平成二十一年初場所

2010年1月10日~
 初日  天覧相撲

 平成二十二年初場所初日。天覧相撲。日本人のしあわせを感じる。天覧相撲は平成になって十八回目とか。そういや愛子内親王は大相撲が大好きで琴光喜ファンだった。今度の御観覧はいつだろう。

 ここでつまらんひとは「日本人横綱がいたら」なんて言うんだろうが、外国人力士大好きな私にその感覚はない。
 相撲がここまで国際化されるとは夢にも思わなかったので、むしろ今の外国人力士全盛はうれしい。それも小錦のようなタイプに席巻されたら不満だったが、モンゴル人力士という本来の日本の相撲と相通じるものが天下を取っているのが好ましい。ロシア系の白人力士が擡頭してきたのもうれしい。サモアンのデブ中心よりも正当だ。

 ひとあし早く国際化された柔道だが、あれはもう柔道ではなくJUDOというポイント制の競技だ。見る気がしない。腹立つことが多い。腹立ちつつまだ見ているけど(笑)。
その点相撲は相撲のまま国際化された。こちらのほうがずっといい形だ。



 阿覧が変化で勝ち、場内に失望の溜め息が満ちる。どうにもロシア人力士にはこれが目立ち好きになれない。引退した露鵬、若ノ鵬もそうだった。
 グルジア出身の栃ノ心は好きだ。元は同じソ連なのだが気質がちがうのだろう。今はアメリカ寄りでロシアと不仲だ。



 今場所の注目のひとつが千代大海最後の姿。今日は稀勢の里になにも出来ず押しだされる。カウントダウンが始まった。

 把瑠都が楽勝。相手が北勝力なので当然。舞の海が「北勝力は立ち合いが両手突きだけなので、把瑠都には怖いところがない」と言っていた。今場所はどこまで行けるか。今年の目標として大関取りを口にしたとか。当然だ。次は把瑠都か鶴竜だろう。琴奨菊や稀勢の里ではない。



 千代の富士の幕内勝ち星記録807にあとひとつと迫っているのが魁皇。土俵にあがるだけで大きな歓声が沸く。今日は雅山に完敗。しかしこれは舞の海や北の富士も言っていたが雅山の休まない前に出る相撲がよかった。

 琴光喜が豪栄道に、先場所とまったく同じく攻めこんでいながらの下手投げで負ける。これじゃ解説陣も辛口になる。上手が深いのだとか。それによって豪栄道の下手が自由になっているらしい。なるほどなあ、上手は深ければいいってもんでもないんだ。なかなか奥が深い。しかし琴光喜、だらしない。まったく同じ負けかただ。

 先々場所幕内筆頭に上がった栃ノ心は初の結びの一番(白鵬戦)を体験したりしたが大負けして落ち、先場所がんばってまた上位にもどってきた。今日は日馬富士に翻弄されて負け。西の筆頭。東は豊ノ島。今場所は好きな力士が幕内上位を占めているので楽しみだ。





 アナと北の富士が白鵬の「内掛け」に触れた。先場所白鵬が把瑠都を内掛けで負かしたときはたまげた。横綱が、しかも身長のある白鵬の内掛けは新鮮だった。名人琴ケ浜に代表されるように、この技を得意とするのは小兵力士であり、一般的には秘密兵器的な技だ。 

 白鵬のインタビュウVTRが流れ、「あたらしい技」という質問に、白鵬が「内掛けに磨きを掛けている」と語っていた。あれは偶然出た技ではなく身に着けようと意識していたらしい。本人は御満悦のようだ。
 これに真っ向から反対したのが北の富士。大横綱がやる技ではないという指摘は当を得ている。横綱に、しかも躰のある白鵬に、内掛けは似合わない。でも新鮮だった。ああいう発想は日本人横綱からは出て来ない。土俵のないモンゴル相撲からの流れだ。

 私は今まで見てきた大相撲の流れから、常識的に北の富士と同じく「必要ない」と思ってしまうのだが、同時にまたそこに甘んじない白鵬のあらたな感覚に目が覚める思いだ。
 土俵のないモンゴル相撲で育ってきた力士には、朝青龍、日馬富士が代表だが、押しだしや寄り切りではなく、相手をたたき伏せる感覚がある。その感覚は彼らよりも身体に恵まれ安全勝ちが出来る白鵬にも流れていた。
 体重のある力士による安全な勝ちかたである押しだしや寄り切りが多くなって相撲はつまらなくなった。白鵬のこの姿勢は評価できる。

 ただ内掛けは危ない技だ。ケガが付きまとう。白鵬にもしてほしくないし、相手をケガさせて欲しくもない。転びかたが外掛けとはちがう。だからそこのところでなんとも賛成とも反対ともいいがたい。北の富士もそこを懸念していた。
 しかしあの強い横綱が内掛けを仕掛けてくるというのは、相手にとってはこの上ない恐怖だろう。すごい話である。

------------------------------

 白鵬が場所前のインタビュウで、この「内掛けについて語ったこと」は、ちょっとした話題になっていたのだと知る。つまり「よけいなリップサービス」としてだ。それが「横綱の内掛け」として論議を呼んだようだ。あるサイトでは「黙って秘密兵器にしておけばいいことで軽々しくしゃべるな」と苦言を呈していた。白鵬なりのサービス精神だったのだろう。

------------------------------

 琴欧洲が苦手のちいさな豊ノ島に頭から突っこんでいって完勝。場内も沸いた。思わず身を乗りだすような天皇陛下、拍手を送る皇后陛下のお姿。うつくしい。
 琴欧洲は今場所後に結婚披露宴。いい成績を残して欲しい。

 苦手意識が身につき、ちいさな相撲になっていた。相手に合わせて翻弄されていた。今日は何も考えずの突っこみ。豊ノ島はふっとんだ。今場所の琴欧洲は楽しみだ。って贔屓力士なので毎場所楽しみなのだけど(笑)。



 朝青龍、平成二十二年初場所の初日も右の張り差し(笑)。みっともない。先日読んでいた時代小説に、「張り手は臆病者のやること」というのがあった。そう思う。やる必要がないのだ。マイナスの方が多い。たま~に効果があることもあるが、明らかにマイナスの時の方が多い。なによりたまに奇襲としてすべきものを毎日やるのだから醜い。真似して使っていた白鵬が地位を上げると同時にすくなくしていったのは当然だ。逆に落ち目の朝青龍は毎日になってしまった。かなしい。稀勢の里も朝青龍を真似たこのバカな技を封印しないと大成はない。



 鶴竜が白鵬に善戦。強くなっている。1分以上の大相撲になり、最後の最後まで粘った。楽しみな力士である。今場所は小結。この強さなら維持はまちがいない。

 白鵬が異様に慎重だったのも事実。そのことを「内掛け論争の影響」と解釈しているひともいた。



 両陛下御退場に観客全員が立つ。湧きあがる拍手。陛下のお辞儀。手を振られる姿。初場所天覧相撲は五年ぶりとか。いい初日だった。
 二日目  かえり入幕の白馬が幕内最軽量。128キロ。次いで日馬富士の129キロとか。ずいぶんと重い時代になった。栃若時代のころは110キロぐらいが中心だった。それぐらいの力士の速い相撲がいちばんおもしろい。でもケガをしないよう、危ない技はせず、寄り切り、押しだし中心になったら、重い躰が必要だ。



 解説は錣山。成人の日ということでその話題に触れていた。大きな部屋では複数の成人式の力士がいるようだ。錣山部屋が二十人以上力士のいる上位ベストテンに入る大部屋になっているとは知らなかった。関取は豊真将だけか。

 力士の多い部屋として佐渡ケ嶽部屋、武蔵川部屋、春日野部屋あたりは思いうかぶが、錣山、境川は意外である。それでも錣山は人気力士だったから当然とも言える。むかしも貴ノ花や魁傑、旭国のような人気力士が獨立した部屋には新弟子が集まったものだ。その点、地味な力士だった両国の境川部屋の弟子数はより意外だ。日大出身のコネを活かして弟子集めに熱心なのだろう。スカウトに熱心で成功したのがいま理事長の武蔵川と先代佐渡ケ嶽だ。ともに遅咲きの人気のない横綱だった。熱心にスカウト活動をしないと人気のある力士が継いだ部屋には勝てないと意識したのだろう。

 力士数の順番は、佐渡ケ嶽26,高田川(安芸乃島)25,木瀬、八角24,北の湖、玉乃井(栃東)23,春日野、阿武松(益荒男)、錣山22,境川21だった。木瀬親方って誰だ。思いつかない。調べる。肥後ノ海だって。

 肥後ノ海は三保ケ関部屋から内弟子7人を連れて獨立とか。濱ノ嶋が把瑠都らを連れて獨立した尾上部屋も三保ケ関部屋からだった。このときは6人を連れて出ている。これじゃ三保ケ関部屋に力士がいなくなってしまうだろうと調べたら9人だった。増位山は日大から濱ノ嶋や肥後ノ海をスカウトして幕内力士養成に成功したのだが、今は彼らに獨立されて細っていることになる。でも阿覧がいるからまだいいか。外国人力士は一部屋ひとりと限定されていてこの活躍だから、無制限にしたらほんとに力士はみな外国人になってしまうだろう。



 阿覧が猛虎浪相手に真正面からの力相撲。昨日の変化を誰かに叱られたのだろう。錣山も、こういういい相撲が取れるのだから変化したり張り手をやったりする必要はないのだと指摘。
 阿覧は三保ケ関部屋か。増位山のところ。もうすこしきちんと指導してやれよ。錣山が育てたら違う力士になっていたろう。

○稀勢の里 ●把瑠都

 稀勢の里が把瑠都に完勝。これはすばらしい。対戦成績は把瑠都の8対1。昨年は5回対戦があって把瑠都が全勝している。すでに力士の格として勝負づけは済んだと思っていた。四つになり、例によって把瑠都が肩越しの上手を取る。稀勢の里はもぐりこんだ形。稀勢の里が寄る。ここでいつもなら把瑠都が怪力で持ちあげ、ひょいと土俵外に運んでしまうのだが、それをしようとするとうまく稀勢の里がおっつけをしてさせない。何度もまわしを切りに行く。最後はまわしを切り、左をおっつけて押しだした。これは稀勢の里が対把瑠都戦用に考えた作戦だろう。錣山も成長の跡が見えると誉めていた。

 今場所の稀勢の里はいい。期待できる。先場所関脇で負け越し前頭三枚目まで落ちている。今場所は大勝ちして三役復帰だ。私は世間ほどこのひとに期待していないが今日のような相撲を見れば相撲ファンとしてすなおに応援する。

 把瑠都もこれで気を引き締めないと。序盤は一敗で乗りきって欲しい。
いま把瑠都が幕内で一番重いとアナが言った。汚いデブの山本山は十両か。あんな力士を好きなひとの気が知れない。



 北勝力が双手突きで千代大海を一気に押しだす。千代大海連敗。場内は静まり返る。千代大海がよれよれであることにばかり注目してしまうが、今場所の北勝力がいいのも確かである。このひとは大勝ちか大負け。今場所は大勝ちで颱風の目となるか。もっともあのワンパターン双手突きは上位に通じないと舞の海は言っていた。

 琴欧洲が雅山相手に右の張り差しで立つ。やる必要はない。下品な立ち合いはカロヤンに似合わない。

 魁皇が豪栄道を破って千代の富士に並ぶタイ記録の807勝。豪栄道もよく粘った。力の入ったいい一戦だった。

 鶴竜が琴光喜に完勝。楽勝。どっちが大関かわからない内容。立ち合いが低くて速いと錣山も絶讃。
 勝利インタビュウで、日本語の巧さが話題になる。モンゴル人力士で一番うまいのではないかと言われていた。白鵬はたどたどしさがまだあるが鶴竜はなめらかだ。これも錣山が来日してすぐ話せるようになっていたと誉めていた。アナが頭がいいのでしょうと相槌。
 錣山は、稽古も考えながらやっている、基本的な反復運動もよくやっていると誉めていた。兄貴の逆鉾の部屋だからよく目にしているのだろう。鶴竜の鶴は錣山(寺尾)の父である鶴ケ峰の鶴だ。錣山の解説は理詰めでわかりやすくていい。

 鶴竜は大好きなんだけど、時々変化をやるからなあ。あれだけは止めて欲しい。まあ相手に「変ることもある」と思わせておくことも意味はあるのだろうが。



○白鵬 ●栃ノ心

 栃ノ心と白鵬は、身長が192センチと同じで、体重は160キロと156キロ。栃ノ心が4キロ重い。横綱とほぼ同じの理想的な体形だ。しかも白人には珍しく下半身ががっちりしている相撲体型。
 場所前の白鵬が出羽の海部屋に出稽古に行ったときの様子が流れた。栃ノ心は何番も横綱の胸を借りていた。まだまだ通じないが22歳の若さ。このひとは強くなる。今場所は右肩を痛めていてテーピングが痛々しい。前頭筆頭なので序盤は立て続けに横綱大関と当たる。ここでの負けはしかたない。後半盛りかえして勝ち越せるか。正念場である。まだすこし時間が掛かるか。
 三日目  朝、窓を開けると雪が降っていた。それで珍しくテレビを点けた。その他の地域はどうなのだろうと。朝のワイドショーを見るなんてひさしぶりだ。
 どこも昨日の魁皇の千代の富士と並んだ807勝を報じていた。平成4年だから17年ぶりのタイ記録になる。
 しかし相変わらずみないいかげん。みのもんたは魁皇を早い出世で横綱間違いなしと言われていたとか言っている。若貴と同期の魁皇はふたりが大関横綱と出世し、すでに翳りが見えて来たころ、27歳でまだ大関にもなっていなかった。入幕までは早かったが、それからは遅い出世のひとである。

 フジテレビの小倉は、冒頭で知ったかぶりの相撲論を展開していたが、新記録のかかる今日の相手の千代大海を「先輩が千代の富士」と何度も言い、「千代大海も先輩のためにも新記録を阻止したいだろう」とぶっていた。千代の富士は千代大海の親方である。小倉の演説はいつもまちがいだらけ。うんざりして見なくなって久しい。さすが巨泉の弟子だ(笑)。



 把瑠都対鶴竜
 把瑠都が巧い鶴竜になにもさせず寄り切った。

 琴欧洲が豪栄道に攻めこまれる。右前褌にこだわっているあいだに押しこまれたのだ。まさか負けるのでは。こんなところで負けられたら困る。土俵際で上手投げが決まったがあぶない一番だった。磐石とは程遠い。



 記録のかかった一番は魁皇の故郷直方からの中継が入る。
 いま「のうがた」とやったら直方が出ないので焦った。「のおがた」なのだと知る。難読地名「直方」を読めるつもりでいたが、かなふりの問題だったらまちがえたことになる。

 それにしても新記録のかかった一番が千代の富士の弟子の千代大海とは皮肉なめぐりあわせだ。
 千代大海、突っ張りの手がはずれて後ろ向きになり、投げすてられる。ラリアットが決まるような形。これ以上ないというぐらい惨めな負けかた(笑)。決まり手は「送り投げ」。これで魁皇幕内で808勝。ついに千代の富士を抜いた。よかった。
 こういう一番を実況してすんなり「送り投げ」と言えるアナはすごいなと思った。漫然と見ているのでこんなに長く相撲ファンをやっているのに私にはこの決まり手は出て来ない。



