03/5/4 | 孤高の二重丸-天皇賞春 『日刊競馬』の本誌担当・飯田さんに予想的中お祝いの電話を入れる。きょうは天皇賞である。天皇賞に関するいちばんの名言は、寺山修司の「天皇陛下はいいな、天皇賞の日にうまれていいな」であろう。残念ながら昭和天皇の誕生日と天皇賞は今ではちがってしまった。とはいえ競馬開催に関してはよいことである。あれは変則になってあまり賛成できなかった。 ここ数日親の看病で競馬どころではない。昨夜も寝ずの看病だった。それでも昨日『日刊競馬』を立ち読みし(馬券を買わないからと買わないところがセコいが)、飯田さんがきょうの天皇賞でここ2戦二桁着順の人気薄馬サンライズジェガーに本命を打っているのは確認していた。本誌担当という責任を考えたらとんでもない冒険だ。ぼくだったらできない。おとなしくダイタクバートラムに打ってしまう。だって馬の成績からも鞍上の武からも連を外すとは思えない。サンライズジェガーからというのは、一見おとなしそうで実はとんでもなく頑固な飯田さんの面目躍如孤高の二重丸だった。 そしてきょう、なんとそのサンライズが2着に突っ込んできて万馬券となったのである。専門誌の本誌がGⅠでこんな人気薄に本命を打って的中したなんて聞いたことがない。大快挙である。 電話を入れると、「うれしさも中ぐらい」とのこと。印数の限定から勝ったヒシミラクルに△を打たなかったらしい。もちろん本人は的中馬券を買って当てているのだが、世間のファンには的中したことにならない。悔しかったろう。数としては打ってもいいんだけど飯田さんは美学で△を抑えてしまう。立ち読みだったのでそこまでは知らなかった。とはいえ知っていたらおめでとうの電話なんて入れなかったろうし、これはこれでいいのか。飯田さんも痛し痒しではあろうが、ぼくからそんな電話が入ったことはよろこんでくれていた。 そういえば、各業界の主立った友人に妻を紹介したが、競馬関係者で挨拶したのは飯田さんだけである。それだけ信頼している人になる。 ◆天皇賞・春(4日、京都11R、GI、4歳上OP、芝3200m)
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03/5/18 | 《同じ馬名》 東京の下級条件(新馬?)にワイルドファイアーという馬名を見る。十年ぐらい前にもあった馬名だ。GⅠ馬以外はある程度の年数後使用済みの馬名をまた使えるのだが、もうそれだけの年数が経ったのだろうか。というのはこの馬の生産者は親しくしている三好牧場だったからよく覚えているのだ。函館まで応援に行ったりした。あのとき中一、というと十三歳か、の長男がもう二十五ぐらいになっているから、十年は経っているんだな。 ありふれたいい名前だし、映画にも登場したことがある。その印象が強い。世界中で数え切れないほどの馬がこの名を背負って走ったろう。そう考えれば、襲名(?)はよいことなのか。 このことでいちばん有名なのはミスターシービーだ。シービーとはCB、千明牧場のイニシャルである。これぞと思った馬につけるとっておきの名だ。同じ馬主である。文句なしの二代目命名だった。クラシックレース惨敗だった先代の汚名を返上し三冠馬になった。 同じく成功した例にヒシマサルがある。これはちょっと物議を醸した。それは先代のヒシマサルが大昔ながら大レースを勝っていたのだ。本来なら認められないのだが、それは現在のGⅠ制度以前ということもあり、なんとなく認められた。これもミスターシービーと同じく同じ馬主だったから許されたのだろう。なんでも馬主にとって先代のヒシマサルが忘れられない馬で、なんとしても名づけたかったのだという。外国産馬二代目ヒシマサルは現代のGⅠを勝った。血統表的には同じ名前の2頭の馬が掲載されることになり混乱を来したことになる。 現在活躍している馬にスマートボーイというのがいる。あれもぼくにとっては二十年前にいた「ながつき賞」を勝った先代のスマートボーイになる。苦しいとき助けてもらった。血統も馬主もまったく違う馬におなじ馬名を使うことには正直なところ反対である。といっても日本の馬名はカタカナ九文字限定だからだぶってしまうのは仕方がないのだろう。 |
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03/6/1 | ダービー03-ネオユニヴァース ここのところ馬単勝負のみ。小心者には心臓に悪い馬券だ。それでもどう考えてもこれが今の日本の馬券ではいちばん効率がいい。当たったときの話だが(恥笑)。 ネオユニヴァースから馬単勝負。ゼンノロブロイとの組み合わせを本線でとるが儲からず。3着アンカツのザッツが届くと大もうけになったからゴール前は力が入った。しまった、3連複だったか……、というような悔いはいちばんいけない。してはならない。すこしだけ、してしまいました。だって60倍を3点でとれていたから。 皐月賞も同じくネオからの馬単勝負で的中してほとんどもうからず。結果は同じだがあれとはすこし意味が違う。今回は悔いがない。 勝つのはネオと決めていた。逆転があるとしたらタヤスツヨシ、ジェニュインの時のようにサクラとの順入れ替えのみか。だが1番枠のサクラは買う気がない。軽視。他路線だと青葉賞のゼンノのみ。これで決まりだった。ゼンノへ50%、万が一のサクラ10%、武豊のサイレントとアンカツのザッツに20%ずつの4点勝負。これだともうかったのだが……。 そう結論しつつ振り切れない思いは一点。マイネルソロモンの存在。グランパズドリームから始まった岡田さんの夢が叶うときにはなんとしても単勝で立ち会わねばならない。が、この馬では無理。しかも鞍上は後藤から乗り変る四位。これじゃだめだ。それはわかっていた。しかしそれでもこれを無視できない理由があった。トウカイテイオーの仔、ルドルフの孫の全勝馬である。私はルドキチだ。 前日、穴の空くほど馬柱を見つめつつ考えた。「岡田さんの夢を叶えるのはマイネルソロモンではあるまい。ルドルフから続く三代連続無敗のダービー馬誕生もまたちと無理だろう」 「だが」である。 ふと、若くして亡くなった藤野広一郎さんの恋人、うさちゃんに藤野さんが詠んだ句を思い出した。単行本「闘魂」の献辞にある。「だれよりもルドルフが好きといいし君のひとみにワインの輝き」だったか。すこしちがうか。「だれよりもルドルフが好きといいし」のニュアンスは間違いない。そう、おれだってだれよりもルドルフが好きなのだ。その孫がルドルフから続く空前絶後の記録を作ったとき買いませんでしたでは後々寝起きが悪い。だいぶ悩んだ末、ネオからとマイネルからの馬単二本立て勝負とした。邪道である。 この場合、ネオからマイネルは買わない。当然だ。「三代連続無敗のダービー馬」のために買うのである。マイネルがネオの2着しても意味がない。56倍つくので魅力はあったが消した。勝負はマイネル→ネオ、になる。むりだよねえ、ちょっと。 そんなわけで的中してもうからないダービーではあったが(去年もタニノギムレットの優勝に胸を熱くしつつ懐事情は同じだった)悔いのない勝負だった。結果、マイネル最下位。18着。やってくれる(笑)。でもこの馬は間違いなくマイルCSあたりを勝って三代連続GⅠ制覇は成し遂げてくれるだろう。すでに三代GⅠ制覇を成し遂げたトウカイポイントがセン馬なのでがんばってもらわないと。 ◆ダービー(1日、東京10R、GI、3歳OP、芝2400m)
