2007
1/29

 何度かくりぃむしちゅーの番組について日記に書いた。そこからの抜粋。

 くりぃむしちゅーの番組

 今夜偶然見た「くりぃむナントカ」はおもしろかった。ゴールデンタイムで通じる内容。でもゴールデンでないからいいのか(笑)。テレビ欄からのコピー。

23:15 [文]くりぃむナントカ「M1負け犬vsM1王者…漫才以外の笑い認めてGP開催次課・おぎ・チュート・タカトシ・ますおか・ブラマヨ」[出]くりぃむしちゅー

 次長課長の次課、タカあんどトシのタカトシ、ますだおかだのますおか、ブラックマヨネーズのブラマヨ、はいいが、おぎやはぎの「おぎ」は片方の名前だけ。せめて「おぎや」と1文字でいいから矢作も入れてくれ(笑)。「おぎやは」が「タカトシ」や「ブラマヨ」と同じ四文字で適切か。でも「おぎやはぎ」の五文字を四文字にすることに意味はあるのか。
(あとで気づいたがなんでここに品川庄司は載っていないのだろう。)

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 M1で優勝できなかったコンビが、どんなものでもいいからとにかくタイトルが欲しいという設定。それが「なんとか1」、略してN1だって。賞金は一千万ならぬ一千円。
 N1を欲しいのが品川庄司、タカトシ、次長課長、おぎやはぎ、バナナマン。有田が「おぎやはぎは準優勝だっけ? 第一回で」「いや、ビリです。ダントツのビリ」なんておふざけが事情を細かく知っているM1好きにはたまらない。

 そして審査員といって登場したのがM1優勝者の、ますだおかだ、ブラックマヨネーズ、チュートリアル。
 彼らの審査の時のことばがM1でのマツモトやワタナベ、オータケのなぞり。一応これは誰それさんが言ったことでと説明するが説明なしにわかって笑える。
 タカの漫才に対するこだわりも本気だろう。吉田のコメントも今回は秀逸だった。徳井も。福田も。M1をとったもの、とれなかったもの、その紙一重の差で挑戦者と審査員に分けられている。そこの緊張感と遊びがたまらない。

 おもしろかったなあ。録画すべきだった。悔やまれる。今からもう1回みたい。これだけのメンバを揃えたからか来週が後半とのことで2週分のようだ。バナナマンを他の誰かにすればもっとよかった。なんで彼らだったのか。麒麟とか二丁拳銃とか。笑い飯はいらないが。
(後にバナナマンはレギュラーと知る。)

 ぜんぶおもしろかったけど思わず私が噴いてしまったのは、演者も審査員もみなよく絡み合っている中で、ひとりだけ外しまくっていたおかだだった。あの人のおかしさはなんとも言い難い。最高におもしろかったと書いたけど私は笑ってはいない。無表情。なんの変化もなし。もともと表情には乏しい(笑)。でも本人的には心底から楽しんでいる。そんな無表情の私が思わずプッと噴いたのがおかだだった。

 来週もぜひ続きを見たいけど意識してテレビ番組を見ることはほとんどないし、月曜午後11時の番組である。かなりの確率で忘れそうだ。ゴールデンタイムのヴァラエティ番組でもこんなに楽しんだことはないからこれはもう稀有の出来だと思うのだが、考えてみると旬の藝人勢揃いのうえ、企劃がよかったのだから当然でもある。

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 あまりにおもしろかったのと、録画をしなかったのでもう見られないなあと思い、未練たらしく2ちゃんねるのテレビ欄に出かけてみた。やはり盛り上がっていた。そりゃおもしろかったものなあ。
 いくつかをコピー掲載。


275 :名無しさん@板分割議論中 :2007/01/29(月) 05:49:15
>>272
視聴者は情報に流されやすいんだよ

普段漫才をまともに見てない人が今度の番組見て「タカトシって漫才ではますおかやブラマヨに絶対敵わないんだぁ」と固定観念を持ってしまう可能性が高い
くりぃむナントカがM-1王者を偉く扱ってるせいでね

864 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 12:28:05 ID:7tcyndAp0
まぁ今更言っても撮影は終ってるわけだし仕方ないんだよな
明日の番組で「僕ら漫才でも絶対この人達に負けてませんからねぇ」
ってタカトシが言っててくれることを願うよ
今回は謙虚じゃなく強気でいってくれ、頼むぞタカトシ


 そんな心配はいらないと思うけど、そういう作りであったのはたしか。その意味でゴールデンではなかったからいいのか。あるいはこんなお遊びにはつきあわないと出演を断ったコンビもいたのか。
 と、この辺の書き込みを見て、これが放送前の書き込みなのだと知る。ファンが企劃を批判し自分たちの贔屓のコンビがこういう扱いをされることに危機感を持っているのである。おもしろいねえファン気質ってのは。ここまであいされているとは知らなかった。
 ここからは放送後の書き込み。

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901 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00:19:22 ID:TgVQh2Fj0
今日の放送は好き嫌い分かれると思うな

902 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[] 投稿日:2007/01/30(火) 00:20:20 ID:jhi2yLBb0
一組だけピリピリムードのタカトシ面白かったw

948 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 02:00:49 ID:ZfU344D1O
面白かった。
久しぶりに腹がよじれる程笑ったよ。
タカトシが叩いていい音ー1グランプリに一組だけ出て審査員が優勝者を決めるまでのくだりが最高だった。

あとブラマヨの吉田面白いなぁ。

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915 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00:36:16 ID:DZi+DIgLO
挑戦者側、審査員側それぞれ一致団結しててほのぼのしたわw
有田の一言コメントも上田のフォローもよかった
大木ちゃんも噛まなくてすげーな
吉田の嫉妬心もノリノリの悪人ヅラも笑ったw
しかしあの出囃子は燃えるなー

