平成二十一年初場所
(1/11~1/25)
 
初日
 朝青龍、辛勝!

 注目と大歓声の中、一気に稀勢の里に攻めこまれピンチ。もう横向きになる形だったので稀勢の里の完勝と思ったが、そこからの攻めが甘く逆転される。場内大歓声。
 北の湖が引退を決意したのは、「勝ったとき場内から拍手が湧いたから」だったという。つまり、強すぎて憎まれてきた自分が同情される立場になったことを確認したとき、彼は土俵から降りることにしたのだ。今日の朝青龍への大声援に同じ事を感じた。
 ただ北の湖はボロボロになるまで取っての引退だった。新国技館にあがりたいがために。32歳になっていた。
 朝青龍はまだ若い。休場の回数も他の横綱と比してもすくない。なのにこんなに引退引退と騒がれるのは彼を嫌うマスコミが誘導しているからだろう。
 今日も稀勢の里に勝った後のだめ出しをしていた(笑)。彼らしい。ああいう相撲を見ると勝負が談合でないことが判って好ましい。

 早朝から当日券を求める客が列を作ったとか。97年以来のフィーバーらしい(笑)。
 悪役人気である。

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 日馬富士、初日完敗(笑)

 安馬あらため日馬富士が嘉風に完敗。交わされて土俵外に飛びだした。といって変化技ではない。張り差し(笑)をして前のめりになっていたのが敗因。新大関最初の一番で張り差しをするようなバカは負けて当然。笑ってしまった。張り差し撲滅を願うものとしては実に気分のいい敗戦だった。
 一昨日この取組を知り新鮮だったのはふたりが初対決ということ。もう幕ノ内で五六回は取っているものと思っていた。それだけ安馬は上位定着、嘉風は下位で低迷ということなのだろう。いやほんと、智識の盲点だった。

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 把瑠都、ちいさい豪風に勝つ

 身長差27センチの豪風に把瑠都が簡単に勝った。押しだし。背の低い豊ノ島や豪風を苦手としているのが琴欧洲。把瑠都にそれはないようだ。

 二日目  把瑠都、豪快!

 ひさしぶりに常軌を逸したスケールの大きい把瑠都の相撲を見た。嘉風に攻めこまれたが肩越しの右上手一本で土俵の外に抛り投げてしまったのだ。私はこういうとんでもないことをする把瑠都が好きになったのだが、ケガが続き最近はおとなしい相撲になっていた。今日も以前のように力任せに荒々しいことをしたのではなく、追い詰められてついバカ力が発揮されたという形。まるでおとなとこどもの相撲だった。こんな形で負けたら嘉風は傷つくだろう。それともそもそもの身体能力の違いと割りきれるのか。いやはやすごい一番だった。

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 ○普天王 ●若の里 今日一番の熱戦

 普天王が攻めこんで若の里があっさり負けかと思われた土俵際で粘り、今度は逆襲に出る。観客席もおおいに沸いた。しかしそこからまた逆転で普天王の勝ち。いい一番だった。
56秒の今日の幕ノ内一番の長い相撲。しかもその間、ずっと動きっぱなしで巧守が二転三転した。最初攻めこまれてから逆転した若の里に声援を送ったが、相撲そのものは終始動きまわり攻め続けた普天王のもの。すなおに普天王に拍手を送るべし。どんな感想だろう。ブログを覗いてみようか。
「本当に危なかったけど諦めなかったことが一番ですかね」と書いてあった。

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 日馬富士、連敗!──喫煙と忠告
 
 今日も攻めこみ一気の勝利かと思われたが、雅山に土俵際で引きおとされる。不可解な負けだ。かたくなっているのだろうか。いい勉強の場所だ。本人もそう言っている。

 日馬富士は喫煙者だ。ヘビースモーカーだった初代貴ノ花が禁煙して大成し、将来を買っていた千代の富士が愛煙家であることを知ると止めるように忠告した。千代の富士はそれでやめた。日馬富士には忠告するひとはいないのだろうか。

 仕度部屋での喫煙を注意されたりしている。
 仕度部屋での喫煙と言えば、朝青龍の後援者であるアドマイヤのオーナーが、同じく仕度部屋で喫煙して問題になっていた。
 日馬富士はスタミナ抜群で稽古量をこなすことで有名だが、やめるにこしたことはない。親方(旭富士)もやめさせられないのだろうか。

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 朝青龍、連勝

 琴奨菊に勝つ。しかし昨日もそうだったが今日もまずは追いこまれた。それからの逆転。以前のような相手になにもさせない速さはない。精密機械は狂ったままだ。これからこの連勝で土俵勘がもどってくるか。
 昨日の勝利でスポーツ紙はみな一面。ニッカンスポーツは(ターザン山本さんの日記によれば)一面から三面まで朝青龍の記事だったとか。あらためて大きな存在だと思う。まあニッカンとは特別の因縁があるわけだが(笑)。天敵のキムチ野郎はどんな記事を書いているのだろう。興味津々。

 三日目  朝青龍、3連勝

 今日の一番は得意としている旭天鵬でもあり終始攻勢だった。三番の中でいちばんいい内容。
 二日連勝するとマスコミは一転して「初日から連勝したときの優勝確率は82%」などと書きはじめた。勝たないといけない世界なのだと痛感する。相撲好きとしては朝昼夕、テレビを点けたとき、ワイドショーさえあれば相撲のことを話しているので悪い気はしないが、内容がすべてそういう「悪太郎、引退か!?」なのであまりよろこべない。これで今場所朝青龍がそこそこの成績を残し、来場所からまた「普通の場所」にもどったなら一気に報道は減るだろう。そっちのほうが正常だから早くそっちにもどって欲しいとも思う。

 ニッカンスポーツの相撲記事を閲覧したが、こういう勝っているときには天敵の「キムチ野郎」は記事を書かないようだ。暴言や問題を起こしたときペンを執るらしい。
 ただ各紙の中で大相撲報道はニッカンがいちばん良い。これは素直に認めよう。

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 把瑠都、3連勝!

 把瑠都が稀勢の里に攻めこまれ、巻きかえにも失敗して追いこまれたが、土俵際で投げを打つ。軍配は稀勢の里。だが把瑠都が残っていたろう。アナも北の富士もそう言ったが、ヴィデオで見ると意外にあやうい。しかし行司差し違えで把瑠都の勝ち。この勝利は大きい。前日のとんでもない豪快さと今日のしぶとさ。楽しみだ。

 高見盛に負けた黒海に北の富士が苦言を呈していた。「相撲が雑だ。もっと緻密に組みたてないと勝てない」と。その黒海と比べると、把瑠都がきちんと相撲を考えていることが判る。

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 琴欧洲、好調!

 今場所の琴欧洲はいい。3連勝だがそれは単なる結果。問題は中身。それがいい。今日も嘉風の速い動きに同じることなく、しっかりと着いていって最後は捕まえて料理した。優勝した場所以外の琴欧洲だと、速い動きに撹乱されバタ足になってしまうところ。それがない。実にしっかりと土俵に足をつけ、嘉風の動きに着いていった。嘉風も満点の相撲。琴欧洲を倒すための最善の策を取った。だが今場所の琴欧洲はあわてない。嘉風がいい相撲を取ってくれたから、琴欧洲が絶好調であることが確認できた。それは土俵を降りた後の落ちついている顔からもわかる。
 場所前、親方(琴ノ若)は「自信を持て」とだけ言いつづけたとか。それでいい。琴欧洲の問題はそれだけだ。白星が自信になる。とにかく顔が落ちついている。楽しみだ。

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 龍二さんも絶好調!

 千代大海がいい。前半絶好調はよくあるが、相撲内容がいい。押して、押しきれず引いて勝つ、が龍二さんスペシャルだが、引かずに押しきって勝っている。龍二さんには辛口の北の富士(というか龍二さんの相撲を讃える人はいないが)も珍しく誉めていた。私もそう思う。今場所の龍二さんはいい。まあ勝ちこせるだろう。いつものよう終盤息切れと読むが。

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 日馬富士、3連敗

 初日、嘉風にに敗れたとき、土俵下で苦笑していた。一気に前に出たところをうまくすかされた感じだったし元気いっぱいの内容だから納得できる苦笑だった。これはいい。
 二日目、攻めこんだが土俵際、雅山にすかされてバッタリ。これは悔しそう。
 三日目、相性のいい豊ノ島戦。33センチ背の高い琴欧洲を豪快にぶんなげたりする相撲巧者の豊ノ島だが安馬には歯が立たない。これを料理して日馬富士は調子に乗るかと思ったが、なんとこれが完敗。立ちあいののど輪から一気に電車道で持って行かれた。これは問題だ。本人も落ちこんだろう。
 下位に弱く上位に強いのが毎場所の安馬ではあるが、今場所は上位の調子がいい。前半ここまで負け越すと後半がキツい。大関新場所の負け越しさえ懸念されてくる。でもまあそれもそれでいい。なにをやっても安馬は安馬だからそれでいい。

 四日目  琴欧洲、順調!

 今日は昨日の続きのような相撲が多かった。典型的なのがこれ。昨日の嘉風に続き、同じ尾車部屋の豪風を、慌てることなくじっくりと腰を据えて対処し、慎重に寄り切った。解説陣も小柄な豪風と同じぐらい腰がよく割れていると絶讃。表情が良い。落ちついたいい顔をしている。豪風には以前負けている。それが信じられないぐらい万全の取り口だった。

 龍二さんもいいぞ!