 琴光喜が三連敗。でもきょうは北勝力がすばらしかった。双手突きが見事に決まり攻めて攻めぬく。土俵際で粘られたとき、ここで一息吐くか、引くかと案じたが、それからも休まず前に出て攻めぬいた。ほんとうにすばらしい攻め。
 いつも北勝力をボロクソに言う北の富士さえもきょうは誉めた。それを知っているからアナも「もっと誉めてください」と振る。この辺はそういう流れを知っているファンだけの楽しみ。知らないひとはアナが何度も繰り返した「もっと誉めてください」の面白味はわからない。



白鵬の網打ち

 これはすごかった。土俵中央での関節技である。「送り投げ」を即座に言ったアナも、これはすぐには出て来ず、「ほうり投げました」と言ったあと、しばらくしてから「これは網打ちでしょうか」とすこし戸惑い気味に口にした。北の富士も「網打ちかな」と自信がなさそう。アナが「土俵中央での網打ちは珍しいですね」と繰り返すころ、決まり手として網打ちがアナウンスされる。

 網打ちは土俵際でのすかし技、逆転技として出ることが多いのに、白鵬は土俵の真ん中でそれをやり、豊ノ島は空を舞った。なんとも奥深い。こんな形の立ち技で決まる相撲は見た記憶がない。

右手で豊ノ島の右手を抱え、左は右腕つけ根を押さえ、力でひねり倒した。自身初の決まり手に「タイミングがよかった」と振り返った。
 これはニッカンスポーツの文の引用。先場所の内掛けといい、白鵬の引きだしにはまだまだ秘密兵器がありそう。すごいことになってきた。
 四日目  千代大海、引退の日

 すでに昨日の時点で情報が流れ既成の事実となっていた。午前中には師匠とともに記者会見もしている。
 午後三時からの大相撲中継は、急遽番組内のコーナーにおける特集を千代大海とした。過去の様々な映像が流れ、力士からの千代大海との思い出が語られる。

 日本人はやさしい。引退する千代大海にみな心からのエールを送り惜しんでいた。しみじみそれを思う。そしてまた長州力で知った彼我の差を思う。
 日本人は罪人でも死んだら神様になる。水に流す。長州力は対立したUWFインターの連中を、「死んだら墓石にクソをぶっかけてやる」と言った。長州は日本育ちの朝鮮語を話せない在日朝鮮人だが、その発想の根源は骨の髄まで朝鮮人なのだと思い知った。これは非難でも批判でもない。単なる彼我の差の確認である。長州の発言はとても新鮮だった。

 きょうの千代大海引退のニュースを見ていると、日本人はやさしいなあと思いつつ、同時に長州の発言のような朝鮮人的感覚も必要なのではないかと思えてくる。日本人的やさしさの生温さが気味悪くも感じる。
 街角の声。「えっ、ほんとですか!」とおどろくおばさん。「こんなに早くですか? もっともっとがんばってほしかった」って(笑)、ほんとに相撲を知っているのか。取材班もいったい誰に訊いているんだ。もうすこしまともな市民に訊け。こんなに早くじゃない、遅すぎたんだ。

 それこそ朝鮮人的に「ちょっとひどい形でしがみつきすぎましたよね。今の大関制度は問題だと思います。引退は遅すぎますよ!」ぐらい言うひとがいるべきだ。だがどこもかしこも「引退を惜しむ声」ばかりだった。いたとしてもテレビ局が消したのか。
 あんな「二場所連続負け越さなければ大関の地位保持」という仕組みを利用し、大関互助組合と呼ばれた不可解な勝敗で長らえたひどい成績の大関などすこしも惜しくない。大相撲の恥さらしだった。腐った相撲体質の象徴だった。

 もちろん大相撲は興行であり見世物だから、あんなのがいてもいい。クンロク以下のハチナナ大関の存在も、それはそれで大相撲として楽しめた。
 日本人はやさしい。いいことだ。だがこのやさしさで国際社会のやりとりが出来るのか。よくもわるくも島国根性である。中国や朝鮮やアメリカと、こんな自己満足感覚で五分の外交が出来るのか。帰化もしていない外国人に参政権を与えるなんてバカなことをやっていたら国は潰れる。千代大海礼讃にそれを感じた。



 高見盛の感想。同い年の彼が日大を出て入門したとき、千代大海はもう大関だった。同い年なのにあんなに強いひとがいるのかと感嘆したという高見盛の贈る言葉はうつくしい。

 若の里の対千代大海戦成績は5対26。いかに千代大海の出世が早く、同期のあいだで強かったかが解る。

 私は千代大海が嫌いだったわけではない。それどころか大関に駆けあがるころの日の出の勢いの彼は大好きだった。父と一緒に参加していた「指名した力士の成績で景品を争う大相撲トトカルチョ」ではいつも千代大海を指名していた。しかしその分、大関という地位にしがみつくようになってからは醜かった。引き際を誤ったひとである。

 本人が言う「思い出の一番」は、平成11年初場所の初優勝だとか。三代目若乃花との優勝決定戦だ。この相撲、突っ張りではないのがおもしろい。千代大海が四つになって若乃花に勝っている。
 優勝旗を渡すのは九重。このころはもう横綱間違いなしと思ったものだった。

 千代大海最後の相手は魁皇。これは誰もが記憶するだろうが、引退により不戦勝になったのは把瑠都。把瑠都ファンとしてこれは覚えておこう。



 豊真将が高校の後輩でもある栃煌山に0対8とまったく勝てないのは私にとっての七不思議。今回やっと勝った。しかしなんで一度も勝てなかったのか。

 朝赤龍、猛虎浪、玉鷲、翔天狼とモンゴル人力士同士、阿覧、黒海の白人力士同士による熱戦が続き場内が沸く。アナも解説陣も絶讃。

 琴光喜と栃ノ心は全敗対決。栃ノ心が勝って初日を出す。がっぷり四つになってのいい相撲だった。しかし内容は琴光喜の力負け。琴光喜はどうしたのだろう。心配になってきた。

 琴光喜も千代大海と同い年。でも日大を出て鳴り物入りで入門したときはもう中卒の千代大海は大関だった。琴光喜と千代大海の対決は42回とか。対戦成績をアナは言ってくれない。

 豊ノ島が日馬富士を下手投げでぶん投げる。が、もの言い。ヴィデオ映像では同体だが、投げた豊ノ島と投げられた日馬富士では立場が違う。つまらん取り直しなんて結論を出すなよと案じたが、すんなり軍配通り豊ノ島の勝ち。よかった。

 琴欧洲が鶴竜に下手投げで敗れる。なんとなく心配だった。琴欧洲はまたちいさな相撲を取ってしまった。相手に合わせたら鶴竜の方が巧い。でもちいさいのが大きなひとを投げるという、これはこれで相撲の醍醐味でもある。

 琴奨菊が魁皇を破る。これまたいい相撲だった。
 千代大海引退の日に四大関全滅。なんとも象徴的。



 白鵬、豪栄道に完勝。強いわ。膝がやわらかく曲がって地を掴んでいる。心配無用。豪栄道はこれで9回目の挑戦も白鵬に勝てず。明日は朝青龍戦。
 五日目 向正面の解説に稲川と出る。誰だろう。元金開山とある。幕内と十両をエレベーターしていた金開山か。在日朝鮮人のキムさんだ。親方になっているとは知らなかった。

 白馬猛虎浪の相撲がいい。なんのかんの言ってもモンゴル人力士はいい。幕内序盤戦の楽しみ。明らかに十両と幕内がちがうのが不思議。一線がある。そういや猛虎浪は去年帰化したとか。ずいぶんと早い決断だ。スター力士が日本に帰化するとモンゴルから非難の声が上がるのだが、猛虎浪クラスではそれはなしか。

 阿覧も先日の変化以後、改心した?相撲。今日もまっすぐ前に出るいい相撲だった。こういう相撲を取る伸びると北の富士も誉めた。

 栃煌山岩木山もいい相撲。岩木山の闘志はすばらしい。栃煌山、白星先行。今場所は勝ち越せるか。

 翔天狼も黒星先行だがいい相撲を取っている。昨年白鵬に黒星をつけた唯一の平幕。あれがなかったら白鵬の記録はまたちがったものになっていた。でもあの敗戦で学んだことも大きいだろう。

 今日の玉鷲は幕内後半戦の出番。豪風を突きだした。玉鷲も強くなる。モンゴル人。先が楽しみな力士は外国人力士ばかり。



 今場所の稀勢の里はすごい。苦手の把瑠都や琴奨菊に完勝している。きょうは嘉風。これはちいさな相手だけに楽勝。これで5連勝。白鵬と並んでの全勝だ。今場所は二桁行くか。 



 把瑠都と魁皇。対戦成績は把瑠都の2対5。去年は5回対戦して把瑠都の2勝3敗。キラー魁皇の小手投げに苦労している。恐怖感があるのか。楽しみな一戦だ。その態勢にならなければいい。
 そう思ったらその通りの展開になった。まっすぐ当たって突き放す形。斜めになって腕を取られるような形にはしなかった。これでよし。序盤を4勝1敗で乗りきった。負けたのは稀勢の里戦のみ。いつもならお客さんなのだが今場所の稀勢の里はすごかった。正面から把瑠都を突破した。なんとかこのペースで二桁を目ざしてもらいたい。両横綱以外にこわい相手はいない。 

 勝利インタビュウで、やはり小手投げを警戒し、へたに廻しにこだわらず、取るときは外から取るようにと気をつけていたようだ。それさえ封じれば怖い相手ではない。



 琴光喜が豊ノ島を破って初白星。とはいえけっこうあぶない内容だった。豊ノ島というのはあんなにちいさいのに強いんだなあ。



 鶴竜が日馬富士相手に一気に出たが土俵際で下手投げでぶんなげられた。腰高のまま勝負を焦ったか。こういう豪快な投げもまた相撲の醍醐味。



 琴欧洲の相手は栃ノ心。大きな力士同士が四つになり、速い動きの豪快な相撲。いい勝負だった。テーピングされた栃ノ心の右腕はかなり悪いようだ。白人三強は、琴欧洲、把瑠都に栃ノ心、となりそうだ。みな躰があるし楽しみである。



◎ 豪栄道、初金星!

 朝青龍が張り差しをするが、毎度わかっている豪栄道はひるまない。結果的に土俵際の逆転気味の勝利だけに両手をあげての礼賛は出来ないが、ともあれ張り差し連発のバカがそれで負けたのはうれしい。
 私は朝青龍が嫌いなわけではないから(それはもうバッシングに書いた大量の擁護文章で明らかだ)、豪栄道に限らず誰かが変化技で勝ったりしたらよろこばない。しかし今回の勝利は、私が日ごろから止めるべきと繰り返している(私に限らず各界関係者多数も口にしている)張り差しを安易に出しての自滅だから、ついつい言祝いでしまう(笑)。

《豪栄道が、念願の座布団を舞わせた。15度目の横綱戦で、朝青龍から初金星。館内を舞う座布団に「気持ちがいいです。いつかはやりたいと思っていたんで」と、目を細めた。土俵際の逆転。「そこまでいい相撲じゃないです。餘裕なかったんで。(勝って)びっくりしました。頭の中が真っ白になった」と、防戦一方の一番を振り返った。》(ニッカンスポーツより)

 そう、本人も自覚しているように「そこまでいい相撲ではない」のだが、ともあれ目出度い。ドルジはこれでより気を引き締めるだろう。



 白鵬は万全。雅山と四つになったが、常に自分から動き、躰のやわらかさを活かして、あの重い雅山を楽々とコントロールして行く。雅山はただ玩ばれるよう。手練手管に長けた老練な男に表にされ裏にされいいように躰をあしらわれるおぼこのよう(笑)。あらためて白鵬の凄味が出た一番だった。

 昨年の朝青龍は、終盤まで全勝で白鵬と競って行き、そのまま決定戦に持ちこんで優勝する形と、12日目あたりで初黒星を喫すると、そこからもう緊張の糸が切れ連敗する形の2パターン。後者の場合は白鵬優勝と日馬富士優勝だった。今回は序盤での一敗。さてどうなるか。早くも全勝は白鵬と稀勢の里のみ。白鵬に気のゆるみが出ないか気になる。
 六日目  関ノ戸親方?

 十両から見る。境川と隠岐の海が6連勝。ともに期待されている二人。中入りまでの解説は関ノ戸。誰だろうと思ったら武雄山だった。「大相撲記録の玉手箱」というすばらしいサイトがある。そこに調べに行ったら江戸時代から続く名跡だけにあまりに関ノ戸親方がいすぎてこんがらがる。しかしそこで「せきのと」は「関ノ戸」とカタカナのノであることを知って検索したらすぐにWikipediaに繋がり武雄山と確認できた。こういう細かいことが相撲では大きかったりする。



 幕内解説は琴風の尾車。向正面が舛田山の千賀ノ浦。
 話題は昨日、珍しく序盤戦で星を落とした朝青龍のこと。相撲内容では負けていないので心配はないでみな一致している。私もそう思う。たいしたことはない。張り差しで負けたことがうれしいだけで(笑)。




 磋牙司のことを初めて書いたのは彼が新十両になったときだった。もう二年ぐらい経つのか。そのとき、すでに禿げ始めていたので、幕内に上がりたいという夢を叶えたいなら、がんばらないと髪の毛がなくなるぞと書いた。その後幕下に落ちたり復帰したりしてまだ幕内には上がれずにいる。きょうは取組の都合で十両ながら幕内で取ることになった。

 サイドにはまだたっぷりあるが正面から見るとほとんどなくなっている。よって大銀杏ではなく、江戸時代のチョンマゲのように月代を剃っているかのようだ。いや物の本によると、江戸時代は力士も月代を剃っていたらしい。まあとにかく、白露山ほど禿げてしまうと問題だが、磋牙司ぐらいだと落ち武者のような雰囲気があってわるくない。
 このまま時代劇に出られそうだ。


---------------

 今日の注目は「琴欧洲対稀勢の里」。昨年は5回対戦して琴欧洲の全勝。かつて稀勢の里が一方的にリードしていた対戦成績だが、7-7に追いつかれ、いま7-12と逆転されて離されつつある。

 というところで私の注目の一番「把瑠都対琴奨菊」。先場所琴奨菊が双差しになり、把瑠都に上手を取らせないままがぶって勝った一番は見事だった。いまVTRで流れている。私はあのとき、「極めてしまえ!」と思ったのだが把瑠都はそれが出来なかった。さて今場所はどうするか。

 組まずに一方的に突きだした。これは把瑠都の作戦勝ち。解説陣も「よく考えている」と絶讃。いい相撲だった。先場所が完敗だっただけに研究の跡が見える今場所の相撲はすばらしい。そしてまた「琴奨菊絶好の態勢」にさえさせなければ、ふたりの力差はかなりのものだとも確認。把瑠都が負けるのは先場所のように「雑な相撲」を取ったときだけだろう。



 さて注目の一番。
○琴欧洲 ●稀勢の里

 どすんと音が聞こえてくるような真正面からのぶつかり。琴欧洲が低く立って素速く四つになり稀勢の里を攻めたてる。一気に土俵際。しかし稀勢の里のまわしがゆるく上手が一枚まわしになる。どうにもゆるい廻しは嫌いだ。そのこともあって一瞬押しかえされるが、そこから二度目の一気の寄りで勝負を決めた。これで稀勢の里の全勝が消えた。
 毎度書くが、こういうとき「どっちのファンか」が露骨に出る。私は明らかに「日本人期待の星」の稀勢の里より琴欧洲を応援していた。



 豊ノ島が魁皇を投げすてた。すくい投げ。ほんとにこのひとは相撲のおもしろさ、奥深さを教えてくれる。
 対戦はちょうど一年ぶり。豊ノ島が肘を痛めて低迷していたからだ。その肘を破壊したのが一年前の魁皇の小手投げ。膝が悪いのか豊ノ島のくずしに着いてこられない魁皇を玩ぶかのように翻弄して投げすてたのは快感だったろう。