大木アナはたしかにがんばってた。長いタイトルを絶対に噛むもんかと気張って紹介しているのが目に見えた。出ばやしはM1のアレである。

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ますおかの岡田の安定感と、かぶりしらずのすべり芸!
品庄次課長のこれでもかってぐらいのバラエティにおけるテクニック
他の組も最高!!
完全保存盤間違いなし

917 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00:41:31 ID:PNqN0BNn0
今日のナントカは全編通して笑った。
好きじゃない次課長や、品庄とかでゲラゲラ笑ってしまった。
ノリノリ堀越も予定調和的なノリのコントで結構好きだ。


918 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00:47:31 ID:z5S+HXkxO
M-1という格闘技のチャンピオン達にケンカの仕方を教えるという企画だったな。お互いにリスペクトがあって良かった。

タカトシはあれくらいムキになって良いよ。一番漫才にプライド持ってるだろうし。来週も楽しみだ。

919 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00:53:16 ID:Blf4NSun0
タカの今から漫才やりますよってあのムキになり方は神だったなw
ますだおかだやブラマヨのコメントもかなり面白かった


943 名前:名無しでいいとも!@放送中は実況板で[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:40:49 ID:8TVvbnSc0
岡田ってなんか笑っちゃうんだよな~。いつも増田もいてほしいけど
先週今週おもしろかった。芸人は瞬時に機転が利くほどテレビ向きなんだろうなあ


そうか、おかだファンは私だけではないようだ(笑)。
録画したかったな。もったいない。


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(以下は三月の日記から)

 くりぃむしちゅー
 先日偶然見た「くりぃむナントカ」がおもしろかったので月曜の午後11時15分から覚えている限り見るようにしている。毎回裏切られていない。
 今日は日テレで以下のようなのをやっているので見た。

19:58 [S][文]くりぃむしちゅーのたりらリでイキます!!▽出題王!!解けないQ出し続けろインテリ芸能人総出演うんちく王上田に挑め小説家ひとり女医西川国立大卒真鍋vs次課長まさかの撃破!?[出]くりぃむしちゅー [出]次長課長 [出]真鍋かをり [出]劇団ひとり [出]小池栄子 [出]デーブ・スペクター [出]西川史子 

 これまたとてもおもしろかった。
 自分が得意の分野から相手が答えられないような問題を短い時間のあいだに作って出題し合うのである。題して「出題王選手権」。有田のプロレスネタや劇団ひとりのアイドルオタクぶり。西川は医学用語からの出題。相変わらずの真鍋かをりの頭の良さも見えておもしろかった。しかしこれ我が身で考えればわかるが、立て続けに問題を作り続けるのは至難である。次第に追いつめられて相手のわかりそうな問題を出してしまい自滅するというパターン。

 有田が出題したブロレス問題に、「長州が『おれはおまえの噛ませ犬じゃない』と叫んだとき、日本軍は猪木、藤波、長州でしたが、さて相手の外人組は、××と××、そしてもうひとりは誰だったでしょう?」というのがあった(笑)。××と××すら覚えてない(笑)。でもふたりはメジャーなレスラーで、問題となったもうひとりがちょっと出てこないマイナーなレスラーだった。
 見え見えのクッサイ芝居だったが、後々あの「噛ませ犬」というコトバを発案したのが猪木だと知り、さすがだと感心したものだ。全体的には白けても色あせないものは残る。仕掛け人猪木は凄玉だ。

 結果は有田と上田の決勝戦。有田の優勝。
 こういう遊び番組の成功不成功は、かみ合わないふたりがかみ合ってしまって敗れるとき、視聴者が納得できるかどうかの得心度合いにある。たとえば医学ネタやファッションネタで有田の答えられない問題を出してきた西川が問題作りに窮して「女性誌JJは何の略か?」と出題する。女性自身の略なのは有名だから有田がわかったなと思う。案の定有田が正解する。この辺の水準?が視聴者を掴むコツだろう。一般的にはどうだったのか知らないが、私にはそれが程よく楽しめた。

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 彼らの名を覚えたのはボキャブラ天国の海砂利水魚の時代だが、当時おもしろいと思った記憶はない。こんなに出世するとは思わなかった。
 チェンマイで知り合った朋美ちゃんが当時から上田の大ファンで、彼のお笑いセンスって抜群だと思いませんか、と帰国後電子メールをやりとりしているとき書いてきたことを覚えている。相づちが打ちにくかった。あの当時から絶讃していたのだからこんなに出世してうれしいだろうな。いまもってあの当時の上田のどこがおもしろかったのかわからないが(笑)。朋美ちゃんは今頃もうママだろうか。

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 そういや電子メールを始めたばかりのあのころ、PCは初めて買った富士通FMVだった。CPUはゲタを履かせて(死語だなあ)AMDのK6にしていた。メモリは16MBを32MBに増設して使っていた。いくらしたんだっけ、あの16MBは。その前のDynabookの8MBが8万円したのは覚えているが。
 メモリ32MB、たっぷりの量である。自信満々だった。なのにPCに詳しい人に32MBじゃ充分じゃないと言われ、なんちゅうことを言うヤツだと思った。だったら驚異の64MBにしたろか! と本気で思った。あのころ……。
 いま1768MB積んでいるが、たしかにぜんぜん充分じゃない。
 あのFMVとウエスタンデジタルの1.6GBハードディスクは思い出したくないPC記憶になる。
 いまもなにがあろうとFMVは買う気はない。