 同じく千代大海も絶好調。一気に前に出て勝っている。連敗の日馬富士を気づかうコメントが載っていた。龍二さんも新大関のとき連敗したのだとか。忘れた(笑)。
 チヨスはそのうち息切れするだろうが琴欧洲にはこのまま好調を維持して欲しい。

 把瑠都、4連勝!

 魁皇を相手にしなかった。どっちが大関か判らない。だがこれはもう魁皇は躰がボロボロなのだから比べるのが酷。ともあれ今場所の把瑠都は上位陣には脅威だ。右上手を取ればなんとでもなる。

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 朝青龍、勝つには勝ったが

 朝青龍も星としては4連勝。だが上記の昨日の続きとは違い、雅山に一気にもってゆかれた。土俵際引きおとして勝つ。辛うじて足が残っていた。辛勝である。運動神経のよさで勝ったようなもの。連勝はしているがかつての力がないのは明白。まあ若いし力の差があるからなんとかなっているが、いつ大崩れしてもおかしくない。それはそれでスリリングだ。
 明日は豪風。今の朝青龍なら誰でも負かすチャンスがある。

 日馬富士、4連敗

 新大関の日馬富士はあたらしいまわしを着けていた。銀色である。今日アナが「ギンネズ」と言っていた。銀鼠か。なるほど。それを今日からまた以前の黒にもどしてきた。その方が似合っている。ギンネズは半端な色だ。
 のど輪で攻めたが、それをハズされるとコロリン。稀勢の里に完敗。2秒。
 昨日豊ノ島に一気に押しだされた。前二日とは内容の違う負けかただった。今日もそう。いいところなく負けた。この二日の完敗は痛い。さてどうなるのか。
(翌日註・新大関で初日から4連敗はワースト記録とか。まあ記録を作るのもいいだろう。なが~い目で見てるから。)

 ○豊ノ島 ●安美錦

 相撲巧者同士の対戦成績は9対9。ところが去年全場所対戦し豊ノ島の6連勝。その前は安美錦が4連勝していたとか。つまり豊ノ島が安美錦の負かしかたを会得したのである。その豊ノ島が、昨日は完勝したけれど、安馬にはまったく分が悪い。こういう対戦成績のかたよりはおもしろい。
 以前も書いたが、朝青龍や白鵬をすら負かす安美錦なのに千代大海には歯が立たないのである。相性は不思議だ。
 今場所も豊ノ島の完勝。おもしろいなあ、あの巧い安美錦がなにも出来ない。そしてまた昨年全場所対戦しているということは、このふたりがいかに上位に安定しているかの証拠でもある。幕ノ内の上位と下位にかなり力の差があるのだというのも相撲を見ていて知ることである。

 五日目
 大失敗をしてしまった。部屋にいたのに大相撲中継を見逃したのだ。理由はWindows7。1月9日からβ版がDownload出来るようになり、混雑していてなかなかうまく行かなかったが、なんとか13日にDownload出来てからはそれにかかりきりなのだ。急いでテレビを点けたときはもう五時半過ぎ。

 取組は琴光喜。若の里に負けた。それよりもそのときアナの言った「大関が続けて敗れた」が気になる。負けたのは誰だ、チヨや魁皇ならいいが、もしも琴欧洲だったらたいへんだ。そのあとの電光掲示板で琴欧洲が安美錦に負けたことを知る。チヨも稀勢の里に負けているがこれは力的には順当だ。把瑠都がちいさな豊ノ島を料理して全勝なのを確認する。今日はなんとしても深夜のダイジェストを見なければならない。

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 日馬富士、初日

 新大関が初日からの4連敗は明治以降最悪の記録なのだとか。「大関が最高位でなくなってから」とのことだから、上に横綱が出来てからは最初の記録になるわけだ。日馬富士もへんなところで記録を作った。これから新大関が誕生して初日に負けたりしたら必ずワースト記録として名を出されるだろう。まあそれも安馬らしくていいや。
 場内に大「日馬富士コール」。九州場所で魁皇に起きたりするが、国技館で私の聴いたコールとしては最大のもの。日馬富士は感激したかと思ったが、翌日の新聞によると「かわいそうだと思ったんでしょ」と自嘲気味だった。

 朝青龍、5連勝

 朝青龍が自分よりもちいさい豪風に頭までつけて慎重な相撲を取る。豪風もよくやったけど、あそこまで必死になられたらかなわない。右四つから上手投げで勝つ。絶対に負けられない姿勢が出ていて、これはこれで感動的。「たばこもやめた」と書いてあった。ということは吸っていたのか。いや弟分の安馬があれほどヘビースモーカーなのだから当然か。もしも吸わなかったらタバコ好きの安馬との確執が語られていたはずだ。ふたりともヤニ中と知る。
 明日は連敗中の豊ノ島戦。楽しみだ。毎日とても安心できる内容ではないがともあれ序盤を全勝で乗りきった。優勝する気でいるらしい。それは無理だろう。誰に負けるかが楽しみだ。

 白鵬、万全

 こちらも嘉風を料理して5連勝。朝青龍とちがいまったく危なげがない。優勝の大本命だ。

 嘉風は初めての結びの一番登場に「夢のようです」と語ったとか。豪風が朝青龍、嘉風が白鵬と尾車部屋のふたりが連続して登場。琴風はうれしいことだろう。残念ながらふたりとも負けてしまったけれど。親方がしっかりしていると弟子もしっかりしている。やはり朝青龍の言行の悪さは親方の指導がなっていないからだと痛感する。でもこのごろ、あのいいかげんな朝潮の下だから朝青龍は好き放題やって出世できたのではないかとも思い始めた。つまり、しっかりした親方にあれこれ言われたなら、あの性格だから部屋を飛びだして廃業していた可能性もある。朝潮だから朝青龍は出世できたのかも知れない。そう思うようになった。

 結局リアルタイムで見られたのはこの三番のみのだった。

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 深夜にダイジェストを見る。録画予約してあったが心配なので起きていて見た。すると見事に録画予約が失敗していた。見てよかった。
 昨年、半年ほどHDDレコーダを壊れたまま放置して録画装置のない生活を送った。その後修理したのだが、おそろしいことにたった半年ほど触れていないと機器の扱いを忘れるのである。修理からもどってきて設置したとき、リモコンを手に、「はて、録画予約はどうやるんだっけ?」と思い、忘れている自分に愕然とした。使っている内になんとか思い出したのだが、たまにこんなミスをするようになった。前日に翌日未明の番組予約をするとミスが出る。なにか扱いを間違えているのだろう。

 琴欧洲、1敗、ましかたないか

 安美錦の巧さに翻弄され、後ろ向きになったところを送りだされてしまった。まあ仕方ないか。最大の天敵だ。あの14勝1敗の優勝の時も唯一安美錦に負けたのだった。気落ちせず、これからも落ちついて相撲を取って欲しい。焦ってバタ足にならなければいい成績は自然に着いてくる。

 把瑠都、5連勝

 豊ノ島を料理。捕まえれば負けない。明日は琴光喜。意外にも4戦して全敗。痛風に悩む琴光喜は今場所絶不調なのでまともなら勝てるはずだが。

 全勝は両横綱と把瑠都、栃煌山のみ。優勝は白鵬だろうが、連日危ない相撲の朝青龍が誰に負けるかが興味深い。座蒲団ははもう投げられないようになったのが残念だ。

 六日目 山本山嫌い

 日本人としては史上最重量の山本山がそこそこ人気だ。入場してくると拍手が湧く。先日初日が出たときインタヴュウがあり、自分に拍手が多いことを意識しているようなことを言っていた。場所前には海苔の山本山にスポンサーになってもらおうかと発言したのが話題になった。山本山(会社)の方から、「特定の人を応援することはしない」と断られたそうだが(笑)。

 私はこの力士にまったく興味がない。史上最重量の小錦は、入幕してきたころ、動けた。固太りで力が漲っていた。みな小錦とけいこをするのを厭がった。「壊される」と。
 それと比べると山本山はただのデブだ。なにより肌が汚いのがたまらない。

 力士は内臓の調子を肌で図る。臓器の調子は肌に出る。私はこの慣習が好きだ。プロレスラーは肌を黒く焼く。その方が強く見えるからという理由である。木戸や長州がその筆頭だった。一方、相撲上がりの天龍は白い肌のままだった。レスラーになってからも長いあいだこの習慣を守っていた。今は焼くようになったが。
 山本山の汚い肌を見ていると不健康なデブとしか思えない。私がこの力士を応援することはない。

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 安美錦のがぶり寄り

 安美錦が琴奨菊相手にがぶり寄って勝った。相手の得意技である。安美錦を見ていると相撲は奥が深いなと思う。貴重な脇役だ。


 日馬富士、完敗

 若手の豪栄道に前褌を取られ一気にもって行かれた。完敗である。北の富士が「どっちが大関かわからない」と嘆くほどの一方的な相撲だった。これで1勝5敗。負け越しが濃厚になってきた。

 琴欧洲、悪い相撲

 琴欧洲が雅山に勝って1敗をまもったがひどい相撲。右の張り差しをし、強引にはたいて勝った。前に出ればいいものを。
 昨日の負けで心が揺れたのだ。まだまだ精神的に弱い。安美錦に1敗しただけで相撲内容がぼろぼろになってしまった。今日の勝ち方を反省し明日からまた餘裕のある相撲を取れるといいが。勝ち星は貴重だがなんとも残念な一番だった。


 こちらは満点、千代大海

 同じく1敗をまもったが、こちらは琴欧洲と違って最高の相撲。まるで全盛時のように突っぱって前に出る。今場所、チヨはまだ引いていない。息切れしてあれが出るのは何日目あたりだろう。

