平成二十二年秋場所

2010/9/12〜


初日
9/12(日)
 大相撲中継再開

 相撲中継再開は既定であり当然と思っていたがNHKが発表したのは場所開催直前の九月になってからだった。内部では決まっていたが世間の顔色をうかがってぎりぎりまで発表しなかったのだろう。そのあたりに今回の問題の捩れ具合を感じる。
 興行においては必然であり、それこそ江戸時代からの「慣習」であり「伝統」とすら言えるヤクザとの絡みを断とうというのだから前途多難である。

 待ちかねた多くの好角家が集って満員御礼と思ったら空席が目立つ。秋場所初日が満員にならなかったのは5年ぶりとか。資力があれば毎日でも駆けつけるのだがなんとも残念だ。とはいえ相撲協会は長年私のような市井の相撲ファンをないがしろにしてきた。あまりいい思い出はない。

 以前も書いたが、昭和50年代、父に椅子席をプレゼントするため私は国技館に徹夜で並んだ。そうしなければ買えなかった。二階のひどい席だが6000円もした。プロレスなら2000円程度だ。それでも徹夜で並ばねば買えなかった。なのに藏前の国技館には徹夜で並ぶファンが大勢居た。相撲人気というとすぐに「若貴ブーム」となるが、私の感覚ではあのころのほうがひどかった。ひどかったとはヘンだが、若貴ブームは相撲に興味のない連中まで引きずりこんだ熱病のようなものだが、それ以前の相撲人気の方が威張っていて気分の悪いものだった。
 桟敷席のような特別な席はもちろん素人には手に入らない。升席すらもほとんどが企業を通して契約されていて素人が買える部分はほんのすこしだった。私が父と姉と姉の義母と四人で初めて升席で観戦するのはそれから数年後である。病院の婦長をしていた義母が三菱関係の人から入手した券だった。升席は四人席だが四人では狭い。いまはすこし改良されたようだ。そんな時代もあった。
 大相撲で経験する前に何度もプロレスで升席観戦をしている。そのときいつも相撲でこの席に来たいと思ったものだった。

 と、いま苦境にある大相撲を心配しているのだが、大相撲が私のような庶民ファンにやさしかったわけではない。むしろ「おまえら貧乏人の手は借りん」とばかりにいつも威張っていた。相撲は決して庶民のものではなかった。しかしこれまた「興行」をする側からすれば当然の手法だ。その日の気分で来るかどうか分からない貧乏人など相手にしていたら不安定だ。後援者である大企業や金持ちにあらかじめ買い取ってもらい、客が来ても来なくても満員と同じ経済状況を作っておくのは常道だろう。いまそれがうまく行かなくなっているわけだが。

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(ここからThinkPadに書いた「相撲日記」から)
 大相撲中継がもどってきた。解説は北の富士に舞の海。いつもの最強の布陣(笑)。初日の今日の中継は四時から。いま優勝旗の返還。先場所の白鵬の涙を思い出す。天皇賜杯のない異常な場所だった。(写真は先場所の天皇賜杯のない授賞式)。

 新理事長は放駒。元大関魁傑だ。元大関の理事長は時津風(豊山)以来か。魁傑は北の湖、輪島、貴ノ花時代の脇役的力士だった。人柄のよさと土俵態度から人気は高かった。大関陥落と復帰を成し遂げている。
 親方となり、ガチンコ横綱大乃国を育てる名伯楽となったのでも意外な活躍だったのについには理事長にまでなってしまった。相撲界の不祥事による珍事だ。本来なら北の湖長期政権のはずだった。それが双津龍の問題から三重の海にバトンタッチし、今回の問題で魁傑となった。これも世の流れか。会社で言うなら平取締役にまではなれても社長になるひとではなかった。

 いずれにせよ私は相撲協会のよさである「力士による運営」を支持していたので、外部理事長が実現しなくてよかった。そんなことになったら土俵に女が上がるようにもなるだろうし、相撲の伝統的よさが次々と壊されたろう。極めて特殊な世界なのでいくつもの矛盾(俗に膿と言う)を抱えているが、それがまた特殊世界の味わいにもなっている。民主主義とかジェンダーフリーのような愚民思想で相撲をけがしてはならない。



 野球賭博問題で十両に落ちた豪栄道と、それを利して幕内に上がった豊桜の一戦から始まる。相手にしないような豪栄道の強さ。今場所はこういう獨特のものが多いことだろう。史上初とも言える異様な新入幕が9人、新十両の数、そして本来なら三役から前頭上位の実力者が十両で取る。おもしろい星取になる。

 ところでいま、太鼓に合わせて金切り声の女が「ファイトォ、ファイトォ」と叫ぶ気味の悪い応援が聞こえてくる。なんだろうこれ。しみじみ気味が悪い。新興宗教のよう。観戦に行っていてこんなのを耳にしたらたまったものではない。まして近くの席だったらケンカだ。テレビから聞こえてくるだけで不快になる。規制できないのか。



 新入幕の旭南海がコメントしている。17年かかっての新入幕。しかも12枚目からのいきなり新入幕は明治以来初の出来事なのだとか。これまた不祥事による珍事だ。いわば上げ底だから自慢にはならない。でもまあ本人はニコニコしてうれしそうだ(笑)。
 旭南海の相手は土佐ノ海。38歳6カ月での帰り入幕は最高齢新記録。土佐ノ海は競馬が好きだ。競馬場で何度も見かけた。着物姿でトリテキを何人か連れていた。ほがらかな性格なので馬券売りのおばちゃんたちと世間話をして笑いを取っていた。ギャンブル好きなのに野球賭博には手を出さなかったのか。私のように競馬だけが好きなのか。

 ここで気味の悪い応援が旭南海のものだと判る。カメラがそれを映し出した。アナが「鳴り物は許されてないものだと思いますが」と言った。だろうなあ、あんなものが許されてあちこちで始まったらうるさくて相撲観戦が台なしになる。絶対禁止すべきだ。というか、なんですぐに止めないのか。ともあれ旭南海が負けて引っこんだら消えた。ほっとする。ほんとに気味が悪かった。明日からもあいつらはやる気なのか。旭南海ってどこ出身なんだ。調べる。鹿児島だとか。とするとあれは17年かかっての新入幕に鹿児島から応援に来ているのか。気持ちはわかるがあれはルール違反。なんとも気分が悪くなる。



 臥牙丸は202キロとか。200キロを超えたか。激しい相撲で垣添を突き出した。動けるから山本山みたいなカスとはちがう。とはいえグルジア第三の男に栃ノ心のような魅力は感じない。なんといっても栃ノ心だ。栃ノ心は大関になれるのではないか。となるとグルジアも盛り上がる。グルジアはいま相撲放送は流れているのだろうか。関取が三人もいるのだから流れていはずだが。ということで調べてみたら09年のニュースだが不定期だとか。いまはどうなのだろう。幕内の取組は流れているともあったが不確定。



 中国出身の力士、蒼国来(そうこくらい)登場。この四股名にもすぐに反応するのだからGoogle-IMEはすばらしい。ATOKは出来ない。辞書登録した。
 蒼国来はまだ相撲取りの体になっていない。細い。それでも中国からの力士として話題になるだろう。でもあれか、内モンゴル、モンゴル自治区出身だから漢民族ではないのか。Wikipediaを見ると、モンゴル相撲をやってきたモンゴル人のようだ。1974年にひとり中国人力士がいたらしい。でも生まれも育ちも大阪。それを売りにするため中国人を名乗ったらしい。本物の中国籍幕内力士では初になる。でも内モンゴルだし本当はモンゴルだ。新疆だってウイグル自治区だが、本当はトルキスタンだし。チベットの問題もあるし、中共の覇権主義はこまったものだ。
 漢民族だったら応援する気にはなれないが、大勢いるモンゴル人力士のひとりとして意識しよう。



 9月1日に亡くなった初代若乃花の訃報と追悼の映像。モノクロ。呼びもどしはいつ見ても凄い。なんとも豪快だ。あの体であの技は凄まじい。北葉山、大麒麟と訃報の紹介。

 若乃花は相撲取りには珍しく長命だった。享年82。力士は60代で亡くなることが多い。現役時に無茶な食生活と躰造りをするから、引退してから節制しても長命とは無縁のようだ。
 若乃花は、最高の力士であったが、さらには親方として、二代目若乃花、隆の里というふたりの横綱、貴ノ花、若嶋津というふたりの大関を育て、本来なら理事長になれる一門ではなかったが、次代理事長が確定している佐田の山がまだ若かったこともあり、栃錦に次いで理事長にまでなれた。その理事長としても立ち合いの正常化等の功績を残した。理事長時代「待ったをしたら罰金」の制度を作り、物議をかもしたが、これによってどれほど立ち合いがきれいになったことか。最後には力士には珍しい80代の長命とすべてに満点の人だった。

 親方株売買による脱税事件もあったし、娘を無理矢理二代目若乃花と結婚させたが離婚してしまったり(二代目若乃花には当時から後に奥さんになる女が居て、この無理強い結婚が間違いだった)、弟の貴ノ花を先に亡くしたりと「満点」という言いかたは不適切かも知れないが。


 理事長最後の場所に、甥であり孫弟子でもある貴花田が平幕で史上最年少の初優勝をした。なんとも絶妙のタイミング。強運の人でもあった。



 豪風と光龍が闘志むき出しのケンカのような相撲。休みなく激しく動きまわり場内も沸いた。光龍はおとなしい感じしかないので意外。豪風が仕掛けたのか。



 白馬と猛虎浪がいい相撲。モンゴル人同士。拍手喝采。最後は白馬が上手投げできれいに投げ捨てた。白馬の今後はどうなのだろう。今場所は先場所の初の小結から陥落しての平幕。正直大物感はない。



 高見盛と安美錦の対戦。先場所大相撲中継がなくダイジェストだけだったので高見盛が見られなくてさみしかった。でもダイジェストという短い番組の中でも極力高見盛の仕切りは見せるようにしていたのを思い出す。NHKなりの気配りだったのだろう。同じ青森県出身。13対4と圧倒的不利の対戦成績だが今場所は高見盛が勝つ。胸を張っての凱旋(笑)。こんないつもの風景も一場所中継がなかっただけで懐かしい。先場所は永谷園の懸賞もなかったので今場所はよけいに嬉しいだろう。



 旭天鵬と徳瀬川の対戦。これもモンゴル人同士。野球賭博で日本人力士が十両に陥落しているので外国人力士同士の取組が増えている。旭天鵬はもうすぐ36歳。若々しい。アナも言う。毎度書くが、旭天鵬こそ40歳幕内が実現出来る稀有な力士なのに、彼は定年で引退する旭国から大島部屋を継ぐために40前に引退するだろう。今からもう残念でならない。でもそれはそれで初のモンゴル人親方が誕生する記念すべき時でもある。もう帰化している太田勝さんだ。

 先場所徳瀬川は白鵬の優勝パレードで、クルマに同乗して旗持ちをした。以前からさせてもらいたかったので、いい記念になったと喜んでいたことを思い出す。



 審判部長として貴乃花が映る。これも野球賭博問題による流れだ。早い出世になる。その代わり自分を支えてくれた大嶽(貴闘力)や琴光喜を失うことになった。阿武松(益荒男)も降格。
 内部告発による野球賭博問題が貴乃花潰しの流れだったことがよくわかる。火を点けたヤツもまんさかこんな大火事になるとは思いもしなかったろう。



 阿覧と栃ノ心。ロシア人とグルジア人。私にとって今日一番の好取組。もちろん栃ノ心応援。番付は阿覧が関脇になって逆転した。がっぷり四つ相撲になっての熱戦。栃ノ心が攻める。土俵際、阿覧が凌ぐ。場内から拍手。まさに「力持ち大男白人ふたりの力相撲」。栃ノ心が寄り切った。私も拍手。栃ノ心の進歩には力士としての成長が見える。阿覧はまだまだ生まれ持っての体力だけで取っている。相撲の精神にも目覚めていない。阿覧嫌いとは関係なく、栃ノ心は魅力的な力士だ。これからも応援する。
 琴欧州、把瑠都に続くふたり。「白人四人衆」。琴欧洲ブルガリア、把瑠都エストニア、栃ノ心グルジア、阿覧がロシアと散っているのがいい。ともすれば白人はロシア人ばかりになってしまう。とはいえソ連時代だったらエストニアもグルジアもソ連なのだが。

「二十世紀最大の事件」には戦争が挙がることが多い。私の場合は断然「ソ連の誕生と崩潰」だ。これらの力士もソ連時代だったら誕生していなかったろう。



 魁皇と豊真将。豊真将の攻めを凌ぎ、魁皇も素早く動く。引き技による「なんとか凌いで勝った」という内容だが、足が流れて危ない場面からも立ち直ったし、満身創痍の38歳としては十分な相撲だろう。
 先場所大活躍だった豊真将は番付が上がり今場所は強敵ぞろい。勝ち越せるか。ここのところずっとエレベーター力士になっている。



 把瑠都と若の里。把瑠都の先場所の8勝7敗はひどかった。千秋楽に白鵬と大相撲を取り盛り上げたが。今場所はどうだろう。
 把瑠都の突き押し。一方的。期待していいのか。どうにも先場所のひどさが未だに気になる。北の富士は場所前の稽古がよかったと褒めている。



 琴欧州と時天空。琴欧州は時天空が苦手だ。クセモノだものなあ(笑)。いい立ち合いだ。回しを取った。が、そこから時天空の掛け投げ。ほとんど同体で落ちる。わずかに凌いだか。時天空が顔から落ちたら危なかったが、かなり早く手をついていた。舞の海が手を突くのが早過ぎると苦言。師匠の教え通り顔から落ちて顔を擦り剥きひどい顔になった三代目若乃花を思い出す。今じゃ三代目若乃花はかつて相撲を取っていたことすらどうでもいいようなイカれたおっちゃんだが、あの当時の相撲は素晴らしかった。



 日馬富士と稀勢の里。日本人力士希望の星の稀勢の里(笑)は今場所小結。関脇から下がっている。ゴツンとぶつかるいい立ち合い。日馬富士が低い体勢になって前みつを取り下手出し投げで勝つ。立ち合いも、その後も五分なのだが、次第に稀勢の里は上体を起こされ、対して日馬富士は低くなってゆく。やがて前みつを取られ、棒立ちのような状態になったところに投げ。舞の海は攻められても低い体勢を維持できるのが日馬富士の魅力と指摘。



 白鵬48連勝! 鶴竜善戦

 白鵬と鶴龍。対戦成績は13対0。年齢は同じ25歳。懸賞は38本。対戦成績は一方的だが鶴龍はやるたびに粘りを見せ横綱を追い込んでいる。ここのところいい相撲が続いている。先場所は変化気味で期待外れだった。今場所はそれはないだろうから期待できる。

 鶴竜は毎回善戦する。把瑠都や琴欧洲のような体力のある力士が横綱と五分で闘うのは当然として、小柄な鶴竜の善戦は好ましい。しかし先場所は期待外れ。変化したのだ。成功していたら連勝を止めていたかも知れない奇策だったがしっかり見届けられたらあとはもろい。いやそれよりも変化技で横綱に勝ってもしょうがない。やめてほしい。

 今場所は正攻法。巧さで双差しになる。そこからすぐに白鵬が巻き替えて四つになる。もういちど巻きかえしてまた双差しになるが、また白鵬が巻きかえす。激しい巻き替えの応酬。結果として白鵬が態勢を整えて寄り切った。すばらしく充実した内容。鶴竜の善戦は讃えられる。白鵬はほっとした顔をしていた。

 この一番で印象に残ったのは白鵬の巻き替えの速さ。大柄なのに鶴竜に速さ負けしない。あらためてまた白鵬の身体能力の高さを確認した一番だった。張り差しさえなけりゃなあ……。


 立ち合いで、両者腕を降ろさず時間が止まる。白鵬が嫌った。待ったをする。険しい顔。こんな怖い顔の白鵬を観た記憶がない。仕切りで仕掛けてきた鶴竜に怒ったのだろう、それが張り差しになった。右手で相手の顔を張って行くチンピラの立ち合い。そして隙になった。そこを鶴竜につけこまれる。白鵬の気分を害し、立ち合いに隙の生まれる張り差しに追いこんだことで鶴竜の作戦は成功したことになる。

 二日目に舞の海がこれを解説してくれた。彼は「横綱は勇気のある待ったでした」と言う。鶴竜は、横綱に先に仕切りに手を突かせ、それを見て自分も手を突いての、自分のタイミングでの立ち合いをしようとした。両者宙に手を浮かせたままの時間、10秒以上のあいだその状態を保ち、そこから横綱が待ったをした。理想論で言うなら、自分に都合のいいそういう形の立ち合いで仕掛けてくる挑戦者を横綱は受けてたつべき、となる。しかし理想的な立ち合いは、両者が息を合わせて同時に手を突いてのものだ。それが相撲の美である。白鵬は受けてたつべき横綱だが、鶴竜のそういう作戦を見抜き、万が一を思って待ったをした。まして記録的連勝の最中である。慎重にならざるを得なかった。この瞬間に北の富士が割りこむように言った「イラって来てるね」も絶妙のタイミングだった。白鵬の顔が険しくなっていた。
 結果、怒りの張り差しになり隙が生じたから策に嵌められたとも言えるが、あのまま立っていたらなにがあったかわからない。そこのところを舞の海は「勇気ある待った」と言ったのである。

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●的外れの意見──【後日記】

 この五日ほど後になる。スポーツ報知を読んでいたら某記者が「白鵬の連勝を許すその他の力士が情けない。もっとがんばれ」という内容の記事を書いていた。当然誰でも思いつくテーマである。
 だが「連勝中の横綱をなんとしても倒すという気魄が感じられない」はいいとして、そのダメな典型として鶴竜を取りあげていたのは納得できなかった。「鶴竜など双差しになりながら巻きかえられる体たらく」とダメ力士の典型として書いている。双差しになった鶴竜もすばらしければほんの一、二秒で素速い巻き替えに行った白鵬の速さも凄く、さらにまたそれを巻き替えにいった激しい攻防は、その後の対白鵬戦を鑑みても最高の一番だった。

 この記者は相撲を見ていない。好きではない。詳しくない。おそらくダイジェストで流し見した程度なのだろう。雰囲気だけで書いている。「白鵬の連勝ばかりが取り沙汰されているが、それを許しているその他の力士に物申す」というテーマだけで書いた文だ。

 もしも相撲が好きなら、業師鶴竜がなにかをするのではと固唾を呑んで見守るほどの好角家なら、これは鶴竜の巧さにも、それを凌いだ白鵬の強さにも感嘆する最高の相撲だった。これをダメ相撲の見本にするはずがない。
「せめてもうすこし横綱を慌てさせるような策はないものか」と苦言を呈するなら、その後の取組にいくらでも当て嵌まる力士がいる。なのになぜ鶴竜の名を出したのか。おそらく彼がテレビで見た相撲が鶴竜戦だけだったのだろう。なんともひどい記事だった。こういう記事を読むと二度とその新聞は買うまいと思う。実際買ってないけど(笑)。


二日目
9/13(月)
 閑散の場内

 まだ十両とはいえ場内の客のすくなさが淋しい。九州場所なら毎度の光景だが東京の本場所である。

 十両の一枚目と二枚目の対戦。豪栄道と雅山。本来なら幕内上位の取組だ。そのふたりが十両で取る。しかも負け越して落ちてきたのではない。野球賭博事件の後遺症を最も感じる取組である。
 早い時間からずっと見ていると(以前はBSでそれをしていた。今はないので出来ない)番付が上がるとともに相撲内容が充実してくるのがよくわかる。幕下と十両ではぜんぜん違う。十両でも上がったばかりの番付下位の連中と幕ノ内から落ちてきた連中の番付上位の相撲では中身が違う。そして幕内も前半から後半へと盛りあがって行くときの熱気はまた格別だ。
 いま豪栄道と雅山の相撲を見ると、まごうことなくこれは幕ノ内上位の相撲内容である。実際そうなのだ。それが不祥事によりこんなところで取っている。格というのは出るものだと痛感する。



 幕ノ内の解説は正面が舞の海。向正面は北陣(麒麟児)。
 麒麟児と言えば大麒麟。先日なくなった押尾川親方。二所ノ関の後継問題で揉めて獨立した。人格者の押尾川について行きたかった力士は多数いたが、娘婿になって二所ノ関を継ぐことになった金剛の元に残るべしという裁定が出た。押尾川と行動できないので相撲を止めたのが当時幕内上位に定着していた27歳の天龍。そういう経緯だったからプロレス入りしても明るくなかった。いつも憂鬱げだった。関脇を経験していたが大関は無理だったろう。それは後に本人も語っている。その天龍と中学の同級だったのが六代目円楽を継いだ楽太郎。天龍こそがプロレスをすぐに辞めてしまい、馬場のように予定調和のプロレスを長々とやるのが鶴田かと思っていたら鶴田は早世してしまい天龍がいまだに現役だ。これは予測できなかった。
 大好きな押尾川親方の死に天龍はどんなコメントを寄せたろう。知りたいものだ。「葬儀は近親者で行われた」とのみありネットにも情報は流れていない。この「近親者」に天龍は入っているだろう。

押尾川部屋創設の元大関大麒麟 堤隆能氏死去

 日本相撲協会は6日、元大関・大麒麟で元押尾川親方の堤隆能(つつみ・たかよし)氏が4日にすい臓がんのため東京都内で死去したと発表した。68歳だった。佐賀市出身で、葬儀・告別式は近親者による密葬で済ませるという。

 1958年夏場所に二所ノ関部屋から初土俵を踏み、十両昇進を決めた62年の名古屋場所で本名からしこ名を麒麟児に改名。70年夏場所から大麒麟となった。現役時代は差し身がうまく、もろ差しからの豪快なつり寄り、投げを得意とし、体の柔らかさを生かしたうっちゃりなどにも定評があった。優勝経験はないが大関在位は25場所。74年九州場所で引退し、年寄「押尾川」を襲名した。