 琴光喜が雅山にのど輪をされながらも土俵際まで押しこむ。がそこでの引き技であっさりと負けてしまう。これで休場か。



 豪栄道と日馬富士が頭からぶつかるいい立ち合い。そのあと日馬富士が右手をたぐって引いたため、一気に豪栄道が押しこんだ。が、そこから変わり身で日馬富士の勝ち。決まり手は「引っかけ」。千賀ノ浦が「ひやっとしたかも知れないが、まだまだ餘裕があった」のようなことを言って日馬富士を贔屓していたが、感心できる相撲ではない。



 白鵬が北勝力相手にほれぼれするような一方的突きだし。速くて低くて柔軟で鋭く満点の内容。これで30連勝。30連勝を二度したのは双葉山と大鵬しかいないとか。これでまた偉大なふたりと並ぶ記録を達成したことになる。
 北勝力に負けるとは思わないが、一応彼は朝青龍の35連勝を止めた男なのだ。しかしまあいい相撲だなあ。胸の中を涼風が吹きぬけるようだ。



 バカ青龍が昨日の負けに懲りずまた張り差し。というか臆病者だからこれをしないと不安でいられないのだろう。鶴竜はそれにはびびらなかったが四つになってからは力負け。これは正当な現状の実力差なのだろう。しかし朝青龍にかつての燃えあがるようなファイティングスピリットも射竦めるような眼光も感じない。鶴竜もまだ朝青龍には一度も勝っていないが遠からず勝てるだろう。まだまだ憎まれ役としてがんばって欲しいのだが。

 七日目 きょうの注目は一番は「白鵬対把瑠都」。大一番になるのはまちがいない。まだ一度も勝っていない把瑠都だが



 ゲストに野村克也。照国ファンということから昭和17年の双葉山照国戦が流れる。見たことのない映像なので注視する。
仕切り板に両手をついたきれいな立ち合いだった。安心する。ほっとする。
 2ちゃんねるの相撲板等で輪湖時代を礼讃するスレがあるのだが、私は両手をつくどころかほとんど中腰で立っているあの時代の相撲を讃える気にはなれない。あの時代を知っているから、相撲内容やライバル関係がおもしろさは認めるとしても、いま見ると、あの立ち合いだけで白けてしまう。二子山の改革から現在の正しい形にもどったが、まったく、あの当時、なんであんなひどい形が許されていたのか不思議でならない。今回、戦前の正しい立ち合いが見られて納得した。2ちゃんねるで輪湖時代を礼讃するひとはあの立ち合いをどう思っているのだろう。訊いてみたいものだ。



 野村の語りはおもしろい。このひとは自分を月見草と言うけど、それはあくまでもON人気と比してであり、このひとの実績は充分にひまわりだ。戦後初の三冠王だし。もっともあのころのパリーグは人気なかったからなあ。
 女の好みだけはわからない(笑)。あの夫婦を見ていると男と女の業の深さとつよさを感じる。子は一世夫婦は二世とはよくいったものだ。



 連日、土佐豊の相撲が目立つ。このひとも出世するだろう。

 野村の率直な感想と、それに対して露骨な反対意見は言えず、遠慮しつつも意見を言うアナと舞の海に笑える。

 岩木山が猛虎浪に寄り切りで勝つ。かなりあぶない小手投げを極めていた。あぶない技だとあらためて思う。久島海のときにいつも感じたことだが。

 北太樹が自分より背の高い阿覧の両腕を極めて勝つ。決まり手は「きめ出し」。舞の海の解説によると、北太樹のそれは戦略ではなく苦しまぎれとのこと。それを問うたのは野村。いい質問だ。そしてまた舞の海の「こういう形で負けてしまうのは、阿覧がまだ相撲をしらないから」も秀逸。勉強になる。でも流れはともかく、自分より背の高い力士、しかも剛腕の白人力士を、カンヌキで極めて持ちだしたのは豪快。



 黒海と豊真将。押したり引いたりの末、土俵際で黒海の引き技に豊真将が転げ落ちる。野村がまじめな豊真将を絶讃。相変わらずの美しいお辞儀。でも野村はまた「真面目すぎるんじゃないか」と案じる。「疑うことも必要」との箴言。 

 まあそうかもしれんが、私は豊真将が大好きだ。岩木山、豊真将、高見盛、いてくれるだけでいい。存在自体が善行だ。舞の海の言うように豊真将が変化し、「変化するかも知れない」と相手に思わせることは勝率アップに繋がるかも知れないが、そんな豊真将なんて見たくない。

 というところで高見盛。相手は曲者時天空。うまく寄り切る。いてくれるだけでいいが勝ってくれればなお嬉しい。思えば、本割で負けたことが悔しく出稽古に出かけ、高見盛の肩をバックドロップで壊したのも朝青龍だった。豊ノ島もそうだった。ガチンコの世界として朝青龍の正確を表す「ちょっといい話」であると同時に、「いやーな話」でもある。



 野村は若の里が大好きなんだとか。見直した。センスがいい。
でも「大関候補だと思ったんだけど」ってのはお粗末(笑)。なってたよ、ずっと。
 安定期、確実に関脇で勝ち越し、10勝はするもののどうしても12勝、13勝の大勝ちが出来ず大関になる機会を逃した。
 むかしの長谷川を別にすれば、近年ではこの若の里ほど大関になれないのが残念だった力士はいない。あのときになっていたら千代大海や魁皇よりずっと安定した成績を残せたろう。



雅山は一時大関候補だったのになあ」とまた野村のオオボケ発言。すかさずアナが「いえ、大関でした」とフォロー。「相撲の世界は変化が早い」って言い訳。いったいどの程度の相撲ファンなんだ(笑)。

 野村と舞の海の意見が合うので、放送席はほのぼのムード(笑)。
 そのあと野村が舞の海讃歌として言った、「舞の海さんと話していると、野球も相撲も頭や」は至言。



 豊ノ島と旭天鵬。毎日豊ノ島が魅せてくれる。21センチの身長差。豊ノ島はいつも旭天鵬の懐にもぐりこむ。まともならこれで絶対有利なのだが、ここから小兵料理が旭天鵬は巧い。今回も豊ノ島が首投げを放ったが捨て身技だった。しかもすっぽ抜けになった。投げた豊ノ島も裏返ったきわどい結果。豊ノ島の勝ち。もの言いはつかず。おもしろいわあ豊ノ島。



 日馬富士が正面から稀勢の里に完勝。稀勢の里2敗。ここから崩れるか。

 琴欧洲が垣添に内にもぐられ、ふりまわされて危ない場面。このひと、ちいさい力士に弱いのだ。なんとか勝った。ここで落伍してもらっては困る。終盤まで優勝争いしてくれないと。



 白鵬と把瑠都。四つになり大相撲になるかと思ったが速い展開。巻替えの瞬間、把瑠都の豪快なすくい投げが決まる。白鵬、宙を舞った。
 ここのところ毎場所、白鵬に全勝優勝して欲しいので負けては困ると思いつつ、そろそろ把瑠都が勝つ番ではないかとも思え勝負中は複雑な気分だった。ここのところずっと私のこの「相撲日記」は「把瑠都応援日記」だが、その前は「琴欧洲応援日記」であり、さらにその前は熱心な「白鵬応援日記」だった。
 きょうは案じる前にあっさりと結果が出てしまった。しかしまあなんとも豪快な結果。

------------------------------

 把瑠都、ついに白鵬を破る! 12度目の正直!



 把瑠都は白鵬と11回戦って一度も勝っていない。でも把瑠都と白鵬戦は毎場所熱戦だった。白鵬が本気で勝ちに行っているのが見え、把瑠都の力と怖さを熟知しているのがよくわかった。
 先場所、そろそろ把瑠都が勝つのでは強く思った。年間最多勝があったので白鵬勝ちを望んだ。全力でつぶしに行った白鵬の勝ちだった。しかし朝青龍が衰えた今、白鵬を力で圧倒して勝つのはもうこのひとしかいないと確信した。今場所は白鵬の連勝記録を応援していたので、なんとか白鵬が巧さで凌いで欲しいと願っていたのだが、とうとうその日がやってきた。巻きかえに行った瞬間のすくい投げで、この歴史に残る最強横綱をぶん投げてしまった。

 来場所からのふたりの対決を予測するなら、白鵬が負けない相撲を取り、しばらくは勝つだろうが、そのうちまた今日のような形が出現するだろう。白鵬は負けない相撲をするならまだまだ把瑠都より強い。うまい。でも彼はそれをよしとしていないので鮮やかなことをしようとする。それはこれからも他の力士にはそうしたとしても、こと力では自分以上のものがある把瑠都には、技を活かした負けない相撲を取るようになるだろう。

 八日目

 解説は貴乃花。正面解説は6年ぶりとか。そうなの? 二、三年前に見た記憶があるが勘違いか。理事長選挙で話題沸騰のこの時期、旧勢力から立候補が否定され、苦戦を伝えられる貴乃花を呼んだNHKの英断に拍手。

 貴乃花は新入幕時、184センチ110キロだったという話題。いま幕内最軽量の白馬129キロよりも19キロも軽かったという話。あのころの十代の貴花田は筋肉質の少年だった。懐かしい話だ。
そこから50キロ近くも増やして行く。曙や武蔵丸対策等の大型力士だ。それで肝臓を悪くし、汚い肌になり、力士生命を縮めて行く。しかしそれはサモアン旋風の前に必然だった。

 理事選の話には触れないものと思っていたらアナが振ったので驚いた。常識的なことにしか触れなかったが選挙はどうなるのだろう。いまのところ聯合軍の前に貴乃花落選の可能性が高い。
 しかしNHKが貴乃花をゲストに呼び、正面から理事選の話をふったということは、ふつうに考えれば「NHKは貴乃花支持を表明した」と解釈していいのだろう。大相撲中継をしているNHKは相撲協会に大きな影響力を持つ。落選といわれる貴乃花に心強い味方が登場した。





 朝赤龍と土佐豊のすごい投げ合い。ふたりともむかしの若貴を思い出すような顔から落ちる相撲。すばらしい。ほぼ同体と見えたが解説席の貴乃花は淡々と「朝赤龍の髷が気になりますね」。VTRを見るとなるほど朝青龍の髷が一瞬速く地を嘗めているのだった。すごい観察能力、動体視力である。相撲に関しては「同体視力」なんてダジャレも可能か。アナも絶句していた。

 軍配通り土佐豊の勝ち。いやあいい相撲だった。淡々と話す貴乃花の凄味も格別だ(笑)。



 安美錦登場。貴乃花の最後の相手だった。相手は玉鷲。これまた最高の一番。
 頭からぶつかる激しい立ち合い。いい立ち合いだなあ。ペチンと横面を張る汚らしい張り差しとはちがう。これが本物の立ち合いだ。玉鷲の激しい出足が6勝1敗と好調の安美錦を圧倒し、一方的に突きだした。玉鷲は楽しみだ。でもこれもモンゴル人。日本人贔屓は残念か。私は応援する。



 若の里と旭天鵬の同期生対決。モンゴル人力士第一期生ももう現役は旭天鵬ひとり。まだまだ取れるが大島部屋を継ぐのでもうすぐ引退するのだろう。それが残念だ。このひとこそ「四十代幕内力士」が出来るひとなのに。
 


 栃ノ心が豪栄道相手に変化。失望。よく覚えておこう。
 豪栄道は落ちずについて行く。栃ノ心の膝にしがみつくようにして、落ちなかった。腕がかなり悪いようだがこの変化には落胆。栃ノ心にはやってほしくなかった。

 レポートが入る。ヴィデオを見た栃ノ心はひとこと「ああ、落ちなかったか」と言ったそうで、安易な引きに行った反省はないようだ。残念。豪栄道の方は栃ノ心は腕を痛めているので変化もあると読んでいたとか。



 豊ノ島と琴奨菊の同期生対決。こどもの頃からのライバル。ところが対戦成績はここまで12 対4と琴奨菊の圧倒的リード。あんなに強くて巧い豊ノ島なのに琴奨菊にはかなわない。

 ここで向正面解説の楯山(玉春日)にアナが、誰がライバルだったかと問うが、玉春日はべつにいなかったと白ける答。ひな壇藝人だったら失格である(笑)。
 今日も琴奨菊の電車道。合い口ってのは不思議だ。




 把瑠都と日馬富士。白鵬を破って注目の把瑠都。ここまで対戦成績は日馬富士の12対7。こうして見ればたいしたものだ、安馬も。昨年は日馬富士の4対2。ただここ二場所、把瑠都が連勝している。ともに一敗。負けた方が一歩退く。

 左四つになったが日馬富士が下手を取っているのみ。把瑠都が上手を取ると場内が沸いた。やっとそこまで来たかと把瑠都の大ファンとしては感動。上手を取ったら怪物なのをもうだれもが知っている。期待通り、あとは日馬富士を相手にしなかった。強いなあ。

 インタビュウでは笑顔。貴乃花がいい表情をしていると誉める。貴乃花は旭天鵬や安美錦のときも「いい相撲とりだ」と誉めていて、ことばの端々から相撲愛が伝わってきて気持ちがいい。

 昨日白鵬を負かしたとき頭の中が真っ白になった、今までの人生で一度も経験したことがなかった感覚とのこと。怪物がまた一皮剥けた。朝青龍戦が楽しみだ。



 琴欧洲が北勝力に快勝。まあ北勝力はワンパターンの双手突きしかないから心配はなかった。ここまでの戦績は12戦全勝。
 明日は把瑠都と琴欧洲戦。両方好きなので応援に悩む。



 魁皇ががっぷり四つから鶴竜を負かした。これはすごい。まだまだ強い。充実一途の鶴竜を力で圧倒した。同期の貴乃花は引退してもう7年。貴乃花の解説の日にいい勝利だった。



 白鵬対稀勢の里は15対4。ここのところ白鵬が6連勝。でも内容はけっこう接戦。稀勢の里が実力を発揮したいい相撲を取っている。
 今日もすばらしい熱戦。敗れはしたが稀勢の里は充分に実力をアピールした。
 九日目  正面解説は貴ノ浪の音羽山。特別ゲストに佐ノ山親方こと千代大海。スーツにネクタイ。



 岩木山と土佐豊。岩木山が充分に態勢になり攻めに攻めるが土佐豊が懸命に耐える。この粘りが素晴らしい。力の入ったいい相撲。岩木山の外掛けに力つきる。ふたりともいい力士だ。



 豊真将と北太樹。今場所北太樹はここまで7勝1敗と好調。幕内初の勝ち越しが掛かる。中卒で入門してからもう12年目。27歳。やっと十両以上での勝ち越しが定着してきた。苦労人である。応援したい。誕生日が同じなので身近に関している。北の湖部屋からは久々の幕内力士だ。

 すばらしい熱戦になった。頭でごつんとぶつかる立ち合いから、最初は土俵際まで豊真将が追いこむが、そこでくるりと態勢を入れかえてからは、今度は北太樹が攻める。四つになって一息。大きな拍手が沸く。そこからまた北太樹が頭をつけて攻めたてるが、豊真将は容易に土俵を割らない。土俵際で今度は豊真将が態勢を入れかえ寄り切られた。場内に拍手が沸く。ゲストの千代大海もいい相撲と誉める。なかなか落ちない豊真将のよさが出た一番。



 というところで千代大海の思い出の一番として、貴乃花と曙を負かした相撲が流れる。関脇時代の日の出の勢いの相撲。あのころはいい力士だったなあと胸が熱くなる。最初からチヨスや龍二さんだったわけではない。