 把瑠都、琴光喜に初めて勝つ

 4戦して把瑠都はまだ一度も勝っていない。意外だ。今場所は勝つだろうと予測していたが、想像以上の完勝だった。もう琴光喜には負けないだろう。勝利インタビューではニコニコしていた。伸ばしている無精髭がかっこいい。日本語能力は幕下優勝のころのザンバラ髪時代と比べると格段にうまくなったものの、アナの質問を完全に理解するまでにはいってないようで、すこし的外れの答。
 明日は琴欧洲戦。どっちを応援するか悩む一番だ。どっちが勝ってもいい。対戦成績は把瑠都の3対2。明日が待ち遠しい。入幕してからの6連勝は初めて。明日勝てば一気に白鵬に次ぐ優勝候補になれる。
 私の大好きな把瑠都らしさが出た対嘉風戦は悪い相撲と反省していたとか。インタビューでも「ケガをしないように」と口にしていた。よほどあのケガによる休場が堪えているようだ。

 朝青龍、今日はいい相撲

 二連敗している豊ノ島に相撲を取らせず、のど輪から一気に寄りきった。連敗から豊ノ島対策が出来ていた。組んではまずいと思ったのだろう。しかし169センチなのに横綱に「四つになると不味い」と思わせるのだから豊ノ島は正にちいさな巨人だ。決まり手は押し出し。六日の内で一番いい相撲。白鵬が万全なだけにここで調子を上げてきたのは望ましい。
 全勝者は昨日と変らず両横綱と把瑠都、栃煌山の四人。

 中立親方の解説

 今日の解説は中立親方、小城錦。私はまだ中立親方というと栃ノ海を思い出すが。
 低音で淡々としているが、鋭い指摘もあるよい解説だった。
 毎度思うことだが、解説だけ聞いていると親方衆は神様のように思える。中立の解説もすばらしいのだが、現役のとき誰だっけとなり、小城錦と知れば、「こんなすばらしい解説をするほどの力士じゃなかったろう」と言いたくなる。朝青龍が舞の海に発言して問題になった「顔じゃない」である。野球の解説でもそうだが、たいした選手でない方がコーチとしては優れているのと同じなのだろう。
 七日目  若の里と武州山は角界での対戦は今日が初めて。共にこどものころからのライバルだった。同い年。三十二歳。若の里は中学を出てすぐに入門。武州山は大東文化大に進み、そこからの入門。さらにはそれから十両に上がるまで十年かかった。よくやめなかったものだ。いまも「一年前のことを思うと夢のようです」と言う。無給の幕下だったのに、いまは幕ノ内で相撲を取り、テレビに映り、その遅い出世に好意の拍手をもらっているのだ。

 中学時代以来の対戦となるふたりは互いをかなり意識していたようだ。すごい話である。そのことを問われると武州山は「あちらの方が意識していると思います。出世も早かったし」と語っていた。武州山が無給の幕下以下のころ、若の里は三役に定着し大関候補だった。あまりに立場がかけはなれていた。同級生であり小学校、中学生のときに対戦しているわけだが、そのときは口を利くことさえ叶わないほど地位が違っていた。それから武州山の記録的に遅い出世があり、三十二歳になった今うさぎと亀が初対決である。
 相撲は若の里の勝ち。あれこれ想いが湧いてくる一番だった。

 次の取組が高見盛だった。彼もこのふたりと同級生。青森ではこどもの頃から取っていた仲だ。青森が相撲王国であることを確認した三人の話だった。
 高見盛は若手の豪栄道に三回顔を合わせてすべて負けている。今日も相手にされなかった。力士の相性はおもしろい。いま勝てないのだから今後もずっと勝てないだろう。引退まで。高見盛は下り豪栄道は上る。

 明日の取組と対戦成績を見ていたら、豊真将が栃煌山に勝てない。全敗だ。高見盛や豊真将のような力士が、若手の豪栄道や栃煌山に勝てないのが不思議だ。そういうものなのだろう。豊真将の低迷も心配だ。昨日北の富士が、「もともと腰の低い人だが、いまは低いというよりへっぴり腰になっている」と批判していた。相撲に自信をなくすとそうなるのだろう。


琴奨菊か稀勢の里から初白星。互いに一歩も引かず動きまわる今日一番白熱の取組。拍手。場内大歓声。

 琴光喜が雅山に敗れて一勝六敗。私はここのところ琴光喜にまったく興味がない。以前はそうでもなかった。その理由を考えてみると。
 琴光喜は学生時代、久島と並ぶ史上最強の実績を残し、鳴り物入りで入門してきた。久島はその華々しい経歴の割りに角界入り後は凡庸だったが、琴光喜はすばらしい記録を連発して関脇にあがる。さらには平幕優勝をし将来の大関横綱は確実かと思われた。そこからの長い長い低迷の時期。低迷と言ったら失礼なのか。不運と言うべきか。大勝ちをして大関取りになるとケガに見舞われた。
 私は、琴光喜は平成十四年に大関にあげるべきだったと思っている。あの前頭二枚目で十三勝二敗の優勝、関脇で九勝、関脇で十二勝のときだ。すればよかった。すべきだった。
 あのとき大関になっていると満二十五歳での昇進。二十五で大関になり、三十二で引退ぐらい、の想いがある。横綱になれたかどうかはともかく。
 実際は三十一歳での史上最年長大関昇進だった。三場所通算三十五歳を確定したとき、取組を終えた後の風呂場から号泣が聞こえてきたというのは感動的な逸話だった。私の琴光喜応援感覚はこのときにピークを迎え、いまは燃え滓のようなものだ。いまも現役力士最多の「二十場所連続勝ち越し記録」をもっているひとなのだから(今場所それが途切れそうだ)こんなことを言っては失礼なのだろうが、それが私の正直な琴光喜への感想である。

 今日一番楽しみな把瑠都と琴欧洲戦。把瑠都が両手突きからもぐるような形。そこからあっけなく落ちた。前褌を取った琴欧洲の引きおとしのようにアナは言っていたが、どう見ても把瑠都が足を滑らしたとしか見えない。右足が流れて倒れているのだが(またもケガをするかと心配した)自滅のようだ。
 ただアナの言った「把瑠都は策に溺れた」は正しかろう。解説の音羽山も舞の海も「もったいない」を連発していた。ふたりにしか出来ないスケールの大きな凄い相撲になると期待しただけにひじょうにがっかりした一番だった。
 把瑠都の談話では「まわしを取られたくなかった。あのまま突きはなすつもりだった」とのこと。まわしを取られても把瑠都なら琴欧洲と五分に取れる。北勝力みたいな両手突きは見たくなかった。でもそういうことを考えるあたり、把瑠都が考える力士であることを物語っている。

 今日も龍二さんは絶好調。なんとか十日目まではがんばれるか。


 朝青龍と嘉風。惜しかったなあ初対戦の嘉風。低く当たって突っ張り、一歩も引かずやりあって、左に張り手も一発見舞った。土俵際に追い詰める。九割方勝利を手にしたが、そこですかされて土俵外に飛びだした。朝青龍はそれを土俵の外まで追っていって背中を突くだめ押し(笑)。さらには張られたことが不愉快だったのか睨みつける。もうチンピラの因縁づけそのもの。しつこく睨まれた嘉風は、田舎中学の番長にガンヅケされた優等生みたいな脅えた顔。嘉風が優等生らしく整った顔をしていて一方が悪相だからもろにそのパターン(笑)。笑ったけど、醜悪でもある。
 しかし惜しかった。ほとんど勝っていたのに。

 朝青龍は必死。まったく餘裕がない。死に物狂い。でもこれで七連勝。それはそれで立派。しかし毎日が綱渡りだ。五敗していてもおかしくない内容。そのうち敗れる。それは誰だろう。毎日目が離せない。

朝青龍、嘉風のビンタにブチ切れ/初場所

嘉風(手前)の張り手を食らう朝青龍(撮影・下田雄一)
嘉風(手前)の張り手を食らう朝青龍(撮影・下田雄一)

<大相撲初場所>◇7日目◇17日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(28=高砂)が、土俵上でブチ切れた。初顔の西前頭2枚目嘉風(26)の張り手をアゴに受けて激怒。逆転の突き落としで初顔相手の連勝を29に伸ばしたが、怒りは収まらず、懸賞を受け取る最中も嘉風をにらみつけた。初日から7連勝で進退問題からは事実上脱したが、再び横綱としての品格が問われる一番となった。4連覇が懸かる横綱白鵬(23)と東前頭12枚目栃煌山(21)も7連勝となった。

 朝青龍が、我を忘れた。小兵の嘉風にもろ手突きで立ち合ったが、相手は思うように離れず、突っ張り合いに。その中で右アゴに受けた強烈な1発の張り手で、怒りのスイッチが入った。冷静さを失っての強引な首投げはすっぽ抜けて、足を俵にかけて大あわて。その後、出てくる相手の勢いを利用して左からの突き落としを決めるも、ケンカ相撲は終らない。土俵外に足を出していた嘉風を追って背後からダメ押しだ。

 勝負がついたらすべて終り。それが相撲の鉄則だが、ブチ切れた朝青龍には通用しない。勝ち名乗りを受けても、嘉風から目を離さない。懸賞を受ける最中も、メンチを切り続けた。支度部屋にもどっても怒りは収まらず、取材陣には一切無言。地下駐車場に向かう通路では「初顔29連勝だが?」「張られて怒っているのか?」「自分の相撲に納得いかないのか?」と立て続けに質問されたが、記者を手で払うなどして佛頂面のまま車に乗り込んだ。
(ニッカンスポーツ紙面より)