 75年には内弟子を連れて分家獨立を申し出る「二所ノ関騒動」を起こしたが、一門の調停で押尾川部屋を創設。益荒雄(元関脇、現阿武松親方)や若兎馬(元幕内、現押尾川親方)らの関取を育てた。また相撲協会理事として審判部長を約2年間務めた。2005年4月1日付で全力士を尾車部屋に転属させ部屋を畳み、定年1年前の06年6月に退職。堤氏の弟子らを引き受けている尾車親方(元大関・琴風)は「詳しいことは分からないが、協会から悲報を聞いてびっくりしています」とコメントした。スポニチより


 大麒麟のことをアナも北の富士も「体が軟らかく」と誉めていたが私はあまり想い出はない。のっそりしていて、足の上がらないひどい四股を覚えている程度。柏戸に抜群に強かったとアナが解説していた。当時からよく読書している角界には珍しいインテリ力士だと言われていた。この場合学歴は関係ない。日大卒の連中なんて輪島を筆頭にまともな字すら書けない。
 現役時から大麒麟の人柄は評価され、それをスポーツ紙などで読んでいたし、そしてさらにまた金剛が口先だけのろくでもない男だったから、大麒麟が継承することでほぼ決まっていたのを娘婿になることで金剛が横取りしたのは心証が悪く(近年だと白鵬の宮城野部屋の金親が同じようなことをした)、大麒麟が自分を慕う弟子達と篭城したときは、私なども断然大麒麟を支持した。



 幕ノ内最初の一番は豊ノ島と土佐ノ海。野球賭博問題で豊ノ島が陥落して十両、その影響で史上最年長再入幕を果たしたのが土佐ノ海。38歳は魁皇ばかりが話題になるが土佐ノ海もそうだ。なにしろ武双山とライバルだった男。このひともいるだけでいいのだが、豊ノ島にあっけなく負けた一番に舞の海が力が衰えてきていると厳しい指摘。今場所の再入幕はご褒美か。



 旭南海が出て来たが昨日の気味の悪い応援はない。おそらく注意されたのだろうし、NHKや相撲協会にも抗議の電話があったはずだ。ひどかった。気味が悪かった。
 というところで旭南海が変化して送り出し。垣添に勝って新入幕初白星。でもまあこのひとの相撲もたいしたことはない。新入幕は野球賭博によるこれもご褒美だろう。豊ノ島を始めとする連中が十両から勝ちあがってくればまたもどって行くだろう。



 黒海と北太樹が正面からぶつかり、そのあとは飛んだり撥ねたりの大騒ぎ。相撲的には誉められたものではないのだろうが熱戦なので場内は沸く。先場所から、なんとなくいい相撲が多いように感じる。力士が危機感を持ったのだろう。
 北太樹はあまり星は伸びていないけれど、ここ数場所、お気に入りの力士だ。熱い相撲を取る。


 結びで相撲を取る白鵬と時天空。先場所の白鵬と時天空のビデオが流れる。いい相撲だった。あぶなかった。ほぼ同時に土俵下に転落。白鵬の40連勝目。先場所白鵬があぶなかったのはこの時天空と稀勢の里。そして千秋楽の把瑠都だった。でも把瑠都の場合は大相撲の末に投げすてての快勝。稀勢の里と時天空は勝ったけれど同体ぐらいだったから、やはりこの二番か。



 栃ノ心と徳瀬川。大柄なふたりが右四つがっぷりになっての大相撲。両者吊ろうとするが耐える。栃ノ心が上手投げで体勢を崩して寄り切る。アナも「いい相撲でしたねえ」と誉める。北陣も「見応えありましたねえ」。栃ノ心が強くなっているとみな誉める。徳瀬川も立ち合いに関する反省のひとことがレポートされる。「こういう力士は伸びますね」と舞の海。ふたりとも好きな私は満足。充実したいい相撲が続く。しかし会場はがらがら。



 阿覧と琴奨菊。突進を阿覧に止められるが、阿覧の右ヒジをブロックしたまま、期を見て、上手一枚でがぶってゆく。小学生の時から相撲を取っている琴奨菊とそのころは相撲のスの字も知らなかった外国人青年との差か。琴奨菊、快勝。

 舞の海が琴奨菊のテーピングに苦言。たしかに右ヒザと両手首に部分テーピング、左足は膝から下がみなテーピング。みっともない。舞の海は左足のテーピングを批判したのだが、むしろそれはケガをしているからしょうがないとして、両手首のそれを取るべきだ。ファッションのつもりなのか。習慣なのか。佐渡ケ嶽が叱らないとダメだ。



 琴欧洲と鶴竜。鶴竜に攻めこまれて琴欧洲は防戦一方。でも小柄な鶴竜相手に速さ競べで負けず、引いて、上手を取り、なんとか寄り切った。鶴竜は口惜しそう。琴欧洲は勝ったけど誉められた相撲ではない。それでも躰の切れはいいから期待できるか。そもそも鶴竜のような小柄な業師相手は苦手なのだ。



 琴光喜、訴訟へ

日本相撲協会を解雇された元大関琴光喜関(34)=本名・田宮啓司さん=が13日、解雇は不当として、力士としての地位保全を求める訴訟を東京地裁に起こし、給与の支払いを求める仮処分を同地裁に申請した。元琴光喜関の代理人が明らかにした。これを受けて日本相撲協会の放駒理事長(元大関魁傑)は「詳しいことは聞いていないので、弁護士にお任せしている」とのコメントを出した。

 元琴光喜関は、野球賭博への関与について協会理事会からの事情聴取に再三、関与を否定する虚偽の申告をしたことが重くみられ、名古屋場所前の7月4日の臨時理事会で、先代の大嶽親方(元関脇貴闘力)とともに解雇処分を受けた。asahi.com


そうだな、泥仕合は見たくないが、今のままの琴光喜だけをスケープゴートにした形は不自然だから、きちんとやった方がいい。力士もみな、白鵬が琴光喜を庇う発言をしているように、琴光喜の処遇には不満を抱いている。

 そういうことはあるまいと思うけど、十両からとか幕尻からとか、そんな再出発があったら、それはまたそれで楽しめる。いずれにせよこれが「臭い物に蓋」というよくない後始末であるのは確かだ。

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 日馬富士、すそ払い!

○日馬富士 ●豊真将

 豊真将の攻めを日馬富士が交して激しいせめぎあい。豊真将が押し倒したかと思った瞬間、低い態勢の日馬富士が「なにか」を仕掛け、豊真将がひっくり返る。こちらからのテレビ画面では日馬富士がなにをしたのかよくわからない。ビデオで別画面から観ると、地に落ちたと思われるほど低い態勢の日馬富士が、目の前の豊真将の足首を持って持ちあげている。決まり手は「すそ払い」となった。8年前の安美錦以来の決まり手とか。覚えていたので「すそ払いかな」と珍しい技の名を発表前に口にしていた。日馬富士のそれはモンゴル相撲の技だろう。

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 把瑠都敗れる──膝は大丈夫か……

●把瑠都 ○稀勢の里


 把瑠都が鋭い出足で一気に稀勢の里を土俵際まで追い詰めたが、そこで古傷のある左膝がカクンとなる(膝が入った、と言ったりする)状態になり、力が抜ける。稀勢の里の反撃に自ら土俵を割るような形で敗れた。苦笑しつつ左足を引きずりつつ下がって行く。心配だ。

 写真を見ると稀勢の里が強いようだがそうではない。膝が脱けて把瑠都が自滅するところを、押しだされる態勢から復活した稀勢の里がチョンと押したところ。稀勢の里は省エネ。何もしていない。

 毎度のことながらアナの稀勢の里贔屓が醜い。「稀勢の里、すばらしい相撲でしたね!」と大はしゃぎで絶讃して舞の海に話を振る。舞の海は賢いのでそれに水を差すことはせずに適当に応対していたが、どうにも誉めるような内容の相撲ではない。把瑠都が一方的に稀勢の里を土俵際まで押しこんだ。稀勢の里が踏んばる。本来ならこのまま押しだされ、何も出来なかった敗戦、になるはずだった。ところが大股で強引に進軍したものだからそこで把瑠都の膝がカクンとなり、自ら崩れる態勢になった。稀勢の里はそれをチョコンと押しただけである。把瑠都がかってに土俵を割ってしまった。公正な評をするアナなら真っ先に把瑠都の膝を心配する内容だ。なのに相手のケガに救われたような稀勢の里を絶讃している。なんともたまらん気持ちになる。それがお茶の間寄りの視点であり相撲ファンから支持を受けると思っているのだろうか。大の稀勢の里ファンでも、真っ当なひとなら、これを「稀勢の里、すばらしい」とは言わないだろう。「あぶなかった、よかった、たすかった」の内容である。

 舞の海はきちんと「把瑠都の足の送りが大きいこと→それによって膝が入りやすくなってしまうこと」を理論的に指摘していた。ビデオを観ると、指摘通り把瑠都は大きな歩幅で前進して行く。歩幅が大きいだけでもダメなのに足が宙に浮いている。雑だ。乱暴だ。摺り足の基本が出来ていない。これがチビッコ相撲のころから摺り足を教えこまれた日本人力士と成人してから相撲を覚えた西洋人青年の差なのだろう。決まるときは豪快だが、歩幅が大きいから開脚度合も大きくなり身をかわされたときにカクンとなってしまった。自滅である。

 苦笑いのまま引きあげた把瑠都の様子が伝えられる。しきりに「もったいない」を連発していたとのこと。「膝は動くのでだいじょうぶ」とレポートが入ったので安心する。本人が言うように、完全な勝ち相撲を自分の雑な部分で自滅してしまったことが「もったいない」からもよくわかる。なのにアナは稀勢の里絶讃。こういうときアナの名を上げて批判した方がいいのだが興味がないので覚えていない。誰だったか。

 把瑠都のそういう雑な部分は責められねばならない。大きな課題だ。
 どのような解釈をしようと「稀勢の里絶讃」は的外れである。恥ずかしい話だ。

 このあと結びの一番の白鵬の相撲を足先だけ注目してみた。スロービデオを注視すると、地に吸いつくかのような見事な摺り足だった。対して把瑠都の足裏は20センチぐらい浮いて進撃して行く。あらためて「摺り足」について考えた一番だった。

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 白鵬、49連勝!

 先場所の時天空の健闘は美事だった。大相撲の末、土俵外に落ちたのはほぼ同時。先場所、白鵬があぶなかった相撲は、稀勢の里戦を始めいくつかあったが、体が落ちるギリギリ度合いではこれが一番だった。どうにもマスコミも解説者もアナも、みなそろって白鵬磐石、白星街道まっしぐらのような言いかたをするのが気に入らない。私からすると冷や冷やものだ。今場所も張り差しを使ったりしてちっとも安定していない。

 先場所の健闘から時天空に期待が集まる。しかし、どんとぶつかって、パタっとはたかれてお終い。舞の海の名言「期待を裏切るのも時天空なんです」。そうだな、毎場所このひとに善戦は無理。たまにすごいことをするキャラだ。



三日目
9/14(火)
  今日は民主党代表選。朝からそれ一色。午後は各局とも特番が組まれている。この二週間、これで愉しませてもらった。日教組の輿石を脇に順えた中共土下座外交の小沢と、社会党の仙石に支えられての菅、どっちが勝っても地獄。どうとでもなれだ。願うのは分裂のみ。



 解説は二所ノ関こと金剛。ホラ吹き金剛も今じゃ二所ノ関一門のトップとしてデカい顔をしている。向正面は二十山(はたちやま)。栃乃花だ。

 力士紹介として新関脇の阿覧のインタビュウがあった。まあまあ喋れるようになっている。レスリング出身なので引き技に対する反省を語り、「前に出る相撲」と言っていたが果たしてどうか(笑)。栃東、日馬富士、鶴竜、そしてロシア勢、この手の連中は勝つためなら平然と変化する。阿覧もすぐにまた出そうだ。信用できない。
 同じロシア人と結婚しこどもも生まれたらしい。



 雅山と旭南海。旭南海が幕内、雅山は十両。かつては天と地ほど立場が違っていたのに、今回は野球賭博問題で落ちてきた雅山と野球賭博バブルで出世した好対照のふたり。力はちがっていた。雅山完勝。



「十両この一番」としてビデオでいま流されたのが豊ノ島対豪栄道。もうわかっていることなのに、このふたりが十両で取っていることにまだ不思議な気がする。今場所の十両優勝はこの野球賭博問題で落ちてきた連中から出るだろう。豊ノ島はかつて14勝1敗で優勝したことがある。十両の優勝賞金は幕ノ内の半分の500万だったか。それを楽々と手にすると思えば陥落も悪くない。もともと給金自体はたいして変らないし。変るのはその下。十両と幕下は雲泥の差。でも十両と幕ノ内はさほどのものではない。とはいえ新入幕の力士がみな口にするように、「相撲を取るときの雰囲気がぜんぜんちがう」のだとか。



 北太樹が猛虎浪相手に速攻で寄り切る。今場所は期待できそうだ。
 と、ここで5時。ニュースになる。すでに民主党代表選は菅が当選している。意外な大差だった。小沢が当選すると記者クラブの存続がやばくなるマスコミのイメージ誘導が功を奏した。おどらされる民衆もアホだが民主党サポーターなんてそんなものだろう。まあどっちが勝とうがなんの興味もない。それでも小沢が勝って菅や社会党出身の仙石あたりを追いだしたらおもしろいなと思っていた。



 高見盛と旭天鵬。高見盛は旭天鵬に歯が立たない。もう三年以上勝ってないとか。今日もいつも以上に気合いを入れて(笑)突進したが、左上手を取られるとあっけなく寄り切られた。旭天鵬は高見盛の料理法を熟知しているかのようだ。
 アナも二所ノ関も36歳旭天鵬の肉体の充実を誉める。張り詰めている。美事。さきほど土佐ノ海が出ていたが、160キロあった躰が今は140キロとか。38歳で衰えてきているのだろう。旭天鵬の躰はすばらしい。



 稀勢の里と琴奨菊。これも毎場所不思議に思う。琴奨菊が稀勢の里に強いのだ。18対10。ここ一年は五分だが。相性はおもしろい。
 今日は琴奨菊の突進を受けとめて稀勢の里がじっくりと料理。琴奨菊はがぶれなかった。こういう相撲を取ればもう苦手とは言えないのではないか。終始稀勢の里の相撲だった。



 阿覧と鶴竜。関脇と小結。ともに二敗。これはもう心情的に鶴竜の応援。アナも「好取組」と言っている。
 場所前に阿覧が相撲の巧い鶴竜と稽古したいと、鶴竜が出稽古に通っている時津風部屋まで行ったのだとか。そのときの稽古風景が流れた。これがあるから中継は楽しい。こんな楽しみはダイジェストにはない。
 鶴竜が左下手で前褌を取って攻める。怪力阿覧が極めにかかるので攻められない。躰が浮くほどの力。そこから巻き替えて双差し。もう一度前褌を取って寄り切った。巧い!



 ここで5時半になりカンナオトの挨拶が始まる
 私は5時前に近所のスーパーに買い物に出かけ録画にしていた。帰ってきたのは5時37分ぐらいだったか、1チャンネルを点けると相撲をやっていない。カンナオトがしゃべっている。もしかして、と3チャンネルにすると、こちらでやっていた。急いで録画も切り替える。琴欧洲が豊真将に勝つところだった。録画しているからとスーパーでのんびり買い物をしていたらいちばんいいところを見逃すところだった。カンナオトの話はあとでニュースで確認できる。いま聞くほどのものでもない。





 日馬富士と栃ノ心。もちろん栃ノ心応援。今場所は充実している。勝てるだろう。しかし今場所の日馬富士は気合が入っている。初日、二日目といい内容だ。
 いい相撲だった。今日一番か。正面からぶつかり、日馬富士にうまく潜られ、栃ノ心は引いてしまった。まだこんな悪い癖が出る。そこから右四つになり栃ノ心が左上手を取る。こうなると力が出る。日馬富士は半身になって防ぐ。栃ノ心の引きつける力を削ぐ戦法だ。そこからの攻防。最後は右をおっつけた栃ノ心が剛力で日馬富士を持ちあげるようにして寄り切った。結果的に日馬富士の柔を栃ノ心の剛が破ったようになるが、栃ノ心には力だけでなく技もあった。強くなるな、このひとは。楽しみだ。



 栃煌山が魁皇に勝つ。栃煌山の変化気味の立ち合い。魁皇が引いての負け。栃煌山はこれが魁皇戦初勝利。7回目の挑戦。いつもドンとぶつかっての魁皇のはたきという十八番というかワンパターンというか、それに毎場所見事に引っ掛かっていた。今日の変化はそれを意識して考えた戦法だったのだろう。これで一山を越えたことになる。
 栃煌山の活躍を見るとこどものころからのライバルである豪栄道の落ち目が目立つ。とはいえ野球賭博での番付降下。捲土重来を期待したい。



 把瑠都と時天空。把瑠都、突きだす。理想的一方的な相撲。
 昨日の相撲を振り返り、二所ノ関も「摺り足が出来ていない」と言っていた。
 今日の足の運びは「今日はいいですね」と二所ノ関は思わず言ってしまい、アナも同調したが、ヴィデオを見ると、相変わらず左足はバタ足になっていた。アナは「あ、でも、この辺、バタ足になってます」と訂正していた。古傷の左膝によくない。心配である。そのうちまたやりそうな気がする。



 白鵬、50連勝!


 5と○で50連勝。隣の男性はモンゴルからのレスリング団員。故郷の英雄白鵬を国技館に訪問した。

 白鵬と若の里。白鵬は最初若の里に6連敗していた。大の苦手だった。なつかしい(笑)。それ以後9連勝。負けているころから、私は若の里が大好きだったし、その強さもよくわかっていたが、大器ぶりをいかんなく発揮している白鵬がどうして若の里に勝てないのか不思議だった。もっともこの6連敗も稀勢の里に連敗したりしたのも、みな力負けというより未熟な白鵬の自滅だった。相撲内容では勝っていた。詰めが甘くて自滅していたのだ。あのころの未熟だった白鵬がいとしい。

 若の里が最後に勝ったのは白鵬が関脇の時、もう5年前になるという。時の流れが速い。あのころの白鵬をつい昨日のように覚えているのだが。

 今日の白鵬の相撲はよかった。若の里が外連のない力士だからだろう。大嫌いな張り差しもせず、きれいな立ち合い。右肩から当たり、左上手を取って一気に寄った。これで50連勝。

 アナが白鵬が千代の富士の記録を抜き双葉山の記録にまで迫る可能性と言ったら、二所ノ関が「そうですね、おうおうにしてありますね」と言った。この場合の「おうおう」は適切ではないだろう。辞書を引いて調べたが、やはりそう思った。まあ金剛の言葉づかいの揚げ足とってもしょうがないが(笑)。


四日目
9/15(水)
 好調嘉風四連勝から始まる。嘉風は先場所出場停止にはならなかったが野球賭博問題で名が上がり、師匠の尾車(琴風)は謹慎の処分勧告を受けた。その後、嘉風は無罪放免(?)となり尾車の謹慎もとかれた。異様な雰囲気だった先場所、嘉風は出場はしたもののなんだか元気がなかった。あれから二ヵ月、気分一新して今場所は元気なようだ。

 先日(調べたら10日だった)尾車を恐喝した連中が逮捕された。これはヤクザとは関係のない一般人による「野球賭博問題に便乗した恐喝」だったらしい。



 黒海が上手出し投げで霜鳳に勝つ。黒海には珍しい投げ技。なかなか見事だった。栃ノ心の活躍で尻に火が点いたか。いまグルジア出身の力士代表は黒海ではなく栃ノ心だ。



 十両の一番。雅山と豊響。ともに野球賭博問題で陥落した幕内力士。見ていて、幕内の相撲だと感じる。決して先入観ではなく幕内と十両では相撲が違う。



 高見盛と北太樹。楽しみな一番。高見盛が引いてしまい北太樹の勝ち。
 私はここのところ北太樹の相撲が気に入って応援しているのだが、このひとの土俵態度はあまり好きではない。今日も勝ったあと勝ち名乗りを受けるのに土俵の上を走っていた。力士というよりアスリートだ。そういや白鵬の土俵の上をえっほえっほみたいに走るのも好きではない。北太樹は仕切りの時に北桜みたいに大きく両手を回したりする。ラジオ体操のように。

 私は高見盛のアクションは好きなのに北桜のそれは好きになれなかった。それは高見盛のそれが小心者が自分を励ますために無意識でついついやってしまったことから始まっているのに対し、北桜のは自分の個性を出すために考案したもの、という雰囲気があったからだ。北太樹のあのアクションも、なんか北桜のにおいがする。



 今日の白鵬の相手は豊真将。対戦成績は6対0。去年の夏場所の一番が流れる。まともに当たり、白鵬が引いたので豊真将が一気に寄る。土俵際でもういちど引いて、かろうじて勝った。ひどい相撲。去年の夏場所でも書いてるのだろうが忘れている(笑)。去年は86勝4敗という史上最高の成績を残したが、かといってみな磐石の勝利ではなかったのだなと確認。白鵬もほっとして苦笑いしていた。まあひどい内容だ。



 安美錦と猛虎浪。安美錦が巧く攻めて勝ちパターンだったが、左に廻った猛虎浪に足がついて行かず先に落ちた。膝が悪いのだろう。相撲内容で勝っているのに勝負で負けている。

 決まり手ははりま投げ。これは笑った。投げてはいない。平成17年の把瑠都が岩木山に決めて以来とか。あれは覚えている。あれははりま投げだろう。今回のは、回りこむ猛虎浪の足にしがみつくようにして安美錦は突っこんでいき、自分で転げ落ちた。そのとき回りこんで身を交わした猛虎浪の右手が安美錦のまわしに置かれていて(ただ置かれていただけだ)、その位置が規定の「はりま投げの形」になっているので、そういう決まり手になるのだとか。いいかげんだと思う。でもまあそういう決め事なのか。どうもここのところ「決まり手」には釈然としないことが多い。規則からの決まり手と実態がちがいすぎる。
 ここでレポート。勝った猛虎浪もはりま投げという決まり手におどろいていたとか。そんな凄い技をやってないものねえ。



