平成二十二年名古屋場所

2010/7/11〜



初日
 場所は開催、中継は中止

 NHKが相撲中継をしないと発表したのが6日の夕方。まことにくだらない決断だ。それまでに12000件の電話があり、その8割が中継反対だったというのだが、そんなの当たり前だ。電話するのはなんにでも嘴を突っ込むのが好きなクレーマーだ。相撲になど興味はない。騒ぐことが目的だ。反対に決まっている。相撲中継を楽しみに待っている全国のお年寄りはNHKに電話するという発想すらない。私の両親が生きていたら同じだったろう。楽しみに待ちつつ断念に気落ちしていた。世の中悪くなる一方だからこんな事態を見ずに死んでよかったか。中止が決まってからNHKにかかってきた電話の多くは中止反対だったとか。これまた当然だ。まさかの事態を見て相撲ファンが掛けてきたのである。

 6時10分から20分ほどのダイジェストが流れることになった。
 後に、それでは物足りないという抗議があったのか35分に伸びる。最初の10分に幕内前半戦を流し、真ん中に幕下や十両の相撲を挟む。そして最後に幕内後半という構成。どうならこれで落ちついたようだ。

 初日のこの日、6時からの日テレ「報道バンキシャ!」を見ていたら、真っ先に大相撲の結果を報道していた。これは明らかに生中継できないNHKの鼻先を叩くということだろう。お蔭で私は楽しみにし、録画予約までしていたNHKを見るより先に結果を知ってしまった。
 この傾向はその後も続く。初日は日曜でこの「バンキシャ!」ぐらいしかないが、ふだんは5時前から7時まで民放は揃って夕方のニュース枠である。だからどの局も5時50分ぐらいには全勝が何人とか、大関の誰それが勝ったの負けたのと速報気味に報じていた。今まではいっさいなかったことである。たしかに「白鵬は今日も勝って連勝を伸ばしました」と話題の部分を速報してしまえば、視聴者はNHKのダイジェストに行かずそのまま民放を見ている可能性は高い。NHK中継中止の餘波である。

 ところで民放はなぜみな同じような番組構成にするのだろうか。夕方の5時から7時まではニュース枠である。私はニュース好きというかそれぐらいしかテレビを見ないので嬉しいけれど、もっと他局とちがったすき間狙いがあっていいと思う。

 この日は参院選の投票開票日だった。全局右へ倣えで選挙特番である。これまた私はそれが大好きだからあっちに行ったりこっちに行ったり各局を梯子して、午後8時から明け方まで楽しんだが、世の中には政治になんかなんの興味もないひともいるはずで、それがよいかどうかはともかく、そんなひとのための番組もあっていいはずだ。かつてテレビ東京はそういう隙間番組で視聴率を稼ぎ、後ろ指を指されつつも実績を上げていた。それは「番外地」と蔑称されるほど弱小局だった時代のこと。今じゃメジャーである。かどうか知らないが、とにかくもうそんな隙間狙いはしない。いま人気の池上彰をキャスターに迎え、彼の辛口質問が冴え渡り(どこかの女柔道家にも強烈な一撃を見舞ったらしい)視聴率競争では堂々の2位だったとか。

 全員揃うとすぐに「暗黒の戦前の大政翼賛会」とかバカの一つ覚えを繰り返すのがいるが、テレビ局がみんな同じ事をやっているのだから、このことにももっとそれを言うべきだろう。私は選挙番組大好きだけれど、どこかで「懐メロ歌謡ショー」をやっていても受け入れた。テレ東の選挙特番にがっかりしたひとも多かったことだろう。

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 村山弘義理事長代理が紋付き袴姿で土俵上から挨拶。その後ろには三役力士が勢揃い。挨拶のあと、全員で四方に頭を下げた。
 場内から暖かい拍手と歓声。会場に駆けつけたファンは、そこにいる悦びに酔っていたろう。私も懐事情が許すなら名古屋に二週間泊まりこんで毎日通いたかった。真のファンとはそんなものである。田舎の相撲好きのお年寄りのことを思うと気の毒でならない。二ヵ月に一度の15日間をどれほど楽しみにしていたかをよく知っている。

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○黒海 ●臥牙丸

 今場所新入幕は臥牙丸ひとり。黒海、栃ノ心に続くグルジア第三の男。すごいねえ、グルジア出身の力士同士が幕内で対決。黒海対栃ノ心に続いて二組目。来場所は栃ノ心対臥牙丸も実現するだろう。臥牙丸は5年前、黒海に憧れて来日した。栃ノ心が来日したばかりのときも黒海が通訳を買ってでた。今後グルジア出身の力士がどんなに活躍してもパイオニアとして黒海の名は永遠に残る。

 思いきって当たり、それから右に回りこむようにして突きおとし。黒海の勝ち。

 臥牙丸の母は難病で苦しんでいる。臥牙丸は日本に呼んで手術を受けさせたいと願っている。相撲中継がなくなり、故郷の母に姿を見せられないことで、臥牙丸は落胆していたひとりだ。

 ロシア人力士がみな問題を起こしてダメなのに対しグルジアはみな頑張っている。かつての旧ソ連だ。現在グルジアはロシアと不仲でありNATOに近いように、本来の気質もちがうのだろう。というか、力であれだけ多くの国々をソ連でくくっていたあの時代がいかに不自然だったかってことだ。バルト三国の不満は言うまでもない。

○高見盛 ●豪風

 すばらしい熱戦。いい相撲だった。場内大歓声。相撲観戦をしている悦びを感じる。しかしいかんせんダイジェスト。早すぎる。餘韻がない。なんともわびしい。でもNHKのダイジェストはむかしやっていたテレ朝のそれよりは遥かにいい。テレ朝のあれがなくなってNHKになったのはまことに悦ばしいことだ。

○豊真将 ●木村山

 同い年同学年のふたり。若手の期待だった豊真将ももう29歳。入ったのが22歳11カ月と遅かったのだからしかたない。リミットは23歳だ。13場所で入幕だから出世は早かった。そこからもたついている。先場所は全敗のままケガで休場と最悪の結果だった。今場所は13枚目。大きく負け越すと十両陥落もある地位である。正念場だ。
 豊真将が珍しく攻めの相撲をする。でも引きおとしで危うく手を突きそうになるが、そこから逆転した。追い詰められて攻めの相撲に切り替えたのか。期待できそうだ。

 高見盛の気合入れと豊真将のお辞儀を見ていると和む。もしもこのふたりが野球賭博に関わっていたら、私もだいぶ気落ちしていた。力士に世間的常識を押しつけるのは反対なので野球賭博なんてどうでもいいのだが、やはりそれでも「こちらの思っているような人でいて欲しい」という部分はある。このふたりが無縁だったのはささやかな救いになっている。

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○稀勢の里 ●安美錦

 場所前の稽古が好調だったという稀勢の里が相撲巧者の安美錦を一気に突きだした。安美錦ファンの私としては残念だが稀勢の里に過剰な期待を寄せる一派は大喜びだろう。NHKも勝負ビデオをもういちど流していた。それだけ期待しているのだろう。すこし気の毒。スポニチで評論をしている貴乃花が「最高でも横綱、最低でも横綱」と稀勢の里に対する期待を語っていた。

 アナが解説らしきことを言っている。解説者がいないから今場所はこんな形式になるらしい。こういう相撲を見ると、北の富士や舞の海ならなんて言ったろうと思ってしまう。北の富士の時々脱線する解説も、舞の海のちまちまとした技術解説(簡単するときもあれば時にうっとうしい)も懐かしい。来場所はもどってくるのか。



○魁皇 ●阿覧

 ドンとぶつかって、すぐのハタキ。このごろの魁皇の十八番。これで1001勝目。八百長千代の富士の記録を抜くまでがんばれよ。あんな奴の記録はひとつも残して欲しくない。



○琴欧洲 ●朝赤龍

 琴欧洲、危なげのない完勝だがすこし慎重すぎないか。あまりに丁寧だ。相撲がちいさくなっている。とはいえバタ足で負ける雑な相撲よりはいいが。
 今場所は琴光喜の解雇があり、親方は謹慎。琴奨菊も賭博問題で一時は名が上がっていた。野球賭博に関わっていないので出場は出来たが。佐渡ヶ嶽部屋の部屋頭としてがんばらねばならない場所だ。



○栃煌山 ●日馬富士

 日馬富士が仕切り前に土俵でぴょんぴょん撥ねるのはよくない。むかし小錦がやって物議をかもした。なぜ誰も叱らないのか。栃煌山、速さで懐にもぐり完勝。日馬富士、いいとこなし。日馬富士の左ヒザがどうのこうのと言っているがもともとたいして強くないんだ、このひとは。ワンチャンスを活かして大関に上がったのは強運だけど。日馬富士ぐらいの強さで大関になれなかったのはいっぱいいる。



○把瑠都 ●白馬

 把瑠都が幕内300回目とか。早いなあ。20場所ってことか。序の口優勝をしてのインタビュウ。金髪長髪で日本語もしゃべれずニコニコしていただけの姿をつい昨日のように思い出す。もう6年も経っているのか。
 先場所は10勝5敗。期待外れだった。白馬も10勝5敗。これは大善戦。


 左で張る半端な立ち合い。右懐に飛びこんできた白馬の左腕をとって捻り倒す。もう技も何も関係ない。力の勝利。決め技はアナも困っていたが、きめ倒しとなった。
 相撲的には誉められた内容ではないが、これはこれで把瑠都しか出来ない怪物相撲。私はこんな相撲が大好きだ。だけど張り差しはダメ。必要ない。

 白馬は先場所がよすぎた。上位定着まではまだまだ時間がかかる。長野県白馬村の応援団は心配だろうがしょうがない。まだまだだ。

 そうそう、これをいちばん書きたかった。このふたりは「幕下で一度対戦がある」のだとか。そうか、把瑠都の出世が早かったから白馬はずっと後輩のように思っていたけど、幕下のあたりでは同期だったんだ。ちがうちがう。把瑠都は2004年が初土俵。白馬は2000年が初土俵。ずっと先輩なのである。



