平成二十二年九州場所

2010/11/14〜
 場所前話  不滅の記録の更新はなるのか!

 双葉山の69連勝。
 Wikipediaからのコピー。

 69連勝…1936年(昭和11年)1月場所7日目〜1939年(昭和14年)1月場所3日目。同場所4日目に前頭4枚目安藝ノ海に敗れる。

 この記録の偉大さは69という数字はもちろんだが、年二場所制を勝ち続けた「丸3年間」にある。この間に一場所の日数も11日制から13日制と変っている。この間の精神的重圧はたいへんなものだったろう。
 娯楽スポーツのすくない時期でもあり、まさに国技として国民的注目を浴びていた。しかしまたそれは力士として栄光であり、逆にあまりに多様化し、賭博事件等のスキャンダルもあってねさして注目されない白鵬が気の毒にもなる。



 白鵬の双葉山への礼儀

 横綱・白鵬(25)=宮城野=が双葉山の墓前に69連勝を誓っていた。大相撲九州場所(14日初日・福岡国際センター)で双葉山の69連勝に挑む白鵬が秋場所前の9月に双葉山が眠る東京・荒川区の善性寺に墓参りしていたことが6日、分かった。4場所連続全勝優勝を果たした秋場所の裏側に偉大な先人の墓前での誓いが隠されていた。この日、白鵬は福岡市内の住吉神社で奉納土俵入りを行った。

 人知れず白鵬は双葉山の墓を訪れていた。善性寺の望月兼雄住職(53)が証言した。「私はお目にかかりませんでしたが、うちの者が秋場所前にお見えになっていたところを拝見しました。たった一人で完全なプライベートでのお参りだったようです」。花を供え、線香を上げ静かに手を合わせていたという。
(スポーツ報知)





 大相撲の横綱・白鵬(25)=宮城野=が5日、双葉山の生まれ故郷で69連勝更新を誓った。この日、大分・宇佐市の双葉山の生家などがある「双葉の里」を訪問。あこがれの横綱ゆかりの品などを見て回った白鵬は、生家の前で「双葉山関に恩返しをしたい」と堂々と宣言。双葉山の故郷で英気を養った白鵬が、九州場所(14日初日・福岡国際センター)で、伝説の記録更新を達成する。

 神の領域へ足を踏み入れつつある白鵬が、双葉山の生家を前にして記録更新を高らかに誓った。「相撲界には、あこがれや尊敬する人に勝って恩返しをするという言葉があります。双葉山関に恩返しをしたい気持ちです」と力強く宣言した。

 白鵬はこの日、双葉山の生家や資料展示室などがある「双葉の里」を訪問。約800人の宇佐市民から歓迎を受けた。一人で落ち着いて見たいなどの理由から館内の見学の様子は基本的に非公開だったが、新貝文俊館長によれば生家の座敷で祈りをささげたという。連勝が止まったときに、双葉山が知人に残したと言われる「いまだ木鶏たりえず」の掛け軸を前に、自ら用意したお香をたいて約3分もの間、両手を合わせた。白鵬は内容を明かすことはなかったが、記録更新のあいさつをしていたのかもしれない。

 双葉山の遠い親せきも白鵬を見ようと双葉の里に駆けつけた。同市内に住む岡久代さん(91)だ。子供の頃からの双葉山を知る岡さんは「変な気持ちだけど、69連勝をしているっていうのは喜ばしいこと。勝ってほしい。今、白鵬が全盛のときですから」とエールを送った。
(スポーツ報知)

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 とまあここまでは「いい話」なのだが、当然のごとくそんなに世の中単純ではない。
 この大分県の観光会社が白鵬が双葉山の69連勝を越える(かもしれない)日に、観戦ツァーを組んだのだそうだ。すると反撥があった。そりゃあるだろ。大の白鵬ファンである私だけれど、そんなツァーを組むひと、というかそういう企劃を発案するひとの神経は理解できない。

 双葉山の出身地は、双葉山の存在と、越えるのは不可能と言われたその記録を誇りにしてきたのだ。それが今、越えられるかも知れない「危機」に接している。ましてそれが同じ大分県出身の郷土の英雄・千代大海(笑)でもあるならともかく、縁もゆかりもないモンゴル人横綱にである。なんでそんな日にわざわざ観戦に行かねばならないのだ。その日はむしろついに越えられたと屈辱に歯噛みする日だろう。
 こういう企画を立てる人は、いわゆる空気を読めないひとだ。

 ということで参加者は集まらず、急いで「郷土の英雄・垣添応援ツァー」と名を変えたが、それでも集まらないとか。その理由として「垣添、いま十両だし」ってのがあって笑った。
 話題になる出来事があると、なんでもそれに便乗して、牽強附会、附和雷同で、金儲けに繋げようとする気持ちは解るが、「双葉山の記録が抜かれそうになっていることを、双葉山の郷土のひとで盛りあげよう」というのは、いくらなんでも無理がある(笑)。もしもそれをするなら、東京にいるモンゴル人を集めての「九州場所観戦ツァー」だろう。



初日
 目立つ空席

 今日はエリザベス女王杯。英愛オークス馬スノーフェアリーの強さに酔った後の大相撲中継。3時15分からやっていたが4時から観ることになる。
 話題は双葉山の連勝記録を白鵬が抜くかどうか、それ一点。私もこんな日に立ちあえるとは思っていなかったので今場所の昂奮は格別だ。



 双葉山の人柄を語るのに内田勝男さんが登場する。東京農大の学生横綱・内田として、相撲界初の大卒力士として、また美男力士として話題になり、初代豊山となった時から知っている身としては、引退して双葉山の跡を継ぎ時津風親方となり、出羽の海親方(佐田の山)の改革で揉めたときに、時津風理事長になり、定年引退してまた本名の内田さんにもどった姿を見ると時の流れを感じる。

 相撲界初の大卒力士、美男力士として登場し、幕下つけ出しで初土俵。この制度の第一号か。十両では全勝優勝して話題になった。
 それをライバル視したのが叩き上げのホープだった佐田の山。話題の豊山について訊かれ、「大学卒には負けたくない」と明言した。

 私の家では、母と姉が美男の大卒から豊山を応援。今も昔も女はミーハーである。豊山に対してそういう発言をした佐田の山を敵視し、晋松という名前さえも田舎臭いと嫌った。
 それに対して、三十代で小学校校長になっていた、片田舎ではエリートだった師範学校卒の父は、佐田の山を支持した。とはいえうるさい女どもは相手にせず、ボソっと言っていただけだが。
 大学を出てから転向してくる力士なんぞより、中学を出てから相撲一筋の道を歩んできた力士が父は好きだった。私は父のこの感覚の影響を受けている。断然佐田の山支持だった。同時にそういう母と姉を嫌った。母と姉が嫌う晋松という古臭い名前も逆にかっこよく思えた。
 くだらん話のようだが、このへん、後々を考えると私の人生に与えた影響は大きい。今も発想の中核をなしている。

 ただし厳密には、内田は貧しい母子家庭の出身であり、決してお坊ちゃまではなかった。佐田の山はスピード出世をし、大関時代には出羽海親方の娘と結婚し、横綱にまで登りつめた。むしろ現役時代から未来の理事長の座を約束されていたエリートは佐田の山のほうだった。もちろん実力で掴んだ栄光だが。30歳でのあっさりした引退もうなづける。

 このあとのふたりの人生で、私にとって意外だったのは、予定通り理事長になった佐田の山が、年寄株に関する急進的な改革を断行しようとして失敗し、その座を追われたことだ。角界一の名跡である出羽海を鷲羽山と交換したのも驚愕だった。鷲羽山という地味な脇役が天下の出羽海を襲名したのにも驚いた。

 そしてそのあと、万年大関であり、負け越しも多かった豊山が理事長になったのは想像できないことだった。それまで相撲界のこういう「未来の理事長」は、誰でも推測できるものだった。当時学生だった私にも、栃若が中継ぎの理事長をして、そのあとは佐田の山、北の湖と繋がって行く流れはわかっていたし、それは好角家の常識だった。豊山も双葉山の時津風部屋を継いでいたし、二代目の時津風理事長はありえたろうが、やはりこのひとの理事長就任は佐田の山の改革失敗から生まれたものだろう。

 これからはもうわからない。北の湖が不祥事で理事長の座を追われるとは思わなかったし、そのあとを三重の海(武蔵川)が継ぐとは想像も出来なかった。ましてあの地味な大関だった魁傑が理事長になると誰が思ったろう。
 理事長に関していま思うのは、千代の富士のような人間的にセコいのがなってはならないということだけだ。

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 初日なのに、白鵬の大記録がかかる場所なのに、さびしい入りだ。それでも九州場所としてはまだいいほうか。毎場所、九州場所はこの空席を見るのが辛い。

○高見盛と●時天空
 先場所はふたりとも大きく負け越している。典型的なエレベーター力士だ。
 高見盛の気合い入れに場内が沸く。千両役者。

 高見盛の下がる花道でフェルトペンと色紙を押しつけてサインをねだるファンがいたが、高見盛は無視して通りすぎる。当然だ。巡業ならともかく本場所でこんなことをこんなときにねだる方がまちがっている。
 しかしテレビ画面、上部三分の一に映るのがガラガラの客席。なんともさびしい。

○土佐豊と●猛虎浪
 軍配は土佐豊。猛虎浪のきれいなうっちゃりが見事に決まったのだが、ヴィデオで見ると、うっちゃる瞬間、躰の反った猛虎浪の左踵が土を嘗めている。勝負審判はしっかりそれを見ていたようだ。
 なんだか今日はこういう土俵際で逆転のようなこういう相撲が多く、じゃあ熱戦かと言うとそういうことでもない。半端。

○豊ノ島と●臥牙丸
 14勝1敗で十両優勝した豊ノ島と入幕二場所目で10勝5敗をあげた臥牙丸。
 巨漢相手に豊ノ島が真っ向勝負。場内が沸いた。やっと場内があったまってきた。

 先場所は、本来幕ノ内上位にいるべき力士が十両で取るという記憶に残る場所だった。格の違いがはっきり見えた。
 豊ノ島は9枚目。早く上の場所にもどって欲しい。琴欧洲はもどって来ないことを願っているだろうが(笑)。
 安美錦と豊ノ島は横綱大関と当たる地位にいて欲しい力士だ。



 今日はここまで大嫌いな張り差しを見ていないので気分がいい。
 最初に気分を悪くさせるのは誰だろう。もしかして、結びまで見なくてすむか!?