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03/6/8 | 《安田記念》アグネスデジタル いやあ、たまげた。たまげたことはいくつもあるが、勝ち馬よりもまず武豊アドマイヤマックスが勝ちそうになったこと。2着。 野平の祐ちゃん先生が言ったことに「どこに武くんがいるかすぐにわかる」というのがある。騎手に興味のない私でも彼だけはわかる。馬に乗った人がぐらんぐらんと揺れているのに、武だけはピタっと止まっているのだ。すごいぜ。だいたいが「中卒のチビ」で億の金を稼ぐから騎手はかっこいいのに、武みたいに身長も人並みの170あったらぜんぶが満点過ぎる。かっこよすぎる。でも間近で接すると170センチで50キロってのはおそろしく細い。腿なんかけっ飛ばしたら折れそうなぐらい細い。彼がどんなに食事を制限し節制しているかはあれだけでわかる。英雄には裏の顔がある。それはともかく。 漫然とテレビでスタートゲート前を見ていたら突然一頭の馬が目についた。「これ、なに?」「鞍上、だれ?」アドマイヤマックスである。波乱を起こすのはこれだなと確信した。 1番人気後藤のローエングリンは満点の騎乗だった。昨年のアドマイヤコジーンで勝ち方も知っている。無理に逃げず、すなおに先行し、早仕掛けもせず、待つだけ待って仕掛けたあの万全の追い出しを誰が批判できよう。完璧である。責められるなら、あの形で勝ちきれない馬に、GⅠ馬としての本格的な力がまだなかったということだ。真のGⅠ馬は、あの形になったら勝たねばならない。勝つはずだった。しかしそれを見透かしていた人気薄の武がいた。騎乗馬アドマイヤマックスは後藤のお手馬である。乗り替わり。まさに「してやったり」の交わしだったろう。 ここまでが人と馬のドラマだ。さらにその武を外から差し切ったアグネスデジタルはもう「希有の名馬」とか、そんなお決まりの表現で称えるしかない。なんちゅう馬だろう。的場でマイルCSを勝ったときが万馬券。盛岡で南部杯を勝つあたりは当然としても、オペラオーを差し切って天皇賞・秋を勝ち、香港でも勝ち、フェブラリーSも勝つ。そして今度は安田記念。ダート・芝万能という、タケシバオー以来の成績を収めながら、それでもマイナーな存在の馬も珍しい。最強のヒールである。いやはやすごい。正当なヒーローが好きな私としては前走の公営名古屋「かきつばた」を勝ってここも勝って欲しかったが、むかし「関西商法」という言いかたがあったように、そこで太めの足ならなしをして負け、本番でキッチリと勝つのもまた戦法であろう。 個人的に思うのはひとつ。勝ったのは四位である。先週ダービーで最下位に負けた(私が馬単で応援した)マイネルソロモンの騎手だ。競馬は追いかければ必ず報われる。今週も「最下位ソロモンの汚辱を晴らせや」と単純に四位を応援していれば当たった。武豊もまた祖母、母に続く空前絶後の記録、三代オークス制覇かと大きな支持を得たアドマイヤグルーヴでオークスで惨敗したばかりである。ダービーはほぼ人気通りの4着。だったらこのあたりで人気以上の馬をもってくるのが彼の哲学とわかる。四位うんぬんは感情論だが、武からは理論でねらえた。感情と理論の組み合わせで取れた簡単な万馬券になる。 畢竟勝負事はそれである。おいかけであり、こだわりだ。それに尽きる。私のような昨日はあっち、きょうはこっちとふらふらしているようなのが負け組なのは、これまた自然の摂理になる。書いててつらい(笑)。 ◆安田記念(8日、東京11R、GI、3歳上OP、芝1600m)
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03/6/29 | 宝塚記念03 ◆宝塚記念(28日、阪神11R、3歳上OP、GI、国際指定、芝2200)
ひとつはこの史上最高に豪華な宝塚記念を成立させたシャダイのすごさ。 もうひとつはこの枠順を見て思ったこと。 28日。昨日と同じ朝の六時四十分になったので、ここまでをアップして続きは今夜にしよう。ともあれこのことはレース前に書かねばならない。 宝塚記念のことを書いている時間がない。とにかく「枠連3-8、馬単8枠頭から3枠へ」である。当たったらじっくり長文を書こう。外れたらしらんふり(笑)。 (29日。日曜夕方記入) --------------- 外れたのでみっともないから予想の根拠は書かないとして──でも直線でタップダンスシチーとシンボリクリスエスが抜け出たときには、思わずデケタ! と思ってしまいましたが(泣笑)──ふたつのことだけ書いておこう。 ひとつは、この史上初の豪華な宝塚記念が実現したのはオーナーであるシャダイの、吉田照哉さんの決断であること。テレビ番組は瀬戸口調教師の英断のようなもちあげかたをしていたが、調教師の真意としては二冠を取らせてくれた愛馬をすぐにでも放牧休養させたかったろう。それが本音である。 競馬会側は、盛り上がらない夏のグランプリを「日本のキングジョージ」として定着させようと、賞金を上げたり、ここまで開催時期をずらしたりさんざん苦労してきたのに、相変わらず3歳馬の参加はなく(たまにあっても二線級では)いつまで経っても日本のキングジョージにならない。なんとしてもクラシック馬に参加してもらわねばならなかった。 吉田さん以外の馬主では、どんなに頼んでも出してはくれなかったろう。まして昨年、競馬会側の願いを聞いたため出たくもない有馬記念に出て、戦歴に傷をつけ、体調を崩してしまったファインモーションの例もある。さらにはあれは暮れだったが今度は春である。ネオユニヴァースがシャダイの馬でなかったら、絶対に参加はなかったろう。 結果として私の大好きなネオユニヴァースは惨敗し、ファインモーション同様これまた大きな禍根を残してしまった。だが、この馬の参加によってふくらんだ夢の大きさはたとえようもない。たしかにそれは古馬と3歳俊英が激突する「日本のキングジョージ」だった。 今回の結果で、「それみたことか」と言う人も多いだろう。来年からまた3歳馬の参加は尻すぼみになってしまう。まず間違いなく来年のダービー馬が参戦することはない。慎重居士から見たら無意味と思われる挑戦を、平然と実現した吉田さんに、一競馬ファンとして心から敬意を表したい。 と、純粋まっすぐ君的な意見の後、すこしひねくれるなら、吉田さんぐらいになれば、ネオユニヴァースクラスはいくらでも作れるという自信があったからだろう。普通の馬主なら二冠を制してくれた愛馬が、かわいくてかわいくて、神様が自分に与えてくれた生涯唯一の宝物と(実際そうだ)、間違ってもこんなローテーションなど組まないだろう。 きょう、今まですべて3着以内の戦績だった古馬と3歳馬が、ともに初めて着外を経験した。 (月曜註・だいすきな馬の敗退に錯乱してしまったが、ネオ4着、シンボリ5着だから惨敗ではないよね。失礼しました。競馬業界では通例として5着以内を着内と言い、さらには異常な日本では8着まで賞金が出るから、8着以内を指すこともある。4着、5着の馬を「着外」とか「惨敗」と言うのは厳密には間違いかもしれない。まあぼくの場合は「馬券対象外」という意味になる。競馬ファンの通例使用としては正しいだろう。) (月曜註の2。思い出したが、週刊誌の競馬記事で、ネオユニヴァースの参戦をデムーロ騎手と結びつけているものがあった。 もうひとつは、これはもう今頃2ちゃんねるあたりでは大騒ぎだろうし、明日のスポーツ紙も確実に取り上げるネタなのだが、私は偶然にも単勝売りあげの不可解さをテレビでリアルタイム体験したので書いておきたい。ヒシミラクルの単勝を買った男の話である。 土曜の午後、競馬中継を見ていたら「単勝1番人気はヒシミラクル」となった。例年なら、宝塚記念を制する位置に最も近いのは春の天皇賞馬だから至極当然でしかないのだが、今年は違う。もっともっと強い話題の馬がいたし、ヒシミラクルはいつも万馬券を演出する人気薄馬だ。土曜午後三時時点の単勝人気売り上げなんてたいした額ではないが、それでもこれは明らかに異常だった。その理由がテレビ東京ではつかめていなかったのか、解説はいっさいなかった。司会の北野誠に、ごく素朴に「なんでヒシミラクルが1番人気なんでしょう?」とつっこんでほしかったが、彼は何も言わなかった。 (餘談ながら、北野誠の父親は、ちょうど彼が多感な年齢の時に自殺したそうで、そのことによってあのなぜか寂しげな雰囲気が出ているのかと、先週の『週刊文春』で、テレビウォッチャーの清野徹が書いていた。なにかの番組でそのことをカミングアウトしたらしい。そうなのかどうかわからないけど、たしかに娯楽番組で明るくふるまっていても、どこかさびしげな雰囲気を持った人だなとは私も以前から感じていた。) 日曜になれば1番人気シンボリクリスエス、2番人気ネオユニヴァースになるのは確実だったが、この「土曜午後三時時点でヒシミラクルが1番人気」というのは、かなり私の心に引っかかった。 金曜土曜日曜と、ひさしくやめていたスポーツ紙を買いまくった。それだけこの宝塚記念はすごいものなのである。こういうエポックメイキングなものには立ち会っておきたかった。 日曜の朝、サンスポにその答が載っていた。「新橋の場外の大口払いもどしで、ひとりの男が、安田記念の的中馬券を払いもどした。1220万円。そうして男は、その金を受け取ることなく、それを全部宝塚記念のヒシミラクルの単勝にしてくれと言った」のだそうである。一枚の額面は50万円が限度だから24枚を手にしたはずと書いている。安田記念は万馬券だったから馬連を10万円もっていたのであろうか。