○白鵬 ●栃ノ心

 勝ちたい一心で変化までする栃ノ心だが今日は相四つに進む。しかしそのまま白鵬が左上手から廻り気味に上手投げ。鮮やかなに決まった。
 栃ノ心が三役に上がったと故郷の母親に電話したら母は泣いていたとか。いい話だなあ。今の栃ノ心では三役定着はまだ無理か。もういちど落ちて上がってきたあたりが勝負。

 多くの企業が懸賞金を止めた中、マクドナルドは敢然と決行。結びの一番に5本の懸賞。わたしゃ断然好意を持ったねマクドナルドに。

 白鵬は場所前に天皇杯の授与まで中止になったことに抗議をした。まるで協会が国技をつぶそうとしているかのようだ、そう思いませんかと記者に逆質問した。その通りだと思う。天皇杯その他もなくなった千秋楽の優勝の景色はどんなものになるのだろう。


二日目
 淋しい入り

 愛知県体育館にパイプで組まれた特設会場。画面の半分から上はガラガラ。でも九州場所なんていつもこんなもの。それでも名古屋場所初日が満員にならなかったのはひさしぶりとか。8100人で満席となり、90%入ると「満員御礼」にするのだとか。それにわずかに足りなかったとある。昨日の初日はともかく、今日二日目のいりは厳しい。
 ところでその満員にならなかった記録だが、ニッカンスポーツに「1985年以来初めて」とあるが、1985年はなんなのだろう。名古屋場所が始まったのは1958年だし、平成は1989年からだし、どうにもこの基準がわからない。まあどうでもいいけど。

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○北勝力 ●翔天狼

 翔天狼は返り入幕。かつてあの白鵬を破り大金星をあげたのに、そのご精彩がない。今日も逃げの相撲。いきなり引いたのを北勝力に着いてこられてなにもできない負け。なんともなさけない。なんでこうなってしまったのだろう。



○武州山 ●木村山

 武州山が無骨で切れのない攻めだが、一所懸命一所懸命休まず攻めたてて木村山を押しだす。
武州山といえば歴代2位の年長記録である33歳での新入幕。十両まで上がりながら、ケガでもって何度も序二段まで落ちたりした苦労人。こういうひとの相撲もしみじみとしていい。



○豊真将 ●高見盛

 豊真将から低い態勢から一貫して攻めまくる。高見盛、懸命に凌ぐが休みのない攻めに土俵を割る。なんだか今場所の豊真将は相撲が違う。先場所が6連敗のあとの休場で1不戦敗を含む7敗8休。実質15戦全敗の成績である。そのまえが9勝6敗、9勝6敗で前頭2枚目まで上がってきていたからじつにもったいない成績だった。そこから錣山と一緒に相撲改革に取り組んだのか。受け相撲だったひとが今回は攻めている。前々から、よく稽古をしていて相手の引き技に落ちないのはリッパだけれど、もうすこし攻めないと、と思っていた。今場所は期待できるか。



○安美錦 ●琴奨菊

 双差しになった安美錦がガブって寄り切る。琴奨菊いいとこなし。昨日から顔に覇気がない。場所前、賭博で問題になり名の上がった力士に琴奨菊と嘉風もいた。出場停止かと思っていたらヤクザとの野球賭博の常習ではなかったらしく出場できた。元気がないのはそのせいなのかどうか。今場所はダメだろうな。



○阿覧 ●把瑠都

 把瑠都が両手突きのような張り差しの立ち合い。するりと交して阿覧が右腕を手繰る。そのまま把瑠都は土俵を飛びだしていた。注文相撲で負けたので陽気な把瑠都もさすがに憤然としていた。しかしこれは阿覧の変化より把瑠都の問題。あまりに雑な立ち合いだ。このひとは大型力士なのに意外な小技に長けていたりするけど、こういう雑な面もある。まだまだ課題は多い。14勝1敗というすばらしい成績で大関になったが、最初の場所の先場所は10勝5敗、今場所もこれではこの程度の成績になりそうだ。昨日みたいなとんでもない怪物相撲も楽しみだけれど、あまりに雑なこんな敗戦も心底がっかりする。
 くだらん張り差しなどするからだ。どうもこれで墓穴を掘りそうな気がする。

 私は張り差しを「小心者の飛び道具」と思っている。勝つよりもまず「負けたくない」という意識に走った力士が多用する。いま把瑠都は大関という地位のプレッシャーで延び延びと相撲が取れない。なんとしても確実に、楽に、勝ちたいと願うあまり張り差しが出ているのだろう。そういう精神面からの不調が心配だ。



○琴欧洲 ●白馬

 力の違いが明らかで、最後はリバース・フルネルソンみたいな形になった琴欧洲が捩り倒す形。白馬は背中から落ちる。でもこういうのも決まり手はすくい投げ。つまらない。「すくい投げ」からこの一番の決まった形はぜったいに想像できない。でも「ダブルアームスープレックスに行く形から右側にねじ伏せた」と言えば、プロレス好きなら即座に理解できるだろう。



○白鵬 ●栃煌山

 鋭い出足から四つになり、一気に寄りきる。完勝。これは安心してみていられるまさに横綱相撲。これで白鵬は自己新の34連勝。明日勝つと朝青龍の35連勝に並ぶ。


三日目
 叮嚀な礼、それなりの危機感

 今場所は各力士とも勝負のあとの礼が今までよりも叮嚀になっている。これは今回の問題があり通達があったのだろう。特にそっけないお辞儀もどきだった外国人力士が今までよりもきちんとしている。彼らもテレビ中継すらなくなるという事態に、ヘタしたらこの大切な出稼ぎ稼業が消えてしまうかもと危機感を持ったのだろう。ともあれ丁寧なお辞儀はよいことだ。豊真将のうっとりするようなのは特別だが、外人力士でも叮嚀なのは把瑠都ぐらいだった。これは重要なことでロシア系の力士はみなそれがいいかげんだった。把瑠都三国とロシアはちがうのだとあらためて感じる。私は露鵬や若ノ鵬のそういうところが嫌いだった。把瑠都はそういう面でもちがっている。

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○豊真将 ●翔天狼

 翔天狼が攻めこんだが豊真将が受け、そこから巻きかえて双差しになっての寄り切り。今場所の豊真将は今までとちがって攻めの姿勢を見せているが、今日のは典型的な今までの相撲。攻めこまれ、受けて耐えての反撃による勝利。もっと早く攻めた方がいい。翔天狼はこれで3戦全敗だが今日のような相撲を取っていればいい目も出るだろう。昨日のはひどかった。



○高見盛 ●武州山

 同い年のふたり。同じ青森で中学のころからの顔馴染み。高見盛は日大、武州山は大東文化大。出世は高見盛がだいぶ早かった。ふたりとも休まず動きまわる激しい相撲。高見盛が寄り切る。若の里も同い年の青森のライバル。高見盛は中学横綱になっているから当時は高見盛がいちばんだったのか。日大では琴光喜と同級。琴光喜は歴史的怪物だったから高見盛もアマチュア横綱になっているが霞んでしまう。
 ふたりともまだ獨身か。今回の賭博問題は力士の結婚が遅れていることも関係ある。金があって暇のある若者がろくでもないことに手を染めるのは自然の道理。むかしのようにもう二十代半ばになったらさっさと結婚させた方がいい。このふたりはどんな結婚をするのだろう。



○黒海 ●土佐豊

 黒海がここのところ張り手を多用している。相撲的な張り手ではなく、もろにただの大ぶりのビンタなので非常に醜い。それでもその効果で今日まで3連勝。誰か早くそんな荒っぽいことで勝ちすすめるほど相撲は甘くないと教えてやってくれ。ただ黒海の中に、グルジアの後輩の栃ノ心に番付で抜かれ、さらに新入幕の臥牙丸も伸びてきたことによる、いい意味での焦りがあるのは確か。だけどそれはあんな雑な張り手に結びついてはならない。



○鶴竜 ●北太樹

 鶴竜3連勝。6枚目まで落ちている。今場所は動きもいい。敗戦によって学んだものが大きいのだろう。実力は安定した小結クラスだからここまで落ちると一味ちがう。相撲の進捗は鉄道のスイッチバックのように昇って行くのが多い。三歩進んで二歩下がるパターンだ。横綱大関に昇る大器も必ずぶつかるのが小結。今場所は栃ノ心と白馬が苦しんでいる。鶴竜は三役の安定勢力だったが壁にぶつかってここまで落ちた。今場所大きく勝つと来場所はまた小結まで上がれる。そこでどうか、の問題。
 北太樹は3連敗だがいい相撲を取っている。前頭4枚目のここを守れるかどうか。
 ところで木瀬親方(肥後ノ海)の不祥事で木瀬部屋は潰れ北の湖部屋に吸収合併された。北の湖は角界一の大部屋となった。その部屋頭は北太樹か? おお、まちがいない。力士数47人の頂点に君臨している。二番目が臥牙丸だ。ちいさい部屋だと付き人がいなくて苦労したりするが、何人でもつけられるだろう。



○栃ノ心 ●稀勢の里

 初の小結で白鵬、日馬富士と連敗中の栃ノ心が関脇稀勢の里との一番。こちらは連勝中。日本中の日本人力士好きの期待を一心に背負っている(笑)。栃ノ心、完勝。これだからなあ、キセノンは(笑)。日本中からがっかりの溜め息が聞こえてきたよう。栃ノ心好きの私は会心の笑み。
 しかしあれだな、やっぱりダイジェストはつまらん。仕切りがあってこその大相撲だと再確認。つまらんつまらん。



