ。もしも来たなら、確実に彼から「当てましたか?」と訊ねられる。そのとき「いやあ、変更したんで……」とは言いたくない。それは恥ずかしい。一度口にしてしまったのだ。言霊だ。言った自分に殉じねばならない。当てたいけどどうなるかわからない。ハズれでもいい。でも口にしておきながら「買わなかった」はみっともない。「買ってハズれた」と言いたい。
 思えば、朝鮮人馬主の勝ち馬を消した時点で、なにを買おうとも絶対に当たらないのがジャパンカップだったなら、私の今年の有馬記念的中はこの時点で確定していたことになる。



 人気馬の取捨は迷った。取捨といっても軸馬3頭は決まっており、3着候補の取捨でしかないのだが。
 1番人気、引退レースのゴールドシップは、札幌2歳ステークスの時から応援し、何度も馬券を取らせてくれた大好きな馬である。あのとき断然人気で勝ったのはグランデッツァ。ゴールドシップ2番人気で2着。照哉さんはグランデッツァを「アグネスタキオンの最高傑作」「勝って当然」とまで言っていた。それまでゴールドシップは秋山が乗っていて2戦2勝だったが、このときから安藤に乗り替わっている。グランデッツァも秋山のお手馬だった。秋山はグランデッツァを撰んだ。しかしラジオNIKKEI賞3着でデムーロに替えられる。そしてゴールドシップはG16勝馬となり、グランデッツァは……。
「もしもあの札幌2歳ステークスで、秋山がゴールドシップを撰んでいたら?」どうなったろう。秋山はゴールドシップでG1を何勝もし、一流ジョッキーの仲間入りをしただろうか。血統、値段、将来性、馬主の力からも、誰だってグランデッツァを撰んだろうが……。

 ゴールドシップが大好きだった。内田のあの皐月賞は忘れられない的中レースだ。ぜんぶダービーで吐きだしたが。菊花賞も取ったなあ。なつかしいなあ。
 私のゴールドシップ熱は、須貝が内田を降ろしたときに一気に冷めた。ゴールドシップの鞍上は内田でなければならなかった。だからこの有馬記念も他の騎手ならスッキリ切れたのだが、なんとラストランに内田を載せてきた。こまった。3着候補には挿れたが……。

 2番人気ラブリーデイは世話にもなってないし、疲れが溜まっているだろうとこれは割合平気で切れた。
 3番人気リアファルは買わねばならない。先行したこの馬の逃げ切りまであるだろう。鞍上はルメールだし、あの菊花賞で一番強かったのはこの馬ではないのか。菊花賞と同じ走りをすれば有馬は勝てる。でも3着候補まで。
 4番人気キタサンブラック。これがむずかしい。大井競馬の冠号オオノのころから慣れ親しんできたサブちゃんの馬がついにG1を勝ったことはまことにめでたい。そしてまたそれが社台の高馬でなく日高生産の安馬というのもいい。弟のお蔭で種牡馬になれた父ブラックタイド、最高だ。しかし私には母父サクラバクシンオーの仔を菊花賞でアタマにはできなかった。それはこれからも変らない。菊花賞と比べたら中山の2500はマイラーでもこなせるし、キタサンブラックは中山がうまいから押さえるべきなのだろう。1着2回、3着1回ですべて馬券圏内だ。これは全馬の中でキタサンブラックだけである。私はこういうコース適性を重視する。なのにあまり乗り気になれない。そもそもこの馬の活躍は北村の騎乗がうまくはまったことによる勝利が大きく、テン乗りの横山でどうなのか。消したいけど……、一応いれとくか……。