それが前日売りの始まった午前10時頃だったため、一時はヒシミラクルの単勝は1.7倍だったそうだ。私が見たときは、午後三時の状況で、3倍以上になっていたか。 きょう、ヒシミラクルが1着で駆け抜けるとき、サンスポを読んだ数十万人の競馬ファンがその見知らぬ男のことを思い出したはずである。特番「27時間テレビ」をやっていたフジテレビは、いつものよう競馬中継をせず、詳しい情報は得られなかったが、たしかヒシミラクルは6番人気、単勝は15倍ぐらいだった。となると1220×15=1億8千300万円の払いもどしである。「もしもおれなら」と考えるのは笑止だけれど、私も万馬券を10万円当てて1千万にすることは出来る(当たったことはないがよくそんな買いかたはやっていた)。が、それを単勝全部につっこむことはできない。1千万手にしたら守りに入ってしまう。まして人気薄馬だ。結局、それが出来ない男だから万馬券を10万当てることも出来ないのだとなるのだが(泣)。すごい人である。インポであることを願う(笑)。 来週発売の週刊誌はこの話題を取り上げ、競馬に興味のない人でも知る日本的なニュースになるだろう。なにしろこんな前例は現実にいくつもあるのだが、それはいつも「後日の伝説」だった。結果前に全国紙であるサンスポが一面で報じたなんてケースは初めてである。なにより「結果が出る前」ってのはすばらしい。競馬会としては、いい話題作りになったとほくそ笑んでいることだろう。 私個人は、これを明日以降ニュースとして知ってもなんの興味もわかなかった。他人の大もうけをうらやんでもしょうがない。それが土曜に「えっ!? なんでヒシミラクルが」と思う経験をし、今朝サンスポでそれを読み、「当たるのかな!?」と思い、リアルタイムでヒシミラクルが勝つ瞬間を見たから楽しめた。 その場にいるってのはおおきい。 サンスポより引用 【宝塚記念】夢叶った!ミラクルおじさん2億円 これぞ、メイクミラクル!!宝塚記念はヒシミラクルの優勝で波乱の幕を閉じ、前日にJRAウインズ新橋で同馬の単勝を大口購入していた中年男性が、億万長者となった。1222万円の購入で、払いもどし金は何と約2億円。不況ばかりの世の中でも、競馬の世界には夢がある。ツルマルボーイが差していれば、単勝馬券はパーだっただけに、中年男性はどんな思いでレースを見ていたのか…=撮影・塚本健一。同下:レースが確定し、ターフビジョンに映し出された宝塚記念の払いもどし。この時点で、中年男性が2億円近く手にすることが決まった。 X氏が奇跡の馬券を購入したのは、レース前日の28日午前11時頃。東京・港区のウインズ新橋に来場し、払いもどし窓口に8日に行われたGI安田記念の的中馬券を差し出すと、その払いもどし金は1222万円だった。X氏はその額すべて、(10)番ヒシミラクルの単勝を購入。馬券1枚の上限が50万円のため、24枚以上の単勝馬券を手に窓口を後にした。 前売り開始直後の大口購入だったため、(10)ヒシミラクルの単勝オッズは瞬間的に1.7倍の1番人気に跳ね上がった。その後徐々にオッズは上がり、28日はシンボリクリスエスの2.8倍に次ぐ4.3倍の2番人気で終了したが、購入額がドッと増える当日になり人気は急降下。最終的には16・3倍の6番人気でレースを迎えた。ヒシミラクルの激走で、X氏は1222万円×16.3=1億9918万6000円を手にしたことになる。 宝塚記念の1着本賞金が1億3200万円で馬主に与えられるのが80%の1億560万円だから、X氏はオーナーを大きく上回る利益を計上。本賞金の5%にあたる660万円を手にした優勝騎手の角田晃一騎手もさすがに目を丸くし、「いっぱい馬券を買ってた人もいたみたいで…。おめでとうございます。そこまで応援してもらえたなんて…。ありがとうございます」と驚きを隠せなかった。 X氏は29日には払いもどし窓口に姿を見せず、的中馬券の払いもどしの期限である60日(8月27日)以内に、どこかで約2億円を手にする。古くから「競馬で蔵は立たない」という格言があるが、その常識を覆すミラクル・ドリーム。やはり競馬には夢がある。次に幸運を射止めるのは、あなたかもしれない? ★払いもどしは現金のみ JRAでの的中馬券の払いもどしは、全て現金手渡しで行われる。現金2億円は、デパート等で一般的に扱われる手提げ袋でだいたい2袋分。1万円札にして縦に積み上げると、約2メートルにも及ぶ。JRAでは過去に約3億円の払いもどしはあったとのことで、大口的中者には、手提げ袋の提供や、車の手配、施設の出口までガードマンを帯同させるなどのサービスを行っている。 ★X氏が買わなかったらミラクルの単勝は? 宝塚記念の単勝の総売り上げは、7億68万2200円。そのうち(10)ヒシミラクルの単勝売り上げは3396万9400円で、X氏は約36%を占めていた。もし、X氏が馬券を購入していなかったと假定して試算すると、(10)ヒシミラクルの単勝は約25倍と推定される。X氏の大勝負によって、オッズが9倍も下がってしまったことになる。 ★税金は?
競馬の払もど金が50万円以上に及んだ場合は、申告すれば税金がかかる。假に自己申告をした場合は「一時所得」として処理され、そこから所得税額が算出される。 讀賣新聞より “2億円オジサン”全額寄附?
競馬の宝塚記念(6月29日)で6番人気ヒシミラクルの単勝馬券を1200万円余り購入、見事的中させた“2億円オジサン”を名乗る男性から2日、スポーツ報知などマスコミ数社に電話があった。男性は「『恵まれない子供たちに全額寄附したい』旨の手紙を添え、的中馬券をウインズ新橋(東京・新橋)に書留郵便で送付した」と話した。日本中央競馬会(JRA)も問い合わせに追われる騒ぎとなったが、さて真偽のほどは…。 |
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03/6/5 | 武勇さん変死 ニュースで「武豊騎手の親戚の牧場経営者が変死した」と知ったとき、すぐに悪い予感がした。いや悪い予感なんてもんじゃない、武豊の親戚の牧場経営者といったらあの人しかいないだろう。的中した。武勇さんだ。殺人事件らしい。なんてことだろう。 昭和62年に安田記念を買ったフレッシュボイスの取材は今もわすれられないいい思い出だ。生産者の小笠原牧場はやがて倒産し、いまはもうない。関係者はちりぢりバラバラになった。跡継ぎの長男は自殺してしまった。なにもかもセピア色の思い出になってゆく……。 武勇さんはフレッシュボイスの父・フィリップオプスペインを繋養していた。ある意味、フレッシュボイスのGⅠ勝ちで最も恩恵を受けた人になる。ぼくは小笠原牧場に泊めてもらい連日取材した。武さんともそのときに親しくなった。日高でも大阪弁を使い(まあ大阪人は世界中のどこにいっても大阪弁だが)、いかにもこてこての大阪人という感じの人だった。奥さんは小笠原牧場の奥さんの妹だった。小笠原家は婿養子だったから、小笠原家の出身である。みなさんと親しくしたので、今回「奥さんが死体を発見した」との報道でも、すぐに家と間取りまで浮かんできた。奥さんの驚愕の表情まで思い浮かべた。二人暮らしだったという。二十代半ばになる跡取り息子はどこへ行っているのだろう。 もしかして犯人までぼくの知っている人かもしれない。捜査の進展を待って続きを書こう。 |