○旭天鵬 ●日馬富士

 旭天鵬ががっぷり四つの大相撲から日馬富士を寄り切る。日馬富士1勝2敗。負け越さないかな。

○栃煌山 ●把瑠都

 これまで8回戦って把瑠都の全勝。なのにまた雑な相撲を取り、懐に飛びこまれたのを強引な小手投げで振りまわそうとするも呆気なく寄り切られる。なんだか今場所の把瑠都は心ここにあらずみたいな状況でヘンだ。まるで野球賭博問題で揺れる角界のことが心配でならないよう。そんなことはあるまいと思うのだが、この変調は重症である。よくて10勝5敗程度か。失望。

○琴欧洲 ●阿覧

 琴奨菊が変化気味に魁皇の横に回りこみ、押しだす。ここまで三大関が破れている。いやな流れだ。
 がっぷり四つになるが阿覧に攻めこまれる。なんとか土俵際で耐えて、そこから反撃。一気に寄りきった。寄り切るときに腰を落とし、股を割っているのが印象的。今場所白鵬のライバルになるのは琴欧洲か。他の大関がみなダメなのだから、それはもう確定だ。ただ琴欧洲の相撲が地味であるのが心配だ。爆発的な強さではない。ミスをしないように叮嚀に取っている相撲だ。これは曲者の連中からすると攻略しやすいのではないか。安美錦とか鶴竜とか、謹慎中だが豊ノ島とか、だ。把瑠都がもうダメだから琴欧洲には白鵬戦まで全勝で行って欲しいのだが、どうにももう一歩相撲内容に信頼感がない。叮嚀なのはいいのだが……。

○白鵬 ●朝赤龍

 朝赤龍が変化したので一瞬ヒヤッとする。なんとかつかまえたが、そのあとの投げも強烈で心配した。勝ってこれで35連勝。朝青龍の記録に並んだ。歴代4位タイ。明日勝てば朝青龍を抜いて単獨4位になる。
 四日目  佐ノ山親方の賭博疑惑

 佐ノ山(千代大海)の野球賭博問題が報じられた。『週刊新潮』の記事から。本人は否定。さてどうなるか。琴光喜に勝ち金を払わない仲介に(正しくはその仲介の現役力士である弟に)「払ってやれよ」と口を出しているぐらいだから、チヨスがやっているのは確実。問題は『週刊新潮』の揃えた証拠物件がどこまで信憑性があるかだ。

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 十両のつまらなさ

○将司 ●武州山

 十両の将司が幕内で取り、勝つ。4連勝。しかしここでの「十両での4連勝は将司だけ」には白ける。4日目で早くも全勝がひとりだけって、より激戦の幕内でもまだ四人いるのに。なんともいまの十両はつまらない。楽しみな大器もいないし。琴欧洲や把瑠都にわくわくしたような次の大物はいつ出て来るのだろう。

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 豊真将4連勝

○豊真将 ●玉飛鳥

 先場所実質全敗で13枚目だから4連勝は不思議でもなんでもないが内容がいい。攻めているのだ。受け相撲の豊真将が今場所は攻めている。いいことだ。先場所のあまりになさけない結果で心境の変化があったか。錣山の弟子なのだから攻め相撲でなければおかしい。いいことだ。うれしい。

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 鶴竜、4連勝

○鶴竜 ●霜鳳

 鶴竜が磐石の相撲で4連勝。隙がない。ひとまわり大きい霜鳳相手に、最後は腰を深く割っての万全の寄り。たいしたものだ。4連勝は去年の秋場所以来とか。



 関脇と小結で惜しい負け越しが続いた。これはしかたない。しかしそのあとの平幕での負け越しは鶴竜にしてはお粗末。相撲に迷いが出ていた。一年半ぶりに6枚目まで落ちて、なにかふっきれたようないい内容の相撲が続く。今場所はここで二桁勝って、来場所はまた筆頭ぐらいまで行くか。いや上位の星次第では小結の目も出て来る。今場所期待の星だ。

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 北太樹、初日

○北太樹 ●嘉風

 いい相撲を取っているのに3連敗の北太樹は先場所から通算6連敗なのだとか。今日も前にでるいい相撲で初日が出た。なんで星が伸びないのかわからない。いいお相撲さんだ。

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 琴欧洲、序盤の難敵を撃破

○琴欧洲 ●安美錦

 今場所終盤まで白鵬についていって欲しい琴欧洲、序盤の難敵だ。安美錦の13勝9敗。相撲巧者の安美錦にとって琴欧洲は怖くない存在だ。琴欧洲の方はもう苦手意識がしみついている。安美錦と豊ノ島。
 安美錦の速攻に一瞬ひやっとしたが、叮嚀に受けとめて、四つになってからは磐石の寄り。これで終盤までは無傷で行けるはずだ。頼むぞカロヤン。場所を盛りあげてくれ。

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 白鵬、36連勝!

○白鵬 ●阿覧

 変化もある阿覧だがさすがに横綱相手にはしないのか、まともに立った。白鵬が素速く攻めこんで万全の態勢。なのにそこから阿覧が粘り簡単には勝てなかった。いわば五分の力で勝てると思っていたが九分まで出さねばならなかった、ようなもの。それだけ体力のある阿覧が力をつけてきているのだ。ロシア系の怪力は強い。変化さえしなければもっと阿覧を応援できるのだが……。

 白鵬は朝青龍を超えねばならない。まずはひとつ、連勝記録で越えた。これで歴代単獨4位。次は大鵬の45連勝を目ざす。
 五日目  豊真将、変化はよくない!

 豊真将が右に変化。北勝力、ばったり。これはよくない。なぜ豊真将がこんなことをする必要があるのか。まっすぐ行くしかない北勝力の問題か。豊真将だけにはこんなことはして欲しくない。2年ぶりの5連勝にケチがついた。

 こういうのは連鎖する。続いて黒海が変化して翔天狼に勝つ。しかし翔天狼も昨日変化していたから自業自得、のようなもの。場内は失望の溜め息。熱戦には拍手が湧く。変化技には失望の聲。力士はそれに耳を傾けねばならない。高見盛の人気はパフォーマンスだけではない。あのひとの誠意のある相撲が支持を受けているのだ。

 さらにまた木村山が変化して臥牙丸が飛びだして行く。ひどい相撲が続く。こいつらあまり危機感を持ってないなと立腹。こんな状況の時に見に来てくれている観客がどれほどありがたいことか。その客の前でこんな省エネ相撲を取ってはならない。なんとも白けた。

 高見盛と徳瀬川の正面からの相撲で場内が沸く。高見盛が敗れて消沈したが。
 高見盛は昨日と同じく巻きかえに行ったところを寄り切られている。巻きかえの瞬間は好きが出来るから理論に則っている。二日続けて同じ負けかたはよくないだろうカトちゃん。

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 琴欧洲、5連勝!

 栃煌山相手に落ちついた相撲。寄り切るとき、腰がよく割れているのはここ数場所での進歩。親方が指導したのだろう。琴ノ若も涙を流して謝っていたが、琴光喜のバクチ好きは先代も止められなかった。ビョウキだからな。自分もそうだからわかる。
 今場所の琴欧洲は期待できそうだ。でも叮嚀で落ちついた相撲だけど、爆発力というか、怪物ぶりは見られない。そこが心配だ。とにかく終盤まで盛りあげてくれ。白鵬獨走になったらおもしろくない。把瑠都、日馬富士が早くも脱落し、魁皇は4勝1敗だけど期待するのが酷だから出来ない。琴欧洲しかいないのだ。

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 白鵬、37連勝!

○白鵬 ●安美錦

 ここのところ6連勝とはいえ安美錦は怖い。連勝を終らせるのはこんなタイプの力士だ。
 低く潜られ心配したが、なんとか投げ勝って連勝を伸ばした。
 白鵬の連勝を、仕切りのある、北の富士や舞の海や錣山や高田川が解説するまともな中継で見たかった。
 ダイジェストの味気なさ。
 六日目  役者の価値

○高見盛 ●北勝海

 毎度おなじみの睨みあい。だがそれらしき連中のガンとばしとはちがって、高見盛と北勝力のそれには趣がある。田舎の高校生のワルである北勝力の睨みつけに、気弱な優等生の高見盛が、「逃げちゃいけない」とばかりに、無理して対抗するのだが、本来気弱であるからして、ふっと目線をずらしたりする。客席からの笑い。なんとも言えない雰囲気が良い。
 北勝力のいつものワンパターン両手突きに一気に土俵際まで持って行かれたが、そこでくるりと体を交して高見盛の勝ち。場内、沸いている。

 相変わらずひどい入りだ。中団から上はがらがらで誰もいないが、升席にも空席が目立つ。何度も言うが、九州場所などもう不景気になってからいつもそれで、野球賭博問題が関係しているとは思わない。いやいつもより確実にすくないらしいから関係はしているのだろうが。
 私が言いたいのは絵面として淋しいということだ。

 毎場所毎日高見盛には永谷園からの懸賞がつき、相手はすぐに現金でもらえてその日の飲み代になるそれを狙って来た。今場所の高見盛にはそれがないのでいつもよりは楽だ。

 しかし永谷園とか、呼びだしの背に名を入れていた「なとり」とか、それをとり止めるなんてくだらない。まして高見盛は何の問題にもなっていない。懸賞を続けることの方が永谷園の男を上げることになった。もしも「野球賭博で問題になった大相撲に懸賞を出している永谷園の商品は買いません」なんてのがいたら、それはそれでよい。そんなのはもともと永谷園の商品のファンではないのだ。その辺が読めない企業はこれから潰れるだろう。毅然と結びの一番に5本の懸賞を連日出しているマクドナルドはすばらしい。相撲ファンはだれもがそう思っているはずだ。

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 豊真将、6連勝

○豊真将 ●土佐豊

 豊真将が低く頭から当たり、右押っつけ、左上手を取って一気に寄りきる。うまい。速い。積極的。相撲内容がいい。今場所は期待できるか。13枚目だから相手も弱い。まして謹慎が多い。二桁ゆけるかな。

