平成二十一年夏場所
2009年5月10日〜


 
初日
 琴欧洲婚約

寿  5月6日、琴欧洲の婚約が発表された。日本人妻である。

大相撲の大関琴欧洲(26)=佐渡ケ嶽、ブルガリア出身=が5日、千葉県松戸市内の佐渡ケ嶽部屋で会見し、愛知県一宮市在住の元会社員・安藤麻子さん(29)との婚約を発表した。琴欧洲は日本人と結婚することにより、将来、日本国籍を取得する可能性も否定せず、日本相撲協会に年寄として残る道筋も出てきた。

  ◇  ◇

 国際結婚となるカップルは2人そろって会見。琴欧洲は「一緒にいると安心できます。思い出は一つに絞れないです」とのろけた。日本への帰化については「これから考えます。前向きに?はい」と否定しなかった。

 5年前の名古屋場所で一宮市に宿舎を構える佐渡ケ嶽部屋を訪れた麻子さんに、琴欧洲がアタック。昨年夏場所の優勝時から結婚を意識し、同年のクリスマスに琴欧洲からプロポーズした。(デイリースポーツより)

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きょう

こんやく かいけん しました

ふたり で いっしょ に がんばります

これからも おうえん よろしく おねがい します


きんちょう しました


http://kotooshu.aspota.jp/2009/05/post_81.html

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 若いアスリートはなるべく早く結婚した方が良い。まして異国でがんばる外国人アスリートならなおさらだ。出来るなら年上がいい。将来の離婚とかはともかく、二十代前半のアスリートは年上嫁さんに支えてもらうのが理想だ。把瑠都も琴欧洲も早く結婚したほうがよいと思っていた。連続しての嫁取りはまことに目出度い。

大相撲の関脇・把瑠都(24=本名・カイド・ホーヴェルソン、エストニア出身、尾上部屋)が20日、ロシア出身で日本語学校に通うエレナさん(26)と結婚した。この日、東京・大田区役所に婚姻届を提出、27日に大阪市内で行われる尾上部屋の激励会でお披露目される。05年夏に、2人はエレナ夫人の母が経営するロシア料理店で知り合い、交際をスタート。昨年秋場所千秋楽の夜、関脇昇進を確実にした把瑠都がプロポーズした。伴侶を得たエストニアの怪人は「彼女のためにも一生懸命頑張って大関を目指したい。子供は5人欲しいね」とコメントを発表した (09/2/21スポニチより)

 把瑠都は2歳年上のロシア人嫁さんだった。琴欧洲は3歳年上の日本人妻。
 これを機会によりステップアップして欲しい。心からおめでとう。

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阿覧は同じロシア人の娘だった。

大相撲の幕内阿覧(24)=本名アラン・ガバライエフ、ロシア出身、三保ケ関部屋=が27日、ロシア人のソティエワ・マリーナさん(21)と昨年6月に結婚していたことを発表した。

 東京都墨田区の三保ケ関部屋で記者会見した阿覧は「関取になれたから結婚しようと思った。彼女の全部が好き。子どもは3、4人ほしい」と照れ笑いし、着物姿のマリーナさんも「彼の全部が好き」とのろけた。

 2人は出身地が同じ北オセチア共和国のウラジカフカスで、5年前から交際をスタート。会見に同席した師匠の三保ケ関親方(元大関増位山)は「力士は早く家庭をもった方が落ち着くんだよ」と目を細めていた。
(09/1/27 スポニチより)

 

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 と思ったら把瑠都は玉乃島にいいところなく寄り切られ、琴欧洲は豪栄道に振りまわされ転がされていた。なんともはや。



 本場所直前のモンゴル力士ゴルフコンペ

 

朝青龍:白鵬…疑惑のモンゴル仲良しゴルフ

 大相撲夏場所(東京・両国国技館)の初日を2日後に控えた8日、朝青龍(28=高砂部屋)、白鵬(24=宮城野部屋)の両横綱らモンゴル出身力士数人が千葉・市原市でゴルフコンペを開催した。この日の取組編成会議で、朝青龍の初日の対戦相手に決まった新小結・鶴竜(23=井筒部屋)が居合わせていたことも判明。八百長疑惑に揺れた角界にとって本場所直前の「仲良しムード」は誤解を招く軽率な行動で、日本相撲協会内からも批判の声が上がった。

 前半のラウンドを終えてゴルフ場のロビーにもどってきた朝青龍は、実に楽しそうな顔をしていた。白いポロシャツに、赤のサンバイザー。報道陣の姿を確認すると一瞬驚いたように「きょうは取材にならないよ。ゴルフをしないなら帰って」。しかし、淡々と語る表情は自分の置かれた立場を全く理解していないようだった。

 朝青龍は以前からモンゴル出身力士によるゴルフコンペを計画。夏場所後は自身がモンゴルに帰国するため、場所直前の開催を強行した。午前10時半に始まったコンペには横綱・白鵬らが集結。その1時間前から両国国技館で開かれた取組編成会議で朝青龍の初日の相手に決まった鶴竜も、プレーこそしなかったものの駆けつけていた。
 白鵬や鶴竜はオフだったが、朝青龍は高砂部屋での朝稽古をサボってゴルフ場に直行した。しかも、優勝を争う両横綱が場所2日前に同じ場所でゴルフに興じ、初日の対戦が慣例となっていた西横綱(朝青龍)と東小結(鶴竜)が行動をともにしたことも問題だった。相撲協会は八百長裁判で全面勝訴したばかりだが、気迫でぶつかり合う力士たちが本場所直前に“親睦会”を開いていては真剣勝負に疑問を抱かれても仕方がない。
(毎日新聞より)

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 批判とともに擁護もあった。例えば「トクだね」のヅラオグラは、「ぼくはゴルフが大好き。ゴルフをやって何が悪いと言いたい」と言っていた。

 いろいろ意見はあるようだが、本場所の二日前にやるのは正常な神経ではない。場所後に巡業にも影響与えない時期を選んでやればいい。
 しかしその「正常」とは、「相撲道」や「日本人的」な感覚の話だ。モンゴル人の朝青龍にそれを求めても無理なのだろう。いわゆる「瓜田李下」の感覚だ。そんなものは芥子粒ほどももっていない。理解しろと言っても通じない。まして今は最高権力を持っている。「強ければなにをしてもいいはず」という騎馬民族の論理で生きる朝青龍に、農耕民族の和を説いても無駄だ。

 朝青龍の異常さは以下の二行に集約される。こんなひとに日本人的感覚を押しつけても通じるはずがない。「相撲道」や「日本人的感覚」は、他者の目、世間を気にすることだ。自分のことしか考えていない朝青龍にそんなものがあるはずもない。

朝青龍は以前からモンゴル出身力士によるゴルフコンペを計画。夏場所後は自身がモンゴルに帰国するため、場所直前の開催を強行した。

 異国でがんばるモンゴル人力士の結束は固い。誰も朝青龍に逆らえない。白鵬の「正しい横綱」、というかプロレスのベビーフェースだが、これも単なる幻想のイメージであることがよくわかる。本物の「正しい横綱」なら、「本場所前にそれをしてはならない」と朝青龍に進言する。当然欠席だ。ニコニコして親睦ゴルフに出かけている白鵬もまた日本的な相撲道とは無縁なモンゴル人である。

 いちいち腹を立てていたら相撲を観る気がなくなる。割り切るしかない。

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 ○朝青龍 ●鶴竜

 バカ青龍が初日から張り差し。さらには何を考えたのか吊り落としまで仕掛ける。これは千代の富士が自分に逆らう寺尾を本場所で制裁したように、また本場所で敗れたバカ青龍が稽古で高見盛にこれで復讐したように、言うことを聞かない相手にやる仕置きの技だ。忠実な犬の鶴竜にやる必要などない。それが失敗して体勢を崩し、鶴竜に攻めこまれ、必敗態勢となった。ヤッホーって気分だったが(笑)、そこから強引な投げの打ちあいになり、ぎりぎり勝った。惜しかった鶴竜。
 おもしろい。文句なしにおもしろい力士だ。その意味では千両役者である。
 
二日目
 高見山にさよなら

 今場所限りで定年を迎える東関親方(64=元関脇高見山)が、国技館正面入り口の木戸(切符切り)で最後の協会の仕事をこなす。10日も切符を差し出す観客に笑顔で声をかけた。最後の場所と知るファンからサインを求められ、花束も贈られた。「感激です。いつも通り、ニコニコ笑って最後まで頑張ります。高い切符を買ってくるお客さんは、みんな神様だから」と、千秋楽まで木戸の「顔」として観客に接する。

 東関部屋はどうなるのだろう。候補は高見盛と潮丸だ。高見盛に引退して欲しくないので心配していた。同じような形で琴ノ若の引退がある。おそらく旭天鵬も大島の引退と共にまだまだ幕内でやれる力がありながら引退するのではないか。考えるだけで今からもう気落ちする。旭天鵬には50ちかくまでやってほしいのだが。

 どうやら十両の潮丸が引退して継ぐようだ。となると引退後の高見盛はどうなるのだろう。と心配してもしょうがない。一日も長く高見盛を観られるしあわせにひたろう。

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 ○豪栄道 ●琴光喜

 琴光喜が張り差し。功を奏して豪栄道を追い詰める。豪栄道、引いてひたすら逃げる。琴光喜追い掛ける。土俵際、捕まえられず転がりおちる(笑)。ま、張り差しが負けて気分がいい。

 ○朝青龍 ●豊真将

 昨日の反省もなくきょうもバカ青龍は張り差し。豊真将、ひるむことなくついて行くが、昨日かなり肘を痛めたようだ。バンテージが痛々しい。バカ青龍の假病テーピングとはちがう。低い態勢で落ちずにがんばったが、しつこいはたき込みにとうとう落ちてしまった。

 誰かバカ青龍の張り差しを逆手にとって勝ち、そんな戦法は通じないのだと知らしめてくれないものか。無理か。

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 白鵬22連勝

 連勝ストップに関してすこし心配になる何人かの力士がいる。そのひとりが今日の安美錦。なにかやるのではないかと思っていた。が、正面からの立ちあい。激しい差し手争い。そのまま圧力をかけてあっさりと押しだした。ある意味、すごい相撲である。なにもしていない。なにもさせなかった。
 いまの白鵬に正攻法では勝てない。といって安美錦に変化は求めない。立ちあい変化でバッタリはもうあの一番だけで充分だ。今日のような相撲巧者安美錦と真正面からぶつかり、素速い差し手争い、差し手争いでは負けていないのに、徐々に白鵬の圧力につぶされ、安美錦が土俵を割るという相撲。これはこれで白鵬の強さが伝わってくる。
 連勝がどこまで伸びるか。今場所の楽しみのひとつだ。

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 千代大海、2連勝

 今場所もなんとか勝ち越して角番脱出。大関在位記録を伸ばして行くのか。
 2ちゃんねるの相撲板に「1年24勝でいられる大関」という極端な表があった。全休で角番、翌場所8勝7敗で大関保持。また全休。8勝7敗で保持。これを繰り返していれば1年に24勝66敗で大関安泰なのだ。こんなバカなことはない。「角番3回で陥落」とか規定を変るべきだろう。

 魁皇も2連勝。こちらは強い相撲。まるで全盛期のような。わからないひとである(笑)。

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 把瑠都いいとこなし

 まったく覇気が感じられない。2連敗。問題は中身だ。休場の危機か。
 
三日目
 安美錦、快勝!

 ○安美錦 ●朝青龍

 バカ青龍、三日連続の張り差し。しかしうまく入らず片口に当たる。安美錦、ひるむことなく頭を低くして突っこむ。バカ青龍、思わず引く。そのまま土俵を割る。安美錦、完勝、快勝。愉快愉快。思わずテレビの前で拍手。
 やはりこのひとが上位にいてくれないと困る。昨日も敗れはしたが何かあるのではないかとわくわくした。今日もやってくれるのではないかと期待していたら見事な勝利。

 バカ青龍は明日も張り差しだろうか(笑)。

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 白鵬、ひどい相撲

 豊真将の低い立ちあい、頭をさげたつっこみに思わず引いてしまう。豊真将の躰が流れてかろうじて勝つ。思わずにが笑い。なんともひどい勝ちかただった。この程度の横綱にアナは「磐石」を連発しすぎである。
 解説の錣山が愛弟子の豊真将に関して、「上位でいちばん豊真将が勝つ可能性のないのが白鵬」と白鵬を讃えていたが、今日はあとちょっとで勝てた。惜しかった。
 これに反省して明日からの相撲内容がよくなるといいが。

 相変わらず負けて下がるときの豊真将のお辞儀がうつくしい。

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 龍二さん、化けの皮が……

 13度目の角番、2連勝だった千代大海が栃煌山に負ける。力のない突っ張り、栃煌山が耐える。あとは引くからついて行けばいい。龍二さん、引いた。栃煌山、ついて行く。それで勝ち。
 アナが「栃煌山はまるで引くのを待っていたかのように」って、そりゃ誰でも待っている(笑)。あの押しさえ耐えればすぐに引くのだから。
 負け越して引退して欲しい。嘲笑するのに疲れた。

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 把瑠都、初日

 鶴竜相手に今日は強い相撲だった。休場は心配しなくていいのか。でも顔に覇気はなく憂鬱げ。体調は悪いのだろう。

 新小結鶴竜は3連敗。厳しい地位だが先場所も前頭筆頭だから同じようなもの。前半で横綱大関を何人か食っておかないと後半が苦しい。初日に朝青龍を倒していたならすべては変っていたろう。あのチャンスを逃したのは大きい。

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 豪栄道、3連勝

 琴欧洲、琴光喜、魁皇と破って3連勝。このままどこまで行けるか。10勝はかたいか。ただし相撲内容はよくない。
 初日の琴欧洲に関して錣山が「ちいさい豪栄道に合わせた相撲を取っている。自分の相撲をとれば強いのに」と語っていた。同意である。合わせてしまうのも気が良いからだろう。

 
四日目
 知らないうちに白星を重ねて

○琴奨菊 ●阿覧

 アナが阿覧のことを、「知らないうちに白星を重ねて、いつのまにか上位に来ていた」と言った。忍者じゃないんだから(笑)、「知らないうちに白星を重ねて」ってアンタ、毎場所実況しているんだから「知らないうちに」じゃないでしょ。阿覧も隠れて相撲とって、こっそり白星を重ねてきたんじゃないんだから。
 言いたいニュアンスはわかるが、ひさびさに「こりゃ失礼だよ」と思ったひとことだった。

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 把瑠都に笑顔なし

 把瑠都が栃煌山を破って星を五分にもどした。2勝2敗。しかし笑顔はない。このひとの魅力は負けても苦笑いしている、勝負師としては失格でも、その大らかさにあった。今場所はそれがない。勝っても負けても苦虫を噛み潰したような顔をしている。なにがあったのだろう。よほど体調が悪いのか。心配だ。

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 キラー魁皇の魅力

 魁皇が玉乃島を楽々と破った。玉乃島は古傷のテーピングされた左肘を押えている。決まり手は「引っ掛け」。ヴィデオを観ると派手な小手投げではないが、確実に肘を決めていた。キラー魁皇である。

 知らない人もいるみたいなので書いておくと、「キラー魁皇」は「キラー猪木」のもじりである。『週刊ファイト』の故・井上編集長が、加齢と糖尿病から痩せ細り体力の衰えてきた猪木の今後に対して送ったのが「キラー猪木になれ」だった。今までの受けて相手を光らせ、そして叩き潰すのではなく、パンクラス的秒殺の世界の「キラー」の勧めである。
 猪木がキラーになったのかどうか知らないが、井上編集長のこの感覚だけは残った。
 そういや井上編集長の著書に「猪木を信じよ」があった。「ルスカが金のために猪木に負けてやったと語っていた」のような話題に対し、「猪木を信じよ」とプロレスファンに檄を送ったのだ。編集長に載せられてあのころは信じてしまったよ、猪木を(笑)。

 魁皇は見事にキラーになっている。肘を壊されるから小手投げは怖い。そう思うと腕が竦む。37歳の魁皇の凄味。魅力的だ。

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 千代大海、2敗

 サンスボより借用

 突っぱって一気に土俵際まで鶴竜を追いこんだ。ここでまわしを取られ両差しになられると、今度は一気に反対側の土俵際までもっていかれて負けた。昨日の引くのを待っていたかのような栃煌山との敗戦ともまた一味違う、なんとも惨めな敗戦である。土俵を直線で追いこみ、直線でもどされて負けたのだ。引きあげる背中がしょんぼりしていてかなしそうだった。
 いよいよ今場所で龍二さん、見納めか。これはこれで大きな興味になってきた。
(何個所テーピングしているんだろう。)

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○日馬富士 ●豪栄道

 3連勝同士。いい相撲だった。アナが「今日いちばん楽しみな一戦」と言っていたが同意である。期待にたがわず中身もよかった。これからもふたりの対戦はいい内容になるだろう。楽しみである。
 優勝争いは白鵬大本命の対抗日馬富士か。

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 琴欧洲、安心か?