○豪風と●若の里
 豪風が変化。どうにもこのひと、もう一歩好きになれない。若の里は落ちなかった。だからそのまま前に出ればいいのに、押されると引いてしまう。それで押しだされた。なんとも残念な一戦。これが衰えなのか。
 でも北の富士が「このひとは何をやってる許されますからね」と言う。豪風についてだ。そうか、ちいさいから何でも許してやるのか。でもなあ、なんで若の里相手に変化するのだろう。わからん。

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○北太樹と●白馬
 というところで出ました張り差し。白馬が北太樹にやった。でも北太樹はひるまず一気に押しだす。こりゃ気分がいい。ヴィデオを見ると、張り差しというろくでもないことをやるから突進が遅れ、ひるまず突っこんできた北太樹の前で棒立ちになっているのがよくわかる。ほんと、ざまーみろの気分。北太樹、快勝! これは北の富士も舞の海もみな絶讃。
 ただ、北太樹はここのところずっと注目している贔屓力士なのだけど、土俵上でやるあのラジオ体操みたいな動きはよくない。



 というところで魁皇入場で大騒ぎ。地元の英雄だ。今日の相手は業師安美錦。



○鶴竜と●豊真将
 頭と頭でぶつかるすばらしい立ち合い。激しい付き合いの末、低い豊真将を起こして、突きだす。いやあ充実している。

 鶴竜は今場所、白鵬との一番が楽しみなひとり。やられるのではないかとドキドキする最有力候補だ。

 豊真将の美しいお辞儀。野球賭博のとき何度も書いたけど、豊真将と高見盛があれをやっていたら、私の野球賭博問題に関する意見は根底から変っていた。

○栃煌山と●朝赤龍
 いま日本人最大の希望の星・栃煌山(笑)。三役以上の日本人はポンコツ魁皇と栃煌山だけ。
 場所前、栃煌山が激しい稽古をして、それで息が上がらないと舞の海が絶讃。これは期待できる。
 朝赤龍が変化するが栃煌山相手にせず楽勝。
 朝赤龍が大賞の朝青龍が引退してから元気がない。今じゃ部屋頭か。高砂部屋、落ち目だな。

○安美錦と●魁皇
 場内のすごい歓声を浴びて魁皇登場。昨年の対戦成績は5対0で魁皇。あの安美錦が魁皇が苦手なのが不思議。
 魁皇コール。
 しかし今場所はいいとこなしに敗れる。いい立ち合い。右四つから、体を起こし、左下手をもったまま、右をおっつけるようにして寄り切る。安美錦の勝ち。歓声が一気に溜め息に変る。
 一場所でも長く相撲を取って千代の富士の記録を超えて欲しいのだが、この内容では今場所の勝ち越しは難しいだろう。途中休場もありうる。心配だ。

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○琴奨菊と●日馬富士
 去年一年の成績は琴奨菊の5対1。なんで日馬富士がこんなに琴奨菊が苦手なのか、私には七不思議のひとつ。琴欧洲の豊ノ島苦手などは簡単に説明できるのだが。
 今場所は日馬富士は肩の怪我をしている。出場が危ぶまれたほど。となるとますます琴奨菊有利か。

 日馬富士が右の張り差し。琴奨菊、相手にせず楽勝。いやあ今日は気分がいいなあ。モンゴル力士のバカふたりが張り差しをして、それを相手にせず受けた方が勝っている。う〜ん、気分がいい!



 やはり張り差しは朝青龍が流行らせたものだ。白馬と日馬富士というモンゴル系が跡を継いでいる。日本人で影響を受けていて多用するのがバカキセノン。
 白鵬も連勝中にいくつあったことか。あれさえなければもっと連勝を評価するのだが。
 勝ち続けることはとにかく偉いことだけど、白鵬連勝には悪い内容の相撲も多い。

 入場前の栃ノ心が映る。緊張している。このひとは緊張した顔がいい。そのことでガチンコ感が盛りあがる。



○把瑠都と●稀勢の里
 こりゃひどい。立ち合い、把瑠都が左に変化。へんなかっこうの四つになる。稀勢の里は右腕が万歳状態。あっけなく寄り切って勝つには勝ったがどうしようもないひどい相撲。さらにはバタ足。タコ踊り。ひどい。あまりにひどい。
 把瑠都はまだ迷いの森を彷徨っているようだ。これじゃ今場所も期待できない。よかったのは大関にあがるまで。あがってからのひどいこと。それでも地力があるから毎場所白鵬とは名勝負になる。でもそれは白鵬が名勝負にしているのだろう。激しく落胆。

○琴欧洲と●阿覧
 一転してこちらはすばらしい相撲。琴欧洲、完勝。惚れ惚れする内容。肩からぶつかる立ち合い。素早く差して両上手を取る。阿覧には取らせない。怪力阿覧になにもさせなかった。ブルガリアが大嫌いなロシアに勝ったのも満足。
 アナも絶讃だが北の富士は辛口。阿覧のような大きい相手にはこういう相撲が取れるのだと。
 まあたしかに言われてみればその通り。天敵の豊ノ島や安美錦相手だと竦んでしまう。
 とはいえ最高の一番。がんばれよお、カロヤン!



○白鵬と●栃ノ心
 栃ノ心が左に回りこむようにして上手を取りに行く。これは成功して取ったのだが、すぐに白鵬に切られて、巻き替えられる。白鵬の巻き替えの巧さが目につく。
 白鵬が素早く両まわしを取った。ここからなら栃ノ心も力を出せるかと思った瞬間に、白鵬が寄る。こらえた瞬間、上手出し投げ。
 強いのだけど、北の富士が栃ノ心の上手を切ってからの巻き替えのあたりを、巧いね、巧いねと絶讃しているのが耳に残った。
 これで谷風の記録に並んだ。まあ谷風の記録は気にしなくていいと思うが(笑)、でもこれを言いだしたのは白鵬自身。みな白鵬が江戸時代のそんな記録まで意識していると知って驚いたものだ。

 白鵬が賞金を大切そうに受けとる姿勢は美しい。朝青龍がぶ厚い賞金の束のヒモの部分をちょいと抓み、「酔っぱらいの持つ寿司折りじゃないんだ」とウチダテを激怒させたあれは、いくら当時朝青龍を擁護していた私でも庇いようがないほどひどかった。あの辺はもう品格以前に人間性なのだろう。



二日目
 白鵬、張り差しで自滅! 連勝、止まる!



 白鵬の連勝が63で止まった。
 敗因は、この「相撲日記」でたびたび指摘してきた「張り差し」だった。

 十両のころから応援してきた白鵬が、大鵬の連勝を越え、談合横綱千代の富士のインチキ記録を超え、角聖双葉山の記録に迫るというのは、胸高鳴る話だったけれど、じつのところ私自身はまったく高まっていなかった。


 大きなモーションで右腕を振りまわすような張り差し。このあとも雑な取り口で、とても63連勝もしている横綱の相撲ではなかった。

 何度も何度も書いてきたけれど、連勝の中身がちっともよくなかった。バカらしいので数える気もないけど、63連勝の内、無意味な、うす汚い張り差しが20近くあるだろう。この「相撲日記」はそれを追っているから数えれば判る。あまりに虚しい作業なのでする気もないが……。
 そのたびに危なくなり、やめなければダメだ、なんでこんなことをするんだと、しつこく書いてきた。でも不安なのか、やめなかった。連発した。

 張り差しとはチンピラの威嚇である。こんな醜い立ち合いを連発したつわものはいない。引退に追いこまれた「品格のない横綱」以外は。
 チンピラの恫喝に委縮するものには効果があるが、ためらわず突進してきた者には、確実に立ち遅れる。脇が開いているのも缺点になる。

 稽古不足の朝青龍が、その「チンピラの威嚇」で、とりあえず序盤戦を勝ち続け、実践を稽古として躰を仕上げて行く方法は、彼固有の戦法としてある種の価値があったかも知れない。白鵬にそれはまったく無意味だった。単に先輩の悪癖を真似ただけだ。昨日の白馬、日馬富士、モンゴル人力士はみなあの「引退横綱」の悪影響下にある。

 張り差しをかいくぐり連勝を止めたのが、「品格のない横綱」の影響を強く受け、日本人力士としては最も張り差しを多用していた稀勢の里であったのは皮肉だ。
 勝ちも負けも張り差しがポイントだった。