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03/10/5 | スプリンターズステークス──デュランダル すばらしいレースだった。4角から強引にまくって先頭に立ち、アンカツが追う。彼があそこまで本気で鞭をふるうのも珍しい。自分に中央初めてのGⅠをプレゼントしてくれた馬に、なんとしても有終の美を飾らせてやりたかったのだろう。 強引に先頭に立つ姿と、最後方から行っていたデュランダルに外から差される決着に、コースも距離も違うけど、ルドルフの秋天を思い出した。まったく同じような強引なレースをして、当面の人気馬たちをなぎ倒したとき、大外から無欲のギャロップダイナに差されて2着に敗れたのだった。とはいえルドルフにはアンカツとビリーヴのような必死さはなく、むしろどんなレースをしようが負けるはずがないという岡部の驕りが見えた。あの敗戦は岡部の自信過剰にある。その反省がジャパンカップの完勝につながる。後に岡部は同じ失敗をトウカイテイオーの秋天でもやる。あの強引なまくりに父ルドルフの敗戦を思い出し、いやな予感がしたものだった。結果は7着だったか。レッツゴーターキンの万馬券だ。府中でため息が出たっけ。それだけ岡部がトウカイテイオーにルドルフと同じ感触を感じていたとも言える。そしてこれまたこの敗戦がジャパンカップの完勝につながる。 ギャロップダイナは無欲だった。デュランダルは勝ちたい意欲満々だったからここでも違っている。 内のテンシノキセキを交わし、後ろから来るアドマイヤマックス、レディブロンドを抑え、勝ったと思ったとき大外からデュランダルがふっとんできた。ここで2着以内に入らないと賞金的にマイルCSの出走権があやういデュランダルは目一杯の勝負だったろう。池添がうまかった。武もさすがと思わせる満点の騎乗をして3着。6月にデビューしたばかりの5戦全勝の上がり馬レディブロンドも4着と気を吐いた。ビリーヴと同じ5歳馬。むかしなら6歳だからもうどこにも出られず未勝利の繁殖になっているところだ。4歳引退の同期ならもう母になっている。ここまで育ててきていきなり1000万条件でデビューさせ、5連勝での登場だ。藤沢さん、やってくれる。先に行った馬が総崩れになる中で見事に5着に残ったテンシノキセキも見事だった。さすがにGⅠと思わせる充実のレースだった。マエコウ関係の馬が三頭もいたのに、ビリーヴを勝たせるための小細工連携をしなかったのも気分がよかった。 アンカツとビリーヴが負けてなおつよしの王者のレースをして、人気馬が上位を獨占する最高のレースだったのに、水を差したのがフジのばかアナ、アオシマ。 この手の無能なアナはひたすら絶叫すればそれがいい実況だと勘違いしている。れいのサッカーの「ゴールゴールゴールゴール」と同じように。きょうも「これはきわどい、きわどいきわどい」と怒鳴り散らしていた。ほんとにもう血管が切れるんじゃないかって絶叫なのだ。くだらん。きわどい勝負なのは誰だってみてりゃわかるんだから、だまってろっての。当然のごとく反省などなく、それどころかマラソンを走り終えたランナーのように、本人は思いっきりと叫びまくったさわやか燃焼ぶり。あきれる。なんとかならんのか、こいつは。ものすごく評判が悪いのだがうちわ受けがいいのかいっこうに降りる気配がない。実況全部がそうなのではなく、情況を正確に伝えねばならないラジオは、よい実況をしている。過去のフジにもこれほどひどいのはいなかった。これからまたこのバカが担当するなら、以前やっていたように、画面を見ながら実況はラジオってのをやらねばならない。 電車の中で化粧をしたりものを食ったりするバカ女と同レベルのバカ男である。いやな時代である。 (月曜記入・松元調教師談「並ぶ形になれば……。大外から来られたから」。ごもっともですね。並ばれれば競えるけどあんな大外強襲では対応のしようがない。アンカツの闘志のほとばしるような見事な騎乗を「仕掛け早」と書いている記者もいた。あほらしい。 武は我ながら満足いく騎乗と珍しく納得していた。内にうまく入れたあの乗り方でなければ3着はなかったろうと語っている。 ◆スプリンターズS(5日、中山11R、GI、3歳上OP、芝1200m)
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03/10/19 | スティルインラブ牝馬三冠達成! いいレースだった。スティルインラブが勝った瞬間には拍手をしてしまった。なにより幸が武豊アドマイヤグルーヴにまったくびびっていなかったのがなんともかっこよかった。 アイネスフウジンのダービー前に、吉川良さんが中野英治に贈った応援歌「振り向くな、英治」がある。逃げているとき、何度も後ろを振り向いてしまい、結果差されて敗れる中野に、吉川さんは「振り向くな」と檄を送ったのだ。中野は一度も振り向かず、ダービーを逃げ切った。 あの武豊がぴったりとマークしてくる。ゲートが開いてからすぐに馬体を寄せ、うんざりするほどのしつこいマークだ。前走のローズステークス。スティルの位置取りは3.3.4,アドマイヤは5.5.4、武はスティルしか見ていなかった。そして完勝。スティルは初めて5着に敗れた。今回のスティルの位置取りはどうだったろう。8.8.7、6.6.5、それぐらいか。それに数字をひとつ足せばアドマイヤの位置取りになる。今回もまたぴったりマークだ。前の馬を見つつ、直後のそれを最も警戒せねばならない。幸はつらい。武は楽だ。 4角から大外まくりで仕掛け、スティルインラブが一気に上がって行く。寄り添う影のようにアドマイヤグルーヴも従う。もしもここで幸が、自分をマークしている武の位置取りを確かめようと、一度でも振り返ったなら、気まぐれな勝利の女神は瞬時にして武の方に飛び移っただろう。武を一切無視し、挑戦者の位置におとしめたとき、幸インラブに女神はほほえんだ。 幸は振り返らない。他馬など眼中になかった。自分に初めてのGⅠをプレゼントしてくれた愛馬と、誰よりも速くゴールを駆け抜けることしか考えていなかった。二冠馬スティルインラブが他馬に一瞥もくれない王者のレースをしたとき、アドマイヤグルーヴは、女王に従うその他大勢の御殿女中にすぎなかった。かろうじて筆頭の座は護ったものの。 いいレースだった。幸のようないいヤツが花開かないはずがない。それがなによりうれしい。もしもそれを言ったなら、彼は礼儀正しくありがとうございますと言うだろう。が心の中では「おれはいい人だから勝ったんだじゃない。騎乗技術で勝ったのだ」と反発する。それでいい、それでこそ勝負師だ。 むかし関東では、的場と中館を組み合わせる「的中馬券」てゴロ合わせが流行った。関西では幸と福永の「幸福馬券」は流行っているのだろうか。 2007/8/2 史上2頭目の牝馬3冠スティル急死
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11/16 | 強い世代の一騎討ち──エリザベス女王杯 いやあいい競馬だった。予想が本命対抗で当たった以上に自分の世代論が正しかったことがうれしい。 きょうのサンスポで佐藤洋一郎さんが書いていた。 「運も実力のうちと言うがミスターシービーが三冠馬になれたのは戦った相手がよかったから」と切り出し、同世代のライバルがビンゴカンタやメジロモンスニーだったからなれたのであり、もしも同世代にルドルフがいたら、と続く。 時の流れを感じる。大のシービーファンの佐藤さんは、ルドルフと関係者を蛇蝎のごとく嫌っていたのだ。それがこうじて、和田オーナーを「顔がウーパールーパーに似ている。あれの学名はアホロートルだ」とまでコラムに書いてしまい謝罪させられている。その佐藤さんがルドルフをシービーの上に置いている。こんなふうに人は丸くなるのかと思う。 そのあとの意見がぼくと分かれた。佐藤さんはスティルインラブの牝馬三冠をミスターシービーよろしく同世代が弱いからと解釈しているのだ。「今年の3歳牝馬の水準が高いとは言い難い」と書いている。よって予想は3歳を軽視して古馬からの流し。スティルインラブは△、アドマイヤグルーヴにいたっては無印である。今年の3歳牝馬を近年になく高いレヴェルと思っているぼくとは解釈が分かれた。 迷いに迷ったのはスティルインラブとアドマイヤグルーヴのどっちを本命にするか。それだけである。△候補はレディパステルとローズバド。ぼくからするとこれは4頭立ての競馬になる。外国馬がもしも強かったらそれはそれであきらめる。でもあの程度の成績の馬にこの3歳二強が負けるとは思えない。 ずっと大好きな幸とスティルインラブを本命にしてきたが、今回はアドマイヤグルーヴにした。それは昨日土曜日の競馬に因る。後半3レース。とんでもなく難解なレースだったが、終ってみれば武、蛯名、柴田と三人の絡みのみ。騎手で買ってれば悩む必要などなく簡単に当たっていた。実際にそれを馬券の主軸として大幅に浮いている人を知っている。中でも武はきちんと連絡みするようにもってきていた。うまいなあと思ったものだ。最終レースも蛯名の斜行がなければ勝っていた。なぜあれが降着にならないのか疑問である。蛯名1着、武2着だが、降着で逆にすべきだろう。 現在、武は自己ワーストと並ぶGⅠ13連敗中とか。こんなことを言われるのもすごい。GⅠなんてのは生涯にひとつかふたつ勝てればいいものだ。ひとつも勝てず引退する騎手だって大勢いる。なのに13連敗中と騒がれている。エリザベス女王杯はトゥザヴィクトリー、ファインモーションと連覇中だ。「幸の牝馬四冠達成」と、「武の牝馬三冠1番人気で負けた雪辱」を比較して、ぼくは今回は武が勝つのではと判断した。