 フォーメーション3-3-7の1着候補はサウンズオブアース、ゴールドアクター、ルージュバックである。この3頭が勝たなかったら、いや1、2着でなければ馬券はハズレだ。もちろん1、2着に来ても3着に挿れてない馬が来たらハズレだが、それは気にならない。
 いちばん怖かったのはリアファルの逃げ切りだった。あの菊花賞の力があればそれは容易だろう。リードホーユー、マヤノトップガンのように。菊花賞から有馬記念を勝つなら、勝ち馬のキタサンブラックではなくこちらのような気がする。リアファル1着、2、3着に◎○▲を買い足すかと迷った。買わなかったが。
 ゴールドシップが内田で圧勝したなら、それはそれで馬券が外れても、「おめでとう、おつかれさま、ありがとう」と心から言える。ラブリーデイが勝ったなら、これも「ほんとに強かったんだな、失礼しました」と素直に言える。



 ◎サウンズオブアース、○ゴールドアクター、▲ルージュバック、△7頭、という3連単フォーメーション。人気で言うと◎5番人気、○8番人気、▲6番人気だから、結果的に本命党の私にしてはずいぶんと思いきった馬券だ。「結果的に」とこだわったのは、私に本命党の自覚はないからだ。ただ成績やタイム等ですなおに撰んで行くと自然に馬券が本命党になってしまう。私が予想した時点では軸になる3頭◎○▲は単勝1-3-5番人気なのだが、結果としては1-2-3番人気になっていることが多い。また東スポの印だけを見て予想し、自分では単勝3-5-6番人気を◎○▲にしたつもりだったのに、IPATに出かけたら1.2.3番人気だったなんてこともよくある。
 3連単125870円的中。枠連5010円的中。
 8-5-4番人気の決着。こんな形の3連単馬券を取ったのは初めてになる。

 私の取ってきた3連単万馬券は、人気馬に人気薄馬を絡ませるものだった。正当な消去法なので、3-3-7、あるいは3-7-3フォーメーションの軸馬3頭はどうしても人気馬になってしまう。そこにパドックで見つけた人気薄馬を絡ませる。すると「2番人気、12番人気、3番人気」のような決着となり、3連単が始まったころは、おもしろいようにこれで10万馬券が取れたものだった。みなまだこの方法に気づいていなかったのだ。その後、一気にみな気づいた。よっていまこんなのは3万円ぐらいしかつかない。

 いまもむかしも私の馬券構築法はそれだから、たとえば2012年のゴールドシップのダービーがそうだったが、ゴールドシップ、ワールドエースという1、2番人気馬が消えて、3-5-7番人気で決着、それでいて配当はたったの870倍、なんて3連単は絶対に取れないものになる。「よくあんな馬券を買える人がいる」と心底から不思議に思うほど私には縁遠いものだった。私は2頭とも3着以内に来る馬券で勝負した。1頭はともかく、2頭とも3着以内に来ないことなど想定できなかったから、2頭が消えた決着に、百万馬券か!? と本気で思った。



 その後、IPAT馬券師になり現場から遠ざかった。現場にいないから「成績的には絶対に買えないが、パドックでの気配が断然いい人気薄馬」は見つけられない。それでいて正当予想で結果的にいつも人気馬が軸になってしまうのだから、10万馬券とは無縁になった。120倍程度の万馬券はよく取れる。正攻法の馬券検討だとそうなってしまう。しかしフォーメーション30点買いでこれを当てても、それは4倍でしかない。馬券は絶対に高配当を取らないと収支があわない。ごく当たり前のことに、去年やっと気づいた。それまでの私はちょいちょい120倍を当てる快感に酔っていた。こういう的中では儲からない。
 しばしば最終レースの下級条件戦を小銭で買う。パドックを観ないまま(テレビで観てもわからない。いつもの位置に立ち、いつもの角度から観ないと)机上予想だけで買い、「どう考えても来るとは思えない馬」が人気馬に割って入り、前記のような「2番人気、12番人気、3番人気」のような決着の波瀾になると、「パドックでこの馬を観たらどうだったろう、おれは発見できたか!?」といつも思う。