 人後に落ちない白鵬好きなのに、今回の連勝をさほどよろこんでいなかったのは、その内容による。
 なんとも残念なのは、かつて白鵬に張り差しは必要ない、やめるべきだと言っていた舞の海のようなひとまで、勝てば結果オーライなのか、ここのところまったく言わなくなっていたことだ。舞の海にこそ、「張り差しは止めた方がいい。もし連勝が止まるとしたら、これが原因になりますよ」と、嫌われることを承知で言い続けて欲しかった。

 場所前、誰もが双葉山の記録を塗りかえるのはもう当然のこととして、その日その時を語っていた。
 私は、地力のちがいで更新するのかも知れないが、とてもとても両手をあげて万歳と言える連勝ではないと思っていた。

 負けたらひとは手の平を返す。なぜ連勝が途切れたか、今度は百家争鳴、侃々諤々、喧々囂々となることだろう。張り差しから敗因を論じる人もいると思う。ならなぜ連勝中に言ってやらなかったのか。

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 白鵬が、また双葉山の記録に挑む機会はあるだろう。まずは双葉山以前に、自信の63連勝に挑むわけだが。
 そのとき、もう張り差しはないだろう。彼はその無意味さを覚ったはずだ。そしてそんなのに頼らなくても勝ち続ける強い心を得たろう。
 今度こそ心から応援できる。

 好きな力士の連勝記録が途絶えた。
 残念だけれど、相撲ファンとしては、筋が通り、すっきりした気分でもある。

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【九州場所2日目】白鵬が土俵下に転落した瞬間、場内のいたるところでファンが立ち上がり、殊勲の稀勢の里に祝福の拍手を送った。

 大分県の大野昌男さん(60)は「歴史的な瞬間に立ち会えて、きょうのチケット代は安いと思う」と昂奮気味。その一方で「白鵬が70連勝すると思っていたのでまさか、という感じ」(福岡市、会社員)の声もあり、反応はさまざまだ。

 相撲史に残る波乱劇が起きた、この日の観客動員は定員(約7500人)の半数にも満たない3480人(昨年比308人減)。2年前から連結式の座布団が導入されたため、横綱が敗れた時に定番となっている座布団乱舞も見られず、向正面の座布団が1枚だけむなしく舞っただけだった。升席の上部は空席ばかりが目立ち、放駒理事長(元大関・魁傑)は「歴史的な瞬間を見られたわけだから、きょうはお客さんも満足してくれたと思うが…」と話すにとどめた。 (スポニチ)


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 把瑠都の変態はりま投げ!





 まあ、ひどい相撲内容で、相撲的に語る部分はないのだけど、しかしとんでもない大技(笑)だったのはたしか。どう見てもこれはプロレス技である。しかもこういう豪快なプロレス技は、相手の協力があって初めて成立するのだが、ガチンコの大相撲で、190キロが150キロをこう決めたのだから、これはもう凄まじいことになる。

 プロレスの場合は協力し合って出来上がる技だから危なくないし、マットは軟らかい。
 総合格闘技のリアルファイトでは、こんなプロレス的な派手な技はぜったいに出ない。成立しない。
 ということを考えると、これは日本の相撲でのみ出現した、「歴史的トンデモ技」であろう。

 同時に落ちたが、把瑠都は「ゴチンという阿覧の頭の音がしたから、勝ったと思った」と語っている(笑)。
 土俵がいかに硬いことか。
 大惨事になってもおかしくないほどの荒業だった。

 阿覧が無事で、翌日からもケガもなく出場していることを確認してから書いた。
 しかし、相撲を知らないこういう外国の大男達が力任せの凄技を出したら、そのうち事件が起きるような気もする。
 かといって、相撲の技の怖さを知っている日本人力士による安全策。「ほとんどの決まり手が寄り切りと押しだし、引きおとしのみ」でも困るのだが……。

 把瑠都は相撲をよく研究している。その証拠に内無双のような小技も上手い。だから「相撲を知らない外国人力士」と言ってしまうのは失礼なのだが、追いこまれたときには本能的な力業になる。それによって出現したこの大技だった。
 「すごいなあ、相撲はおもしろいなあ」と、わくわくすると同時に、土俵上で死人が出てもしょうがない激しいものであることも知った一番だった。

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 琴欧洲、早くもバッタリ……

 終盤崩れるのは覚悟しているが、せめてそれまで10連勝ぐらいでいってくれと願っていたカロヤンに早くも土。蛇に睨まれたカエル状態になる天敵安美錦だからしょうがないが、あまりにさびしい。これで豊ノ島がもどってくるから前途多難だ。



三日目
 ひどい時代だ……

大相撲九州場所3日目(16日、福岡国際センター、観衆=3686)NHK総合が15日に放映した大相撲九州場所2日目の視聴率は、白鵬が敗れた直後に関東、関西とも瞬間最高の14・0%(ビデオリサーチ社調べ)を記録したことが16日、分かった。午後5時台の平均視聴率は9・5%(関東)。14日の日曜日に放映された初日の平均は10・5%で、NHK広報部では「平日の在宅率を考えると、月曜に行われた2日目はたくさんの方々の関心をいただいた。特に最後で関心が高くなったようだ」としている。 (ニッカンスポーツ)

「平日の在宅率を考えると」なんて言ってるが、若貴ブームのころなんて、いやそのずっと前の柏鵬時代だって、初代貴ノ花のころだって、相撲はもっともっと視聴率を取っていた。双葉山の記録を超えるかも、という場所なのに、この数字。
 しかしまあ時代的にはしょうがない。私なんかクラスの男子で星取表を作って相撲を取っていたし、上級生は確実に強かったし、相撲は毎日の遊びの中にあった。いまはなにもない。男の子の遊びの原点としての相撲がない。人気低下は仕方ない。

 若貴ブームのころだってもう日ごろの遊びとして相撲を取る児童はいなかった。ではあれは何だったのかというと、ただの芸能的なブームである。ミーハーが寄ってきて、去っていっただけだ。だから相撲協会は「若貴ブームのころの人気よ、もういちど」と思ってはならない。あんなのは一発屋と同じで、なんの価値もない。一過性のものだ。

 貴乃花が埼玉県のこども相撲に関わり、熱心に普及を続けている。最初のころは参加者が100人ほどだったのに、今では千人にまで増えたとか。
 相撲を取れる土俵のことや、コンクリートの校庭や、問題は山積しているが、相撲協会がやるべきことはそういう努力だ。外国人力士が多いこと、日本人スター力士がいないことなど、たいした問題ではない。日本人スター力士が出たとしても、それで寄ってくる連中など本物のファンじゃないのだから。

 相撲と同じような形の先細りの不安を抱えた分野に将棋があるが、こちらは相撲と違って土俵の問題がない。家庭用ゲーム機も味方してくれている。その点相撲の方が、より不安点が多い。

 もっとも私の場合、世間はまったく関係なく、むしろ世間と離れていることに快感を感じるから、こういう視聴率とかなんとかはどうでもいいのだが。

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 稀勢の里、苦手日馬富士に勝つ!


 昨日の「日馬富士が琴奨菊を大の苦手にしている」もおもしろいが、この「稀勢の里が日馬富士を大の苦手」もおもしろい。なんと10連敗中。

 それでも日馬富士と琴奨菊は、「体力のない業師である日馬富士が、琴奨菊の突進力に負けてしまう」と、割合理解も出来る。

 稀勢の里の日馬富士苦手はどう解釈するのか。
「業師日馬富士の巧さに、稀勢の里が翻弄される」とでもするのか。

 昨日、白鵬の連勝を止め、「ヒーロー」とされているのだから、今日は負けられない。日馬富士の体調不良もあり、一方的に突きだした。

 今場所のキセノンは、白鵬の連勝を止めた男として、それに見合うだけの活躍、成績を残さねばなるまい。

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 把瑠都、今日も怪物相撲!

 これは凄かった。把瑠都が安美錦をつり出したのだが、なんだか次元が違うのである。相撲のつり出しは、当然ながらつられる方も抵抗するし、なによりみな150キロもある大男であるから、そうそう派手な形にはならない。栃ノ心が躰を反らせ、腹の上に載せるようにしてつったときなど、場内は大いに沸く。
 このときのそれを擬音で表すなら「ふぐぅ、うぉぉぉ!」という全身の力を集結した叫びである。猛獣の咆吼だ。

 ところがところが、把瑠都のこのつりは、いわゆる「おとなとこども」だった。おとなが、こどもをもちあげて、ちょっと高い椅子にすわらせてやるような「ひょい」だったのである。

 いままでいろんな吊りを観てきたが、これほど軽々と、高く、しかも力を入れてようにも見えず、楽々と吊ったものは観たことがない。呆れた。

 把瑠都の身体能力は、大ファンの私が思っているよりも、さらにもっとすごいようだ。

 しかし相変わらずバタ足で、あれではそのうちまたケガをするぞと心配でならない。
 カラ足を踏んだことがある人なら判るだろうけど、それがたった5センチ程度でも、とんでもないショックになる。その気になれば5メートルのところから飛びおりても無傷なのに、たたらを踏むと5センチでも大怪我に繋がる。
 把瑠都のバタ足がケガに繋がるのではないかと心配だ。

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 白鵬、また張り差しもどき

 左手を出す、張り差しもどき。だめだこりゃ、ぜんぜん反省していない。


四日目

 魁皇、ヒーロー稀勢の里に快勝!