なんとなく2200という距離もグルーヴ向きのように思えた。幸は距離に関して「桜花賞よりオークスのほうが楽だったので距離はあっている」と語っていたが。 --------------- いいレースだった。直線でスティルインラブが後ろから来たアドマイヤグルーヴに交わされる。まったく同じ乗り方で秋華賞では交わせなかったから、それだけ秋になって実が入ったのであろうし、200メートル伸びたのもよかったのだろう。この形になったら後ろから差した馬が絶対的に有利である。一瞬にして2馬身ぐらいは突き放すのかと思ったのに、スティルがまた差し返して並んだ。突き放されたのは3着以下の馬だった。身震いするような三冠牝馬の底力である。3着は離れている。外国馬が入っていた。タイガーテイル。4着にレディパステル、5着にローズバド。順当に強い馬が来た。 自分の今年の3歳牝馬は強いという論が通ってうれしい。でもこの2頭だけが強いのかな。いや昨日の牝馬限定1000万条件の最終レースも、各世代が勢揃いしたが、秋華賞で大敗した3歳のミルフィオリが快勝していた。2着も3歳だった。昨日のその最終レースの3歳牝馬二騎もサンデー産駒。エリザベス女王杯の2頭もそう。これほどすごい種牡馬は空前絶後だろう。 金曜からずっと考えてきて、馬券は、アドマイヤグルーヴから馬単で、スティルインラブに5割。念のために裏を3割。グルーヴからレディパステルとローズバドに1割ずつと結論していた。ほぼ2頭で決まると思っている。わからないのはどっちが頭かだけだ。 しかし冒頭に「馬券が当たった」ではなく「予想が当たった」と書いたように、ぼくはこの馬券を買っていなかったのである。昨日、府中で土曜競馬を楽しみ、エリザベス女王杯を前日売りで買って帰ってこようと思っていた。なのにいつものよう熱くなり、きょうの予算を昨日の競馬ですってしまったのだ。きょう、締め切り間際まで競馬場にいる飯田さん(『日刊競馬』本誌予想者)に頼もうか悩んだ。何度も頼んだことがあるし飯田さんが二つ返事で引き受けてくれるのはわかっている。金額も2万円程度なら迷惑はかけない。迷った末にそうしなかったのは、しばらく会っていない飯田さんにいきなり馬券を頼むのがはばかられたことと、堅い馬券ということだった。単勝1,2番人気の馬だ。これが万馬券ばかりだったらご無沙汰の非礼を省みず思い切って頼む。それが、2万円買って5万円ぐらいの予想払いもどし額だから、なにもそこまでして買う必要もあるまいと思ったのだ。 結果として10倍ついたようだから2万円中1万円的中でちょいとした小遣いにはなった。まあそれは悔いてもしょうがない。来週のマイルチャンピオンシップは乱戦のようだからすなおに場外馬券を買って来て家でテレビ観戦しようか。いややっぱねえ、競馬場で200円の馬単10点買いなんて感じで300倍、500倍を買っているほうが楽しい。昨日なんか「1頭固定の3連複8頭流し、28点買い」を100円ずつやってしまった。来なかったけど(笑)、1900倍とか3300倍があってたのしめた。100円で10万を目論める時代なのだからありがたい。むかしは無理だった。やっぱり来週もクズレースの土曜に競馬場に行きそうだ。 ◆エリザベス女王杯(16日、京都11R、GI、3歳上牝馬OP、芝2200m)
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11/21 | 学園祭と競馬──あのころ と、ここで「今頃」のことをふと思った。週末から勤労感謝の日にかけては、学生時代、文化祭だった。一般には大学の文化祭は11月始めの「文化の日」のころに行われるものが多く慶應の三田祭はいちばん遅かった。同じ時期にどんな大学がやっていたかを知らない。誘われたり縁があったりで出かけた他大学の学園祭は「文化の日」のころに開催されるものばかりだった。この時期は自分たちのことで忙しかったから、この遅めの秋にどんな大学が学園祭をやっていたのかまったく知らない。あのころアパートでこたつをだしていたのかどうか。あ、学園祭の音楽をやる場にこたつをもちこんで泊まったことがあったな。なつかしい。前も書いたが、そのときの学園祭委員長(サヨク)がいま民主党の海江田万里さんだった。あの人は「微笑」の記者から野末チンペイの秘書になり、出世していった。 競馬はよく覚えている。この三田祭のころ、「勤労感謝の日」の週に行われるのが秋の天皇賞だった。それが昭和56年にジャパンカップが施行されることになりプログラムの大改変が行われる。ジャパンカップトライアルとなった天皇賞は一ヶ月早くなって10月末となり、この時期はジャパンカップとなった。今年は来週の30日だ。 全般的にどうなのだろう。この22年のあいだ、どうなっているのか。ちょっと調べてみるか。競馬ファンにとって「そのときにどんなレースがあったか」はおおきな問題だ。 手元の『中央競馬レコードブック』で調べると、例年ジャパンカップは22日前後が多いが28日前後もけっこうある。となると「三田祭の時はマイルチャンピオンシップだった」って人もけっこういるのか。まあそれはそれで競馬ファン共通の感覚で語り合えるからたいしたことではない。マイルチャンピオンシップを覚えていれば、翌週のジャパンカップも、何週か前の秋天も覚えているものだ。それに四年間いれば印象的なジャパンカップの年だってあるだろう。 ついでに「自分たちの時はほんとうに常に天皇賞だったのか」の疑問も湧いたので調べてみる。すると、なんてことはない、ぼくらのときも秋天が29日になったりしている年も多い。たまたま「フジノパーシアとカーネルシンボリ」を強く記憶しているからそう思っていただけで、毎年確実に秋天ではなかったようだ。そう考えると、今のようにGⅠは多くなかったから一週ずれたら大レースはなかった。菊花賞とビクトリアカップ(エリザベス女王杯の前身)はもう終っていたし、当時秋天のあとの大レースは有馬記念だけである。GⅠが連続する今のファンのほうがむしろしあわせか。調べてみると、大学に六年いたが三田祭の時に秋天があったのは二回だけのようだ。う~む、とほほな結末。 昭和56年からジャパンカップが始まり、この時期を「三田祭の時はジャパンカップ(内何度かはマイルチャンピオンシップ)」と記憶している世代はどれぐらいいるのかと考えると、いまが昭和78年だから、22年分。当時四年生で22歳だとするといま現在44歳以下の競馬ファンはみなジャパンカップ世代となる。う~む、これまた深く頭を垂れそうだ。第一回ジャパンカップの衝撃をつい昨日のことのように覚えているものだから……。 むしろもう「三田祭のときは天皇賞」という競馬ファンのほうがすくないのか。 ふだんはしないこんな昔話を書いたのも秋深しだからでしょうか(笑)。 附記・なぜかクルマで茨城放送を聞いた。なんでそんなことをしたのかわからない。最近聞くラジオはNHKFMばかりだし、あとは競馬中継のラジオ関東、相撲中継のNHKぐらいだ。今までの人生でも聞いた記憶のない地元放送局のスイッチをなぜか押していた。すると「現在、茨城大学の文化祭が開催中で」と流れてきた。紫苑祭(字が間違っているか?)と言っていた。自分の出た大学の学園祭と、本来ならそこに行って教員にならねばならなかった地元の国立大学の学園祭日程が同じとは知らなかった。この日この偶然がなかったらおそらく一生知らないままだったろう。なにしろこんな昔話をすることすらないのだから。これはこれでなにかのお導きだったのか。 ぼくの田舎の教員の息子は、千葉大学や茨城大学の教育学部に進んだのができのよい形。わるいのは、レヴェルの低い私立にむりやり押し込んで、それで教員資格を取らせ(取れればあとはコネでなんとでもなる)跡取りの教員に仕立てている。思えば、内心はそう願いつつも教員になることを強要しなかった父のお蔭で、今の自分の自由はあるのだとあらためて感謝する。(11/27) |
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11/23 | マイルチャンピオンシップ──ユタカのベスト騎乗