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 白鵬は苦手の安美錦だけに心配したが落ちついて処理していた。舞の海ももしも前半で負けるとしたらここではないかと心配していたと後に語っていた。
 八日目  解説輪島初登場

 今日の解説は相撲界から離れて初めてという輪島。二十数年ぶりと言っている。親方株売買のスキャンダルで角界を終れたのは覚えているが、その前の花篭親方時代にテレビで解説はしていないのだろうか。
 相撲界を追放になり、暫くの間をおいて全日プロ入りしたのが三十八歳の時だ。今年六十一だから、それでももう二十三年経っている。引退したのが昭和五十六年の三十三の時だ。あの不祥事はいくつだ、三十六ぐらいか。ということは二十六年ぶりぐらいが正解か。
 対千代の富士、北の富士、高見山、貴ノ花、三重の海等とのヴィデオが流れる。大関にあがる前の千代の富士がちいさな躰で横綱輪島相手に善戦するのは感動的だ。才能があったのだなとあらためて思う。北の富士や三重の海という先輩横綱を「黄金の左」でぶん投げる。輪島は天才だった。練習嫌いの。
 高見山は大の苦手。のど輪で一気にもって行かれる。ほんとによく負けていた。金星7個を配給とか。

 もうひとりのゲストはデーモン小暮。いつもながら相撲博識でおもしろい。だが本人がそれを過剰に意識しているため、アナが問い、輪島が応えると、必ずそこに豆知識的に口を入れてくる。すこしうざい(笑)。出しゃばりすぎ。私は好きだけれど、きらいなひとも多いことだろう。しかし五十になってあの化粧でテレビはきついな(笑)。「吾が輩は」を連発するが、彼を知らない田舎の人は「このバケモノはなんだろう」と思うだろう。

 輪島が苦労した分、腰が低くなっていて印象的だった。「北の富士さん」は当然としても、「高見山さん」のように、力士をみなさんつけで呼んでいた。最後も感想を聞かれ「おもしろかったです」と行った後すぐに、「あ、おもしろかったは失礼ですね。感動させてもらいました」と言いなおしていた。べつに「おもしろかった」でもいいだろうに、そこまで気を遣うことが石を持って追われたひとらしく思えた。それが解けてまた相撲界に関われるようになったなら(すでにパーティのようなものには出ていたらしい)目出度いことだ。
 相撲通のデーモンが、「輪島さんも妹さんの経営するちゃんこ屋が借金まみれになって、親方株を質に入れたときは話題になりましたねえ」とか、「別れた女房の中島さつきさんが、輪島さんが八百長していたことを告白して話題になってますよ」でも言ってくれるとおもしろかったのだが。
 いやそれは冗談。元女房は自殺未遂をしたし、その母は自殺をした。多くの苦労をしただけに丁重な姿勢が目立った。もっとも引退後NHKで見るのは始めてでも、朝青龍問題などのコメンテータとしては民放には出ているから、私はひさしぶりに見たのではない。よく見ているけれど。

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 豊ノ島、初の休場

 昨日、魁皇の小手投げで左肘を痛がっていた豊ノ島が今日から休場。2002年の初土俵以来初めてなのだとか。あのちいさな躰でいかにきちんとしていたことか。
 小手投げは関節技だ。あぶない。これを連発していたのが久島海。近年の魁皇も多用するようになってきた。極められそうになるとみなケガをするその前に土俵を割る。いつもの魁皇の勝ちかたもそれだったが、昨日の場合土俵際で強引に極まったから豊ノ島は肘を痛めてしまった。禁じ手にすべきほどのあぶない技だ。

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 把瑠都、龍二さんに完勝!

 1敗同士の対戦。把瑠都はれいによって肩越しに右上手を狙って腕を伸ばしたが、龍二さんがうまくそれを交わしていい態勢になる。さてそこからどうもつれたのか、気づくと把瑠都が両差しになり、どうしようもなくなってもがく龍二さんを簡単に寄り切っていた。なにも出来ない龍二さんが苦笑したのが印象に残った。

 勝利インタヴュウでの把瑠都はニコニコ(笑)。初日から伸ばしている髭がないなとおもったら、琴光喜に勝って六連勝したときのインタヴュウでヒゲ面を醜いなと思って剃ったのだとか。そしたら琴欧洲に負けてしまったと。しかしむろんそれは験担ぎのせいではない。まわしを取られたくないと消極的になったのが敗因だ。把瑠都と琴欧洲の対戦成績は3対2と記憶していたが、琴欧洲の勝ったのには不戦敗がひとつ入っているのだと知った。だったら実質は3対1で大関に餘裕で勝ち越しているのである。昨日、あんなちいさな相撲を取る必要はなかった。

 千代大海は完敗を認めさばさばしていたとか。

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 豪栄道の変化にあわてない琴欧洲

 まだ琴欧洲に勝ったことのない豪栄道が左に変化気味に立ったが大関はあわてない。一瞬立ち止まって互いに手探りするような状態になってから、がっちりつかまえて寄り切った。精神が良い。このまま行けば、今場所に限らず、こういう相撲姿勢で行けば、琴欧洲は毎場所確実に12番は勝てる力士だ。

 稀勢の里の闘志、白鵬が取ったり

 白鵬が大関時代稀勢の里に3連敗したことがある。毎度ここに書いていることだが。
 勝っている相撲なのに自分でドタバタし負けていた。それがあるからどうにも稀勢の里との一番は心配になる。横綱になって安定してからはもう安心なのだけれど。
 両者肩からぶつかる激しい立ちあい。稀勢の里が横綱を張る。何度も張る。それに怯まず白鵬、とったりで稀勢の里を崩す。そのあと押しだす12秒の相撲。何発も張られたので苦笑気味に顎のあたりを何度も撫でていた。朝青龍なら張り手合戦になったろう(笑)。

 闘志を剥きだす稀勢の里は好ましい存在にちがいない。ただ私は、負けてさがるときろくに頭を下げない稀勢の里よりも、丁寧に一礼する把瑠都のほうがずっと好きだ。しょうゆうこと。

 安美錦の膝はだいじようぶか、朝青龍八連勝

 朝青龍が安美錦を押し倒して勝つ。そのあと安美錦が膝を抱えて痛がる。そのまま起き上がれないので「どんなもんだ」と威張っていた朝青龍でさえ思わず歩みよって声を掛けたほど。
 ヴィデオで見ると相撲内容には関係ないようだ。古傷の膝が再発した感じになる。それにしても尋常ではない痛がりかただった。休場か。豊ノ島、安美錦と場所を盛りあげる技巧派が連続して休んだらせっかく盛りあがっている熱気が冷めてしまう。いいことばかりは続かないなあ。

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 明日は白鵬と把瑠都。琴欧洲は苦手の若の里。朝青龍に日馬富士。楽しみだ。
 九日目  把瑠都白鵬熱戦

 がっぷり四つの大相撲になった。左上手投げで白鵬が把瑠都をぶん投げた。最後は力つきる形で把瑠都が敗れたが、その強さから、今後の白鵬の最大のライバルは把瑠都になるであろうと衆目は一致。またこの大相撲を制したことから、あらためてまた今の白鵬の充実ぶりが見てとれた。

 関脇把瑠都(24=尾上)が1分14秒7の大相撲の末、横綱白鵬(23=宮城野)に上手投げで敗れて2敗目を喫した。右四つ左上手でがっぷり胸を合わせての熱戦に、場内からも大きな拍手が起こった。

 だが出て行くタイミングで豪快に投げられたことに「もうちょっと何かしたらよかったかな。何したらよかったか分からないけど…」。横綱のあまりの強さに、途方に暮れた様子だった。(ニッカンスポーツより)

 出番前、花道の奧で付き人が把瑠都の背中をゴシゴシと拭いていた。相撲とりが思いっ切り力を込めて、それこそゴシゴシと摩擦していた。こんなすごいのは見たことがない。案の定、把瑠都が背中を見せると真っ赤だった。異常な力の入った乾布摩擦である。
 あれをして気合いを入れていたのは里山なのだとか。2チャンネルの相撲版で知った。「あの力を込めた拭きかたに里山の愛を見た」とあった。かつては一緒に出世を争い、相撲を知らない把瑠都に細かなことを教えたのは里山だった。いまは付き人なのか? ということで確認してみると、いま里山は幕下のようだ。というと関脇把瑠都の付き人であってもおかしくはない。そうか、この残酷さも相撲特有である。

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 錣山と千田川

 今日の解説は錣山と千田川。寺尾と安芸乃島である。最高によかった。どこがどうよかったかは今までさんざん書いてきているのであらためて書くこともないが、正面解説の寺尾が、アナに問われ、自分なりの意見を述べた後、「千田川さんはどう思いますか」と謙虚に意見を求めているのに好感が持てた。豊真将大活躍だと寺尾ももっと呼ばれるのだが、いま豊真将は幕尻だ。なんとか今場所は勝ちこせそうなので十両落ちはないにせよ、もっとがんばってもらわないと困る。こんな形で豊真将が伸びなやむと思っても見なかった。

 龍二さん、失速(笑)

 龍二さんが三敗目。アナが「今場所は優勝戦線にくいこむかと期待したのですが」と言った。大まちがい。後半の失速は約束ごと。なにを寝惚けているのか。これからが見物なのだ(笑)。