 白鵬の連勝を止めてヒーローになった稀勢の里は、その名にふさわしい成績を残さねばと、昨日も大関日馬富士を破って2勝1敗。

 連日、熱狂的な応援を受ける魁皇も、ここまで2勝1敗。しかし苦しい相撲が続いている。

 今、いわゆる「勢い」というもので、圧倒的に稀勢の里に分があることは、熱烈な魁皇ファンでも認めざるを得なかったろう。

 だが魁皇が魅せた。24歳の稀勢の里の猛攻に一歩も引かず、激しく応酬し、最後は土俵下に突きだす完勝だった。じつに感動的な一番だった。私はテレビの前で拍手を送った。

 魁皇はもう文化財のような存在で、いてくれるだけでいいであり、ドンとぶつかって、すぐに引きおとしとか、内容に不満はあっても、とにかく8勝7敗でがんばれなのだったが、こんな感動的な相撲を見せてくれると感激もひとしおだ。

 どう考えても不利と思っていた稀勢の里に完勝だから、場内の歓声は最高潮。こういうのはファンはうれしいだろうなあ。
 直方には今日も勝利を祝う花火があがった。魁皇のお母さんは、テレビの前で歓声をあげ、すぐに窓辺に駆け寄って花火のあがる方向を見たのだろう。(これ、先日ドキュメントでやっていた。なかなかいいシーンだった。)

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 豊真将、豪快!


 豊真将が豪快に琴欧洲を投げすてた。受け相撲だった豊真将は二場所前から積極的に攻めの相撲を取るようになった。番付を挙げてからはまだそれが成績に繋がっていないが、かつての低く構えて、落ちないようにしていた相撲とは今の相撲は違っている。今場所も責めている。

 今日はそれが見事に結実した。琴欧洲をぶん投げた。これは精神的にも大きな自信になるのではないか。

 なのにそのとき私は、「あ、そんな、いいって!」と叫んでしまった。
 ひとはこういうときに本音が出る。つまり私は、「存在してくれるだけでうれしい豊真将」だからして、8勝7敗でも、いや極端な話、「5勝10敗でも、また落ちて上がってこい」と考えていたらしい。一方、「琴欧洲には優勝に絡んでもらわないと困る。結果はともかく、終盤までは白鵬に並んでいてくれ」と思っていたから、大好きな豊真将が大関を横転させた一番なのに、「よけいなことをするな!」と思ってしまったのである。これは豊真将に申し訳ないことだ。しかし自分が豊真将よりも琴欧洲をより応援しているらしいと確認した。

 もちろんこれで豊真将が優勝争いに絡むような活躍、大関を狙うような活躍をしてくれるのならまた話は別である。
 ただ私はこの時点でそういう解釈をしていた。琴欧洲をぶん投げた豊真将に、「あ、そんな、よけいなことを!」と思ってしまったことに一番驚いているのは自分自身である。

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 白鵬、また張り差しもどき

 また手を出すという形の張り差しもどき。このバカは負けた反省がない。


五日目
 客がいなくてさびしい風景

 正面解説は北の富士。
 向こう正面は佐ノ山こと千代大海。つまらん解説。というか解説になっていない。ただただ長く大関にいた以外に意味はない人だから、語るべきコトバももっていない。空虚。

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○若の里 ●白馬
 ともに4戦全敗。相撲の取組はこういう残酷なことをどんどんやる。
 白馬の相撲が良くない。変化したり張り差ししたり、今日は威力のない双手突き。すぐに引いてしまう。この迷いから脱出しないと辛い日々が続く。

○阿覧 ●栃ノ心
 グルジアとロシア。もちろんグルジア応援。とはいえ国が逆だったとしても栃ノ心応援。この力士が好きだ。
 さて今日はどうなるか。4回の対戦成績は2対2。
 がっぷり四つになってのつりあい。あっけなく阿覧の寄り切り。
 北の富士が栃ノ心の上手が深いと指摘。稽古場でも言われているが直らないとのこと。深くても、それで潜られても怪力で対処できるからだろう。しかし阿覧ぐらいの怪力に腰を低くされるとつらい。栃ノ心の未熟な面が出た一番だった。
 阿覧はこれで初白星。

○栃煌山 ●琴奨菊
 明徳義塾の先輩後輩。対戦成績は4対4。去年は栃煌山が勝ち越しているがみな引き技とかの逆転。今日は正面から勝ってほしい。ほんとにここのところの栃煌山の充実ぶりはすばらしい。
 今日は差し勝って両差しになり一方的な勝利。北の富士が「ふたりの力が逆転したね」

○魁皇 ●北太樹
 北太樹は魁皇と初対戦とか。あらためて遅咲きだと知る。
 魁皇が元気な北太樹に攻めこまれ、引き技を出したために、より不利な体勢となる。
 左下手を取った北太樹。魁皇は回しが取れない。そのまま寄られたとき、土俵際で肩越しの右上手を取る。そこからの回し一枚での上手投げ。豪快に決まった。場内熱狂。

○豊真将 ●把瑠都
 すでに全勝は把瑠都と平幕の翔天狼のみという寒い状況。
 しかしまあ客がはいっとらん。ガランガラン。

 豊真将が把瑠都を破った。正面からの堂々の相撲。見事見事!
 仕切り線のずっと後ろで仕切る。四つになり、把瑠都十分の態勢で寄られるが、そこで巻変えて両差しになる。そこから把瑠都をつる。一瞬あの把瑠都の体が浮き上がった。これで把瑠都は慌てた。つり返そうと、力を入れたところで体を入れ替え、そのまま浴びせ倒した。完勝である。
 把瑠都はよほど悔しかったのか、負けても苦笑いするほど陽気なのに、怒りの表情。そのあとのレポートでも、珍しく大声を上げ、その辺の物に当たり散らしたとか。珍しい。乾杯が悔しかったのだろう。そして、全勝だから優勝はと問われたとき、まだ五日目ですよと応えたらしいが、白鵬に土がついたことから、まだしたことのない幕内最高優勝を意識していたのだろう。横綱大関でまだしていないのは把瑠都だけだ。

○稀勢の里 ●琴欧州
 かつてのライバルは大きく差がついた。去年は琴欧州の6連勝。
 今日は大相撲。すばらしい一番だった。
 四つになり、最初に責めたのは稀勢の里。そこから琴欧洲が反撃して土俵際まで攻めたてる。今までならここで決まっていた。しかし今場所の稀勢の里は残す。もういちど琴欧洲が攻めたてる。また残す。今度は稀勢の里の攻め。これを琴欧洲も凌いだが、腰が伸びて高くなった。あとは稀勢の里の攻めをひたすら耐えたが最後に土俵を割る。
 白鵬を破った稀勢の里の気力充実が目についた一番だった。

 これで稀勢の里は大関横綱戦をクリア。3勝2敗。果たして何勝まで延ばせるか。


六日目
 力士と運転

 力士とみられる人物が自動車を運転している映像がインターネットの動画サイト「ユーチューブ」に投稿されていることが19日、明らかになった。日本相撲協会は力士の運転を禁止しており、三保ケ関部屋の力士とされる。

 映像では力士とみられる人物数人が自動車に乗り込み運転。九州場所が開かれている今月の撮影とされる。

 相撲協会は1985年、幕内だった水戸泉(現錦戸親方)が起こした事故を発端として力士の運転を禁じている。しかし、2000年に当時幕内の闘牙(現押尾川親方)が死亡事故を起こし、翌年の初場所の出場を自粛。07年には旭天鵬が人身事故を起こし、その年の夏場所で出場停止処分を受けている。

 07年には十両以上の関取による力士会で運転許可を求める動きがあったが、相撲協会から退けられた経緯がある。(共同)


 旭天鵬はこれさえなかったら今まで連続出場になる。運転なんぞをしたためにたいせつな記録を失った。
 闘牙の死亡事故はひどかった。押して引き落とす相撲内容も大嫌いだ。そいつが人格者だった大麒麟の押尾川を継いだのか。釈然としない。

 力士は運転禁止のイメージが強いので、いまだに自分で運転して場所入りする貴乃花親方を見るとへんな気分になる。貴乃花と運転が繋がらない。

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 解説に関ノ戸

 向こう正面解説に岩木山の関ノ戸親方。うれしい。昨日の佐ノ山とはおおちがい(笑)。
 魁皇には一度も勝てなかったとか。あらためて魁皇もたいしたものだと思う。岩木山に一番も入れさせなかったのか。

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 稀勢の里、充実!

 かつての日本人力士最大期待の稀勢の里が、現最高期待の栃煌山に快勝。一方的。もしかしてキセノンは白鵬を破って一皮むけたのか。栃煌山にここまで完勝する力士もそうはいない。いよいよ大器、開花か!?