 阿覧と稀勢の里。阿覧が関脇、稀勢の里は小結。場内から手拍子の応援。地元茨城からの応援団とか。牛久か。私は代代茨城の家系なのにぜんぜん地元意識がない。茨城出身の力士になどなんの興味もなくブルガリアやエストニアを応援している。
 突っ張りあいから阿覧の引きにキセノンつんのめる。応援団意気消沈(笑)。
 どっちもどっちでどうでもいいが引き技はつまらない。どうにも阿覧は好きになれない。激しい突っ張りも繰りだしてなかなかよかったのだが、けっきょく決め手は引き技だ。



 鶴竜と栃煌山。栃煌山が新関脇。鶴竜は返り小結。これも稀勢の里と栃煌山が日本人力士の希望らしいのだが、私は鶴竜応援だ(笑)。
 当たりはともに頭からでよかったが鶴竜が引いてしまう。安易な引きだ。でもヴィデオで見ると栃煌山のおっつけが巧く、引かざるを得ない形とも言える。栃煌山を誉めるべきか。舞の海の解説によると場所前の稽古でもこの形になることが多かったとか。ここまでの対戦成績は8対6で鶴竜だが(今日で8対7になった)今日の相撲を見るとむしろ鶴竜は栃煌山を苦手にするようになるかもと感じた。



 把瑠都と琴奨菊。対戦成績は8対7。拮抗している。把瑠都は以前琴奨菊を苦手にしていた。昨年から一方的に勝つようになってきているが先場所は負けている。気のないつまらん張り差しで立つ。くだらん。肩越しに深い右上手が取れたので、懐の中で暴れようとする琴奨菊を吊り上げて勝ったが、このくだらん張り差しは止めた方がいい。把瑠都はまた相撲がわからなくなっているようだ。



 琴欧洲と栃ノ心。3連勝同士。今日一番の取組。楽しみ。栃ノ心はどこまで強くなったか。ここのところ栃ノ心が二連勝。その前は琴欧洲の三連勝。
 琴欧洲が低い姿勢から素速く上手を取り、寄る。その間に下手も取り、栃ノ心はなにも出来ないまま押しだされた。栃ノ心は半端な立ち合い。なんだろう、これは。解説陣は前褌を取りにいったとかあれこれ言っている。栃ノ心は胸を出しての立ち合い、琴欧洲は頭から突っこむ低い姿勢。それがすべてだった。舞の海は栃ノ心にこそ頭から行って欲しかったと言っている。「ほんのすこしの立ち合いの差で相撲がぜんぜんぢがって来ますからね」と舞の海が言う。ほんとうだ。栃ノ心の高い立ち合いで今日一番楽しみにしていた相撲が大凡戦になってしまった。琴欧洲にはこのあともなんとか全勝で白鵬を追って欲しい。



 若の里と日馬富士。鋭い日馬富士の出足に一気に土俵際まで追いこまれた若の里だが地力で粘る。土俵中央まで押しもどしたが、そこからあまりに安易な引き技。そんな安易で強引な引きに足腰のいい日馬富士が崩れるはずもなく、しっかりと着いていっての勝ち。若の里、いまだ白星なし。大好きな力士の凋落を見るのはさびしい。先場所だったか、あれこれあった中、若の里は「こうなったらもう一日でも長く相撲を取りたい」と語っていた。そうだ、琴光喜の解雇に関してだ。
 まだまだ幕ノ内下位、十両では通じるが、もう横綱大関を食って三役の座は無理とわかる。かつて毎場所10勝をあげて関脇に定着していた時期を知っているだけに淋しい。でれこれもまた現実。



 魁皇と時天空
 今日で魁皇は幕内通算1378回出場で寺尾と並んで史上二位タイ。明日も出るから単獨史上二位は間違いない。一位は高見山の1430。あと52回。4場所がんばれば抜ける。そして四場所頑張れば千代の富士の勝ち星にも並べるか。満身創痍。ぼろぼろの38歳。その日までがんばれ。

 魁皇、勝つ。左下手をねじこんでの寄り。それは切られて、最後は右上手を引きつけての寄り切りだった。危なげのない勝利とも言えるが、しぶとい時天空相手に(先場所は負けている)一気には勝てず、二拍、三拍おいての勝利だった。その辺も力の衰えなのだろう。ただ舞の海は慌てないのがいいと無理に一気に行かないことを誉めていたが。
 膝を打ったのか痛そうだ。勝ちこせるのか。今場所は角番だ。



 白鵬、51連勝!


 白鵬と豊真将。白鵬、また張り差し。うんざりする。4日で2回。正攻法の豊真将に張り差しをすることに何の意味があるというのか。もうほとんど引退の近かった朝青龍と一緒。追いこまれてあぶない場面が現出。強引な振りまわしての上手投げ。
 温和な豊真将が思いつめたような厳しい顔をしていたから、それが張り差しに繋がったのだろう。舞の海も「今日の豊真将の表情を見たら」と解説していた。
 しかし初日の鶴竜もそうだったが、相手の表情が気に入らなくて張り差しをしていたら自滅に繋がるだろう。談合横綱千代の富士の記録を抜いて欲しいが感心しない相撲が多い。長年の白鵬ファンとしては淋しい限り。

 五日目
9/16(木)

今日の白鵬の相手は栃ノ心。いま夏場所の栃ノ心との一番をビデオで流しているがこれも張り差しだった。白鵬の連勝記録に張り差しはいくつあるのだろう。半分ぐらいか。調べることは可能だがやる気にもならない。バカらしい。

 朝青龍の晩年(という言いかたもへんだが)が張り差しばかりでイヤでイヤで堪らなかった。チンピラのケンカである。そのころ白鵬も影響を受けたのか使うことがあり、いやだなあと思っていたら自粛したのかその後減っていった。舞の海も白鵬は張り差しを止めた方がいいと指摘していた。ほとんどなくなった。ほっとした。

 ところがひとり横綱の重圧と連勝記録からか今年になっての相撲は異様に張り差しばかりだ。まるでかつての朝青龍である。
 朝青龍の張り差し多様にはひとつの流れがあった。稽古もせずモンゴルにばかり帰っていて不摂生から自信がない序盤中盤に多用する。ところがひどい相撲であれとりあえず勝ち続け10連勝ぐらいして乗ってくると使わなくなる。そんなことをしなくても勝つだけの精神力と、現場が稽古となって躰も仕上がってくるのだろう、終盤は張り差しのない見事な相撲で優勝したりした。この朝青龍の張り差しの使いかたからも「張り差しとは何か」がわかる。

 張り差しとは、目の前の草原を駆けぬけるとき、害を及ぼす何かが潜んでないかと脅え機銃乱射をしつつ進むようなものである。機銃乱射により毒蛇に噛まれる危険は回避できても両手は機銃に取られて塞がっているから新たな隙が生まれる。のようなものだ。私の解釈だと。

 朝青龍は納得できる星が残せ、躰が仕上がって来たら張り差しに頼らなくてもよくなった。だが白鵬は連勝という出口のない不安の中を走っている。となるとこれからも負けるまで張り差しを頻繁に出しつづけるのだろう。そしてその張り差しが連勝ストップの原因になる。誰かはわからないが、「横綱は必ず張り差しに来る」という状況を演出し、それを逆手に取る仕掛けが功を奏するだろう。



 稀勢の里と栃煌山。いつも最年少で出世レースのトップを走っていた稀勢の里だが、いつしか24歳になり今場所は自分よりひとつ年下の栃煌山に関脇の座を奪われた。栃煌山が一気に寄りきった。右をおっつけて稀勢の里にまわしを許さない。北の富士が「逆転したね、これは」と思わず呟く。ふたりの実力だ。アナも「本物になりましたね」と追随する。

 稀勢の里ファンとしては気になるひとことだろう。日本人期待の星の座が稀勢の里から栃煌山に移ろうとしている。同じ評価を受けるはずの豪栄道ファンも気が気でないだろう(笑)。こちらは野球賭博問題で十両に落とされている。この三人が日本人力士大好きのひとにとっての希望だ。
 私は彼らより栃ノ心や鶴竜の方が好きなのでどうでもいいけれど。
 栃煌山が本物となり地力アップなのはまちがいないが、この青年、顔も相撲も華がない。華のない地味さが持ち味になるのか。小学生の時から相撲を取って活躍してきた相撲エリートではある。



 阿覧と旭天鵬。勝さんがんばれと旭天鵬を応援。阿覧ののど輪に耐え四つになってがぶるように寄ったが土俵際でくるりと躰を入れ替えられて負け。残念。



 魁皇と鶴竜。魁皇はここまで3勝1敗。角番だがなんとかしのげそうな序盤の星だ。小結鶴竜は1勝3敗。でも横綱大関総当たりになる序盤の小結だし、鶴竜はいつもここから巻きかえして行く。相撲内容はいいので心配はしていない。対戦成績は6対5と鶴竜がリード。昨日の相撲で魁皇は膝を傷め、今日は膝から水を抜いたとか。昨日、痛そうだった。

 鶴竜が素速く右上手を取り一気に寄りきった。例によってアナは魁皇の体調ばかりを心配するが、鶴竜はすでに魁皇退治の方法を確立している。もしも万全でも私は鶴竜が勝ったと思う。とはいえ北の富士も魁皇を心配している。角番だ。序盤3勝2敗。だいじょうぶか。なんとか勝ち越して欲しい。

 鶴竜の勝利インタビュウ。ほんとに日本語がうまい。鶴竜は誰と結婚するのだろう。日本人でもモンゴル人でもいいがそろそろしたほうがいい。その方がより落ちついて大関を目差せる。
 アナが横綱戦でも一瞬ひやりとさせた鶴竜とあの一番を誉めた。まったくあれをけなしたスポーツ報知の記者のいいかげんさに腹が立つ。



 目の前の呼びだしの背中に何十年も見馴れた「なとり」の文字。先場所はこれも消えてみな無地の着物を着ていた。だからあれはやっぱり大きな危機だったのだろう。



 把瑠都と豊真将。対戦成績は7対1。
 空席が目立つ。さみしい。満員の中で取らせてやりたい。でもこれも慢心が招いた自分達の責任だ。相撲好きの私は単に話題に乗じて非難している世間のようなことを言う気はないが、ただ、これはこれで相撲協会と力士の慢心を咎める意味で、よかったと思っている。ちょっと図に乗りすぎ、流れない水が腐っている部分はあった。



 把瑠都、また張り差し。豊真将は右に変化しつつ回り、そこから引いたのであっけなく土俵を割った。張り差しにはなんの効果もない。
 好きな力士の白鵬と把瑠都が毎日のように大嫌いな張り差し連発なのだから私は観戦していてもすこしも楽しくない。惨めだ。



 琴欧洲と若の里。対戦成績は8対4と若の里がリードしている。でも若の里はケガをして十両まで落ちていたから、この対戦成績は白鵬に6連勝していたようにだいぶ前の記録になる。力の衰えた今はもうかなわないだろう。でもこれらの成績は、かつての若の里がいかに強かったかを物語っている。

 控える栃ノ心の上気した顔がいい。初めて結びの一番で取るときの栃ノ心を思い出す。目を閉じたり、大きく息を吐いたり、その緊張ぶりが好ましい。いま白鵬が入場。

 若の里が当たってすぐ引く。なんというひどい相撲。琴欧洲が落ちずに着いてきたが、最後はかなり際どくなっていた。俵に一本足で立っていたら勝ったろう。あの若の里がこんな情けない相撲を取るようになったのか。これで落日の淋しさが消えた。こんな相撲を取る若の里に未練はない。



 場所前の白鵬と栃ノ心の激しい稽古風景。白鵬が全勝とのこと。会話する映像もあった。先々場所だったか、栃ノ心が変化し、勝った白鵬があんなことは教えてないんだが、と苦笑するシーンもあった。栃ノ心が強くなったのは横綱に鍛えてもらっているからでもあるのだろう。

 日馬富士と時天空。低く当たった時天空が日馬富士ののど輪を外してはたくが日馬富士は落ちない。そのまま寄り切った。これで序盤は4勝1敗。今場所は期待できるか。白鵬を負かす力士というと、やはり琴欧洲よりも把瑠都よりも日馬富士がいちばん怖い。

 しかしあらためて思うが、白鵬が完全に朝青龍に勝つようになり、対戦成績も越えてから朝青龍引退があってよかった。朝青龍より弱い白鵬が今どんなに勝ち続けたとしてもそれは何の意味もなかったろう。優勝決定戦で敗れるようなここ一番に弱い面も見せていたが本割ではもう圧倒していたし実力で越えていた。よかったと思う。
 別の視点から推測すれば、「朝青龍よりも強い白鵬がいるからクビに出来た」とも言える。



 白鵬と栃ノ心。館内が閑かになった。私もそれを感じていた。アナもそれを指摘する。不思議だ。勝負の前の緊張での静寂はありうるが、この一番で出現するとは思わなかった。でもこれはくだらん「魁皇コール」なんかよりはるかにいい。

 いい相撲だった。張り差しを見なくてほっとする。稽古で慣れているから安心していたのか。栃ノ心も真正面から行った。四つになり、栃ノ心が先に左上手を取った。白鵬が切りに来る。栃ノ心が吊ろうとする。白鵬が耐える。そこからのすくい投げ。これも決まり手がすくい投げなのでそう書くが、私には上手で撚ったように思えた。栃ノ心は投げられたというより腰から崩れるように倒れた。その雰囲気はこの写真にも出ている。投げられたというより捻り倒されたような感じだった。

 52連勝。明日は千代の富士に並ぶ。
 北の富士は栃ノ心をもっと攻めねばダメだ、あの左上手を取ったときに行かねばダメだ、これではいつまで経っても横綱には勝てないとボロクソに言っていたが、栃ノ心は行かなかったのではなく行けなかったのだろう。それほど白鵬の圧力は強く巧かった。

 北の富士の中には自分の弟子の千代の富士の記録をモンゴル人力士に抜かれたくない気持ちがあるようだ。ここのところ白鵬の強さを讃えるより負ける力士に怒ってばかりいる。なんとなくその視点が不自然だ。
 といっても私も白鵬の強さを讃えてばかりではない。張り差し連発するろくでもない相撲を批判していることの方が多い。
 大きな違いは、私は白鵬に談合横綱千代の富士の記録を抜いて欲しいということだ。北の富士は抜かれたくない。今では不仲の師匠と弟子のふたり(これも千代の富士の金に汚い性格の悪さから来ている)だが、こういうときになると千代の富士贔屓になるらしい。ここにきて北の富士の外国人嫌いが顕著だ。

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 gooのインターネット中継

 gooは大相撲に熱心だ。記録サイトも充実している。インターネットで映像配信をしているのは知っていたが見たことはなかった。今回初めて経験してみた。
 テレビと同時に見ていると、数秒タイムラグがあるようだが充分に見られる映像だった。

 それでとても新鮮だったのは、当たり前のことだが、「アナや解説のしゃべりがないこと」である。場内にいるのと同じ雰囲気なのだ。それでまた「ああそうだった」と思ったのが懸賞の説明だ。国技館で見ているとあの一本一本の懸賞にスポンサーの名前と宣伝文句が入る。当然だ。入らなきゃ金を出した意味がない。でもテレビではNHKがうまく消している。あれはどうやるんだろう。場内にいるとあんなに大きく聞こえる館内放送なのにテレビだとあれだけをきれいに消している。いやかすかに聞こえるけれど。

 gooだとアナも解説もなく場内だけの音だから、これぞ国技館での観戦の雰囲気だ。
 今では場内のFM放送で相撲実況が聞けるようになったとか。どんなシステムかわからないが、むかし競馬場でもそんな「FMラジオの貸し出し」なんてのが行われていたのを思い出した。あれは競馬場内のミニ放送だったと思うが。

 アナと解説があるのにすっかり慣れっこになっていた。

 先日内舘牧子の「横審の魔女と呼ばれて」を呼んでいたらこの件に触れた部分があった。読賣のナベツネとのやりとりである。内舘は彼ら横審委員が相撲を見に来ないことを批判した。するとナベツネが「野球だって全試合行くことは出来ない」と言ったとかで、それに対して「なにも毎日来いと言っているのではない」と反論すると、今度はナベツネは「テレビで見ている。テレビの方が解説があって国技館に行くよりよくわかる」と反論したのだとか。

 そこで内舘は「現場で見ることの重要性」を主張し、「場内でも今場所からラジオが聞けるようなった」と反論している。これは週刊朝日に連載したエッセイから相撲に関する部分のみを抜きだしたもので内舘が横審委員をしていた十年分が収録されている。2000年から2009年まで。相撲放送が聴けるようになったのは数年前からのようだ。図書館で借りた本なのでもう返却してしまい正確な年月はわからない。

 NHKの放送を録画しておき、gooの映像を見ながら一杯やると、国技館にいる雰囲気が味わえる。こんどやってみよう。ただストリーム配信だから、南関の競馬なんかもそうなのだが、大きな画像にしたらゆるい。小さくして見るしかない。そこが問題だ。



六日目
9/17(金)


 今日は菅内閣の組閣があった。露骨な小沢外しの報復人事だが、それは当然としても、あの国賊の岡崎トミ子が入閣したのには呆れた。以前の千葉景子の法務大臣といい正気とは思えない布陣だ。



 日馬富士が婚約とか。岩手大学に留学しているモンゴル人らしい。やはり朝青龍の弟分だけにモンゴル人と一緒になり日本には帰化しないのだろう。日本人妻を娶り帰化の道を選んだのは旭天鵬。白鵬もその道を歩みつつある。琴欧洲もそうだ。好きな力士がそれを撰び、なんとなく反感を抱く力士がそうでないのは決して偶然ではあるまい。興味がないので軽視。



 今日も入りは悪い。升席に空席が目立つ。こんな偉大な記録が進行中なのになんとも残念だ。



 臥牙丸と玉鷲の取り直しの一番から見る。玉鷲が202キロの臥牙丸を圧倒して突きだした。臥牙丸が軽く見えた。取りようによっては相撲はこんなふうにもなるのだと知る。

 ここで「22年の歳月を超えて新しい記録が生まれる」と見出し。特別編集のテープが流れる。千代の富士の相撲。白鵬の相撲には「逆境を乗り越えて」と出る。結びのコピーは「記録と記憶へ。いざ」。短い。今日勝って並ぶのだから並ぶ前からあまり激しい見出しのものも流せないのだろう。本来なら今日並んで、新記録に挑む明日流すものだ。

 白鵬が横綱になってからの黒星の記録が出る。これは画像で取っておきたい資料。
 日馬富士の7勝がダントツ。ついで琴光喜の4勝。朝青龍と琴欧洲が3勝。

 これは意外。日馬富士はもちろんわかっているが、次は朝青龍だと思っていた。琴光喜の処分撤回や軽減を白鵬は発言し、その際にあんな相撲の巧いひとはいないと讃えている。この成績からも肯ける。さらに意外なのは安美錦の2勝は記憶にもあるから当然としてチヨスも2勝しているのだ。この辺、白鵬もまだまだだ。以下、魁皇、把瑠都、稀勢の里、琴奨菊、豊ノ島、翔天狼が1勝ずつ。このうち琴光喜と朝青龍が引退。平幕で勝ったのは安美錦、稀勢の里、豊ノ島、翔天狼。つまり金星配給は四コ。

 いつも思うのだが安美錦が横綱土俵入りの露払いをやるのはまずいのではないか。やはりあれは対戦の可能性のない力士がやるべきだ。
 今場所も最も注目すべきは日馬富士の意地だろう。なにしろ「大関になるから」と平幕のくせにライバル白鵬の太刀持ちを断った男だ。今場所見ていて一番はらはらするのは対日馬富士戦になる。



 蒼国来が霜鳳相手に巧い相撲を取った。双差しになり、前褌を取って引きつけ、腰を落として寄り切った。細身だけど巧い。モンゴル相撲の下地というのはすばらしいものだ。ところでこのひと、部屋はどこだっけ。
 というところでレポート。蒼国来は下っ端のころから一門の霜鳳に稽古をつけてもらったのだとか。恩返しである。

 蒼国来を調べたら荒汐部屋と出た。知らん。

1987年(昭和62年)1月場所限りで現役引退した時津風部屋所属の小結・大豊は、年寄・荒汐を襲名して部屋付き親方として尽力していたが、2002年(平成14年)6月1日に時津風部屋から分家獨立して荒汐部屋を創設した。
一時期は弟子が1人となり、その弟子もいつ引退するかわからぬ状態で部屋存続の危機を迎えたが、中国・内モンゴル自治区から蒼国来をスカウトし、また荒汐夫人がホームページを通して部屋の飾らない日常を報じてアピールに努めた。その結果、弟子の過半数がホームページを見て入門を決めており、人材難に悩む角界におけるスカウトの成功例としてマスコミにも取り上げられるなど、注目されている。
2010年初場所に蒼国来が十両に昇進し、創設から7年半にして部屋初の関取が誕生した。


 親方夫人のホームページ、というのが泣かせる。早速見に行こう。



 黒海と琴春日。黒海の苦しまぎれの小手投げを返してすくい投げ。ここのところ黒海の投げがおもしろい(笑)。髭を伸ばしているのでクマゴロー状態。

 高見盛と白馬。引いた白馬の足が縺れ、高見盛は労せずして勝ってしまった。負けた白馬もしまったという顔で苦笑。高見盛は土俵下の白馬にごめんねという顔で手を差しだす。人柄のよさが出ている。こういうのは演技では出来ない。

 ところがもの言いがつきヴィデオで見ると高見盛が勇み足のような形で先に出ている。すごいのは白馬。倒れながらもじっと高見盛と自分の足もとを見ている。勝ちを確信していたのだろう。この辺がモンゴル人力士の粘りだ。