 同い年の高見盛と栃乃洋の一番。高見盛は栃乃洋に大きく勝ち越している。千代大海との対戦成績は9対3。戦績は勝っているが際どい相撲も多かったと千代大海が語る。高見盛の相撲は器用で繊細と誉める。人柄が良い。晩年はチヨスであり龍二さんだったが、私はすっかり佐ノ山親方のファンになってしまった。本格的解説デビュウが楽しみだ。

 相撲は千代大海の誉め言葉に応じるかのように、素速い立ち合いから栃乃洋の横にくっついた高見盛の完勝。

 隣に座っている貴ノ浪には21対7と圧倒的。意外だ。そうだったか。年齢的に上り坂と下り坂の出会いなのだが、それにしても差がある。貴ノ浪は突っ張りが大の苦手だったようだ。

 ここで向正面解説の栃乃花と千代大海の一番。これは新入幕の栃乃花が大関千代大海に挑んだもの。当時の千代大海は元気いっぱい。回転の速い威力充分の突っ張りで栃乃花を攻めたてる。しかし躰の軟らかい栃乃花は強風を受けとめる竹のようにしなってそれを受けとめる。とうとう疲れはてた千代大海が引いてしまい土俵際でふたり転げ落ちる。際どく栃乃花の勝ち。しかしまあほれぼれするいい相撲。こんな時代もあった。

 このときの千代大海の引きを数値で表すなら8まで押していた。そこまで耐えた栃乃花が見事。千代大海も、あそこまで突っ張って、それでも落ちなければ疲れが出て引きたくもなろう。

 やがてこの千代大海の突っ張り度合は、8から5、5から3と引きが早くなって行く。晩年は闘牙のように2か3突っ張ってすぐに引くというみっともない相撲になったが、それはそれでタイミングのよさでそこそこの成績を残していた。栃乃花との一番は負けた相撲だったが千代大海の良さが出ている相撲だった。

 栃乃花の親方名は二十山。二十山といえば大関北天祐だ。急死したのはいつだったか。調べる。2006年か。そのあとすぐに栃乃花かと思い調べる。燁司(れんつかさ。むかしはこのレンの字が表示できなかった。PCの進歩がうれしい)が継いでいて栃乃花になってからは日が浅いようだ。現役時からハンサムだったが親方姿もかっこいい。

 しかしまあいくら相撲が大好きでも常にアンテナを張っているのではなく漫然と見ているだけなので親方名の変化にはついて行けない。でも居直るなら、その漫然とといういいかげんさも気に入っている。これ以上熱心になるのもどうかと思う。相撲を見ながらこういうことが出て来るとWikipediaや「大相撲記録の玉手箱」に調べに行くのも楽しい。



 というところで阿覧が玉乃島を破って7勝目。引き技を使ったりするのでまだ信じられない力士。前に出る正攻法で充分強いいい相撲を取るので大成して欲しいのだがどうなのだろう。上半身の強い完全な白人型力士なので、私には下半身のいい栃ノ心の方が好みなのだろう。舞の海のように「阿蘭はまだ相撲を知らないから」と長い目で見るべきとも思うが。



 玉鷲と時天空。モンゴル同士の対決。時天空がチンピラのケンカのような下品な張り差し。モンゴル人力士はみな張り差しが好きだ。これも国民性なのだろう。以前、平幕のモンゴル人力士が大関に対して平然と張り差しを連発したころはちょっと問題になった。嫌いな私はしない力士が好きになって行く。今後も玉鷲好きの時天空嫌いは進行しそう。

 時天空には旭鷲山、旭天鵬に通じる「本気になると強いのだが、幕内エレベーターを生業(なりわい)としている」というキラーのおもむきがあって好きだったのだが、次第にただの変態力士として興味が薄れつつある。それだけ鶴竜や玉鷲のようなより魅力的なモンゴル人力士が出て来たからでもある。

 右足親指を痛めた時天空がかなり痛そう。張り差しなんかやるからだ。これで休場か。



 豪栄道と雅山。くいついた豪栄道が一方的に攻めたて雅山を突きだす。寄り倒し。なのにもの言い。れいによってビデオで見ると厳密には豪栄道の肘が落ちるのが早い。しかし100%豪栄道の勝った相撲。取り直しなどとつまらんことにならないことを祈る。無事豪栄道の勝ち。よかった。無意味なもの言いが多すぎる。ビデオでそうでも相撲とはなにかをファンはわかっている。いやでもぎりぎりの相撲には万人に納得させるためついた方がいいのか。



 鶴竜が豊ノ島を相手にしなかった。ここまで対戦成績は五分だが、なんだか力に差がつきつつあるように感じた。



 さあてきょうの大一番、把瑠都対琴欧洲
 音羽山は大男同士だがタイプがちがうので楽しみ、と語る。そう、このふたり、タイプが違うのだ。

 対戦成績は琴欧洲の7対4。それはいいとして昨年一年、6度の闘いが琴欧洲の5対1と圧倒的なのは意外。意外って毎場所目をこらして注目している楽しみな一番なのにそんなことを覚えとらんのか。なさけない。でもその5対1を引くと2対3。十両全勝優勝でのし上がってきた把瑠都が自分より背の高いひとと対戦するのは初めてなので楽しみと語っていたあのころは把瑠都が優勢だったのか。昨年の5対1という圧倒的な成績に琴欧洲の研究を感じる。

 把瑠都は二桁勝利をあげる場所、どうしても勝てないのが両横綱だったから、もうひとり苦手として琴欧洲がいたことになる。さて今場所はどうか。ふたりともまだ一敗。負けた方が優勝から退くことになる。
 私は今場所も一敗で白鵬の優勝と読んでいるので、優勝を争うなら一敗をまもらねばならない。もしも把瑠都が勝ち進めばすでに白鵬との対戦は済んでいるので優勝決定戦になる。

 長身で大きなふたりの仕切りは華がある。琴欧洲は胸毛が濃く筋肉質。把瑠都はもう見るからに白人という色白で金髪。白鵬と並ぶと琴欧洲も褐色に見える。まあ昔からは想像すらも出来ない夢の土俵上である。色黒のサモア系がいなくなってしまったのが淋しい。三役にひとりぐらい小錦、武蔵丸タイプがいたらもっと国際的だった。

 なんともわくわくする立ち合いの瞬間。右四つ。最初に把瑠都が左上手を取る。半身に近い形。引きつけた把瑠都が頭をつける。琴欧洲双差しになるが頭をつけた把瑠都がそのまま寄り切った。

 ここでアナが絶妙のレポート。「頭をつける相撲は?」と取組前に振ったのだそうだ。「やったことがないのでわからない」と把瑠都は応えた。琴欧洲は自分よりちいさい相手に頭をつけたりする。把瑠都はない。横の動きにもちこんだ把瑠都の完勝。いやあいい相撲だった。これで把瑠都は1横綱4大関を破った。二敗の琴欧洲は一方後退。




○朝青龍 ●稀勢の里

 またも張り差し(笑)。バカの一つ覚え。きょうのはもろにビンタだった(笑)。左。なんとも不細工。そこから左へ変化。はたいて二本差して、呼びもどし気味の下手投げで叩きつけた。ひどい相撲。語る気にもならない。形としては完勝だが。下のサンスポの記事にもあるが、横綱が平幕相手に「奇襲」してどうする。



 朝青龍の奇襲が決まった。立ち合いで左で張るとすぐに左へ変化。もろ差しから豪快な切り返しで稀勢の里を土俵にたたきつけ「流れだね。最初からもろ差しになろうと思っていた」と上機嫌な様子で話した。

 難敵を相手に仕切りから気合十分。にらんでくる稀勢の里には「いつもより気合が入っていたね。勘弁してよ」と苦笑いするが、自らも懸賞金を受け取った後もにらみつけるほどだった。




 ふてぶてしく、肩を揺らして、朝青龍が花道を引き揚げてくる。勝てば、文句はないだろう-顔に浮き出る感情が、許せない。初場所後の会合で5期10年の任期を終える内館委員がこの日、観戦に訪れ、かねてから批判してきた横綱の言動をまたも痛烈に批判した。

 稀勢の里に切り返しで完勝した朝青龍は「立ち合いは流れ。浅めに(2本)入ったのがよかったな」。仕切っている間、相手を威嚇するようにメンチを切ったが、軍配が返ると、その威勢のよさはどこへやら。当たりをまともに受け止めず、左張り手を見舞った後は素早く左へ変化した。



 平幕力士にまともに胸を出さない横綱に、
内館委員が最後の怒りをみせる。「(朝青龍は)変化をしないのが持ち味で、そこは評価していた。メンチを切るほどの相撲じゃない。メンチを切るほどの相撲を取ってから、メンチを切れ!」とピシャリ。返す刀で「以前にはキップのよさがあったけど、それができないのは本人に陰りがある」と力の衰えも指摘した。

 最後の最後まで「横綱の品格」を問われた朝青龍は、「うるせいな、おめえ!」と報道陣を一喝するほどご機嫌ななめに。(サンスポより)


------------------------------

 内館が正論。平幕相手に変化する横綱がいるか。土俵外の言行に問題はあっても、相撲がいいから支持してきた。こんなことをやられては支持しようがない。

 音羽山は「張り差しが来るとわかっているのに稀勢の里には工夫がない。むきにならずに、もっと立ち合いに工夫を」とコメント。

 朝青龍のくだらない張り差しを最もよく真似ている日本人力士が稀勢の里である。このふたりは似ているのだ。朝青龍の張り差しが自分に効果的だから、自分の張り差しも他人に効果的、と思って多用しているのだろう。稀勢の里も張り差しをしてふたりで張りあいをすればいいのにね(笑)。顔が腫れ上がるぐらいにさ。



 ここで連日の把瑠都のインタビュウ。ニコニコしていて評判がいい。「風邪を引かないようにして」と言ったのは昨日。きょうは「あまり緊張してないですね」に「私も人間ですから……緊張しています」。アナも佐ノ山もみな微苦笑。好印象。



 千代大海とアナの話。平成十九年の話。千代大海は白鵬の小手投げで肘を壊し、それから急激に相撲が衰えた。あれが引退の遠因とアナが言い、千代大海もそれを認めていた。まったく小手投げという技は問題である。常人ならともかくデブの相撲とりだから命取りになる。ただあのときの白鵬のそれは流れの中で出たもので、久島海や魁皇の確信犯とは違う。
 十日目  玉垣解説はつまらない

 十両解説は智ノ花の玉垣。アナの問う把瑠都に対して「やはりあの、力がありますね。力があるので毎場所成績がいいですよね」「大関候補と言われてますのでね、がんばって欲しいですね」。つまんねえ(笑)。相撲に興味のない田舎の中学生でも街角のおばさんでも言える感想だ。なんなんだ、このひと。

 学生時代にはアマ横綱にもなった智ノ花は、大学を出て教員をやっていたが、身長が足りないのにシリコンいれてまで合格した日大の後輩舞の海に触発されてプロ力士を志した。27歳は最も遅い転身だったが、その心意気は愛称「先生」と共に相撲ファンには好意的に迎えられた。大の好角家の私の父なども、二十七歳での転身と、自分が教員だったこともあって、熱心に応援していたものだ。

 私も教員からの遅めの進路変更は好意的に見ていたが、相撲を見ているとさほど魅力的な力士ではない。次第に興味をなくした。

 引退して各界を去るのかと思ったらうまく年寄株を入手していた。そして親方になってのこのコメントのつまらなさである。現役時の人気の高さから、いまごろ正面解説の常連となっていてもおかしくない。きょうのこのつまらなさで、そうではない理由がよくわかった。北の富士、舞の海というレギュラーの安定味、大好きな錣山や高田川のすばらしさ、それなりに味のある芝田山や玉ノ井、唯我獨尊で好きではないがさすがと思うこともある九重など、これと比べたらずいぶんとましなのだと再確認した。かつてライバルだった(というかマスコミや世間の評価が似ていた)舞の海と大きく差が開いてしまったのは当然だ。味のないひとなのである。おそらく頭の回転も舞の海とはダンチなのであろう。(その舞の海の賢さをあざといと嫌う一部のひともいる)。
 幕内解説の常連を三役とするなら、十両解説は万年十両のようなものである。智ノ花のつまらなさでその差を実感した。



 普天王が十両で負け越した。2勝8敗。なんともつらい。栄枯盛衰は世の常とはいえ。

 十両単獨トップの臥牙丸を徳瀬川が破った。これで臥牙丸は二敗。しかしそれでもまだ単獨トップ。これではつまらん。十両から幕内へは把瑠都のように全勝であがってこないと。
 グルジア出身の臥牙丸は、黒海、栃ノ心に続く「グルジア第三の男」なのだが、目つきが悪いし、汚いデブだし好きにはなれない。期待の若手として写真を掲載したいところだが、しない。醜男は嫌いだ。

 勝った徳瀬川は十両筆頭で勝ち越し目前。来場所は幕内だ。躰もあるし楽しみな力士。しかし彼もまたモンゴル人力士(笑)。才能ある前途有望なのはみなモンゴル人力士である。でも彼は日本人的容姿だ。

 日本人力士として期待できるのは隠岐の海ぐらいか。彼はマスクもいいし入幕すれば人気が出るだろう。

 というところで中入り。つまらない玉垣の解説が終ってほっとした。

---------------

 幕内解説は玉ノ井と高田川。栃東と安芸乃島だ。つまらない玉垣がいなくなってほっとする。

 玉ノ井が今場所の白鵬を「本来の相撲ではない」と評価。これは興味深い。絶好調ではないというのだ。圧倒的な強さを発揮している相撲も多いが、言われてみるとそんな気もする。



 白馬と北太樹の勝ち越しを賭けた一番。ふたりとも苦労人。
 鶴竜が2001年11月場所、16歳で初土俵。白鵬が2001年3月に16歳で初土俵。
 それと比べると白馬は、2000年1月場所に17歳で初土俵。北太樹は1998年3月場所16歳で初場所。だいぶ遅い。大横綱の白鵬と比べたら酷だし鶴竜も順調な方だから失礼か。

 把瑠都は2004年5月場所。琴欧洲は2002年11月場所。日馬富士が2001年1月場所。こういう特別な出世の早い大物は別にしてもうすこし並の人と比べるか。

 白馬と同じモンゴル人力士だと玉鷲が2004年初場所が初土俵。翔天狼と猛虎浪が2001年3月場所初土俵。白鵬と同期来日だ。ただし年上。白鵬の怪物ぶりが際立つ。同い年の彼らと比べても白馬は出世が遅かったことになる。でも力士はここまで来られれば「出世した」と言えるだろう。十両に上がれず去って行くのが多いのだから。
 玉鷲は出世が早い大物なのだと確認。初土俵が二十歳と遅いがその分出世は早い。



 高見盛が翔天狼の勇み足で勝つが、決まり手は肩すかし。なるほど、押されて土俵際を廻っている内に相手が足を出してしまったから、ああいうのは勇み足ではないのか。

 というところで玉鷲と土佐豊戦。大熱戦。場内が沸く。今場所のこのふたりの相撲は見どころたっぷりだ。

ゴリラに似ているので相性はゴリラだとか。化粧廻しもゴリラ(笑)。

 土佐豊は2007年3月場所が初土俵だからとんでもなく早い出世。東京農大卒だから齢はそこそこ。高校横綱のタイトルもあるが前相撲から取っている。幕下時代に30連勝を記録している。178センチと背がないのが心配だが、見るたびにいい力士だと感じる。もうすぐ三役を狙えるところまで上がってくるだろう。