 魁皇、連続して魅せる! ○魁皇 ●鶴龍

 好調な1敗同士の対決。もう鶴龍は魁皇越えをずっと前に果たしたし、負けることはないと思っていた。なのに魁皇の今日のがんばり。左腕を引きこんで、土俵際、背中越しの上手で放り投げてしまった。信じがたい快勝。
 負け越すかと心配した魁皇がここまで5勝1敗。しかも勝った内容が魅力十分。もう怪我さえなければ故郷での勝ち越しはだいじょうぶだし、これからの千代の富士超えも現実味を帯びてきた。誠に寿ぐ。

 バカ白鵬、無反省


 連勝を止められた張り差しに反省があると思い、これからあんな下品なものはせずに連勝記録を作るだろうと書いたら、今日もまた張り差し。だめだ。なおっとらん。もう白鵬の応援はやめる。

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 連日国会中継があり、相撲は5時5分からしか見られない。
 相撲に負けないぐらい国会もおもしろい。仙石総理大臣(笑)が自衛隊を「暴力装置」と言い、蓮舫はあの写真撮影に関する申し込み理由を係から「示唆された」と他者のせいにしていたが、「示唆はされていなかった」と今になって認めた。柳田稔にいたってはバカらしくて語る気にもなれない。ハッキリ、こいつの政治生命は終った。

 ただ、おもしろいと言っても、白熱の攻防に興味を抱くとかいうのではなく、あまりになさけない現状に苦笑するようなものだから、おもしろくはあっても楽しくはない。
 柳田のようなカスが馬脚を晒せば、一介のタレント候補だと思っていた丸川珠世が、切れのいい質問で頭角を現したり、見せ場はある。

 私としては、相撲中継を録画しておいて、国会中継を見るのが理想なのだが、BSはないので、それが出来ない。


七日目
 初の満員御礼

 今日は、白鵬が勝ち続けていたら双葉山の69連勝に並んだ日。そのこともあって前売りが売れていた。双葉山の故郷や、白鵬が観光大使を勤める北海道滝川市(あの白鵬米を作ったところ)からも団体で来ていたようだ。7日目にして初の満員御礼。
 観客がいるのはいい。熱気が違う。安心してみていられる。画面上部がガラガラだとさみしくてならない。やっと大相撲を観戦している気分になった。しかしこれ100%満員ではない。85%入れば満員御礼を出してもいいことになっている。そのレベルだろう。それでもいつもとはぜんぜん違う。

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 豊ノ島、好調!

 全勝は消え、1敗力士が8人いるとか。豊ノ島もそのひとり。今日も勝って6勝1敗。まちがいなく勝ち越して来場所は低位置の上位にもどってくる。琴欧洲は戦々兢々か(笑)。このひとと安美錦は上位にいてもらわないと困る。来場所が楽しみだ。

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 栃ノ心の未来

 栃ノ心が琴奨菊に完勝。琴奨菊はもう完全に「大関候補」としての役目を終えている。次々に能力ある後輩に抜かれている。今後も三役に定着することはあっても、そこで大勝ちを連続して大関にあがることは考えがたい。
 栃ノ心はこれでまだ3勝4敗と黒星が先行している。それでもこのひとの未来は洋々と開けている。グルジア初の大関となり国民的英雄となる日も近い。なんとしても今場所は勝ち越して小結の座を守りたい。

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 安美錦、目論見が外れる(笑)

 安美錦と阿覧。相撲がまだ判らず、稼ぎの手段としか思っていない阿覧に、相撲とは何かを教えてやれと安美錦に注目する。阿覧が前に出る。安美錦、慎重に見ている。必ず引き技をやるから、そのときに押しこもうと読んでいる。しかしあまりに慎重で、様子をうかがうように前に出てこないものだから、阿覧が前に出る。それでそのままあっさりと土俵を割ってしまった(笑)。
 解説も同じ事を行っていた。「阿覧が引くから、そのときに出ようと思っていたんでしょうね。でもあまりに安美錦が出て来ないものだから、阿覧が引くことなく前へ前へと出てしまったわけで」と。なんだか、盛りあがるぞ盛りあがるぞと思わせて盛りあがらなかったひどい一番。でもこれも力士の心理が読めておもしろかった。

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 豊真将の肘、八角の解説!

 豊真将が嘉風を攻める。土俵際、嘉風のうっちゃり。これも躰の反った見事なもの。同時に落ちる。行司軍配は豊真将。物言い。相撲内容は豊真将。どっちだ。

 ヴィデオを見ると、うっちゃられた豊真将が落下しつつ右肘を引っこめている。それが勝因になった。軍配通り。あそこで庇い手のように腕を伸ばしていたら「先に落ちた」と判定されたろう。
 それを八角が指摘する。「豊真将はここで肘を引っこめています」と。「ああ、なるほど、そうですね」とアナも簡単。「これは稽古していないと出来ないんです。咄嗟に出るものですから」という八角の指摘は適切でうまかった。多くの好角家が唸ったことだろう。

 八角(北勝海)は、運と実力を出しきって横綱になった人だった。
 横綱になる資質と運を持ちつつも、なれないまま終る力士は多い。魁皇もそのひとりだろう。何度かチャンスはあったのに活かせなかった。でもなっていたら、とうのむかしに引退していたから、どっちがよかったかはわからない。国民的人気は今の方が高いだろう。短命横綱で終っていた。小錦もなれなかった。しかしこれはなって当然の成績だったのに外国人横綱を作ることに躊躇した協会の問題だ。曙はその小錦問題があったからすんなりなれた。小錦は運がなく曙にはあったと言える。
 北勝海は大関止まりの能力だったろうが、実力と運をぜんぶ有効利用して、なった。躰に恵まれていない分、稽古で補った人だから、こういう解説にも深味があり肯んじることが出来る。

 そういえばその八角も兄貴分の偉大な横綱とはいま不仲らしい。人望のない人間はいろんなところから破綻して行く。でもあのひとは理事長になるのだろうか。なにしろ国民栄誉賞だし(笑)。



 放駒が理事長になるとは想像だにしなかったと書いた。実際、理事長の座はもう一門の力から流れが決まっていて、事実そうなっている。番狂わせはない。今回のこれが最大の変事だろう。
 だが考えてみれば、放駒(魁傑)は談合相撲をしない人だった。だから大関からも陥落している。そして談合横綱が大記録を作りつづける時代に、唯一それに逆らう横綱大乃国を育てた。
 いま、相撲が未曽有の危機的状況にあるとき、じつに相応しい理事長とも言える。私は外部の人間が理事長になったら相撲は終りだと思っていた。それは理事、力士、みな思っていたろう。それをなんとか阻止して座に着いたのが放駒なのは快挙なのかも知れない。



 とにかくまあ今日の八角の解説はよかった。八角の解説に見合う、いい相撲も多かった。

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 強いぞ、稀勢の里!

 同じ大關候補ではあるが、稀勢の里は前頭に落ちている。鶴竜は関脇に昇った。鶴竜の巧さに稀勢の里が翻弄されると読むところ。
 ところが一方的な相撲。稀勢の里、強い。白鵬に勝ってから何かが変ったようだ。相撲の中身が違う。いま星は5勝2敗だが、もう上位陣との対戦はすべて終っている。今場所は確実に二桁行くだろう。日本人力士最大の期待がもどってきた。

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 把瑠都、今日もへんな相撲

 把瑠都がまた左に変るような半端な立ち合い。しかしまたそれも読みになかったのか栃煌山もおどおどしたような半端な立ち合い。すぐに把瑠都が捕まえて、ここからはいつもの怪物相撲。快勝なのかもしれないが、立ち合いが悪いものだから、どうにもスッキリしない。とりあえず星はいいけれど、今場所の把瑠都は変だ。

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 白馬の悩み

 対して琴欧洲はすばらしい相撲で快勝。でもこちらは星が悪い。これでやっと白星先行の4勝3敗。白鵬が負けたことよりもこれの方がわたし的には読みちがいだった。悪くても10日目までは快進撃すると思っていた。

 白馬の悩みが気の毒になるほどだ。相撲というものを知り、押しも投げも変化も学び、すべてを出しきって上位まで来た。白鵬の同期生だ。でももう何をやっても通じなくなってしまった。これからどうしたらいいのだろう。そんな嘆きが聞こえてくるような毎日の相撲。見ているこっちも切なくなる。

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 今日も魅せた魁皇!

 魁皇が朝赤龍と23秒の熱戦。魁皇コールが響く中、朝赤龍も魁皇の差し手をうまく切ってまわしを取らせない。充分に巧さを発揮した。最後、堂々の寄り切りに場内は大昂奮。初日に負けただけで1敗を守っているが、なにより相撲内容がいい。まさか今場所、こんなに強い魁皇を見て楽しませてもらえるとは思わなかった。初日に敗れたときは、負け越しどころか途中休場すらあると思った。うれしい誤算。これは今場所、最高のうれしさ。故郷だからなのか。とにかく魁皇の奮闘ぶりは並ではない。

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 今日はまともな白鵬

 白鵬がきれいな立ち合いの、いい相撲で、北太樹を投げすてた。北太樹も横綱に果敢に挑んでいった。
 2日目、3日目、4日目、6日目と張り差し。バカとしかいいようがない。
 負けがなかったら今日が69連勝、明日は前人未到の70連勝に挑む日だった。



中日
 稀勢の里、充実!

 攻めたのは朝赤龍。得意の低い姿勢になる。稀勢の里の左を封じて動かせない。
 稀勢の里は慌てなかった。巻き替え、上体を起こし、次第に自分に有利な姿勢に持って行く。
 37秒かけて突きおとした。あわてないのは成長か。白鵬に勝ってから相撲が変ってきた。

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 安美錦、栃煌山を楽々と料理

 うまいなあ、先手先手で攻めて、栃煌山になにもさせず、簡単に寄り切ってしまった。
 栃煌山はこれで4勝4敗。来場所大関取りに挑むための今場所の二桁勝利は厳しくなってきた。
 でも今日のような相撲ではまだ大関は無理。
 立ちはだかるヴェテラン。

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 把瑠都、勝つには勝ったが

 また半端な立ち合い。7勝1敗でも中身が酷い。魁皇と対象的。でも自力はあるから白鵬とは名勝負になるだろうけど。

 キラー魁皇、全開!