○琴欧洲 ●安美錦

 対戦成績は11-6で安美錦リード。安美錦の巧さに琴欧洲が翻弄されている。今日も危ないかと案じたが、振りまわされつつもしっかり右まわしをとって、慎重に押しだした。ここのところ琴欧洲は寄り切るときに腰を落とす。低く割る。やっと覚えてくれた。
 初日に豪栄道に敗れてしまったが期待できそうな内容が続く。婚約して初の場所だ。いい成績を残して欲しい。

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 バカ青龍、4日連続の張り差し

 またも張り差し。初日から4日連続。これしか出来ないのだろうか、この下品な横綱は。
 今日は張り差しが功を奏して簡単に豪風に勝ったのだが、またしても土俵下で憎々しげに豪風を睨みつける。先々場所、嘉風を睨んだように、さらには土俵を降りてもガンを飛ばすヤクザぶり。
 なにかあったのかとヴィデオを観るが、張っているのはバカ青龍であり、豪風はなにもしていない。嘉風のときは激しいやりあいで土俵上で一発バカ青龍に決まっていたので理解できたが。
 将来モンゴルの大統領になりたいらしいが、こんな性格のヤツを大統領にしたら國が滅びる。やめたほうがいい。

 明日は玉乃島か。期待できないな。2敗目はもうすこし先か。

 
五日目



「大銀杏を結いながら」床寿

 図書館で見つけたので読んだ。床寿の語りをライターがまとめたものなので薄味。すぐに読了した。
 朝青龍が悪者のときに擁護論として話題になった一冊だった。このときはまだ床寿は引退していない。
 床寿の定年引退までに朝青龍は優勝してオープンカーに載せると約束していたがそれは間に合わなかった。このあと朝青龍はあの「奇跡の復活優勝」で、パレードの際、隣に引退した床寿を載せて恩返しした。その後、床寿もだいぶワイドショーに登場していた。朝青龍のイメージアップにはだいぶ貢献している。

 私には朝青龍の話より(といって格別印象的なエピソードもないのだが)高砂部屋の床山だった彼の、富士桜や高見山の昔話の方がおもしろかった。



 年齢が一歳下の富士桜(中村親方)と床寿は格別に親しく、序二段、幕下時代の富士桜に請われるままお金を貸したという。返されることもなく金額は嵩んで行くが一切催促しなかった。十両にあがった富士桜はまとめて返した。そのとき80万円を超えていたとか。
 富士桜が催促することもなくよくもこんなに貸してくれたなと感謝のことばを述べると、床寿は稽古熱心な富士桜は絶対関取になると確信していたと応えたとか。
 富士桜の稽古熱心は今ではもう伝説に近い。他部屋の親方は期待している若手には高砂部屋の富士桜の稽古を見に行けとそれだけを言った。

 力士は十両にあがるまで無給だが床山には給料が出る。それってどれぐらいなのだろう。無給の力士に貸せるほどなのか。当時富士桜が床寿から借りた金は、1万円ずつ借りていつしか80万円という感じだから、今に直すと5万円ずつ借りて合計400万円ぐらいか。二十歳前後でも床山はそんなに餘裕があったのだろうか。
 床寿は27歳で結婚。すぐに江戸川区に建売住宅を購入している。ふたりの娘は高校からアメリカに留学させた。まあ留学のときは床寿も四十代でヴェテラン床山だから懐具合もわかるのだけれど、27歳で都内に一軒家を購入はすごい。床山って給料がいいのだろうか。残念ながらその辺には触れていない。
 現在床山の人数は52人、力士13人にひとりのわりあいとか。闕員が出ると補充する形なのでなりたくてもすぐに成れるものではないらしい。



 大相撲の世界は、力士、親方、若者頭、世話人、行司、呼びだし、床山と七つの職業で成りたっている。床山以外は特等のひとが番付表に載るのだとか。唯一床山だけが載らない。特等床山になった床寿は載せてくれるよう理事長に申しこんだ。理事長は江戸時代から今に至るまで床山が番付に載ったことはないとしぶる。

 床寿が推測するに、江戸時代は誰もが髷姿だから町中至る所に髷結いがいて床山は特別な存在ではなかった。それが番付表に載らなかった理由になる。今は特殊な職業だから特等床山の名は載せてもいいのではないか。という形で談判し見事に載るようになったとか。この辺の話は興味深い。



 高見山といえばあのしゃがれ声だが本来は美声だったとか。歌もうまかったそうだ。ところが扁桃腺の除去手術をした後、恢復途上で稽古を始め、相手の突っ張りが咽に入ってあの声になってしまったそうだ。
 これで思い出すのはプロレスラーのラッシャー木村。彼も美声で歌が上手かったが、海外修行のとき相手のチョップで喉佛を砕かれあのしゃがれ声になってしまった。



 ヨーロッパ系、特に北欧系の金髪が細くてやわらかいのは有名だ。把瑠都は髪の毛が細く、大銀杏を結ってもペシャンコになってしまうという。それで今、つけ毛をしているとか。いわばウイッグ。部分増毛だ。この話はおもしろかった。小錦や曙のストレートパーマは知っていたが。

 力士の洗髪は週に一度とか。あの強烈な匂いの鬢つけ油をべっとりつけたまま週に一度というのは髪のためにはよくないだろう。薄毛の力士は気にするはずだ。だいぶうすくなっていた栃東が、引退して油べっとりの生活から抜けだせることをうれしげに語っていたことがある。引退して毎日シャンプーできることは快感にちがいない。



 今まで行司の書いた本は読んだことがあるが床山は初めてだった。というか床山が書いた初の本だろう。その意味で価値がある。
 いくつか知らないことを知って勉強になったが、残念ながら床寿が好き勝手にしゃべったことをまとめただけでしかない薄味の本だ。プロデュースする側が、もっと相撲ファンが知りたいことをまとめて突っこんで行けばより充実した本になったろう。

 たとえば力士の名は床寿が担当した千代の富士、高見山、小錦、朝青龍や、高砂部屋の富士桜、現親方の朝潮、先代の眉毛と胸毛の朝潮(三代目親方)、前親方の富士錦、前々代親方の前田山、一門の曙ぐらいしか出て来ない。それは高砂部屋所属の床寿の本なのだから当然なのだけれど、作る側が「床山の書く初めての本」という点にこだわってもっと踏みこめば、「貴乃花を担当した床×から聞いたのだが」のような形で、北の湖や輪島、大乃国、旭富士等、床寿が担当していなくてもその他大勢の力士の髷話が登場し読者を楽しませたろう。相撲ファンが知りたいのはそれだ。若いファンに楽しんでもらうよう、古い力士の話のときには欄外に註釈を設けるような方法もあろう。また現在特等床山はふたりだけで、そのひとりが床寿なのだが、そこに到る出世競争、段階のような話も聞きたかった。とにかく全般的に薄味で物足りない。それは床寿の責任ではない。作った側の姿勢の問題である。(記録名鑑で各部屋の所属を見ると、4等床山というのがいる。4-3-2-1と上がって最上段が特等のようだ。)

 文章をまとめた武田葉月という女ライターはけっこう長年相撲取材をしていて、相撲の単行本も出しているそれなりに相撲に詳しいひとらしいのだが、まだ三十代半ばぐらいだからだろうか(年齢不詳だ、もう四十代かな?)、相撲ファンがいちばん知りたい名力士の話を聞きだしていない。65歳定年を前にしたヴェテラン床山の床寿が一杯機嫌で思いつくまま昔話をした、それをまとめたという、それ以上でも以下でもない出来になっている。私なら床寿を相手にこの三倍濃厚な本を作れたと自信をもって言いきれる。これは「俺なら出来る」と言いたいのではない。逆だ。「俺ですらそれぐらい出来る」と言いたいのだ。それほど中身が稀薄でもったいないと感じた。
 出版はPHP。編輯者はなにをしていたのだろう。アイディアのないひとなのか。編輯者がああしたら、こうすればとライターに意見を出したなら、もっともっと良い本になったろう。しみじみもったいない。

 いまAmazonでレヴュウを見たら一件だけあった。そのひとも「ごくふつうの65歳の意見があるだけで深みのない平凡な一冊」と評していた。
 床寿に責任はない。中学を出てから力士の髪結いだけをやってきたひとに、世間の識者を唸らせるような獨自の哲学をそうそう期待しても無理だ。しかし編輯者のアイディア次第で彼の発言をもっと光らせることは出来たはずだ。編輯者もライターも凡俗だから凡庸な本になった。それが感想である。



 いま検索して、この女ライターは「ドルジ」という朝青龍の本、琴ノ若の本、寺尾の本を出していると知る。女の相撲ライターなのだ。売れっ子と言えるかも知れない。でもおそらくそれらも薄味だろう。読まなくてもわかる。嫌いなものを近寄らせない朝青龍に好かれて朝青龍の本を出していることからも想像できるように、このひと、相手のいやがることを突っこんで聞きだすとか、そんなことはしない(出来ない)ひとなのだ。それをするひとは朝青龍とぶつかってしまう。朝青龍はイエスマンでなければ自分の本は作らせない。相手の言うことをただふんふんなるほどと肯いて、主役に都合のいい本を作るのだから薄味になる。

 といって私も相手の痛い部分、触れられたくない点をつっついて本音を聞きだす手法は苦手だ。それが必要なノンフィクション系の仕事は向いてないとやらないぐらいだ。
 上記「俺なら三倍濃厚な本を作れる」はこのこととは関係ない。要はどこまで相撲が好きかの話だ。何冊もの相撲関係の本を出している武田サンだが、どれぐらい大相撲ファン歴があるのだろう。もしもこども時代から相撲ファンで好きな力士がいたなら、床寿に「あの横綱はどうでした」「あの大関の髪はどうでした」と聞きたいことが山ほどあるはずだ。そういう意識があったら、床寿の語りおろしのような本でも、もっと濃密になったと思う。ないってことは、相撲ファン歴もたいしたことないのだろうと思わざるを得ない。しみじみ薄味がもったいないと感じる一冊である。




 バカ青龍、5日連続の張り差し(笑)

 体力の衰えから、これをしないと不安なのだろう。重症だ。今日は玉乃島なので楽勝。安美錦の次ぎにこいつを負かすのは誰だろう。

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 ○千代大海 ●豊真将

 いい相撲だった。千代大海が必死。しかし押しても引いても豊真将が粘る。最後、押しだされつつ千代大海が小手投げを打つ。態勢は豊真将のものだったが足が流れひとあし早く落ちていた。もの言いがついたが確認のため。素人目にも豊真将が先に落ちているのがわかった。千代大海の勝ち。
 熱戦とはすこしちがう。往年の力のない千代大海の必死さが感動的だった一番。

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 白鵬、辛勝

 鶴竜に攻めこまれ、土俵際のすくい投げで辛うじて勝つ。先場所は危なげない相撲が続き万全だったが今場所はこれで二度目の辛勝。安定とは程遠い。

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 ○栃煌山 ●琴欧洲

 せっかく今場所は期待できるかと思ったら栃煌山に完敗。もう栃煌山や豪栄道は琴欧洲を恐がっていない。問題だ。

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 稀勢の里、高見盛5連勝

 高見盛の初日から5連勝は初めてとか。12枚目まで落ちているので勝ち越してくれないと困る。今場所は大丈夫だろう。

 関脇から4枚目まで落ちた稀勢の里も5連勝。小結と前頭筆頭は初日から横綱大関と当たるが4枚目まで落ちると相手が楽。番付って大きいんだなとあらためて思う。
 久々に上位に上がった豊真将や玉乃島が横綱大関と当たるとき、アナが2年ぶりの対戦とか1年半ぶりとか言う。幕内の中位下位と上位はまったくちがう。わかっているようで忘れている。
 前頭筆頭の豊真将、安美錦、2枚目の豪風、旭天鵬、3枚目の玉乃島までは連日横綱大関戦。それが4枚目になると一気に楽になり、ここまで稀勢の里の相手はみな平幕ばかり。調子も良いのだろうが相手が楽なのもたしか。番付って大きいんだな。二場所連続二桁勝利の豊真将も前頭筆頭で5連敗。

 
六日目
 ○鶴竜 ●豪栄道

 ここまで4勝1敗と成績のいい豪栄道だが本人は満足していないとのこと。相撲内容がわるいからだ。全面的に同意である。勝ってはいるが中身は悪い。いいのは初日の琴欧洲戦ぐらいか。

 両者頭からぶつかるいい立ちあい。こういう本物の立ちあいを見ると相手の横っ面を張って行く張り差しがいかにみっともないかをあらためて痛感する。激しい立ちあいからの突っ張りあい。軽い鶴竜が一気に突き放していって完勝した。力をつけている。初の小結で今のところ成績はわるいが、この分なら心配はいるまい。着実に力をつけているのがよくわかる。

 モンゴル相撲の名横綱だった白鵬の父、関脇だった朝青龍の父、同じく関脇で警察官だった日馬富士の父。鶴竜だけ父は大学教授で格闘技に関係がない。力士になるのにも苦労している。躰も恵まれていない。応援したくなる力士である。以前も書いたが、鶴竜となるとプロレスファンは鶴田天龍を思い出すのだが、逆鉾の弟子である鶴竜の鶴は、逆鉾、寺尾の父である鶴ケ峰の鶴なのだ。なんとも古風でいい。すくなくともここのところモンゴル人力士に多い狼シリーズよりはずっといい。(晩年の鶴ケ峰が後妻が原因となり息子達と不仲になってしまったのは残念だった。貴ノ花一家の醜聞と同じくらい落胆したものだった。)

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 ○琴光喜 ●安美錦

 なんとなく仕切りのときから琴光喜が今日も張り差しをするのではないかという気がした。ここのところ多用している。この技、やはり体力に自信がなくなってきたときにやりたくなるのだろう。奇襲であり威嚇だから。

 安美錦は膝が悪いのか踏んばりが足りない。これで1勝5敗。勝ったのは朝青龍戦のみである。せっかく7つめの金星をあげたのに負け越しでは困る。ここでまた番付をさげると来場所横綱大関戦がなくなってしまう。安美錦の横綱戦は毎場所の楽しみのひとつなのだ。なんとしても勝ち越して欲しいがちょっと苦しくなったか。

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 ○琴欧洲 ●豊真将

 昨日負けた琴欧洲がやるのではないかと思っていたらやはりやった。成功はしていない。解説の栃東も張り差しには批判的で、豊真将がもっと頭を低くつけて行けば、と語っていた。とりあえず四つになり体力で寄り切った。
 琴欧洲は覚えるべき事が山ほどあるのに必要のないこんな張り差しなんて邪道を身に着けて行く。琴ノ若は「おまえはあんなことをする必要はない」と怒ってくれ。なんで自分で相撲をちいさくするのだろう。
 それでもこれで勝ったから、また負けて不安になったら出してくる。困ったもんだ。

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 ○朝青龍 ●栃煌山

 バカ青龍、6日連続張り差し。これしかもう出来ないらしい(笑)。
 先場所、栃煌山は琴欧洲の張り差しにひるまず、その虚をついて勝った。これは取組前、親方に張り差しで来るからそれにひるまず突っこめと言われていたからとか。そこまで読まれているのだから負けるに決まっている。
 今日ももう張り差ししか出来ないバカ青龍のそれは読めていたろうに力負けしていた。課題は速さか。アナも舞の海も栃煌山は立ちあいは速くないからと口を合わせていた。それにしてもバカ青龍、相手の顔を張らないと立てないのか。病気だ。

 
七日目
 充実の土俵

 今日の大相撲中継は充実していた。熱戦が連続し、しかも特集が今場所限りで引退する高見山(東関親方)だった。合間合間に朝潮や千代の富士が思い出を語る。思わず録画してしまった。でもどんなに特集がおもしろかったとしても肝腎の相撲がひどかったらしらける。やはり一番の理由は土俵の充実になる。「今日の一番」も候補が多すぎるほどだ。こんな日は珍しい。

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 ○阿覧 ●岩木山

 岩木山、両手突きの立ちあい。正面からぶつかり、阿覧が突っ張る。岩木山、下がらない。客席が沸く。いわゆる「掌打」のような形で顎から顔、首に十発以上入った。すごい見せ場だった。(ヴィデオで数えたら23発入っていた。)

 そのあと岩木山がいきなり頭突きをした。こんなのも初めて観た。プロレス的なモーションのある頭突きではなく、至近距離からいきなり額を相手にぶつける「チョーパン」のような形。岩木山の額が切れて出血しているのが見えた。阿覧の暴力?に怒っていたのだろう。ひさびさに相撲が挌闘技であることを見せつけられた。結果はそこからの強引なはたきこみで阿覧の勝ち。

 勝負後、北の富士が「いくら突っ張っても足が出ていないから利かない」と阿覧のへたな突っ張りに苦言を呈していたが、場内が盛りあがった最高の一戦だった。

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 ○稀勢の里 ●豪風

 バカ青龍の影響を受けて張り差しを多用する日本人がこのバカの里。昨日負けて連勝がストップしたから今日はやるだろうと予測していたら見事に的中。負けて気弱になった力士が威嚇として出すのだ。張り差しでその力士の精神が読めることになる。世間の期待ほど私が稀勢の里に興味がないのは相撲に品がないからだ。
 何のかんの言おうとここのところ張り差しの勝率は高い。ますます流行るのか。憂鬱だ。