 行司差し違えの判定が降りると勝ったと思っていた高見盛は泣き顔。これまた性格が出る。引きあげるときも泣きそうだ。千両役者である。カトちゃん、早く嫁さん見つけないと。いまだニセ巨乳子持ち女とのスキャンダルしかない。あの女だけはやめてくれと思っていたので消えてうれしい。



 安美錦と北太樹。ふたりとも好きだ。どっちを応援しよう。
 巧さが桁違い。正面からぶつかり、より低い態勢の安美錦に起こされた北太樹は何も出来ず引き技。あっけない勝負。解説陣からも期待外れの聲。北太樹、まだまだだ。



 豊真将と徳瀬川。先場所大活躍の豊真将は5連敗。まだ初日が出ない。とはいえ相手はみな横綱大関。しかたない。
 低い態勢でもぐり、おっつけで徳瀬川にまわしを取らせない。完勝。初日が出た。これからだ。



 ここで22年前のチヨが旭富士を負かして53連勝をしたときの映像。チヨってのは強引で外連のある相撲を取る。朝青龍がよく似ている(笑)。

 若の里と鶴竜。好きなふたりだが落ち目と伸び盛り。
 右四つがっぷりから鶴竜が寄る。若の里、何も出来ずに6連敗。さびしいな。



 向正面の解説は金開山の稲川。在日朝鮮人の金さんだ。今日のテーマはチヨの53連勝当時の想い出。それをアナが問う。金開山は中一のころ。すると「そのころはまだ相撲に興味がなかったので……」と記憶にないらしい。「でも千代の富士という名前は知っていました」では白けること甚だしい。長崎育ちなので日本にはいたはずだ。中学を出て十五歳で入門しているのだが十三歳の時には相撲に興味がなかったのか。

 それはひとそれぞれでしかたないがNHKのこの人選はへんだ。今日のテーマはチヨの53連勝当時であり、それに今日白鵬が並ぶかだ。そのころのチヨが勝った一番の映像やファンの様子も流している。だったら解説もチヨを見て力士になろうと思ったとか、「毎日ドキドキしてテレビを見ていました」という親方を選ぶべきだろう。「まだ相撲に興味がなかったので」ではどっちらけである。しかし金開山に責任はない。正直に言っただけだ。問題はNHKの人選にある。

 正面の解説も当時のことを聞いても反応がないのだ。ひどい人選である。呆れた。明日はチヨを呼ぶにせよ、今日だってこれだけ映像を流して盛りあげるならもっとまともなヤツを選べ。
 アナもはかばかしい反応が得られず苦笑していたが人選を誤ったことは痛感したろう。



 時天空と栃煌山。栃煌山が格下相手みたいに強い相撲を取る。なんだかこのひと、一気に実が入ってきた。私は栃煌山の渋さが好きで一気に大関に行くものと大絶賛したのが二年前。それから伸びなやみ、そういうことを書いたのをすこし恥じていた。いよいよ本物になったか。日本人大関候補の筆頭だ。

 というところでつまらない正面解説が大鳴戸だと知る。出島だ。出島の解説はこんなにおもしろくなかったのか。いま36だから22年前は中学生。しかも相撲王国の石川県で小学校一年から相撲を取っているのだから中学生の時のチヨの活躍は印象的なはず。まだ相撲を始めていなかったらしい金開山とはちがう。NHKも期待して呼んだのか。なのにこの盛りあがらない解説はなんだ。しみじみ落胆。しゃべり下手なのか。



 魁皇対栃ノ心。左四つ。巻替えがあり栃ノ心右からおっつけ。そこから寄る。完璧な勝利。栃ノ心の充実ぶりはまことに美事。魁皇三勝三敗。栃ノ心は四勝二敗。しかしアナも解説も栃ノ心を誉めるのではなく魁皇が本来の相撲を取れていないと案じている。たしかに左肩に力が入らないらしく、快調ならもっと粘るべき場面なのだろうが、それ以上に栃ノ心の充実ぶりにも触れるべきだ。どうにも相撲中継の視点に疑問を感じる。

 栃ノ心の勝利インタビュウ。同部屋の栃煌山も好調だ。それを振られると「オウザンに負けないように」と語っていた。琴光喜の「ミツキ」のように冠馬名じゃなかった冠四股名の連中は冠の下の名で呼ぶのだろうか。
 入門を調べてみると栃煌山の初土俵が2005年1月、栃ノ心は2006年の3月、と1年2カ月後輩になる。年齢も栃ノ心がひとつ下。ともに初土俵から13場所目で入幕の史上10番目の記録をもっている。栃煌山はこどものころから相撲を取り中学生横綱になり誰もが期待する逸材だった。栃ノ心もその優れた肉体的資質から期待は大きかったようだ。



 白鵬の偉大な父親がモンゴル相撲の時代に52連勝しているのだとか。図書館で読んだスポーツ紙で知った。これは知らなかった。昨日並んだことになる。今日明日のチヨの記録以前に父の記録を超えることでもある。

 把瑠都と阿覧。把瑠都が両手の平で相手の顔を包むような、張り差しもどきの両手突き。圧力が強く馬力で圧倒。幕ノ内200勝目。
 先々場所だったか阿覧の変化で負けたとき、元は同じ部屋だからあれは知っていたんだがと苦笑していた。濱ノ嶋が獨立するまでは三保ケ関部屋での同僚なのだった。ということは「外国人力士一部屋一人制度」の前なのか。



 琴奨菊と白鵬がすわる。琴奨菊の表情が固い。結びで取る力士はみな自分が大記録の中のひとりの挑戦者であることを意識しているのだろう。昨日の栃ノ心の表情もよかった。

 琴欧洲と稀勢の里。一気に琴欧洲の寄り。六連勝。これはいい相撲。今場所一番。アナも絶讃。しかし大鳴戸は冷静。話を振られて「びっくりしまたね」とそっけない。よくいえばクールなのだが、これでは解説者には向かない。北の富士のおもしろさを見直す。そっけないとかクールと言えば高田川だってそうだが、その辛口に味がある。まあこれで出島がこれからも人気解説者になることはないと確認。

 稀勢の里と琴欧洲というかつての互いに認めあっていたライバルには大きな差がついた。昨日稀勢の里が栃煌山に完敗したとき北の富士が言った「実力が逆転した」を思い出す。これで日本人大関への期待は栃煌山に移って行く。稀勢の里は惨めだ。でもそれで火が点くのかも知れない。とはいえこのひとにそんなに大きな希望は私は抱いていない。貴乃花は「最高でも横綱、最低でも横綱」と最高の励ましの言葉を贈っていたがどうなのだろう。それほどの素材なのか。これだけ長い足踏は尋常ではない。もしも今後一皮剥けたとしても万年大関程度だろう。



 今日のアナは大乃国がチヨの連勝を止めたとき、大乃国側のレポーターをしていたという。勝って引きあげてくる大乃国が真っ白になっていた、となかなかいい思い出話。顔も躰も唇も真っ白になっていて、髪の毛すら白くなるのではと思ったとか。力が入っている。彼にとっても熱い記憶なのだろう。ところがそれを聞く出島が相槌も打たず閑かなものだから空回りのような状態。聴き手が舞の海ででもあったなら上手な相槌でさぞ盛りあがったことだろう。ダメだわ、出島は。出る出る出島は、話は出ない出ない出島だ。



白鵬と琴奨菊。対戦成績は22-1。先程琴奨菊が勝ったビデオを流していた。平幕のころから通してもあれはたった一度だけだったのか。そういうことをこの日記に書いているはずなのだがすっかり忘れている(笑)。まあ、いつものことだ。

 白鵬はここのところ張り差しを連発している。今日もそんなことをしたなら琴奨菊が懐に飛びこむチャンスも生まれる。と思っていたらまた張り差し。6日で3度目。ちょっと病的になってきた。琴奨菊は先に仕切りに手を突き、突っこむ構え。張り差しはまったく意味がない。それだけ正常な精神状況ではないのだろう。なんとか突進を止めて、はたき込み。すこしもいい相撲ではない。ともあれ53連勝。チヨに並ぶ。



七日目
9/18(土)
 白鵬が千代の富士を越える日!

 スポーツ紙を読むと、昨日の白鵬の53連勝を千代の富士も貴乃花も「文句のない相撲」と絶讃している。そうだろうか。私にはちっともいい内容とは思えなかった。その考えは大横綱が絶讃しても変らない。たいへんなプレッシャーの中で勝ち続けることは偉大だが、かといってすべてを絶讃する必要もない。対鶴竜戦のように巻きかえの速さで驚嘆したようないい相撲もある。でも昨日の張り差しからのはたき込みは誉めるほどの相撲ではあるまい。

 今日の正面解説はもちろん九重。もう四時から白鵬の連勝記録の話ばかり。大鵬の記録を千代の富士が抜くときも向正面に大鵬が来ていた。そのときの映像が流れた。大鵬の表情は固かった。九重はここのところ感想を求められ、どんどん抜いて欲しいのようなことを言っているが、いざその瞬間はどんな表情をするのか。

 向正面解説に白鵬育ての親・熊ケ谷。白鵬に関して唯一気に入らないのは、白鵬の責任ではないけれど、宮城野部屋のことだ。金親。ほんとにくだらん。熊ケ谷に金があり宮城野部屋の権利を買っていればすべて問題なしだったのだが。
 
 今日記録に挑む白鵬の相手は稀勢の里。今場所はさえないが先場所は熱戦であり接戦だった。白鵬の連勝記録の中でも危なかった一番として印象深い。果たして今日も熱戦に持ちこめるか。同じく先場所きわどい勝負に持ちこんだ時天空は期待を裏切っている。あれもきわどい勝負だった。

 チヨの記録を超える話題の日ということで盛りあげようとするが、当日券があって入れたという話を聞くといかに盛りあがっていないかが解る。今場所初の満員御礼となったが100%のそれではない。90%を越えれば垂れ幕は出すことになっている。
 とはいえいつもの上部ががらんとしているのとはちがい埋まっているから、テレビ桟敷の観戦でも気分がいい。これで空いてたらあまりに白鵬がかわいそうだ。埋まってよかった。「祝」のうちわを持っているひとも見える。うれしい。



 臥牙丸と嘉風。早くも全勝は白鵬と琴欧洲、平幕の嘉風の三人しかいない。すこし早すぎる。
 好調嘉風にかつての琴錦のイメージが重ねられ、アナがそれを九重に訪ねると即座に否定。それは嘉風は変化したりするが琴錦は真っ向からぶつかる相撲だったという解釈。こういうことを言うチヨは好きだ。天下を取った人間だから遠慮会釈がない。よけいな心遣いをしない。言いたいことを言う。それはやはり正鵠を射ていることが多い。全盛期の琴錦は嘉風なんかとはぜんぜんちがった。

 琴錦もいろいろと人間的に問題の多い力士だったし(笑)、まあ人間的なことは力士の場合どうでもいいのだが、彼には実力者故に取組に関する八百長疑惑が常につきまとった。これは問題だろう。チヨはそれに関わっている。というかそのへんの真ん真ん中にいる(笑)。そのチヨが誉めることであらためて琴錦の実力が窺える。まあ私も嘉風と琴錦じゃ全然力が違うと思う。
 ぶつかって引くと簡単に臥牙丸が落ちた。嘉風7連勝。



 ここで昭和のビデオ。千代の富士特集。大鵬の45連勝に並ぶ陣岳戦、それを抜いた花乃国戦。まあ粗っぽいひどい相撲。でもこんなものだ。当時も昂奮はしなかった。チヨの相撲を見ると「アントニオ猪木世界最強」と同じ幻想を思い出す。一方、白鵬にはヒョードルのような現実感がある。それはまったく異なるものだ。



 黒海と北勝力。思わず笑ってしまった。両手突きで立った北勝力がそのままバッタリと倒れた。足が全然出ていない。まるで棒が倒れるよう。勝った黒海も戸惑ったろう。ちょっとこれほど滑稽な負けもめったにない。だいたい相撲を見て笑うことなど記憶にない。いやはや北勝力はやってくれる。

 時天空が阿覧に内掛けで勝つ。初日が出た。阿覧のようなタイプにはそういう相撲の奥深さを教えてやった方がいい。



 琴欧洲と旭天鵬。いい相撲。旭天鵬は四つになると実力者。じりじりと地力の差で琴欧洲七連勝。毎場所このあたりから崩れるのだが天敵の豊ノ島が野球賭博で十両に落ちている。と思ったらアナもそれを指摘(笑)。もう豊ノ島との対戦では苦手意識がもろに出て脅えているようだからいなくて気楽なのは確か。カロヤンはほんとに好青年だからなあ。終盤まで崩れず盛りあげて欲しい。



 日馬富士と鶴竜。いい一番だ。かつての三代目若乃花と琴錦のように、これぐらいの躰の力士の速い相撲が私の理想。
 立ちあいが合わず日馬富士が待った。鶴竜は右へ大きく変化していた。それがバレた(笑)。アナが「これは鶴竜にとってどうか」と言う。そのあとは真正面からぶつかる。理想的ないい当たり。すばらしい。最高。張り差しのような醜いのとは正反対。
 鶴竜が一気に土俵際まで寄るが、そこで左の上手が深すぎ下手を取った日馬富士に残される。惜しい。もったいない。ここでがっぷり四つになり土俵中央にもどったから優劣はなし。地力で日馬富士かと思った瞬間、上手ひねりで転がした。美事。

 相撲の決まり手はむずかしい。この勝負も私からすると下手投げ。下手投げ70%、上手ひねり30%。でも上手のひねりの方が決めてとなるようだ。



 琴奨菊が変化気味に魁皇に取りつく。あとはひたすらガブる。完勝。立ち合いの変化がなければもっとよかった。魁皇はこれで三勝四敗。角番で黒星先行。今後の相手と体調を思うと苦しくなってきた。落ちても取るのだろうか。なんとしても千代の富士の記録を抜くまで現役でいて欲しいのだが。本人も九州場所まで行きたいだろう。どうなるやら。



 把瑠都対栃ノ心。把瑠都が両手突きで前に出る。一方的な相撲で勝つ。突きだし。めっきり力をつけてきた栃ノ心がなにも出来なかった。まわしを掴むと強い栃ノ心はこういう相撲は苦手なのかも。しかし相変わらず把瑠都はバタ足だ。これではまたたたらを踏んでケガをすることになる。師匠は摺り足を徹底させるべきだ。



 白鵬対稀勢の里。対戦成績は19対4。現在白鵬が10連勝中。でも大関のころに連敗したり気の抜けない相手ではある。完勝してくれ。こんなところで負けたらいかん。
 十両の時から応援してきた白鵬が、大横綱となり、千代の富士の記録を抜く瞬間をリアルタイムで見られるのだから相撲好きとしてはうれしい。

 ひやりとした。稀勢の里はよくやった。いい相撲だった。会場も沸いた。私もアッと声をあげた。勝った白鵬も苦笑、ほっとした顔をした。今日も張り差し。7日間で4度目。どうしようもない。怖くて張らずにはいられないのだろう。なんとか勝ってはいるがとても誉められた相撲ではない。巻きかえの応酬の時に足が流れた。負けたと思った。そこから立ち直るのが運動神経のよさ。それからもまた安易に引いたものだから危なくなったが、強引な引きから反転しての押しで寄り切った。速くて激しい相撲。稀勢の里の善戦が光った。

 千代の富士の記録を抜き、これで一息ついたから、明日からは堂々の横綱相撲になって欲しい。もう張り差しは見たくない。

 千代の富士の記録を抜く前から双葉山の69連勝という数字を上げ、「来場所では」とアナが口にしたりするのが不快だった。先走るのは良くない。今日早い時間からそれをまたアナが口にしたら千代の富士が窘めた。それは正しい。まずは千代の富士の記録を抜いてからの話。そして抜いてからも、60連勝ぐらいしてからでもいい。なんでこんなに早い時期からそれを口にするのか。

 


 チヨの記録を抜いたあと、握手をする白鵬。「すみません」と言ったとか。記録を抜かれたチヨが「涙ぐんでいるように見えた」と言ったのは言いすぎか(笑)。

 チヨは抜かれて口惜しいだろう。だが自分の記録の中身を知っているから白鵬の凄さはいちばん解っているはずだ。素直な賞讃にそれが現れている。


 中日
9/19(日)

 高見盛と土佐豊から見る。土佐豊の上手投げ。高見盛六連敗。せっかくの七本の懸賞を取られてしまう。北の富士も指摘していたが今場所の高見盛は粘りがない。

手刀を切る」をスーパー入りで説明している。左、右、真ん中。今日はそんなテーマなのか。
 土佐豊も破竹の勢いで上がってきたが幕ノ内に上がってから止まっている。幕ノ内の壁ってのはすごいもんだ。ここを一気に突破できたのは白鵬や琴欧洲のようにほんのすこし。把瑠都も力的にはそうだったがケガをしたため挫折している。
 ということは土佐豊もそこまでの素材なのか。



 十両は豊ノ島が全勝で勝ち越し。まあ優勝だろう。野球賭博問題で落とされただけだ。
 全勝の嘉風が1敗。全勝のままで横綱戦が組まれたらと夢見ていたが残念。



 今日の白鵬の相手は旭天鵬。55連勝を懸ける。このまま勝ち続けての来場所での記録をアナが振る。早すぎる。今場所全勝できるかどうかもわからないのに。
 双葉山の連勝を破るかという気の早い話に、北の富士が「68連勝まではいいかな」と発言。本音がよく出ている。モンゴル人に日本人の最後の記録を破られたくないのだ。たぶんそんな相撲ファンも多いことだろう。話を振られて舞の海は困っている。賢いからこんな問題発言に同調はしない。

 北太樹と白馬。白馬が右に変化しつつまわしを取る。形は北太樹の方がよかったが巻替えの時に一気にでられる。白馬は躰がないから仕方ないとも言えるがどうにも変化が多すぎる。こういう相撲を見ると豊ノ島がこいしくなる。このひとは一番身長が低いのに受けの相撲を取りすぎると師匠に叱られた(笑)。ちいさいのに横綱のような受け相撲を取る。



 今日の特集は土俵の所作らしい。ちょうどいま豊真将が出て来た。美しい例にするには最適だ。さすがの北の富士も絶讃している。このひと、いいかげんだったものな(笑)。

 黒海と安美錦。黒海が髭を剃ってきた。対戦成績が6対6と知る。意外。なんであんなに巧い安美錦が黒海と五分なんだ。と思っていたら安美錦が簡単に引きおとされてしまった。かなり膝が悪いようだ。

 今度は舞の海に豊真将の所作が振られ、また絶讃が続く。誰もが思うことだが勝負のあと他の力士がチョコンと首だけで頭を下げるのに豊真将は上体を折ってお辞儀する。抜けて美しい。そしてその負けると不快な顔をしてチョコンすらやらないのが露鵬等だった。憎々しげに相手を睨みつけ土俵を降りる。あんなのが大相撲の力士であってはならない。大麻吸飲ウンヌンでスケープゴートにされたとも裁判続行らしいが露鵬と若ノ鵬のクビには同情する気になれない。若ノ鵬はたいへんな資質をもっていたろうが、あの土俵態度は許せない。見るたびに不快になった。クビになって当然だ。



 栃ノ心と若の里。若の里の一方的な相撲。一気に懐に入られて身動きできず栃ノ心は苦しまぎれの引き。ひどい相撲。がっかり。
 しかしぎりぎりで身を交わし若の里が落ちたと軍配は栃ノ心。もの言いで取り直し。気分としては若の里の勝ちにすべき内容だ。
 またも若の里に突っこまれたが頭を低くして耐え、左上手を取って寄り切った。まあ文句なしの勝ちである。栃ノ心ファンとしてはこれはこれでいいのだが、今回は若の里の勝ちだった。若の里のファンでもあるので複雑だ。



 稀勢の里と豊真将。2勝5敗と1勝6敗。こんな成績になるとは(笑)。いやわたし的には充分に予測出来る結果だけれど一般的には意外となるのだろう。特に稀勢の里は。
 豊真将のはたき込みで稀勢の里一回転。勝ち名乗りを受け、美しい豊真将のお辞儀がアップになる。豊真将にははたき込みで勝って欲しくなかったが稀勢の里の足がついて行かないのだからしょうがない。稀勢の里大好きの北の富士は「重症だね」と心配している。

 鶴竜と時天空。突っ張りあいから鶴竜がまわしを取って一気に寄ったが土俵際で粘る時天空に場内が沸いた。1勝3敗だった鶴竜はいつしか5勝3敗。さすが。


 
 把瑠都と栃煌山。ともに1敗の大関関脇戦。対戦成績は把瑠都の8対1。先場所栃煌山は初めて把瑠都に勝った。らしい。先場所それを書いてるのだろうがもう忘れている(笑)。先場所は8勝7敗だったからいろいろ負けたのだろう。上り調子の栃煌山に相撲に迷いが見られる把瑠都だからどうなることやら。

 把瑠都、張り差し。なんでこんなことをするのか。でも圧力の違いで相撲は圧勝。感心しない。今場所は把瑠都や白鵬に満足する一番がない。その分、幕下下位にいい相撲があるけれど。



 琴欧洲と阿覧。わたし的には今日一番の好取組。琴欧洲に勝って欲しいが阿覧の変化もあるしどうなるかわからない。対戦成績は琴欧洲3-0。
 当たりは阿覧の方がよかったが琴欧洲も素速く左上手を取る。内に入られた形だが上背があるので引きつけると強い。引きつけて吊った。完勝。今日は強くていい相撲。8連勝。すでにもう全勝は白鵬と琴欧洲のふたりだけ。期待は高まる。しかしもう早くもこの時点で北の富士を始め「あまり期待するとコロっと行っちゃうからね」と心配されている。そして毎場所そうなるのが琴欧洲。



 日馬富士と琴奨菊。対戦成績は19対9。琴奨菊の方から見た数字。圧倒的優勢。日馬富士の大の苦手が琴奨菊だ。琴奨菊、押し潰すようにして楽勝。なんだかなあ、これ。日馬富士は好きじゃないがこんなに弱くないだろう。わからん。受けとめて、小手投げに極めたような相撲。