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 彼らの番組を見ていて目に附くのは企劃の良さだ。放送作家にいいのがついているのだろう。お笑い界ではかなりの高学歴に属する彼らだが、それが関係あるのかどうか。私としては大阪系のコッテコテでないことが彼らを好きな理由であることは間違いない。笑いの本場が大阪であることは認めるし、盟主が吉本なのは否定しようもないが、大阪と吉本に無縁の笑いにほっとする部分はある。


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 ということでお気に入りのくりぃむしちゅーだったが失望する事件があったらしい(笑)。とまるで他人事。日記より抜粋。

 3/12
 11時15分から「くりぃむナントカ」を見るが、外人女が男にびんたをするという不愉快な企劃だった。途中で消す。ここのところくりぃむの番組をよく見て楽しんでいた。その理由が「企劃がよかったから」とわかった。その企劃の良さが彼ら自身の能力=優秀なスタッフ集めから来ているのは確かだろう。いつもいつも満点とはゆかない。こういう外れ企劃だとつまらなくなるという見本。不愉快で見ていられなかった。

 罰ゲームの時に使う外人女の「ビンタガール」というののオーディションという設定。外人女はみな稲川素子事務所からやってきた日本語の話せるネーチャン。水着姿。
 ま、そこまではいいんだけど(笑)、日本人男に外人女が力一杯ビンタをかませ、椅子から転げ落ちたりして痛がる彼らという趣向を私は笑えない。見ているだけで気分が悪くなる。もちろん女を殴る男も最低であり見たくもない。自分もしない。もっともいまの時代、男が女を殴る映像は流せないか。

 気分が悪くなったので途中で消した。これでしばらくは彼らの番組を見ずにすむだろう。
 高島俊男さんやシーナマコトが毅然と実行しているように、テレビと完全に縁を切りたいと思いつつ切れない軟弱者なので、こういうことを書いていることすら恥ずかしい。まして毎週決まった時間にヴァラエティ番組を楽しみに見るなんてのは最悪である。と言いつつその最悪のことをけっこうやっているから、その候補がひとつでも減るのはよいことなのだ。
 しばらくはさよならである。よかったよかった。


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「蘊蓄王ゴールデン進出」

6/2 「テレサ・テン物語」──テレ朝

 テレサ・テンがチェンマイのメーピンホテルで亡くなったのは95年の5月8日。その日私はすぐ近くで酒を飲んでいた。テレサが亡くなるとき、100メートル以内にいたというのはささやかな自慢(?)である。
 今年は十三回忌。自分なりに何かを書かねばと思っていたとき、印象的な番組を見た。と書くとこの番宣映像の木村佳乃が主演したドラマと思われるだろうがそうではない。一週前に放送された「この番組の宣伝のための番組」である。



 これはドラマである。そちらはドキュメンタリィだった。
 「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」の大ヒット三部作が完成するまでの苦労を作詞の荒木とよひさ、作曲の三木たかし、担当したプロデューサの映像とことばを交えつつ構成された労作だった。
 そしてそれらのあとに彼女の歌が出てくる。有線大賞でグランプリを受賞し、涙を流しながら上記のヒット曲を歌うテレサを見ていたら涙が出た。まさに歌姫である。天才としかいいようがない。タレントとして同期だという早見優(齢はずっと下だけれど)が出てきて彼女のすごさをコメントしたりするのも楽しかった。録画しなかったことをいまだに悔やんでいる。すばらしい出来の番組だった。

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 それが前宣伝なのだからドラマのこちらはしっかり放送日をメモして見た。なのにこちらはどうでもいい出来だった。はっきり失望した。タヌキ顔のテレサをキツネ顔の木村が演じるのがそもそもミスキャストだと思うが、それ以前にこれはドラマ化が無理な素材だと思った。映画「バード」でチャーリー・パーカーの素材をそのまま使ったように、ここでも木村は口パクでテレサの歌声を流していた。それしかやりようがない。不世出の天才歌手なのだ。

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 いまネット検索したら舞台化もするらしく、そちらでは華原朋美が主演だとか。演劇だと口パクは出来ないだろうし、どうするのだろう。やはりやるのか? それしかない。あの歌声は誰も近づけない崇高なものだ。

 ドラマでも舞台でも、テレサの台湾出身、パスポート偽造問題、中国本土との絡み、謎を含んだ死から、数奇な人生として描こうとする。それはその通りなのだが、それ以前に彼女は天才歌手である。そこをないがしろにして数奇な人生を切り口として描くのは無理がある。

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 これの原作は日テレの「ザ・ワイド」に出ている有田芳生だという。オーム事件のときのコメンテーターとして名を売った人だ。そういえば何年か前、気負って書いていたような気がする。つまらないだろうと思って読まなかったがこのドラマを見ると原作のつまらなさも想像がつく。有田の名前「芳生=よしふ」は共産党員の父親が尊敬するスターリン・ヨシフからつけた名前である。あの大虐殺者を尊敬しているあたりからして異常だ。有田も熱心な共産党員だった。脱退して彼らから忌み嫌われている部分には好感を持つが。
 そもそも不世出の天才歌手の人生をドラマにすること自体が無理である。クリント・イーストウッドの「バード」も、けっきょくはチャーリー・パーカーの音を楽しむ作品になっている。天才は天才であるからおもしろおかしく語るのは不可能なのだ。たぶん有田の原作も、天才歌手の部分には近寄らず(近づけず)数奇な人生を描いたものだったのだろう。
 その有田が日本新党から参議院選に出るそうだ。ってどうでもいいけど(笑)。