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 ○琴欧洲 ●豊ノ島

 毎場所楽しみな一戦。身長差23センチを超越して豊ノ島が琴欧洲をぶん投げる。相撲の醍醐味。
 琴欧洲が初心にもどり、ちいさな相手に頭からぶつかって行く。まわしにこだわらず(こだわって投げられている)突っ張って押しだした。いい相撲だった。
 琴欧洲は豊ノ島を苦手にしているが、今日の一番で対処法を見つけた気がする。相撲巧者の豊ノ島もまた工夫してくるだろう。次の対戦が楽しみだ。

 昨日、琴光喜、琴欧洲と佐渡ケ嶽部屋の大関ふたりが連続して張り差しをした。今日は一転してふたりともすばらしい立ちあい。親方からの意見があったのか。

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 ○千代大海 ●豪栄道

 糖尿で体重が落ちている千代大海がちいさく見える。だが気魄で豪栄道を押しだした。全盛期と比べれは威力はないが回転の速い突っ張りを休みなく繰りだす。
 千代大海の必死さはわかるが豪栄道も弱い。大関を3人破り期待されたが本人が言うように相撲内容はあまりよくなかった。まだまだなのだろう。

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 ○魁皇 ●豊真将

 魁皇が張り差し。まあキラーだから何をやってもい。
 豊真将は7連敗。錣山は全敗でも内容は悪くないと言っているとか。
 大勝ちして久々に上位に来た玉乃島や豊真将の星が悪い。この辺の見えない壁は厚い。玉乃島はともかく豊真将には突破してもらわないと。でも今場所は負け越して、来場所からまた遣り直しか。

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 ○日馬富士 ●鶴竜

 鶴竜が日馬富士に翻弄され相撲を取らせてもらえなかった。まだまだ巧さに差があると知る。
 日馬富士は1984年生まれで初土俵が2001年1月。鶴竜は1985年生まれで初土俵は2001年11月。そうか、年齢で1歳、入門で10カ月しか違わないのか。鶴竜の新入幕は2006年11月。日馬富士は2004年11月だからだいぶ差がついている。鶴竜は三段目で伸び悩んだようだ。
 こういう一番を観ると日馬富士は強いんだなとあらためて感じる。今場所一番の注目は「白鵬対日馬富士」だろう。

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 ○朝青龍 ●旭天鵬

 7日目にして初めて朝青龍が張り差しではないまともな立ちあいをした。それは相手が星で圧倒していて、へんなことはしないと安心して取れる同郷の旭天鵬だからだろう。安美錦に敗れたこともあり精神的な不安から張り差しをやめられなかったが、今日の勝利でまともな立ちあいにもどれるか。

 ところで、先日勝った日馬富士が花道を引きあげるとき、通路にいた旭天鵬と握りこぶしをぶつけあっていた。勝利の報告とおめでとうである。でもこのふたり、対戦もある別部屋の力士だ。それだけモンゴル人同士仲がいいということなのだろうが、カメラのあるところでやるべきではないだろう。友情とは別に仕切りも必要だ。復活朝青龍の優勝飲み会に負けた白鵬が出かけたと知って白けたように。

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 負けはしたが沸かせた把瑠都

○白鵬 ●把瑠都

 四つになったとき大きな歓声が沸いた。大きいことはいいことだ。
 白鵬はまだ上手が取れない。ここで一気に攻めたら勝ちもあったろう。攻められないのか攻めさせないのか。そのあとの上手出し投げで崩れおちる。
 びっこを引いて引きあげる。かなり痛そう。右足のようだ。古傷の膝は左だ。控えからのレポートによると、以前も痛めたことのある右足首とか。心配だ。

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 今日の特集は高見山。以前も書いたが、高見山は足が長く腰高で躰が硬かった。だからものすごい剛腕で強かったけれど、盛は短く短命だと思っていた。ところが結果は歴史的な長寿力士だった。その理由が缺点であるそれがプラスに出たということだった。足腰が脆く簡単に崩れてしまうから怪我がすくなかったのだ。まったくなにがプラスになるのかわからない。力士全体が大形化の今、粘る相撲を取るひとほど怪我が多いことになる。

 把瑠都の場合、相撲の基本を知らなかったことが大きく、その辺は親方の責任になる。基本を教える前に体力だけで出世してしまい、大怪我をしてからそれに気づいたということだろう。なんとも惜しまれる。
 
 熱戦の多い七日目だった。観客も満足して帰路に就いたことだろう。

 
八日目

 連日熱戦岩木山 ○岩木山 ●出島

 出島が寄って土俵際まで追い詰める。躰が浮きあがり明らかに勝負あったと思ったのに、土俵際で粘る粘る。それどころかそこから態勢を持ちなおして今度は出島を攻める。攻められて出島はあっさりかと思ったら、出島もまた徳俵に足を掻けて粘る。場内大歓声。休むことなく動きまわっての22秒の勝負。大きな拍手がふたりの熱戦を讃えていた。
「ヴェテランのふたりが」とアナも讃えていたが、アッサリ風味のふたりがここまで勝負に執着した相撲を取ったことにおどろく。朝青龍の不快な態度から受けるのとは逆の薫風だった。いいお相撲さんである。ふたりとも。

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 ○稀勢の里 ●山本山

 実績的に稀勢の里が勝たねばならない一番。最初か最後までまっすぐに攻めぬいて勝ったのだが、土俵際まで追い詰めても山本山がそこからしぶとく、相撲において重いことがいかに武器であるかを知った。私からするとかつての小錦等とは比べものにならないただのデブなのだが、それでも充分に強いのである。すこしだけデブを見直した。

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 把瑠都、ひさびさに怪物相撲

 昨日、びっこを引いて引きあげるのを見て休場かと思ったが出て来た。豊真将を土俵中央から豪快に吊り上げて勝つ。今場所初の怪物相撲。それでも星はまだ3勝5敗。
 力水をつけるとき溜息を吐いているのが見えた。笑顔はない。どうしたのだろう。体調が悪いのか。今場所の把瑠都は一貫して憂鬱そうである。
 前半で当たった横綱大関は琴光喜、魁皇、白鵬。これからまた千代大海、琴欧洲、朝青龍、日馬富士が残っている。かなり負け越しの可能性が高い。相撲内容も悪いし、なにしろ初日に玉乃島(現在2勝6敗)、二日目に旭天鵬(3勝5敗)と番付が下のふたりにいいところなく敗れているのだ。7勝8敗の負け越しか。関脇陥落の危機だ。あれだけ覇気のない相撲なのだからしょうがない。そんな中、今日の怪物ぶりはひさびさにうれしかった。

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 三役陣予想

 今場所は関脇、小結、前頭上位が総じて成績が悪い。
 小結栃煌山(2勝6敗)は陥落だろう。ちょっとここからの逆転は苦しいように思う。いや負けたのはすべて横綱大関と把瑠都だから、これからの逆転もあるか。
 豪栄道は明日白鵬とやって負けて4勝5敗になるが、前半の貯金で後半は相手が楽になるから勝ちこせそうだ。
 把瑠都は微妙。
 鶴竜も3勝5敗で微妙だがすでに横綱大関戦は終了なので今の力なら勝ちこせる可能性は高い。
 その他、前頭筆頭の豊真将(全敗)、安美錦(2勝6敗)、前頭二枚目の豪風(全敗)、旭天鵬(3勝5敗)、三枚目の玉乃島(2勝6敗)、豊ノ島(2勝6敗)とみな黒星が大きく先行している。それだけ横綱大関が安定している場所なわけだが。
 旭天鵬はここからちゃっかり勝ち越すこともあるように思う。だが勝ち越して上位にいてほしい安美錦、豊ノ島、苦しそうだ。

 そこより下位からの復活組も、確実なのは大きく勝ちこして小結に復帰するであろう稀勢の里(7勝1敗)ぐらいだ。6枚目で6勝2敗の琴奨菊も筆頭ぐらいまでもどるだろう。ふたりとも三役の常連でこんなところにいるのがおかしい。

 東の関脇把瑠都(3勝5敗)、西の関脇豪栄道(4勝4敗)、東の小結鶴竜(3勝5敗)、西の小結栃煌山(2勝6敗──これは苦しいか)の今後の推移が興味深い。

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×今日の最悪× ○鶴竜 ●琴欧洲

 鶴竜の左への変化で一瞬で琴欧洲は手を突いていた。しかしそれが確認できない鶴竜はその後も攻め、ふたりして土俵下に転がりおちていた。勝負時間は0秒7。でも続きがあったから相撲は5秒ぐらい取っている。
 昨日、ちいさい豊ノ島に頭からぶつかってゆく正攻法で勝った琴欧洲は、今日も鶴竜に頭を下げて突っこんでいった。ヴィデオで見ると前を見ていない。もしも鶴竜がそれを見ていたとしたら好判断と言えるし、琴欧洲が甘いとなる。あるいは昨日の豊ノ島戦を見て、戦前から頭から突っこんでくると読み、変化を考えていたか。

 しかしいずれの理由にせよ熱戦を期待したファンには肩透かし。今の鶴竜なら正面から琴欧洲とやりあえる。変化はしてほしくなかった。初の小結で黒星先行であり、そんなことは言っていられないのかも知れないが。
 世評の高い栃東を私が嫌いだったのは、彼は朝青龍と五分の星を残すぐらいいい相撲を取るのに、一方では目先の白星欲しさに格下相手に変化したりもした。それで平然としていた。小兵ゆえきれいごとは言っていられないということなのだろうが、どうにも好きになれなかった。
 鶴竜にそこまで望むのは無理なのか。白けた一戦だった。

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 ○翔天狼 ●普天王

 普天王が意味もなく威力もない張り差し。相撲が見えず迷っているのがよくわかる。押し相撲の翔天狼に四つになられ、楽々と押しきられる。こどものころから相撲を取っているのに、覚えて数年の翔天狼に教えてもらうような内容。ひどすぎる。

 翔天狼、玉鷲とこれから期待できそうないい力士もみなモンゴル人。

 角界一の名門出羽の海部屋は、いま幕内力士は10枚目の普天王ただひとり。彼が部屋頭なのだ。落ち目である。時の流れか。むかしは理事長は出羽の海部屋から出ると決まっていたものだが。


 ○日馬富士 ●千代大海

 7連勝中で「負ける気がしない」と強気一辺倒の日馬富士だが心中はそれほどでもあるまい。そろそろやるかと思っていたら、案の定、兄貴分バカ青龍譲りの張り差しが出た。しかも張り差しをするもハズレとなり受けてたつヘンな相撲。まともに突っこむ力士なら簡単に負けていた冷や汗の一戦。しかしいまの千代大海ではそれが出来ない。そこから突っ張りあいになり、次第に押され、寄り切られる。土俵際千代大海が小手投げを放ち、映像的には微妙に見えたのだが、別角度からのスローで見ると、小手投げ以前に千代大海の足が土俵を割っていた。なるほど、これならもの言いはつかない。

 舞の海の辛口、安芸乃島の姿勢

 千代大海の小手投げで左肘をすこし傷めたのか、土俵下でも日馬富士がしきりに肘をさすり気にする。その後、花道を引きあげるときも気にしていた。

 それに対して舞の海が、「土俵下や花道という人の目があるところでこういうことをしてはいけない。相手に弱点を見せてしまうことになる。日馬富士はまだ大関という地位の自覚がない」と辛口の意見を言った。それは向こう正面の解説が千田川(安芸乃島)だったからこその意見だったようだ。「その点、千田川さんは決してそういうことを見せなかった」と。そこからアナが千田川に振る。
 千田川はそうであると肯定し、「骨折していたとしても、あとで確認して休場すればいいことですから」と、人前ではどんなに痛くても弱味を見せないと語っていた。すごい話である。

 びっこを引いてしまうほど傷めてしまった場合や、今日の魁皇のように膝が痛くて蹲踞も出来ないほどの場合はともかく(という以前に魁皇は満身創痍であり例外にしたいが)、ちょっと違和感がある程度の場合は控室まで我慢して人前では撫でさすったりしないのが力士のありかた、特に横綱大関の心構えと舞の海は言う。

 このわざとらしいポーズを連発するのが朝青龍だ。しきりに肘をさすり、いかにもおれはここを傷めているんだとサポーターを当てた肘を撫でさすりアピールする。この辺が土俵に上がる前にサポーターを外した貴乃花とは基本からして違う。

 ただしその感覚は美意識の違いだから埋めがたい。いわば「痩せ我慢の美学」である。そんなものはモンゴル人力士にはないのだろう。
 地方巡業の時、土俵上で四つになった朝青龍が、相手の背中にまわした自分の両手で、観客に拍手をしてくれと笑顔で誘ったことがあった。それを元NHKアナの杉山さんが激怒した。横綱として絶対に許されないことだと。
 杉山さんの感覚だと、横綱とは近寄りがたいほどの存在でなければならず、土俵上で戯けることなど以ての外になる。
 だが朝青龍は朝青龍で、地方のお客さんに精一杯のサービスをしたつもりなのだ。どんなに注意されても理解できないだろう。

 昨日も書いたけど、勝った日馬富士が、花道を引きあげるとき、出番を待つ旭天鵬と「勝ったぜ!」とばかりに拳ゴッチンをやるのは、やはりおかしい。同部屋の兄弟弟子である琴欧洲と琴光喜ならともかく、旭天鵬と日馬富士は別部屋であり対戦相手でもあるのだ。この辺も自分の地位立場というものを理解していないことであり、かといってそれを指摘されても彼らは???なのだろう。
 同部屋でも琴光喜、琴欧洲、琴奨菊が人前でそれをやらないことは親方の指導が行きとどいていると言えるし、旭天鵬も日馬富士もけっきょくは朝青龍と同じなのだということにもなる。旭天鵬は初のモンゴル人親方になるひとだから、すこし心配になってきた。

 私は旭天鵬を優れた身体能力と故障のない躰、日本人妻をもらい帰化(日本名・太田勝)し、将来は親方になるという路線から好きなのだが、大島部屋には、新人のころ苛められた怨みから、旭天鵬らが出世してからひどいいじめをやったという噂が根強く流れている。私が思っているほどいいひとではないのか? でも2011年の大島引退では確実に親方になるようだ。史上初のモンゴル人親方である。

 とはいえ異国で頑張るモンゴル人力士の横の繋がりが強いことはよくわかるし、それはそれでよいことだと思う。なによりふたりの横綱がふたりともモンゴル人力士なのだから文句は言えない。
 そう思うとあらためてモンゴル人力士同士なのに不仲で問題になった朝青龍と旭鷲山は貴重な存在だった。旭鷲山があんなスキャンダルでやめなければ今も現役で楽しませてくれたろうに。朝青龍のことをボロクソに言うモンゴル人先輩力士の存在は貴重だった。


 ○朝青龍 ●豪栄道

 昨日、安全牌旭天鵬相手に張り差しを封印した朝青龍が早速今日も下品な張り差し。低い姿勢の豪栄道を、上からフロントヘッドロックのような形で押し潰す。
 8日間の内7日使用。今場所は合計何日張り差しになるのか(笑)。このバカ横綱に相張り差しで行くような輪を掛けたバカはいないものか。

 
九日目
 玉ノ井の解説

 正面解説は玉ノ井。ちょっと訛った木訥な話しかた。このひとが引退して息子の栃東に親方を譲るのはいつなのだろう。そろそろのはずだ。もしかして今月、いやそんなことはないよな。今月は高見山だ。調べたら今年の9月。このひとの解説を聞けるのもあと数回か。
 だし投げを得意にしていたので、このひとの解説の時にはだし投げが出ると必ず話を振る(笑)。彼もうれしそうに応じる。
 業師だったけどそれほどの力士じゃなかった。解説もまあまあ。いまこうしてそれなりに脚光を浴びているのは同じ四股名の息子が大関になったからだ。
 ブラジル人力士を5人も入門させたりいろいろ努力をしたけど、実績は息子だけだ。となるとやはりそれは指導が優れているのではなく息子が力士としての能力があったということになる。

 その点、貴ノ花は、息子がふたり横綱になるという奇蹟的な偉業とともに、貴ノ浪、安芸乃島、貴闘力、豊ノ海と関取を育てている。それはまあ人気力士だったので入門者が集ってきたからとも言えるが、安芸乃島などは噂を聞いてスカウトしたらしいし、育てる能力もあったのだろう。でも貴ノ花も二子山譲りの竹刀でぶったたくとんでもない荒稽古で、今だったら大騒ぎされている。私はあの「時津風事件」に関しては自分なりの意見があるのだけど荒らされると困るからよけいなことを言うのはやめよう。

 錣山は名物力士で人気もあったから解説の需用はあったろうけど、豊真将がいなかったらそれでもだいぶ出演回数は減っていたろう。

 大相撲名鑑で部屋の様子を見ると、あれこれ思うことが多い。外国人力士も多種多様だ。失敗例も多い。モンゴル人力士の成功はモンゴル相撲という基礎があるにせよ、その成功率の凄さは名鑑を見ているとよくわかる。

 貴乃花部屋が貧弱だ。理事として出世して行くためにも弟子を育てねば。あの千代の富士ですらいちおうは千代大海という大関を出している。というか大鵬も北の湖も出せなかったので一代年寄りを送られることになった力士としては千代の富士だけの偉業なのだ。ま、辞退しているけど(笑)。