 豊真将の攻めを受けながら、出た、小手投げ! 豊真将の肘が極まっている。あぶないなあ。心配なのは豊真将の肘だ。
 地元の熱狂的な声援を受けながら、魁皇の快進撃。星ではない。中身だ。しかしこれは嬉しい誤算。たいしたものだ。


九日目
 国会中継があり17時5分からの放送。BSがあれば相撲を見られるが、あったとしても国会を見たろう。不愉快になるだけの応答だけど目を逸らしてはならない。

 土日はそこそこの満員になったが、月曜にもどってまたもガラガラ。まあそんなものだ。
 今どき平日に相撲に行けるよゆうはのあるひとはそうはいない。



 正面解説は玉ノ井。大関栃東。私はこのひとがあまり好きではない。一般的には力士としても解説者としても評判がいい。しかし私からするとこのひとは、朝青龍全盛時代に唯一対抗した日本人力士として、いわばそういう危機感、外国人力士嫌いの感覚から、現実以上に高評価されているのであって、冷静に歴史を俯瞰してみれば、さほどのものではないと気づく。外国人力士に抵抗のない私からすると、今の稀勢の里みたいに、過剰な期待を寄せられているB級力士だった。
 日本人力士の優勝はこのひとまで溯らねばならない。もう4年以上ない。それも私にはどうでもいいことだが、そのことにこだわるひとには、このひとは今もスターなのだろう。

 椎名誠さんのエッセイに、仕事をしながら漫然と相撲を見ていると、北の富士や舞の海の解説がよく、このごろのひとでは元栃東がなかなか理論的でよいというのがあった。しかしそれは忙しい椎名さんが仕事の片手間にたまに見ているからであって、本気で毎日大相撲を見て解説者分析(笑)をするなら、玉ノ井は誉めるほどのひとではない、と気づく。

 もともと好きでもないのに、今日は風邪気味なのか鼻の詰まった声で聞き苦しい。不快だ。ということで音を消して、結果だけを簡単に書く。

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○豊真将 ●稀勢の里
 対戦成績は3対3。頭からぶつかる。突っ張りあいから四つになるいい相撲。稀勢の里の寄りを、豊真将が引きながらの右上手投げ。星はこれでともに6勝3敗。豊真将、順調だ。

○鶴竜 ●北太樹
 鶴竜は勝って5勝4敗ともりたりない星。西関脇なので横綱大関戦はこれからだ。勝ちこせるのか。心配になる。


○白馬 栃煌山
 白馬のうす汚い張り差しに、栃煌山は動じず突っこんだ。一方的に突きおとしたが足が流れてしまい、白馬が宙を舞っている間に手が先についていた。相撲で勝って勝負で負けた内容。
 朝青龍の残した張り差し連発は、白鵬とこの白馬に受けつがれたようだ。元々興味のある力士ではないが、ここのところの張り差し連発で、しみじみ嫌いな力士になった。なんの威力もなかったが、とりあえず勝ったから、なにをしたらいいかわからなくなっている白馬はまた出すことだろう。

○琴欧洲 ●豪風
 ちいさい豪風に攻めこまれ、土俵際まで後退するが、回りこみつつ左からの上手投げで、かろうじて、勝つ。こんなにちいさな相撲になってしまった。心配だなあカロヤン。

 おお、向正面解説は高田川(安芸乃島)ではないか。なら音声を聞きたい。でも玉ノ井の鼻の詰まった声は聴きたくない。悩む。

○魁皇 ●阿覧
「途中から呼びだしの聲が聞こえなくなるぐらいの大歓声」とアナが言う。でもガラガラ。ほんとに空いている。
 四つになっての力相撲。右上手を取った魁皇が力で阿覧を圧倒した。場内大昂奮。
 ここのところ魁皇の勝ちパターンは、ドンとぶつかってスッと引く、という省エネ相撲だった。今場所は力強い。すばらしい。

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●着物姿の美女は誰なのか!?

 ずっと書こうと思っていたのだが、今場所毎日ずっと砂かぶりにすわっている美女は誰なのだろう。画面の左真ん中。目立つ目立つ。ほとんど着物だが洋装の時もあった。堅気ではない(笑)。ふたり並んでいる。芸者か。
 今日はそれ以外にも白塗りした、これは明らかな芸者衆が観覧していた。

 過日話題になったように、大相撲は刑務所の中でも見られる。よって子分が親分の愛人をあそこに映して、寛ぎを届けるとともに(笑)、だいじょうぶです、待ってますよと安心させるのだそうな。

 あの美女はそうなのだろうか。
 好みのタイプなので、いてくれると楽しい(笑)。

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○把瑠都 ●栃ノ心
 楽しみな一戦。
 土俵中央がっぷり四つになっての力相撲。栃ノ心が把瑠都を吊り上げようと試みる。それを把瑠都が吊り返して寄り切る。勝ち越し。
 高田川が真っ向から行った栃ノ心に苦言。力が強いことに自信があるこのかも知れないが、上には上があるのだから、頭をつけるとか、前褌を取るとかもっと工夫をしなければダメだと。その通りなのだろうが、把瑠都に真っ向から挑み、吊り上げようとした栃ノ心が私は好きだ。しかし星は伸びない。把瑠都は8勝1敗。大関昇進後だらしない星が続いていたから今場所は星的には順調。中身は悪いが。

○白鵬 ●嘉風
 白鵬が変化気味に背中越しの上手を狙う。そこを嘉風につっこまれて防戦一方。引いて、まわりこみつつとったり。それがすっぽ抜ける。これがいい目に出た。攻めていた嘉風はそのまま土俵を飛びだしそうになる。くるりとふりかえって突撃したが、そこを白鵬にはたかれた。
 いやはやひどい相撲。嘉風がほとんど勝っていた相撲。白鵬、苦笑。
 賞金を両手で拝むように取る姿勢はえらいが。

 玉ノ井の鼻づまり聲が不快で音声を消して見た。こんなのは解説に出すな。解説予定日に風邪を引いて鼻づまりなんてのはそれだけで解説者失格だ。




十日目

 今日は早い時間からの中継。野球賭博問題を含め、今年一年を振り返るような特集をしていた。中心は、そんな中でも勝ち続ける白鵬。悪い相撲も多いが、把瑠都をぶん投げる一番なんかは惚れ惚れする。そのろくでもない相撲のほとんどが張り差しが原因なのになぜ直さないのだろう。わからない。

 解説は二所ノ関。ほらふき金剛。こんなのの解説も聞きたくないので飛ばし見する。


 2010年11月23日、北朝鮮が黄海の南北境界水域に近い韓国の延坪島を砲撃。韓国軍も応戦し、死者や負傷者も出た模様。

 というニュース。気違い国家も末期なので死に物狂い。早く革命が起きてあの一家を処分した方がいい。それが軍事革命だったとしても今よりはずっとましになる。



 今日は早い時間からの中継。野球賭博問題を含め、今年一年を振り返るような特集をしていた。中心は、そんな中でも勝ち続ける白鵬。悪い相撲も多いが、把瑠都をぶん投げる一番なんかは惚れ惚れする。そのろくでもない相撲のほとんどが張り差しが原因なのになぜ直さないのだろう。わからない。

 解説は二所ノ関。ほらふき金剛。こんなのの解説も聞きたくないので飛ばし見する。



 1敗は4人に絞られる。豊ノ島、把瑠都、魁皇、白鵬。
 豊ノ島が勝って1敗堅持。相手は楽だ。でもこのまま行けば上とぶつけられるだろう。

 北太樹は負け。膝が悪そう。同じく膝が悪い安美錦はなんとか勝つ。こういう致命的なケガを抱えている力士を見るのはつらい。



○琴奨菊 ●豊真将
 強い琴奨菊がもどってきた。しぶとい豊真将を一気に撃破。もう頂点は越えて、このままだと思ったが、そうではないのか。

○稀勢の里 ●阿覧
 ケンカ相撲。阿覧の張り手というより掌底のようなのがもろに顔面に入ったが稀勢の里はひるまない。そのあと、また入った。それでもひるまず突きだす。土俵下の阿覧を睨みながら何かひとこと言ったと舞の海が報告。すぐに別角度からのビデオでそれが確認される。気迫に満ちたいい相撲だった。稀勢の里が充実している。

○把瑠都 ●鶴竜
 鶴竜が左に変化。把瑠都が張り差し。それが見事に決まった。左に変化する前に把瑠都の張りが顔面に入っているので、見事な「変化封じ」になっている。把瑠都のような大男の力持ちの張りが見事に入ると鶴竜のような小兵には絶大な効き目があるという好例。顔面が歪んでいる。あれでもう実質勝敗は決まっていた。
 掴まえた把瑠都が簡単に投げすてた。

 花道を引きあげる把瑠都が笑顔。曲者鶴竜相手に見事に作戦が決まったうれしさなのだろう。把瑠都は鶴竜の変化を読み、それを止めるために飛び道具を使った。鶴竜は張り差しを想定していなかった、それが敗因だと認めている。把瑠都の読み勝ちである。
 今場所の張り差しでは唯一効果的だった一番になる。