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 私にはひとつ「もしも」がある。その前宣伝のドキュメンタリィを見なかったらどうだったか、という話である。それを見なかったらこのドラマを楽しめたのだろうか。だってそのドキュメンタリィでは、香港在住のテレサが香港の未来を案じた「香港」を深刻な顔で歌うシーンまで流れたのだ。彼女がそのことを願って作ってもらった作品だから、歌詞の内容もそれっぽいし、香港から中継映像での彼女の顔も問題を投げかけてくる。ドラマでは、それをまったく真似して同じ事をした。木村の着ている衣装まで同じだった。本物のドキュメンタリィを見ているから、元々が口パクでウソっぽいところに、先週見た元の映像まで浮かんできて見ていられない。
 いややはり見ていようがいまいが感想は同じだった。テレサの歌も映像もテレサだけのものであり、それをドラマや舞台にするのは不可能なのだ。それが結論になる。
 あのドキュメンタリィ、録画したかったなあ。かといってテレ東でやっている演歌番組を録画しまくり、その中からテレサの部分だけを選んで編輯するほどの熱意もないし……。しかしまあそのドキュメンタリィに登場する彼女の歌は、大ヒット曲の3曲と「空港」ぐらいだったが、ほれぼれする歌声だった。不世出の天才歌手とあらためて感じ入った。

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 テレサの由来
 前々から「マザー・テレサを尊敬しているのでつけた」という藝名の由来に釈然としないものを感じていた。今回Wikipediaを見たら、幼児のときの洗礼名というのが定説のようだ。そのほうがしっくりくる。
6/1

●SoftBankケイタイのCM

 昨秋、VodafoneがSoftBankになった。その前のJ-phoneからの使用者としては二度目の身売りである。親がまた離婚して苗字が変るようなものであまり気分のいいものではない。現実にそういう体験をするこどもはたいへんだなと同情する。
 キャメロン・ディアスとブラッド・ピットを起用したCMがどんなものになるかと注目していた。ふたりのギャラだけでもたいへんだ。大勝負である。
 流れたものを見て失望した。コンセプトは「歩きながら話す」のようだ。
 これはそれを是とする人にはよいが嫌いな人にはたまらない。携帯電話を使用する人の多くが歩きながら話すことをよしとすることを前提に作られたのだろうが、果たしてどうだったか。

 中でもひどいと思ったVersionは、今年になってから流され始めたキャメロン篇だった。キャメロンと娘(という設定と思われる)の朝のシーンである。ふたりが家から出て来る。離婚した家庭、あるいはシングルマザーという設定でもあるのか。とにかく母と娘と思われる二人の朝の出勤通学風景だ。たがいに並んで歩きながら携帯電話で他者と話している。ふたりのあいだに会話はない。娘の幼稚園の送迎バスのところまで来る。そこで初めてふたりはあいさつらしきものをかわす。そしてまたすぐに携帯でふたりは誰かと話しはじめるのである。見ていてなんとも寒々しいものを感じた。亭主(父親)がいるのかどうか知らない。假りにいるとして、すでにもうクルマで出勤している、ハッピーな家庭だとしよう、でもなぜ一緒に家を出て来た母子が親子の会話をせず、朝から携帯電話で話しているのだ。よしんばシングルマザーの母親は生きてゆくために朝から打ち合わせに忙しいと妥協したとして(こんなところで妥協したくないが)、まだ五、六歳の娘はいったい誰と話しているのだ。
 このシーンから携帯電話をとってしまうと、仲良さそうな母子が笑顔で会話をしながら送迎バスのところまで来て「いってらっしゃい」「ママ、またね」とでも言葉を交わし、母は電車の駅にでも向かうほのぼのとしたいい絵になる。ところが携帯電話があるために、母は隣にいる愛娘と言葉を交わさずいまつきあっている男?と話をしながら歩き、娘もまた、だれかと話している、となる。あんな五、六歳のこどもが幼稚園に行く前の朝っぱらからいったい誰と携帯で話しているのだろう。こんなCMを作った人間の神経を疑う。まるで携帯電話はこんなふうに人と人の仲を壊してしまうから使わないようにしましょうというキャンペーンのようだ。キャメロン・ディアスという映画出演料一本二十億とか言われるハリウッド最高級スターを起用して作ったCMがこれである。孫さんはこれを見てどう思ったのだろう。すばらしいと誉めたたえたのか。

 外国の大スターに何億円もの出演料を払わなくても心に訴えるよいコマーシャルはいくらでも作れる。ブラッド・ピットとキャメロン・ディアスを起用して、ああいうCMを作る。そこにSoftBankという会社のつまらなさが凝縮されている。

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【附記】それでもまだ……
 その後DoCoMoのコミカルなCM等が出て来たことからSoftBankも上戸彩を起用した同路線を始めたりしている。
 つい先程最新のキャメロンVersionを見た。金髪で派手派手なマリリン・モンローみたいな彼女は、新バージョンでもやはり歩きながら、周囲に挨拶しつつケイタイでしゃべっていた。彼女と目や手だけで挨拶を交わす周囲の様々なタイプのカップルも、みなペアであり相手が隣にいるのに全員歩きながらケイタイで話している。いったい誰と話しているのやら(笑)。キャメロン篇に関しては今後もこの「隣にいる友人家族を無視してケイタイでしゃべる路線」を採るらしい。どこの広告プランナの発案なのか知りたいものである。いやはや寒い。

【附記・2】人それぞれ
 キャメロンのその絵が欲しいなとネット検索したら、このCMを絶讃する若者(と思う)が山のようにいた。テレビの前でもうキャメロンを見たくて待ち望んでいるらしい。そういう人達はここに書いたように、「朝っぱらから母と娘が会話をせず、いったい誰と話しているんだ」のような疑問は持たないのだろう。気味の悪い犯罪が起きるはずである。