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 ○稀勢の里 ●朝赤龍

 朝青龍は腰が強くてなかなか落ちないから、稀勢の里の攻めを受けて受けて粘る。27秒動きまわっての一番は見ごたえがあった。終始稀勢の里優勢だったが。
 全勝の白鵬、日馬富士に続いて、稀勢の里は平幕では勝ち越し第一号。

 サンスポを読んでいたら、鳴戸部屋は親方の方針で出稽古が禁止なのだとか。それを今場所前、武蔵川理事長が鳴戸(隆の里)に意見をして出稽古を解禁したのだとか。稀勢の里は勉強になった、新鮮だったと語っている。
 それの影響もあろうが、なんといっても一番は地位だ。4枚目は横綱大関と当たらない。これは楽。相手が先場所までとはぜんぜん違う。勝ち進めば上位に当てるのか。このまま通常の相手とぶつかり、勝ち進んですいすいと進むなら、それはそれでおもしろい。幕尻で貴闘力が優勝したときは13日目から無理矢理大関に当てたのだった。
 今場所は3枚目と4枚目がこんなにもちがうことを学んだ。何十年相撲を観ていても漠然とだから、まともなひとなら数年で気づくことに今ごろ驚いている。

 サンスポと言えば、以前は毎日買っていたのに今では週末の競馬の時ぐらい。今日は外出したのでたまたま買ったが、やはり紙メディアには獨特の味わいがある。もっと応援しないと。

 どちらを今日の一番にするかで迷ったが、○琴奨菊 ●栃乃洋もいい相撲だった。栃乃洋がまだまだ元気なのでうれしい。石川県といえば出島と栃乃洋だが、次のスター候補がいない。

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 全敗対決

 平幕で全勝がいると、すぐにふたりを闘わせてどちらかを潰す。厳しい世界だと感じる。私としては、もうすこし全勝のままにしておいてどちらかを消すのはもうすこし先でもいいのに、と思うことが多い。でもためらわずどんどん潰して行く。そこを勝ちぬいた者だけが上がれるということなのだろう。

 今日はそれと逆の全敗対決。どちらかが必ず片目が開くという、これはまたこれで切ない取組。豪風と豊真将。豪風が勝って1勝目。豊真将は9連敗。

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 鶴竜、先は明るい

 鶴竜が同じ小結の栃煌山を速攻で料理。これで4勝5敗。5敗はすべて横綱大関。千代大海と琴欧洲は倒している。先場所もそうだったように、これから勝ち越すだろう。次の大関候補として安定勢力になるか。
 栃煌山は2勝7敗。陥落は決定的。

 把瑠都は勝っていた相撲を土俵際で安美錦に逆転される。決まり手は「上手出し投げ」になっていて、なんだかすごい決め技みたいだけど、実際は勇み足みたいなもの。相性のいい安美錦(これはこれで不思議だ。安美錦のような技巧派は苦手のように思えるが)をいつものよう一方的に突きだしたのに、まだ安美錦の脚が残っているときにひとりで飛びだしてしまった。雑な相撲。これで6敗目。こちらも陥落の危機。
 安美錦も3勝6敗。とにかくこのひとには上位にいてもらわないと困る。勝ち越しはきついか。膝が悪いからなあ。

 豪栄道は予想通り白鵬に負けて4勝5敗。これからは相手が楽になるからなんとか勝ち越せるだろう。三大関を破って関脇が負け越したら笑われる。
 来場所は関脇小結が大きく替りそうだが、挙がってくるのが稀勢の里や琴奨菊だから、元にもどるだけとも言える。

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 琴欧洲、琴光喜、本来の相撲

 ふたりとも真正面からぶつかり、いい相撲で勝った。張り差しをしていたのが嘘のようだ。特に琴光喜は前半のひどい相撲が嘘のような充実。この変化はどこから来たのか。

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 白鵬、連勝を伸ばす──しあげのニースタンプ

 連勝を伸ばしている白鵬を誉める論調が多いが、大の白鵬ファンとしてずっと見てきた私からすると、今場所の勝ちかたはちょっと問題だ。先場所の腰を割って慎重に寄り切るのと比べると、また以前の強引な投げがもどってきている。「おもしろくない相撲と言われても確実に勝つ」と先場所語り、実践していたが、今場所はすこしちがっている。今日のような、朝青龍もよくやる、あの相手の頭をねじ伏せるようにしての上手投げは美しくない。あれってモンゴル相撲から来ているのか? 朝青龍スペシャルだったか? いや千代の富士もやっていた? こんがらがっている。(調べて「千代の富士スペシャル」と知る。いかにも傲慢な千代の富士らしい下品な技だ。)
 いずれにせよ美しくない。白鵬には美しい横綱になってほしいのだが。

 私は猛暑の昨日、慌ただしく一日中駆けまわったので、ぎりぎりの時間に帰宅し青息吐息の状態で見たので、細かい状況を覚えていないのだが、白鵬が上記の下品な技で勝った後、豪栄道の脇腹にニースタンプを見舞ったとか。朝青龍が得意のあれである。見るたびに不愉快になるあれを白鵬もやったのだ。このことからもふたりが同じモンゴル人であることがわかる。白鵬を正義の味方にすることは辞めてもらいたい。同じなのだ。白鵬も朝青龍も。
 スポーツ紙は、その朝青龍もどきのダメを押したことを批判していたが、審判員は問題なし、協会への抗議も電話が二件のみ、と伝えていた。

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 ○朝青龍 ●千代大海

 サンスポで専属解説の藤島(武双山)が、昨日の豪栄道の負けに触れ、「今の朝青龍は腰が高く、結果としてただ勝っているに過ぎない。あんなに頭を低くしていったら誰だってはたく、誰だって勝てる」と、朝青龍の勝利を誉めることなく豪栄道を批判していた。同意である。朝青龍は成績はいいが内容はひどい。それは旭天鵬以外にはみな張り差しをしていることからも解る。まともだったらいくらバカ青龍でもここまで乱発はしない。

 今日の解説の玉ノ井も「朝青龍は立ちあいが腰高で悪い」と批判していた。
 なのにバカ青龍、今日も張り差し、立ちあいが腰高なのに張り差しではさらに隙を作る。それをついて千代大海、一気に土俵際まで押しこむ。圧勝の形。しかし手が滑ったのか?両手が朝青龍の肩の上に抜けてしまう。俵に足のかかった朝青龍に労せずして今度は両差しになられて逆に一気にもって行かれた。勝った朝青龍が苦笑するような間抜けな逆転劇。さすがは龍二さん。

 張り差しという朝青龍の戦略が完全に裏目に出て千代大海必勝のパターンだった。ここで千代大海が勝っていればバカ青龍の張り差し反省絶好の機会になったのだったが誠に残念。もっともここで負けたとしても、体調体力に不安がある限り張り差しの連発は続くのか。

 あらためて藤島の言ったように、「今の朝青龍はただ勝っているだけ」を実感する。地力のちがいで薄氷の勝利を重ねているだけだ。でもそれはそれで一観客としては充分におもしろいけれど。

 先日、朝潮の「親方はつらいよ」を読んだ。朝青龍がいかにハングリーガッツで稽古を積んでのし上がってきたのかがよくわかった。功成り名を遂げた今、当時のハングリーガッツを持ちつづけることはむずかしい。朝青龍ほどの成功は日本人としてもたいへんなものだが、モンゴル人だから、貨幣価値の差を考えたらとんでもないことになる。朝青龍がモンゴルに送金したお金は5億円と言われる。モンゴルではその価値は百倍にも匹敵しよう。今はもう多様な企業組織ASAグループの総帥であり未来の大統領候補なのだ。死に物狂いの稽古など出来ようもない。
 朝青龍にもふつうの横綱のように32歳ぐらいまでがんばって欲しい。なんといっても千両役者であるのは確かなのだ。でもモチベーションが保たないか。張り差しで逃げる弱気な相撲を観ているとそう思わざるを得ない。立ちあいで相手の顔を張って行く張り差しとは、ケンカを売る強気の技のようでいて、実は「弱い犬程良く吠える」の弱い犬の吠え声に過ぎない。

 
十日目
 客席の林家ペー

 客席に林家ペーがいた。いつものあのピンクの衣裳で(笑)。列は5列目ぐらいなのだがカメラ正面になるし、あの頭と衣裳で通路側に身を乗りだすようにしているのでやたら目につく。

 こんな形で目立つひとに京唄子がいる。あれも意識的なのだろうか。ドラマで京唄子は知っていても鳳啓介との漫才を知っているひともすくなくなった。実生活では鳳の浮気や暴力に悩み、離婚し、舞台の漫才では鳳の台本通りに動いていたひとだが、鳳が死んで知っているひともすくなくなる時代に、堂々とまだ現役で仕事を続けている。女は強い。男はもろい。

 元NHKアナの杉山さんも確実にカメラに映る席にいる。朝青龍に絡んで相撲協会を批判したとき、相撲協会からの逆襲に遭い一時出入り禁止になった。すぐに解除されたが。逆襲のひとつに「カメラに映ることを意識して必ずそういう席にすわる」という批判があった。そのときはまさかと思ったし本人も否定していたが、毎日確実に映る席にいるので、もしかしたらその通りなのかも、と思い始めている。

 同じ砂かぶりにすわっても手前だと背中しか映らない。正面だと、今日の林家ペーのように、中継中ほとんどテレビに映っている。林家ペーはやはり「映る席」を望んだのだろう。それが芸能人のアイデンティティである。

 以前週刊誌に競馬コラムを書いていたとき、顔写真を出されるのがいやで二十年以上前の奇妙なものを出して許してもらった。だが私以外のコラムニストはみな「もうすこし顔写真を大きく出せないのか」と注文したらしい。彼らが正しく私が間違っている。世に出るとはそういうことだ。

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 解説は出羽海

 今日の正面解説は出羽海。私には今も小兵の鷲羽山であり親方としても境川の方がピンと来る。佐田の山との親方名交換は今もってよくわからん。
 角界一の名門名跡であり、その地位は今後も変らないだろうが、関取が普天王しかいず、あとはいきなり幕下になってしまう現状も事実。弟子の数もすくない。新弟子というのは本人の希望であれスカウトであれ人気力士のいるところに流れる。いくら角界一の名門でもその魅力に缺ける今の出羽海部屋では弟子も集まらないということか。

 むかしの貴ノ花、旭国、魁傑等、人気力士のところには引退後優秀な入門者が集い、みな横綱大関を育て、その功績で協会内での地位も確乎たるものにした。(かっこたるは「確固たる」が一般的だが「確乎たる」の方が本筋らしい。誤記ではありませぬ。)
 それを思うと、貴乃花部屋の窮状が信じられない。いや信じられる。もしも「理想の家族」のままだったら引退後続々と優秀な弟子が集まり今ごろ栄誉を極めていたろう。親の離婚、兄弟の不仲、貴乃花の変人ぶりと、あれだけ悪いニュースが揃ったら弟子入させる親はいない。このごろバラエティ番組等にも積極的に出演し、気さくな人柄をアピールしているがそれでもまだ苦しいようだ。
 それはまたひととして当然の感情だ。私も力士になりたい息子がいたとしても貴乃花部屋に入れたいとは思わない。佐渡ケ嶽とか武蔵川を考える。親はみな同じ感覚だろう。

 ところで長年私は「でわのうみ」は「出羽ノ海」あるいは「出羽の海」と思ってきた。「出羽ノ海」が正しく、誤記になる「出羽の海」もかなり書いている。でも正しくはそうじゃないようだ。

Wikipediaより

出羽海(でわのうみ)は日本相撲協会の年寄名跡のひとつである。
初代から5代までは出羽ノ海であったが、角聖と呼ばれた5代・出羽ノ海(元第19代横綱・常陸山谷右エ門)と同じ年寄名を名乗ることを畏れ多きことと判断した6代目(元小結・両国梶之助)が、表記上のみノを外し、出羽海として継承した。これ以降、5代・出羽ノ海に対する敬意が今日まで代々受け継がれ、表記は出羽ノ海ではなく出羽海となっている。


 とのことだ。そのうち相撲ページの「でわのうみ」をすべて「出羽海」に直そう。

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 ○雅山 ●栃ノ心

 栃ノ心が突っ張りで攻めまくり、雅山が耐える。この時点で場内は大きな声援。そこから四つになり、ここからまた攻防がある。攻めているのは栃ノ心。一瞬間があったとき大きな拍手が湧いた。観客は熱戦に敏感だ。
 最後は下手投げで雅山の勝ち。57秒の大熱戦。敗れた栃ノ心は土俵に突っ伏して大の字。そこから起き上がって正坐。拍手と歓声が止まない。

 雅山の相撲を巧いと思ったことはないのだが、こうしてまだまだ相撲を知らない栃ノ心の攻撃をいなしているのを見ると、それなりに相撲一筋にやってきた相撲巧者なのだと知る。
 栃ノ心、阿覧、黒海、さらには琴欧洲、把瑠都に到るまで、相撲を覚えてからの歴史が浅い白人力士は、よくわかっていないことが多いようだ。それでもこれだけの出世だからその身体能力おそるべしなのだけれど。

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 ○高見盛 ●琴奨菊

 琴奨菊が一方的に押しだす相撲になったが、土俵際回りこんだ高見盛が不思議な投げを打ち、琴奨菊も高見盛の膝をすくって粘ったが、落ちた。という4秒の勝負。決まり手は「巻き落とし」。いくら長年相撲を観ていてもこういう決まり手は瞬時に言えない。それはアナですらそうだったようだからしかたない。
 勝ち越しを懸け、九分九厘勝っていた一番を落とした琴奨菊は、控えにもどってひとこと「もったいない」と叫んだとか。ブログを見ると「攻め急ぎすぎました」と反省の弁。

 勝った高見盛の泣きそうな顔がたまらない(笑)。そのあとは胸を張っての凱旋帰国。一日も長くこのひとを見ていたい。
 東関部屋を潮丸が継ぐということは十両で今白星先行の潮丸は今場所で引退ということか。ともあれ高見盛が部屋を継ぐために引退、とならなくてよかった。

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 ○山本山 ●栃乃洋

 大好きな栃乃洋が大嫌いな山本山に一方的に突きだされてしまった。何も出来なかった。デブは強い。
 それにしても汚い肌だ。力士は色白の艶々の肌で、それが仕切りのたびに次第に紅潮して行くのがうつくしい。肌で健康を知るのは力士の常だった。あんな腹から尻から太腿まで醜い吹き出物だらけの体は見たくない。私が山本山を好きになることはない。

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 強いぞ鶴竜

 鶴竜が豪風に慎重な取り口で万全の勝ちかたをした。これで5勝5敗。まず確実に勝ち越して小結の座を守りそうだ。ニ横綱五大関の内、大関ふたりから三人に勝てるというのが今の鶴竜の実力なのだろう。横綱ふたりと日馬富士とは明らかな力の差がある。そうすると、下位への取りこぼしがないと毎場所この地位で9勝から10勝をあげる力があることになる。今場所はもう5敗しているから10勝はきつくても確実に勝ち越せそうだ。

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 キラー魁皇、全開!

 琴欧洲が四つになろうと左下手を取りに行ったのを体を交わしつつ小手投げに決める。職人技。まるで藤原嘉明の擦れちがいざまの腋臭溜め(笑)──こりゃ臭そうだ──脇固めのよう。しかもそのあとは膝が痛く立っているのすら辛そう。半病人の捨て身技なのだ。そこにまた飛んで火に入る夏の虫になる琴欧洲の幼稚なこと。

 出羽海が琴欧洲の立ちあいが安易だと批判したあと、「こういう形でもね、どんな形であれ、勝つということが立派」と誉めているんだかバカにしているんだわからない評価。相撲内容を誉めていないのだけは確か。
 いまの魁皇にはこれしかないと判っているのだから、琴欧洲は突っ張って腕を取られないような相撲を取れば、土俵上を動くことすら辛い膝の悪い魁皇に勝つのは簡単なのに、自分から腕を出していってはねえ……。

「猪木なら何をやっても許されるのか!」という前田語録があったが、「今の魁皇なら何をやっても許す」。

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 朝青龍、本格化!