 今回「8-5-4番人気」という今まで経験のない形の万馬券を取った。ほんとうにこんな形の馬券を買ったことがないので我ながら不思議な気がする。そしてまたこれで12万とはずいぶんと安いなと感じる。1,2,3番人気がとんでいるのだ。下級条件戦なら百万馬券でもおかしくない。これがグランプリ有馬記念の持ち味か。でもダイワスカーレットが逃げ切ったときなど、1番人気が勝ったのに98万馬券だったけどなあ。
 こんな形の馬券が初めて取れたのは、ひとえに「サウンズオブアースとゴールドアクターで行く」と口にしてしまったからである。と書くと、これまた言霊信仰になるのだが、あのとき口にしていなかったら私は、「やはり軸はラブリーデイか」「ゴールドシップは中山は強いから」と迷ったはずである。

 なにより本命にしたサウンズオブアースは中山実績がない。同舞台の日経賞で1番人気で4着という一戦のみ。どう考えてもコーナー4回の中山2500に合った馬とは思えない。「有馬もサウンズオブアースで行く」という意地がなかったら早めに消去していた馬になる。いや消去は大袈裟だな、マイナスに盛っている(笑)、若葉ステークスのころから好きだった馬だ、いくらなんでも消去はない。筆が滑った。この若葉ステークスでサウンズオブアースは3着、勝ったのはアドマイヤデウス。そういや前記の日経賞も勝ち馬はアドマイヤデウス、対戦成績は負け越しているのか。ダービーは? と調べる。デウス7着、サウンズ11着か。デウスも3着候補には挿れた。
 神戸新聞杯、菊花賞で買ったのは覚えているが、いま「馬券日記」で確認したら、ワンアンドオンリーが勝ったダービーでも、フォーメーション3連単の3着候補に11番人気のサウンズオブアースを挿れている。このときの鞍上は浜中。「照哉さんの馬」というのは強烈に意識していた。だから3着候補に挿れたのだろう。

 ということから推測すると、私にとっては不思議な馬券である前記の2012年のダービー、ディープブリランテ、フェノーメノ、トウセンホマレボシの3-5-7番人気決着のレースを取るひとは、もうずいぶんと前から「ダービーは、皐月賞3着のディープブリランテ(青葉賞のフェノーメノ、京都新聞杯のトーセンホマレボシ)で行く!」と決めているタイプなのだろう。



 ここで日曜に他人事風に書いていたことを振り返る、と書いてまず岡部の話。
 今日観たフジテレビの録画で岡部が「他人事」を「たにんごと」と言っていた。誰か「ひとごと」と読むのだと教えてやれ。
 で、他人事風に自分を観察する「もしも先週買い間違えせず大儲けして、有馬で勝負したら」である。3連単資金が今回の10倍になるわけだから、買い目もずいぶんと変るのではないか。千円なら記念品として買える単勝も1万円だと躊躇するようになる。せこい人間は金額で買い目まで変ってくるのだ。私はそのせこい人間の代表みたいなものである。せこさゆえに直前になって買い目を変更したりしてどれほどハズれてきたことか。
 しかし今回はこのままだったような気がする。先週の買い間違いがなく有馬で30万勝負したとしても同じ買い目だったろう。それで1万円的中すると迷惑を掛けている方々にお返しできて世の中が明るく見えるようになったのだが、それはまあ取らぬ狸だからもうやめよう。買い間違いした時点で終った話だ。

 買い目は今回と同じだが、今回のような均等買いではなく配分は変えた気がする。たとえば「3着リアファル」の組合せを本線として2万円に増やし、その分、来ないと思う組合せは購入額をすくなくする。そして間違いなくその筆頭に、「3着キタサンブラック」の組合せがある。無視できないから買うけれど、いまだにこの馬の強さがわかっていない。だから購入額が10倍になっても、あまりこの的中馬券の買い目は増額していない可能性が高い。今回この馬が3着に来たのを知って、「均等買いでよかった」と安堵した。さすがにせこくても千円買いの馬券を「あっちは1200円、こっちは800円」とやるほど細かくはない。というか人格としてはせこいが馬券に関しては私は大ざっぱである。毎度均等買いだ。理由は「面倒だから」である。せこいくせにずぼらなのだ。