7/10
きらいなCMの流れ


 深夜のテレビCMがサラ金ばかりでいやになったことがある。しかしそれはまだよかった。深夜に規制されていた時代だ。やがてゴールデンタイムでも許可されてそこいら中サラ金のCMだらけになった。オノマユミとかイノウエワカはこれでスター?になった。毎日毎日くどいほど流れるから顔を売るには最適だった。
 しかしあれだな、あれだけ顔を売り、雑誌では水着になりまくり、ヴァラエティ番組にも頻繁に顔を出していたのにスターになれなかったオノマユミってのはよほど無能だったのだろう。たしかに小池栄子なんて切り返しが抜群にうまいのにオノマユミではくすりともしたことがなかった。

 図に乗ったサラ金には天罰が下り、ここのところだいぶすくなくなった。武富士ダンサーズも今は懐かしい。

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 サラ金の次は保険だった。これは朝のワイドショーから昼間の番組に多い。年配者、主婦向けなのだろう。実直さを売り物にしたような中堅俳優が、この保険がいかに安く安心でいざというときに役立つかと延々としゃべりまくる。
 私はテレ東の午後の洋画劇場を見ることが多いのだが、ここがもうそれの巣窟なのでまいった。それが始まるとチャンネルを替えるのだが、どこに回してもこの時間、そればかりである。
「八十歳までなら誰でも入れます」と強調している。八十をすぎている人はこういうものを見てどう感じるのだろうと毎度思った。八十以上は人間ではないのである。

 これはいまも大隆盛だ。見ない日はない。今後も団塊の世代のリタイアが続くから、ますます増えるだろう。テレビを見ながら消音にする日が続きそうである。保険業界と葬式に不況はない。

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 ここのところまたうんざりするのが連発している。パチンコ屋のCMだ。これはもう最初から制限がないのかゴールデンタイムで流れっぱなしだ。いやはやものすごい量である。それだけパチンコ屋はいま儲かっているのか。パチンコ屋の送金をやめさせれば北朝鮮なんてすぐにつぶれるのだが。

 サラ金→保険会社→パチンコ屋。
 そういう時代なのだろう。まことに正確に世を映している。

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 CMを見てるとタレントの格がわかる。明石家さんまの番組などトヨタを始め一流どこがおおい。サラ金やパチンコ屋がスポンサーでは、たとえ冠番組でもタレントはまだまだということなのだろう。

8/7  素浪人・月影兵庫に失望

「素浪人・月影兵庫」がリメイクされたらしい。主役の二代目月影兵庫役は初代近衛十四郎の息子・松方弘樹だ。これは当然予測されたこと。というか彼を差し置いて誰も出来まい。松方も枯れてきて、あの陽気でおどけた月影兵庫を演じるのにはいい頃合いである。

 中学生のころ、この番組を見るのが楽しみだった。いや正しくは、高校生になってから夕方の再放送を見たのだったか。最高視聴率38%だったというゴールデンタイムで見た覚えはないから、きっと再放送だ。いまTBSで午後四時から『水戸黄門』の再放送を流しているが、テレ朝も当時そんなことをしていた。同じく日テレは夕方からいわゆるあの「青春モノ」を再放送していた。私は当時からあんなのはくすぐったくてダメだった。あの種の番組の昔話を好きな人がいるがまったく受けつけない。感覚の相違である。
 学校から帰ってきて、そういう番組をちょっとだけ見て、あとは明け方まで受験勉強していた時代の話である。「オールナイト・ニッポン」を聞いていたころだ。

 本気になると怖くて強い月影兵庫はいつもは飄々とした三枚目である。猫が怖くて飛び上がる。これは猫好きの私にはわからない感覚だった。そして名コンビの品川隆二演じる「焼津の半次」。この作品のおもしろさはコンビにある。映画で言うとバディ・ムービーか。相棒物だ。
 テレビ時代劇はいっさい見ないが、なんとなく懐かしい気分でチャンネルを合わせてみた。期待大である。一本ぐらい楽しみに待つテレビ時代劇があってもいい。

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 ダメ。
 まず半次役を受けつけない。品川隆二の甲高い声とおっちょこちょいがおもしろかった。なのにこの人、だみ声である。こちらの描く半次役と違いすぎる。
 ということで調べてみた。すると小沢仁志という役者らしい。半次役は松方直々の指名だとか。当然松方はこれが相棒物であり、評価が高かったことには品川の存在が大きかったことをわかっていよう。父を超える自分なりの月影兵庫を創るには、半次役が最も重要とわかっていた。そこには品川半次とは違う半次像が必要だった。そういうことからこの小沢という役者に白羽の矢を立てたのだろう。

 私が「ダメ」というのも、先代の月影兵庫と半次をベストとし、その面影を追っているからだ。いくら敬愛する父の作品を継ぐとはいえ、松方は父の二番煎じをする気はなかったろう。品川タイプの役者はいたろうが、最初からそれは眼中になかったに違いない。父とは異なる月影兵庫を創らねばならなかった。そのためにまずせねばならないのは、父とは違う半次の設定だった。
 だから私がおもしろくないと言うのは、むかしのイメージから抜け出せないからだと言われればその通りになる。でもやはり、だみ声の半次は受けつけなかった。あのコンビはもっと明るく飄々としていなければならない。そう、この作品のキイワードは「飄々」である。

 一方的に批判するのではなく、松方の気持ちもわかると言いたくて、つい「品川タイプの役者はいたろうが」と書いたが、いないよね。品川隆二扮する焼津の半次以上の焼津の半次はあり得ない。てことは、誰がやっても無理なんだ。
 とはいえそれはあくまでも近衛十四郎と品川隆二を知っている人の話。知らない人はすなおに楽しめばいい。