 把瑠都に頭から突っこみ、速さで翻弄し、振りまわし、一気に押しだした。ここにきてやっと充実してきた。日馬富士、白鵬との対戦が楽しみだ。

 本格化とは期待された馬にやっと実が入ってきたときに使う言葉だから、すでに頂点を極めている横綱にこんな言いかたは不適切なのだが、今までの「ただ勝っているだけ」と比べると、今日の勝ちには性根が入っていた。気魄が見えた。

 昨日の千代大海戦での勝利はひどかった。張り差しの悪影響がもろに出て、まともなら完敗の内容だった。
「親方はつらいよ」によると、朝潮は場所中でも感じることがあると横綱に意見するという。たまにだが。私は昨日、朝潮が、張り差しを多用しすぎている、すこし封印したら、と横綱に意見したと推測した。
 それがあったかどうかは知らないが、さすがのバカ青龍も昨日の一番で張り差しのあやうさを感じ、今日はそれをやめたのだろう。大きな把瑠都に張り差しをして、それで怯んでくれるならいいが、もしも怯まなかったら一方的にやられると。
 朝青龍の魅力のいちばんは速さだ。今日はそれを前面に出した最高の相撲だった。今日の勝利の自信で明日からは張り差しなしの立ちあいが出来そうだ。(と期待したい。)

 私は連勝記録を続ける今場所の白鵬の相撲をそれほどのものとは思っていない。一方、日馬富士の相撲がすばらしい。今日も後半に入って中身が充実してきた相撲巧者の琴光喜を巧さで圧倒していた。朝青龍の復調も急だ。このふたりに白鵬は完勝できるのだろうか。13日目の白鵬日馬富士戦が今場所最高の一番になる。

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 大好きな把瑠都が7敗目。いよいよ関脇陥落か。今場所の内容ではしかたない。また出直しになるが、長い目で応援しよう。

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 稀勢の里の今後の取組相手

 稀勢の里が1敗を守った。出羽海が「この地位でスイスイと行ってしまうとおもしろいことになる」と言っていた。「上に当てると言ってもそうもいかないだろうし」と。
 終盤は横綱大関の対決のようにもう組合せが決まってしまっている。勝負をおもしろくしようと稀勢の里を上位に当てようとしてもそうそう無理は利かない。なるほど、とすると、貴闘力の幕尻はともかく、前頭4枚目というのは、平幕優勝をするのに絶好の位置なのだ。すくなくとも上位全部と当たる前頭筆頭や小結での優勝とは格段に違う。

 というわけで明日、全勝の日馬富士との一戦が組まれた。本来は稀勢の里は下位と当たり確実に一勝を稼げるはずだったが。
 稀勢の里はここで負けると2敗になり優勝争いからは脱落。日馬富士も敗れると白鵬が全勝だけに厳しくなる。対戦成績は10対9で稀勢の里がリード。まあ大関候補としては稀勢の里のほうが先だったから当然の結果か。稀勢の里は自他ともに認めるライヴァルは琴欧洲だった。
 初土俵は安馬の方が一年早いが、入幕は2004年11月場所と一緒。琴欧洲は一場所早い9月場所で新入幕。これは史上最速だった。

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 祝 北桜、十両復帰確実!

 幕下に落ちていた北桜の来場所十両復帰が確実になった。ニッカンスポーツの記事がすばらしいのでそのまま転載させていただく。よかったね、北桜。奥さんも娘さんもうれしいだろう。あの奥さんのテレビの前で声を出して応援する姿は今も覚えている。一般には亭主の相撲は見ないようにしている奥さんの方が多い。あるいは勝ったと結果が分かってから見るとか。その点、北桜の奥さんはテレビの前で大声を出して、一緒に相撲を取っているような応援をしていた。
 来場所もがんばらないと。負け越したらすぐに落ちる地位だから。

勝ち越しを決めた北桜は、ファンとハイタッチ(撮影・水谷安孝)
<大相撲夏場所>◇9日目◇18日◇東京・両国国技館

 37歳の西幕下筆頭北桜(北の湖)が、戦後2番目の高齢再十両に大きく前進した。鋭く踏み込んでから右を差し、一気に前に出て臥牙丸(ががまる)を寄り切った。二番相撲からの4連勝で勝ち越し。37歳6カ月で迎える名古屋場所(7月12日初日、愛知県体育館)で十両返り咲きとなれば、元小結大潮の39歳5カ月に次ぐ高齢復帰となる。(中略)

北桜の通算702勝目は、再び「関取」をつかむための価値ある白星になった。幕下では異例の大歓声と拍手…。「感謝なんです。師匠や先輩、後輩、家族、そしてお客さん。声援が背中を押してくれました」。両目は潤んでいた。

 悩んだ。十両だった初場所14日目、10敗目を喫して03年夏場所以来の幕下陥落が決定的となった。「腰が軽いし、相撲が悪かった。年齢的にも、もう限界かな、と思った」。その夜、北の湖親方(元横綱)に言われた。「これ勝ったら、って小手先でやってるぞ」。欲と不安が、本来の相撲を失わせていた。このままではやめられない−。千秋楽は初心にもどり、腰に力が入って完勝した。師匠には「まだやらせてください」と申し出た。

 周囲に支えられた。幕下に落ち「正直、焦りました。収入がないんですから」。それでも妻と愛娘は、負けた日も「ドンマイ」と明るく迎えてくれた。弟弟子は「雨が降るからやめてくれ」と、ちゃんこの手伝いをさせてくれなかった。ちゃんこ時、師匠は「ここに座れ」と、関取衆と同じ時間に食べさせた。プライドを傷つけまいとする気遣いに「なんとかして応えなきゃと思った」。

 「相撲伝道師」の現役続行は、相撲界にとっても大きな力だ。引き揚げる際は、次々とファンに囲まれ、丁寧に写真撮影に応じた。土俵上では大量の塩まきパフォーマンスで盛り上げる。巡業では、少年ファンに相撲に興味を持ってもらおうと、携帯電話の番号を教えることもある。

 番付は“生き物”で十両からの陥落数、幕下上位の成績も関係する。ただ十両復帰へ近づいたのは間違いない。37歳6カ月で迎える名古屋場所。再十両となれば、元小結大潮に次ぐ戦後2番目の高齢復帰となる。昨年まで「永遠の26歳」と10歳下の年齢を公言していたベテランは、今は何歳? と聞かれた。「37歳…ですね。受け入れました。気合入りすぎると、血圧も上がっちゃうんで」。最近は高血圧に悩む「若い衆」は「まずはあと2番、しっかり相撲を取ることです」と声を弾ませた。【近間康隆】

http://www.nikkansports.com/sports/sumo/news/p-sp-tp3-20090519-496210.html


 十両の給料は107万、幕下になると場所のある月に出る「手当て」が15万円、二ヵ月に一度だから月給7万5千円になる。まさに天と地、「番付一枚違えば天国と地獄」である。部屋での待遇も雲泥の差だ。付き人に褌を担がせる立場から、褌を担ぐ付き人になるのだから。
 さすがに北桜にはみなが気を遣っているのが伝わってくる。
 北桜はまだ親方株を取得していない。そんな餘裕もなかったのか。引退後はどうするつもりなのだろう。あの若さで早くも取得している稀勢の里あたりから借りたりするのか。

 幕下筆頭だから4勝1敗で勝ち越したからまず確実に上がれるだろうが、このまま5勝6勝と伸ばして欲しい。同じ上がるでも4勝3敗ではひどい。注目したい。しかしBSのない私には彼の相撲を観る術がないのだった。

 安心できるのか!?

 11日目の結果を見たら負けていた。4勝2敗である。2枚目の徳瀬川が6戦全勝。彼が全勝優勝で十両入するとして、その他5勝1敗も多い。周囲に6勝1敗が並んだら筆頭とはいえ4勝3敗であがれない可能性だって出て来る。ここはなんとしても5勝2敗にせねばならない。

 
十一日目
 高見盛、完敗 ○山本山 ●高見盛

 序盤から順調に来た高見盛がここで一頓挫していてなかなか勝ちこせない。
 今日の相手はあの大デブ、汚い肌の山本山。ほんとになあ、あれだけ汚いんだから内臓が腐っていると思うぞ。

 正面からぶつかった高見盛が土俵際まで追いこむが、そこでひょいと体を替えられて寄り切られてしまった。体重という武器を思い知らされた。
 好きな力士が嫌いな力士に負けると悔しい。泣き顔に高見盛と同じ顔をする。

 山本山は嫌いだが、嫌いだからこそ、好きな小兵力士が挑むとき、敵役として楽しめると知った。
 私は、力士に関して、大好き、好き、興味なし、ぐらいで、嫌いはいない。「興味なし」が最低の評価だった。山本山はひさしぶりに嫌いだと思える力士なので、これからはアンチで楽しませてもらおう。
 私とは無縁のその楽しみを思うと、朝青龍嫌いのひとはずいぶんと楽しい(=悔しいも多いが)のだろうと知る。負けたとき座蒲団を飛ばしたくなる気持ちが分かる。

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 出島、5勝目

 出島が十両陥落の心配をしている。そういう地位だ。十両に落ちたら引退するのか。元大関としての誇りもあろう。すでに年寄株は収得している。
 スポーツ報知が星取を勘定していた。12枚目なので、4勝だと陥落の危機大なのである。今日勝って5勝6敗。勝ち越すのがベストだが、とりあえず陥落の危機は去った。

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 豊響、勝ち越し

 琴奨菊と豊響の勝った方が勝ち越しは豊響の勝ち。
 豊響も前に出る相撲を取るいい力士だ。入門したのが二十歳と遅かったから(高校を出たあと普通に働いていた)24歳だけれど、4年での出世は充分早い。
 網膜剥離で苦しんでいた。勝ち越しインタヴュウでは、もうだいじょうぶとのことだが、激しくぶつかるから心配な病気である。

 今場所は幕下下位の相撲にも熱戦が多い。良い場所だ。

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 なにやら怪しい雰囲気 ○豪風 ●豊ノ島

 土俵上でふたりが抱きあったまま動かなくなったのだが、ふつうの四つ手はなく、かなり立ち上がった奇妙な姿勢で、豊ノ島の右手が豪風の頭をかきいだくようになり、豪風は豊ノ島の胸に顔をうずめているような形になったので、「デブホモが抱きあっているよう」なのだ。ぜひとも写真があったら載せたい。ないだろうけど。

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 水入り大相撲 ○時天空 ●阿覧


 4分11秒の勝負。
 だいたいが水入り相撲は凡戦が多い。角突きあわせた牛みたいに土俵上で動かなくなり水が入ることが多い。この勝負も水の入る4分までは凡戦だった。いや、最初は動きまわり熱戦だったが、互いに決め手のないまま膠着してからは凡戦だった。

 攻めあぐねる阿覧に、北の富士が「まだ相撲を知らないから攻め方がわからないんだね」と言っていた。時天空の方は、角突きあわせた状態で、水入りの前は自分の左手を膝の上におく態勢。やすんでいるのか(笑)。

 圧巻だったのは水入り後。阿覧が攻めてカンヌキを決める。時天空の両ひじは完全に決まっていた。完全に寄り切られる態勢。なのに時天空は俵に足の掛かった状態でそれに耐える。そのあとカンヌキでは決まらないと覚悟した阿覧が攻め手を替えようとした隙に押しだた。
 北の富士が「カンヌキ、決まってたよねえ、よほど躰がやわらかいんだね」と感嘆していた。あんなに完全に決まっているのによくぞ残したものだ。
 水入り後の11秒だけでも「今日の一番」に値する。阿覧のざんばら髪。鳴り止まない拍手がそれを証明していた。



 今日は国会中継があり綜合テレビでは5時5分から6時までの中継。外出した私は録画予約していったが、帰宅して再生すると肝腎の結びの一番、白鵬対琴光喜が途中で切れていた。この水入り相撲で中継が6時を超えたのだ。けっきょく深夜のダイジェストで結びの一番を見ることになる。

 という迷惑?を考えても価値のある一戦だった。時天空は飄々と引きあげていった。すごいスタミナだ。負けた阿覧はざんばら髪で息を荒くしていた。またひとつ相撲の奥深さを知ったことだろう。
 時天空は猪木時代の藤原のように私が実力を買っている力士だ。このひと、相手を怪我させるつもりならあぶないモンゴル相撲の技でいつでも出来るという肝の据わったこわさがある。それが私の妄想だとしても、そう思わせてくれる存在は貴重だ。

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 ○岩木山 ●垣添

 それまでこれを今日の名勝負にしようと思っていた。対戦成績は岩木山の15-0。ちいさな垣添が積極果敢に休むことなく攻めて攻めて攻めぬいたが、最後の最後つかまって寄り切られた。勝った岩木山がぽんと垣添の肩に手を置いたのが、先輩が後輩の健闘を称えているかのように見えた。年齢で岩木山が3歳上、入門で1年早い。青森大学と日体大だから先輩後輩ではない。

 花道を引きあげる垣添が自分の右腿を叩いてひとこと何か叫ぶ映像が収録されていた。チクショーだかなんだかわからないがいかにも悔しそうだった。

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 龍二さん、6敗目

 千代大海が安美錦に敗れて6敗目。さすがに陥落したら引退だろうから秒読みに入ってきた。今場所限りでチヨスが見られなくなるのなら、残りの日々、しっかりと見とどけたい。

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 把瑠都、負け越し ○琴欧洲 ●把瑠都

 かなり足が悪い。土俵下に落ちたあと、それだけで苦しそうだ。なんとか千秋楽まで取るのか。怪我に苦しむ相撲人生になりそうだ。三場所まもった関脇から陥落して来場所はまた平幕からやりなおし。とにかく怪我を治してくれ。願うのはそれだけだ。

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 ×今日の最悪× ○日馬富士 ●稀勢の里

 日馬富士が右に変った。稀勢の里の左手を取って投げる。決まり手は「とったり」。稀勢の里は裏返った。


(コピープロテクトの掛かった某スポーツ紙より)

 今日一番の期待の相撲は1秒で終った。
 勝つことが全てだからケチはつけないが、安馬時代からマイクを向けられるたびに常に口にしてきた、「一番一番、お客さんによろこんでもらえる相撲を」には反している。場内に満ちた失望の溜め息に気づかないわけではあるまい。

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 白鵬、大相撲の末に31連勝

 いい相撲にもどった朝青龍が魁皇を軽くくだす。朝青龍の速さと切れの前にはキラー魁皇も形なし。琴欧洲はこの朝青龍の勝ちかたを学ぶといい。あんなまるで「小手投げをやってください」とでも言うかのような相撲はいけない。

 結びは白鵬と琴光喜。琴光喜の相撲がここにきてぐんとよくなっているだけに楽しみだ。
 というところで録画が切れた。これは焦る。あの水入り相撲のせいだ。いやすばらしい一戦だったので「せい」にするつもりはないが。

 ということでこれは明け方のダイジェストで見た。1分23秒の大相撲。低く構えた琴光喜には内無双もあるし、冷や冷やしながら見た。最後、追い詰められた琴光喜の不用意な巻きかえの瞬間、白鵬が一気に出た。あの巻きかえは無理だったと思う。熱戦だった。

 ただ終ったあと、解説の北の富士は琴光喜を無策と厳しく批判していた。勝っても負けてももっと攻めて行かねば白鵬には勝てないと。
 そうなのかも知れないが、私には琴光喜は充分にがんばったように見えた。それは白鵬が強引な仕掛けに出られなかったことでも判る。それだけ琴光喜は怖いのだ。



 さて明日の楽しみ(といってももう今日だが)は何があるだろう。
 日馬富士に把瑠都か。対戦成績は5-3で本当は楽しみにしたいのだが、あのびっこ状態の把瑠都では、朝青龍戦のように速い動きで振りまわされて終りだろう。今場所は期待できない。
 朝青龍に琴光喜。先場所ひさしぶりに琴光喜が勝っている。これはまちがいなくいい相撲になるだろう。朝青龍、また怖くなって張り差し復活か。

 千代大海に琴欧洲。これも見逃せない。ここのところもう琴欧洲が圧倒していて対戦成績は15-6。不自然な相撲にならないか、よく見よう。ここで琴欧洲が負けたらファンをやめる。

 鶴竜が安美錦。0-6で一度も勝っていない。安美錦の巧さがよく出ている結果だ。これ、楽しみだ。どうなるんだろう。

 今日も国会中継で地上波は5時からか。BSがないって惨めだな。

 
十二日目
 水入りを知らなかった阿覧!