どこから買おう、どの馬券で勝負しようと悩んだ。楽しみはどこからでも何で勝負しても好配当であること。 心情としては天皇賞をパスしてここに備えたバランスオブゲーム。もうすぐあたらしい「PS2用ダビスタ」も発売になるし(初代からやってきたぼくはもう卒業。やる気はない)、園部さんがGⅠオーナーになるのかななんて思ったりする。しかし鞍上が田中勝春。ここのところこいつにひどい目に遭っている。蛯名、柴田、横山という関東の一線級の連中はみな府中にいる。GⅠだと関東関西の精鋭騎手勢揃いになるのが常だがたまにはこんなこともあるのか。カツハルにがっかりすることが多いのに対し、やっぱりすごいなあと思うのが武豊。前人未踏の年間200勝達成。記録更新中。混戦だからこそ好きな馬、好きな騎手で行くか。それが結論。(アンカツ100勝達成おめでとう)。 負けてもいいからと(じつは人一倍勝ちたいのだが)ファインモーションから行くことにした。鞍上が武だからだ。馬券は馬単。ファインモーションは完全復活で強い勝ち方をするか、もう燃え尽きた牝馬として馬群に沈むかのどちらかだろう。よって裏はおさえない。 一般競馬ファンは復活を期待し1番人気(最終的には2番人気)に支持している。プロの予想家はおどろくほど低い評価をしていて、どこを見ても白三角が散見するのみ。正しいのはどっちだ。単勝は売れているが連軸ではない。すなわち心情的支持だ。 ファインモーションから馬単を8点。最低でも35倍はつく。万馬券が4点。まさしく「今秋一番の混戦レース」である。 結果はデュランダルが差し切ってファインモーションが2着。2着おさえはしていないから外れ。70倍弱の配当。惜しいとは思わない。いや連下でデュランダルはもちろん人気薄3着のギャラントアロー(父はリンドシェーバー!)ももっていたから(これだと180倍か)すこしは思っている。あの2着は武豊の完璧な騎乗によるものだ。馬のために、支持してくれたファンのために、ぜったいに持ってきてやると思ったのだろう、些細な無駄も省いた正にパーフェクトな騎乗だった。それは、ダンスインザダークの菊花賞のような神業騎乗ではなく、「1リットルのガソリンで何キロ走れるか競走」のような、一切のロスを取り除いた乗り方だった。その意味で「ファインモーション完全復活!」と賞賛していいのかどうか。「よくやった、えらい、がんばったね」と馬を褒め、「さすが!」と武を称えても、これで「強い、完全復活だ!」とは思えなかった。馬単馬券は外れ、裏を押さえていれば当たったのだが、気持ちとしては軸馬が着外に敗れて外れた完敗の気分である。武の中にも「惜しい2着だった」の気持ちはあるまい。彼は決してそんなことを言ったりしないが、内心は「よくぞ2着に来た。おれだから持ってこられた」だろう。 (帰宅してからヴィデオを見たら馬主の吉田照哉さんが池添に「楽勝だったね」と話しかけている映像がチラっと流れた。そう、あれはデュランダルの楽勝である。4角で大外を回っての豪快な差し切り。1着と2着のあいだにはかなりの力の差があった。またしてもサンデーサイレンス。) 馬主や調教師からすると競馬会から頼まれて押し切られてしまった昨年の有馬出走は未だに悔やまれるだろう。あれがなかったらファインモーションは生涯無敗で引退できる器だった。使い詰めで来て牝馬GⅠを2勝した昨年暮れは、やはり出るべきではなかった。あれで馬の調子が狂ってしまったのだ。それは今も治っていない。能力の高さと武の好騎乗で2着にはなったが本来はあんなものではあるまい。今後の彼女が気になる。 ◆マイルCS(23日、京都11R、GI、3歳上OP、芝1600m)
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11/27 | 柏木集保さんのペリエ論 天皇賞の翌週の『日刊競馬』。柏木集保さんのコラム。オリビエ・ペリエのこと。 「じつはペリエはたいしたことはないのだ」との大胆な書き出し。 「普段はヨーロッパのタイムのかかる重い馬場で競馬をしているから、日本の高速馬場ではペースがわからない。ペース音痴に近い」と進む。なるほど、ならなぜあんなにうまいのか。 「彼の優れているのはただひとつ」ほおほあただひとつですか、それは! 「そのレースでキーマンとなる騎手を見つけ、その後ろにぴったりくっついてゆくこと」なんだと。なるほどなあ。 あれはジャングルポケットでジャパンカップを勝ったときだったか、「タケさんのうしろについて行ったから」と何度もインタヴュウでそれを言っていた。まるでタケさんのお蔭で勝てたと言わんばかりの(言ってるんだけど)タケ賛歌。いくら褒めてもらっても現実に勝っていないタケは痛し痒しだろう。もうペース読みなんて最初から捨てて、ただひたすら直線までは、このレースにいちばん詳しいタケについていって、勝負所になったらがんばるぞ、とそれだけだったようだ。それに徹せられることが彼の才能になる。それは「素直」ってことだ。よけいなプライドを捨てて素直になりきれるのは優れた才能なのである。彼のヨーロッパでの地位を知っている。いかにうまいかもロンシャンで何度も見てきた。凱旋門賞連覇のころだ。フランスで競馬を語るとき「オリビエ」と言えば一発で通じる。競馬はヨーロッパで始まった。白人の優越主義で言うなら、「日本の騎手に本場の技術を見せてやろう」と思って不思議でない。ところが彼はそうではない。郷にいれば郷に従えが自然に出来る。異国で成功するかどうかの鍵がここにある。 ただしあの天皇賞はお粗末だった、と柏木さんは指摘する。後藤と吉田の因縁からとんでもないハイペースになってしまい、ペリエのクリスエスと横山のツルマルは(というか全馬か)ペース音痴になっていた。「1、2着したからいいようなものの負けていたら彼らこそ責任を問われたレースだった」と柏木さんは書く。このレース、ペリエにはお手本にしてついてゆく馬がいなかった。ヨーロッパの競馬は一団で動く。ほんと全レースが日本競馬で言う団子である。10馬身内に全馬が固まったままゆっくりと動いてゆく。そこからの消耗戦、脱落待ちだ。マラソンの先行集団に似ている。エルコンドルパサーが大逃げを打って2着に粘った凱旋門賞のようなレースはめったにない。というかぼくが目にしたあんな形はあのレースだけである。 今回の天皇賞のような暴走ペースでとんでもなく離して逃げる馬などいない。ペリエはかなりとまどい混乱していたのではないか。それにしても4角からのクリスエスの切れ味はすごかった。ツルマルはまあ後方待機だから横山は褒められるほどでもない。だからこそ快勝したシンボリクリスエスはすごい。あいつはぼくが思っている以上に強い馬なのかも知れない。どうもいまだに最強馬の実感がない。 こういう視点から語り始める柏木さんが好きである。いるようでいない。それは「おもしろい書き手」と「競馬記者としての冷徹な目」の融合である。高島俊男さんが「おもしろい書き手」と「学者としての豊富な知識」を両立させ、目黒孝二さんから「奇跡的な結合」と称えられたようにだ。 ラップ分析から語るすぐれた競馬記者はいる。おもしろい書き手もいくらかはいる。それを短いコラムで両立させる人はいない。柏木さんの存在価値である。 附記1・ロンシャンで遊んでいるとき、ペリエが載っていないレースなのに「オリビエ!」と叫んでいる競馬ファンがいる。意味がわからん。隣にいた海外競馬に詳しい宇田川淳に訊いたらオリビエという名の騎手がペリエ以外にもいるのだとか。やっぱりあちらではファーストネームで叫ぶんですね。あたりまえか。日本だとまだ武の「ユタカ」だけかな。福永も「ユーイチ」なのか? 関西では。 日本でファーストネームになる場合は、柴田善臣が「ヨシトミ」になったように、同姓の有名人がいる場合の使い分けだ。フランスでは有名なオリビエ・ペリエがいてもその他のオリビエもオリビエと呼ぶ。そこにファーストネームで呼ぶ年期の違いを感じる。 附記2・柏木さんの勤務態度がわるいと、柏木さんのファンであることを自認しているぼくに、同社勤務の人が憤慨して報告してくる。ぼくがファンであるからこそ、「ほんとですか、失望しました!」なんて同意を求めているようだ。でもそれはぼくからすると、「画面で人情派をうまく演じる役者が現実生活ではまったく人情派ではなく血も涙もないヤツだ」というのと同じでどうでもいいことになる。画面での演技がうまければ私生活などどうでもいいというのがぼくの意見になる。同様にこうして現実に発表するコラムがおもしろいのだから、会社での柏木さんがどんなに不真面目不謹慎で問題があろうとぼくには関係ない。逆に、どんなに勤務態度、人柄ががよくても、書くものに才能のない物書きには興味がない。ぼくが柏木さんを悪くいうことがあるとしたら、この種のコラムがまったくつまらなくなったときだけである。 |