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 でもダメなのはそれだけではない。賀来千香子もダメ。この人、やたら顔の表現だけ大げさな大根役者だ。まったく魅力を感じない女優である。なんでこんなのを起用したのか理解に苦しむ。いくらでもいい女優はいたろう。これは品川隆二と違い、いくらでもいたはずである。もうひとりの女である古手川祐子はいいのだから、このミスキャストは悔やまれる。

 この種の娯楽作で大事なのは、主役のまわりを固める役者だ。相棒は、視聴者がおれにもあんな相棒がいたらなあと思うような魅力的なタイプでなければならない。同じく女は、いい女だなあ、おれも兵庫みたいにあんないい女に惚れられてみたいなあ、と思わせるいい女でなければならない。賀来千香子にその魅力はない。この人、現代劇でおっちょこちょいのOLあたりが適任なのだ。

 20分ほど見て消した。しかたない。こういうものだ。

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 品川隆二特別出演

 ナレーションは品川隆二だとあとから知った。近衛からの縁での特別出演だろう。もうご高齢か。
 品川さんはどんな役者だったのだろう。私はあまりに強烈なこの「焼津の半次」以外、彼の演技を知らない。

 早々に打ち切り
 
 ワンクールで終ったようだ。最初からその予定だったのかもしれない。でも期待したほど数字がとれなかったのも事実だろう。私は視聴率なんて数字とは無関係に、これを失敗作だったと思う。原因はキャスティングのミスだ。
11/3
 

「徹底抗戦!!アンチ大阪人は絶対に許さない!!東京を始めとする日本人へ」

 笑った。
 たかじんの番組。おもしろかったなあ。ほんと。見なくてももうネタはわかっているのだが、楽しく笑い転げた。「日本の中の外国──大阪」についての話である。たかじんの司会も抜群だった。
 関東にネットされているたかじんの番組というと「たかじんnoばあ」がある。つまらない。なんでこれがネットされていて、もっともっとおもしろいのが来ないのか。

 内容はお約束通りなのだが、いま思い出しても笑える。
 全国都道府県で聞いた大阪の好き嫌い。円グラフになっている。
 北海道は嫌いが38%。たかじんが「ええとこや」と褒めると、アナが「北海道は大阪に限らずどこの人でも好きなようです」とツッコミを入れる。
 東北は大阪を嫌いが6割以上。それをたかじんが「寒いとこで口を開けずにもごもごしゃべるから、大阪人が口を大きくあけで大声でしゃべるのがきらいなんや」と解説。大阪弁でも東北弁風にもごもごしゃべるとフランス語になると実演。これはむかしなつかしいタモリのネタ。
 名古屋の大阪嫌いが多いのには、「おれたちの敵は東京だけや、おまえら相手にしとらん」と(笑)。

 番組開始時にたかじんが「大阪人がいちばん似ているのはフランスだ」と言ったがこれは真実。自分たちの言葉、料理、文化に誇りを持ち、他国の文化と同化しようとしない。まさに大阪はフランス。

 私は以前から「フランス人は不親切だ。英語で話しかけても知らん顔をする」としかつめらしく言う日本人に反論している。フランス人はイギリスが大嫌いなのだ。百年も連続で戦争するぐらいむかしからずっと仲が悪い。自分たちの美しいフランス語と比べて、英語というのはなんて醜い言葉だろうと侮蔑している。なのに自分たちの国に来た外国人が英語で話しかけてくる。通じて当然のような顔をしている。ずうずうしい。無視する。その代わり、どんなにヘタクソでもカタコトでも、フランス語で話しかけてくれば親切に応対してくれる。私はそれを体験してきた。私からすると、フランスで英語を話し、通じないと怒る人の感覚がおかしい。そんなバカだから「駅前留学NOVA」なんてのにだまされる。
 今のフランスの若い人は、「どうやら世界共通の言語は英語らしい」と気づき、学校で学ぶから、英語で問うても親切に応じてくれる。時代は変った。

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 最高のお約束は「ご近所」(笑)。
 大阪の近県がみんな「嫌い50%以上」。京都や兵庫が嫌うのに、たかじんが「こんなの近親憎悪や」と叫ぶ。京都や神戸の人が「大阪と一緒にされては困る」と強調するのに笑えた。
 そんな中、和歌山だけが「好き」のほうが多い。でもこれは小馬鹿にして処理。和歌山は田舎なので相手にしないらしい(笑)。
「好き」が多いのは四国四県。感謝しつつたかじんが四国をほめあげる。讃岐うどんのように獨自の文化をもっている地域は大阪の価値がわかるのだと力説。徳島には神戸よりも飲みに行っていると親近感強調。
 滋賀県の意見に「琵琶湖の水を利用しているのに感謝していない」があり、たかじんが「おまえが琵琶湖に水入れたのか」と反論(笑)。笑えるなあ。

「もう獨立したる」にも爆笑。獨立したら食い物に困る。大阪には米がない、でも粉があるって(笑)。だからたこ焼きとお好み焼きで食いつないで生きて行ける、でもその粉もどっかから買ってこないとで、中断。