 最後に、今回いちばんうれしかったことを書こう。
 枠連的中である。G1では、いつも愛猫の名にちなんだ馬券を買う。私の唯一のケントク馬券だ。今回も枠連、馬単、3連単の456ボックス馬券を買った。記念の遊び馬券ではあるのだが、遊びでもすこしはこだわる。馬単、3連単は4番が2番人気の今年いちばん堅実なラブリーデイ絡みなので、当たる可能性は高そうだけど、あまり興味がないので100円にした。そして枠連の4.5.6には、5枠◎サウンズオブアース、4枠○ゴールドアクターがいるので、これを「今の私にしてはかなりの額」で買った。4枠のもう1頭はワンアンドオンリーである。よって4-5を本線とし、2点を押さえにした。恩のあるワンアンドオンリーは3連単の3着には入れなかったが、ここで買った。4-5で決まり5010円ついた。これがうれしかった。思わず天国にいる猫に「ありがとう、当たったよ」と語り掛けた。
 枠連しかない時代、50倍は大波瀾である。昭和48年のハイセイコーのころ、いつも勝負は「千円3点勝負」だった。この千円はいまだと5000円になる。それで12倍なんてのを当てれば御の字である。枠連を太く勝って当たり、よろこぶなんてどれぐらいぶりだろう。90年代はしばしば馬連で7倍程度の1番人気をさらに念を入れて枠連5倍のほうにして10万円1点勝負なんてのをやっていたが、ここ何年も枠連は買いはするが猫の名にちなんだ記念馬券の100円のみだった。



 これをきっかけに、「上位人気馬と人気薄の絡み」3連単馬券だけではなく、今回のような人気の馬の馬券も買えるようになりたい。だがどうだろう。フォームは決まっているほうがいい。私のフォームは決まっている。長年の形を変えないほうがいいようにも思うし、思いきって改造するのもいいかな、とも思う。さて、どうなるか。ともあれ、43年間いろんなのを当てたりハズしたりしてきたが、私にはとても珍しい、というか初めての形になる的中だった。

 そしてまた思うに、今回の有馬記念的中は昨秋のトーホウジャッカルの菊花賞、サウンズオブアース本命でハズれたジャパンカップからの続きであるが、さらに溯ればスクリーンヒーローを直前に消してハズれた、あのジャパンカップからの続きでもある。なにがどうなろうと◎サウンズオブアースは決まっていたが、ゴールドアクターを○にできたのはスクリーンヒーローの仔だからなのだ。假りにまったく同じ形でのし上がった来たとしても、ディープやキンカメの仔だったらこんなに重視はしなかったろう。三大始祖から始まる競馬は連続物語だが、私のようなのの馬券でも、そういう連続する物語があるのだなと感じた有馬記念だった。

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【追記】──『東スポ』、渡辺、虎石、ゴールドアクター本命! も……

 元本紙、馬匠・渡辺は、◎ゴールドアクター、▲サウンズオブアースで、10点買い馬単で137倍を当てるも、キタサンブラック無印で40点買い3連単はハズレ。虎石は◎ゴールドアクターだが、サウンズオブアースもキタサンブラックも無印で馬単馬連ハズレ。当たったのは単勝のみ。爆笑問題・田中が、キタサンブラック本命、1頭軸マルチ3連単90点買いで的中。

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【追記.2】──吉田隼人はせこい!?