 琴光喜、七敗目

 黒海と見ごたえのある相撲の末、敗れる。力負けか。二十場所連続勝ち越しの記録が途絶えそうである。

 琴欧洲の若の里越え

 対戦成績が2対8と分が悪い。今日は落ちついて取り、完勝した。これで琴欧洲は若の里越えである。これからは負けないだろう。かつて白鵬も若の里に歯が立たなかった。こういう先輩越えを見るのは感動的だ。一杯を堅持。


 朝青龍、日馬富士に完勝

 把瑠都が白鵬に負けて二敗と一歩後退したので、優勝は両横綱と琴欧洲に絞られたと言っていい。しかし朝青龍が全勝で千秋楽まで行くとは思えない。どうなるのだろう。誰が負かすのか。日々楽しみだ。

 安美錦、休場

 やはり休場だった。あの尋常ではない痛がりかたでは当然だろう。いつもサポーターを捲いている右膝である。半月板損傷とか。古傷だ。心配である。このひとはいてくれなくては困る力士だ。

 稀勢の里の熱戦

 稀勢の里と雅山が力の入ったいい一番だった。稀勢の里も今日の一番で郷土の先輩を完全に凌駕した感じである。年齢差を考えると、それこそ中学生の時のあこがれの先輩だろう。私は稀勢の里のかつての北の湖を思わせる尊大な態度が好きではないが、いい相撲取りだとは思う。もうすこし愛想があるといいのだが、それがまた彼の持ち味なのか。

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 明日は白鵬に日馬富士。日馬富士が白鵬を負かしたなら朝青龍の掩護射撃になる。まともなら白鵬が今場所の日馬富士(今日負けて3勝6敗)に負けるはずはないのだが、そこに相性がある。注目の一番である。
 十日目
 贔屓の力士がみな負ける最悪の日となった。武州山、高見盛と負けるのでいやな予感はしていたが。

 豪風、惜しかった!

 バカ稀勢の里が右手で張り差し。チンピラそのもの。下品である。張り差しの主流はモンゴル人だが牛久出身の萩原もこれが好きだ。日本人力士で唯一多用している。最悪である。
 張り差しをすると状態が起き気味になり脇が開く。張り手によって相手が怯んでくれれば効果はあるが、そうでない場合はマイナス要素ばかりだ。豪風が張り手ごときで怯むはずもない。開いた脇にうまくもぐりこみ前褌を取る。一気に寄って完勝と思われたが、そこで身をかわされ突き落としをくってしまった。惜しい。
 張り差しの無意味さがよく出た一番であり、豪風が完勝していればさすがのバカ稀勢の里も張り差しを控えるようになったかも知れない。まことにもったいない一番だった。解説の北の富士が悪い立合と相撲内容をしっかり批判していたので救われた。それにしてもひどい相撲だ。こんなことをしていては大関は遠い。もっとも私は日本人大関を望んでいないから平気だけれど。

 把瑠都、大きな相撲を取れ!

 把瑠都が豪栄道に前褌を取られ、両差しになられる。閂を極めてやれ、と思う。懐の深い把瑠都に両差しで潜りこんだら危険だ。カンヌキで極めて寄れば、何も出来ず悲鳴を上げてギブアップだろう。本気で力を入れたら両腕骨折ぐらいの怖さがある。なのになぜか把瑠都は右を巻きかえに行った。その瞬間に豪栄道が寄る。見事な攻めだった。
 豪栄道の速く、隙を見逃さなかった力感溢れる相撲を誉めるべきだ。だが把瑠都があの不必要な巻きかえをせず、己の怪力と体力を信じて極めに行けば、簡単に勝てたのも事実。
 向こう正面解説の立浪(旭豊)が、「もったいない」「もっと大きな相撲を取ればいいのに」と言っていた。把瑠都のよさは、相撲研究に熱心で、礼儀正しく、まじめに相撲に取り組んでいることだが、いろんなことを考えすぎ相撲をちいさくしてしまっている。まったく、あの大男が内無双をやるなんて誰が思うだろう。そういう面も私は好きなのだけれど、しかし今日の巻きかえは無意味だった。


 死に馬に蹴られる琴欧洲……

 終盤に入っていつものよう息切れした龍二さんに琴欧洲が完敗してしまった。ひどい無気力相撲だ。解説的には左からの押っつけで体を起こされて横向きになり、なにも出来なかった、となるのだろうが、こんなひどい相撲はない。以前借りていた星を返したのか、とすら疑いたくなる。だがもしもそんなことがあるとしても、それは千代大海が角番で、ここで負けたら陥落のような場合だろう。今場所そんなことがあるはずもない。なんなのだろう今日の琴欧洲は。理解不可能。北の富士は「今場所いちばん悪い立合」と言っていたが、そんなことよりまったく気魄が感じられなかった。激しく失望した一番だ。応援する気力さえ萎えてきた。

 白鵬が日馬富士に完敗

 把瑠都、琴欧洲と贔屓力士が負けていやな予感がしていた。これまた勢い良く踏みこんで前褌を取った日馬富士が終始攻め続け、最後は日馬富士スペシャルである「膝を押さえての投げ」で粘る白鵬を仕留めた。完勝である。まあ大関が横綱を破ったのだからたいした問題ではない。しかしここまで3勝6敗の絶不調新大関に9連勝の横綱が完敗するのもつまらない。ここまできたら千秋楽全勝横綱同士の決戦を望んでいたのではげしく失望した。もちろん安馬も大好きだから、彼が1敗だったなら、よしこれでおもしろくなった、とでも思うのだが、「あ~あ」と溜め息の出るような結末だった。

 朝青龍、単獨トップ!

 序盤に3敗してそのまま引退ではないかと言われたりした朝青龍が10連勝で単獨トップに立った。
 終盤に入り、私がおもしろいと思う優勝争いは、一に両横綱の全勝対決だが、それを琴欧洲が1敗で追うものだった。ところが朝青龍単獨トップという意外なものになった。まだまだ予断は許さず、これからますますおもしろくなるのだが、白鵬に危機意識はあるだろうか。もしも今場所朝青龍に優勝を許したなら、咋場所までの3場所連続優勝の価値もみんな消えてしまう。途中休場を続け、正月はモンゴルで過ごし、横審総見では6連勝した相手(最後の1敗はあきらかに負けてやったものだ)に優勝されたら、すべてがそれを盛りあげるためのマエフリになってしまう。それだけはあってはならない。朝青龍贔屓のひとですら「今場所は10勝で充分。そして来場所に懸ければいいと思う」のようなことを言っていたのだ。
 私もまた朝青龍が好きだった相撲ファンとして、必死に彼が勝ちつづける姿はいいと思う。だがここで優勝されたら、その他の力士はなにをしていたのだとなる。目の離せない終盤戦となった。それにしても琴欧洲の脱落は残念でならない。朝青龍戦で意地を見せるか。いよいよ明日である。しかし今日の腑抜け相撲を見たら期待は出来ない。

 十一日目  負けはしたがいい相撲──琴欧洲対朝青龍

 仕切りを見ているとき、二度「カロヤン!」と声を出してしまった(笑)。一日に一回ぐらいそういう一番がある。今日はこれ。いい相撲を見たかった。琴欧洲に勝って欲しかった。

 朝青龍が琴欧洲の腕に絡む変則相撲で勝つ。まわしを与えないよう必死。何度も腕を手繰っていた。だめなときの琴欧洲だともっと簡単に敗れるのだがよく着いていった。最後ははたき込みで土俵下に飛びだすのだが、そのあとの朝青龍のからぶりチョップが話題を呼ぶ(笑)。あれぞほんとのモンゴリアンチョップだと。
 解説は尾車。やはり「必死」と表現していた。力が衰えてきている横綱(というか稽古不足による体調不良だろうが)の必死さが感動的、でもないか(笑)。まあがんばっている。

 今日の琴欧洲の負けは、こどものころからモンゴル相撲を取ってきて引きだしをいっぱいもっているモンゴル人と、青年になってから相撲を覚えた欧州人の差だ。負けはしたが悲観するものではない。琴欧洲はこれからもっとよくなるだろう。


 大成までは長い

 把瑠都が琴奨菊に翻弄され、すくい投げで転がされる。連日のダメ相撲。明日は朝青龍挑戦だがこの分じゃ期待できない。と言いつつも、さすがと思えるところを片鱗でも見せてくれと祈っている。期待していた琴欧洲と把瑠都が終盤になって大崩れ。なんだかこの相撲日記も書く気が失せてきた。

 武州山、絶不調

 今日も負けて1勝10敗。入幕二場所目。先場所勝ち越して前頭6枚目だから、今場所は大負けしても陥落はないのか。上体に足がついていってない感じの相撲。来場所は幕内力士として正念場になる。

 日馬富士、5勝目

 琴光喜に勝って5勝目。勝ち越しもありうるか。このあとは明日が千代大海、これは勝つだろう。残っているのは琴欧洲と把瑠都、もうひとりは誰だろう。ぎりぎり8勝いけるか。

 琴光喜、9敗

 琴光喜は9敗目。32歳というのは武州山と同じか。学生時代に対戦はあったのだろうか。無敵の学生チャンプ、日大の田宮に対して、大東文化大の山内はどの程度の力士だったのだろう。武州山が大きく負け越して番付を落としてしまうので来場所も対戦はない。果たしてふたりが現役で対戦するときはあるのか。

 旭天鵬の不思議な技

 稀勢の里が前に出て九割方勝った相撲だったが土俵際で旭天鵬マジック。決め手は突きおとしになっている。なんとも不思議な技だった。

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 明日は朝青龍と把瑠都が楽しみだが、二番続けてのダメ相撲でさすがの把瑠都も落ちこんでいるだろうから期待できないか。ほんとならわくわくするはずだったのに。