 私は最初、土佐豊を土佐繋がりから土佐ノ海と関連してしまい、伊勢ノ海部屋かと思った。高地出身は同じでも部屋は別。土佐ノ海は伊勢ノ海部屋、土佐豊は時津風部屋だ。東農大は豊山の時代からみな時津風だ。だから豊山の豊を継いでいるかと思ったが、これは関係ないとか。

 類まれな順調出世をしてきたが、れいの時津風問題のときには不振に陥っている。影響の大きさがわかる。
 土佐豊の順調さを思ったら、順調から一転していま苦しんでいる境澤のことを思い出した。復活はあるのだろうか。



 稀勢の里が垣添に敗れて5連勝から5連敗。高田川(安芸乃島)が辛口批評。まあこれが稀勢の里か。前半の相撲がよかっただけに残念。把瑠都を負かした一番など本当にすばらしく、今場所の二桁勝利は確定したかとさえ思った。いやいや優勝争いにすらと思えた。

 その前に北勝力が負け越した。これまた「今場所の颱風の目か」と期待したのも束の間。上では通じないひとのようだ。

 栃ノ心が雅山に敗れて負け越し。右腕のケガがあったししかたないか。「三度目の上位挑戦」も負け越しに終ったが、だいじょうぶ、栃ノ心は出世する。それよりもいくら苦しくなったからといって変化だけはやめてほしい。



 玉ノ井の栃東はいまいくつだろう、かなり禿げてきている。正面からだともうほとんど頭皮が見えている。

 引退したころ、これからは油から離れてと語っていたのが印象的だった。力士は髷を結えるようになると毎日たっぷりと椿油をつけている。腰まで届くような長髪であることもあって染髪は三日から四日に一度なのだとか。とにかく髪も頭皮も力士は油まみれらしい。栃東が引退によってそれとは縁が切れると語っていたのは記憶に残った。

 今は毎日染髪し、すっきりトニックをつけているのだろうが、若禿げからは逃れられなかったようだ。先代栃東が若禿げでなかっただけにこの早さは意外だ。



 豪栄道が変化で鶴竜に勝つ。いやな相撲。玉ノ井は豪栄道擁護。落ちる方がわるい、と。たしかに鶴竜は変化をまったく想定せず、低い態勢で頭を下げて突進した。豪栄道は左に変化したが、一度は頭で当たっている。前からの作戦だったのか、鶴竜の低い当たりを見ての咄嗟の変化なのか。

 栃東は現役時代、大関なのに平幕相手にこの変化をやっていた。ここで豪栄道は責められない。同じことをやっていたからなと嗤っていたら、「まあ私もこんなことをしていましたからね」と自分から言っていた。正直ではある(笑)。

 栃東は「日本人横綱を」の期待から過剰な評を得ていた。私は評価していない。唯一認めるのは当時無敵の朝青龍と五分の星を残していたことだけだ。



 把瑠都対豊ノ島。対戦成績は把瑠都の7戦全勝。安全牌と思っていたのにこんなところに落とし穴があった。
 いつものよう懐に入られ、いつものよう肩ごしの上手をとり、いつものようおとながこどもと遊ぶように楽々と放り投げるはずだったのに、両差しになった豊ノ島はがぶり気味に素早く攻め、腰高の把瑠都が上手をもそもそしているうちに、突き放して押し出した。勝った豊ノ島が見事なのだが、把瑠都がなんともお粗末。高田川の言う「もったいない」が当を得ている。初優勝、大関の夢が散った。

 でもこれも勉強だ。むしろ明日の朝青龍戦前に緊張が取れていいと思う。(深夜、気分直しに2ちゃんねるの相撲板把瑠都スレに行ったら、同じことを言っているひとがいた。「明日の朝青龍戦前に、負けてちょうどいい」と。)



 琴欧洲が嘉風に敗れる。これは最悪の展開。ちいさな嘉風相手に下手な相撲をとるなよと案じていたら、心配通りの下手な相撲をとって負けた。序盤に苦手の豊ノ島にふっきれたようなぶちかましで完勝しているので、嘉風にもそれをやってくれるかと思ったら、以前と同じ消極的な下手な相撲で翻弄され、腰から転げ落ちた。負けたことそのものより内容に失望。場所後に結婚式なのにこの三敗目はいただけない。





 昨年の日馬富士魁皇戦は日馬富士の6戦全勝。ところがここでまた異変が起きる。この相撲はおもしろかった。先日の豪栄道戦のように、日馬富士には引き技による土俵際逆転が多い。それが今回は逆だった。出足鋭く一気に魁皇を追い詰め完勝かと思われたが、そこで魁皇がくると身を交わしたのだ。こんなに身が軽かったのか魁皇(笑)。それをなおも日馬富士が追い詰める。どこからどうみても日馬富士の勝ちパターン。なのにその追撃を振り切って魁皇がまた引く。日馬富士の体が流れて倒れる。俵を踏んで宙に浮いた魁皇だがかろうじてまだ残っていた。もの言いつかず魁皇の勝ち。困ったような顔の魁皇。しまったという苦笑気味の日馬富士。いやはや珍しいものを見せてもらった(笑)。
 相撲内容は一方的に日馬富士であり、魁皇はひたすら逃げていただけだから、これはもの言いがあってもいいと思う。魁皇は土俵外に待っているのだ。片足つま先立ちでバレリーナのように(笑)。でも「魁皇の体がまだ残っていた」になるのか。まあ魁皇と日馬富士なのでどうでもいいが、白鵬や把瑠都の優勝に関わる一戦なら笑ってばかりもいられなかった。



 白鵬琴奨菊戦を迎え、また玉ノ井獨自の「白鵬変調論」が出る。興味深い。相手より先に攻める横綱なのに、相手に攻め込まれることがあり、そりゃあ四つになったら強いから成績はいいけれど、本来の、絶好調の白鵬ではないというのだ。うーむ、当てはまるような気もする。あの土俵中央でのかつてみたことのないすさまじい網打ちとか、印象的な一番が多いけれど、むしろ絶好調なら単調なほどの一方的な寄り切りがもっとあっていいのか。
 白鵬が琴奨菊に完勝。ひさびさの張り差し。琴奨菊の体を起こさせ、一方的に押し出した。玉ノ井も「これが本来の白鵬の相撲」と称える。「攻める横綱」なので、こういうのがいいのだと言う。



 向正面解説の高田川を見ていると貴乃花の理事選があるので複雑な思いがする。高田川部屋は高砂一門から破門され今も所属一門なしである。その理由は先代高田川の前の山が周囲の反対を押し切って理事選に立候補したからだった。今回の貴乃花の理事選立候補による二所ノ関一門破門と妙に繋がっている。

 貴乃花革命に、音羽山(貴闘力)、大嶽(貴闘力)等、初代貴ノ花の弟子たちがみな集った。貴乃花の兄弟弟子である。協力を表明した二代目若乃花の間垣は初代若乃花の二子山部屋出身。初代貴乃花の弟弟子だから貴乃花からは叔父さん関係になる。
 そんなふうにみな集い、二所ノ関一門の会合でみな実質的破門とされた中、唯一まったく別路線を歩むのが貴乃花と不仲だった安芸乃島の高田川だ。別路線どころか貴乃花を落選させるために他の一門と結託している。それはあれだけ不仲であり、週刊誌上で醜い罵り合いをしたぐらいだからしかたない。当然の流れだ。だけどやはりかなしい。無所属で浮動票の高田川が過去を水に流して貴乃花支持を表明、なんてことを一瞬夢見たが現実はそんなものではなかった。
 大の安芸乃島ファンなのだが、今回ばかりは彼を微笑ましく見ることは出来なかった。



 朝青龍が豪風に勝つ。立ち合いはもちろん張り差し(笑)。アナまで「今日も張り差しです」と言った(笑)。しかし豪風はだらしない。何の策もない。張り差しはなんの関係もなく、すぐに捕まえられ、相手にならない。玉ノ井が豪風に「もっと動いて欲しい」と苦言を呈したがそのとおり。弱い。どうしようもない。ただ嘉風に言わせると、豪風は稽古で強く、すばらしい力士なのだという。たしかにその片鱗が見えるときもある。今回は「蛇に睨まれた蛙」と解釈すべきなのか。しかしだらしない。朝青龍を褒めるより豪風の無策に腹が立った。


------------------------------

 幸せになって欲しいね、高見盛


 昨日のスポーツ紙で左のような写真を見かけた。これは拡大したもの。スポーツ紙ではもっとちいさいし、その下のキャプションを読まなかったので、「なんで高見盛のピンボケ写真が出回っているんだろう」と思っていた。キャプションを読む気にもならなかった。

 きょうになってから、2ちゃんねるの相撲板を読んで意味を知った。この写真の狙いは向こうにいる女だったのだ。先日話題になった高見盛の恋人である。以下は日刊スポーツの記事。

 角界のロボコップが「愛のパワー」全開だ! 大相撲の東前頭11枚目高見盛(33=東関)が、初場所9日目の18日、東京・両国国技館に、「初恋人」とうわさされる超巨乳グラビアタレントの松坂南(25)を招待。東の花道の真上から見守る「恋人」の目の前で、西前頭15枚目栃乃洋(35)を送り投げで下した。7日目から3連勝で、幕内残留ラインの節目の5勝目(4敗)を挙げた。取組後は松坂の観戦に「知らん!」とはぐらかしたが、松坂は「感動しました。精彦(せいけん=本名)さんを尊敬しています」とうっとり。土俵上の婚活は大成功だった!?

 私は高見盛の大ファンだから、早く結婚して幸せになって欲しいと願っている。後援者はどうしてお見合いで結婚させないのかと不満だった。
 過日の報道のように恋人が出来たのならほんとうに目出度く、心から祝福するのだが、「超巨乳グラビアタレント」なるものでいいのかどうか。おかみさんとしては不適格だろう。そこまで行くかどうかさえ未定だが。これが後援者関係からの清楚なOLででもあったならもっとうれしい。どう考えてもこの女が高見盛を支えるかみさんになるとは思えない。なんともビミョーな気分だ。

 ところでこの写真はかなり美人に見える。話題になったときネットで調べたが、たいしたものではない。なんて言ったら高見盛に叱られるか。猪木みたいな顎をした女である(笑)。カトちゃんの恋愛ネタ、どんなオチになるのか。

============================================

衝撃の展開に!

 今週発売の「週刊ポスト」によると、松坂はデビュー以来何度も芸名を変えているだけではなく、現在25歳としている年齢は実は29歳。バストサイズは88センチから115センチへと信じられない変化を遂げているという。

 さらに、同誌が松坂の実家を直撃すると、家の人が「もうすぐ30歳ですが…」と年齢詐称を認め、松坂の知人が10年前にデキ婚したが、5年ほど前に離婚したことを明かしている。

 高見盛は場所中、同誌の取材に対して「そ、そうなんだ…」と繰り返し動揺を隠せず。

 今場所9日目の18日は両国国技館に招待した松坂の前で白星をあげたものの、翌日も連勝したものの、11日目から4連敗で終ってみれば7勝8敗の負け越し。

 「雑誌の直撃を受けたことにより、かなり精神的にダメージを受け、終盤は支度部屋でも元気がなかった。今場所の負け越しは松坂の一件によるショックが大きい。本人は結婚も考えていたが、その可能性はゼロ。いいおカミさん候補をイチから探さないといけない」(相撲担当記者) 今週発売の「週刊ポスト」によると、松坂はデビュー以来何度も芸名を変えているだけではなく、現在25歳としている年齢は実は29歳。バストサイズは88センチから115センチへと信じられない変化を遂げているという。

 さらに、同誌が松坂の実家を直撃すると、家の人が「もうすぐ30歳ですが…」と年齢詐称を認め、松坂の知人が10年前にデキ婚したが、5年ほど前に離婚したことを明かしている。

 高見盛は場所中、同誌の取材に対して「そ、そうなんだ…」と繰り返し動揺を隠せず。

 今場所9日目の18日は両国国技館に招待した松坂の前で白星をあげたものの、翌日も連勝したものの、11日目から4連敗で終ってみれば7勝8敗の負け越し。

 「雑誌の直撃を受けたことにより、かなり精神的にダメージを受け、終盤は支度部屋でも元気がなかった。今場所の負け越しは松坂の一件によるショックが大きい。本人は結婚も考えていたが、その可能性はゼロ。いいおカミさん候補をイチから探さないといけない」(相撲担当記者)

 前記したように私はこの女にうさんくさいものを感じていたから、この結末は大歓迎だ。早く後援者筋はいい嫁さんを探してやって欲しい。
 十一日目  早い時間の楽しみ

 今日のように午後3時13分(なぜか半端な時間)からの放送のときは、最初から録画にしておいて深夜に見る。正直、幕内に入るまでたいしたものはない。だからこその楽しみもある。幕下や十両の相撲を物足りないと思って見ているから、中入り後の充実ぶりがよくわかる。
 取組そのものがたいしたことないので、NHKもそのことよりも「今日の大一番」に注目し、過去の対戦ビデオを流す。このクライマックスにかけての盛りあがりが楽しい。
 冒頭でその話題の力士の国技館入りを流すのがいい。今日は把瑠都と朝青龍が和服で入館するところを流していた。把瑠都がファンからの声援に笑顔とお辞儀で応えていた。朝青龍は厳しい顔。プレッシャーは朝青龍の方にある。白鵬が負けているからこそぜったいに負けまいと誓っているだろう。

 と、わくわくしつつ再生ビデオを見ていたら最初の取組が汚いケツの山本山だったので最初から早送りになる(笑)。



 ところで、いま話題の「Google日本語入力」というのがある。Googleが無料公開した日本語入力ソフトだ。むかしはFEPと言った。いまはIMEか。
 これのよさはGoogleの検索語から辞書を作っているので、話題のコトバ、流行りことば等への応答が充実していることなのだとか。私は長年ATOKのヘビーユーザーなので今さら新しいIMEはいらないのだが、ATOKに対する「相撲用語の無視」にだけは腹立っていた。デビュウしたばかりの新人タレント(=二三年後にはいなくなっていたりする)のフルネームを丁寧にフォローする一方、江戸時代から続いている由緒ある相撲の親方名などを無視しているのだ。それらはすべてユーザー辞書として自分で登録してきた。GoogleはGoogle検索で頻繁にあらわれる語を辞書に入れるというから、朝青龍のようなスキャンダルな力士名は自動で入っているはずである。それを楽しみに使ってみた。
 しかしすぐに「はるまふじ」が「春馬富士」にしかならないのを知り諦めた。芸能的な用語、2ちゃんねる的な用語にまで詳しいらしいのに「はるまふじ」がない。Google検索で日馬富士は調べられていないのか。なんとも落胆した一件だった。と、これは「電脳」に書くネタだが。

------------------------------

●貴乃花、理事選報道


 きょうはひさしぶりに多くのスポーツ紙の一面を相撲が飾った。残念ながら優勝争いのような話題ではない。「貴乃花一派破門」の話だ。貴乃花はすでに二所ノ関一門から破門されていたが、彼を支持する六人も実質的にそうなった。テレビのワイドショーでも取りあげていた。そこで見る限り関東のスポーツ紙の全紙が一面トップのようだった。(スポニチは「美人過ぎる市議、自民党から出馬か」だったようだ。

 相撲本来の話題ではないのだが、でもこれはこれでだからこそ凄いとも言える。だってたかが「理事選」である。さらにはたかが二所ノ関一門の破門ウンヌンである。一般にはなんの関係もない。そもそも二所ノ関一門と言われてすらすら応えられるひとなど相撲ファンでもほとんどいない。