 私は昨夏の吉田の暴力事件、それによる騎乗停止を気の毒に思っていた。そのこともあって、ゴールドアクターとのコンビで成長したいという彼を応援した。しかし有馬記念後、昨夏の事件は「吉田が札幌にマンションを所持しており、そこに女を住ませていた。その日、そこで女の浮気相手と対面してしまいケンカになった」と知る。報道は「矢口真理状態になった」としている。さらには「吉田はケチで後輩にも奢ったりせず、いつも割り勘」というのも知った。このふたつがどこまで事実かどうか知らないが、これを知っていたら吉田とゴールドアクターコンビ応援の気持ちに水を差されたのは確かである。今回の馬券を買えなかったかも知れない。知らなくてよかった。正に情報は諸刃の剣だ。

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【追記.3】──▲ルージュバックのこと──『東スポ』本紙が本命

 ▲ルージュバックのことをぜんぜん書いてない(笑)。今からわざとらしく書き足すのもなんなので追記とする。私が今年一番入れこんで損した馬はルージュバックだった。桜花賞9着、オークス2着、エリザベス女王杯4着と、すべて3連単1着固定で勝負して負けた。オークスはしっかり2着で責任を果たしているのだから取れるだろうと思われそうだが、1着固定以外まったく買う気はなかった。エリザベス女王杯杯で負け、次ぎも1着固定で買うぞと誓っていたら、なんと有馬に出て来るという強気の姿勢。よっしゃとばかりいつものよう応援である。鞍上の戸崎も一番好きな騎手であるから最高だ。◎サウンズオブアース、○ゴールドアクター、▲ルージュバックは一瞬で決まった。印は▲だが実質はマークである。古馬との闘いで勝てるかどうかはわからない。勝ったら1960年のロッチ以来55年ぶりになる。私の競馬ライターとしての最初の取材が、ロッチの生産者であり、その血を引くサクラユタカオーの生産者藤原牧場だった。この馬券を取ったら記念になる。今年は父マンハッタンカフェが亡くなった年でもあるし、最後に派手に勝ってやれ! と思った。

 人気の高い馬ではあるが、3歳牝馬だし、そういう入れ込みは自分ぐらいだろうと思っていた。するとなんと金曜日発売の『東スポ』を見ると本紙の舘林が本命にしてきた。これはまずい。こういう形でメジャーな新聞が押してくると来たためしがない。『東スポ』は時に軽侮されるような新聞ではあるが競馬においては一流スポーツ紙だろう。私は日本一だと思っている。その本紙が本命にはたじろいだ。『日刊ゲンダイ』本命とか、清水成駿本命(笑)ならまだしも、これはかなりまずい。金曜夕方にこれを知ったとき、「頼むぞ、サウンズオブアース、ゴールドアクター」と心の中で叫んだのを覚えている。私の心の中の三強の一角が崩れたのだからそうなる。それで私は有馬記念に自信をなくし、「ホープフルステークスで勝負!」となったのだった。土曜日にはさらに一転して「配当が低いので有馬で勝負」となる。
 今回も負けたが、この馬が勝つときの馬券は必ず取りたい。取る。

▼ことば──ためし
 上に「来たためしがない」と書いた。「ためし」でだれもが思い出すのは「試し」だろう。しかしこの場合はどうだろう、「例」のことだから「例し」とでも字を当てるのか。確認したら本当にそうだったので嗤った。まあ「そういう例はない」という意味で書いているのだから、「そういう例しはない」はわかる。ほんとに当て字だな、くだらん。使ったことがないひとでも、前後の文章から「例し……ためしかな?」と思って読んでくれるだろうが、そういうのはほんとに無意味なのでやりたくない。そう考えさせてしまう一瞬が申しわけない。ということで「ためし」とひらかなにした。