 魁皇と徳瀬川。徳瀬川は大関初挑戦。凄い数の懸賞が懸かっている。魁皇人気。今まで角番は12回とか。まあ魁皇とチヨスはね(笑)。でもチヨスはさっさと止めてくれと思ったが魁皇にはがんばって欲しいと思う。人徳だろう。ここは勝っておきたいところだ。徳瀬川も好きだけど。魁皇の左四つになった。徳瀬川は逆。じんわりと寄って魁皇が勝つ。館内はたいへんな歓声。魁皇快勝とアナも解説陣も大はしゃぎだが、私はむしろ徳瀬川の成長を感じた。強くなっている。



 白鵬に旭天鵬。相撲は何があるか判らないけれど正攻法の旭天鵬は比較的安心して見ていられる相手だ。今の白鵬を正面から負かすのはむずかしい。もしも番狂わせがあるとしたら曲者の奇襲だろう。今日は張り差しはない。それだけでも気が楽だ。

 白鵬も奇襲を警戒しなかった。素速く真っ向から当たって四つ。いい相撲になる。相撲は相手あってのものだが白鵬のまっすぐ突っこむ一直線の立ち合いは相手が変化力士ならバッタリ行っていた可能性もある直線的なもの。そういう力士ではないからという読みなのだろうが、もしも旭天鵬が何としても横綱に勝ちたいと今日変化したなら簡単に勝っていた。この辺が相撲のおもしろさ、奥深さになる。

 途中引く瞬間がありヒヤっとするが、すぐに巻き替えての捻り。見事。投げすてた。アナが思わず叫んだ「なんでも出来るウ!」はすばらしい実況。時間が押していてここで終ってしまった。あと一、二分あれば、北の富士と舞の海の解説でもっと餘韻を味わえたのに。残念。

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 岩木山、引退

 大相撲の元小結で西十両14枚目の岩木山(34)=本名対馬竜太、青森県出身、境川部屋=が今場所限りで引退することが19日、分かった。
 岩木山は小脳梗塞(こうそく)のため、5月の夏場所から3場所連続で休場しており、来場所の幕下転落が確実。十両から落ちれば引退する意向を示していた。
 岩木山は青森大出身。社会人で活躍後、2000年名古屋場所、幕下つけ出しで初土俵。02年九州場所で新入幕を果たし、翌年九州場所で小結に昇進した。


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 好きな力士だった。獨特の存在感。私はこのひとを見ているとSRPG「ファイアーエンブレム」のドーガとか壁役のキャラを思い出した。脳梗塞なのだからしょうがない。結婚してこどもが出来たばかりだった。後遺症はなく日常生活には支障がないとのことなので救いがある。
 青森大学を卒業し、アマチュア相撲からの転身。24歳での遅い初土俵だった。
 親方関ノ戸を襲名。いい親方になるだろう。個性派がひとり消えた。



九日目

9/20(月)


敬老の日
 正面解説は玉ノ井。栃東。弁が立って理論派で解説上手と言われているが私は大関なのに変化する彼の現役時の相撲が好きではないのであまり評価していない。過日読んだ椎名誠さんのエッセイ(週刊誌連載のもの)でもテレビ中継の相撲に触れた回があり、そこで栃東を誉めていたが、椎名さんは私のようなマニアではなくあっさり見ているからだと感じた。



 黒海と白馬。黒と白(笑)。白馬は昨日膝を打っている。痛そうだった。だいじょうぶか。週末にかかっていたので医者にも行けなかったとか。不器用な黒海が器用な白馬を楽々と送り出してしまった。白馬は膝の状況がわからず怖くて力を入れられなかったようだ。土俵下でも痛がり、黒海が気遣って手を伸ばしていた。下がるときも軽くびっこを引いている。黒海は7勝目。後輩の栃ノ心と臥牙丸の活躍に刺激されて今場所は元気だ。ちいさな国で、モンゴルのように共通する



 高見盛と武州山。青森の同級生対決。遅咲き武州山は191センチある。肩と肩でぶつかるいい立ち合い。いいなあ高見盛は。醜い張り差しが横行しているのでその美しさが際立つ。
 左四つで武州山が休みなく攻める。高見盛は防戦一方だったが土俵際で粘り場内を沸かせた。
 こういう誠意というか真心というか、そういうものを感じさせる力士がいるから相撲はもっている。たしかに、いくら強いとはいえ露鵬のようなのばかりになったら私も見なくなるだろう。その意味で「一部屋外人一人」の制限は正しいのかも、とも思う。たしかなのはそれを取っぱらったら外人ばかりになることだ。
 懸賞があったので燃えたという武州山のレポート。高見盛には必ず永谷園のが懸かるから相手は燃えるという。まあ現金だし。高見盛にはありがたくもあるが厳しくもある。



 猛虎浪と旭天鵬。猛虎浪の下手投げで旭天鵬が足首を撚るような倒れ方。心配だ。やわらかい躰でケガのない人だが。

 明日の取組を流している。豊真将と阿覧。豊真将の3対1。なるほどなあ、阿覧のいいかげんな相撲に豊真将がだまされないのだ。でも正攻法に撤したらむしろ阿覧の方が力は上と思うけれど。



 琴奨菊と栃ノ心。5対2。楽しみな一番。以前は琴奨菊が5連勝、ここのところ栃ノ心が2連勝している。私は栃ノ心応援。土俵中央でがっちり受けとめ左下手も取ったからもう栃ノ心のものと思ったが、そこから両まわしをとってのガブりに屈する。残念。琴奨菊は170キロになっているという。これは毎日アナが言うことでだいたい解説者はおどろく。とてもそんなにあるとは思えないのだ。

 見事な相撲だったが向正面の解説秀ノ山(琴錦)は厳しい評価。「いつまでもこれではもたないだろう」と。続いて栃東も厳しい意見。「一度止まる」というのだ。たしかに一気のがぶり寄りではなく、一度止まってから(止められてから)動くのだ。なるほど、奥深い意見である。



 豊真将と鶴竜。これまた楽しみな一番。鶴竜の速い攻めに豊真将がどこまで耐えて逆転できるか。先場所の豊真将は攻めが目立ったが番付があがり、さすがに先場所のようにはいかない。ふたりとも好きなのでどっちが勝ってもいい。願うのはいい内容になって欲しいこと。
 いやあいい相撲だったなあ。すばらしい。予測したとおり素速く前褌を取って鶴竜が攻め、豊真将は一気に土俵際まで寄られるのだが、そこで粘り、まわしを切って、それからは突っ張りあい、そしてそれに攻め勝って豊真将が押しだした。まさに願ったり適ったりの展開。アナも「いい相撲でしたね」と言った。誰が見てもいい相撲だ。



 ここで白鵬対栃東の取組をビデオで二番。本日のサービス。ひとつは平成18年初場所、もうひとつは19年春場所。これが白鵬との最後の取組とか。ひとつめは白鵬が当たってすぐ引くひどい相撲。最後の対戦は白鵬の張り差し。くだらん。二番を流すならもうすこしいい内容のものを選んで欲しい。じつにセンスの悪いチョイスだ。



 稀勢の里と時天空時天空の張り差しに稀勢の里が一歩も怯まずのど輪から突いて突いて突きまくる。時天空は懸命に廻って逃げまわるが稀勢の里の勢いは衰えず突きおとす。最後は土俵下に転がり落とした。胸の空くような稀勢の里の快勝。不快な張り差しを撃破したのでなんとも気分がいい。もっとも稀勢の里も張り差しが好きなので問題はある。こういう張り差しに怯まない姿勢で快勝すれば張り差しの無意味さに気づくと思うのだが。



 阿覧と若の里。若の里は8連敗。いまだ白星なし。
 正面からぶつかって突っ張りあい。阿覧が頭を下げておっつける。右ヒジを極める形で左のおっつけ。そこから我慢できず若の里が安易な引き。それで押しだされる。こんな相撲しか取れなくなったのか。かなしいとしか言いようがない。



 魁皇と把瑠都。魁皇4勝4敗。把瑠都は1敗。13回目の角番。いかに苦しい状況から凌いできたかをアナは語るが、あまりそれを言われると白ける。そんな状況の大関なのだから。
 魁皇の勝ち。双手突きののど輪から攻めたが土俵際で交わされ、後ろ回しを取られて、背中を押されて送り出されてしまった。
 さてこの一番はどうなのか。把瑠都は金で転ぶ。チヨスに負けた空気投げが有名だ(笑)。あまりのひどさに厳重な注意を受けた。しかし土俵際で体を入れ替えての送りだしだからそうではあるまい。把瑠都もここで金に走ったとは思いたくない。次の横綱を目ざして星を売っているどころではないはずだ。ここまで7勝1敗と順調だったのだし。
 把瑠都が口惜しそうだったとレポートが入る。これも勘繰れるのだが今日の一番はそうでないと信じる。
 ビデオを見ると、傷めている右足で、相変わらずドスンドスンと進撃している。あれは危ない。やがてまた大怪我に繋がりそうで見るたびに冷や冷やする。



 琴欧洲と安美錦。苦手にしている。心配だ。安美錦も大好きだけど、ここは琴欧洲に全勝で行って欲しい。安美錦が突っ掛けてしまい、立てない。しかも二回。
 琴欧洲が一気に寄るが土俵際で身を交わされ突きおとされる。まともならあんなに簡単に落ちないのだが、やはり苦手意識が大きいのか。廻りながら右上手で投げている。決まり手は上手投げだ。

 琴錦が、琴欧洲は差した肘を張ることが出来ないとの指摘。把瑠都もそうなのだとか。難しくてよくわからないがなるほどと思う(笑)。でも佐渡ケ嶽の部屋附き親方なんだから教えてやれよと思う。「いつも言ってるんですが」と言っていたが、熱心に指導してやれば琴欧洲のそれは直るだろう。
 玉ノ井もそれを指摘。琴欧洲の缺陥のようだ。



 日馬富士と栃煌山。3対3。ここ6回の対戦できれいに互い違い。拮抗している。うわあ、栃煌山、強いわ。日馬富士の鋭い突っこみを受けとめ、弾きかえした。投げで崩し、決まり手は押し倒し。格上の力士が格下の挑戦を力ではね返したような内容。「栃煌山が強くなっている」をあらためて感じた。



 白鵬と徳瀬川。徳瀬川は今日初めての横綱挑戦。初めての結びの一番。先場所は優勝パレードで旗持もさせてもらい、今場所はついに挑戦。緊張するだろう。年齢は27歳と徳瀬川がふたつ上。体格では負けていない。
 白鵬の表情が厳しい。
 いい立ち合い。二度の呼びもどしがあっての上手投げ。56連勝。


十日目
9/21(火)
 野球賭博問題の実力者

 十両東筆頭の豪栄道が8勝2敗と勝ち越し。西筆頭の豊ノ島は10戦全勝と優勝候補。二枚目の雅山も8勝2敗と勝ち越し。野球賭博問題で先場所全休扱い、さらに謹慎処分で一気に十両まで落ちたこの三人が実力通りの星を挙げて来場所は幕内復帰だ。

 逆にそのバブル?で新入幕した連中が落ちてくるだろう。幕尻の土佐ノ海は早くも負け越し。もう幕内で取る力はないのか。残念。光龍も負け越して陥落濃厚。旭南海も黒星先行で危ない。細身の蒼国来は5勝5敗とがんばっている。

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 勝ち越した嘉風のインタビュウ。7連勝のあと2連敗。今日は取り直しになり、楽に勝ちたいと変化してしまったらしい。変化してしまってすみませんと謝る姿勢に好感を持った。
 向正面解説に谷川。海鵬だ。日大出身。そこから話は日大になり、いま日大出身の幕内力士は高見盛だけなのだとか。一時の隆盛が嘘のようだ。
 正面は出羽の海。鷲羽山。
 豪風も嬉しい勝ち越し。今場所は尾車部屋のふたりが好調だ。



 琴奨菊と高見盛。敗れて高見盛負け越し。今場所元気がない。それなりに粘って場内を沸かせているが中身的には完敗だ。

 栃ノ心と安美錦。3対3。もう栃ノ心は安美錦とも五分の星になってきている。
 解説の海鵬と安美錦は同じ町の出身。こども時代から知っているとか。
 安美錦、変化気味にまわる。栃ノ心が掴まえ、じっくりと料理。もう正面からは勝てなくなっている。右ヒザが悪いからなあ。もう治らないのだろうけど。

 若の里が時天空に勝って10日目で初日。長かった。苦しかったろう。

 鶴竜と稀勢の里。楽しみな一番。対戦成績は9対5で稀勢の里。ここ6場所は3対3。いい対戦なのにアナと解説はふたりに触れず結びの栃煌山と白鵬のことばかり。時間的にちょうどそういう流れなのだろうがちょっとかわいそう。私はふたりの対戦について聞きたかった。
 鶴竜が低く突っこんだが、稀勢の里の方が圧力が強く、すぐに圧倒する。鶴竜を応援していた私も、稀勢の里完勝と思われ、まだまだ稀勢の里の方が強いのかと諦めかけたが、土俵際で粘った鶴竜は右前褌を取ると体を入れ替え、そこから寄り切った。鶴竜のしぶとさと、何かがかけている稀勢の里が際立った。



 阿覧と豊真将。阿覧、双手突き。まともに当たった。だが阿覧が引くのは目に見えている。豊真将、落ちるなよと案じていると、予定通り阿覧が引いた。豊真将、引っ掛かってしまう。体勢を崩され押しだされてしまった。悔しい。



 日馬富士に徳瀬川。初対戦。日馬富士ののど輪。徳瀬川何も出来ず。
 把瑠都と旭天鵬。把瑠都、双手突きから左四つ。豪快な吊り。旭天鵬を吊るのは把瑠都と栃ノ心ぐらいしかできまい。


 
 琴欧洲と魁皇。琴欧洲、右上手を取って前に出て上手投げ。魁皇はもろくも崩れる。琴欧洲圧勝。昨日のひどい相撲が嘘のよう。




 白鵬と栃煌山。白鵬、また張り差し。くだらん。57連勝。




十一日目
9/22(水)
 朝青龍、警察へ

 といっても例の暴行事件関連ではなく10月3日の引退興行の警備について協力をお願いに行ったのだとか。しかしまあリッパににヤクザの雰囲気ですなあ(笑)。

 数日前、同じような服装で(サングラスはなかったけれど)「ミヤネ屋」に出ているのを見かけた。午後2時からのワイドショーである。そういや以前はこの時間、日テレは「ザ・ワイド」をやっていた。草野仁司会だった。けっこう気に入っていてよく見ていた。

 突然ワイドショーのスタジオに朝青龍がいるのでなにごとかと思ったら、その断髪式の宣伝だった。いわゆる「告知」である。もう売りきれていると思ったのだが、こんなことをするとはそうでもないのか。売りきれているなら出るはずがない。

 断髪式に宮根も招待されたそうで髷に鋏を入れるらしい。「御祝儀はいくら包めばいいのですか」と戯けていたが本気の心配でもあるだろう。宮根はいま最高の売れっ子で年収は数億あるが、まだあたらしいひとだし、後援者でもないから300万円ぐらいでいいのか。あるいは敢えて格下だからと100万ぐらいにするのか。いやいや土俵にあがって鋏を入れるのだから100万では済まないか。100万の御祝儀は優勝パーティの金額だ。何度もする優勝と違って今回は生涯一度の引退式である。300万は包むべきか。そんなことを心配してもしょうがないが(笑)。

 後援者の筆頭で謹慎中にも彼の自宅に出入りしていた近藤利一(アドマイヤの馬主)氏ぐらいになると1千万だろう。

 10月3日の引退興行はどこが中継するのだろう。TBSか。日曜日だ。2日に千代大海の引退興行もあるが、これは中継なしか。
 いま調べてみたがわからない。これは私の検索下手のせいであるが、同時にインターネットはあまり先々の番組についての情報はないのだと知った。テレビ番組雑誌との兼ね合いか。

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 今日は珍しい「逆(さか)とったり」という決まり手が二番あった。とったりで腕を取られて振りまわされるのに、その取られた腕で投げ返すような技だから珍しい。まず見られるものではない。
 最初は平幕の垣添と豊桜。垣添が変化しての忙しい相撲。ちいさな垣添が変化をするのは一概に責められないが相手も大きくない豊桜なのだから感心しない。決まり手は逆とったりになったが、これは先日の「はりま投げ」と同じく、形がそうだというだけ。いわばこじつけのような決まり手。もう一番の魁皇が日馬富士を抛り投げた逆とったりは美事な逆とったり。これを見て北の富士も「さっきのは(豊桜)たまたまそんな形になっただけだからね」と言っていた。

 写真はまことに美事な魁皇の逆とったり。



 相変わらず客が入っていない。なんともさみしい。
 
 玉鷲と木村山。勝った方が勝ち越し。休みなく激しく動くいい相撲。玉鷲は三連敗から八連勝で勝ち越し。解説は高田川(安芸乃島)。八連勝で勝ち越した玉鷲の住もうに、もっと徹底した強い立ち合いをしないと上位では通用しませんねと辛口。たしかに「いい相撲」ではあったが決して一流の相撲ではなかった。私も誉めながら内心ではそうは思っていた。毎度高田川の辛口は絶妙だ。

 勝ち越しを掛けた黒海は勝ち越している豪風に負ける。豪風九勝目。ここのところ黒海は勝ちたいがための跳んだりはねたりが目立ち応援する気にはなれない。
 北太樹がいい相撲で勝つがまだ六勝。

 ここで十両の話題。豊ノ島十一連勝。雅山三敗目。豪栄道が二敗で続く。豊ノ島優勝はまちがいない。なら白鵬と並ぶように全勝で決めてくれ。

 徳瀬川が勝ち越しを掛けた琴奨菊に圧勝。三枚目で勝ち越して三役に復帰したい琴奨菊だがこの完敗はいただけない。

 豊真将が猛虎浪に本来の落ちないしつこい相撲で勝つ。頭からぶつかるいい立ち合いだった。
 旭天鵬と時天空。実力者同士は2勝と1勝。ひどい成績。旭天鵬が3勝目。



 栃ノ心が稀勢の里に勝っていた内容なのに土俵際で逆転される。惜しい。稀勢の里は3勝7敗と負け越しの危機だったがなんとか踏み止まる。まあ負け越しだろうな。
 栃ノ心は順調なようでいてまだ6勝目。三役ならともかく陥落しての三枚目なのだからもっと勝たねばダメだ。小結と三枚目では相手が違う。



 新関脇栃煌山は安美錦を破って勝ち越し。安美錦が攻めこみながらも、引いても栃煌山は落ちずについてゆく。強くなったなと思う。なにしろ相手が安美錦だ。北の富士も(振りまわされても)落ちない自信がついたのだろうと誉める。



 琴欧洲と白馬。白馬の変化からとったり。体勢を崩されて双差し。それから寄り切り。変化はつまらん。しかし琴欧洲は終盤になると見事に崩れる。白鵬や把瑠都に負けるのはわかるが平幕への取りこぼしはだらしない。
 白馬が「とにかくまわしを取られないように」と、うれしそうに勝利インタビュウを受けていたが、どうも変化相撲では誉める気になれない。



 日馬富士と魁皇。魁皇が日馬富士のとったりを凌いで勝つ。逆とったり。これは剛腕による本物の逆とったり。日馬富士の体が宙を舞った。六勝目。場内が沸く。



  

 またも張り差しのバカ把瑠都が鶴竜に双差しになられ、身長差を活かして強引に吊ろうとするが、そこから外掛けで敗れる。ざまあみろ、という感じだ。鶴竜、見事。
 好きな把瑠都と嫌いな張り差し。どちらを取るかとなれば嫌いな張り差し。だと自分でも今日気づいた(笑)。

 鶴竜に何かをされるのではという恐怖があったのだろう、無意味な張り差しをするから腰高の棒立ちになる。そこをつけこまれて双差し。背中越しの上手から強引に振りまわそうとしたときに絶妙のタイミングの外掛け。まさにすべて鶴竜の計算通り。両手突きでものど輪でも、なにをしても違った展開になったろう。張り差しを読まれたときに負けは決まっていた。

 鶴竜の外掛けが美事に決まり、把瑠都は背中一面に土をつける印象的な一番だったので、どこにでも写真はあるだろうと思ったら、すでに3敗目であり、あまりのだらしなさに愛想を尽かされたのかどこにもなく苦労した。柔よく剛を制すの典型だ。すごいぞ鶴竜!



 白鵬と阿覧。阿覧が何かをするのではとイヤな予感がする。このひとは勝つためなら変化もする。白鵬もそれを読んでいたのだろう、じっくりと見て立った。だから正面からぶつかったがあまり勢いのいいぶつかりあいではなくコンマ何秒か白鵬は遅れて立っている。もしも阿覧が変化したとしても見抜かれたろう。右四つになっての左からの上手投げ。タチの悪い阿覧だけになんかとんでもないことがありそうでいて、最もふつうのあっさりした勝負になった。北の富士がなにもしないと怒っていたが、すべてを読みきって白鵬がなにもさせなかったが正解だろう。今日は白鵬を誉める。張り差しがなくてよかった。白鵬、58連勝!