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 鶴竜、6連勝

○鶴竜 ●猛虎浪

 終始猛虎浪が動きまわり、いい攻めを見せたのだが、詰めの寄りを見せようとしたとき軽い感じのだし投げで鶴竜の勝ち。なんだか格上が格下に攻めさせての餘裕の勝ち、のような感じ。そんなに両者に力の差はあるのだろうか。なんだか不思議な一番だった。
 初日から6連勝は鶴竜は初めてとか。まあ大勝ちのあるひとではないから当然だろう。ともあれ今場所の勝ち越しと来場所の上位進出はまちがいない。楽しみだ。

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 把瑠都の小技

○把瑠都 ●栃ノ心

 大関と小結の対戦。今日の楽しみにしていた一番。
 把瑠都がまた半端な意味不明の立ち合い。張り差しをしようか両手突きをしようか迷って、両方ともやめたようなヘンなか形。がっぷり四つになり、力が入り、怪力同士の見せ場となったが、そこで把瑠都の小技炸裂。タイミングを見ての、下手捻り、のような形。決まり手は上手投げ。アナは「一瞬のだし投げのよう」と言っていた。いわゆる「上手投げ」ではない。決め手となったのは下手。把瑠都の運動神経のよさがよく出ていた。この辺、ほんとにこのひとは大きいのに器用なのだ。

 ビデオ再生のとき、アナが「把瑠都は立ち合いがまだ落ちつきません」と迷いを指摘していた。自分でもなにをしたらいいのかわからなくなっているのだろう。とにかく立ち合いが酷い。

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 魁皇、好調

○魁皇 ●安美錦

 ここのところの魁皇の勝ちパターン十八番。ゴツンと頭からぶつかり、次の瞬間に引く。相撲巧者の安美錦でもすぐに落ちる。どうしてみんなこんなに簡単に落ちるのだと不思議に思うほど、このパターンの魁皇は強い。栃煌山も一瞬だった。史上最多勝に向けて、このパターンで勝ち星を稼ぐことだろう。なんとしても抜いてくれ。こればかりは他の力士には頼めない。

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 琴欧洲、6連勝

○琴欧洲 ●旭天鵬

 両者、肩からぶつかる立ち合い、激しい巻きかえの応酬があって、旭天鵬が双差しになりかけたところで右四つに落ちつく。そこから琴欧洲の寄り。すこし腰高だったが、なんとか寄り切った。
 こういう正面からぶつかるいい相撲を見ていると、あらためて張り差しという下品なものを多用する力士の感覚がわからない。

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 引いて引いて引きまくる阿覧

○阿覧 ●日馬富士

 立ち合いこそまともだったが、すぐに阿覧が引く。それも二度三度四度と、狂ったように(笑)引く。さすがの足腰のいい日馬富士もつんのめる(笑)。それから立ち直るとまた突っ張りあい。それからまた引く。引く。引く。とうとう日馬富士はよれよれになり、さらに引かれて手を突いてしまった。なんだか引き技もここまで激しいと一種の藝のような気がしてくる。あの闘牙やチヨスが使った。突っ張って突っ張って相手がその気になった瞬間に引くという、あれはまさに「藝」だと思った。かといってその藝を尊敬しているとか認めているとかはまた別問題。大嫌いだった(笑)。見るたびに不愉快になった。それでもみんな引っ掛かっていたが。このパターンに近いのは上記の魁皇の勝ちパターンか。

 阿覧のはもう気が狂ったように引くから(笑)、これはこれでもう「激しい引き技」として認めざるを得ないのか。まあなにはともあれ、アランを好きだとは言い難い。でも強いのかも。

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 白馬、初めての結びの一番

 初めて結びの一番で取るというのは力士にとって栄光の場である。何場所前だったか、栃ノ心の異様に昂奮していた様子を思い出す。そういう意味でも私は栃ノ心が好きなのだが。

 白馬にとって初めての結びの一番。相手はもちろん横綱。七年ぶりの対戦なのだとか。幕下時代に二度対戦しているのだ。白鵬十八歳、白馬二十歳。初土俵は白馬が2000年1月、白鵬が2001年3月。白馬の方が一年先輩だ。二回の対戦はともに白鵬の勝ち。二歳年下の一年後輩は、あっと言う間に自分を追い抜き、雲の彼方の存在になっていった。
 あれから七年、晴れの舞台での3度目の対決。白馬も三役小結まで昇ってきた。
 いろいろと去来するものはあるのだろう。勝負は白鵬の圧勝。白馬はなにもできなかった。相撲ほどこういう残酷さとドラマを感じるものはない。それが魅力だ。



 いまWikipediaで白馬のことを調べていて新たなことを知った。結婚してこどもがいること、嫁が時天空の妹であることは知っていたが、「縁戚関係になったので二人の対戦はなくなった」を知らなかった。相撲界では兄弟同士の対決はない。別部屋でも。たとえば露鵬と白露山のように。でもこれは「義兄弟」なので盲点になっていた。

 しかしそれを思うと、むかしの「一門対決」時代はすごかったことになる。「部屋別総当たり制」になるとき大紛糾した。それぐらいむかしは「一門」という意識が強かったのだ。逆に言うと一門以外への敵対意識が強かったことになる。

 藤島と二子山が合併し巨大部屋になったとき、上位力士が多かったから、「総当たり制」という意見が出た。同部屋でも対決するのだ。私はこれはいくらなんでも、と思った。

 力士が力士の妹と結婚して、対戦がなくなるという形は、いくらでもありそうだけど他に知らない。いくつかあるはずだが。

 七日目
 電波障害

 この日から電波障害でひどいことになる。NHKだけの映りがひどく悪くなるのだ。ほぼ砂嵐状態。とても見られたものではない。他局はまとも。NHKだけだ。これは以前も経験したことがある。なんでも気象状況と関係があるらしいのだがとにかくひどい。午後6時半からのがひどくて見えないので、深夜ならいいかと午前1時50分からのを録画予約する。これがなんとか見られた。だがそれは今日だけ。この後、三日は深夜も画像が乱れてまともに見えないことになる。ところがネットで探しても、それが問題になっていない。どういうことなのだろう。

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 今場所初めての満員御礼

 やっと満員御礼が出た。客が入っていると雰囲気が違う。とはいえ今日のはちょっと水増しだと思う。90%の入りで出すらしいが、それこそ88%だけど出しました、のような感じ。隙間も目立つ。それこそ本当の100%満員は見るだけでわかる。ともあれよかった。テレビ観戦でも気分が違う。

○高見盛 ●玉飛鳥

 20分のダイジェストでも編集には差が出る。高見盛はいつも優遇してもらい、あの獨特の仕切りが映し出される。今日は横から映すその背景が満員だったので、より熱気が伝わってきた。やはり満員でないと。
 さらには誇り高い表情の土俵下の様子、勝負ビデオも流された。秒数を計れば、その優遇度合がわかるだろう。人気者なのだから当然。

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 解説のいないさびしさ──雄弁なアナの不快

○武州山 ●猛虎浪

 武州山が気迫溢れる相撲で猛虎浪を破った。猛虎浪の方が双差しで良い形になっても、武州山が極め気味に攻めたてる。
 いい一番だっだけにビデオで振り返り、アナがあれこれ解説する。「やはり相撲は攻めている方が有利であることがよく解ります」と大相撲解説ビデオの趣であれこれしゃべるのだが、なんだか「うるせえなあ」と感じてしまう。「おまえ、そんなに偉そうにしゃべるなよ」と。
 元力士の解説ですら、たとえば小結一場所がせいぜいだったのに、上手に立ちまわって親方になっているようなのが横綱大関の相撲にわかったようなことを言うと、「おまえ、そんなに強くなかったろ」と反感を抱く。ましていつもは聞き役の「ファン代表」でしかないアナが、元横綱のような解説を始めたら白ける。とはいえアナだって、よかれと思ってやっているのであって、こんなクレームをつけられたら困るか。とはいえ、ふだんも言いたいけど玄人が隣にいて言えないことを言えている快感もあるはず。アナの考え(だいたいは私と同じ)を解説陣が否定し、アナが「なるほど、そういうことですか」と素人と玄人の違いを知って感嘆するような場面がおもしろいのに、自分と同じようなのがエラそーに解説しているのだから不快にもなる。今場所は異常な場所なんだなあとあらためて感じた。

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 豊真将、7連勝

 相手は苦手の霜鳳。対戦成績は1対3で負けている。なのに攻める相撲で突きだした。なんだか今場所の豊真将は一味違う。首のケガが治ったからか。

 髯のない黒海

 昨日まで「くまごろう状態」で顔の下半分が真っ黒だった黒海が今日はスッキリ。するとアナが「今日は露払いをしたので髭を剃ってきました」と言う。こういうのもいつもなら4時からの土俵入りを見ているから自然に気づく。やはり異常場所なのだ。

 ところで黒海は皮膚が弱いのだと以前聞いたことがある。ああいう濃い髭は、弱い皮膚を護ろうという現象でもある。鍾馗様みたいな髯の力士が居ても困るが、皮膚の弱いひとが毎日きれいに濃い髭を剃らねばならないというのもつらいものだろう。

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 鶴竜、7連勝

 鶴竜も土佐豊に勝って7連勝。初めての経験とか。豊真将は2年ぶりだ。むかしから豊真将は大勝ちして翌場所大敗だったりした。鶴竜は前半負け越しているのに、後半でしぶとく星を伸ばすタイプだった。

 巻きかえの瞬間、躰が浮いたところを土佐豊に攻められ、一時はあぶなかったが、そこから落ちついて逆転した。その辺もアナが事細かに説明するのだが、なんとなくうるさい(笑)。「ここです、ここで左足を見てください」などとやられると、やっぱり「何様のつもりだ」と言いたくなる。前記、「アナだってやりたくてやっているわけではない。解説がいないからしかたなく」と解釈したが、どうも「嬉々として、水を得た魚のように」かもしれない。いつも北の富士や舞の海に自分の考えを否定されて不愉快だったのに、今場所は言いたい放題だとはしゃいでいるようにすら思える。