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【追記.4】──キタサンブラックへの感謝?
 とりあえず押さえておいて、かろうじて当たり、「あぶねえ、あぶねえ」という感覚しかキタサンブラックには持っていないのだが、振り返ってみると、今年の数少ない会心の馬券である皐月賞も、ドゥラメンテとリアルスティールを1、2着固定し(1番人気パチンコ屋のサトノクラウン無印)ベルーフやブライトエンブレム、ダノンプラチナ3着固定で勝負したのだが、迷いつつも入れて当たったのがキタサンブラックだった。この時からもう「サクラバクシンオー肌に皐月賞の2000は?」と思っていた。
 ダービーはドゥラメンテが二冠達成したがパチンコ屋が2着3着だから当たるはずもない。これはハズれて悔いなし。
 菊花賞はドゥラメンテがいないのだから勝たなきゃおかしいだろうと好きなリアルスティール1着固定。すると絶対にないはずの母父サクラバクシンオーのキタサンブラックが勝つ。この場合、リアルスティールが勝っても、キタサンブラック完全無視だから、彼に絡まれたら絶対に当たらない。これまたハズれて悔いなし。サブちやんの馬がG1取るときは当てたかったけど。
 そして今回、これまた取り敢えずの押さえのキタサンブラックで的中したことになる。これを押さえてなかったら、馬連馬単を買ってないのだから、人気薄の1、2着を完全的中しながら的中馬券はないという悲惨なことになっていた。とするなら、私が今年一番感謝する馬はキタサンブラックになる。皐月賞も有馬記念も、当たったのは、勝ち馬のドゥラメンテやゴールドアクターのお蔭と言うより、3着に来たキタサンブラックのお蔭なのだ。しかしよく押さえたものだ、血統的に真っ先に消す馬なのだが、なぜかぎりぎりになって3着候補に入れていた。サブチャンの馬だからか。もしもこれが朝鮮人パチンコ屋の馬だったら確実に消していた。



 と書いて気づく。皐月賞もキタサンが消えたら4着ブライトエンブレムで、有馬記念はマリアライトで、もっと高配当的中だった……。
 たとえば2014年のダービーはマイネルフロストが3着に来てくれて助かった。あれは4着のタガノグランパを買っていなかったからマイネルフロストが残ってくれなかったらハズレである。キタサンブラックと同じく父ブラックタイドのマイネルフロストを買ったのは第1回ジャパンカップで2着になったカナダの騸馬フロストキングが好きだったからというフロスト繋がりだった。この辺も競馬はみな繋がっている。あのダービーはマイネルフロストが3着でなかったらハズれた馬券だから、あれに関しては勝ち馬のワンアンドオンリーよりも2着のイスラボニータよりもマイネルフロストに感謝、というのはただしい。だが今年の皐月も有馬もキタサンブラックがいなくても当たっていたから感謝するほどではないのか。でもある意味、今年の3歳馬で、応援したリアルスティールよりもルージュバックよりも、強烈な印象を残した馬になる。

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【追記.5】──単勝人気と軸馬人気

 G1レースのオッズは案外覚えている。そういうのがたのしいからだ。後々の会話でも役に立つ。でも今年の有馬は土曜に馬券を買い日曜に朝早くから出かけたので知らない。遅まきながらチェックしてみた。
 3連単1番人気唯一の100倍以下は、ラブリーデイ、リアファル、サウンズオブアースの98倍だった。単勝人気で言うと2-3-5になる。単勝1番人気のゴールドシップは蚊帳の外だ。
 全体として、リアファルとサウンズオブアースが3連単の軸馬として人気があるのがよくわかった。ルメールとミルコの人気であろう。先行できるリアファルの人気はちょっと異常なほどだった。私もリアファルに逃げ切られるのがいちばんこわかった。

 たとえば私の買った馬券、ゴールドアクター、サウンズオブアース、リアファルの最終オッズは578倍である。3着に単勝3番人気のリアファルではなく1番人気ゴールドシップが来ると1253倍になる。これはゴールドシップの単勝が心情馬券として売れており、3連単の軸馬としては考える人がすくなかったということだろう。それにしてもずいぶんとちがうものだ。倍以上である。


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