 大相撲夏場所11日目(20日、両国国技館)時天空と阿覧の取組は、土俵中央でがっぷり四つに組んだままこう着状態となり、05年九州場所での隆乃若と豊ノ島戦以来の水入りとなった。

 取組を一時中断し、再び組み直して再開。時天空が決め出しを食らうも、土俵際で粘り、最後は一気に寄り切って阿覧に逆転勝ちした。時天空は6勝5敗と白星先行、阿覧は4勝7敗と負け越しのピンチ。

 水入りの大熱戦を制した時天空は「しんどかった。下手に動けないので辛抱するしかなかった。長い相撲は得意です」と喜んだ。
(サンスポより)


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 昨日の時天空阿覧戦は水入りの大相撲になった。ところが今日アナが語っていたところによると、なんと阿覧は「水入りというルール」を知らなかったのだとか。行司があいだに入ってきて相撲を止めたので何事が起きたのかと思ったという。なんだかわからないけど相撲を止められたので、とりあえず従うことにしたのだそうな。
 信じがたい。こんなことがあっていいのだろうか。

 思い出すのは平幕時代の白鵬の「送り足」だ。やっと日本の相撲の技を覚えてきていろいろとやってみたい白鵬は、あのころ立ちあいで変化してみたり、あれこれやっては決まり手を楽しんでいた。立ちあいの変化を見て、私は苦々しく思ったが、これもまた覚えて行く一環なのだろうと思った。この吊りだしは意表を突く大技だったのでよく覚えているシーンだ。

 あの日、高々と吊り上げて相手を運んだ白鵬は、足が出たら負けてしまうから早めに相手を降ろした。モンゴル相撲には土俵がない。
 すると降ろした相手はまだ土俵の中だった。そこから相撲続行である。会場には笑いが湧いた。吊り上げた場合はそのまま土俵外まで運びだして自分の足が出ても「送り足」で負けにはならないことを知らなかったのだ。
 ひどい話だ。そんなことすら知らない力士が幕内で相撲を取っている。野球で言うなら、ボークやデッドボール、エンタイトルツーベースのようなルールを知らないままやっているようなものだ。むろん白鵬の責任ではない。異国人の彼にそれを教えていない指導者側の問題である。



 勝負のあと、阿覧は初めて「水入り」というルールを教えてもらい、「水なんかいらないよ!」と負けたことが悔しく、吐きすてるように言ったとか。
 アナはそれをおもしろおかしく伝え、解説も「水入りになることを願って相撲とるわけじゃないから、そりゃあ知らないよねえ」とほがらかに語っていた。でもこれって問題じゃないのか。そんな明るく楽しい話題じゃないだろう。

 朝青龍問題で、親方の高砂はいったいどういう教育をしているのだ、朝青龍に力士としての心構えを教えているのか、と話題になったが、それ以上にこれは「相撲協会はきちんと力士教育をしているのか!?」と問題にすべきことだ。いわば高速道路をぶっとばしている専業運転手が交通標識を理解していないのと同じだ。高速道路を逆走して大事故を起こし、「えっ、逆に走っちゃいけないの!?」と言ったようなものである。

 知らなかったロシア人力士阿覧にはまったく罪はない。だって教えられていないのだから。
 ほのぼのムードでそれを伝えているNHKアナ、同調する解説、薄ら寒いものを感じた。これなら朝青龍のような品格のない横綱も出て来るはずである。品格なんて形のないもの以前に、最低限のルールすら知らずに相撲を取っているのだ。誰が朝青龍を責められよう。

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 鶴竜、安美錦に初勝利

 鶴竜が今まで一度も勝てなかった安美錦を軽々と料理。7勝目。もう勝ち越しは間違いない。小結の座を守る。安美錦は負け越し。これでまた来場所は横綱大関と当たらない地位まで下がってしまう。残念。しかし膝が悪くねばれないのだからしょうがない。こんなふうに勢力は入れかわって行くんだなと複雑な思い。

 先日「大相撲記録の玉手箱」を見ていたら、安美錦が幕内最年少だった数場所があるのを知った。なのに三役になったときは今度は史上何番目かのスロー出世になっていた。2000年入幕で初の小結が2006年だからたしかに時間が掛かっている。
 来場所は安美錦朝青龍が見られないのか。残念である。

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 豊真将、いまだ全敗 ○栃煌山 ●豊真将

 負けはしたがいい相撲だった。三度ぐらい落ちたと思ったが豊真将は落ちずに食いついていった。これで12連敗。二桁勝利を二場所続けて、豊真将完全復活と思ったが、あまりに厳しい結果だ。

 同じ久々に上位に上がって負けが込んでいた玉乃島は、いつしか5勝7敗まで星をもどしている。同じく全敗だった豪風も2勝をあげた。そのうちのひとつは豊真将だが。

 2勝7敗と追いこまれた栃煌山は、昨日こども時代からのライヴァル豪栄道を倒し、今日は豊真将に勝ってこれで5勝7敗。しぶとい。

 一方、4勝1敗、大関を三人破って序盤絶好調だった豪栄道はここにきて急ブレーキ。5勝7敗と負け越しの危機。いやはやなんとも。

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 日馬富士、全勝 ○日馬富士 ●把瑠都

 予想したとおり、日馬富士が速さで翻弄。最後は把瑠都の後ろに回って送りだした。
 四人いる関脇小結の内、把瑠都が最初の負け越しとなった。早く怪我を治して出直してくれ。

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 千代大海、いよいよ ○琴欧洲 ●千代大海

 互助組合が動くのかと目をこらしたが、心配なく琴欧洲楽勝。
 明日は琴光喜戦。見逃せない。

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 白鵬、32連勝 ○白鵬 ●魁皇

 白鵬が貴乃花の30連勝を超えたとき、貴乃花は「いい相撲を取っているからもっともっと記録は伸びるでしょう」とエールを送った。ふたりは親しく言葉を交わしたことはないそうだが、記者を通じてそれを知った白鵬は喜んだという。
 貴乃花は朝青龍の優勝回数が自分を超えたとき無言であり、コメントを拒んだ。そこに貴乃花の気持ちが表れている。

 貴乃花の30連勝は、横綱になるのを見送られたあと、大関として全勝優勝2回という文句なしの成績をあげて昇進するときのものだった。その前の場所の千秋楽で負けていて、横綱になって初日に負けているから30連勝でしかないのである。なんとももったいない。新横綱の場所で序盤を無事に勝ちぬけば40連勝ぐらい出来ただろうに。

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 琴光喜、惜しい! ○朝青龍 ●琴光喜

 成績は圧倒的に差がついたが、毎場所琴光喜と朝青龍の相撲はおもしろい。先場所は琴光喜が勝っている。
 今日もいい相撲。朝青龍の強引な巻きかえの瞬間に琴光喜が一気に寄った。昨日巻きかえのときに白鵬に攻められたのと逆のパターン。一気に土俵際まで持っていったがすでに巻きかえは成功し朝青龍は両差しになっていた。土俵際で体を替えられて敗れる。決まり手は下手投げだが、投げというより体を替えられた感じだ。

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 モンゴル人力士讚歌

 創設5年目にして貴乃花部屋からやっと各段優勝者が出そうだとスポーツ紙にあった。貴ノ岩だったか。序二段で5連勝とか。
 この力士がモンゴル人力士と知って驚く。そういや純潔を貫く貴乃花部屋にもモンゴル人力士が入門したと話題になったことがあった。すごいよなあ、あの貴乃花の変人ぶりが作用したのだろう、あれほどの大横綱だったのに弟子に関しては妙に貧相な貴乃花部屋から、序二段ではあるが、有望な力士が育ちそうだというニュースがあり、それがモンゴル人力士なのだ。どう考えてもこれは「貴乃花親方の獨自の力士育成方が実を結び」というより、「モンゴル人力士はすごいなあ」の世界だろう。たいしたもんだ。人口たった220万人の國なのに1億2千万の國で、こんなにすぐれた大相撲力士を出すのだから。

 モンゴル人力士の凄さ、すばらしさは、両横綱とそれに続く日馬富士で語られがちだが、真に凄いのは、「関取成り上がり率」だろう。「一部屋一外人制度」の元でこうなのだ。そもそもその「一部屋一外人制度」が、あまりにモンゴル人力士が強いことによって急いで作られた破防法みたいなものである。もしもそれをしなかったら今ごろ十両以上の半分はモンゴル人で占められていた。

 幕下筆頭の北桜が4勝を挙げて勝ち越し決定し、来場所の十両復活を確実にしたというニュースの時、2枚目に6戦全勝の徳瀬川というのがいることに気づいた。優勝はこれかと思う。
 今日この徳瀬川もモンゴル人力士と知る。もう6年も取っていて今度が初の十両だし年齢も26になるからたいしたことはないのだろうが、それでも何か話題を見つけるとモンゴル人力士ばかりである。

 幕内では玉鷲も翔天狼もいい。モンゴル人力士はすばらしい。
 私は白人の阿覧も栃ノ心も大好きだし、外国人力士に偏見はないのでもっともっと大いに活躍して欲しいと思う。相撲内容さえ良ければ国籍なんてどこでもいい。しかしいくらなんでもモンゴル人が多すぎないか。どうやらブラジル人やアルゼンチン人は相撲には向いてないようだ。入門させても伸びてこない。これから増えるのは相撲適性のあるロシア系だろう。つまり私は活躍する力士の大勢が外国人力士になっても何等不満はなく、現状よりももっと増えてもいいと思っているぐらいなのだが、もっと中国人や朝鮮人がいてもいい。中国の大男なんて強そうなんだけど合わないのだろうか。


 
十三日目
 確認する白鵬好き ○白鵬 ●日馬富士

 今日はここ二日国会中継で5時過ぎからの放送だったのを謝る?かのように、綜合放送も午後3時15分からたっぷりの放送。ここのところ録画しておいて夜に見たり、録画出来ずに深夜のダイジェストで見ていた当方も早々とテレビ桟敷に陣どる。



 張り差しの把瑠都が豪栄道を小手投げで仕留めるのや、崖っぷちの千代大海の変化や、魁皇の不様な張り差しによる敗戦や、同じく不様な張り差しながら、琴欧洲を豪快にぶん投げた朝青龍や、それらを寝転んで冷静に楽しんでいたのに、いよいよこの今日の大一番になると力が入り、仕切りと共に緊張は高まって、白鵬と一緒に仕切り、間際になると正座し、両手を組んで祈っていた。
「白鵬、負けるな」だ。朝青龍が謹慎のあと、モンゴルからもどってくるとき、モンゴルまで迎えに来てくれたかわいい弟分の日馬富士に水をつけている。

 初場所、その朝青龍に奇蹟の復活優勝をされ満天下に恥をさらした白鵬。そしてその明け方まで続いた優勝飲み会に、深夜駆けつけた白鵬。
 以来それがなさけなく、私は白鵬を応援するコメントを書いたことはない。二場所全勝優勝したとしても、それでもまだ許せないほど腹立った。ここのところここに書いているのも、朝日杯批判のために白鵬を優等生とする世評に対し、白鵬にもマナーに反する行為は山とあり、白鵬も朝青龍も本質は同じモンゴル人力士だということばかりだった。

 絶対に日馬富士ごときに負けてはならない。平幕の頃からあれほど好きな安馬も、ここにくると「ごとき」になった。いかに自分が十両時代から応援してきた白鵬が好きで好きでたまらないかを知った。私は両手を組み合わせ、画面を凝視し、絶対に負けるんじゃないぞと祈っていた。

 日馬富士は何をやるかわからない。だからよく見て立て、と祈る。
 両者、まともに立った。白鵬、右下手、日馬富士、左上手の態勢。
 焦るな、と声を掛ける。白鵬の缺点は日馬富士や稀勢の里に負けるときに顕著だが慌ててバタバタするときだ。それで自滅する。落ちついてじっくり攻めろと、両手指を痛くなるほど組み合わせて祈る。
 右下手だけのいやな形だ。両者、半身になって構えている。変則相撲は日馬富士の方が巧い。日馬富士が何度もだし投げで体勢を崩そうとする。白鵬、崩れない。1分を超えた。
 そのとき白鵬の足が飛んだ。「すそ払い」。アナが叫ぶ、「横綱は足技もすごかった!」。

 自分がどんなに白鵬好きなのか確認した一番だった。ギリギリになるとそれが出る。それはあの「朝青龍奇蹟の復活優勝」のときに感じた。私は朝青龍が好きでこの「相撲のページ」でもいちばん多く書いているのは「朝青龍擁護」なのだが、白鵬が朝青龍に負けて「奇蹟の復活優勝」がなったときは、全身から力が抜けてしばし虚脱状態に陥った。相撲好きの友人のIJが「やりましたね!」とメールをくれたが返事を書く気にもなれなかった。IJは私が朝青龍好きであることを知っていて、彼もまた朝青龍が好きで、私の「高砂批判」に同調してくれていたから、朝青龍優勝は私も大はしゃぎ、いやはしゃがなくても「大感激」ぐらいには思ったようだ。
 だが私の朝青龍好きは、「世間対朝青龍」のときの朝青龍贔屓であり、白鵬との対決になると私はやはり白鵬好きなのだった。

 明日は琴欧洲。千秋楽が朝青龍。全勝して二場所連続全勝優勝だ。それで35連勝、朝青龍の記録に並ぶ。

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 龍二さん、続行らしい

 変化して琴光喜に勝つ。本来なら失望の溜め息が漏れるのに、なのに場内、あたたかな拍手(笑)。
 今場所負け越したら引退だと思い、最後の相撲をしっかり見ておこうと思ったら、「陥落しても取る」と宣言したとか。なら見る必要もない。

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 ○把瑠都 ●豪栄道

 把瑠都、何の意味もない張り差しの立ちあい。もう負け越したしヤケクソか(笑)。ペチョンという音の何の威力もない張り差し(笑)。豪栄道、それをかいくぐって両差しになるが、そこから振りまわしてあっけなく把瑠都の勝ち。躰がデカいことは強味だ。両差しを逆用できる。
 豪栄道、負け越し。3大関を負かした4勝1敗の序盤から10勝はかたいと読んだ自分がひたすら恥ずかしい。関脇二人、陥落。出なおせ、ボケ!

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 小結鶴竜、勝ち越し!

 小結鶴竜がしっかり勝ち越した。来場所は関脇だ。上がってくるのは稀勢の里と琴奨菊か。
 7日目まで横綱大関相手に2勝5敗。そこから6連勝で8勝5敗とした。先場所と同じ展開。先輩でありかつてはずっと前を走っていた琴奨菊を相手にしない。アナが「こんなに差がついたのか」と唸っていた。
 関脇になっても、横綱大関戦は五分の星でも、そのあと下位相手にしっかり勝ち越すだろう。願うのは琴欧洲戦のような変化をしないこと。あとは、日馬富士に勝てるようになることだ。でもこれはかなり力の差がありそうだから当面は無理か。

 鶴竜のもの足りなさは、白鵬、朝青龍、日馬富士という三強に勝てないことだ。安美錦的な魅力がない。現実に勝てないことより、勝つかも知れないという未知の怖さがない。今場所も落ち目の千代大海と変化で琴欧洲に勝っただけだ。いや初日の朝青龍戦は惜しかったが。でもあれもバカ青龍が張り差しで隙を作ったからか。あそこで鶴竜が勝っていたらバカ青龍は気落ちして手抜き相撲となり今場所のおもしろさは半減した。あれはあれでよかったのか。
 とはいえ、これからだ。来場所は三強をひとつ食ってくれるか。

 万全の安美錦と豊ノ島がいてくれると横綱大関戦がおもしろい。ふたりとも体調が悪く大きく負け越した。つまらん。来場所の楽しみが減った。

 もうひとりの小結栃煌山は2勝7敗から4連勝して6勝7敗まで持ちなおしてきた。しぶとい。あと二日、勝ち越せるのか。千代大海よりこっちが気になる。
 あ、明日はこれまたしぶとく6勝7敗まで星をもどしてきた旭天鵬戦だ。つまり明日、栃煌山と旭天鵬のどちらかが負け越す。う〜ん、残酷だな、相撲は。明日の注目は朝青龍日馬富士だが、この一戦も見逃せない。

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 ○稀勢の里 ●魁皇

 魁皇の張り差しは威力がなく、稀勢の里圧勝。魁皇はもう勝ち越したし今場所の仕事はおしまいか。明日は千代大海戦。どんな相撲になるのか注目だ。

 ○朝青龍 ●琴欧洲

 今日は張り差しだろうなとほくそ笑んでいたら見事に張り差し。このごろドルジの心が読める(笑)。しかしまあ琴欧洲をぶん投げた下手投げは見事。まるで柔道のよう。いや柔道でもあんなに見事に宙は舞わない。203センチの琴欧洲が空を舞った。でも琴欧洲もよく粘って、これはいい相撲だった。
 アナが、「土俵下の白鵬と日馬富士に、おれを忘れるなと言うように」と大昂奮。千両役者である。明日、一敗を守るのはどっちだ。いずれにせよ結末は白鵬の全勝優勝でないと困る。
 
十四日目
 マスクはおひとり様ひとつまで

 洗剤を買いに近所のドラッグストアに行ったら、レジのところにそう書いてあった。新型インフルエンザの影響でマスクが売切れ、品薄状態なのだとか。
 誰がいったいそんなにマスクなんてものを買うのだろうと思ったが、そのあとスーパーに行くとレジのおばちゃん連中がみなマスクをしていた。今時のマスクは鼻から口を覆いカラス天狗(笑)みたいになるので気味が悪い。あんなものでどこまで予防効果があるのか。ああいうものをつけて身がまえたとき、すでに負けているようにも思うが。

 外国人が冬の日本に来たとき、あのマスクをつけた異様な姿の行列に恐怖を感じるというが、なんなんだろうね、あれは。まあ私はキョセンじゃないから「外国では」なんて言う気はないが。

 昭和48年のオイルショックのときに、トイレットペーパーがなくなるとスーパーに行列が出来た。くだらんなあ、いったいどこのバカが並ぶんだ、そんなものなくなったらなくなったで新聞紙で拭こうが手で洗おうがなんとでもなるだろうにと父と笑っていたら、母がしっかり並んで山のように買いこんできた。
 私は女を心から尊敬し崇拝するものであるが(だってどんな男だって女から生まれてきたのだから)こういうとき、しみじみ女ってのは……と思う。

 ドラッグストアの「マスクはおひとり様ひとつまでにしていただきます」という高飛車な貼り紙を見て、風が吹けば桶屋が儲かるで、どんなときでも儲かる商売はあるんだなと溜め息つきつつ帰宅したら、H子さんから留守電。「運よくマスクが買えたので、もし買えなかったら送りますが」とのこと。ありがとうございますとお礼を述べたあと、「私はマスクをつける気はないのでけっこうです」とメールで返信した。H子さんはこういうことに敏感だから、もうきっとずいぶん前からあの「カラス天狗」になっていて、今回も買い溜めしたのだろう。知りあって30年になるのだからいいかげん私の性質も理解してもらいたいと思うが、ひととひとの理解度なんてこんなものなのだろう。と嘆くより、マスクを送ってやろうかと心配してくれた友人がいることに素直に感謝することにした。