 明日は琴欧洲にぶつけられる。いよいよ中日で全勝同士のぶつかりが組まれた。とこの時点では琴欧洲が勝つことはわかっていないのだが勝ちと決めている。

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 変化ばかりの阿覧──それとはすこしちがう白馬

 阿覧が変化して突っこんでくる嘉風にはたき込みの勝ち。このひとはこればかり。でも先場所もこれで二桁勝利を挙げ敢闘賞を受賞している。勝てばいいというものではない。どうにもこのひとの相撲は好きになれない。でも正攻法でも怪力で強いからたちがわるい。果たして番付上昇と共に直るのかどうか。

 同じく、立ち合い変化で白馬が栃ノ心に勝った。あっけない結果に場内に溜め息が充満する。ただ、白馬はこれまで3回栃ノ心とやって全敗。正面から行ったのでは勝負にならないと割り切ったとも言えるし、栃ノ心の方にどうやっても勝てるという慢心もあったかも知れない。それにこれはとったりだ。技になっている。阿覧とは違う。
 ここでアナが「ここ二場所、栃ノ心につり出しで敗れています」と情報。そうか、いま場内を沸かせる「新人間起重機」の犠牲になっていたのか。つり出しというのは、決めた力士は気分が良いし、場内からは大歓声だが、やられた方は惨めだろう。それを二場所連続でやられていたなら、これはこれで認めるか。来場所の対戦が楽しみだ。

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 安美錦、あっさりと

 安美錦がデカいだけの木偶の坊を翻弄して楽勝。なのは相撲巧者安美錦であるから当然として相手が把瑠都であるのが問題だ。アナが「一方的です!」と呆れるほど相手にされないような相撲。ひどすぎる。「早くも三敗です!」。どうしようもない。今場所ほどひどい把瑠都を見たことがない。どうしたのだろう。中日を前に楽しみは白鵬の連勝記録と、唯一それに琴欧洲に着いていって欲しいというそれだけになった。

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 琴欧洲、一方的

 かつてのライバル稀勢の里を相手にせず。双差しになって一気。なんとも痛快な相撲。このまま白鵬に着いていって欲しい。

 白鵬、39連勝

 旭天鵬は大きくて軟らかくて強いいい力士。でもこういう一番ではさほど不安にならない。正攻法だから。真正面からぶつかって力通り白鵬の勝ち。


 全勝は四人

 白鵬と琴欧洲、平幕で鶴竜と豊真将。四人が全勝。白鵬の優勝であり、唯一それに迫るのは琴欧洲だろうが、平幕のふたりがいてくれることが賑やかしになる。豊真将、どこまで全勝を延ばせるか。

 中日

 電波障害で映像は見えない。ならラジオでいいのだがラジオも中継はしていないのだった。ラジオしかない人は今場所は大相撲中継が完全になかったことになる。


 琴欧洲、脱落!

 琴欧洲と鶴竜の全勝対決。豊真将はすでに勝ち、初の中日での給金直しを経験している。
 謹慎中の豪栄道、豊ノ島、雅山がいたら6枚目の鶴竜がここで大関と当たることはない。この辺、角界は進歩的だ。どんどん潰しに行く。私としてはもうすこし「全勝四人」が続いて欲しいが、早くも全勝対決をもってきた。ここで鶴竜が上がってきたばかりの力士なら、番付を無視しての大関挑戦は、嬉しくもあり光栄でもあるが、勝てるはずもなく残酷、となるが、このひとは大関候補。三役も経験しているし慣れたものだ。巧い相撲で翻弄し、大きな琴欧洲を投げすてた。見事である。

 これで全勝は三人に減った。大好きな琴欧洲が最初に脱落はなんとも残念。全勝の白鵬に最後まで着いていって欲しかった。前回の白鵬の連勝を止めたのは琴欧洲だった。互いに全勝のまま13日目までいったなら盛りあがったろう。カロヤンはまだまだ足踏み状態が続くのか。白鵬と把瑠都で「白都時代」なんて言われたが、その把瑠都が不調の今場所、琴欧洲にこそがんばって欲しかったのだが。
 まだ一敗だから終ったわけではないが、四人の中から最初の脱落はファンとしてなんとも残念。
 九日目
 同じく電波障害。とりあえず勝敗だけは解るが、とても「見た」とは言えない。ストレスが溜まる。

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 海鵬、引退

 元小結の海鵬(37=八角、本名・熊谷涼至、青森県深浦町出身)が19日、大相撲名古屋場所9日目が行われている愛知県体育館内で、引退会見を行った。先場所は西十両14枚目で3勝12敗と負け越し、今場所は西幕下10枚目に降格したが、初日から休場。中日の前日18日に引退を発表していた。

 青森・鰺ケ沢高−日大を経て、96年初場所に初土俵。177センチ、120キロの小兵ながら左四つ、下手投げを得意に、押し相撲でも力を発揮。01年秋場所で武蔵丸から初金星を挙げ、初の三賞受賞(技能賞)。翌九州場所で自身最高位の小結に昇進した。

 約14年の土俵生活を振り返り「小さいころから夢だった結びで相撲が取れたし、この世界に入って本当に良かった。思い出の一番は横綱武蔵丸に勝った相撲」と海鵬。今後は谷川親方として「我慢して何にでもあきらめない力士を育てたい」と後進の指導にあたる。(ニッカンスポーツ)


 まだ十両だと思っていた。先場所負け越して幕下に落ちていたことを知らなかった。一般に幕下に落ちると引退を決意することが多い。それだけ幕下と十両の差は大きい。
 海鵬もそうだったようで、今場所は一番も取っていないとか。ならなぜ今日まで発表が延びたかとなると、借りる親方株の谷川が空くのを待っていたのだとか。

 貴乃花に味方して立浪一門から追いだされた宮城野部屋の光法が、安美錦から借りていた安治川株の返却を要求されていた。貴乃花のもっている二子山株を借りることによってやっと返却できた。北勝力所有の谷川株を借りていた敷島が、その安治川を借り、谷川株を返却。それを借りられるまで待っていての引退発表ということらしい。いろいろ繋がっている(笑)。

 しかしこの辺の親方株の貸し借りは(一場所につき10万程度の謝礼を払うらしい)、なんとも腰が据わらなくて厳しそう。安美錦が引退したら敷島はすぐに返さねばならないし、海鵬も北勝力が引退したらそうなる。それはもう角界に居られなくなるということだ。八角部屋(北勝海)の部屋附き親方になるというが、確実に数年で爆発する爆弾の上に座っているようなもので、落ちつかないだろうなあ。琴錦なんてずいぶんと転々としている。

 白鵬が延びてきた頃、「鵬の字、大流行」として、大鵬部屋に関係ないのに「海鵬」という四股名はどこから来たのだろうと調べたら、父の所有する船が「海鵬丸」なのだと知った。インターネット時代は便利だなと感激したものだった。

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 豊真将、9連勝

 相手は猛虎浪なのだがこの写真だとそうは見えない。不思議な気がした。日本人唯一の連勝者なので、テレビもスポーツ紙も「日本人最後の砦」などと書いて大騒ぎ。毎度思うのだが、こういうのを読んだら外国人力士は気分が悪いだろうなあ。島国根性である。豊真将も「最後の日本人として」と思ってがんばっているのではないだろう。


 白鵬、鶴竜をくだして9連勝──全勝は二人!

 前頭6枚目が横綱と当たることはあり得ない。こういうのはファンサービスと言うのだろうか。いやファンサービスなんだろうけどさ。それと、むかしそうだったように、13枚目の豊真将が周囲の弱いのとばかりやって15戦全勝で、千秋楽に白鵬と優勝決定戦でも困るのだろう。もし白鵬が負けていたら豊真将の優勝である。ほんとにむかしはそうだった。だから平幕優勝がよくあった。
 鶴竜の場合は上を狙う力士だし、すでに横綱とも何度も対戦があるから特別感はないが、もうすこし先延ばしして10連勝させてもよかったように思う。

 十日目  白鵬、辛勝!

 毎場所期待外れの稀勢の里が珍しくがんばり、白鵬、冷や汗の勝利だった。アナがここのところずっと負けているが「かつては3連勝したこともあった」と勝負前に語る。懐かしい。白鵬が稀勢の里に連敗していたことがあった。でも内容では勝っていた。勝っている相撲なのに勝ちを焦り、躰が流れて負けたりしていた。あのころの白鵬が大好きだった。ともあれこれで42連勝。



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 豊真将、10連勝!

 もう「日本人最後の砦」と大騒ぎ。いや中継もなくごく一部での話ではあるが。
 これから上と当てられるのか。13枚目だ。まあ今場所の大勝ちを糧として来場所以降が愉しみ、というのが豊真将ファンの本音。
 十一日目  電波障害 映像が見えない

 魁皇、休場

 琴欧洲戦で左腕を傷めた魁皇が今日から休場。6勝4敗と白星先行で来ていただけに無念だったろう。大関に「白星先行で快調」と言うことは狂っているのだが、そういう大関だからしょうがない。千代の富士の記録を抜くのがまた伸びてしまった。



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 松ケ根親方(若嶋津)が春場所(大阪場所)の部屋宿舎として使っていた場所がヤクザの持ち物だったとしてニュースになる。本人は「暴力団とは知りませんでした。実業家だと思っていました」と弁明。部屋創立以来の付き合いだから(というか現役時代からか)そんなこともあるまいが、まあそう言うしかない。

護士法違反:ビル地上げ 社長の有罪確定へ−−松ケ根親方と関係

 無資格でビルの立ち退き交渉をしたとして弁護士法違反(非弁護士活動)に問われた建設会社「光誉(こうよ)実業」社長、朝治(あさじ)博被告(61)に対し、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は20日付で被告側の上告を棄却する決定を出した。懲役2年、執行猶予4年、追徴金約15億円とした1、2審判決が確定する。

 1、2審判決によると、朝治被告は05〜06年、弁護士資格がないにもかかわらず、不動産会社「スルガコーポレーション」(横浜市、民事再生手続き中)の委託を受け、ビルの入居者74人と交渉して立ち退かせ、計約18億円の報酬を得た。

 朝治被告は大相撲の松ケ根親方=元大関・若嶋津=に大阪市内の春場所の部屋宿舎を貸していた人物で、警察当局から指定暴力団山口組との関係を指摘されている。(毎日JP)


 興行とヤクザは切っても切れない仲。今後どうなるのだろう。だってヤクザと無縁ではやっていけないだろう。

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○鶴竜 ●豊真将

 全勝の豊真将が鶴竜に敗れた。思いきりのいい立ち合いから左上手をとって積極的に攻める。今場所の豊真将らしい攻めの相撲だ。速くて巧い鶴竜に逆転のすくい投げをくったが、いい内容だった。「攻め急いだ」という評もあり、本人もそれを認めていた。初の10連勝を経験して一回り大きくなったことだろう。勝負は来場所だ。謹慎力士が多いし一気に番付があがる。そこで大敗して下がってきたら何の意味もない。その可能性もある(笑)。でも攻めるようになった今場所の内容からは期待できる。

「日本人、最後の砦」なんてバカな見出しもあった。まことにくだらん感覚だ。それでも、注目を浴びることはひとを成長させる。これからの豊真将に期待しよう。

十二日目
 電波障害修復、やっとまともに見られるようになる

 琴欧洲の意地!