 中心の二所ノ関部屋の親方・金剛の平幕優勝、親方娘との結婚での突如としての部屋継承、それに憤慨した本来の継承者であった大麒麟の部屋飛び出し、慕った力士達とのお寺籠城、陥落、大麒麟ではなく金剛親方につかねばならないことを嫌い廃業した天龍(その後、プロレス入り)、そんなことを知るひともすくなくなった。お茶の間の視聴者になどわかるはずもない話題だ。いやあ私も金剛の顔をしばらくぶりに見た。あれじゃ街であってもわからない。その点、魁傑とか旭国とか面影があるのだが。


 破門を発表する二所一門。右から金剛、魁傑、理事選出馬を諦めた鳴戸(隆の里)

 これぞまさしく「コップの中の嵐」であり、しかも理事長になった貴乃花が大胆な改革案を実行したのならともかく、理事選に名乗りを挙げたら先輩連中からじゃまされたという、「コップの中の嵐、の前の突風」でしかない。

 だからこそ相撲ファンである私はうれしい。相撲人気のためにどんな形であれ注目されるのはいいことだ。これが貴乃花ではなく現役時地味な力士だったらニュースにならない。なにごともスターの価値は大きい。



 十両解説は勝ノ浦。北勝鬨。北勝鬨の相撲……覚えとらん。調べたら彼の引退により北海道出身の関取が途絶えたのだとか。大鵬から北の湖、千代の富士、大乃国の北海道、初代二代目若乃花、隆の里の青森の印象が強い私には北海道の凋落はさびしい出来事だった。青森ががんばっているだけに猶更である。その後、復活の流れもない。北海道の相撲はどうなつてしまうのだろう。

 臥牙丸が勝って優勝に前進した。昨日も書いたけど、どうにもこいつの体形と顔つきは受けいれられない。嫌いだ。足の長い白人体形なので、アメリカ映画に登場する典型的ふとっちょのイメージ。暴力映画で殺されるドラッグストアの店主みたいな雰囲気(笑)。

 琴欧洲、把瑠都大好きはもちろん、黒海も好きだし、顔つきはあまりよくないが栃ノ心も応援している。自分は白人力士にみな好意的なのかと考えてみる。
 伸び盛りの話題の臥牙丸が嫌いだからそういうものでもない。顔つきで言えば悪相の露鵬は大嫌いだった。それは当然として、ハゲの白露山はともかく、若ノ鵬は大鵬に似たロシア的ハンサムだったが、相撲内容が気に入らず大嫌いだったから、美男なら好きというものでもない。すこし安心した。白人だから美男だからとあの若ノ鵬が好きだったりしたら、私の相撲審美眼はなんなのだとなる。

 今回貴乃花問題で注目された車イスの間垣(二代目若乃花)は、若ノ鵬大麻事件のとき、「力になってやれなくてすまん」と泣いて謝ったそうだ。一見いい話のようなこれ、そもそも間垣部屋の唯一の米櫃だからと二十歳前の若ノ鵬をマンションにひとり住まいさせたりしたことから起きた間垣の管理問題である。今回の貴乃花の味方によりすこしだけ見直しているが、本来私は間垣親方の協会運営に関する今までの発言、行動には否定的だ。

---------------

 隠岐の海が入幕すると島根県出身の力士としては88年ぶりなのだとか。88年はすごい記録だ。
 新十両の時にも話題になっていた。私が初めて彼のことを書いたのもそのときだ。そのとき島根県出身の十両は35年ぶり、隠岐の島出身では51年ぶりと報道されていた。隠岐の海はもうそれだけでたいしたものだが、今度は88年ぶりの記録がかかっている。

 いまの北海道が落ち目だと言ってもあれだけのそうそうたる名横綱を輩出している。県によってずいぶんと差があるものである。
 茨城出身の私は、多賀竜、水戸泉から、武双山、雅山、稀勢の里まで、そこそこ切れ目なく茨城出身の幕内力士がいるので──というかそもそも私にはそういう県民意識がない──考えたこともないのだが、島根県の相撲ファンのいまの心境はどういうものなのだろう。やはりそうとう嬉しいものと思う。島根新聞(なんてものがあるのかどうか知らないが)は盛りあがっているだろうか。「今日の隠岐の海」のような特集を組んだりして。

 互いに勝ち越しを懸けた一番は境澤の勝ち。十両にしては中身の濃い攻勢守勢逆転のあるすばらしい一番だった。隠岐の海は十両筆頭なのでなんとかこのあと勝ち越し、来場所88年ぶりが実現するだろう。境澤も早く幕内に来て欲しい。

------------------------------

 ここで幕内土俵入り。把瑠都に歓声が沸く。まだ日本語の話せない序の口優勝のころから応援してきた身には、我が事のように嬉しい。ちょい長目ぐらいの金髪だった。

 中入り休憩にきょうの大一番である朝青龍把瑠都の話題。過去のビデオ。大きな把瑠都にちいさな朝青龍がしがみついてかきまわし、投げすてるのは、まさに相撲の醍醐味。張り差しはない。朝青龍の張り差しに批判的な北の富士がふと気づいたように「張り差しがないねえ」と言う。全身全霊を懸けてつぶしに行っている。そんなくだらないことをする暇はない。頭をつけて必死の相撲だ。ということは朝青龍が張り差しをする相手は見下している場合なのか。



 十両筆頭で来場所入幕有力の徳瀬川が栃乃洋と幕内で取る。負け越している栃乃洋が楽々と勝利。この辺がしみじみおもしろい。栃乃洋も力が落ちてきて幕内で負け越して十両に落ちるのだがすぐにもどってくる。来場所も落ちてしまうがまたカムバックするだろう。どうしても十両から幕内にあがれない力士も多い。十両と幕内にある壁は鞏固だ。

 2敗の白馬が霜鳥(いまは霜鳳か)に敗れる。優勝候補(笑)から一歩後退。そういえば再入幕と今場所好調に、「長野県白馬村が後援会を結成」のような記事がスポーツ紙にあった。「のような」とあやふやなのは、同じ名前だからと白馬村はその気であり、後援会を結成し、国技館まで応援には来たのだが、でもそのあとが「化粧まわしを送ることも検討中」のように、決定ではなく「検討中」であり、せちがらい世の中なので、ノリノリの景気のいい話ではないのだ(笑)。観光とスキーの村であり村内に大企0業があるわけではない。村中から寄附を募って盛りあげたいようなのだが、さてどうなるか。力士の応援は金が掛かる。素人にはとんでもない世界だ。
 白馬が長野県出身の日本人ならとうのむかしにもっと盛りあがっているのだが、なにしろモンゴル人力士だからねえ。



【初場所10日目】幕内・白馬が08年10月3日に結婚していたことが分かった。お相手は同じモンゴル出身のオユンナさん(25)で同年11月3日には長女も誕生している。 (スポニチ)

 なんてニュースも明らかになった。これも十両でくすぶっていたら表に出て来ない話だ。来日している母親がモンゴル料理の店「ウランバートル」を都内でやっているとかで、それも話題になっていた。力士は勝たねばならん。しみじみ思う。
 色白で細身でなかなかハンサムである。どのへんまで行けるか。いま私の一押しモンゴル人力士は玉鷲だ。



 高見盛と土佐豊。ともに外連のないふたりなので真正面からいいぶつかり。土佐豊勝って勝ち越し。土佐豊はどこまで上がれるだ
ろう。どこまでの器なのだろう。興味深い。
 アナと北の富士が土佐豊の相撲を語る。「体がちいさいのに大きな相撲を取る」とアナが心配する。北の富士が「それが魅力なんだけどね」と、同じく心配しつつ応じる。ちいさな体での大きな相撲は魅力的だが、それが通じるほど上位は甘くない。そのうち大きな壁にぶつかり変更を強いられることになるのだろうか。

ちいさな躰で大きな相撲」が評価され、同時に批判されるのが豊ノ島だ。あの躰で胸を出して受けとめることが大きな魅力だが、ちいさいのだからたまには変化のようなこともしないと星は伸びないと批判もされている。私はその豊ノ島が大好きだけれど。



 翔天狼と光龍が合わない。4回。審判の三保ヶ関増位山から険しい叱咤が飛ぶ。やっと5度目で立った。ここまで合わなかったのも珍しい。ちょっと見には翔天狼が突っかけてしまい、早いようだが、よくみると光龍がまったく合わせる気がないのが理解できる。まるで相手に合わせず焦らす作戦のようだ。
 5度目、増位山に叱られた光龍が翔天狼のタイミングに合わせたら問題なく立ちあった。作戦もあるのだろうがむずかしいところである。勝負は、突っ込む翔天狼の立ち合いに光龍が合わせたのだから翔天狼が一瞬早く突進する。攻め込まれたが土俵際で光龍が逆転。相撲としてはわるくなかった。
 思えばこのふたりもともにモンゴル人力士。好きな私は楽しいが、日本人にこだわるひとにはつまらないだろう。

 玉乃島が朝赤龍にかなりあぶない小手投げ。この技が極るたびにヒヤッとする。朝赤龍は躰がやわらかいし、無理に粘らないで落ちたから無事だったが……。

 阿覧が勝ち越し。前に出る相撲なので不満はない。怪力なのがよくわかる相撲だった。このひとの評価はまだ未定。ればわからない。誰もが「まだ相撲を知らないから」と口を揃える。
 勝ち越しインタビュウ。まだ日本語もダメなようだ。ことばが詰まって出て来なかったのは、応えるべきことに迷ったというより単に日本語が出て来ないと感じた。しかしそれはモンゴル人力士の日本語習得能力がずば抜けているからで、これぐらいで当然か。



 玉鷲に関して北の富士がちょっといい話を教えてくれた。モンゴル人力士たちがよってたかって(という表現はへんか)玉鷲を育てようとしているのだそうな。みな積極的に胸を貸してアドバイスもしているとか。次の大物とわかっているのだろう。いい話である。

 そしてまた北の富士は、「それは日本人力士にはないよねえ」とつぶやいた。日本人は一門や部屋にこだわり、そういう総意にはならないのだろう。前々からそういうことがあったらいいのにと思っていた。

 嘉風は千代大海の相撲が好きで憧れているらしい。先日の佐ノ山がゲストのときも国技館前で会い、挨拶を交し、その日は敗れたのだが、千代大海がゲストの日に勝ちたかったとレポートが入っていた。そのことを千代大海も知っていて、自分を慕い自分の相撲──もちろん全盛期のですね(笑)──を真似ようとしている嘉風に好印象のようだった。しかしアナの「これからもぜひ教えてやってください」には、「はあ、まあ、もし機会があったら」のように気の抜けた返事しかしなかった。

 琴欧洲が身長を活かせないちいさな相撲を取っているとき、現役時、上背を活かした獨自の変態相撲で勝っていた音羽山(貴ノ浪)が心配するとともに、なぜああできないのか、のような苛立ちを見せていた。っていた。私は音羽山が指導してやればいいのにと思った。でもそんな出しゃばりが許されないのが「一門」や「部屋」の壁なのだろう。

 それを「同じモンゴル人同士」ということから取っぱらってしまったのだから、そりゃあモンゴル人力士が強くなるのは当然だ。玉鷲のこれからが楽しみでならない。いま指導係は楯山(玉春日)だとか。

 北の富士の言う「やがては四つ相撲も取れるようになるだろうが、いまは玉春日が前に出る相撲を教えている」も含蓄に富んでいる。

---------------

 2敗の安美錦が5連勝のあと5連敗の稀勢の里に敗れて優勝戦線(笑)から脱落。相撲内容は安美錦。土俵際で逆転をくってしまった。キセノン、よけいなことをする。これでもう優勝は両横綱と把瑠都の三人に絞られた。

 きょうもしも把瑠都が朝青龍に勝ったら断然白鵬が有利になる。朝青龍が勝てばもう横綱対決だ。
 今またふたりのビデオを流しているが、何度見ても朝青龍対把瑠都はおもしろい。機動力に富む素早い駆逐艦が大型空母の周囲を走り回り撃沈するかのようだ。予想されるのはいつものように朝青龍の速さに把瑠都が翻弄され転がされる形か、把瑠都の強さがツボに嵌って、横綱を放り投げてしまう(あるいは突きとばしてしまう)とんでもない勝ち方だろう。いわゆる接戦の「よい相撲」には、このふたりはならないように思う。



 豊ノ島が雅山を一方的に押し倒す強い相撲。北の富士が「昨日から見違えるようになりましたね」。昨日とは把瑠都を圧倒した一番。ほんとにいきなり元気になったよう。

 栃ノ心の右腕のテーピングとサポーターがますますひどくなってきた。もう右肩から手首までぜんぶ。どう見てもまともではない。鶴竜にもぐられると右手に力が入らない。「本来ならもっとおもしろくなる一番」とはアナの意見。そう思う。今場所は残念だったが腕を直せばまた上がってこられる。

 豪栄道が引き技で琴奨菊に勝つ。つまらない相撲。北の富士も苦言。すくなくとも大物ではない。

 日馬富士が勝って琴欧洲が魁皇に勝って、さあいよいよ本日の大一番。




 朝青龍、つかみ投げ!



 8回やって一度も勝てない朝青龍に、さて把瑠都はどう挑むのか。それにしても昨日の豊ノ島戦での負けは痛い。
 把瑠都コール。人気を気にする朝青龍は不愉快だろうなあ(笑)。誰が相手でも不人気。唯一ベビーフェースになったのはあの「今場所で引退か」という危機の時のみ。でも憎まれるぐらい強くなくちゃね。

 把瑠都、肩からぶつかってゆく。お互いにいい立ち合いだ。把瑠都戦では朝青龍は張り差しをしない。出来ない。潜って頭をつけた朝青龍は把瑠都にまわしを与えない。横綱が関脇に頭をつける異様な態勢だ。
 もぐったまま自分だけ左の下手を取ると、さらに内側に潜り横につくような形で、回転しながらたてみつを取っての投げ。これが見事に決まり把瑠都が空を飛んだ。アナも「ほうり投げました」としか言えない見たことのない形。決まり手はあっさりと下手投げとアナウンスされる。北の富士も「なにをしたんですか」。
 これはもうモンゴル相撲の奥義としか思えない豪快さ。まったく千両役者である。回転しながらの投げに現在幕内最重量188キロの把瑠都が空を飛んだ。すげえのなんの! 北の富士「朝青龍にしか出来ない」。出来ないな。タイミングで気が決まると重さなんてなくなるという武道の奥義だ。いやはやすごい。

 2ちゃんねる相撲板で、識者があれは「つかみ投げ」だと言っていた。説明を聞いてなるほどと思う。あんなすごい投げを凡庸な下手投げではつまらない。



 それに刺激されたか白鵬がまた魅せた。張り差しで立ち、右肩のカチ上げ。豪風、一瞬で腰から崩れ落ちる。脳震盪。立てない。アナは張り差しの効果と思ったようだ。これは意外。私は相撲担当のNHKアナをさすがプロと尊敬している。でもこれはカチ上げの効果とすぐにわかる。立てない豪風を見ながらまだ張り差しの威力と思っているアナに北の富士が「いや右のカチ上げでしょう」と指摘。
 白鵬のこのケンカ殺法が目の前で把瑠都を投げ捨てた朝青龍に刺激されたのはまちがいない。
 これで優勝は両横綱による一騎討ちが確定。
 今日の強さだと白鵬も安穏としていられない。初場所で朝青龍に優勝されると白鵬時代がまた振り出しにもどる。しかしまた朝青龍の復活もうれしい話。まだまだあと数年がんばってもらいたい。

 把瑠都ファンとしては朝青龍の奥深さを知って楽しい日だった。把瑠都にはまだ自分よりもちいさい朝青龍のあのような凄味は理解出来ないだろう。いまここで朝青龍超えなどしたら未来はない。いい勉強になったろう。

============================================

 翔天狼と光龍──正否?