 今日は録画予約に失敗した。この種のことが苦手なおじさんは多いらしいが私は大得意なのでまずしたことがない。今回もその後調べたが私の予約はなにひとつ間違っていなかった。日附も時間も。確認したらHDDレコーダに残っていたのだ。HDDレコーダが動かなかったことになる。これはこれでショックだ。私の予約ミスなら次は直せるが機械の故障なら修理に出さねばならない。
 よってまともに見られたのは最後の三番のみ。あとは深夜にダイジェストを録画し、それを見ながら書いた。
 ずっとリアルタイムで見ていたので、あらためてダイジェストのつまらなさを感じた。先場所毎日ダイジェストを録画し、それを見ながら「相撲日記」を書いたが味気なくて苦痛だった。それを思い出す。
 せっかくの今場所初の高田川の辛口解説も聞けなかった。大失敗である。しかもそれが自分のミスでないところがよけいに口惜しい。無理してもリアルタイムで見ればよかったか。



十二日目
9/23(木)



秋分の日
 秋分の日。雨降り。昨日は真夏日だった。今日のこの雨を境に涼しくなり秋が来るらしい。まことに苛烈な猛暑だった。

 十両の全勝豊ノ島が敗れるところから見る。もの言いのつくきわどい相撲だったが軍配通りの負け。勝負審判貴乃花のマイク。幕ノ内の白鵬、十両の豊ノ島と並んで全勝優勝して欲しかったがそれが潰えた。残念。

 いやヴィデオを見ると、一方的に突きだされるひどい相撲。いいとこなし。土俵際で身を交わしただけだった。ビデオ的にはコンマ何秒かで城ノ龍の方が先に落ちている。豊ノ島は宙に浮いているが「先に地面に落ちた」を取るなら、豊ノ島の勝ちでもおかしくはない。しかしこれは城ノ龍の勝ちにすべきだ。そう判断した審判部は偉い。今の審判部ならあの「朝青龍対琴ノ若」も琴ノ若の勝ちにするだろう。そう信じたい。



 幕内土俵入りを見る。土俵に上がる際、勝負審判の前を横切るので力士は手刀を切ったり一礼したりする。よく見ていると、それを叮嚀にするもの、いいかげんなもの、中にはしないのもいて力士の性格、礼儀観がわかる。
 豊真将の他の力士とは一味ちがった叮嚀なお辞儀を見てまた好きになる。他の力士はほんのすこし頭を下げる程度(それすらしないのも多い)なのに、彼はきちんと「お辞儀」をするのだ。ほんとにすばらしい。
 阿覧が意外にきちんと頭を下げていたので見直した。こんなことから好きになることもある。土俵態度はふてぶてしい時天空もきちんと頭を下げていたので見直す。



 今日の琴欧洲の化粧まわしは私の知らないものだった。茶系統のいいデザインだ。先日ひさしぶりにあの「明治ブルガリアヨーグルト」の化粧まわしを見て以前から感じていた疑問をあらためて感じた。宣伝イメージが出すぎているのだ。色合いが商品と同じなのはいい。だが文字はもっと控え目にすべきだろう。下部に入れればいい。なのに前面中央に出ている。「ブルガリア」というカタカナが琴欧洲の母国を強調しているとも言えるが誉められたものではない。今日のはどこの後援会からなのだろう。琴欧洲の風貌に似合っていていい化粧まわしだった。

 横綱土俵入り。白鵬は五日毎に化粧まわしを替えてきているとアナの説明。



 結びの一番は白鵬と魁皇戦。初場所で魁皇が白鵬を破った一番が流れる。初場所の白鵬の大崩には心配したものだった。86勝4敗という年間最多勝の大記録を作っての初場所。優勝は朝青龍に取られ、3敗もした。「一年に4敗しかしなかった白鵬が一場所で3敗」と何度もアナが言っていた。中でも長年ずっと負けていない魁皇に負けたのは失望した。そこから立ち直っての今場所までの連勝である。この連勝前、最後に負けたのが魁皇になる。もし魁皇が連勝を止めたら記録的だ。



 土佐ノ海が若天狼に勝って初日以来の2勝目。よかった。勝負前舞の海が「1勝10敗で十両に落ちるのは決まっているのですが、ひとつでも多く勝っておかないと十両の下位まで落とされますから、再来場所が心配になります」と言ったのでビクっとする。そうか、ここでこのまま十両下位に落とされると、来場所の負け越しで幕下落ち、引退の危機となる。1995年に新入幕してから2006年まで幕内にいた。そこから十両に陥落してまた復帰。2009年からはずっと十両だったが今場所野球賭博問題のこともあり史上最年長の再入幕を果たした。今場所の大敗で十両下位まで落とされ、来場所の負け越しで幕下陥落確定、引退、という悪い流れを想像してしまう。すでにもう親方株立川は取得している。でも現役でいて欲しい。ひとつでも多く勝って欲しい。5勝すればだいぶちがう。



 ここで向正面解説の不知火(青葉城)の話。通算連続出場回数1630回の大記録は初土俵から休みなしの偉大な記録だ。これ以前の記録は富士桜。中村親方。富士桜の猛稽古は伝説だ。ふたりは同い年とか。青葉城の肩書は「元関脇」。青葉城が関脇まであがった記憶はない。このひとは典型的「記録の力士」だ。その点富士桜は勝っても負けても猛烈に突っ張って前に出る相撲で記録とともに「記憶の力士」でもある。むしろその果敢な突撃精神の「記憶」の方がはるかに強いから「記録」も持っていることを忘れがちだ。とにかくもうどんな相撲本を読んでも「富士桜の猛稽古」は出て来るほど有名だ。



 栃乃洋が光龍に負けた。光龍は栃乃洋に初勝利とか。栃乃洋も大好きだ。このひとも一日にでも長く土俵にいてほしいひと。今場所は7勝している。再入幕だが幕内残留はだいじょうぶだろう。8勝するまで心配だけれど。36歳。十両の6枚目で9勝だったから、これもまともなら入幕は適わなかった。野球賭博問題による大量陥落での再入幕である。護ったのは立派。いやまだ確定ではないか。早く勝ち越して欲しい。



 嘉風が10勝目。白鵬、琴欧洲と並んで7連勝したときは、「このまま連勝して横綱戦」と夢を語っていたがそれから2敗して夢は潰えた。今までの最多勝は11勝とか。記録更新なるか。あと三日。

 同じく好調なのが尾車部屋の豪風。こちらも勝って10勝目。
 それに関して不知火に話が振られ、彼が「お蔭様で好調で、ありがとうございます」と言ったので驚く。急いで調べる。そうか、青葉城は二所ノ関部屋だったが大麒麟の獨立について行くことが出来(出来ずに引退したのが天龍)押尾川部屋所属となり、引退後も押尾川部屋附きの親方だった。それが部屋の閉鎖となり、そこまでは知っていたが、そのご尾車部屋附きとなっていたのだった。知らなかった。「嘉風、豪風と不知火」を結びつける感覚がまったくなかったので新鮮だった。勉強になった。とはいえまだ「尾車(琴風)のしたにいる青葉城」のイメージはないが。



 黒海勝ち越し。見事なすくい投げ。今場所は黒海の投げを何番か見た。ヴィデオで見ると一回引いての、やはりレスリングを感じさせる技ではあるのだが、黒海の投げは新鮮だ。このがんばりには栃ノ心、臥牙丸という後輩の活躍は関係あるだろう。グルジアでは英雄だと紹介されたことがある。有名人だ。その座を脅かされているからな。がんばらないと。でもフロンティアは黒海だけど。
 ひさしぶりの勝ち越しのインタビュウ。日本語がなめらかになっている。



 北太樹があいかわらずラジオ体操のように手を大きく回している。どうも好きになれない。旭南海を相手にせず。旭南海は昨日二人目の子が生まれたとか。「小太郎」と紹介されていた。字はわからないが。たぶん今の時代だから「コ」は凝っているのだろう。



 臥牙丸が勝ち越し。先場所新入幕。幕内初の勝ち越し。押して押して攻めまくった文句なしのいい相撲だったが、土俵際で粘る土佐豊を押し潰す形になったので、押し潰されて転落した土佐豊が大怪我をしたのではないかと心配した。舞の海も真っ先にそれを心配していた。足首が危ない形に捩れている。さいわい無事だった。よかった。大きな力士相手にこういう相撲は怖い。粘るのもよしあしだ。小錦が出て来たとき、みな「壊される」と取組をいやがった気持ちが判る。ケガしないようにあっさり負ける力士の気持ちが判る。とにかく最大の敵はケガなのだ。

 臥牙丸も日本語がうまくなっていた。みな異国に来て、異国語を覚え、チョンマゲを結い、裸になってがんばっているのだ。私は異国のこういう青年がいとしくてたまらない。日本人にばかりこだわるひとの気持ちが判らない。今時の教育を受けて今時の生活で育った日本人青年が彼らに勝てるはずがない。精神の強さがちがう。



 高見盛と北勝力。北勝力失神。何事が起きたのか。土俵で横になったまま起き上がれず、しばらくしてから両肩を支えられて下がって行く。ここまでの出来事もめったにない。頭と顔がぶつかってこういうことは起きるが、そのときは当たった方も顔にダメージが残るからわかる。今回は高見盛にそれはない。きょとんとしている。何が起きたのか。
 ヴィデオを見ると高見盛の左肩と北勝力の顔面がぶつかっている。脳震盪か。いま元気な様子が見えた。瞬間的なものでだいじょうぶのようだ。アクシデントである。でもこれはこれで緊張感が走り相撲の凄味でいいことだ。



 豊真将と時天空。素速く左前褌を取って豊真将突進。なんとかこれで4勝7敗。勝ち越しは無理でもひとつでも多く勝っておけ。



 稀勢の里と旭天鵬。対戦成績は8対8。でもここのところ稀勢の里の4連勝。ということはあの日の出の時代に旭天鵬に勝てなかったのか。



 栃ノ心と鶴竜。今日一番の楽しみ。鶴竜は小結での勝ち越しを掛ける。鶴竜、強い。頭から当たって右前褌を取って潜る。巻き替えて左前褌も取る。引きつけた形で寄る。栃ノ心はなすすべもなく寄り切られる。うまいなあ。

 序盤1勝3敗からの勝ち越し。小結での勝ち越しは新小結以来二度目。しばらく三役と前頭を往復した。三役にあがって負け越し、前頭に落ちて勝ち越し。今度はもう本物だ。来場所は関脇。東が栃煌山、西が鶴竜。



 把瑠都と安美錦。立ち合い。把瑠都が安美錦の顔をよく見ている。なにをされるかわからないから見抜くつもりだ。両手突きで立ったが左に交わされる。安美錦が後ろにつく形になった。こうなったら把瑠都でもどうしようもない。4敗目。くだらん張り差しなど連発しているからこんなことになる。

 安美錦の出身中学の連中が修学旅行で32人来ているとか。うれしい勝利だ。
 把瑠都の立ち合い失敗に舞の海がキツいことを言う。「どうしたらよかったのか」と把瑠都がアナに聞いたのだとか。それにアナは舞の海の立ち合いに関する失敗についてを伝える。把瑠都は「そうか、片手で立った方がよかったのかな」と言ったという。この辺、把瑠都の素直な性格と研究熱心な部分が出て、私は把瑠都らしいと思った。好感である。が舞の海は厳しかった。「失礼ですけど、あの立ち合いの失敗は大関の失敗じゃないです。幕下あたりの失敗ですからね」と手厳しい。こんなことを言われたら指導する親方の濱ノ嶋は赤面だろう。



 琴欧洲と栃煌山。今や日本人力士のホープとなった栃煌山だが私は琴欧洲応援。
 琴欧洲が引くだらしない相撲。栃煌山がついていって簡単に押しだす。こういう大事な場面でなんとまあだらしない相撲を取るんだ。負けるにしても負けかたがある。あまりに安易な引き技。
 だが辛口舞の海が栃煌山を絶讃する。当たりは五分。その琴欧洲の当たりに栃煌山は引かない。そこで琴欧洲の引きが出た。舞の海は当たり負けしない栃煌山の強さ、そこから引かれても足が流れない栃煌山の充実を讃える。いままでとはぜんぜん違うと。不知火は琴欧洲にもっと自信を持って相撲を取れと苦言。また今場所も定番の「終盤で崩れる琴欧洲」となった。まことに無念。まあ連勝中もすこしも内容はよくなかったのだが。

 栃煌山、関脇で9勝目。来場所の東の関脇は確定だ。「日本人大堰候補」断然の一番手となった。なるだろうな。魁皇の引退はカウントダウンだし、次の大堰候補は栃煌山と鶴竜で確定だろう。負け越し危機の稀勢の里と十両落ちの豪栄道はだいぶ離された。



 日馬富士と阿覧。両手突き阿覧を日馬富士、相手にせず。阿覧の引き技に負けたこともあった。阿覧の相撲が委縮しているのがよくわかる。これが初めての関脇体験の重みだ。今場所の負け越しと陥落で彼も相撲の奥深さをひとつ学ぶだろう。



 さて白鵬と魁皇。どんな立ち合いになるのか。白鵬にいい立ち合いをして欲しいとそれだけを願う。横綱白鵬と大関魁皇の闘いは16回。魁皇が勝ったのは一度だけ。まったく正月のあの敗戦は愕きだった。

 白鵬が昨日の阿覧戦と同じように慎重な立ち合い。変化気味のとったりや小手投げを警戒したのだろう。突っ張りながら慎重に慎重に攻めて行く。右四つになりながら魁皇に右は許さず、じっくりと寄り切った。よく腰が割れている。今日の白鵬は満点。よかった。私は連勝という数字より白鵬の勝ちかたにこだわる。もちろん連勝という歴史的数字の積みかさねは貴重であり、生涯唯一とも言える場面に出くわしているのだが、ずっと応援してきた白鵬だ、納得できるいい相撲での勝利を期待したい。
 白鵬勝って59連勝。


十三日目
9/24(金)
 4時から録画しつつ見る。幕下優勝のインタビュウをしている。高安。茨城出身。鳴戸部屋。序の口は巨東。これナニ東なのだろう。玉ノ井部屋だからアズマは確かなのだが。オオアズマかと思ったらそうだった。序二段、三段目は7戦全勝がふたりずついて優勝決定戦とか。序二段はふたりとも伊勢ケ浜部屋。ちょっと残酷な結果。師匠からするとうれしいだろうが。

大相撲秋場所13日目の24日、幕下は20歳のホープ、高安(茨城県出身、鳴戸部屋)が立命館大出身の祥鳳(大阪府出身、春日山部屋)を下し、7戦全勝で優勝した。これで来場所の新十両が決定的となり、平成生まれの関取第1号が誕生する。 サンスポ

 思えばこのインタビュウで金髪の長髪、まだ日本語がほとんど話せない把瑠都を初めて見たのだった。ほんとにまだボキャブラリーは50コぐらいの感じの頃だ。なつかしい。



 十両は豊ノ島が勝って一敗を守ったが三敗勢もそろって勝って優勝決定は先延ばし。
 正面解説は友綱。向正面は片男波。いま片男波は誰だっけ? まだ映像はない。見ればわかる。

 5勝5敗だった新入幕蒼国来は7敗になっていた。連敗の二日を見ていないのだがアナによると勝ちたくて変化に走ったらしい。そりゃいかん。今日は正攻法で行き、勝った。ぎりぎりで残った。そういうことを繰り返して成長して行く。まあ今場所落ちてもこのひとはそのうち幕内の常連になるだろう。
 ご祝儀新入幕の旭南海は負け越しているので陥落決定。テレビで何度もインタビュウを受け、二人目のこどもが産まれたことも電波に乗り、夢のような今場所だったろう。まあとにかく十両にいればたっぷりと金は入る。もういちど幕内力士として見ることがあるかどうか。

 いま判った。そうだ片男波は玉春日。引退して、すこし立ってから継いだばかり。先代は玉ノ富士。先日の解説がつまらかった出島と同じ中大出身。同期の学生力士に土佐ノ海、武双山がいる。そう思うとまた土佐ノ海にがんばれと言いたくなる。
 玉春日は出島よりは解説上手と思う。しかし引退後の力士によくいわれることだが、引退してパンチパーマのような髪形にしたらヤクザそのものだったのには落胆(笑)。

 豪風と嘉風が二敗。このふたりが負けると白鵬の優勝が決まる。まずは豪風が変化して木村山の背中について送り出した。自身初の9連勝。よい成績で場所を盛りあげてくれたとばかりにアナも変化を攻めず誉めている。どうかな。幕内下位の相撲だけにどうでもいいのだろうが元気なのだから正面から行って欲しかった。負けた木村山は「豪風は今場所調子がいいので変化するとは思わなかった」とのコメント。その裏を掻いたと言えるわけだが……。

 嘉風が黒海を押し倒して勝つ。これは豪風とちがって前に出る果敢な相撲。突っ張り愛。黒海に力で負けなかったのはえらい。これは誉められる内容。
 ふたりとも11勝。琴風はうれしいことだろう。

 北太樹が勝ち越し。しかし勝ったのが栃乃洋なので複雑。栃乃洋も大好きなので早く勝ち越して欲しいのだ。7勝からなかなか勝てない。あと二日。勝ち超せるか。

 昨日高見盛戦で脳震盪を起こした北勝力が休場。土俵横で長々とのびたままだったので心配した。両肩をふたりに支えてもらって下がった。でもその後地力で歩きはじめたので一過性のものでだいじょうぶだと思ったが……。



 5時の休憩。白鵬把瑠都戦の今年4戦を連続で紹介。いやあ楽しい楽しい。1戦目が把瑠都が初めて勝った一番。投げが見事に決まった。白鵬のしまった、という顔。3戦目は白鵬の圧勝。強いなあ、と感嘆。4戦目は先場所の大相撲。最後に白鵬がぶん投げる。それが両者足を上げての力の入るもの。今見ても背筋がぞくぞくした。最高の相撲。
 こうして見るといかにまともにやると体力抜群の把瑠都が強いかがよくわかる。白鵬は多彩だ。奇策だってなんだって出来る。把瑠都が平幕の曲者に転がされるように策を弄すれば勝つことは簡単だ。だが横綱相撲でこの大男を正面から受けとめて勝たねばならない。そうなるといきなり難しくなる。



 栃ノ心と白馬。栃ノ心の豪快な吊り。いいぞ栃ノ心!



 若の里と豊真将。若の里が張り差し。ここのところのひどい相撲ではなく終始豊真将を攻めて攻めまくる。豊真将必死に粘る。張り差しは大嫌いだが今日の若の里の健闘は誉めねばならない。豊真将、負け越し。でもひとつでも多く勝っておけ。

 と、張り差しではあるが若の里の健闘を誉めようと思ったのだが、ヴィデオをよく見ると若の里は立ち上がってすぐに安易に引こうとしている。豊真将がそれに応じなかったので(それが彼の落ちないという持ち味だ)前に出る相撲に切り替えた。つまり、豊真将が「若の里は必ず引くからそのとき前に出よう」と作戦を立てていたらいつもの相撲になったろう。ほとんどの力士なら引かれたら前に出るから今日の若の里には勝ったことになる。
 ところが豊真将の相撲は引かれたとき「いやいや」をするように前に出ず後ろに下がるようにして粘る相撲だ。だから結果的に場内の沸くいい相撲になったけれどそれは相手が豊真将だからこそ実現した偶然かも知れず、若の里を誉めるのは勘違いかも知れない。ひさしぶりの快勝にアナは「巧さならまだまだ豊真将より若の里の方が上ですね」とはしゃいでいた。でもこのひとも私と同じ強かった若の里に思い入れがあるだけではないかと感じた。



 高見盛と時天空。ふたりとも今場所はひどい成績。高見盛、立ち合い負け。攻められっぱなし。必死に粘るので場内は大いに沸く。でも中身は完敗。
 時天空の胸と高見盛の左肩がぶつかる立ち合いは美しい。あらためてチンピラのように相手の顔を張って行く張り差しは嫌いだと思った。



 鶴竜と琴奨菊。7勝の琴奨菊は勝ち越して来場所の小結を狙う。私は鶴竜に9勝目をあげて欲しい。対戦成績は6対5で琴奨菊リード。でもここ三場所は鶴竜。つまり逆転した。鶴竜は三大関を倒している。ほんとに力のある人だ。
 鶴竜が小結で勝ち越したことにより師匠逆鉾へのインタビュウがあったらしい。すると「豊真将相手に変化したので叱った」とか。いいことだ。どう考えても鶴竜が豊真将相手に変化する必然はない。そんなことをしてはダメだ。

 琴奨菊の突進を受けとめて四つになったのでもう鶴竜のものと思ったのが、そこからガブられ完敗してしまった。これは残念。失望。鶴竜はこんな力士ではないはずだが。負けた鶴竜が珍しく(このひとは昔の力士のように基本的に無表情だ。いいことだ)苦笑した。作戦負けによるあまりの完敗に呆れたのだろう。



 さて7敗の稀勢の里と徳瀬川。稀勢の里は負け越すと小結陥落。そこに上がるのが琴奨菊。東西の関脇は栃煌山と鶴竜で確定している。関脇阿覧が陥落確定。ふたつの小結の座はどうなるか。おもしろくてたまらない(笑)。徳瀬川も7敗。4枚目の地位を守りたいところだ。
 初対決。つまりそれは下っ端にいた徳瀬川がここまで上がってきたということだ。相撲は稀勢の里が格上だった。圧勝。これで6勝7敗。明日明後日と連勝して勝ち越せるのか。

 解説の友綱が稀勢の里を無理な動きが多いと評。この相撲もたしかにそんな感じだった。アナも納得。友綱は解説がうまい。冗舌ではないがポイントを押さえている。それにしても先日の出島はひどかったな。トラウマになりそうなほど。今後しばらく「ひどい解説」では出島の名が思いうかぶだろう。



 阿覧と栃煌山。対戦成績は阿覧の5対0。おお、栃煌山は阿覧が苦手だったのか。こんなことも知らないとは阿覧はともかく、ここのところいかに栃煌山に注目していなかったかだ。
 一方的な成績に、阿覧の突っ張りや変化に、栃煌山はかってに苦手意識を持っているのではないかと玉春日の評。玉春日もしゃべれて適確。いい解説者だ。やはり出島が無口すぎる。
 阿覧は三役手当も出る関脇になれて先場所大はしゃぎだった。

 阿覧の変化。栃煌山は触ることも出来ず阿覧の勝ち。このひとはこれをやる。つまらない。でも玉春日は栃煌山が低すぎて相手を見ていないと栃煌山の方を批判。
 この立ち合いの前に阿覧は一度突っ掛けている。これをやられたら正面から来ると思ってしまう。作戦勝ちとも言えるがつまらない相撲だ。場内にも失望の溜め息。真正面からごつんとぶつかってもいい相撲を取れるだろう。インタビュウで「前に出る相撲」などと殊勝なことを言っていたからついつい信用したが、勝つためならこんなこともするのがこのひとの本性だ。栃煌山が阿覧との対戦成績を逆転するのはいつになるか。こんなのを苦手にしていたんじゃ大成はない。