 相手は豊真将。前頭13枚目の豊真将が大関と当たることはない。10勝1敗と好成績だからだ。でも狙いはその先にある。横綱白鵬と当てて耳目を集めたいのだ。それは暴挙だ。ならどうするか。大関に当ててみる。勝ったなら横綱に挑戦だ。そういう思惑。琴欧洲にとっては屈辱である。珍しく険しい顔をしていた。流れとしてそれはわかるだろうし、佐渡ケ嶽から言われたかも知れない。力の違いを見せつけて完勝した。こういうことで「いいひとすぎる」琴欧洲の闘志に火が点くのなら、それはそれでよいことだ。

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 白鵬44連勝!

 北太樹は初めての結びの一番。真正面から行けよと願う。真正面から行った。砕けちった。負けたけどいい相撲だった。でもこれまた北太樹の方が三年も入門は早い。相撲の世界ほど上下関係で残酷な世界はない。
 白鵬はこれで44連勝。いよいよ明日は大鵬の45連勝に挑む。生で見たいものだ。ダイジェストはつまらない。

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 十両は将司

 十両は入間川(栃司)部屋の将司が11勝1敗で獨走状態。このあとが4敗なのだからまず優勝はまちがいない。将司のことを知らないので調べてみた。まず私のATOKで「まさつかさ」で将司が変換できるので以前書いたことはまちがいない。辞書登録しているのだ。

 力士の名前を辞書登録せねばならないATOKはめんどくさい。その点、話題の人名に即座に対応するGoogle IMEはすばらしい。だけどやはりまともな文章を書く際の連想変換はATOKの方がまだまだすぐれているので、私は8割型ATOKを使っている。
 今日、図書館から借りてきたなぎら健壱のエッセイを読んだ。そのことを日記に書こうと思った。でもこの名は出ない。ATOKで辞書登録するのは面倒である。でもGooleなら一発で出る。ほんとにねえ、MSが潰そうとしても潰れなかったJust Systemだが、Googleに止めを刺されそうな気がする。そしてまた、MSはATOKから技術者を引き抜き、潰そうとしても潰せなかったのだが、Googleはべつにそんなことは考えていないのに結果的にそうなってしまうというあたりが、なんとも皮肉だ。それはさておき。

 1984年生まれの将司はいま26歳。入門が2003年で19歳。そのとき身重の妻がいるという珍しい例と知る。いいではないか、これから給料を取れる十両に上がるまでどれぐらいかかるか判らない無収入の19歳の序の口。なのにすでに女房と腹の中にはこどもまでいる。30を過ぎても獨身で居たりするから野球賭博なんてのに関わるのだ、力士はさっさと結婚させろ! と思っている私には最高の形である。それが十両から幕内にまで上がり、いまはまた十両だが、優勝はまちがいなく、来場所の入幕は確定している。いいぞいいぞと思いつつ読んでいて白けた。
 十両に昇進したとき、実は妻子持ちであることを公表したのだとか。それで思い出した。あったな、そういうことが。ところがそのあとの文章。「その後、離婚した」って。これはひどい。無給のとき支えてくれた糟糠の妻を出世して捨てたのだ。「いい話」だと思っていたのに、いきなり「最低の話」になった。
 現在、2010年に再婚、元妻との子ひとり、現妻の連れ子がふたり、現妻とのあいだの子ひとりで、合計四人の子の父親とか。26歳で。
 入門前からの妻と今も一緒だったら(私にとって)理想の力士だったのだが、これじゃ(私にとっては)ただの女好きでしかない。ふたりのこどものいる現妻との出会いもなんかドロドロしていそうだ。いろいろ事情はあるにせよ、とにかくがっかりした。まあ相撲内容がいいのなら偏見なく応援はするつもりだが……。
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十三日目
 白鵬、大鵬に並ぶ45連勝!



 ついにあの大鵬の記録に並んだ。感無量。琴欧洲も正面からいい相撲をとった。白鵬が珍しく待ったをした。最後は上手投げ。感想は、「こういう場所で並んで、ちょっと残念」。「少しはうれしいですね」「これで(元大鵬)親方に恩返しできたと思う」とか。優勝しても天皇賜杯のない場所だ。気持ちはわかる。

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 日馬富士のとったり

 把瑠都の立ち合いがおかしい。腰高で半端な両手突き。日馬富士をもぐらせなかったのはいいが、左手をたぐられてのとったりで土俵を割る。予備知識のないひとが見たら、相撲を初めて間もない白人大男が相撲巧者のアジア人力士に翻弄された図。今場所はあまりにひどい負けかたが多い。すべては立ち合いの悪さ。張り差しなんぞを使うからよけいによくない。迷路に入っている。これで8勝5敗。序盤に10勝5敗かと予測したがそれも無理となった。このあとは琴欧洲と白鵬だ。これじゃまるでカスのクンロク大関である。失望は大きい。

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 豊真将、張り差し稀勢の里を破る!

 なんとも気分のいい一番。またも張り差しをしたバカの里。しかし低い姿勢で頭から突っこんでいった豊真将はそんなものにたじろがない。そのまま一気に押しだしての完勝。最後は「どんなもんだ!」ともとれるパフォーマンス。これで11勝2敗。なんだか今場所の活躍で貫録まで出て来た。気弱な表情にふてぶてしさまでそなわってきた。無意味な張り差しを連発するバカを、そういうものとは無縁の豊真将が完全な形で打ち破った。いやはや気分が良い。

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 阿覧の前途

 阿覧がまたも変化。栃煌山バッタリ。0秒6。場内に満ちる不満の声。これで9勝。来場所の三役は確定している。今場所、変化で勝つのは何番だろう。把瑠都もそれにやられている。ロシア人力士は平然と変化する。それをつかれても、悪い相撲だと認めはするが、ハッキリ「勝てばいい。勝たねば意味がない」と顔に書いてある。この民族性はなんだろう。栃ノ心が落ちて阿覧が上がる。私はどうしても阿覧を好きになれない。彼がその辺のことに気づくことはあるのか。

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 安美錦休場

 昨日の一番で古傷の膝を傷めた安美錦が今日から休場。6勝6敗で勝ち越しの可能性もあっただけに無念だろう。昨日すでに「明日は無理」と見えていたが。なんとか直して来場所は出て来て欲しい。いてくれないと困る力士だ。

 不戦勝は北太樹。これで6勝7敗。星は悪いが積極的に前に出るいい相撲を取っている北太樹に勝ち越しを願う。

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 十両は将司優勝

 後続がいなくてすでに相撲の前に優勝が決まっていた。将司のここまで12勝1敗は立派だが、1敗力士が13日目で優勝決定とは、いかにその他がだらしないかだ。
 短いが優勝インタビュウがあった。将司のインタビュウを見るのは初めて。最初の妻と一緒なら好意的に見られたが、今の事情を知ってしまったため興味が湧かない。

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 今度は境川

 境川(両国)の名古屋場所で使っている土地(長年借地、2年前に購入)がヤクザ関係のものとわかり記者会見。謝罪はするものの「仕事関係の中身まではわかりませんよ」ととぼける。相撲とヤクザはしっかりと離れないほど絡みって居るから苦しい言いわけになる。
 たいした力士じゃなかったが政治力があり部屋経営はうまい。豪栄道らを抱えている。でもその豪栄道が野球賭博で謹慎。部屋経営がうまいということはすなわち、ヤクザとも上手につきあっているということだ。さてこれから、この切れないほど深い縁のヤクザ社会と相撲界はどうなるのだろう。こんな形で掘りかえしていったらいくらでも出て来るだろう。それこそ江戸時代からヤクザの応援はいくらでもあったのだから。



十四日目


 豊真将敗れて白鵬の優勝決定

○徳瀬川 ●豊真将

 もの言いがついたが軍配通り。これはこれでいい。豊真将は11勝3敗。よくがんばった。
 問題は、こんなところで優勝決定してしまうと、難敵日馬富士と闘う白鵬に悪影響があるのではないか、と。
 でも今の白鵬は優勝よりも歴史に残る連勝記録を意識しているから大丈夫か。
 大関陣がだらしない中、豊真将はよく盛りあげてくれた。

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 栃ノ心の豪快な吊り!