 朝青龍とウチダテ──2チャンネル相撲板のこと

 2チャンネルの「相撲」板には、それぞれのファンが集う力士のスレッドがある。琴欧洲、把瑠都のスレは、みなテンションが落ちているようだ。そりゃ当然だろう。私も同じ。
 対して朝青龍スレはどんなもんだとばかりに勢いを増している。天敵のウチダテマキコが心臓手術を受けたようだ。ウチダテは朝青龍を「私の中ではもう力士ではないですから」と言った。だから朝青龍にウチダテの病室に行って、「俺の中ではもう横審のひとではないですから」といえというのだ(笑)。おもしろいな。
 現実の朝青龍はオババが重症ということもあり、「お大事にとお伝え下さい」と神妙に言ったらしい。言った後、ニヤっとしたらいいのに(笑)。

 相撲好きが集っているので、若い人が中心だがみなよく相撲を知っている。
 昨日の琴欧洲が千代大海に敗れた無気力相撲には琴欧洲スレのみなも憤慨していた。あの無気力さは異常だ。だがやはりみな私と同じように、この時期での星の貸し借りはあるまいと読んでいる。ないよなあ、6勝3敗のチヨスに負けてやる必要がない。なんなのだろう、あれは。謎である。
 十二日目
 朝九時に出かけるとき、午後四時には帰宅するから録画の必要はないと思っていた。雨の日。意外に寒くなく、電車の中では汗を掻いた。都会での温度調整はむずかしい。電車の暖房は効かせすぎだ。冷房も同じく。冬に汗を掻き、真夏に震える。

 事務処理が思いのほか手間取り、帰宅したのは五時間際。こんなことがあるから念のために録画予約をした方が良い。ともあれ五時からの取組はなんとか見られた。
 ダイジェストでは大相撲のおもしろさはわからない。仕切りのあるゆったりした流れこそが相撲である。中でも価値があるのが四時の横綱土俵入りのあとにやる特集だ。先日の輪島がゲストの時のヴィデオには痺れた。
 そういう特別なものではなくても、結びの注目の一番等を、それまでの対戦ヴィデオを見ながらアナと解説陣が語るこの時間は魅惑に満ちている。ここから見ないとつまらない。

 豪栄道と栃煌山──入門の時期

 豪栄道は小学生の時に「わんぱく横綱」になっている。栃煌山は中学生横綱になっている。豪栄道は高校横綱になっている。ふたりが初めて相撲を取ったのは何年生の時なのだろう。高校生の時ライバルだったのは知っているから、遅くとも中学生の時には取っている。やはり最初は小学生の時か。
 将棋の棋士もみな小学生名人戦の時に初対面している。みな、この道一筋だ。

 青森の高見盛、若の里、武州山では、武州山が相撲を始めたのは中学生からだから、ふたりと当たったのはほんの数回か。中学生の時に相撲を取った若の里と角界入り後今場所初めて当たったのだから長い物語だ。三十二歳だからすくなくとも十七年ぶりになる。高見盛が初めて若の里と当たったときも、中卒と大卒の入門時期による年齢差と出世の差があるから十年近く経っていたのだろう。
 石川の栃乃洋と出島も小学生の時からのライバルだ。

 私の父は自分が師範学校を出ているのに中卒の力士が好きだった。生温い回り道をしてくる大卒力士を嫌っていた。一方、家柄や学歴が大好きな母は大卒力士好きだった(笑)。
 私はもちろん父の感覚の影響を受け父と同じだったが、でもプロレスに関しては、ドリー・ファンク・Jrが大卒で高校の物理の免状をもっているというのが妙に誇らしかったのを覚えている。

 高校中退で角界入りした豪栄道と栃煌山は、いまこうして幕内でぶつかるのだからすばらしい逸材ということになる。まだ二十一歳。負け越しも多く、あまりに期待が大きいだけにもの足りなさを感じるのだが、十両の顔触れを見ると二十代半ばの連中が入幕を目ざして頑張っているのだから、豪栄道や栃煌山、外国人だと栃ノ心や阿覧がいかに出世が早いことか。
 おまけに今場所はふたりとも成績がよい。栃煌山は全勝で優勝戦線に名を挙げていた。今日は豪栄道が勝って成績はともに9勝3敗。

 中学まで野球をやっていた稀勢の里は、ふたりのように相撲実績もないのに中卒で入門した。ふたりと同い年だ。栃煌山は一年遅いが早生まれなので学年は三人とも一緒になる。
 実績もないのに思いきって角界に飛びこんだ稀勢の里からすると、小中校の横綱になって高校卒業寸前に入門してきた彼らすら甘い道を歩んできたエリートになる。ということから心情的には圧倒的に稀勢の里を応援したいのだが、つまらん張り差しをしたりするものだから……。

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 キラー魁皇の小手投げ

 小手投げで相手の肘を壊さないというのは力士同士の不文律だ。投げられる方もあぶない態勢になったら決して無理はしない。久島海の小手投げ連発にそれを思ったものだ。
 いまの魁皇にはもうそこまで気を遣う餘裕はないようだ。あぶない小手投げを連発する。ちいさい力士は懐深く腕が入ってしまったら恐怖だろう。豪風の肘は大丈夫だろうか。心配だ。

 考えて考えて変化かよ! 把瑠都朝青龍戦

 今日も里山が背中を力いっぱい拭いていた。把瑠都もいつになく険しい表情で入ってくる。期待できるかも、と思った。なのに右への変化。考えぬいて出した結論が変化かよバカヤロー! 真正面から吹き飛ばしてやる気魄をもて。その気魄が前面に出たら横綱が変化したかも知れない。もしもそれで負けたとしても大きな自信になる。あの横綱がおれから逃げたと。変化して、たとえ勝ったとしても、なんの自慢にもならない。連敗していたのでたいした期待はしていなかった。それでも思わず舌打ちし、「バカ!」と叫んでしまった。
 一応獨自の「肩越しの右上手」は取ったが、変化したために圧力はなく、内にもぐった朝青龍に簡単に押しだされた。だめだなあ。でもこれも考える人だからのダメさなのだ。考えないよりはいいのか。よくないか。終盤ズブズブ。なんともなさけない。

 朝青龍の残り二番は千代大海と魁皇。負けないだろうなあ、このふたりには。となると全勝で千秋楽だ。


 琴光喜休場、白鵬不戦勝

 大敗している琴光喜は恥を掻こうとも出場する気だったらしい。親方が止めたようだ。
 白鵬の相撲がないとわかり一気に白けた。国技館に行ったひとの失望がわかる。あれはがっかりするものだ。
 ここに来てのこの息抜きはよいと言うひともいるがどうだろう。緊張がへんに緩まないか心配だ。

 白鵬は優勝までに、千秋楽の本割りで勝ち、優勝決勝戦でも勝たねばならない。朝青龍に全盛期の強さはないが、ここに来て一気に相撲勘がもどってきた。良いことだ。白鵬の道はけわしいが、出来ると信じる。そう思うしかない。
 善悪の善に味方するつもりはないが、ただここで悪太郎が勝ったら今までの努力が道化になってしまう。いや道化になってもいいのだ、朝青龍が全盛期を思わせるすばらしい強さを発揮しているのなら。しかし現実は平幕に連敗してもおかしくない綱渡りの連続だった。だからこそ感動的であり、連日スポーツ紙の一面を飾り、ワイドショーでは朝から夕方まで必ず報道され、相撲人気に大きく貢献したとも言える。そして相撲の優勝はクジ運で決まるようなものではなく、己の力でつかみとるものだ。ケチをつける要素はない。だけども、それでも、私はここで白鵬が優勝しなかったらがんばってきた彼があまりに不憫だと思う。

 貴乃花を超えるか朝青龍

 同時にまた、朝青龍が優勝すると貴乃花の優勝回数を超える。それに対する不快感もある。それはちょうど千代の富士の記録が大鵬を超えるときに感じたのと同じ感覚だ。抜きん出た強さだった大鵬の記録を、政治力を駆使した強さの千代の富士が次々に超えていった。とてもとても賞讃する気にはなれなかった。同様に、近来稀なガチンコ横綱だった貴乃花の記録を千代の富士型の朝青龍が超えることが釈然としない。

 千代の富士も朝青龍も最高に強い力士だ。だがやってきたことは貴乃花とはちがう。とはいえこれは貴乃花の方が変人だったとも言える。狭い世界の互助感覚はむしろ自然なのだ。だからこそ誰もが、それこそ談合相撲を仕切る中盆をやっていたような連中でさえもが、貴乃花の連続全勝優勝がいかに凄いものであるかを絶讃する。ガチンコの30連勝がいかに偉大かと。

 朝青龍の全盛期の強さは大好きなのだが、彼がライバルのいない時代にひとり横綱として好き放題に優勝回数を重ねたのも事実である。その辺も大型力士に囲まれたいへんな苦労をした貴乃花とはちがう。しかしこれもまたライバルのいないのは朝青龍の責任ではない。

 こういう書きかたをすると、私が貴乃花の大ファンであり、朝青龍嫌いと勘違いされそうだが、そんなこともない。ふたりとも好きだし、むしろ相撲文章で最も多く書いてきたのは朝青龍バッシングに対する反感だ。朝青龍擁護論である。

 好き嫌いとはべつの観点がある。たとえば自民党が好きか民主党が好きかとは関係なく、「民主党に政権運営できるのか?」のような感覚だ。

 さあて、今場所はどんな結果になるのだろう。今日の朝青龍は千代大海だ。

 十三日目  豊真将、10勝!