 魁皇は大関を落ちたら引退と明言している。勝ち越して欲しい。なんとしてもチヨの勝利数を越えてもらわねば困る。もう横綱大関戦は終っている。今日の安美錦に勝てば勝ち越しか。どうなる。安美錦の右ヒザサポーターもぶ厚い。このひともこのケガさえなければなあ。
 魁皇、はたき込みで7勝目。でもひどい相撲だ。衰えた魁皇の十八番でもあるが安美錦にしては簡単に落ちすぎ。これって談合かな? まあそれでもいいんだけど。なんとしても勝ち越せ。

 琴欧洲と日馬富士。勝てよ琴欧洲。ダメかな。振りまわされてぶん投げられるか。日馬富士も勝ち越してないから必死だろうし。対戦成績は13対14。ここのところ3対3。
 案じたとおりのど輪で攻められ、それを外した瞬間、後ろ回しを取られて振りまわされ、ひっくり返された。「送り投げ」。いつも思うのだが一瞬にして「おくりなげ」と言えるアナは偉いなと思う。



 さあ白鵬と把瑠都。今場所も外連のないいい相撲を見せてくれと願う。大柄なふたりだから様になる。真正面からのぶつかりあいが見たい。

 見せてくれた魅せてくれた。最高の一番。美しい。最高だ。美しい立ち合い。突っ張りあいからの右四つ。終始横綱が厳しく攻める。把瑠都は耐えるだけだが耐える把瑠都も映える。そして上手投げでまた把瑠都を宙に舞わせた。ぶん投げた瞬間、私は中腰になって拍手していた。先場所の千秋楽のこの一番でもそうだった。
 双葉山以来の72年ぶりの60連勝! それがこんな美しい相撲で飾られるなんて最高だ。ああ満足だ。こんな気分のいいことはない。やはり相撲は内容なのだ。

 いま再現ビデオを見たが、それを見ても思わず拍手。いい相撲だったなあ。うれしいなあ。こんないい相撲を見られて。今日はこれからずっと気分がいいだろう。ありがとう白鵬。負けたけど把瑠都もよくやったぞ。

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 いまこんな星取。毎場所ここのところの上下がおもしろい。
 来場所関脇は東栃煌山、西鶴竜で確定。問題は小結。
 阿覧が落ちるのでひとつ空く。稀勢の里が二連勝して勝ち越すと留任だが、二連勝はどうか。いやいや阿覧だってこのあと7勝8敗までもってゆけば陥落しても小結という目もある。先場所の稀勢の里がそうだった。
 琴奨菊は勝ち越したので小結に上がりたい。でもこのあと栃ノ心の成績が伸びて同星だったなら、番付からは栃ノ心が有利になる。栃ノ心もなんとしても小結に返り咲きたいだろう。3連勝のスタートだったので今場所は10勝ぐらいするのではと期待したのだが。

 阿覧が5勝のまま、稀勢の里も負け越して落ち、栃ノ心の星が伸びず、白馬が星を伸ばしたら、琴奨菊と白馬が小結、という可能性もある。

 明日の魁皇稀勢の里戦は注目だ。魁皇は勝ち越しを懸ける。魁皇が勝てば大関安泰だが稀勢の里は負け越しで小結陥落だ。
 栃ノ心も好調豪風だ。かてば勝ち越しで小結が見えてくる。琴奨菊との直接対決で負けているのが痛いか。


十四日目
9/25(土)
昨日イチローが10年連続200本安打達成。今日のスポーツ紙はすべてそれ一色。私もサンスポを買った。

 尖閣諸島問題では中国に屈して船長を釈放。なんという情けない国なのだろう。絶望する。

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 解説は正面が尾車。向正面が千賀ノ浦。舛田山だ。
 琴春日が幕内で初めての勝ち越し。うれしさ満面。一所懸命努力している力士が勝ち越すとこちらまで嬉しくなるとアナ。それに尾車が応えて盛りあがる。よかった。先日の出島以来、解説がど下手だと白けるので気になってならない。



 豊ノ島の十両優勝が決定。13勝1敗。後続が消えた。全勝でないのが残念だ。せめて1敗を守ってくれ。



 木村山と垣添。張り差しで立った垣添が、相撲中盤でも張り手を二発。それがもうただのビンタ。大きな音が響き、場内がどよめく。木村山、挑発に乗らず、寄り切る。
 張り差しとケンカとしか思えないビンタをくらったのに、木村山は感情的にならず、怒りの表情も見せなかった。気の荒い力士だと寄り切ったときにつきとばしたりする。なのに冷静。温和な顔。一方下品なことを連発した垣添は負けてふてくされ、土俵を降りるときも「ふん!」という態度だった。一気に木村山が好きになり垣添に反感をもった。木村山とか山本山とか本名に山をくっつけただけの四股名はつまらない。まして木村山は殊更特徴のあるひとではない。でも今日の一番で好きになった。だから相撲は見なければならない。



 黒海と臥牙丸というグルジア人同士の対決。
 ということで外国人力士の紹介。モンゴル33人、中国7人、グルジア3人、ロシア3人と、合計ぜんぶで11の国の力士がいるのだとか。幕内の内19人が外国人。この場合カウントはどうなっているのだろう。旭鷲山、猛虎浪は日本人だ。「出身」で言っているのか。
 中国人が7人もいるとは知らなかった。幕内は蒼国来だけ。
 グルジア人が三人いて三人とも幕内というのは驚異的。しかも栃ノ心は横綱大関を狙える逸材だ。

 黒海と臥牙丸。先輩と後輩の対決は先場所は黒海が勝った。今場所は臥牙丸が一方的に寄り切った。黒海が猫だましをやっているとビデオで知る。相撲ではわからなかった。でもこれはアナもわからなかったほどで、アナがビデオを見て「ああ、猫だましをやっているんですね」と言ったほどだ。でも臥牙丸は下を向いて突っこんでいたのでそれを見ていない(笑)。これほど効果のない猫だましも珍しい。もっとも私は猫だましといっても三重の海のあれぐらいしか記憶にない。あれで覚えた技だ。あとは舞の海か。

 その後リポートが入り、臥牙丸は大きな音がしたので驚いたとか。わかってはいたのだ。あれこれ世話になった先輩に「恩返し」をしたわけだが、そういう日本語は知らなかったようだとのこと。そりゃまあ知らないだろうし、知ったとしても、世話になったひとを負かしてしまうことがなぜ恩返しなのかこの辺のニュアンスはむずかしいだろう。そういえば臥牙丸は黒海の活躍を知って力士を志したと言われている。なら今日の勝利はそれなりのことを感じたろう。



 冨岡八幡宮。50連勝を越えた力士の名が刻まれる。その紹介。白鵬もここにその名を刻まれる。

 土佐豊と春日王。土佐豊が勝ってともに6勝8敗。土佐豊はとにかく上がってくるまでは華やかだったから、いま壁に突きあたっていることに関し、「これから何をなすべきか」と親方の間でも話題になることがあるとか。そうだろうな、あれだけ連勝で一気に昇ってきて、ここに来てもう「普通の人」になってしまっている。

 ここで十両優勝の豊ノ島の一番。二分を越える長い相撲なので、と決まる瞬間のみ。物足りない。

 栃乃洋と朝赤龍。36歳の再入幕で7勝の栃乃洋は今日も足踏。それどころか千秋楽で負けると負け越しにまで追いこまれた。まずいなあ。がんばってくれ。
 千賀ノ浦が年齢によって足腰が衰えてきているから四股を踏まねばならない。あまりしていないのではないかと言うと、アナが栃煌山、栃ノ心相手によく稽古をしていると意見を言う。いわば解説の意見に反論のようなことになってしまった。それは力士をよく見てまわっているアナの栃乃洋擁護。アナも栃乃洋が好きなのだ。うれしかった。



 嘉風、豪風がともにまだ2敗でがんばったから、今日の解説尾車は適切。
 嘉風と琴奨菊。師匠の琴風は佐渡ケ嶽出身だから、本家と分家。オジとオイのような取組。アナも尾車も相手が琴奨菊では分が悪いと言っていたが、琴奨菊の電車道となってしまった。まともな引き。一方的。悪い相撲だ。とても二桁勝っている力士とは思えない。こんなにも力が違うのか。
 尾車は「引かないから今場所はここまで勝てたのに」と厳しい意見。アナも「今場所一番悪い相撲」。琴奨菊9勝目。来場所の小結確定か。



 蒼国来と旭天鵬。7敗の蒼国来、今日も希望を繋ぐか。
 双差しになって攻めるが懐の深い旭天鵬に体を入れ替えられる。そこからもういちど攻めて寄り切った。勝った蒼国来が寄り切ったその場で頭を下げ旭天鵬に敬意を払っているのが印象的だった。これも底意地悪く「談合か」と読むことも出来る。待望の新入幕から十両に落ちたくない蒼国来と、すでに負け越しているが番付が上なので幕内安泰の旭天鵬。国籍はちがうが同じモンゴル人同士。充分にありうることだ。そう思って見れば、双差しの蒼国来を振りまわして体を入れ替えたとき、簡単に勝てたような気もする。そこでまた体を入れ替えての負けは「いかにも、らしい」負けかたなのである。
 その点、先日の魁皇と日馬富士などは、大関陥落するわけには行かない魁皇が「談合」をしても不思議ではないのだが、あの「逆とったり」と宙を舞う日馬富士はやろうとして出来ることではない。
 だから蒼国来のそれは約束通りでありがとうございましたとも取れるのだが、私は大先輩に初めて勝っての礼儀だと思いたい。解釈によってこれほど変る。



 豊真将と高見盛。いい一番だ。気合いを入れる高見盛を見られるのも今日と明日の二日のみ。豊真将が寄り切って勝つ。花道を下がるとき、豊真将の礼儀正しいお辞儀。これに感動しない日本人はいない。

 栃ノ心と豪風。前頭二枚目の栃ノ心に十二枚目の豪風だから、これは成績がよいことによる特別編成か。成績は6対1で栃ノ心。あがってくる栃ノ心は豪風を相手にせずにここまで来ていることになる。背のない豪風が平幕時代の白鵬を
 勝ち上げ気味にぶつかった栃ノ心の当たりはよかったが豪風が懐にうまく入る。栃ノ心のへたな相撲で危ない態勢。肩越しの上手から首を掴んでの強引な投げでなんとか勝った。栃ノ心勝ち越し。嘉風、豪風連続しての負けで白鵬の優勝が決定。四場所連続は初めて。
 せっかくふたりの活躍によって尾車が正面解説なのだからせめてどっちかひとりでも勝てばいいのに。うまくゆかんものだ。

 尾車は「上手が深すぎて、懐にもぐりこんだというより捕まったという感じ」と適確な表現。
 白鵬の強さに関して、「もしも私が相手だったら」とし、「向かいあっただけで勝てる気がしない。なにをしたらいいかわからなくなってしまうのではないか」と納得できる意見。北の富士の負ける方に工夫が足りないと責めるだけの意見よりよほど納得できる。先日の阿覧がそうだった。あれこれやろうと考えていたのだろうが、じっくり見て立たれるし、変化しようが何をしようがダメと、まさに蛇に睨まれた蛙だった。



 ここで場内がざわめく。異様な雰囲気。シルベスタ・スタローンが来たのだとか。隣にもうひとり大きな外人。見たことがある。ボディガードではあるまい。え〜と誰だっけと思い出そうとしていたらドルフ・ラングレンとアナに先に言われてしまう。ボックス席。小錦がいる。説明役か。ケイタイで写真を撮ろうとする観客をしずめる整理係は栃東(笑)。

 土俵上は若の里と猛虎浪。しかし観客の視線はスタローンに。アナは力士がかわいそうと同情。私が現場にいてもこんなふうにはならない。土俵だけを見ている。有名人に気を取られることはない。でも世の中こんなものか。



 若の里、連日の張り差し。精神的に悩んでいる力士がよくやる技ということが解る。今場所は初日から9連敗という闇の杜に彷徨った。
 2分を越える長い相撲。互いに決め手がなくて決まらない。そこから猛虎浪が連続する投げ、若の里が回りこんで回りこんで懸命に凌ぎ、今度は若の里が上手投げを連発。最後に決まった。大相撲に大拍手。猛虎浪、口惜しそう。ともに4勝10敗。



 安美錦と鶴竜。安美錦の変化。鶴竜、ばったり。安美錦、勝ち越し。安美錦のこれは読めるだろうに、鶴竜はなんであんなに単純な相撲を取ったのか。安美錦ぐらいのヴェテランになり躰を壊していると変化も認める。でも変化を認められるようになったらお終いだ。舞の海が頻繁に「変化擁護」をするが、すればするほど己の非力さを認めているようでみっともない。舞の海はいい。舞の海にそう言って擁護されるようになったらお終い。



 魁皇入場で拍手。相手は稀勢の里。今日一番の取組。ともに負けられないので注目の一番だ。魁皇が勝てば大関の地位確保。稀勢の里は小結から陥落して平幕へ。稀勢の里が勝てば勝ち越しと小結死守を千秋楽に持ちこし、魁皇は千秋楽が運命の一番となる。



 阿覧と徳瀬川。先場所初の対戦は徳瀬川の勝ち。阿覧が立ち合い前に突っ掛ける。そして変化。昨日と同じ。それについていった徳瀬川だがそのあとは引き技のみでいいところなし。絶対に勝てるパターンだったのに。だらしない。もったいない。なんともつまらない相撲。
 阿覧はこれで6勝8敗。アナが昨日私が懸念したように「7勝8敗なら小結に残れる可能性も」と語る。明日は魁皇。



 栃煌山と白馬。栃煌山、右ののど輪で白馬を浮きあがらせる。完勝、楽勝。10勝目。安定した強さだ。楽しみな大關候補となった。明日勝って11勝なら、来場所、来来場所に繋がって行く。



 さて魁皇と稀勢の里。結びと共に今日一番の注目の相撲だ。
 魁皇、勝ち越して大関の座を守る。場内大歓声。大関が勝ち越しただけで大騒ぎってのも本当はかなりおかしいのだけど。
 稀勢の里が右に変化。まわしの取れない四つから、寄り切る。勝った魁皇が安堵の息を吐く。
 稀勢の里は小結陥落。また出直しだ。二桁勝って東の関脇になる栃煌山に大きく差をつけられた。



 把瑠都と日馬富士。把瑠都が両手突き。左ののど輪が外れず、日馬富士はなにも出来ない。楽々と勝つ。しかしみっともないバタ足だ。摺り足ではなく、ドスンドスンという形に大きく足が上がっている。これは大怪我に繋がるだろう。心配でならない。

 白鵬と琴欧洲。白鵬の34連勝を止めた琴欧洲の見事な一番をよく覚えているが、「ここのところ白鵬の7連勝」ということは、もう丸一年数ヵ月も前になる。そう感じないのは、毎場所対戦の前にビデオを流すとき、勝った一番負けた一番を公平に流すからだろう。それでも毎場所やはり琴欧洲と把瑠都との対戦はおもしろい。
 白鵬勝って61連勝。外連のないふたりだから今場所もいい相撲。白鵬、右からのかちあげの立ち合い。一気に寄りきるかと思ったが残す琴欧洲もさすが。一度は土俵中央にもどる。しかしそこから休まない。自分は上手を取ったまま、琴欧洲にはまわしを許さず、責め続ける。上手投げは琴欧洲も凌いだが、そのあとに寄り切られた。昨日今日といい相撲が続いてうれしい。

 優勝インタビュウ。チヨの記録のあたりはマスコミの報道で固くなったが、そのあとはいつもどおりになったとのこと。
 明日は白鵬戦に異様な闘志を燃やす日馬富士戦。勝って全勝優勝してくれ。連勝記録を伸ばしてくれ。一番不気味なのはやはり日馬富士。明日も気が抜けない。明日白鵬が勝ち、秋場所が終ると、私の方もしばらく気が抜けそうだ。万が一負けたら、「なんで日馬富士なんかに負けたんだ」とそれを引きずる。勝ってくれ。



 阿覧ががんばっているので来場所の小結二人がまだ読めない。琴奨菊が9勝で有力だが明日栃ノ心が勝って9勝なら番付は上だから栃ノ心が有利だ。いや栃ノ心で決まる。阿覧が明日勝って7勝だと小結の可能性は高いから、空いている座はひとつになる。栃ノ心と琴奨菊のふたりが上がるのか、阿覧がひとつを取り、栃ノ心と琴奨菊のどちらかが上がるのか。ここも目が離せない。明日阿覧は魁皇のようだ。

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 白鵬とチヨとスタローン


 CINEMA TOPICS ONLINEというサイトから。
http://www.cinematopics.com/cinema/c_
report/index3.php?number=5267

 取組が終った後の交歓。写真の角度にもよるが198センチあるラングレンの背の高さが目立つ。白鵬は192センチ。



「結びの一番で白鵬関が勝ち優勝を決めると」
 白鵬の優勝は嘉風豪風が負けた時点で決まっていた。まちがい。
「スタローンが感染している様子は」
 なんか悪い病気に罹っているのか(笑)。おそまつ。

 商業サイトなのにこのザマだから嗤える。それでいて文章も写真もコピーされないようにプロテクトしてある。そんなところだけ一流(笑)。そういうのはそれなりの文章水準を保ってからだ。誰がこんなひどい文章をコピーするものか。笑いものにはするけど。

 千秋楽  オールカマーをシンゲンが勝って気持よくチャンネルを合わせる。シンゲン・ドリームジャーニー・トウショウシロッコで3連単131倍。



 武州山と土佐の海。武州山が勝って6勝、土佐の海2勝のまま。舞の海が言っていたように陥落しての来場所が心配だ。とにかく力士は十両が限界。幕下に落ちたら引退になる。

 千秋楽は正面が北の富士、向正面が舞の海のゴールデンコンビ。

 おっ、栃乃洋が千秋楽で勝ち越したらしい。よかった。競馬を見ていたので確認していない。よかったよかった。
 栃乃洋、栃煌山、栃ノ心の春日野部屋をアナ、北の富士がそろって褒める。アナはベテラン栃乃洋が率先して稽古する姿勢を絶賛した。北の富士が「あの親方がね、目を光らせているんだから」と褒めた親方は栃乃和歌。春日錦と木村山も春日野部屋か。幕の内に五人いるのだからたいしたものだ。あらたな隆盛期だ。



 蒼国来と黒海。解説が舞の海なので黒海の昨日の猫だましの話になる。「失敗でしたねえ」と笑い。なにより黒海がやったというのがおかしい。
 蒼国来が寄り切って新入幕勝ち越し。5勝7敗からよくがんばった。これからどうなるだろう。細身だ。どんな力士になるのか。でもこれでも130キロもあるのか。昔ならちっともちいさくない。いかにいま大型化しているかだ。これが五場所連続勝ち越しとか。荒汐部屋は大騒ぎだろう。

 このあと双葉山の映像を見るが、蒼国来のような体付きだった。



 北太樹と玉鷲。立ち合いが合わない。三度もやりなおし。北太樹が立つのに玉鷲が立たないのだが、どっちが悪いんだ、これ? 相撲は玉鷲が一方的に突き出した。舞の海が北太樹はいま腹がたっていられないのではないか、だいぶむかついた顔で帰っていったと意見。どうやら玉鷲が駆け引きに使ったらしい。それに対する批判が続く。北太樹は勝てば二桁だったから悔しいだろう。

「立ち合いを勝負の駆け引きに使うのは相撲道にもとる」の話になると、舞の海が「いや、わたしも使っていたので」と口篭もる。


 
 十両は豊ノ島が14勝1敗。雅山、豪栄道は12勝3敗。隠岐の生みも10勝5敗。ん? 人名に絶対的に強いGoogle-IMEが隠岐の海の名が出ない。珍しいこともあるものだ。
 野球賭博で陥落した連中はみな大勝ち。それだけ実力が違う。これはこれでおもしろい場所だった。

 来場所十両にあがるふたりが平成生まれで、「九州場所で初の平成生まれの力士が誕生」となるらしい。でも22歳だからそれほど若くも感じない。

 臥牙丸と白馬。白馬が左に変化するが、それで負けることの多い臥牙丸はよく見てついていった。臥牙丸が勝って10勝目。舞の海がどうせ変化するならもっと変われと意見。たしかに半端な変化ではあった。



 岩木山の引退会見のビデオ。脳梗塞だがまったく後遺症はないのを確認して安心。泣きっぱなし。思わず貰い泣きしそうになる。親方関の戸襲名。隣に境川。

 青森大を出た岩木山は会社務めをしていた。親友の死によりプロ入りを決意する。24歳の遅い入門だった。相撲その物はこどものときから取っているエリートだったが。

 今日その親友とのエピソードが紹介されていた。彼の死に、「自分は一番やりたいことをやっているか」と問うたのだそうだ。そしてプロ入り。いつもその親友のコトバが聞こえたという。十両優勝してから消えたとか。

 十年間の力士生活だったが、プロ入りしていなければ、いまどんな生活をしていても常に「もしもあのとき」がつきまとったろう。しあわせな人生決断だったと思う。病気で倒れなければもっとあと何年も現役で居られたが……。

 三場所の休場で無給の幕下まで落ちてしまう。それで決断しての引退。力士は他のアスリートと比して、その辺がシビアである。もっとも三十代、四十代で無給の幕下にいすわっているのもいる。そこが特殊世界だ。幕下という無給の世界でも芸達者なら「反社会的勢力」の宴会でタイコ持ちをやれば人並み以上に稼げるのだとか。御祝儀だけで年収2千万の幕下力士が居ると話題になった。