○琴欧洲 ●嘉風
 それを見ていたのか琴欧洲が右の張り差し。あまり力のあるものではなく、嘉風もひるまなかったが、早い立ち合いだったのでそのまままわしを取り、楽々と寄り切った。べつに張り差しは必要なかった。でも把瑠都のそれを見て小兵退治に有効と思ったのか。
 好きな力士ふたりが連続して大嫌いな張り差し連発。ともに勝ちはしたが、複雑である。



○魁皇 ●栃煌山
 ドンとぶつかりスッと引く魁皇の十八番。これに落ちなくなった栃煌山のはずなのだが、あっさりと落ちてしまった。栃煌山の低い態勢をよく見切っていたようだ。



○白鵬 ●豪風
 バカ白鵬、今日は左の張り差し。もつれる。なかなか勝てない。豪風大健闘。
「なんか歯車が狂っているような」とは二所ノ関。
 最後は両手を極めて寄り切った。敗れはしたが、昨日の嘉風、今日の豪風、ともにいい内容だった。
 解説やアナは「先場所までの相撲とはちがっていますかね」と連勝が途切れてからの変調のように言うが、そんなことではない。連勝の内容にもこんなのはいくらでもあった。危ない相撲、だらしない相撲はいくつもあったのだ。それだけのことである。






十一日目


 栃ノ心、負け越し

 二度目の小結、今度は定着かと思われた栃ノ心が負け越してしまった。もういちど下で揉まれてからか。

 勝ったのは稀勢の里。終始優勢で、落ちついたいい相撲だった。栃ノ心贔屓の私だが、この一番を見ると、自力では稀勢の里の方がまだ上と思わざるを得ない。

 稀勢の里はこれで勝ち越し。勝ち越しインタビュウ。
 白鵬に勝ってから相撲に風格が出て来た。楽しみだ。

 向正面解説は不知火。無事これ名馬の青葉城。
 仕切りの時、アナに稀勢の里の課題はと問われ、立ち合いと応えていた。
「張り差しなんかしていますが、あんなことはする必要はないんです」と適確な指摘をしていた。頭からぶつかるいい立ち合いから勝ったので、「これで、この立ち合いでいいんです」と誉めていた。

 張り差しは心に不安のある臆病者の技だ。周囲の大きな期待に応えられず、なにかもうひとつふっきれない稀勢の里は悩みつつ朝青龍の真似をしてよく使っていた。今場所白鵬に勝ったことで精神が充実してきている。今後稀勢の里の張り差し連発はなくなるものと思う。

 一方白鵬は、連勝中は連勝というプレッシャーのために張り差しを連発し、連勝が途絶えてからは、連勝が途絶えたという失念をふっきろうと、また多用している。これからまた連勝に挑むなら、また連発するだろう。引退するまで張り差し連発が消えることはないのか。

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 魁皇、ボディプレス(笑)!


 完全な豪風の勝ち相撲だった。
 うまくもぐりこみ、たぐって、魁皇は振りまわされる。土俵際で押しだされそう。
 なのにここで粘ったのだからたいしたもの。
 しかし豪風の追撃は止まず、完全な後ろ向きになってしまった。必敗の形。

 後ろ向きのまま、土俵を飛びだしそうになりながら、なんとか俵で残り、くるりと回って振り返る。
 すると魁皇の背中を押そうとしながら足が流れてしまった豪風がひとりで(笑)倒れこんできた。

 もしも背中を向けてしまった魁皇の動きが鈍かったなら、豪風はよゆうをもって押し出せたろう。だが後ろ向きになって飛びだそうとする魁皇の動きが速すぎて足がついて行かなかったのだ。

 写真は、魁皇が土俵際で振り向こうとした足もとに豪風が倒れこんできたところ。

 振り向いた魁皇は、この豪風の躰につまづいて、このあと豪風にボディプレス。それはもうなんというか、ボディプレスとしか言いようのない形だった。

 場内は、絶体絶命の態勢から大逆転した魁皇に拍手と嬌声と笑い声。
 私も声を上げて笑ってしまった。相撲を見て笑ったのなんて何年ぶりだろう。

 何年ぶりと言えば、魁皇が二桁勝利したのは三年半ぶりだとか。いやはやひどい成績の大関である。でもいるだけでいいけど。

 アナが「これは魁皇には勝利の女神が」と言うと、負けた豪風から「あちらには何かがついている」との感想が入る。

 地元九州の熱狂的な応援は、毎場所むしろ煩わしいと感じていたが、今場所は魁皇の相撲内容がいいので気持ち良く受けとめられる。今日の相撲は内容がいいわけではないが、これはこれで銭の取れる相撲だった。しょっきりでもこんなのは出来ない。いやはやおもしろい一番だった。

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 栃煌山、負け越しの危機

 琴欧洲が素速くまわしを取り、腰を落として寄り切った。満点の相撲である。なんでもう3敗もしているのか。
 先場所に続いて二桁勝利を挙げ、来場所は大関取りの場所になるはずだった栃煌山がこれで7敗。二桁勝利どころか負け越しの危機である。
 来場所は三役から陥落して稀勢の里が一気に関脇に復活か。

 鶴竜は5勝6敗だがまだわからない。栃煌山、栃ノ心、阿覧の三人は陥落だろう。
 上がるのは稀勢の里は確実。有力なのは琴奨菊。前半不調だったがここのところ急に相撲が良くなってきた。鋭い出足とがぶり寄りがもどってきている。
 安美錦も横綱大関戦が終って6勝5敗と有望。でもほんとに膝の具合は悪そうだ。踏んばれないのだろう。
 豊真将は6勝5敗。勝ち越せば初の小結だ。がんばれ。あの美しいお辞儀を三役で見たい。

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 白鵬、やっとまともな相撲

 白鵬が鶴竜とまともにぶつかり、すばやく両まわしを取ると双差しの体制になり、万全の形で寄り切った。ひさしぶりに見る満点の相撲。昨日があまりにひどかっただけに、今日の相撲がやけによく見える。


十二日目

 栃ノ心、4勝目

 栃ノ心が四つに組んでの大相撲からしぶとい豊真将を下手投げで勝った。強いなあと思う。なのになんで負け越している。

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 琴奨菊、快進撃!

 ぶちかましてのがぶり寄りがもどってきた琴奨菊が快進撃。2勝5敗から5連勝して7勝5敗になった。今日も稀勢の里を相手に文句なしの勝ち。なんといっても相撲内容がいい。悪い白鵬や把瑠都と対象的だ。三役四つの席の内みっつが空いたから、勝ち越して来場所は三役だ。内容のいい相撲を見るのは楽しい。

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 把瑠都、崩れる


 1敗力士は4人。今日はその中からひとつ組まれた。
 平幕唯一の1敗は豊ノ島。
 野球賭博事件で十両に落とされたが、楽々と優勝して賞金500万を稼ぎ、今場所も下位の番付なので絶好調。マイナスを見事にプラスに転訛している。
 元々三役レベルの力士なのだから9枚目はいかにも楽。
 しかし今日は異例の大関戦が組まれた。

 身長差はおとなとこどものよう。なのにうまくもぐりこんでの下手ひねり。
 ただしこれは技が見事に決まったというより、把瑠都の自滅のよう。私は把瑠都に故障発生かと思った。それほどカクンという形の崩れかたは異常だった。さいわい右膝は大丈夫のようだ。ドタドタした相撲を取っているからこんな崩れかたをする。

 私は大の把瑠都ファンだけれど、どんなに星がよくても今場所の相撲は認めていない。あまりに立ち合いがひどい。関脇で14勝をあげたときのような相撲にもどって欲しい。今場所の星数が迷いの森から抜けだすきっかけになればいいが……。

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 魁皇、いよいよ明日だ!

 なにをやったらいいかわからなくなっている白馬は、変化するのだろうと思っていたら変化した。しかしそれも思いきりの悪い半端なもの。魁皇が楽勝した。これで二日目から11連勝。
 いよいよ明日、白鵬戦。もうここまできたら張り差しばかりやっているバカ白鵬ではなく魁皇優勝を願う。無理だろうけど。明日の結びの一番は盛りあがる。楽しみだ。

 今場所の最高殊勲力士は連勝を止めた稀勢の里のはずだったが、これはもう文句なしに魁皇。大関は賞をもらえないけど魁皇で決まりだ。

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 栃煌山、惜しい!