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11/30 | おめでとうタップダンスシチー、佐藤哲三騎手!ジャパンC(G1)11月30日 15時25分 東京10R 芝2400メートル
ジャパンカップ予想の基本は外国馬の本気度である。物見遊山とわかっていれば全馬切り捨てる。これだとわかりやすくてありがたい。例年ならブリーダーズカップターフを勝った馬は来日しないし、来ても参加賞狙い(=スタッフの吉原詣で)でしかない。なにしろアゴアシは日本が出してくれるのだ。楽しい観光旅行である。よってこんな馬は鼻から無視する。好きな日本馬で勝負できる。たまに力の違いや展開の綾で人気薄の外国の穴馬が来て外れても、これはこれでまた諦めやすくていい。 ところが今年のように制度が変わり新たなボーナス制度が出来たとなるとわからなくなる。ブリーダーズカップターフ馬・ジョハーはジャパンカップを勝てば100万ドルのボーナスがもらえる。オーストラリアの馬にも1億のボーナスが出るらしい。本気になったオセアニアの馬はこわい。プロレスで言うと藤原的なのがいっぱいいる。フランスのアンジュガブリエルも前走の凱旋門賞で大敗しただけで安定した成績のいい馬だ。昨年の勝ち馬ファルブラヴがやはりそうだった。世界的にも高額な2億5千万の賞金にいくつも附加賞金があったうえ、さらにボーナス制度となると、かなりの本気度だろう。 となるともうわからない。戦ったことのない外国馬のことまで考えたら馬券は何十点も買わねばならない。これはもう当たっても単なるまぐれの世界になる。 だったらどうするか。こんなときこその単複である。好きな馬の単複で楽しもうと思った。出走馬中いちばん好きな馬は今年の二冠馬ネオユニヴァースである。これの単複にする。単はちょっとむずかしいかもしれないが複で元返しはしてくれるだろうとセコいことを考える。いやいや菊花賞4着から巻き返したジャングルポケットの例もある。単勝の可能性だって大きい。まあお祭りだし小銭だからいいや。 馬券は競馬場にいる友人に頼む。田舎でのテレビ観戦だ。そういえばジャパンカップ創設のころ、世間的にも大きな話題にはなったものの、馬券の売り上げはひどいものだった。ほんとにひどかった。有馬の十分の一も売れなかったのではないか。当時と比べると今はずいぶんとよくなったものだ。 パドックを見ているうちに気が変った。ザッツザプレンティから目が離れない。ぼくの最も好きな充実したときの最高の歩様をしている。勝つのはこの馬だ。いや勝てないかも知れないが善戦は間違いない。大好きなネオユニヴァースよりもだんぜんよく見える。 そういえばラジオ短波賞を勝ってクラシックの主役と話題になったときは重馬場ではなかったか。そうだ、馬柱を見るとあれ以来の重になる。しかしなによりそんな馬場のことなんか超越して、鞍上のアンカツすらも飛び越えて、これだけ完璧な出来なのだから結果はともかくベストの走りをすることは間違いない。予定を変更してここから行くことにした。すまん、ネオユニヴァース。好きな馬を変更して外れたら身もだえするほど悔やむが、しかしこの究極の出来を見ておきながら外したら、しばらくは寝込むことになる。 ザッツザプレンティの単複を1万円ずつ頼む。 一度電話を切った後、このチャンスを逃してはならないとザッツザプレンティから馬単で千円ずつ10点買い。日本の有力馬はもちろん外国馬にも散らす。これで万全。すべて高配当。ただの参加賞気分から急に的中への期待が湧く。わくわくしながら発走を待った。 タップダンスシチー、9馬身差の逃げ切り圧勝。ザッツザプレンティ2着。馬連70倍。あああ、これで充分だった。馬連でもうかったのに、これをほんの2000円も買っておけば……。複勝300円。きっちり元返し。毎度のとほほ。 まず間違いなくタップダンスシチーは出走馬中でいちばんの安馬だろう。豪州の馬は安いのでもしかしたらもっと下がいるかもしれないが、日本馬はもちろん英米佛の馬よりも確実に安いはずだ。アメリカのセリで1千万円以下で買ってきたものだろう。共同馬主クラブ友駿ホースシチーの6歳馬、むかしでいうなら7歳馬、老雄である。シチーの馬がGⅠを勝ったのっていつ以来だ。覚えているのでサクラスターオーの年のゴールドシチーの阪神3歳ステークス優勝、翌年の皐月賞2着ぐらいだ。阪神3歳ステークスなんてGⅠじゃない。ただの関西の3歳チャンプ決定戦だ。 なのに今回、GⅠ中のGⅠのジャパンカップ優勝である。GⅠと言っても優勝賞金8000万円ぐらいのも多い(それでも世界的にはたいへんなものだが)。なのにジャパンカップは2億5千万だ。並のGⅠ3勝ぐらいの価値がある。日本馬が勝つと附加賞金も多い。残念ながら外国産馬なので生産者賞とかはカットだが。相手も今年は超一流が揃っていた。たいへんなものである。共同馬主クラブの安馬がとんでもないことをやってのけた。 これがタップダンスシチーのデビュから16戦までの成績。16戦2勝。典型的な下級条件馬の血統であり成績だ。並のGⅠ勝ち馬の戦績としてとんでもなくひどい成績になる。「栴檀は双葉より芳し」というが双葉どころか枯れるぐらい成長してもまだなんの香りもないようなものだ。それがこの齢になってジャパンカップを9馬身圧勝(史上最高着差)である。ヒシミラクルといい最近はとんでもないのがスターになる。 下はヒシミラクルの成績。未勝利脱出が10戦目の馬が菊花賞、春天、宝塚を勝って現役最強なのだから理解不可能。ルドルフは8戦目で無敗の三冠を制している。 こういうのでは未勝利脱出が13戦目だった天皇賞馬・イチフジイサミ(昭和48年)がいるが、それは新馬未勝利戦が1000や1200しかなかった時代の話。それらの反省を踏まえて今の距離体系ができあがった。ヒシミラクルは現在の恵まれた芝2000メートル戦を何度も走って勝てないのだから重症だ。 それと比べたらタップはまだ新馬勝ちしているだけましか。しかし両馬ともこれだけ走っていちども1番人気がないのがよく立場を表している。 違いは主戦騎手だ。ヒシミラクルは角田の馬だった。後のGⅠ3勝も角田だ。ジャングルポケットをおろされた屈辱をヒシミラクルで果たした。初めてのGⅠ勝ち菊花賞が前年1番人気のジャングルポケットで4着に敗れ、馬主におろされる原因となった因縁の菊花賞だった。 タップダンスシチーの主戦は四位である。何人もの騎手が乗っているがそこに佐藤の名はない。去年の有馬の時、佐藤哲三は代役で騎乗だった。あわやという逃げ粘りをして穴馬券の主役となった。その後豹変し、6歳にして4戦3勝3着(宝塚記念)1回の安定した成績である。佐藤と手があったのだろう。京都大賞典では現役最強馬ヒシミラクルも破っている。 平成8年の朝日杯以来のGⅠ勝ちだという。朝日杯なんてのはGⅠじゃない。思い出せない。調べてみたらマイネルマックスだった。そんなのもいたな、そういえば。これが佐藤哲三にとって初めてのGⅠのようなものだ。それがGⅠ中のGⅠだからかっこいい。 智性的な顔が好きなぼくは、ちょっとアホっぽい顔の佐藤が好きではなかった。でも勝利騎手インタヴュウで見直した。彼は自分から言ったのだ。「あまり見栄えのしない騎手ですけど、応援してくださるみなさんのために一所懸命乗っています」と。その後に最近じゃスポーツ選手のコメントの定番になっている「応援よろしくお願いします」なんてバカっぽいのを言わなかったのも好感度アップである。 よかったなあ、佐藤。有馬もがんばれよ。おめでとう、タップダンスシチー。プレザントタップの仔は日本にいないから種牡馬になれるかな。まあなっても申し込みが少なくてすぐ廃用だろうが、去年までの成績じゃ乗馬として寿命を終えることすらむずかしかったろうに、これで屠殺されることはなくなった。今夜はぐっすり眠れ。 構造改革の痛みに耐える平成不況に似合った、雨戸の隙間から射した曙光のような優勝だった。(11/30記入) ◆ジャパンカップ(30日、東京10R、GI、3歳上OP、芝2400m)