 岩木山はいい親方になるだろう。がんばってほしい。



 高見盛と垣添。岩木山は高見盛のひとつ先輩。高校時代、どうしても勝てなかったとか。しかしまあ青森は相撲王国だ。今場所最後の高見盛のパフォーマンス。もぐられて高見盛の負けかと思われたが、両差しになられながら吊り。場内大歓声。勝ち名乗りを受けての深呼吸、花道を下がるときの上を向いての姿勢にも笑いと拍手。千両役者もまた二ヶ月見られない。



 琴奨菊と豪風。私は豪風を応援。琴奨菊と栃ノ心の小結争いがある。勝って豪風は12勝。敢闘賞受賞が決定している。琴奨菊はこれで9勝。今日栃ノ心が勝って9勝目をあげると、来場所の小結争いは番付が一枚上の栃ノ心が有力になる。昨日弟弟子の嘉風が琴奨菊に負けているから仇討をしたことになる。



 双葉山の69連勝目と安芸ノ海に負ける一番が流れる。当時の立ち合いはきれいだ。輪湖時代の中腰で立つひどいのにはいつごろなったのだろう。いまは本当によくなった。

 北の富士はひたすら双葉山の時代とその成績を礼讃するが当時は部屋別総当りではない。一門対決だった。最大勢力の出羽海部屋の力士が半分以上だった。もう次の理事長も出羽海と決まっているような出羽海絶対時代である。獨立も許されなかった。出羽海一門から初めて獨立して自分の部屋を築こうとし、結果破門になったが九重部屋を創立したのが北の富士の師匠の千代の山だ。
 部屋別総当たり制を導入することになったとき、一門で当たることを嫌った親方には、部屋を廃止して統合しようかという流れもあった。あらゆる意味で意味でいまとは違っている。

 双葉山は立浪部屋所属。最大勢力の出羽海ではなかった。幕内の半分を占める出羽海一門はなんとかして双葉山を負かそうと智慧を出しあったという。一場所11戦の年二場所だから調整は難しかったろう。だが半年あればケガをしても治せる。三年間負けなしで作った記録だ。だが相手は総当り制の今の方が厳しい。双葉山が年六場所、部屋別総当たり制のいま現役だったら、100連勝したかも知れない。でも30連勝程度でケガをして休場に追いこまれたかも知れない。単に当時を礼讃するだけで今を否定してはならない。

 その点の話になり、北の富士も「それは認めねばなりませんね」と同意。
 双葉山が時津風理事長だったとき北の富士は大関。全勝優勝したこともある北の富士の連勝記録は21。彼が白鵬の記録更新を望まないような意見を言うのは自分のいた時代の否定になるからであろう。しかしそれは理論的というよりはかなりの部分感情的なものであろう。



 栃ノ心と霜鳥。がっぷり四つから栃ノ心が寄り切る。よし、9勝目だ!
 霜鳥は正しくは霜鳳。人名は万能のGoogle-IMEと思ったが、芸能方面は強くても力士の名は苦手と知る。Google-IMEは利用者が入力するものをフォローしている。変換されないということは、それだけ力士の名前を入力しているひとがいないということだ(笑)。さびしい。出なくて当然か。しかし今までGoogle-IMEはこと人名等に関してはスーパーIMEだったのでちょっと失望。



 豊真将と旭天鵬。旭天鵬がピタンと大きな音のする張り差し。豊真将はひるまない。頭を下げ前みつをとって寄り切る。いい相撲だ。理想的な張り差し破り。旭天鵬があんなことをするとは失望。豊真将は負け越しはしたが7勝8敗。よくやった。これで来場所に繋がる。



 白鵬と日馬富士のビデオが流れる。初場所で負けた一番。やはり日馬富士は怖い。今日の結びはドキドキする。

 若の里と土佐豊。若の里がじりじりと力を見せつけて勝つ。5勝目。こういう相撲を取ればいいではないか。なんだあの張り差し連発は。

 時天空と徳瀬川。がっぷり四つになり徳瀬川が寄るが時天空が残す。場内が沸く。三度目の寄りで勝った。時天空は2勝13敗。こんなこともあるひとだと思っていたら、アナが「幕の内6年目。どんなに悪くても6勝はしていた」と言ったのでおどろく。そうか、こんな形の大負けがあったと思っていたが、最悪でも6勝9敗だったのだ。見直した。そして今回の初めてのこの大負けは衰えかと心配になる。



 鶴龍と嘉風。嘉風も敢闘賞受賞。尾車部屋の打ち上げは盛り上がるだろう。
 鶴龍、張り差し。嘉風に攻め込まれるが、はたきこんで勝つ。9勝目。この張り差しは今場所元気のいい嘉風の突進を止めるのには戦略としてあったかもしれない。しかしやはりそれにひるまない嘉風につっこまれている。勝ったからいいが負けたら敗因になるところだ。

 稀勢の里と安美錦。稀勢の里が勝って7勝目。これだと小結から落ちてどれぐらいだろう。前頭二枚目ぐらいか。四枚目で勝ち越した安美錦も二枚目ぐらいか。栃ノ心が小結で琴奨菊が筆頭だろう。



 栃煌山と朝赤龍。栃煌山は10勝、朝赤龍は9勝。今場所の栃煌山は落ち着いていた。力をつけていた。今日も強かった。どんと当たって朝赤龍がかってに転んだような内容。栃煌山の圧力に砕けたような中身だ。朝赤龍は頭を下げての低い立ち合い。最高の形で突っ込んでいる。なのに受けた栃煌山はまったく動じない。左のおっつけで朝赤龍はこけてしまった。これは強い相撲だ。アナも北の富士も本格的大関候補が現れたと大絶賛。表情を変えない地味さもこうなると魅力的に思えてくる。安美錦の変化に負けていないと12番勝っていたことになる。この安定度はいい。来場所が楽しみだ。技能賞受賞。



 魁皇と阿覧。ものすごい魁皇コール(笑)。
 阿覧が変るなと思ったら、やはり変った。魁皇に引っかかるなよと念じたが引っかかってしまった。関脇阿覧これで7勝。小結残留か。気分の悪い相撲だ。北の富士も苦言。場所前インタビュウでは「前に出る相撲」などと殊勝なことを言っていたが結局はこれ。終盤は変化連発。嫌いだ。

 カンナオトが現れた。なにしに来たんだ、コイツは。総理大臣杯を渡して人気取りに来たのか。



 把瑠都と琴欧州。ふたりとも期待外れだった。琴欧州の気の弱さ、把瑠都の雑な相撲。序の口優勝のころから把瑠都ファンの私が白けているのだから問題は深刻だ。
 琴欧州が勝って10勝、把瑠都9勝。ひどい結果。大味な突っ張り合い。琴欧州が身を交わすと把瑠都は背中を向けてしまった。チヨスのような落日の大関ならともかく、ふたりのこの成績はひどい。白鵬以外には負けずに来て欲しかった。
 白鵬の連勝という大きなテーマを除くと、上位に関してはつまらない場所だった。下位の相撲におもしろいのが多かったので、それはそれで満足しているが。



 さて白鵬と日馬富士。今日は満員御礼。七回目の全勝優勝。
 なんとしても白鵬に勝って、来場所に繋いでもらわないと困る。白鵬の連勝しか楽しみのない場所だった。そしてその内容は、わたし的には満足の出来ない張り差しの多い相撲が多かった。ここで白鵬が負けたら今場所はなんだっのだとなる。来場所になんの楽しみもなくなる。勝ってくれ。
 変化もあるし、怖いな。どんな相撲になるんだ。がっぷり四つになっても気を抜けないし。日馬富士は怖い。「はるまふじぃ」という声援も飛んでいる。そんなのもいるのか。

 バカがまた張り差し。左で張る。ヒヤッとする。日馬富士が鋭く突っこんだが下がったのは一歩。突進力を吸収した形。そこから一気に寄りきった。

 ぶあつい賞金の束を受けとるとき、白鵬は両手で捧げるように掴み、深く一礼する。ちょこんと紐をもち、「酔っ払いの寿司折りじゃないんだ」と内舘に指摘された朝青龍とは違う。

 花道でスーツ姿の白髪の男が迎えた。熊ケ谷かなと思ったが、いままでこんなことはあったのか。ファンがいきなりあんなことはしないし許されないよなと思ったら、やはり熊ケ谷だった。師弟のうるわしさがよく出ていた。

 花道の奥には旭鷲山。来日していたのか。朝青龍とは犬猿の仲だが、誰からも声が掛からず帰国するしかなかった16歳の白鵬を宮城野部屋に紹介した縁で白鵬とは仲がよい。白鵬が旭鷲山を見てニコっと笑った。

 62連勝。よかった。ともあれこれで来場所に繋がった。四場所連続全勝優勝はもちろん史上初。

 そういや先場所天皇賜杯がなくて涙を流したとき、天皇陛下から書翰が届いたのだった。陛下のお心遣いがうれしかった。今場所は天皇賜杯もある。係がピカピカに磨き上げたとか。

 ところでカンナオトは上がるつもりなのか。そんなものは見たくないのだが。あいつは君が代を歌わないので有名だ。いま歌っているのか。口元を映せ。

 放駒新理事長も初の大仕事。優勝旗を渡すのは富士桜だ。

 カンナオトが来た。「62連勝おめでとうございます」と一言添えた。こいつが今日、君が代を歌ったか興味がある。



 白鵬の優勝インタビュウはよかった。あらためて朝青龍の軽さ(笑)とはちがうと感じた。アスリートとしての能力はともかく、朝青龍は大阪場所で「おおきに」と発するようなサービス精神に飛んだ頭の回転の早い男だったが(その是非はともかく)、白鵬のように相撲史を勉強するような姿勢はなかった。白鵬は一種の相撲オタクのように古いヴィデオを見たり本を読んだりして熱心に勉強している。今日も双葉山の記録をふられたらまずは江戸時代の谷風の記録(63連勝)に迫りたいといった。こういうのは考えて設定すれば出る言葉だが、彼の場合はそういう勉強をしているから計算づくではなく出てくる。それがいい。結びのひと言「精進いたします」もよかった。



 連勝に関しては今場所の終盤が怖かった。特に今日の日馬富士戦だ。それを超えたから、双葉山の69連勝に迫るのは来場所の前半になる。だから取りこぼしさえなければ達成は可能だ。当然飛んだりはねたりの奇襲も出てくるだろう。そこを乗りきれるか。前半でいちばん怖いのは小結の鶴龍戦だ。これが初日か。北の富士は、初日は栃煌山と予想。関脇だ。私は鶴龍と思うが。あと前半戦では安美錦もいる。これも怖い。

 相変わらず北の富士の言いかたからは「下手すると双葉山の記録が更新されてしまう。相撲協会はそれを防ぐために強敵をぶつけてくるだろう」というニュアンスが感じられる。北の富士はそうだろうが協会もそうなのか。モンゴル人横綱に双葉山の記録を抜かせないために、初日に関脇をぶつけるようなことをするのか。もっとも、正攻法の栃煌山は白鵬からすると怖い力士ではない。よほど鶴竜の方が怖い。

 都副知事の猪瀬がなんか渡している。さっきカンと一緒にいるところが映っていた。都から贈るものってあったっけ。いま東国原。これは宮崎牛。知っている。東国原も中央政界に出るようだから宮崎県知事としてはこれが最後か。

 九州場所初日は11月14日。7日目に69連勝。中日に70連勝をかける。

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技能賞の栃煌山と、敢闘賞の嘉風と豪風。
殊勲賞は4場所連続で該当者なし。横綱は全勝だから横綱を倒した「殊勲」がいないのはもちろん、大関を倒しているのは何人もいるが、その大関が優勝に絡んでいないから殊勲とはならない。
 総論  白鵬嫌いの視点──くだらん日本人主義

 白鵬嫌いはもちろん私ではない。私は大好きだ。親方連中についてである。
 今場所、白鵬の連勝が進むにつれ解説の親方連中の発言に「こいつら、白鵬の連勝を好ましく思ってないな」と思うものがいくつもあった。口の軽い北の富士などアナが双葉山の69連勝の話をすると、「68ぐらいで止まった方がいい」とまで言ってしまった。モンゴル人に日本人の記録を抜かれたくないという本音がつい出てしまったのだ。そういう気持ちのまったくない私には呆れた発言だった。

 その他の親方も、白鵬がすばらしい相撲で勝ったときでも、それを誉めずに負けた力士を責めるのである。「ここで攻めなきゃダメだ。そうでなきゃ勝てない」などと現役時たいしたことのない親方が不快そうに呟くのにはこちらが不快になった。談合横綱千代の富士の記録に迫り、抜く時ですらそういう発言があったのに、いよいよ「角聖」とまで呼ばれた双葉山の大記録にすら迫りそうだとなると、この種の発言が露骨になってきた。今日十三日目の友綱もそうだった。解説その物はとてもよかったので失望した。

 救いはアナにあった。こちらは大記録誕生の瞬間に自分が実況できることに素直に喜んでいた。こどものようにはしゃいでいて微笑ましかった。ひねくれた解釈をするなら、NHKの人種差別などと挙げ足を取られまいと無邪気を装っていたとも取れるが、そうは思わない。アナはごくふつうの相撲ファンとして大記録達成が楽しくてしょうがなかったのだと思いたい。

 アナは日本中の相撲ファンが楽しみにしているという視点で語っていたが、親方衆のそれからもわかるように、「日本人」にこだわる相撲ファンには、大鵬や千代の富士の記録がモンゴル人横綱に抜かれることをよしとしない連中もいたことだろう。かくいう外国人力士大好きな私ですら、ガチンコでがんばった貴乃花の優勝回数が品行の悪い朝青龍に抜かれるときは、朝青龍大好きなのに、なんとなく釈然としないものを感じた。とはいえそれは朝青龍に問題があり、好きではあるがあの行状には呆れはてていたからだ。私は一貫してそれを彼よりも師匠の高砂にあるとしてきたが。白鵬がそれをするのにはなにも抵抗はなく素直に拍手を送る。

 もうひとつの救いは貴乃花や千代の富士が白鵬を素直に讃えていたこと。大横綱であった彼らだからこそ白鵬の連勝の凄さが解るのだ。一方たいしたことのない相撲とりだった親方連中は、齢を取っていることもあり、白鵬の凄さに驚嘆する力士感覚よりも、相撲協会を運営している日本人の感覚の方が先だっている。その差も際立っていた。
 中でもあの性格の悪い千代の富士が絶讃していたのは印象的だった。金でまとめた自分の連勝ですらあれだけ苦労したのだから(53の内、30以上買っていたと言われている)白鵬がいかに凄いかがわかるのだ。それは数字よりも精神力だ。買った星の合間にガチンコがある。負けるのではないかという不安はたいへんなものだったろう。自分がいかに苦しんだかを知っているからこそ白鵬を素直に讃えられたのだ。

 総論であるからして千秋楽が終ってから書く項目なのだが、あまりにもそれが目につくので早めにひとつ書いた。



 千秋楽が終って。
 北の富士がなんどもそれ(双葉山の記録が白鵬に抜かれることに対する危機感、嫌悪)を口にしているのが醜い。本来ならNHKに抗議が殺到、なのだがそうならないのは、同意する日本人か多いからか。断固白鵬を支持する!
 ただしナショナリズムとはそういうものであり、どこの国でも偏狭だ。移民の国のアメリカでもイチローの記録に対してそういう姿勢がある。日本人は世界一それに対して肝要な国民だ。だからこそ北の富士のセコさも笑ってみていられるのだが。

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 もうひとつの大記録!

 2チャンネルの相撲スレで白鵬の達成したもうひとつの記録に気づいた。話題にならないので私も忘れていた。
 白鵬は九州場所全勝優勝のあと初場所で12勝3敗、それから4場所連続で全勝優勝60勝、ということは、通算6場所で「87勝3敗」という「年度を問わない通算6場所」の新記録を達成していたのだった。以前の記録は大鵬と北の湖の「85勝5敗」。それを白鵬が昨年「86勝4敗」で更新し、これはもう更新不可能の大記録と呼ばれた。それを軽々と越えたことになる。あまりに連勝が偉大なので話題にすらならなかったがとんでもない記録だ。
 もし九州場所で全勝すると「年度記録」で同じく「87勝3敗」の記録が生まれる。



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 三役の座



 う〜む、むずかしい。東西の関脇が栃煌山、鶴竜なのは確定。6勝なら前頭まで陥落が決定で読みやすかった阿覧が終盤変化技多発で3連勝、7勝した。ひとつ負け越しだから常識的にはこれが小結になる。先場所の稀勢の里もそうだった。三役には三役手当てがつくし、それに阿覧はそれに固執している。見事な銭ゲバ的執念だった。まさかロシア人で相撲内容が悪かったから前頭まで降格とは行くまい。

 となると残る小結の座はひとつ。栃ノ心だ。琴奨菊は前頭筆頭だろうが、「張出小結」を作って遇する可能性もある。前頭筆頭は安美錦と5枚目で勝ち越した白馬。前頭上位に、陥落する時天空、若の里、旭天鵬、高見盛の代わりに、朝赤龍、北太樹、黒海、木村山が上がってくる。豊真将は一枚下がるだけだ。7勝の価値は大きかった。

 琴奨菊を張出小結で遇するかどうかが最大の興味になる。私は大好きな栃ノ心の小結復帰確定なので満足。



 アナはしきりに「大関以上でただひとりの日本人魁皇」を連発する。
 来場所、琴奨菊に張出小結を適用しなかったら、「三役以上で日本人は魁皇と栃煌山だけ」になる。魁皇はいるだけでいい文化財みたいな人だから、当然期待と注目は栃煌山に集中する。


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 どうでもいい餘談──思いファイル処理

 画像を多用したファイルなので処理のひとつひとつが重くなってきた。7の64OS、メモリ5GBなのだがどうしようもない。これぐらいが限界のようだ。まあひとつのファイルでこれ以上大きいものを私が作ることはないが。
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 ファイルが重くなってしまいホームページ・ビルダーでは記入できない。変換まで時間が掛かる。最新のOSを使いメモリもたっぷりあるのにどういうことだ。しかたないのでテキストエディターで書く。それをここに貼る二重手間。

 日曜夜にNHKの番組で恒例の優勝力士生出演を見た。午後九時半からだと思っていたのでチャンネルを合わせて待っていたら始まったのは五十分からだった。

 月曜朝はどのワイドショーも白鵬優勝を取りあげていた。しかし内容は例によって白鵬を讃えるより、日本人力士がいないとか満員御礼が四回しかなかったとか景気の悪いことばかり。そしてまたお馴染みの相撲評論家が顔を出して双葉山の記録とは意味が違うというような一席をぶつ。やくみつるが「双葉山が三年間負けなかったという記録を、白鵬も三年間負けなし270連勝を達成して欲しい」と言ったのが気分が良かった。

 昼のワイドショーも同じようなもの。スタローンとの映像も何度も流れた。スタローンは自分の映画の宣伝に来たのだが、旧知の千代の富士に会いに行き、優勝した白鵬と絡めたのは宣伝的に成功だったろう。うまい。

 夕方になると編集時間もあるので多少凝ったものも出て来る。宮城野部屋の近くに白鵬が毎日のように通う喫茶店があり、そこは従来の優勝パレードの道筋からはズれているのだが、白鵬が店主に店の前を通ると約束したとか。カメラがその喫茶店主の作った「祝62連勝」の手書き看板で待っていると白鵬が通ってくれる。



 今回の旗手は安美錦が務めていた。露払いをやっているし異論はないのだが、安美錦は白鵬を倒す可能性の高い技巧者だ。宮城野部屋にまともな力士がいないのが原因だが、本場所でぶつかる力士に土俵入りの露払いや太刀持ちをさせたり、こういう優勝パレードで旗手を務めさせるのはいかがなものかと思った。一門の十両あたりの力士を使えば問題はあるまい。安美錦は双葉山の記録更新が掛かる来場所前半戦で確実に白鵬に当たる力士である。その辺を考えるべきだと思った。これでもし安美錦が変化技のようなもので白鵬の連勝を止めたとして、その後も露払いを続けるのだろうか。なんとも不可解。



 白鵬と並んで話題になっていたのが魁皇。みのもんたなどは朝から大騒ぎ。この文章で「引退危機12回」と書いた部分があるが13回目だったらしい。面倒なので手直しせず。12回とは「今まで凌いできた回数」のようだ。最高回数はチヨスの14回(笑)。来場所の魁皇は御当地の九州で勝ち越すと思うが、間もなくタイ記録の14回に並ぶだろう。それを更新して(笑)、とにかく千代の富士のインチキ記録を追いぬいて欲しい。



 尖閣諸島の問題で国辱的「船長釈放」をやり国民を絶望させているのに、あたたかい声援でももらえると思って人気取りに来場したカンナオトには、激しい野次が飛んだとか。テレビでは拾ってなかったのでわからなかった。あるだろうとは想像したが。
 こういうのってヘッドフォンがいい。以前深夜なのでヘッドフォンで映画を見ていたらスピーカーからではわからないいろんな効果音が入っているのでおどろいた。高性能のもので聞くとその臨場感はもっとらしい。

「売国奴!」「辞めちまえ!」
 大相撲秋場所の千秋楽だった26日夕、菅首相が優勝した横綱白鵬に総理大臣杯を手渡すために東京・両国国技館の土俵に上がると、客席からすさまじいヤジが飛んだ。その場に居合わせた宮崎県の東国原英夫知事は「公衆の面前でのこういう野次はちょっと辛い」と、自身のブログに記した。


 
とあったので東国原のブログに行ってみる。「こういうヤジを受けるのだから首相はたいへんだ」と批判色を抑え控え目にまとめてあった。
 そうなることが目に見えているのに勘違いして来場するカンナオトはアホだ。日本の存亡に関わるようなとんでもなくたいへんなときなのだ。じっと官邸に籠もっているべきだろう。なのに白鵬の連勝に乗じて、なにか言えばかつての小泉さんのような人気が得られるのではないかとのこのこ出て来るところにこのひとの馬鹿さ加減がよく出ている。もういちど四国でも回ってこい。




壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

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