 栃ノ心がこのところよく吊りを見せる。大柄で下半身が太いから見ばえもして、じつにいい。
 今日は小柄な嘉風相手だったが、四つになってから豪快に吊りだし場内を沸かせた。つり出しはいい技だ。得意技にして欲しい。
 今場所は負け越しで阿覧と番付が逆転する。阿覧が26歳、栃ノ心が22歳だが、阿覧は入門が遅い。07年。栃ノ心は06年だから先輩だ。来場所はまた番付を逆転して欲しい。

 でも阿覧は鶴竜も破った。ちいさいけど相撲巧者の鶴竜に勝つのだから底力はすごいのだろう。力が技を抑えつけている。白鵬ですら手こずったほどだ。日本語もまだ話せないし、変化はするし、どう考えても私は栃ノ心の方が好きだ。とまあ同じようなことを毎場所書いている(笑)。

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 北太樹、負け越し

○稀勢の里 ●北太樹

 6勝7敗同士の対決。日本人期待の稀勢の里は5勝1敗、6勝2敗と、そこまでよかったが、そこから5連敗。一気に6勝7敗のがけっぷち。
 北太樹を応援したが、これはまあ完敗。力がちがっていた。北太樹、負け越し。でも相撲内容はいい。把瑠都と逆。来場所に期待。
 稀勢の里はこれで7勝7敗。千秋楽の鶴竜戦で東の関脇の座を守れるかどうかの勝負。もちろん鶴竜を応援する。対戦成績はキセノンの9対4で、ここのところ3連勝。でもそれは鶴竜の調子のわるかった3場所。明日はわからない。がんばれ鶴竜。キセノンの自滅張り差し希望。

 力が違うと言えば小結の白馬に9枚目の霜鳳が格が違うような勝ちかたをしていた。白馬は小結で大きく負け越し。もういちど出直しだ。

 前半調子の良かった大好きな旭天鵬は中盤に連敗して負け越し。

 1勝4敗という最悪の序盤となった阿覧は、その後9連勝。話題の豊真将も鶴竜も破って、来場所初の三役、それもいきなり関脇の可能性が出て来た。今場所の三役はぜんぶ落ちるとして、来場所は、栃煌山、阿覧、稀勢の里(負け越しても小結か)、鶴竜か。


 把瑠都、ハチナナか?

○琴欧洲 ●把瑠都

 把瑠都の立ち合いがヘン。棒立ちのような半端。どうしたのだろう、しっかり指導しろ尾上。
 そのあとは大男ふたりががっぷり四つになり、力の入った一番。場内から拍手と歓声が沸く。大関同士らしいいい相撲だった。
 琴欧洲は二桁に載せた。何としても明日日馬富士に勝って11勝してくれ。
 一時は2勝4敗だった日馬富士はその後がんばって9勝まで来た。
 把瑠都は8勝6敗。明日が白鵬だから8勝7敗か。「今場所は10勝5敗程度か」と序盤に読んだのだがそれどころではなかった。ひどい成績だ。
 負けるのはいい。しかたない。中身が悪すぎる。なんなのだあの立ち合いは。いま相撲がわからなくなって迷いの杜に踏みこんでしまったのだろう。でも以前のはケガをした後で、相撲が怖くなっていた。理由があった。理解できた。今の迷走は理由がわからない。どうしたのだろう。心配だ。

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 白鵬、46連勝!



○白鵬 ●日馬富士

 白鵬がすくい投げで日馬富士を破り46連勝。大鵬を抜いて連勝の史上3位になった。あとは千代の富士と双葉山。なんとか談合横綱千代の富士のインチキ記録を抜いて欲しい。

 白鵬に対抗意識を持つ日馬富士は対白鵬戦になると実力が倍加する。最も怖い力士だ。今日もいつしか相撲桟敷(とはいえ生中継ではなくすでに結果は出ている。でももちろんそんなものは知らないようにして臨んでいる)で正座である。それまでは寝転んでいたのだが、どうにも日馬富士が怖くて、応援に力が入る。
 それにふさわしいいい内容だった。残念だったのは写真でも解るように両者のまわしがゆるゆるだったこと。これは最初は日馬富士の方がひどく、四つになりながら白鵬は一枚まわしになってしまった。しかしそのあと白鵬も弛んできて写真のようになる。それだけが悔い。あとはもう文句なしの横綱大関戦にふさわしい大相撲だった。

 大鵬は戸田に負けて連勝が45でストップし、それから不振に陥る。誤審だった。明らかに大鵬が勝っていた。それからビデオでの審判が取りいれられる。誤審がなかったら大鵬は連勝をいくつまで伸ばしたろう。

 双葉山の記録は戦前であり、11日制、13日制が混じっている。年二場所制だったから丸二年以上負けていない。関脇から勝ち続け横綱まで連勝で上り詰める。空前絶後と言われる記録だが、それはそれとして、戦後の15日制に限るなら、チヨの53に次いだことになる。53の内、ほんとに勝ったのは20番もないと言われているハリボテ記録だからなんとしてもこれを抜いて欲しい。



 しかしこのユルフンは問題だ。
 千秋楽  把瑠都、最後に実力発揮!


 大仕事は乗りに乗っているものが期待通りに達成することもあ、主流から取り残された大物が「なにもこんなときに」と思われるときに成し遂げることもある。今日の把瑠都はそれだった。結果的に大仕事は達成してはいないが……。

 ここまで8勝6敗。敗れた相撲には北勝力の負けパターンのようなものも多く、ファンとしてはなんとも情けない気分に陥った今場所だった。それでも救いは昨日の敗れはしたものの琴欧洲との魅力一杯の大きな相撲だった。
 今日も46連勝中の横綱にこんなところで勝たなくてもいいぞと思う一方、そういう大仕事はこんな不調の把瑠都にこそふさわしいと心配になったりする。とにかく今日の私は、白鵬を応援していた。これで把瑠都もまた全勝で個々まできていたら応援に迷った。でもひどい内容の場所だ。こんなところで怪力を発揮して全勝を止めてもしょうがない。またこんな不調の大関に止められたら白鵬の連勝記録はなんだったのだとなってしまう。

 把瑠都が持てる力を存分に発揮したすばらしい大一番となった。大柄な二人ががっぷり四つになっての投げの打ちあい。最後の白鵬の上手投げをこらえる把瑠都、それを二丁投げのようにもういちど脚を使って投げきった上の写真のシーンは圧巻だった。耐える把瑠都の躰の軟らかさも白鵬のバネも見事なまでに発揮された名勝負。熱狂した場内からは座蒲団も舞った。観客の心には、これは自分達だけが獨占している歓びなのだという気持ちもあったにちがいない。毎場所日本中が酔いしれるこの昂奮は愛知県体育館に足を運んだひとだけのものだった。

 把瑠都の満足度もこの写真に現れている。負けて口惜しいが、千秋楽にいい相撲を取れた納得はあったろう。来場所は今場所の半端な立ち合いを修復して、またもっといい相撲を見せてくれ。今場所ほどひどい内容はかつてなかった。もしも今場所12勝ぐらいあげたとしても私は同じ苦言を呈する。星よりも中身なのだ。今場所の中身は酷すぎる。

 「ストップ・ザ・白鵬」の今場所最後の使者、把瑠都の善戦も及ばなかった。手に汗握る土俵中央での引きつけ合いからのせめぎ合いは、ファンの熱狂を呼び取組後、数十枚の座布団が館内に飛び交った。「立ち合いは完ぺき。気合も入ったけど詰めが遅かった」と“大魚”を逃し悔しがることしきり。8勝止まりの今場所を「ダメ。うまく集中できなかった」と反省。開催が危ぶまれた場所については「15日間は早かったけど、やって良かったでしょう」と話した。(ニッカンスポーツ))

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 白鵬、涙のインタビュウ


快挙達成の白鵬が涙声で…

<大相撲名古屋場所>◇千秋楽◇25日◇愛知県体育館

 47連勝、そして史上初の3場所連続全勝優勝という快挙を達成した横綱白鵬が、涙声で名古屋のファンにあいさつした。賞状と優勝旗授与だけで終った表彰式後の場内インタビュー。涙声で発した「うれしいです」が第一声だった。そして「一番うれしいのは…今場所15日間、応援してくれた名古屋の皆さんに感謝です」と続けた。

 おえつ交じりの声で感激の言葉を並べたが、毅然とした態度で口にしたのが、日本相撲協会が辞退した天皇賜杯。「この国の横綱として、全力士の代表として天皇賜杯だけは、いただきたいと思っていました」と悔しさをにじませた。

 力士代表としての、さらに自覚の弁も。「こんな場所が2度とないように(全体で)反省して、改めて頑張ります」との言葉で締めたが、花道を引き揚げる際も涙は止まらなかった。(日刊スポーツ)


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 昨日の優勝決定の時もそうだったが、白鵬は天皇賜杯授与を中止した相撲協会のやりかたになっとくしていない。口惜しかったろう。だが相撲ファンに訴えるものとして、この快挙を成し遂げた横綱の、喜びではない涙ほど雄弁なものはない。相撲協会はこの問題をどう決着をつけるのだろう。

 賭博問題の影響で相撲協会は、幕内優勝力士に授与される天皇賜杯を自粛し、内閣総理大臣杯など外部からの表彰も辞退した。表彰式は非常に簡素で、白鵬関は村山理事長代行から賞状などを受け取っただけだった。(共同通信)

 ワイドショーで相撲を好きでもなく観てもいないのに「らしき意見」を言うコメンテーターなら「これを機会に膿を出しきって」などと言えるが、相撲好きの私にはそれは言えない。相撲界とああいう方々の癒着は持ちつ持たれつであり、長年の慣習であり、ガンであるそれを切りとったら本体の方も損傷を受ける。というか切りはなし不可能なのだ。まあ世間のきれいごとで表だった部分からはそれなりに乖離されるだろうが、なにしろリッパなことを言っている警察組織その物がそちらとはベッタリである。いわばこの種のものはどうしようもないのだ。それと渾然一体となって、タッグを組んで成立しているようなものなのだから。

 外国人力士がヤクザと関係がなかったのは、ことばの問題等で「たまたま」に過ぎない。ヤクザは力士を「芸者」のようにお座敷に呼ぶ。その謝礼は50万、100万単位だ。力士にとっても貴重な副収入になる。長年続いてきた慣習だ。カタコトの外国人力士よりは藝達者な幕下のほうがいい。外国人力士がクリーン?でいられたのはケガの功名でしかない。旭鷲山のようになまじっか日本語がうまいとそれに巻きこまれ廃業にまで追いこまれたりする。
 切りとらねばならない。世間は切りとれの意見で一致している。しかし躰に深く食いこんだその癌組織を切りとったら命に関わる。切りとらずになんとかごまかして延命を図るしかない。ヤクザとの関係はそんなものだ。さてどうするのか。