ペリエのミス、アンカツの凄味 ちょうど柏木さんが天皇賞後に書いた「ペリエはペース音痴」についての感想を書いた後だったので、この外国馬総崩れは印象的だった。カツラギエースの逃げ切りと同じパターンである。佐藤哲三が騎手を志したのがカツラギエースのそのジャパンカップだというのも因縁深い。 天皇賞秋と同じ大逃げとなったが、天皇賞のそれはマイペースで行くはずの後藤ローエングリンに執拗に吉田ゴーステディがからんだための超ハイペースだった。いまもローエングリンがマイペースで行けたらレコード勝ちだったと主張するローエングリンファンは多い(笑)。 今回はタップダンスシチーの単騎逃げである。勝因は佐藤が「ため逃げ」をしなかったことだ。もしも勝利にこだわり、2、3馬身差を保った逃げ、あるいは大逃げをしても、4角でひといき入れ、勝利を意識した一度ためての二段ロケットだったなら、後続につかまったろう。佐藤はそんな計算をせず、12秒台のラップを刻む自分の逃げに徹した。 ペース音痴のペリエ・クリスエスは、いつものようコバンザメ作戦としてなにを目標にレースを進めたか。2番人気のライバル、デムーロ・ネオユニヴァースであろう。当面の目標であるそれをゴール前できっちり差し切っている。本来ならそれで優勝のはずだった。だがその前に2頭いた。ヨーロッパにはいないタイプの逃げ切ったタップダンスシチーと、ペリエとはちがって「抜群のペース判断の天才・アンカツ」が乗ったザッツザプレンティだ。 このレースの立役者はもちろん勝ったタップダンスシチーだが、同じぐらい賞賛されてもいいのがアンカツのペース判断だろう。ならなぜタップを捕まえられなかったか。アンカツは勝つ気でいたから後ろを気にしていたのだ。それでいてクリスエスとネオを封じたのだからたいしたものだ。馬自身のロングスパートもすばらしい。 私が初めてアンカツにインタヴュウしたのは88年だった。彼に関する基礎知識のない私は、いまこうして書いていても赤面するが、騎手本人に「安藤さんは騎手としてどんなところがすぐれているのですか」と訊いてしまったのである。赤い夕日が差し込む、競馬場から宿舎にもどる関係者用のバスの中だった。一瞬とまどった顔をしたアンカツは、すこし恥ずかしそうに「ペース判断がいいと言われます」と言った。 2着のアンカツと3着のペリエのあいだには大きな差がある。我が道を悠々と行ったタップダンスシチーは別物とするなら、あのレース、おもしろかったのは日本獨自の大逃げに、各国の騎手がどう対応したかにある。もちろんそれは競馬をしてきた環境の差でしかない。フランスの天才であるペリエがヨーロッパを捨て日本に定住したなら(彼はやがてそうしたいと明言している)マスターできる技術ではある。その他も一流どころはみなそうであろう。それはさておき、とにかく今はアンカツなのだ。 直線、アンカツが後ろはもう来ないなと判断して追い出そうとしたときはもう遅かった。タップダンスシチーはすでに安全圏内にいた。そりゃアンカツだって世界の一流馬がうしろにゾロっと揃っているのだ、そんな経験はしたことがない、緊張したことだろう。直線で、行くべきか、もうすこし待つべきなのか、あんなとまどっているアンカツを見るのは初めてだった。 岡部が4歳のルドルフで3着に敗れた昭和59年と同じである。カツラギエースを捕まえに行けば簡単に勝てた。だが岡部は後ろにいる世界の一流馬を意識して動けなかった。結果人気薄のカツラギエースがそのまま逃げ切り、同じく前にいたイギリスのセン馬・ベッドタイムが2着に流れ込んだ。さらには昭和48年の有馬記念もそうだ。いつでもつかまえられると、逃げたニットウチドリとストロングエイトよりも、後ろにいるタニノチカラ(秋の天皇賞馬)を意識したハイセイコーは3着(タニノチカラは4着)だった。勝ったのはニットウチドリを交わしたストロングエイト。有馬記念初の万馬券だった。これでまた思うのは、展開の綾による大殊勲と思われたストロングエイトがその後強豪になったこと。カツラギエースも続く有馬記念でルドルフの2着(三冠馬ミスターシービー3着に先着)して、ジャパンカップ勝ちが単に展開の綾でないことを証明した。その意味でタップダンスシチーの前途は洋々である。ってもう6歳馬だけど。 私には前を捕まえようと意識しつつ、後ろからの追い込みも警戒する、アンカツの騎乗がなんとも印象的なジャパンカップだった。 佐藤のエピソード 錚々たる世界の強豪を破っての優勝だから、スポーツ紙はドラマチックに人と馬をもちあげたい。ここに至るまでは挫折と栄光、数々の艱難辛苦があったのだと。しかしなにもない(笑)。 それでも佐藤が騎手を志したのがカツラギエースのジャパンカップだったというのは格好の話題だった。まずはこれで盛り上がる。導入部オーケー。 その後にいつものよう、「この栄光にたどり着くまでには様々な挫折があった」と続けたい。たとえば「断然人気の馬に乗りながら騎乗ミスで敗れたダービー」のようなことだ。しかあし、な~んもない。 それでむりやり出てきたのが「かつて、挫折に泣いたこともあった。ラガーレグルスのゲート膠着」って、あ~た、そんなもん誰も覚えてませんがな(笑)。それにそんなの、たいした挫折じゃないでしょ。 いやはや、スポーツ紙の佐藤を盛り上げたいのだけどネタがねえなあ、こまったなあ、という苦しい記事を読んでいたら、益々心から「よかったなあ、佐藤」と言いたくなった。これで佐藤が化けてくれると、今年は幸の充実もあり、騎手世界がおもしろくなるのだが。 (附記、附記の2,12月2日記入。) 柏木さん完敗 世界のオリビエ・ペリエをペース音痴と言い切ったかっこいい柏木さんだが、今回の本命はヨコテンのツルマルボーイ。前回の天皇賞でも2着には来たがとても褒められた騎乗ではなかったとペリエと並ぶペース音痴と判断していたのにどうしたことか大抜擢。15着惨敗。なかなかうまくいかんものですね。 |
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03/11/28 | ルドルフの馬券 競馬のカットに使った馬券の元写真はこれ。 これを加工してを作った。 本当は昭和57年の第2回ジャパンカップのジョンヘンリー単勝馬券を使いたかったのだが見つからない。どこにいったのだろう。それがものを蒐集しないぼくの最古の馬券になる。年代を見たらこれが次いで古かったので使用した。 この馬券は1984年だから昭和59年になる。競馬会ってへんなところだ。『中央競馬レコードブック』では戦前から今に至る記録にすべて年号を用いている。西暦が併記してないので自分で計算せねばならない。一方で馬券のほうは西暦で統一しているようだ。コンピュータの絡む部分はそうなるのか。 ぼくはもちろん年号支持者なのだけれど、平成になってからこんがらがってしまった。あたらしい競馬は西暦で覚えるようになった。昭和の競馬は西暦ではなく昭和で記憶している。昭和48年のハイセイコーの皐月賞。連複千円3点買い。それがぼくの馬券デビュだった。 この馬券を見たときもすぐにはなんのレースか思いつかなかった。1984年は5を引いて昭和59年かと思った瞬間、すぐにこれがなにかわかり電気が走った。 昭和59年の京都、5回というと秋の開催。10レースというとひとつレースを減らしている特別な日。菊花賞である。 そう、これはシンボリルドルフが我が国競馬史上初の、そして今に至るも唯一の「無敗の三冠馬」となったときの馬券なのだ。ルドルフは3枠だった。当然単枠指定である。当時は枠連しかない。大好きなルドルフの無敗の三冠達成を外してなるものかとこれ以外の3点も2万円ずつ買った。いや的中して払いもどししたそちらが本線馬券だ。単枠指定だからゾロ目はない。7点で総流し。的中は南井の乗ったゴールドウェイが2着になっての3-5。単勝3万円と的中した連複2万円は払いもどし、外れ馬券が蒐集されたことになる。その日、東京競馬場にいた。そこで観て、そこで買った。 この払もど金でなにを買ったかは記憶にない。単勝が130円(25%の控除を考えたらずいぶんと高配当だ)、連複は740円だからたいして儲かってはいない。13万円買って17万ほどの払いもどし。それでも記念になんか買ったはずだ。その夜のKやMとの宴会は記憶にある。この年の夏、8月29日に猫を拾ったのだからこのころはかわいい盛りか。 南井はこのときまだGⅠ未勝利騎手。この三年後にタマモクロスと出会い春の天皇賞で初めてGⅠを勝つ。後にナリタブライアンで三冠ジョッキーとなる南井がルドルフの2着しているのは暗示的だ。 収集癖のないぼくにしてはよくとっておいたと感心する。大事にしよう。 --------------- 【附記】2005年10月23日 ディープインパクトがルドルフに次ぐ無敗の三冠馬を達成した。 それはいつもどおり「11レース」だった。裏開催の福島も開催されている。東京開催もそれなりに。 1レースすくなくした当時の方がまだ純だった? と言えよう。 |