 深夜、インターネットを流していたら以下のような記事を見つけた。ニッカンスポーツである。



立ち会い4度失敗でお灸

<大相撲初場所>◇11日目◇20日◇両国国技館

 光龍(25=花籠)と翔天狼(27=武蔵川)の一番で立ち合いが4度も不成立となり、両力士が審判部に呼び出された。なかなか手をつかない光龍に翔天狼が4度とも突っかけた。勝った光龍は「向こうがついてこなかった。おかしい」と主張し、翔天狼は「(相手が)遅いですよね」と口をとがらせた。三保ケ関審判長(元大関増位山)は「気持ちは分かるけど、幕内は一流なんだから4度もしてはいけない。きつく注意した」と、おかんむりだった。[2010年1月21日8時31分 紙面から]




 これは本文でも書いたように、リアルタイムで見ていた私には「光龍が不自然」と思えた。私には翔天狼の言う「遅いですよね」が正当と思われる。
 
 十二日目  把瑠都、渋い表情

 連敗のショックを引きずった元気のない把瑠都が、豪栄道にもぐられると肩越しの上手。それで振りまわして勝った。いわば「把瑠都スペシャル」である。
 勝っても本人は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。「どうして肩越しに上手を取ろうとしてしまうのだろう」と反省したとのこと。(これは翌日のスポーツ紙で読んだことだが。)

 そういう相撲を取っていては両横綱に勝てるようにはならないという殊勝な反省なのだろうが、あれはあれで「把瑠都スペシャル」としていいのではないか。私はそう思った。

 深夜、2ちゃんねるの相撲板の把瑠都スレに行くと、ひとりだけ私と同じことを書きこんでいるひとがいてうれしくなった。複数のひとが「いつまでもあんなことをしていちゃダメだ」というのに対し、そのひとは「あれこそが把瑠都の凄さであり、おまえらはなんでそれがわからないの」と書いていた。私もそう思うのだ。たしかに横綱大関になるためには、先場所賞讃された突っ張りとか、もっと正攻法を磨かねばならないのだろうが、内側にもぐりこんでがっちりまわしを取ったという絶対優勢の姿勢になられながら、肩越しに上手を取って、それでクレーンのようにふりまわし、運びだしてしまうという前例のない勝ちかたは、把瑠都スペシャルとしてわくわくするものだ。私はそのわくわく感を封じたくない。

 たとえ朝青龍であれ、あの形になったら把瑠都は抛り投げてしまうだろう。速い朝青龍はそれを許さないようにしているから未だに決まらないけれど。
 なんだか把瑠都のしょんぼり具合が気になった。とはいえしょんぼりして当然のとんでもない負けかただったが。

------------------------------

 白鵬、2敗!



 白鵬が日馬富士に負けて2敗。しかも気魄のない負けかたで、これでもう朝青龍の優勝は確定かと思える。
 なんというのだったか、立って両手の手の平で突き合う遊びがある。足が動いたら負け。これも相撲の一種だ。あれ、なんて名前だっけ。うまく相手の両手の平を押して動かしてしまえば勝ちだが、これの勝ちかたに、突きあうと見せての身交わしがある。相手は思いきり突こうと思った手の平がなくなり前に動いてしまう。今日の白鵬の負けはそんな感じだった。反射神経のいい日馬富士がスッと身を交した。引いてもいない。はたいてもいない。目標のなくなった白鵬は土俵外に飛びだしてしまった。茫然としていた。座蒲団が舞う。

 写真で見たい決定的瞬間というのはむずかしいものだ。上の写真はあまりに運動神経のいい日馬富士が白鵬の後ろに回り最後のフォローをしている形だ。これだと後ろに回って押しだしたようになる。でもそうではない。これをしなくてももう白鵬は飛びだしていた。だから私がこの勝負を示すものとしていちばん欲しいの写真は、白鵬の左側に背中を向けて立っている日馬富士だ。ほんとうに、スッと身を交しただけで白鵬は飛びだしていた。そのあとフォローに入ったのがこの写真である。でもこの写真では私の言いたい「奇妙な一戦」のおもしろさは伝わってこない。

 いちばんいいのは、ビデオから自分のこれだと思う瞬間を切りとることだろう。いくつものスポーツ紙を巡り、かってに写真を拝借していてこんなことを言ったら罰が当たるが、それでしか納得できる写真はないように思う。
 十三日目  スポーツ紙一面の相撲ニュース

 図書館に行ったので日刊スポーツの一面を調べてみた。今場所は貴乃花理事選問題があるので、かなりの回数一面になっていた。

 意外だったのは先日見かけた左の高見盛の写真──観戦するグラビアタレントが主──が19日の一面だったことである。これはずいぶんと思い切った選択だ。高見盛はかなりマニアのものだから(笑)、一般的にどこまで通用したのか疑問だ。

 聞くところによるとスポーツ紙の一面というのは、野球、サッカー、ゴルフ等、いくつものジャンルによって争奪戦が行われるらしい。担当記者にとって一面になることは誇りなのだ。最終的には最もインパクトのある(=売上につながる)ものをデスクが決定する。

 この日はたいしたニュースがなかったのだろうが、それでも石川遼あたりを表紙にしていれば無難だから、これは思いきった起用になる。果たしてこの一面で、ライバル紙から客を奪えたのだろうか。相撲ファンとして気になる。これは写真週刊誌に載った「あのもてない高見盛に彼女が出来た。巨乳(115センチ)のグラビアタレントだ」が売りなのだから、もう「彼女来た見た勝った!」の「彼女」は「巨乳」にしてしまったほうがサラリーマンに受けたのではないか(笑)。

 翌20日は貴乃花理事選が一面。当選の目が出てきた、という話。21日も貴乃花が一面。理事長の武蔵川(三重ノ海)と全面戦争だ、とのこと。三日も連続で相撲が一面を飾った。ニッカンの相撲記者はうれしかったことだろう。あのキムチ野郎(©by 朝青龍)もよろこんだろうか。まあニッカンは他紙と比べて大相撲報道に熱心だ。ニッカンはアサヒ系だから嫌いだけど、その点は認める。

 そういえば原口総務大臣が「新聞とテレビの系列化解消」を打ち上げた。すばらしいことだ。マスコミの大反対で実現かどうかは不透明だが。新聞社がテレビ局とつながっているので、いや支配しているので、その局のニュースなど見なくても切り口がわかる。これはつまらない。原口さんにはぜひとも実現してもらいたいものだ。

 いちばん売れているスポーツ紙の一面を三日連続で相撲が飾ったのは快挙なのだが、残念ながら土俵の話題ではない。いわばスキャンダルだ。今場所相撲的に一番の話題──把瑠都が白鵬の連勝を30で止めた──はどうなのだろうとバックナンバーを調べたら一面ではなかった。一面は「15歳のスケート少女」の話。あの冬季オリンピックに出場が叶った娘さん。でも決定した時ならまだしも、彼女が出発のために東京にやってきたというニュース。把瑠都がすくい投げで白鵬を投げている写真が一面になるのが理想だ。

------------------------------

 隠岐の海、88年ぶりの快挙へ!

 隠岐の海が9勝目をあげた。十両の二枚目だから入幕はほぼ確定だろう。島根県出身力士88年ぶりの快挙が来場所実現する。島根県の相撲ファンはうれしいだろうなあ。なんだか我が事のようにほのぼのとしてくる。

《島根県出身としては大正時代の若常陸、太刀ノ海以来88年ぶりの新入幕》だそう。

 先日「島根新聞」なんてものがあるとしたら、と書いた。田舎に「茨城新聞」というのがあるので。そこでは連日隠岐の海のニュースで盛りあがっているのだろうかと。
 2ちゃんねるの相撲板を読んだら、山陰中央新報というのが地元新聞のようだ。そこではおおいに盛りあがっているらしい。

 大相撲のこの「郷土力士」という感覚はいい。それはもう日本を飛びこえて、モンゴルではもうすごい視聴率だし、ブルガリアでも琴欧洲の御両親はテレビ観戦しているという。把瑠都のエストニアでは見られるのだろうか。黒海や栃ノ心のグルジアではどうなのだろう。

------------------------------

 若の里、9勝目!

 若の里が9勝目を上げた。来場所はまた上位にもどってくる。一時の凄味はなくなったとはいえ、時々ものすごく強い勝ちかたをする。怪力剛腕は健在だ。
 同期の千代大海が引退した。「こうなったら一日でも長く相撲を取りたい」と語っていた。いつしかもう大ベテランになっている。若の里、栃乃洋、土佐ノ海、旭天鵬、まだまだ活躍して欲しい。千代大海のように地位に守られていない彼らのほうがずっとシビアな番付だ。以前も書いたが、千代大海は大関という特別ルールで護られていなかったら、幕下まで落ちるひどい成績だった。彼らはその負け越したら降格するというガチンコの世界で生きている。栃乃洋や土佐ノ海は十両に落ちることも多くなった。今場所、若の里が二桁勝利をあげたらうれしい。出来そうだ。

------------------------------

 把瑠都、星を拾う……


 9勝3敗同士の把瑠都安美錦戦。
 ふたりとも好きだけれど、現実に対戦するとその差が出る。私は安美錦がほんとうに大好きなのだけれど、今回は把瑠都に勝って欲しかった。それは安美錦は個性派力士としてすでに9勝をあげているから充分、把瑠都には来場所の大関取りに繋げるため、一つでも多く勝って欲しいと思ったからだ。

 安美錦が勝った相撲。把瑠都は安全牌と思っていた豊ノ島に敗れ、朝青龍に空を舞わされてすっかり気魄が消えている。意気消沈というヤツだ。今日も雑な相撲を取り安美錦に完敗した。

 しかし写真にあるように安美錦が左手をついてしまう。以下、スポーツ紙から拝借してくる写真に不満を述べているのだが、この写真は最高。私の言いたいことのすべてを顕している。

 安美錦の手は庇い手(相撲での庇い手は相手に対してであり自分には使わないのだったか?)であり問題はない。ただ映像で言えば、把瑠都の躰が宙を舞っているときに安美錦の手が先に土俵に着いている。それを見ていて把瑠都に軍配を上げた行司の眼力はいつもながらすごいと思う。当然もの言いがついて同体という取り直し。これは差し違いになると思う。相撲内容そのものが安美錦なのだ。だが同体で取り直しになる。私は把瑠都を応援していたけど、これは安美錦に気の毒だと憤慨する。顔から落ちていれば完全な勝ちだったのだが……。

 取り直しは一気に前に出た把瑠都の相撲。解説陣はだらしない立ち合いの負けを反省してすぐに切り返たのはえらいと把瑠都を誉めた。たしかにそのとおりなのだかなんとも安美錦が気の毒だった。

 勝って引きあげる把瑠都にも勝者のよろこびはない。なんだか淋しそう。アナも舞の海も口を揃えた。連敗によって緊張の糸が切れたのだろうか。ひとつでも多く勝っておかねばならない。落ちこんではいられないぞ把瑠都。あと二日ある。なんとしても12勝しろ。

------------------------------

 朝青龍、かいなひねり!

 まったく魅せてくれる。今日は手首を握ったかいなひねりで琴欧洲を横回転させた。
 アナが朝青龍の決まり手でかいなひねりは初のはずと、すこし自信なげに言っていた。手元のデータベースから出て来なかったようだ。
 しかしこれは私の知っているかいなひねりとは違う。モンゴル相撲の技ではないのか。それにしても奥が深い。朝青龍もモンゴル相撲も。この写真ではそのかいなひねりの凄味は伝わらない。動画でなければ無理だ。

 実験的に{Youtube}の動画から切りとってみた。フレーム再生が出来ないからこの方法ではむずかしい。画質も悪い。それでもこの技の凄味を伝えるのに、上の写真よりはましか。
 いま朝青龍が琴欧洲の両手首をつかんでひねったところ。このまま琴欧洲は左に一回転するのである。どう考えてもそれはもう相撲の技を越えていて、柔術とか中国武術の世界のよう。すごかった。

 舞の海も指摘したように、朝青龍は低い姿勢から頭をつけて左を狙う戦法。絶対に負けたくないと思ったときの朝青龍はこれをやる。くだらん張り差しからのつまらない相撲を取ってきたが、ここに来て優勝が見えると完全な負けない相撲に切り替えた。朝青龍らしい(笑)。

 というところでまた朝青龍らしくスキャンダル。場所中なのに飲みに出て泥酔し、知人を殴って警官出動の大騒ぎが写真週刊誌に載ったのだとか(笑)。


 知人なので訴訟にはならず、すでに高砂は理事長にも報告済とのこと。でも場所後の横審では議題として取りあげるらしい。朝青龍は優勝してどんなもんだ状態だから気にしないだろう。いやはやなんとも。なお荒れくるったこの日は豪栄道に負けた夜ではなく、その翌日の鶴竜に勝った日。

 同じ号のなかにこんなのもある。私が彼女を高見盛の恋人として受けいれがたかったのは、そういう雰囲気を感じたからだ。清潔感がない。それは彼にはふさわしくないように思えた。まあどうせ結婚までは行かないか。早く嫁をもらえカトチャン。

------------------------------

 白鵬、まさかの負け!