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 続・モンゴル人力士讚歌

 序二段で貴ノ岩が7戦全勝。もうひとり全勝が幕下筆頭にいて、貴乃花部屋初の各段優勝は千秋楽決戦になる。貴ノ岩はすごい下の方の番付だから力は段違い。さすがに苦しいか。
 ところで「貴ノ岩」だが、これは親方の「貴ノ花」が父譲りの「ノ」から「貴乃花」になったように、今は「ノ」で、十両、あるいは幕内にあがったときに「乃」にするのではないかと、これは私の推測。

 三段目は青狼。これもモンゴル人力士。部屋は錣山部屋。寺尾の錣山部屋も豊真将に続く期待の力士は「ひとりしか認められていない」モンゴル人力士(=外国人力士)。強さ、速さ、巧さと共に日本人力士の美学を兼ね備えていた貴乃花や寺尾に、弟子の出世という親方冥利を味わわせるのもまたモンゴル人力士。どこまで凄いんだ。

 幕下優勝は徳瀬川。黒瀬川の桐山部屋が1995年の創設以来14年目にして初めて育てて関取は、やはりモンゴル人力士。インタビュウで、モンゴルのお母さんに電話したら泣いていたと語っていた。6年かかっているからお母さんもうれしかったことだろう。

 この「お父さん、お母さん」と「父母」の使い分けを語学の天才モンゴル人力士もまだマスターしていない。白鵬ぐらいになると「父」と言って欲しいのだが相変わらず「お父さん」だ。

 十両はひどい混戦になっているが、先頭に立っているのは猛虎浪、光龍など、ここもモンゴル人力士の争い。
 幕内最高優勝が白鵬、日馬富士、朝青龍の三人に絞られているのは言うまでもない。
 序の口(拓大出身の中ノ海優勝)以外はみなモンゴル人力士の争いである。すばらしい。すごすぎる。

 私は外国人力士大好きだからモンゴル人力士の大活躍になんの不満もないのだけど、同じ国際化でも琴欧洲や把瑠都がこういう連中の中にいたときはもっとおもしろかった。もちろん栃ノ心、阿覧も。頭抜けた連中がみな幕内に行ってしまったのだろうけど、いくらなんでもモンゴル人力士一辺倒過ぎる。
 といって「がんばれ、日本人」などと言うつもりは毛頭ない。魅力的な日本人力士もいないし、外国人力士全盛でいい。言いたいのは「もっと頑張れ、モンゴル人以外の外国人力士!」ということだ。

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 豊真将、14連敗

 安美錦に敗れて14連敗。もし明日も敗れて全敗だといつい以来の記録になるのだろう。今日も相撲内容はわるくなかった。粘りがないが。
 好きな力士の敗戦にしっかりつきあうのもファン気質としてたいせつだ。私は14日間、しっかり豊真将につきあった。

 24日のニッカンスポーツで18年ぶりと知る。

豊真将18年ぶり14連敗/夏場所記事を印刷する

<大相撲夏場所>◇14日目◇23日◇東京・両国国技館

 豊真将(28)が安美錦に押し出され、91年名古屋場所の板井以来となる初日からの14連敗を喫した。初場所、春場所はともに11勝を挙げて2場所連続で敢闘賞を受賞していただけに、支度部屋に帰ってからも目はうつろで「前に出る相撲が取れてないんで…。(師匠の錣山親方=元関脇寺尾から)『何事も経験だ。元気を出して思い切りいけ』と言われているんで元気な相撲で勝てれば」。千秋楽で今場所初白星を目指す。




 旭天鵬、しぶい ○旭天鵬 ●栃煌山

 6勝7敗の対決は旭天鵬の勝ち。小結栃煌山は負け越して陥落決定。これで把瑠都、豪栄道、栃煌山が陥落。守ったのは鶴竜のみと関脇小結4人の結果が出た。

 旭天鵬は40になって幕内にいられる怪物なのに、やはり2年後には大島部屋を継ぐために引退なのだろう。残念だ。と気の早い嘆き。



 千代大海、7勝7敗

 大関互助組合発令か。勝ち越している魁皇が一方的に押しだされチヨス、7勝7敗。すべては明日の把瑠都戦にたくされた。把瑠都はすでに4勝10敗。勝ち越してまたも角番クリアか。せっかく関脇に落ちても取るというので楽しみにしていたのに。見逃せない一番となった。

 対戦成績は把瑠都から見て5-4。ここのところ把瑠都の3連勝だ。まともなら負けるはずはないのだが、そこはそれ、人情の世界。把瑠都もすでに負け越していてどうでもいい心境。千代大海は関脇に落ちても取る、10番勝てば復帰できる、と言っているが、今のチヨスに関脇で10番勝つ力はない。となるとここで把瑠都に勝たせてもらうのか。
 無気力な把瑠都を千代大海がペチョペチョ突っ張りで押しだして勝ち越し、同情のあたたかい拍手に包まれる? 把瑠都が怪物相撲で大関にしがみつくチヨスに引導を渡してくれることを願う。優勝よりも興味深い。



 鶴竜、9勝目

 速い相撲で琴光喜を押しだす。決まり手は「押したおし」。なるほど、あれは琴光喜がひっくり返っているから、押しだしではなく「押したおし」なのかと思う。完勝だった。辛口の解説九重も強くなったと認めていた。
 次の大関候補としてはすこし小兵で大物感はないが実績的地位的には文句なしの大関候補一番手になる。
 明日は2敗の稀勢の里との対決。来場所は東西の関脇になるふたりだ。東の座には鶴竜が就く。ともに負けられない一戦になる。対戦成績は鶴竜の2-4。楽しみな一戦である。



 琴欧洲、白鵬を投げる!

 琴欧洲が見事な上手投げで白鵬を投げた。琴欧洲の潜在能力が発揮されたいい相撲だった。白鵬の連勝は33でストップ。なんとしても朝青龍の35を超えて欲しいと願っていたのでそれだけが残念。これでまた一から出直しである。背中に砂をつけた白鵬は苦笑い。これで圧力から開放されたか。

 立ちあう前、すでにもう優勝とも無縁で星のわるい琴欧洲が、変化のような外連を使う可能性もあったので、白鵬によく見て立てと願った。だが琴欧洲は堂々と真正面から立ち、あの白鵬をぶん投げて見せた。琴欧洲にそんな心配をした自分が恥ずかしくなった。その琴欧洲の堂々ぶりは、昨日朝青龍に柔道技のようにぶん投げられたからだろう。アスリートとしてスッキリしたのだ。

 好きな白鵬の連勝を止めたのが好きな琴欧洲であり、内容がよかったのでなんの不満もない。



 ○日馬富士 ●朝青龍



 バカ青龍、今日は左手で無意味な張り差し。届かなく、効果もなく、左が甘くなっただけ。外掛けで転がされ背中一面の砂。立ち上がれれず土俵に這いつくばる。付き人に両肩を抱えられての退場。
 張り差しというくだらない立ちあいの連発、弟分として可愛がってきた日馬富士による引導、これで落城なら、申し分のないシチュエーションになる。



 さて、明日の出場が危ぶまれているがどうなのか。





 明日、日馬富士は琴欧洲。昨日の朝青龍との敗戦、今日の白鵬への勝利で、琴欧洲の目が覚めたなら、明日は楽勝もあろう。対戦成績は琴欧洲の10-9。この一年は2-4。先場所は琴欧洲が勝っている。
 白鵬は朝青龍戦。朝青龍は出て来るのか。

 ともに勝っての優勝決定戦。白鵬の連覇か日馬富士の初優勝か。
 日馬富士が敗れ、白鵬が勝っての優勝。
 日馬富士が勝ち、朝青龍が弟分のために執念で白鵬を破り、日馬富士初優勝。

 どうなることやら。
 白鵬に二場所連続全勝優勝しろと願っていただけに、それがぷつんと切れた今は、もうどうでもいい感じだ。

 窓の外から激しい雨音。オークスは重馬場か。
 
千秋楽
 世間の中の大相撲

 友人と川口で会うために4時前に家を出る。
 武蔵野線はオークス帰りの府中からの客で混んでいた。
 ギャンブル線と呼ばれるこの列車は中山競馬場のある西船橋と東京競馬場のある府中を結んでいて、あいだに松戸競輪、浦和競馬場、川口オートがある。詳しくはもっとあるのだろう。私は競馬しかやらないので知らない。でもこの路線に住んだら中山も府中も行きやすくていいなと思ったことはある。今は昔。

 大相撲は録画予約してきたが電車の中のケイタイでも見た。ところがこの武蔵野線、不安定な高台を走るのですぐに強風で運行停止になる一方、やたらトンネルが多い。ワンセグでテレビを見るには最も適していない。頻繁に静止画状態になった。

 約束の5時40分に川口駅に着いたときが白鵬と日馬富士の優勝決定戦。駅前の大型ビジョンに映しだされていた。しかし見ようとするひとはまばら。かたわらを中年の男ふたりが、「うん? 相撲か?」「モンゴル人同士だよ」と言って足を止めることなく通りすぎた。
 世間とはそんなものか。

 もっともこんなものはいつだって世間の評判とは関係なく「ぶれない熱心なファン」を中心に動いてきた。これでいいのだろう。

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 豊真将、初日

 電車の中でケイタイの画面を見つめているのはみっともない。ほとんどはそれは若者がメールの送受信をしている姿だ。
 ふだんやらないそれを、今日はやってしまった。思えばワンセグ附きケイタイを買ってから、なんどかそれを見たのは、みな相撲のような気がする。

 豊真将が嘉風を相手に何度も攻めこまれながらしぶとく粘り、最後に寄り切って勝った。千秋楽で初日。

 相撲内容は悪くなかったからこの内容は不思議だった。眠れない毎日だったろう。今夜はぐっすり眠ってくれ。これも修業のひとつだと錣山は励ましたとか。いい師匠と弟子だ。
 記録に残る不名誉な連敗を経験して、来場所の豊真将はどう変るか。楽しみだ。

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 チヨス、空気投げ! ○千代大海 ●把瑠都

 ちょうど電波状況の悪いトンネルの中で、この「大一番」を見逃した。
 深夜帰宅してから、インターネットで見た。(この文章を書いている今もまだ私は昨日の録画した大相撲を見ていない。)

 いくらなんでも把瑠都、下手すぎる(笑)、負けるのが。
 チヨスの手が躰に触れてないのにバレリーナのように舞って自分から土俵を飛びだした。チヨスの要求を受けいれたのはいいが演技が下手なのだろう。その点、14日目の魁皇なんてうまいものだ。

 2ちゃんねるの相撲板を覗くと、「千代大海、空気投げ!」「龍二さんは気功かなんかをマスターしているのか!?」と盛りあがっていた。盛りあがってはいたが、白けつつやけくそで楽しんでいるのであって、健全な盛りあがりではない。

 把瑠都の不自然な負けかたに対し、「千代大海のいなしに対し、躰がついて行かず回転しただけだ。ごくまともな相撲」という擁護もあった。私は正統派?なので、こういう意見を支持したい。

 だがインターネット時代とはすごいもので、そういう意見が通用しそうなNHKの映像とはまたべつに、観客席から客がビデオカメラで撮った映像もUPされており、これを見ると、どう好意的に解釈しても把瑠都の負けかたは不自然なのである。把瑠都が7勝7敗なら受けなかった可能性もあるが、これだけ大きく負け越していれば受けたと見るのが自然だろう。



 これで龍二さん、ともあれ月給240万の大関の地位に最低でも4カ月はいられることになった。二ヶ月後の来場所負け越しても四ヶ月後に8勝7敗ならまた安泰だ。ひどい話である。
 もちろん言うまでもなくごっちゃん体質の力士にとって月給なんてのはちいさなこと。大切なのは大関という地位だ。宴席に出れば50万、100万の御祝儀は日常的な世界である。後援者、谷町から優遇してもらうことにおいて、大関でいることと陥落しての平幕では雲泥の差があろう。そりゃあなんとしてもしがみつきたくなるはずである。

 7勝7敗の琴光喜が魁皇に勝って勝ち越し。魁皇も8勝7敗。大関という互助組合のガンがいる限り相撲の未来は暗い。
 相撲は観客から木戸銭をとって行う興行であり、楽しければいいと割り切っているので、こういうことはあまり気にしない方なのだけど、千代大海はいくらなんでもひどすぎる。でもまあこれもこれで相撲の楽しみかたのひとつかとも思う。今場所こそ負け越して引退だと思っていたのに。

 千代大海は在位するだけで大関在位記録を更新して行くわけだが、今の相撲ファンも、後々の相撲ファンも、誰もそんなことは評価しないだろう。むしろ彼の存在は「腐った大関制度」を浮きあがらせるだけだ。今後制度が改正されたなら、「昔はこういう制度があり、それを利用してこんなに長く在位した大関もいた」と悪しき例として語られるだろう。
 引退した千代大海が解説者としてしかつめらしいことをしゃべるのかと思うと、想像するだけで胸が悪くなる。

 相撲だから、興行だから、これはこれでいいと思うが、そこのところを千代大海は「男の美学」としてどう思っているのだろう。あるいは師匠の千代の富士は。
 まあ細木数子の番組で、大関という地位に汲々としがみつく心情をズバリ(笑)指摘されて照れ笑いを浮かべつつ認めていたひとだから、そんなことを忖度しても時間の無駄か。お似合いの師匠と弟子だ。いかにもクサレ千代の富士のクサレ弟子である。



やはり注意された!

日本相撲協会で無気力相撲をチェックする監察委員会が、夏場所千秋楽で対戦した大関・千代大海(33)=九重=と関脇・把瑠都(24)=尾上=に九重(元横綱・千代の富士)、尾上(元小結・浜ノ嶋)の両師匠を通じて注意していたことが28日、分かった。

同取組は、千代大海が体を開いて突き落とすと、把瑠都の体はあっさり一回転。
そこを千代大海が押し出し、勝ち越しを決めた。この一番に、放駒審判部長(元大関・魁傑)から「両者に注意をしてほしい」との意見が監察に上がってきたため、友綱監察委員長(元関脇・魁輝)が打ち出し後に、師匠を呼び出した。

把瑠都は右足首の負傷で踏ん張りが利かず、この一番で史上ワーストの13度目のカド番を脱出した千代大海は糖尿病や左太ももの肉離れで満身創痍(そうい)の状態だったが、気力を感じられなかったことから「口頭で注意しました」と、友綱委員長。
両師匠は「本人には厳重に注意します」と、話したという。(5/29 スポーツ報知)


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 旭天鵬、勝ち越し!

 私がドン・レオ・ジョナサンと並んで讃える相撲界のナチュラルパワー旭天鵬が後半4連勝で勝ち越してしまった。すごいや。
 いま「東の関脇に小結から鶴竜があがり、西の関脇は13勝と大勝ちした稀勢の里、東の小結に10勝の琴奨菊、で、西の小結は誰だろう」と考えていた。もうひとりが思いうかばなかった。勝ち越した旭天鵬だ。太田勝さんだ。

 いやそれどころか、前頭2枚目で8勝7敗だから、4枚目の稀勢の里、6枚目の琴奨菊よりも上。ということは番付的には関脇なのか? 稀勢の里が大勝ちしたのでどうなるかわからないが、すくなくとも琴奨菊より下はない。最悪東の小結は確定だ。
 4枚目で阿覧も8勝7敗だから、これが初の小結で、6枚目の琴奨菊は筆頭止まりか。

 今場所限りで東関親方が引退。彼の39歳6カ月が昭和平成の幕内年長力士記録になる。旭天鵬はいま34歳。彼なら40歳幕内も可能と思うのだが、その可能性を見ることなく、彼は36歳で引退して大島部屋を継ぐ。今からもう二年先のそれが残念でならない。



 一時十両まで落ちていた岩木山が3場所連続で勝ち越し。9勝だから来場所は横綱大関とぶつかるところまで上がってくる。

 高見盛も9勝で師匠の東関親方(高見山)引退の場所に花を添えた。ニュースで抱きあっている姿を見た。これは幕下下位なので来場所はやっと中団。

 贔屓力士としては安美錦と豊ノ島の大きな負け越し、陥落が痛い。早く元気になってくれ。
 千秋楽はその豊真将と安美錦の対戦。ここまで6場所連続豊ノ島の勝ち。しかし対戦成績は安美錦の11-9。ということはここまでの6場所がなかったころは、11-3で安美錦がカモにしていたことになる。豊ノ島のようなうまい力士は一度攻略法を見つけるともう逃がさないのだろう。
 今場所も豊ノ島の楽勝。10-11。来場所で並び、あとは離す一方か。かつて琴光喜と朝青龍、若の里と白鵬がそうだった。

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 ○日馬富士 ●琴欧洲

 日馬富士が朝青龍と同じように2メートル3センチをぶん投げた。琴欧洲は大きいから「負け見ばえ」がする。

 この一番を見て、今場所は白鵬の連続全勝優勝と決めていて、琴欧洲に負けてしまったが、それでも14勝1敗で白鵬の優勝と決めていたので、「ああ、日馬富士の逆転優勝もあり得るのか」と初めて思いいたった。それぐらい今場所は私にとって白鵬の優勝以外頭になかった。