 幕尻の豊真将が10勝目。十両相手も多かったし当然とも言える。同じく15枚目の玉乃島も10勝をあげた。対して番付の近い新入幕の連中は苦労している。それだけ力の差があるのだろう。おもしろいなあ、この辺の力関係は。
 好漢が復調気配ならうれしい。アナもそんなことを言っていた。ファンの多いひとである。もうあの美しいお辞儀だけですべてが許せるもんな。

 高見盛と若の里

 こどもの頃から知りあいの同級生、同い年の三十二歳は、入門のズレでどれぐらい差があったのだろうと昨日思っていたら、今日ふたりの取組があり、アナが教えてくれた。高見盛が入門したとき若の里は幕ノ内一年目だったとか。高見盛は日大で同級生の琴光喜の陰に隠れてしまうが、一応アマチュア横綱になっている。二年、三年と琴光喜がアマ横綱になって、四年の時は高見盛だ。
 幕下付出しでデビューしたとき、若の里はもう幕内力士か。まぶしかったろうな。
 青森の人は毎場所こんな取組が見られていいな。武州山もいるし。

 そういや高見盛は朝青龍に勝ったことがあった。そのあと出稽古の時、朝青龍にバックドロップ気味の吊り落としで大怪我をさせられる。そのときの右肩が古傷となり今の万年平幕になった。最高位は小結か。引退すると「元小結高見盛」になる。東関部屋の後継はどうなるのだろう。今年高見山は定年だ。

 クラッシャー魁皇

 私は餘裕がなく勝つためならなんでもやるという意味で、井上編輯長が言ったキラー猪木からキラー魁皇にしたが、世間的にはクラッシャーの方が有名らしい。まあ、怖し屋だ。問題あるなあ、あの小手投げは。

 豊ノ島と安美錦の休場が痛い。大相撲という料理に缺かせないスパイスが切れたようなものだ。豊ノ島は魁皇の小手投げでやられた。あれは長びくだろう。心配だ。安美錦はドルジ戦から休場だが、あれは「古傷の再発」だろう。三十を過ぎた力士はみな古傷を抱えている。相撲って畢竟それに尽きる。

 以前高見山の項で書いたが、高見山と言えば足が長く腰高でもろかった。いわゆる土俵際での粘りがなかった。躰も硬く、本人も相撲の修業でいちばん辛かったのは股割りだと言っている。だからケガが多くて早めの引退のように思えるが、そうではなくケガのすくない長寿力士だった。その理由がもろいからだという。粘らないからあっさり負けてケガがすくないのだ。缺点が美点になっている。
 
 ともあれ、小手投げはあぶない。また魁皇にやられたかと心配した豪風が出場してきた。よかった。

 古傷と言えば「汚いデブ」と相撲を取った出島が、左肘を傷めて、ものすごい痛そうな顔をしていた。花道を下がるときも顔をしかめたままだった。これも古傷だ。デブが悪いわけではない。ただ大きくて重いから、押しているときに、押しているこちらが躰を痛めてしまう。あと何場所出島を見られるだろう。

 把瑠都、不様

 相撲の巧い旭天鵬に両差しになられいいとこなしに敗れる。5連敗。勝ち越せるのか。
「昨夜は十一時に横になったが、朝青龍戦の反省で悶々とし、午前二時三時まで寝られなかった」とレポートが入っていた。みんな悩んで大きくなる。悩め悩め。
 解説の誰だっけ、今日は舞の海と千賀ノ浦か、じゃあ舞の海かな、「悩む必要ないんですけどね」と言っていた。そうだな、把瑠都がなにも考えないバカだったらよかったのかも知れない。ちいさくて苦労した舞の海には、把瑠都のような恵まれた体力の力士がちまちまと悩むことは無意味に思えるのだろう。

 朝青龍、13連勝!

 べつに龍二さんに期待していたわけじゃないのでどうでもいいです。なんて言いつつも、「チヨ、意地を見せろ!」なんてテレビ桟敷で怒鳴ってた(笑)。
 しかしこの1勝の差は大きい。朝青龍には負けてもいい餘裕がある。白鵬は負けたら終りだ。
 今日の千代大海は白鵬。変化でもして勝ち、早々と朝青龍優勝なんてことになったら目も当てられない。やるべきことは出来ずやらなくてもいいことをするのがチヨスでもある。
 結びは魁皇と朝青龍。クラッシャーが朝青龍の肘を極めたら楽しいな。だいたい朝青龍の肘ってほんとに悪いのか。土俵上で痛そうにしていたかと思うと、花道の奧で壁にすごい鉄砲をくりだしていたりする(笑)。先日の解説が、土俵上でこれみよがしに痛そうに肘をさすっている朝青龍に、「ふつうはああいう痛みの箇所は隠すんですが」と言っていた。なんか休んで遊ぶ口実にした気もする。モンゴルでも温泉治療とかわけのわからんことしかしていないし。

 朝青龍の谷町でもあるみのもんたは、「三日目で引退か」と言われているような時でも、初日から「今場所は朝青龍の全勝優勝です」と言っていた。「肘なんか痛くないんです」とも。肘の痛みはともかく、あの時点から毎朝「全勝優勝」と言いつづけてきたの立派。だからいま鼻高々。ますます言いたい方題している(笑)。

 ワイドショーで流すとき、民放のアナが、相撲協会から借りてきたビデオに、結果を知っている上で実況を被せる。なのにつまらない。下手だ。うんざりする。NHKの専門職がいかに巧みであるかを民放を見るたびに思う。事実、相撲の実況はかなりむずかしいと思う。他のスポーツと比較しても。

 十四日目  豊真将、11勝目

 豊真将が勝って11勝目。解説の九重も内容がよくなってきたと誉めていた。幕尻だからの大勝ではなく本格的復調と思ってよいようだ。よかった。

 岩木山、勝ち越し

 岩木山に先日こどもが生まれたとか。今日勝ち越し。アナが「パパになって初めての勝ち越しです」とエール。ほのぼのとしていてよかった。これは長年相撲を取材していて、力士とも面識のあるNHKアナだから出来ること。朝青龍スキャンダルを追っているだけの民放の連中からは間違っても出て来ない。相撲ファンであることがうれしくなるようないい実況だった。

 旭天鵬、二年ぶりの三役復帰

 前頭一枚目の旭天鵬が勝ち越しを極め、二年ぶりの三役復帰を決めた。ただ相撲は普天王相手に変化なのでよくない。本人もそれは苦笑しつつ反省していたとか。「やっちゃったよ。でもどうしても勝ちたかったから」とのこと。
 旭天鵬は意外にも自分に関する数字を覚えているそうだ。今日の勝ち越しで通算680勝なのも自分から口にしたとか。レポーターがあと6年取れば一番になれますよと言うと、満更でもない顔をしていたという。これは以前北の富士も、このひとのようにナチュラルに強く、これといった古傷もない力士は珍しく、四十まで取れるのではないかと言っていた。私も、日本に帰化し、将来大島部屋を継ぐことになっている彼には、四十まで幕内力士でいて欲しいと思っている。琴ノ若がまだまだ取れるのに部屋を継ぐため三十七で引退せざるを得なかった。大島(旭国)の引退は何年後なのだろう。いま六十ニか? するとあと三年、そうか、こまった、旭天鵬はこのまま幕内に定着していても、奇しくも琴ノ若と同じ三十七の時、親方になるために引退せねばならない。なんとか数年、他の力士に頼んで現役続行できないものか。
 東関は今年定年だが、潮丸に継がせて高見盛は現役続行のようだ。よかった。いま彼がいなくなったら喪失感はたとえようもない。
 三年後にはさすがの旭天鵬も衰えて十両下位かも知れない。しかし幕ノ内で取れるだけの力があるのなら、なんとしても引退は回避して欲しいものだ。と、ずいぶんと先の心配だが、このひとにはマンガ「あぶさん」のように、四十を過ぎても衰え知らずの現役でいて欲しいと前々から願っているので唐突な発想ではない。

 今日のトピックはなんといっても「つきひざ」なのだが、いま旭天鵬のWikipediaを読んでいたら、幕ノ内における史上初の「つきひざ」は、栃東がやっており、それで勝ったのは旭天鵬なのだと知る。

 力士は現役中は運転をしていけない。旭天鵬がそれに違犯し、人身事故を起こして出場停止の罰を受けたことは記憶にあたらしい。あれ以外休場はないのだと知る。またあれがなければいま偉大な記録に向かって進んでいたのだとも。まことにもったいない。720回で途切れ、その後9場所皆勤しているから、もしもこの出場停止がなかったら10場所、150回を加えて、現在870回連続出場中だったのだ。悔やまれるミスである。大島親方が悪い。なんで気づかなかったのか。現役力士に運転はさせないというのは協会の規則である。

 稀勢の里と豪栄道

 昨日稀勢の里と豪栄道のことを書いたら今日が取り組み。しらなんだ。
 相撲実績もなく中卒で角界入りした稀勢の里にとって、小学生のころから相撲一途で、高校横綱となり鳴り物入りで入門してきた同い年の豪栄道や栃煌山はぜったいに負けたくない相手だろう。豪栄道は大学での四年という空白の期間を嫌い、卒業前の高校を中退して角界入りしてきたわけだが、稀勢の里からすればそれですら甘いことになる。
 そういう意地もあるのか対戦成績は稀勢の里の2戦2勝。今日も完勝して3戦全勝とした。稀勢の里、豪栄道、栃煌山という若手三羽烏のそういう絡みもおもしろい。

 それで行くと、いくつもの回り道をして角界入りが遅かった豊真将はもう二十七だから、もっと焦ってくれないと困る。ああ、豪栄道は埼玉栄高校だから、豊真将の後輩になるのか。
 いま把瑠都の背中を拭いている里山は日大時代の同期とか。

 把瑠都、勝ち越し

 把瑠都が雅山と突っ張りあい。珍しい相撲。へたくそな突っ張りでも雅山を突きだしてしまったところに怪物の片鱗が見えた。終始憤然とした顔。笑顔はない。ここに来ての5連敗で苦しんだようだ。負けてもいいのは白鵬と朝青龍だけ。豪栄道、千代大海、旭天鵬に負けたのはいただけない。千秋楽は日馬富士。最後を飾って欲しいが。

 日馬富士、勝ち越し

 大関以前から序盤に格下相手に負けが込み、終盤横綱大関を負かして帳尻を合わせる不思議な人だったが、大関になっても同じ。終盤こんなに強い相撲が取れるならなぜ序盤あんなに負けたのか不思議。でも勝ち越してよかったか。またいっぱい稽古して、来場所はこんなことにならないようにしてくれ。


 朝青龍、完勝!