 これはおどろいた。現在白鵬は魁皇に17連勝中。ほぼ3年。関脇の時から負けていない。つまり魁皇は大関横綱の白鵬に一度も勝っていない。

 昨日の日馬富士は朝青龍と並んで最も白鵬に勝つ可能性の高い力士だ。すばやく身を交され思わず飛びだしてしまったという、反射神経の争いのような、感心できる勝利でも敗戦でもなかったが、ともあれ日馬富士とはいつやるときでも負けるのではないかとドキドキさせられる。だからいい。しかしこんな安全牌になんでこんなところで負けるのか。理解できない。

 魁皇が変化気味に立ち、小手投げを決めるような形に持ちこんだ。技は「とったり」であり、アナも解説陣もみなそう言うのだが、魁皇はあの強引な小手投げに持ちこもうとしたのではないかと私には思えた。魁皇には珍しい変化技ではあるが、正直たいしたものではない。あの白鵬が負ける相撲ではない。なんだか昨日の敗戦で茫然としたまま、心ここにあらずで土俵にあがって負けてしまったような内容。これも写真がこれしかなかったので使ったが、私の言いたいのはこの瞬間ではない。やはりビデオからフレームを切りとるしかないか。

 {Youtube}にアップされていたNHKニュースから切りとってみた。画質が悪いが、これだと私の言いたかったことがよく伝わる。魁皇は右に変化しつつ白鵬の左腕を取りにいった。いま掴んだところ。これはとったりである。だが魁皇の相撲を見ているひとなら誰でも、ここからキラー魁皇の必殺技、小手投げに行こうとしているのがわかるだろう。現実はそれになる前、このとったりで後ろを取られた白鵬は押しだされてしまう。腕をケガしなくてよかったかも知れない。上掲のスポーツ紙から拝借してきた写真では単に魁皇が押しだしているだけでこの辺の流れがまったく見えない。これからはこれにすべきなのだろうが、いかんせん画質が悪い。どうしたらいいものか。



 こうなるとせめて千秋楽に朝青龍に一矢報いて欲しいと願うしかないが、もうそれどころではない状況だ。顔から気魄が消えて夢遊病者のようなのだ。へたしたら明日明後日とさらにまた連敗して、横綱昇進後最悪の成績になる予感すらする。休場すらあるか。最悪は二度経験している11勝4敗だ。

 スポーツ紙の好きな戦犯という表現を私は好まないが、今場所を白けさせてしまったのはまちがいなく終盤で崩れた白鵬だ。まさかこんなことになるとは。一気に熱が冷めてしまった。
 十四日目  十両解説は楯山の玉春日。先日も書いたがこのひとは凡庸だ。今日勝ったら朝青龍が単獨3位になる25回目の優勝だがとふられて、「そうですね、なかなか出来ることではないですから」って(笑)、思わずおいおいと突っこみをいれたくなる。そういう感想は「幕下、十両と連続優勝」とか「二度目の十両優勝」ぐらいに言うべき感想で、相撲史に燦然と輝く大記録には不適切だろう。いやはや。
 土佐ノ海とは同期。土佐ノ海が同志社。玉春日は中央か。土佐ノ海が勝った。まだまだ元気。うれしい。



 3敗の臥牙丸と4敗の隠岐の海の対戦。臥牙丸が勝って優勝に前進。まあ容貌は気に入らないが前に出る相撲を取っている。よしとするか。今場所は優勝しても番付からまだ入幕は無理。というか十両二場所目での優勝になるからたいしたものだ。

 軍配は臥牙丸。もの言いがついたが軍配通り。相撲は一方的な臥牙丸のもの。押されて引いて土俵際をつたった隠岐の海が苦しまぎれの小手投げで同体気味になったが臥牙丸勝ちの裁定は順当。

 隠岐の海は優勝したいと明言したとか。でも負けてお終い。その発言に楯山が勇気があると言っていた。相撲界はそんな強気の発言はだめとされる。でもそんな力士がいてもいい。隠岐の海の強気は好ましい。

 これで十両優勝は臥牙丸と境澤に絞られた。まあトップが3敗だからレヴェルが低い。把瑠都の全勝優勝が懐かしい。その境澤が磋牙司に負けて4敗。後退。臥牙丸断然有利となる。
 十両筆頭の磋牙司はこれで勝ち越し。悲願の入幕が見えてきた。毛のあるうちに入幕させてやりたい。



 幕内になって解説は正面が九重、向正面が熊ケ谷。

○把瑠都 ●垣添

 把瑠都が押していったが、いかにもそれがスカされそうなあやうい押し(笑)。案の定、手をハズされつんのめる。土俵外に飛びだしそうになるがそこでくるり回転して残る。この辺、運動神経抜群なのがよくわかる。あとで解説の九重もこの反応を「速いねえ」と誉めていた。一回転して土俵に向きなおった把瑠都の横で、垣添もまた土俵に落ちそうになってあわあわと両手をばたばたさせて必死に落ちまいとがんばっている。もうしょっきりの世界(笑)。さらにそのあとも二転三転があって把瑠都の勝ち。場内は大歓声。
 アナは「はりま投げ」と言うが、決まり手は「大逆手(おおさかて)」。まわしを持った位置で決まり手が変るらしく、アナはちょっと未練げにはりま投げにこだわっていた。でも把瑠都にとっては「大逆手」なんて知らないこと。どうでもいい話(笑)。じっさい大男が力で小男(といっても一般的には大男のデブだが)を投げすてだけで技もなにもあったもんじゃない。とはいえもともと技の名前とはそんなもの。最初に技があったのではない。名前はあとからついてきた。
 ともあれこれで11勝。明日勝って12勝すれば来場所の大関取りに繋がる。



○白鵬 ●琴欧洲

 四つになってのすばらしい相撲。最後は白鵬が投げすてて勝った。でもアナが向正面の竹葉山に尋ねたように、好調な白鵬ならもっと早く勝てていたのではないか。
 熱戦の最中、把瑠都の内掛けが出た。あまり効果はなかったが先場所を思い出し、また場所前の発言を思い出し、感慨深かった。やはり横綱の内掛けは異様だ。

 勝ったけれどまだこれで11勝3敗。明日朝青龍に負けたら横綱になって最悪の星11勝4敗になる。12勝3敗とは意味が違う。朝青龍もここのところ負けつづけている横綱対決でまた負けたらせっかくの優勝に水を差す。全力で勝ちに来るだろう。本来の実力ならもう白鵬なのだが今場所は気力で負けている。なんとしても明日勝って12勝をあげてほしいがどうか。



○朝青龍 ●日馬富士

 がっぷり四つになってのすばらしい熱戦。朝青龍が勝って優勝決定。息荒く優勝インタビュウ。
 なのだが、そうなのか。このふたりは実に親密。白鵬と対立している。でも白鵬もまた仲好しのようだけれど。朝青龍が優勝しそうなとき、日馬富士は白鵬を倒して援護するし、日馬富士が優勝しそうなとき、白鵬に負けた朝青龍は援護できなくてすまなかったと謝っていた。そういうふたりだから、日馬富士が勝って朝青龍が二敗、千秋楽が楽しみ、白鵬にも自力優勝の目が、という期待はあまりなかった。もちろん真剣勝負と思っているけれど。
 千秋楽  午後三時からの放送。録画にする。競馬を見ていて、ハズれて、落胆し、午後四時から見る。こんなときしみじみHDDレコーダを便利だと思うのがあの「追い掛け再生」。録画を継続しつつ三時からの録画を再生出来る。興味のない部分を早送りして行けば追いつける。しばらくやっていなかったのであらためて便利だなあと感嘆した。



 各段の優勝と表彰が行われている。十両の臥牙丸が優勝決定していたのでおどろいたが、これはすでに境澤が負けたからとのこと。なさけない結果。12勝3敗での優勝。十両二場所目での臥牙丸優勝は立派だが、その他がみな5敗以下とはなさけない。
 アナは臥牙丸の「がが」の2番目の「が」を鼻濁音。私は両方とも濁音と思いそう発音していたのでちょっと新鮮。
 ところで世の中にはこの「鼻濁音」が出来ないひともいる。けっこう笑える。それはまたそれで別の話。(あとで優勝インタビュウの別のアナは両方のガとも濁音だった。どっちが正しいのか。)

 新入幕確定は、磋牙司、隠岐の海、徳瀬川、のようだ。徳瀬川はモンゴル人。ふたり日本人がいるのは目出度いのか。私の心に残るのは磋牙司だ。隠岐の海、徳瀬川には明日がある。磋牙司には髪がない。よかった、と思う。高校生横綱にまでなっている。髪のある内の幕内は晴れの舞台だ。



 把瑠都殊勲賞。まあ白鵬を負かしたから殊勲である。
 同じく朝青龍を唯一負かした豪栄道も候補なのだが、これは今日の結果待ちとか。いま7勝7敗なのだ。勝ち越せるともらえるらしい。200万だっけ? これはおおきい。でも勝った7勝もひどい相撲ばかり。賛成はし難い。

 敢闘賞豊響は文字通り二桁勝利をあげて敢闘したから当然として、技能賞安美錦に「今日勝てば」の条件はなぜなのだろう。もう10勝しているのだが。いやまあそう言われればあまり今場所の安美錦は「技能的」ではない。まあ結果待ちでいいか。

 というところで知っておどろいた。「安美錦対豪栄道」なんだって(笑)。なんてひどいことを。勝った方が三賞受賞なのである。これはすごい。大相撲には勝ち越し負け越しで天国と地獄が出現し、そのことによって「千秋楽7勝8敗の勝率は8割」とか、いろいろその不透明さが言われてきた。まあ私はこんなことぜんぜん気にしない。それはそれでいい。私は自分が勝ち越していて親友が負け越したら十両落ちの場合、彼に負けてやる。それが世の中だ。初代貴ノ花がそれを明言して話題になったことがあった。

 ただ今日のこの一戦は互いに三賞の賞金200万円が懸かっている。そういう取組は毎場所あるわけだが、このふたりのように「勝った方が200万」はそうそうあるものでもない。これは楽しみである。もちろん私の応援するのは安美錦だ。



 栃乃洋と北勝力。またも北の富士は北勝力をボロクソ。今場所、一度だけ誉めたのが大昔のようで懐かしい(笑)。ほんとに笑える。まあけっきょくは2勝だったのだからしかたない。「颱風の目か」なんて書いた私も赤面。というところですごく強い3勝目。ほんと、このひとはわからん(笑)。



 というところに、おお、早くも豪栄道に安美錦。早いな。まだ四時半。千秋楽はこれだ。安美錦は前頭6枚目、ここで勝てば来場所小結復帰か。勝てよ。引き技で星を稼いできた豪栄道に負けて欲しくない。
 アナが言うには、把瑠都意以外、関脇、小結ふたつ、合計みっつの席が空いたとか。ふたつは勝ち越している豊ノ島、稀勢の里で決まり。もうひとつに豪栄道か安美錦。がんばれ安美錦。力が入る、私が(笑)。
 よおし、安美錦完勝! 一方的! これで安美錦は小結昇進。技能賞受賞も確定。あったりまえだ、あんなひどい相撲の豪栄道が朝青龍に勝っただけで重賞したらおかしい。よかったよかった。めでたしめでたし。
 安美錦勝って技能賞受賞11勝は立派。来場所は小結復帰。今場所は前頭6枚目だったので対戦相手に横綱大関がいなかった。すると二桁勝てる。来場所は初日からもう連続して横綱大関戦が続くからたいへんだ。でもこのひとは最強白鵬のやるときでも「しかしたら」と思わせてくれる。やはり上にいてくれないと。



 右腕を痛めている栃ノ心が左上手投げで武州山を投げすてて5勝目。腕の痛い今場所はしょうがない。来場所に期待。



 臥牙丸の優勝インタビュウ。このインタビュウアナは「ががまる」を濁音で発音していた。インタビュウに応える態度が良く、いまお母さんが入院中。すでにお父さんは亡くなっていて(これは知っていた)優勝をお母さんに報告してふたりで泣いたという話を聞いていたら一気にファンになってしまった(笑)。まあとにかく力士はみんな大好きなのだから嫌いにならない方が楽しめる。臥牙丸を外見から嫌っていたが(この時点でも相撲内容には不満はなかった)インタビュウの笑顔を見て好きになれたから得した気分。お母さんを日本に呼びよせて日本の医者に診せたいのだという。十両優勝賞金は500万だったか。呼べるだろう。よかったね。



 序二段優勝唐津海は、まるっこいひとのよさそうな容貌。受け答えがしっかりしていていい青年だった。将来が楽しみだ。所属は玉ノ井部屋。栃東のところ。

 思えばこんな形で私は序の口優勝の、ほとんど日本語の話せない金髪長髪の青年把瑠都を知ったのだった。

 豊真将が勝って9勝、負けた岩木山も9勝。このふたりはどんな星でも私には好ましい。豊真将はもうすぐ29歳。大化けはもう無理なのだろうが、こういう力士に出逢えただけでうれしい。このひとのお辞儀を見るだけで相撲を好きな自分さえ誇らしく思えてくる。徳とはそういうものだ。豊真将をわるくいう人間とはつきあいたくない。



 阿覧が光龍をカンヌキで極めて寄り切る。寒気のするぐらいの迫力。アナが阿覧を「跳んだりはねたり引いたりしていましたが」と、もちろんこれは批判的な言いかたで、「今場所学んだことも大きいと思いますが」と北の富士に振る。北の富士は阿覧のキカンヌキを「腕が折れるのではないかと思った」と案じる。上半身の発達した胸毛の濃い典型的な「剛腕型白人」である。それはそれでいい。とにかく「跳んだりはねたり」をやめて欲しい。今場所の勝ち越しでその無意味さを学んだらうれしい。



 小結鶴竜の負け越しは意外だった。7勝8敗だから来場所また勝ち越せばすぐに三役にもどれる。魁皇、豪栄道に負けたあたりが痛かったか。先場所関脇で7勝8敗、今場所も同じ。でも三枚目辺りまで下がると二桁勝てる。しばらくこのへんで苦労か。
 小結琴奨菊も6勝9敗。このひとはこの辺でエレベーターをする器だろう。大関の期待もあるが莊は思えない。
 ふたりに変って来場所は豊ノ島と稀勢の里が小結。



 把瑠都が旭天鵬に勝って12勝。うまいだし投げだった。舞の海が技能賞と誉めつつも、頭を下げてまでの相撲に疑問を呈する。稀勢の里、豊ノ島、朝青龍に負けただけであり、稀勢の里は稀勢の里がうまかったし、まあ豊ノ島は油断と言えるが、あまりに朝青龍戦での負けが衝撃的なので、大活躍の印象が薄れた。俗に「相手の光を消す」なんて言いかたがあるが、朝青龍のあれはもろにそれだった。把瑠都の今場所の光を荒れ一発で消してしまった。



 三役揃い踏みに垣添が登場。魁皇と対戦するからだ。前頭四枚目。なるほど対戦相手によってこんなこともあるんだな。垣添にはいい思い出の映像になったろう。そういやまだ大銀杏の結えない把瑠都がこれをやったことがあった。たしか入幕数場所目の新記録だった。

 その垣添に魁皇が勝って9勝目。一昨年以来の9勝目とか。ハチロク大関だからね。以前も書いたが初代貴ノ花のころ、「クンロク大関」という蔑称が生まれた。毎場所9勝6敗の弱い大関のことだ。魁皇と千代大海、琴光喜はハチロクだ。これはちょっとなあ。でも魁皇はいるだけでいいけど。そんなのもまた大相撲の楽しみだ。
 しかしこの相撲はおもしろかった。垣添に攻めこまれてひたすら耐えるというか逃げるというか追いこまれるのだが、最後にとったりから逆転する。いやはや感動的に一戦。でも魁皇の腕を取るとったりは小手投げへの伏線だから見るたびに怖くなる。対戦相手もそれを感じるのだろうか。



 場所後結婚式のある琴欧洲は期待外れの9勝6敗。鶴竜、嘉風、豪風に負けたのが問題。ともにちいさな力士だ。これがなければ3敗だった。ひとつの課題になる。安定して12勝をあげないと。


 
 白鵬が朝青龍に勝って12勝3敗。最後の意地を見せたということだが、朝青龍にもう気迫がなくなんともつまらない相撲。それでも11勝4敗と12勝3敗は私の中でまったくちがう。勝ってくれてよかった。

 総論 夜、NHKに朝青龍出演。把瑠都戦を解説。モンゴル相撲の技と説明。兄が得意だったとか。高校時代の恩師と電話で話した際、「そのまんまモンゴル相撲の技じゃないか」と言われたとか。
 同じく琴欧洲を投げたかいなひねりもモンゴル相撲の技と吐露。稽古場ではよくやっているが本場所では初披露。やはりそうだった。どう考えても今まで見てきた日本の相撲の技ではない。

 土俵中央で決まった白鵬の網打ちも見たことのない形だった。モンゴル相撲の技は日本の大相撲にあらたな局面を切り開いている。すばらしいことだ。とはいえそれはモンゴル人力士にしか出来ないことだが。

 今場所は、朝青龍が把瑠都と琴欧洲に決めたモンゴル相撲の技ふたつ、あれに尽きる。まことに見事だった。

 一強獨走時代はつまらない。それは朝青龍が証明している。彼はヒールキャラクターでそれなりに盛りあげてくれたが、やはりキャラの異なる二強とそれを追う脇役がいる形がおもしろい。
 朝青龍が衰えて白鵬獨走時代になったらつまらない。朝青龍はまだ29歳。今場所の在り方は理想的だった。白鵬にはかなわないとしても頭を使った相撲でその他に勝てば14勝1敗なのだ。白鵬の取りこぼしを待てばいい。

 しかしあの下品な張り差し連発だけはいやだ。今場所は終盤でそれが消えたので楽しめた。これもまた私の総論として重要になる。




壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

inserted by FC2 system