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 とはいえ「大阪のこんなところについてゆけない」として編輯されたVTRには私は反発した。
 たとえば「スーパーのレジで、みんなが長い列に並んでいた。するとやってきたおばちゃんが最後尾に並ぶのかと思ったら、しまっているレジの所に行き、大声で店員を呼んでレジを開始させ、支払いを済ませていった。こんな大阪はいやだ」はおばちゃんが正しい。スーパーでひとつのレジに十人も並ぶような状況なのに閉めている何カ所もあるのはおかしい。あれはたちどころにスーパー側が対応すべきことである。それに対して正当に主張する大阪のおばちゃんは立派だ。私もこういう場面によくぶつかるのだが、関東のおばちゃんは「混んでるんだからあっちのレジも開ければいいのにねえ」とぼやくだけである。正当に抗議する大阪はすばらしい。

 同じく「スーパーで大阪のおばちゃんが『あんたんとこの野菜、新鮮で安いいうたけど、ちっとも新鮮じゃないし安くもないじゃない。むこうの店のほうがずっと新鮮で安いがな』と店員に詰め寄っていた。だったら向こうの店に行けばいい。こんな大阪のおばちゃんには」との意見も、大阪のおばちゃんが正しい。商品に関していつわりがあったらきちんと問いつめるべきだし、それはその店の問題だ。「向こうの店に行けばいい」ではない。
 だいたいにおいて大阪は正しい。いやすべて正しいとも言える。ただそれが島国根性で以心伝心を美徳とする日本人にはストレートすぎるので違和感をもつだけなのである。島国根性の大多数日本人から見たら外国であり異邦人なのだ。

 こういう番組作って自虐的に大笑いしているんだから大阪は楽しい。これ、全国放送しても高視聴率だと思うけどなあ。

 私の人生で最も闕けているものは「大阪的なもの」だ。大阪人がうらやましい。大阪は外国である。
07/11~ 「SP」がおもしろい



◎ 菅野祐悟音楽の魅力

 土曜フジテレビの「SP」がおもしろい。毎週缺かさず見ている、と書きたいがもう2回も見逃してしまった。まだ8回ぐらいだからかなりの確率だ。決まった時間にテレビドラマを見るという習慣がないので部屋にいても忘れてしまうのである。土曜の午後11時台で前の番組によって放送時間がずれたりするので録画予約というわけにもいかない。DVDになったらまた見よう。

 キャストもシナリオもカメラもすべていいが、音楽がまたすばらしい。日本のテレビドラマでこんなに重厚でかっこいい音楽を聴いたことがない。それで菅野祐悟という名を知った。東京音大でクラシックを学んだ人のようだ。どんなに音楽が良くても他がわるかったら光らない。すべてが良くできているからであるが、この音楽は凄い。街中で聴いて一瞬でドラマを思い出すテーマ音楽なんていつ以来だろう。

「まるでアメリカのテレビドラマのようだ」という褒め言葉は、芳醇な日本酒を「まるでワインのようだ」と評するのと同じくよくないことなのだろう。だが見るほどにアメリカ製作のドラマを思う。スタッフも「日本のドラマ離れ」を意識したのはまちがいあるまい。

 始まりは岡田と金城の友情らしい。岡田はこの役のためにかなりマッチョになったとか。最初から岡田をイメージして書き下ろしのだからはまっているのは当然だ。

 堤真一がいい。この人、ふつうより腕が長いのだろうか。両手をだらんとさせて歩く背広姿は、武道の達人のようでかっこいい。まあ壊れたロボットのようでもあるが。
 本人もどこかで「(この作品では)大きく見せるようにしている」と語っていたから意識した演技なのだろう。JAC出身だというからアクションは得意なのか。

 私にとってさいわいだったのは、テレビドラマをまったく見ないから、役者に固定観念がなかったことだ。ほとんどみな真っ白である。堤は大活躍している役者らしいから多くの当たり役があるのだろう。へたにそれを知っていたらこんなに楽しめなかった。たとえばコミカルな彼を知っていたら、上層部と現場のはざまで悩む彼にここまで惚れられなかった。

 もっともそれはまたそれで「××の△△役より、今度の方がはまってるよね」「あいつにこんな演技が出来るとは思わなかった」のような評価を通は通で楽しむのだろう。
 私は今回のドラマをリアルっぽく楽しみたかったから、それがないことがありがたい。SPのひとりが「電車男」に出ていたのは知っているが。

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 浅田次郎原作に西田敏行がこれでもかというぐらい主演することに反対である。反対を通り越してもうくだらないから見ない。よくもわるくもイメージの固定している西田に、多種多様な珠玉の短篇の主人公を片っ端から演じさせることに意味があるとは思えない。「角筈にて」なんて、どう考えても西田ではあるまい。「天国までの百マイル」も。これで西田が役作りのために30キロ減量しましたなんていうならまだ支持できるが、どの役をやるときもあのでっぶりした体である。

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「SP」が敵役に無名の役者を使っているのもいい。
 コロンボの真似をした「古畑」みたいな有名人起用のあそびもあろうが、ここは酷薄そうな無名の犯人像が望ましい。
 警察上部の連中も見慣れない顔なのがいい。これは一貫した姿勢なのだろう。どうしてもひとりぐらい大物役者をおきたくなるものだ。

 今後、岡田の両親を殺された経緯と現総理との絡みをどう料理してくるのか、金城のお手並み拝見である。



12/12  タレント起用CMへの素朴な疑問

 自分もかつてそういう仕事に関わった一員としてのそぼくな疑問である。
 売れっ子タレントと、どう考えてもその人と似合わない商品を組み合わせるCMプランナは何を考えているのだろう。長年疑問に思ってきた。とはいえ結論はとうのむかしに出ている。そいつの感性が二流なのだ。それだけである。