○白鵬 ●朝青龍

 いくらなんでも朝青龍に負けて日馬富士優勝はあるまいと思うが、あの「朝青龍奇蹟の復活優勝」があるぐらいだから気を抜けない。武蔵野線から京浜東北線に乗りかえる南浦和のホームで、私はケイタイの画面を凝視した。

 無事勝って優勝決定戦。
 摺り足の稽古をする日馬富士の控えに腰にバスタオルを巻いた朝青龍が行き、こぶしガッチンで挨拶をする。

(翌日のスポーツ紙によると、このとき朝青龍はかわいい弟分に、「勝てなくてごめんな」と言ったそうだ。自分が白鵬を負かして優勝をプレゼントしたかったのだろう。いい話である。私はこういうものが嫌いではないが、でもそれが同部屋の朝赤龍ならともかく、部屋も違う昨日闘ったばかりの相手である。この辺は、気持ちはわかるが、カメラもあることだし、自重すべきと思う。朝青龍の出現により、相撲がプロレス的におもしろくなった。だが相撲は旧態のままでも充分におもしろいから、プロレス的にならないで欲しいというのが正直な気持ちになる。)

(月曜の日刊スポーツによると、《決定戦直前、支度部屋で本割で白鵬に敗れた朝青龍から助言を受けていた。「(相手の得意な右)四つになるな。頭をつけろ」。兄のように慕う先輩横綱の助言を、忠実に実践して本割の借りを返した。》とか。助言まであったようだ。)

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 日馬富士、初優勝

 友人夫妻との待ち合わせの店に着いたときがちょうど優勝決定戦の時間だった。
 友人夫妻は相撲に興味がなく、日馬富士がかつての安馬であることすら知らなかった。
 ひとまえでケイタイの画面を見るのは無礼な行為でありしたことはないが、事情を話し、テレビを見せてもらった。

 日馬富士の勝ち。初優勝。まさかこんな結末になるとは……。すぐに電源を切り、以後食事をした後カラオケに行って深夜まで騒いだ。相撲のことは考えないようにした。

 どうでもいい餘談だが、カラオケをやっていないので声が出なくなっていた。年を取ると咽が痩せるから鍛練していないと声は出なくなる。足腰の衰えと同じだ。テンポの速い曲を歌うとリズムがずれたりした。これは慣れ。ふだん親しんでいないから鈍くなっている。まったくもってどうでもいい話ではあるのだが、私には充分ショックだった。
 山奥引き篭もり生活、誰とも会わず晴耕雨読のような日々に不満はなく、それなりに充実しているつもりだったので、確実に衰頽している事実を目の当たりにして、かなり落ちこんだ。
 年の近い友人夫妻はふたりでよくカラオケに行くらしく衰えがない。旦那の方は学生時代グリークラブにいた美声と秀でた歌唱力のひとなので、我が身の惨めさをより痛感した。

 楽しい席でありビールしか飲まなかったのに珍しく酔ってしまった。友人夫妻は私の酔った姿を初めて見たことだろう。赤面。恥ずかしい。まあビールだけとはいえ、最初の店が時間制飲み放題だったので下戸から見たらとんでもない量を飲んだし、その後も呑みつづけたので、常識的に酔って不思議ではないのだが、私がビールであんなに酔ったのは白鵬の責任でもある。深夜の帰宅はだいぶあぶなかった。日本が安全な國で助かった。終電を二駅ほど乗りすごし、ふらふらしつつ歩いて帰った。午前一時過ぎにやっとたどり着いた。そのままダウン。明け方に寒くて目が覚めた。こんなこともまずしたことがない。

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 ヴィデオを見て、スポーツ紙を読んで──5/26

 私が確認した限りでは、スポーツ紙で日馬富士優勝を一面にしたのはスポニチのみ。

 ニッカンは一面がブエナビスタのオークス優勝。その代わり二面と三面を見開きカラーで日馬富士優勝に割いた。これは充分すぎる扱い。ニッカンは朝青龍と不仲であり、れいの「キムチ野郎」の記者がいることから、やたら朝青龍批判を繰り返すわるい点が目立つが、一面においては全スポーツ紙の中で最も大相撲報道に熱心とも言える。それはアサヒシンブン系列のニッカン嫌いの私でもすなおに認める。

 報知は裏一面。サンスポは確認できなかったのだが一面ではないと思う。



 千秋楽にやっと初日が出た豊真将が泣いていた。これでまた一回り大きくなってくれればいい。その涙の理由は、「自分のようなものでもまだこんなに応援してくれるひとがいる」という観客への感謝からだとか。なにをいうのだ、豊真将のようなうつくしい心の力士を嫌いな人はいない。だれもが応援している。来場所、また復活してくれ。



 岩木山と雅山の相撲がすばらしかった。ベテラン同士が前に前にと休みのない動き。岩木山が勝って9勝目。場内から大きな拍手。



 対して阿覧はなんとしても勝ち越したいのか変化相撲。変化では勝てなかったが、なんとか栃煌山を破って千秋楽に勝ち越し。大麻で引退した兄弟といい、どうにもロシア人力士には感心できない相撲が多い。阿覧もその流れなのかと残念だ。



 ニッカンスポーツの来場所の番付予想を見たら東の関脇が稀勢の里だった。
 そういうことってあり得るのだろうか。稀勢の里は東4枚目で13勝2敗。星としては準優勝である。一気に関脇もわかる。
 だが小結で9勝6敗の鶴竜がいる。しかも鶴竜が千代大海、琴欧洲を破ってのものであるのに対し、稀勢の里はニ横綱には当たっていないし、大関も成績がよいので無理矢理組まれた日馬富士と魁皇に当たり、魁皇に勝ったのみ。どう考えても東の関脇は鶴竜であり、稀勢の里は西の関脇だと思うのだが。唯一稀勢の里にプラスポイントがあるとしたら千秋楽に鶴竜と当たり、勝っていることか。しかし番付の決め事として鶴竜と思うのだが……。

 同じく小結も、ニッカンの予想では、2枚目で8勝の旭天鵬ではなく、6枚目で10勝の琴奨菊になっていた。星ふたつの差に対し、番付は4枚ちがう。ならここも旭天鵬だと思うのだが。
 スポーツ紙の記者はこういうルールを熟知している。彼らの予想が正しいのだろうか。私には納得できない。



 幕下筆頭で4勝1敗となり十両復帰が確実となった北桜に対し、「万が一4勝3敗になったらどうするのだ」と書いたら、ほんとにそうなった。だらしない。それでも筆頭だから復帰は確実らしい。どこも確定で書いている。こういう場合「筆頭」は強いようだ。2枚目の7戦全勝の徳瀬川は当然として、たとえば3枚目や4枚目に全勝や6勝1敗がいたらどうなるのだろう。いずれにしろ北桜の星はいただけない。



 貴乃花部屋初の各段優勝かと書いたモンゴル人力士貴ノ岩は、7戦全勝ではあったが優勝決定戦で負けてしまい、貴乃花部屋初の各段優勝はならなかった。それでも彼が貴乃花部屋のホープであることはかわりない。それでもこれから三段目、幕下を通過して「貴乃花部屋、初の関取」になるまではまだまだ時間が掛かるか。





 日馬富士優勝の瞬間、控室でテレビを見ていた朝青龍が涙をこぼしたとか。部屋を継いでから15年目で初の優勝力士を出した旭富士も涙。
 日馬富士の初優勝、朝青龍の涙、スポーツ紙の一面、それらのニュースの中で白鵬の話題はない。このひと、よほど引き立て役の運命なのか。

 
総論
 白鵬好きの悲しみ

「記録に残る××より記憶に残る××に」とは、野球選手から競走馬まで、アスリートを讃える際に頻繁に使われる慣用表現である。この場合、「記録」は「記憶」よりも下にされる。一般に「記録」のない選手を讃えるときに多用される。最も端的な例が長嶋贔屓のライターが王と比較するときの使用法だろう。
 私はどうにもこれがかっこいい言いかただとは思えないので今まで一度も使ったことがない。そういう物書きは多いらしく、「記録で残る選手は記憶にも残ってるよ!」と正面からこの表現にケンカを売った文を見掛けたこともある。
 好きな表現ではない。でも今回の大相撲の結果を見ると、この言いまわしが最も適切ではないかと思えてきた。

今年になっての白鵬の勝敗は45戦43勝2敗。勝率9割5分5厘。初場所で日馬富士に、夏場所で琴欧洲に負けただけだ。大相撲の年間最多勝記録は朝青龍の84勝6敗。次いで北の湖の82勝8敗。このままだと朝青龍の大記録が更新できそうな勝ちっぷりである。残り三場所も今の勝率で行くと86勝4敗になる。すごい勝率で来ている。なのに優勝は3場所中1回のみ。
 同じく1回ずつ優勝しているふたりを見ると、初場所優勝の朝青龍は45戦37勝8敗。勝率8割2分2厘。夏場所優勝の日馬富士は45戦32勝13敗。勝率7割1分。白鵬は、初場所は14勝1敗同士で朝青龍と優勝決定戦になり敗北。「朝青龍、奇蹟の復活優勝」の引き立て役になった。このとき日馬富士は8勝7敗。
 夏場所は14勝1敗同士で日馬富士と優勝決定戦になり、またも敗北。朝青龍は12勝3敗。
 安定した抜群の成績を残しながらいかに肝腎要のときの一発勝負に弱いことか。

 前述の「記録と記憶」で言うなら、朝青龍が記録でも記憶でも強烈に残る横綱であることは今さら言うまでもない。

 日馬富士もまた「記憶型」の道を歩みはじめているようだ。初場所、新大関としていきなり初日から4連敗はワースト記録だった。なんとか8勝7敗で勝ち越しはしたが、迷いの森に踏みこんでしまった新大関として、あまり良い形ではないが記憶に残った。
 そして今場所である。
 14日目で白鵬が敗れ、朝青龍を破った日馬富士が1敗で並んだ。
 するとスポーツ紙に、「千秋楽には後援会長である小巻公平氏が観光バス二台を列ねて国技館に応援に駆けつけると宣言」と載った。
小巻氏は神奈川県でパチンコ業を営む在日朝鮮人実業家である。安馬時代から熱烈に日馬富士を応援していて、安馬の日本名「安馬公平」の「公平」は小巻氏の名をもらっている。その小巻氏が日馬富士の初優勝を願い、観光バスを仕立て後援者や相撲好きの従業員を乗せて応援に乗りこむというのだ。それがスポーツ紙の大相撲欄に大きく載った。これはこれで日馬富士側からのひとつの仕掛けであり、これで優勝できなかったらすぐに忘れ去られる外連だ。

 それを叩き潰してこそ最強横綱だと思うのだが、白鵬は初場所の朝青龍の時と同じく、またしてもこの日馬富士的世界の引き立て役になってしまうのである。なんともなさけない。連勝記録も脅威的な勝率もみな日馬富士初優勝の添え物となってしまった。
 このままで行くと白鵬は典型的な「記録型」になってしまう。強いけれど強いだけの不人気横綱だ。

 今場所、白鵬は「スポーツ紙の一面」を意識していて、記者に向けてたびたび発言している。「それじゃ一面でお願いします(笑)」のように。
 優勝したときはもちろん負けたときも、スキャンダルでも、一面になることが多い朝青龍を意識した発言だ。だが残念ながら貴乃花の連勝記録を抜いたときでも一面には成れなかった。もし二場所連続全勝優勝しても成れなかったかも知れない。
 一番大相撲報道に熱心な日刊スポーツの今日の一面は牝馬で二冠を達成したブエナビスタだった。日馬富士は裏一面だ。明日図書館で確認してくるが、今日日馬富士は一面になれただろうか。いずれにせよ白鵬よりは世間の注目度は高い。それはあの悪青龍が一緒に活動しているからだが。

 それにしても年明けから二度も優勝決定戦に縺れこみ、二度とも負けているのは問題だ。両方共「朝青龍日馬富士聯合軍」との戦いであり、初場所は日馬富士の援護により朝青龍が優勝した。今場所は朝青龍の援護で日馬富士が、とはならなかったが、控室での様子といい聯合軍であることにかわりはなかった。何だかその辺も孤獨な横綱のようになり、あまり好ましくない。実際はみな仲好しであり心配はいらない。あくまでもイメージの話に過ぎないが。

 私は今場所の白鵬の相撲を、成績はいいが中身はわるいと解釈しているので、むしろ14勝出来ただけで良い方なのかも知れない。
 いずれにせよ磐石と言われるまでには先は長い。今場所もバタバタする悪い癖が出てために琴欧洲に負けたのが優勝できなかった原因であり、落ちついてあそこで勝っておけば、日馬富士との決定戦はなかった。決定戦が弱いのなら決定戦にもちこまず逃げ切ってしまえばいい。まだ若いのだし焦ることなく応援すべきなのだろう。
 とはいえ、落ちこむ結果になった。






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●日馬富士の喫煙について

 日馬富士は相撲界に入っていちばんつらかったのは稽古よりも「無理矢理飯を食わされること」と言っている。太るために無理矢理飯を食わされる。食の細い彼にそれは拷問だったようだ。大関になった今も幕内最軽量力士である。ヘビースモーカーだ。肥れなくて悩んでいる。

 貴ノ花がヘビースモーカーだった。肥れなかった。
 同じく肥れず悩んでいたヘビースモーカーの千代の富士にたばこをやめたほうがいいとアドバイスする。きっぱりやめた千代の富士はそれで体質改善に成功し、花開いて行く。
 千代の富士にアドバイスしつつ自分は辞められなかった貴ノ花は喫煙者がよく罹る口腔癌を病んで死んだ。この病気になるのはほとんどが喫煙者である。

 日馬富士にたばこをやめろとアドバイスしてやるひとはいないのか。旭富士は親方として、体重が増えずに悩んでいる日馬富士にたばこをやめさせることは出来ないのか。わからん感覚である。

 食後のたばこほどうまいものはない。飯を5杯食わねばならないとして、2杯食って一服してしまったら、もう入らない。またたばこは食慾を制限する。稽古のあと一服したら空腹感は消える。太らねばならない力士はたばこをすってはならない。



 たばこに関して思うことがある。
 それは「体内における体力とたばこの戦い」だ。
 たばこはヒトという肉体にとって確実に害であり悪である。いいことなどひとつもない。
 しかし健康な肉体はたばこの害を撥ねつける。超える。相手にしない。その点ではなんの問題もない。
 だから健康な肉体を持ち、元気いっぱいの若者は煙草を喫っていてもすこしもヤニ臭くない。

 ところが体力の衰えたヒトは一気にたばこの害に負ける。身体中から吸い殻がくすぶっている灰皿のような臭いがする。こうなると血液から内臓などたばこの害に侵されている。

 以前、電車の中で本を読んでいたら、隣に誰かがすわり、そこから上記のような「吸い殻が燻っている灰皿のような悪臭」がしたので、あまりの臭さに立ち上がってしまったことがある。それはそれと耐えがたい悪臭だった。隣を見ると、会社帰りらしい、くたびれた背広を着た、やせこけた、顔色の悪い、死に神みたいな中年男性がすわっていた。おそらく全身がニコチンタールに毒され、死ぬ一歩手前なのだろう。あのひとは間もなく死んだと思う。死に神と思うひとにあったのはあれが最初だった。

 私は鼻が利くのでそのことをしきりに思う。体力に溢れた若者はヘビースモーカーでもさわやかだ。悪臭がない。ところが体力のおとろえた中年以降はたばこの毒に負けるのだろう、躰を清潔に保ち、オーデコロンをつけていても、毛穴から噴きだすニコチンタールで、燻っている灰皿のような悪臭がするのだ。

 Yという四十代の友人は酒で膵臓を病み長期入院した。当然禁酒である。酒は止めたようだ。だがたばこはどうしてもやめられないと喫っている。何年ぶりかで彼と会ったとき、どれぐらい体重が減ったのか、見ちがえるほど痩せていた。歩きながら世間話をした。電車の中であった死に神と同じく、彼の全身から吸い殻の臭いがした。体力がたばこに負けているのだ。私は彼にたばこを止めた方がいいと言った。彼はそれをよくある病人に対するアドバイスとして受けとり、苦笑して拒んだ。
 私は他者にたばこをやめろなどと言うことはない。ひとそれぞれの嗜好だ。だが彼からは末期の悪臭がしていたのだ。言っても気づかない。残念だが長いことはないだろう。



 若いアスリートは、類い希な体力でたばこの害を撥ねつける。おそらくいま日馬富士も、健全な肉体と、激しい稽古、摂取する食糧で、たばこの害毒を跳ね飛ばしているのだろう。だが体をもっと大きくしたいのならやめたほうがいい。

 旭富士はなにを考えているのか。疑問である。殴ってでもやめさせるべきだ。もっともそれで言うなら、実弟の貴ノ花を竹刀が折れるまで殴りつけて鍛えた二子山ですら貴ノ花のたばこを止めさせられなかったのだから、本人の自覚以外どうしようもないのかも知れない。
 假に九重がアドバイスしたとしても日馬富士はやめないのだろう。
 まあそれはそれで人生だ。でも克己心の強そうな日馬富士がヤニ中毒というのは、もういっぽしっくりこない。

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壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

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