 バカ白鵬がまた張り差し。2日目、3日目、4日目、6日目、
 それを読んでいた栃煌山は動じずに右を差して一気に寄った。張り差しで腰が浮く最悪の展開。だが土俵際で苦しまぎれの小手投げに屈した。白鵬、苦笑い。
 熊ケ谷はなぜ白鵬に張り差しの無意味と危険を教えないのだろう。教えてももう自動で出るようになっているのか。朝青龍、白鵬とこれほど汚い立ち合いの横綱はいない。この醜い立ち合いを直さない限り名横綱とは呼べない。

 ところでこれに関して、「栃煌山惜しかった、白鵬冷や汗の勝利、苦笑い」と「白鵬、今日も万全、危なげのない勝ち」という正反対のふたつの記事があった。メディアが異なるならともかくともにニッカンスポーツの相撲欄にあるのだから異常だ。もちろん前者が正しい。まさか同じ記者とは思わない。それなら狂っている。おそらく後者は相撲を見ずに結果だけで書いているのだろう。ここまで堕落した記事も珍しい。


十三日目
 向正面解説は秀ノ山。といえば長谷川だが今は琴錦。借り株があまりにころころ変るので覚えるのが大変。毎度「誠意のない営業マントーク」と評したように、へらへらペラペラと早口でしゃべっている。

 正面は尾車の琴風。今日は佐渡ケ嶽一門か。



 昨日勝ち越した翔天狼のインタビュウがあったが、ほんとに日本語が見事。日本人と変わりない。北の富士が感心していた。北の富士も初めて聞いたわけではないのだが、聞くたびに感心してしまうほどうまいのだ。



○若の里 ●豊真将
 まるで全盛期のような力強い相撲で若の里が粘る豊真将を投げすてた。豊真将の連敗が止まらない。今場所は勝ち越して初の三役と期待したのだが……。

○琴奨菊 ●朝赤龍
 一気に、とはいかなかったが、苦労の末に、琴奨菊がうれしい勝ち越し。朝赤龍はしぶとい。中盤からの琴奨菊の充実はすばらしい。

○稀勢の里 ●安美錦
 ボグっと音のする激しいぶつかりあい。そこから稀勢の里が左にハズして突き落とす。
 立ち合いが激しいとこういうあっけない勝負になっても満足。やはり相撲は立ち合いが大事だ。



○豊ノ島 ●鶴竜
 ここまで対戦成績は4対4。しかし最初は豊ノ島だったが、その後は鶴竜が3連勝。豊ノ島は試煉の一番である。
 頭からぶつかる迫力の立ち合い。豊ノ島、内にもぐり、ハズ押し、一気に行った。これはすばらしい相撲。
 鶴竜は右上手を取りにいったところに低くぶつかられ躰が起き上がってしまった。169センチのちいさな巨人である。



○把瑠都 ●琴欧洲
 ここ三場所琴欧洲が勝っている。その前は把瑠都が2連勝した。つまり、追いついた、追いこしたと思われたのだが、それからまた逆転。大関にあがってからの把瑠都がいかに調子がわるいかである。
 四つになって、ひねるような左からの上手投げ。把瑠都の相撲がだんだん良くなってきている。やはり白星が一番の良薬なのだ。

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 魁皇、散る!

 魁皇悲願の最後の優勝に向けて場内たいへんな熱狂だったが白鵬の勝ち。でもよく今場所は盛りあげてくれた。


十四日目
 理事長の座

 解説は九重。嫌いなのでどうでもいい。このひとが出て来ると必ず「偉大な横綱千代の富士の足跡」みたいな特別編集ビデオを流すので不快だ。解説もみな上から目線なのでつまらない。弟横綱の八角とは好対照。人望がないのも肯ける。果たしてこのひとが短期間であれ理事長になるのか注目したい。本人はなんとしてもなる気であれこれ画策しているらしい。以前なら大横綱だから必ず成れたろうが今の難局では放駒政権が誕生したように過去の常識は通じない。一足飛びに貴乃花か。こちらも年輩の年寄りに敵が多く前途多難だ。なにより弟子が育っていない。千代の富士は、あんなのでも大関を育てている。

 あんなのでもたまに出すと国民的人気はまだ高いのも知れない。しかし本人が意識しているほどコアな相撲ファンのあいだで評価は高くない。

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 稀勢の里、二桁 旭天鵬勝ち越し

 稀勢の里が玉鷲に勝って10勝目。来場所の関脇復帰を確実にした。
 明日は今日も勝って1敗を守った豊ノ島との対決。ここで勝つと11勝になるばかりでなく、白鵬と豊ノ島というふたりを止めたことになり、三賞獨占も夢ではなくなる。明日一番の注目の一戦だ。

 その稀勢の里をがぶり寄りで破り、完全復活かと思われた琴奨菊が、旭天鵬に軽々と料理されていた。これも相性なのか。なんとも不思議。9枚目でしっかり勝ち越し。見事にエレベーターしている。

 豊真将は阿覧の変化気味の立ち合いを相手にせず快勝。7勝7敗。勝ち越しなるか。前頭3枚目でこの成績が実力なのだろう。

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 1敗は白鵬と豊ノ島

 2敗魁皇と1敗豊ノ島の勝負は豊ノ島の勝ち。平幕下位が大関を破ったのだが、豊ノ島はここ三場所魁皇に連勝しており、力はもう逆転していた。それでも今場所の魁皇だったから必殺の小手投げとか期待できた。
 白鵬と把瑠都は、いつもだらしない把瑠都も白鵬戦では力を発揮して見応えのある相撲になるので期待したが今場所はいいとこなし。
 ということで1敗がふたり。明日は豊ノ島は稀勢の里。白鵬は琴欧洲。
 1敗同士の優勝決定戦になり、さらに豊ノ島が白鵬を負かして優勝となるのが楽しい。でも稀勢の里が意地を見せて豊ノ島を破り、白鵬が琴欧洲に勝って優勝というのが本筋か。結びの一番以上に稀勢の里、豊ノ島戦が楽しみだ。


千秋楽
 千秋楽悲喜こもごも

○豪栄道12勝
 豪栄道が下位で12勝をあげた。期待の日本人力士のひとりだったが野球賭博事件で十両に落ち、そこからの再起。豊ノ島のように目立たなかったが、十両でも幕内にもどった今場所でも、これぐらい勝つ力がある。とはいえ内容の悪い相撲も多かった。まだまだ課題は多い。しかしこれで上位にもどってくる。いい勉強になったろう。

○臥牙丸と翔天狼がともに9勝をあげた。これも上位に進出してくる。翔天狼はまだ白鵬と対決する地位は無理だが。数少ない白鵬を倒した平幕だ。雅山も9勝。野球賭博事件で下位に落ちた力士が力通りの復活をしている。

●関取になってからずっと勝ち越してきた蒼国来が6勝9敗と初の負け越し。勝ち越しの場合も8勝7敗が多かった。まだまだ非力。でも、そこはかとなく雰囲気のあるひとだ。
●豊真将負け越し。7勝7敗の安美錦との決戦に敗れる。でも、これぐらいの力なのだと妙に納得する。

○琴奨菊9勝。今場所のような相撲が取れるなら来場所も期待できる。敗れたが玉鷲も9勝。実が入ってきた。

○豊ノ島が稀勢の里を破って14勝。稀勢の里10勝どまり。この相撲は勝った豊ノ島が見事。観客席できれいな婚約者が涙。結婚前に最高のプレゼントとなった。結婚式は盛りあがるだろう。

●栃ノ心は6勝9敗で終る。応援していた力士ではこれが一番残念か。二度目の小結も定着できなかった。来場所落ちて、またもどるだろう。
●栃煌山勝って7勝。鶴竜負けて負け越し。ふたりとも関脇陥落。これは意外だった。栃煌山は二桁勝利で大関の足掛かりと言われていたし、鶴竜もしぶとく勝ち越すと思っていた。出直しだ。ひとつ負け越しの栃煌山は小結に残れるのか。

○魁皇が出合い頭のとったりで把瑠都の腕を取る。見事。12勝3敗。いつ以来の星なのか。
●把瑠都は11勝。まあこんなものだ。今までより星が伸びた分、すこしは栄養になったのか。

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 14勝1敗同士の決定戦は白鵬の勝ち。これは実力通り。しかたない。豊ノ島には意義深い場所になったろう。なにしろこのひとは169センチしかないのに外連がないのがいい。同じ小兵でも舞の海とはぜんぜんちがう。ちいさいのに受け相撲をしていて師匠に叱られたことがある。王道相撲なのだ。盛りあげてくれた。このあとも楽しみだ。




総論
 白鵬は双葉山の真似だった!

 夜の10時過ぎ、NHKで白鵬特集をやっていた。1年間負いつづけた貴重なもの。
 そこで白鵬が双葉山マニアだと知る。当時のモノクロ映像の勝負を、ノートパソコンで、何度も何度も停止クリックを繰り返して研究していた。画面がアップになり、白鵬が研究しているのが双葉山の立ち合いだとわかる。その瞬間を何度も何度も繰り返して見ている。
 私がいつも不可解に思う「張り差しのように左手を差しだす立ち合い=張ってはいない」が、双葉山の真似であることを知った。そういうことだったのか。私は相撲好きでも双葉山の立ち合いまでは知らない。

 もうひとつよかったのは熊ケ谷(竹葉山)の態度だ。大関止まりだった親方が横綱になった弟子に意見できなくなってしまう形はよくある。熊ケ谷は幕内一場所経験程度の力士だ。
 でも熊ケ谷は今や歴史的大横綱である白鵬にキツい口調で物言いをしていた。口のきき方も、新弟子時代の白鵬に対するものと同じで遠慮していなかった。安心した。白鵬が朝青龍のようになることはない。親方が違う。

 内容はわるかったが、連勝が途絶えた場所に優勝は大鵬も双葉山も出来なかったことだ。この優勝が次ぎに繋がるだろう。昨年作った86勝4敗と今年も同じ記録だった。これもすごい。来年の更なる飛翔を願う。

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 12月1日水曜日に、TBSがワイドショーの中で、豊ノ島と婚約者を追ったミニドキュメントを流していた。ふたつ年上の姉さん女房(まだ婚約中だが)は、歌手の竹内沙帆(すなほ)さん。
 写真、隣の禿頭は豊ノ島のお父さん。

 とにかく豊ノ島は、相撲が正攻法なのがすばらしい。




壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

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