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 三賞の三人

 白鵬、琴欧洲、鶴竜、豊真将が5戦全勝で序盤をリードするとき、阿覧は1勝4敗だった。しかし終ってみれば鶴竜、豊真将と並ぶ11勝4敗。琴欧洲の10勝5敗を凌いでいた。変化の多い阿覧を讃える気にはなれないが、この三人の中で白鵬との善戦からも来場所一番期待できるのは阿覧なのか。露鵬、白露山を慕って来日したロシア人力士であり、若ノ鵬の従兄でもある。すでに妻子がいるし、肝の据わりかたは獨身とはまたちがうだろう。期待の大型力士なのかなあ。私は栃ノ心の方が好きだ。

 豊真将を押し倒しで破り、6日目からの10連勝で11勝目を挙げた東前頭2枚目の阿覧が、敢闘賞を受賞した。12勝を挙げた先場所に続く受賞だが、心は早くも新3役昇進が確実な9月の秋場所に飛んでいるよう。「これで関脇に上がれるのかな。関脇に上がりたいね。3賞より関脇の方がうれしい。小結と関脇じゃ全然、違うよ」と同じ3役なのに、なぜか「セキワケ」を連呼するロシア出身の阿覧。自分の相撲には「相撲がうまくなった。前は力だけ」と自画自賛していた。(ニッカンスポーツ)

 豊真将はインタビュウで「首のケガもあり、頭の中で考えて相撲を取るようになった」と応えていた。そうか、ケガが完治しての戦法変更ではなく、あいかわらず悪いままでの作戦としての攻めなのか。うまく感知して欲しいことを願う。力士は古傷を負ったらもうダメだ。
 来場所安美錦は出て来られるだろうか。まあ二ヵ月あるし、あれこそ古傷だからだましだましはうまいと思うが。

 鶴竜は稀勢の里に勝って11勝目。つまり、日本人期待の星キセノン負け越し(笑)。関脇転落。でも相撲内容はよかった。完全に勝っていた相撲だったが、土俵際鶴竜に躰を交され、鶴竜がオットットッと片脚立ちしているあいだに落ちてしまった。負け越しでもひとつだから小結に残れるか。関脇小結四人陥落。上がってくるのは9勝を上げた栃煌山と阿覧。このふたりが関脇で、小結に陥落キセノンで、もうひとりは3枚目で8勝の時天空か、6枚目で11勝の鶴竜。

 鶴竜はインタビュウでもあまり冗舌ではない。だから日本語の巧さが隠れてしまうのだが、アナはみな「モンゴル人力士で一番巧い」と絶讃する。まだ朝青龍が現役の頃だったから彼よりもうまいらしい。父親が大学教授でモンゴル相撲は取っていなかったというモンゴル人力士としては異色の経歴だが(だからこその負けん気が強いらしい)頭がいいんだろうか、語学もまた頭脳だ。思いきり語彙を使って話すところを聞いてみたい。

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 琴欧洲、腰くだけ



場所前に起きた兄弟子の大関琴光喜の解雇という、ショッキングな出来事を抱えて臨んだ大関琴欧洲は、大関のノルマともいえる10勝で今場所を終えた。この日は土俵際からの逆襲で日馬富士を追い詰めたが、最後は押した腕を外されて体勢を崩し押し出された。今場所を振り返り「もったいない相撲があった」と話したが、それを象徴するような一番。ただ、それ以上に心のつかえとなったのが琴光喜の解雇。「心と体が一緒にならない部分があった」と言い、具体的には「光喜関がいなくなったのが一番、大きい」と続けた。精神的ショックが土俵に少なからず響いた15日間だった。(ニッカンスポーツ)

○日馬富士 ●琴欧洲

 序盤2勝4敗の日馬富士は10勝5敗。そのとき全勝だった琴欧洲はやはり終盤に崩れて10勝5敗。
 しかし一番酷いのは把瑠都の8勝7敗か。

 琴欧洲も琴奨菊も顔に覇気がなかった。琴光喜問題が尾を引いていたのだろう。琴奨菊は自身も出場停止になってもおかしくない状態だっただけにしかたないが、琴欧洲の覇気のなさは心配だった。



 関脇琴奨菊は5勝10敗と大きく負け越したが、日馬富士、魁皇、把瑠都を破っているように、精神的に乗っていたらもっともっと星を延ばせたろう。ずいぶんと惜しい逆転負けも多かった。
 宿舎の問題のようなヤクザとの絡みを立ちきるのはむずかしい。元々が興行と地元ヤクザの癒着は常識だ。しかしそれとまた野球賭博等は無関係。暴力団絡みのバクチとは縁を切った方がいい。その意味では良薬になったと思っている。今場所が終ればそれなりに御祓が済んだとなる。来場所からは心機一転がんばって欲しい。琴奨菊は琴奨菊なりに重要な役者なのだから。



総論
 テレビ中継のない場所

 ダイジェストしかない相撲中継がこんなにつまらないとは知らなかった。しかたない、だって初めての経験なのだから。
 むかしテレ朝がやっていたダイジェストは、短い相撲をさらに短く縮めたひどいもので、それでいてなにを勘違いしているのか(いやスポンサーのためなんだろうけど)無用なショーアップにこだわったりしていて、私はほとんど観ることはなかった。それでもたまに見逃したときは観るしかない。観ている自分がいやになるような番組だった。

 そういえばむかしは土日の深夜に缺かさず見ていた「競馬ダイジェスト」も、いまではひどいことになってしまった。しかしこれはインターネット等の発達により「他の方法で観られる」ことも関係がある。むかしはメインレース以外の映像、特に最終レースはそれでなければ観られなかったから(それまでのレースは中継の時に見られる)貴重なものだった。しかし相撲の方は競馬のレースのようにインターネットで観ることは出来ない。gooで観られるというが繋がらなかったし画像の悪さは定評がある。

 テレ朝のひどいのと比べるとNHKのダイジェストはすばらしく、しかも深夜や明け方にも再放送流してくれるから、視聴率の悪さからテレ朝が打ち切ったことによって始まった苦肉の策、というか非常事態みたいなものだったのだが、ほんとにほんとによく出来ていた。
 夕方からの相撲中継を生でたっぷり観て、HDDレコーダに録画してあるのに、明け方にやるダイジェストをまた観ることがあった。心に残る名勝負があったりすると、仕切りを除いた勝負を素速く繰り返すダイジェストは魅力的だった。
 今回生中継のない場所を経験して、そういうNHKのダイジェストをよく出来ていると評価するような気持ちも、本放送あってのものだとよくわかった。物足りない。なんとも物足りない。それに「解説陣がいなくてアナがそれを代役している」のも惨めだった。

 NHKアナの相撲智識には一目置いているが、あくまでもそれもアナとしてのもの。北の富士当人が忘れているような資料的数字をアナが指摘して、思い出した北の富士が回顧したりするのだが、あくまでもそれは北の富士あっての数字。どんなに数字的なことに詳しくてもナビゲーター以上のものではない。そのナビゲーターが解説までこなす今場所は正に異常事態。ダイジェストとはこれほどつまらないものかと思い知った。
 そりゃそうだよね、4時から6時までのアナも解説陣も昂奮して実況した本放送──よく出来た作品──を、編集で凝縮したのが今までのダイジェストなら、今回のは、ダイジェストのためのダイジェストなのだから、迫力も熱気もちがうのは当然だ。いい一番を見るたび、「本放送のダイジェストなら、ここで北の富士や舞の海のひと言が入っているんだろうなあ」と何度も思った。

 本放送の方は来場所から復活すると思う。二ヵ月がいい冷却期間になる。しかしヤクザ問題は解決したことにはならないし、力士上がりが運営することに意義のある大相撲協会に、外部の手が入ろうとしている。
 協会を運営する元力士が力士でなければわからん世界だと誇りを持っているように、私はこの外部からの侵入には断固反対である。だが今の世の中だとそれこそが正義だとばかりに一気にその流れになってしまうのだろう。それによって大相撲はつぶされる。
 大相撲そのものが「田沼の濁り」があってこその味わいであり、「白河の清さ」を強要したら、それはもう大相撲ではなくなってしまうのである。それが相撲などすこしも好きでない連中のごり押しで実現しようとしている。朱鷺が絶滅したように、うまい野菜や豆腐がなくなったように、大相撲はこういう連中の感覚でつぶされる。

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日本相撲協会は25日、名古屋場所(愛知県体育館)の観客数を発表し、15日間で計9万4900人と昨年より9400人減少した。各日で比べて昨年の観客数を上回った日はなく、賭博問題の影響が表れた。
 満員御礼の垂れ幕が下がったのは7、8、14日目と千秋楽の4回で、昨年に比べて半減。名古屋場所の先発事務所によると、記録が残る1986年以降で最少だった。定員8100人の90%以上の客入りで大入りとなる。


 まあ考えようによっては「この程度で済んだ」とも言える。とにかく連日極悪殺人事件でもあったかのように異様に報道されていた。相撲好きの私は興味深く見ていたが(いいかげんなコメンテーターの発言に腹立つことも多かったが)相撲に興味のない人には「なんなんだ、これは」と思った人も多かったのではないか。それほど世間は相撲に興味はない。名古屋場所に通うファンには、あれだけの事件があったのに客足は落ちていない、とがんばって欲しかったが、減少して残念。でも減少しないと反省のないのが相撲協会でもあるから、これはこれでよいことか。私は一貫して「異能集団、歌舞いてる世界」である大相撲の味方だが、記者会見での武蔵川の逆ギレには呆れた。あれで内心では反省などしてなく、「つまんないことで大袈裟に騒ぎやがって」と思っているのがバレた。お灸も必要なんだろう。





壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

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