 むかし、私がくだらんなあと思ったもの。
 ヤマダクニコが人気絶頂のころ、彼女を軽自動車のCMに起用していた。一見納得しがちだ。庶民的なキャラ、とかで。
 同じく人気絶頂のころのタハラトシヒコが1000ccのクルマのCMに出ていた。ダイハツだった。それを買おうかと思っていたのでよく覚えている。トシちゃんのかっこよさと小型車の軽やかな動きを重ねたのか。
 気持ちはわからないでもない。だけどヤマダクニコが軽自動車に乗ることはない。トシちゃんが1000ccの国産車に乗ることもない。ふたりとも外国製高級車でふんぞりかえっている。
 中には好感を持っている彼らのCMイメージからそれらを購入する人もいるのかもしれない。ああいうのってCMキャラになると販売店には等身大のポスターが貼ってあったりする。でもなあ。

 私はこういうCMをプラニングする企劃者の脳みそがわからない。獨身女性が、若い奥さんが、気楽に乗れる軽自動車、そのCMに庶民的キャラのヤマダクニコを起用、という安易な発想はわかる。しかしテレビで頻繁に流す自動車会社の大きなCMだ。その車の顔になる。会議の席上、反対意見が出るだろう。でなきゃおかしい。私がスタッフの一員なら反対する。「庶民派キャラのヤマダクニコさんをイメージキャラクタにというコンセプトはわかります。でもヤマダさんはベンツに乗ってます。軽自動車には乗っていません。ヤマダさんがにっこり笑い、わたしも乗ってます的なイメージ戦略が長い目で見たとき、好結果になるとは思えません」と。

 発案するアホがいるところまではわかる。しかしこの企劃が現実に動くことが理解できない。周囲の人間はなんでこんなプランを通すのだ。自動車会社の担当者もすこしは考えろ。それともこれを掲示されて「うん、そりゃいい」とはしゃいだのか。
 ついでに言えば、ヤマダもタハラも受けるなよと思う。現実の彼らはそんなビンボくさいクルマなんか乗れるか、という感覚である。現実問題としてもタレントの安全面、イメージ、あるいは税金対策からも、売れっ子の彼らがあえてそんな安いクルマに乗る必然性はまったくない。乗るようなひとなら売れっ子になっていない。がんばってのし上がり金持ちになったのだ。なんでいまさらそんなものに、である。だから「受けるなよ」と思う。だが大型ベンツに乗る生活を維持するためには、「わたしはいつも軽自動車に乗ってま~す」という嘘のCMに出なければならない。その矛盾。でもそれが芸人の世界。だからやっぱり彼らはわるくない。ビートたけしが言っているように、資本主義の国では資本主義に生き、共産党の国になったら今度はそれにへつらって生きてゆくのが藝人なのだ。来たものは受ける。悩まない。それが藝人である。企劃発案者の脳みそが貧困なのだ。
 人気絶頂で億の金を稼いでいるタレントに、庶民派という勘違いをかってにして、こういうCMプランを立てる企劃者は、はっきりバカである。いるんだ、こういうのが、この業界には。

 私は当時から、軽自動車のCMなら、さわやか系の無名の女優を使い、ごくふつうの奥さんが昼下がりに買い物に出かける様子のような、現実に軽自動車が活用されている形で作るべきと思っていた。いまそういうのが主流になっている。なにより「軽自動車CMに人気絶頂のヤマダクニコ」のような愚かなCMがなくなったことがうれしい。

 というのは前々から思っていたこと。これに通じることは今もあるのだが、それはべつの機会にして、今日書くのはすこし違った、でも似た傾向の話。


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× ブラックニッカのマツオタカシ

 これはニッカのサイトから切り取ってきたもの。左半分の「ニッカのスッキリは」の部分に、グラスを掲げたマツオの笑顔動画が流れている。

 前記の「軽自動車のヤマダクニコ」よりはずっと小粒で罪のないものだが、こういうのってどうだろう。

 マツオはしゃれたバーをやっている。経営するそのバーの主力ウイスキーはブラックニッカではないだろう。またマツオが好んで飲むウイスキーがブラックニッカであるとも思えない。まず違うだろう(笑)。もしそうならこじゃれたバーをやってウイスキーのうんちくを語ることに矛盾する。

 おしゃれで静かなバー、それを経営する酒好きのタレント、と庶民的な安ウイスキーのブラックニッカは相対している。自分のイメージを大切にするならタレントはこんなCMには出ちゃだめだし、出るんなら店をブラックニッカ主力にすべきだ。これも「ヤマダクニコの軽自動車CM」と基本は同じである。

 マツオタカシはブラックニッカのCMが来たとき、悩まなかったのだろうか。
 最低限の責任として自分の店にブラックニッカを置いていると信じたい。
 フルタチの会社の人だから内実はアサヒってると思うが。

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 日本酒のCMキャラはどうだろう。
 大量生産の安い日本酒のCMに出ているタレントがいる。どうにも彼がそれを飲んでいるとは信じがたい。
 そもそもテレビCMを流すような日本酒はそこいら中の蔵本から寄せ集めて大量生産しているまずい酒である。まずいと言ったら語弊があるが、真の日本酒好きは飲まない酒だ。通好みのうまい酒はテレビCMなど流さない(流せない)から愛飲していてもCMには出られない。CMの誘いがあるのはぜったい飲まないようなまずい酒だ。こういう矛盾をタレントはどう消化するのだろう。

 その点カップラーメンなんてのはいい。どんな金持ちになろうが好きな人は好きである。金持ちになったからマニアックな有名店のラーメンしか食わない、というようなことはない。億の金を稼ぐタレントがCMをやっても無理がない。
 まあCMのことなんてどうでもいいんだけど、「ほんとかよ」と思わずつっこみそうになるような組み合わせは極力避けて頂きたい。ここのところそういうものがすくなくなったので、マツオのブラックニッカはみょうに目立っている。


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