 今日の魁皇相手の相撲は満点。全盛期のよう。いよいよ決戦は明日。

 千代大海のつきひざ

 なんといっても今日の話題はこれ。よけいなことをするなよとひたすら祈る。空気が読めないからここで勝ったりするのが千代大海だ。なんとなく心中穏やかではない。心にむくむくと千代大海の変化で負ける白鵬の姿が湧いてくる。白鵬、よく見て立てよと手を合わせる。
 すると予想通りの見事な変化。白鵬、それはよく見ていたが、そのあとのいなしがうまく、躰が泳いで白鵬完敗の態勢。顔にも「しまった」と現れている。懸命に立ち直ろうとするが、そこに追撃が来たら簡単に押しだされていた。なのに来ない。白鵬振り返ると、龍二さん、自分で膝を突いていた。「つきひざ」である。決まり手ではない。技じゃないものな。勇み足と同じような扱いか。膝がカクンと崩れなかったら白鵬は負け、朝青龍の優勝が決まっていた。なんつうすごいことをやるのだろう、龍二さんは。そしてまたオチの見事なこと(笑)。
 ともあれ勝った。明日は本割りで勝ち、決定戦でも勝って優勝しろ、白鵬。それが横綱として土俵を守ってきた男の意地だ。朝青龍のためにも白鵬が優勝せねばならない。これで全勝優勝なんかしたら、朝青龍はこの世にこわいものなどなくなってしまう。それはよくない。気力でここまで来たが、やはり最後は稽古量の差が出たという大団円にしないと。

 千代大海は明日の豪栄道戦に勝ち越しを懸ける。負けたら「最多角番」の記録更新だ。豪栄道はまだ千代大海超えをしていない。不戦勝と負けで1対1。今の豪栄道なら勝てる。千代大海を負け越しにしろ。

 千秋楽  北桜、引退せず

 十両で負け越し、幕下落ちが確定した北桜が、まだ引退しませんよと明るく言ったとか。三十八歳か。うまく復帰できればいいが無給の幕下と十両は天と地の差だ。元幕内力士は幕下陥落が決定したときに引退することが多い。舞の海も智ノ花もそうだった。もどれないようだと、しばらく取って、引退だろう。


 稀勢の里、勝ち越し

 高見盛に勝ってやっと勝ち越し。三大関を破っているのにずいぶん遅い勝ち越しだった。休場している安美錦が関脇を陥落するので来場所は初の関脇。


 把瑠都、怪物相撲

 日馬富士と四つになったが、日馬富士がすぐに素速い右の巻替えをする。それでいい態勢になられて負けるのだろうと思った。巧さがぜんぜんちがう。ところがその巻替えの瞬間に小股すくいのような形になり、日馬富士の太腿に手を入れると、そのまま持ちあげて送りだした。決まり手は「つり出し」。まるでおとながこどもをだっこするような形で、しかも力んでいず、「ひょい」という感じだった。把瑠都の怪力がいかんなく発揮された怪物相撲。日馬富士の巧さがまったく通じない力の世界だった。把瑠都の相撲では今場所いちばん感激した相撲になる。嘉風をまわし右手一本で抛り投げたのもすごかったが。でもあれは本人も反省しているように悪い相撲。今日のは把瑠都にしか取れないと誉められる相撲だろう。いや相撲と言うより、あそこからスープレックスに行くような形だった。前田のキャプチュードか。解説が言っているように、たまたまそうなってしまった相撲なのだろう。しかし、すごい。
 今日は笑顔が出た。前半負けが込み、どうしようもないと思うと後半連勝して勝ち越し、前半白星街道まっしぐらで期待したら、後半はたどんの連続と、思うように勝ってくれないが、来場所も筆頭関脇だ。今場所はいい勉強になったろう。

 出た、千代大海スペシャル!

 チヨが回転の速い突っ張りで豪栄道を押す。豪栄道腰が重くなかなか下がらないが、じりじりと押される。「出るな」と思った瞬間に出た。チヨの引き。十八番。芸術的。同じ事をやる闘牙が、あれには獨自のタイミングがあるんだとニヤニヤしていたが、龍二さんのこの相撲はわかっていてもふせげないのだろう。しかしまあくだらない相撲。解説陣は「突っ張りの回転が速く文句なし」のように誉めていたけど、その回転の速い突っ張りで押し出せず引いているんだから、あの突っ張りは回転が速くてかっこいい割りには利き目はもうイマイチなのだろう。

 けっきょく10勝の琴欧洲だったが──ブルガリアとの国交の話

 魁皇を破って10勝目。今年は「ブルガリアとの国交回復50周年」とのことで駐日大使が来ていた。それを前にしての勝利。
 「回復」ということは、もっと長かったのだが、戦争で切れていたということか。え? 第二次世界大戦じゃナチスドイツと組んでいる。どういうことだろう。
 おお、調べまくってわかった。1944年、ナチスが降服した後に共産党政権になって国交が途絶えるのだ。ナチスと同盟していた日本をソ連が嫌ったのだろう。1959年に国交が回復、今年で50年。よくわかりました。
 終盤崩れてしまったが、最悪の時のバタ足になることはなかった。来場所が期待できる。

 朝青龍優勝

 本割りで白鵬が勝つ。この一番は奇妙なもの。待ったかなと思った。朝青龍が明らかに早く、白鵬が、それでは立てないと待ったをするタイミング。なぜかそのまま成立し、あっけなく白鵬が勝った。へんな相撲である。といってもちろん無気力とかのそれではなく、残念な一番という意味だ。みなもう一番見られるから喜んでいてなにも言わなかったが、これがもしも決勝戦の相撲なら非難囂々だったろう。。

 決勝戦は朝青龍が内にもぐりこみ、白鵬は把瑠都みたいに右肩腰の上手の形。これでは勝てない。朝青龍が勝って涙の優勝。これで今場所は終り。

 けっきょく白鵬の三場所連続優勝の意義は、「朝青龍がいなかったから勝てたんだ」になってしまった。横審総見での6連勝も、「まだ朝青龍が仕上がっていないから勝てたんだ」になってしまった。なんとも白鵬が不憫でならないが、自力優勝の場が与えられたのにそれで勝てなかったのだからしかたないのだろう。自分の責任だ。

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 貴乃花、無言──朝青龍、優勝回数で貴乃花を抜いて史上単獨4位に!

 優勝杯を渡すのに麻生首相がやってきた。表彰状を読むとき、思わず読み間違いがないかと耳をそばだててしまう(笑)。それもまた彼が播いた種。こちらの責任ではない。「内閣総理大臣 朝青龍殿」とやったのでへんに思った。これじゃ朝青龍が総理大臣のようだ。(翌日知るが、そこにあった「内閣総理大臣杯」の杯を抜かしたらしい。)

 私が朝青龍に関して大嫌いなことに、横綱の態度として軽いことがある。サッカー騒動のあと初めて参加して話題になった巡業では、稽古の時、四つになり、背中側の手で御客に拍手を強要して受けるパフォーマンスをやっていた。相撲評論家は一様にこれを批判していた。元NHKアナの杉山さんは、「ぜったいに許されないこと」と怒っていた。横綱はおどけてはいけないのだ。それは誰でもなれる大関までの地位と違って、神に近い地位だからだ。象徴なのだ。そのことが朝青龍は判っていない。単なる最高ランクだと思っている。それをモンゴル人の彼に理解させることは難しく、このことになるとまた「師匠がだらしない」の話になるから堂々巡りになる。

 しかしまた朝青龍に悪気はなく、むしろファンサービスとしてやっており、「どうだ、みんな喜んでたじゃないか」だから溝は深い。相撲には初っ切りのような笑いはある。それらはそれ専用の連中がやるから、横綱があんなことをする必要はないのだ、というのが評論家の意見になる。横綱は大関とは違う。

 その品格のない横綱がついに優勝回数で貴乃花を超えてしまった。もう上にいるのは北の湖と千代の富士と大鵬のみ。北の湖は24回だからまちがいなく超えるだろう。あと1回だ。
 朝青龍に追いぬかれた貴乃花に記者が感想を訊ねたらしい。貴乃花はそのことはまたあらためてと言って返事を拒んだそうだ。
 貴乃花は朝青龍の横綱としてのありかたに疑問を呈している。気分がいいはずがない。

 私は朝青龍が好きだった。朝青龍を批判するマスコミを批判してきた。ここのところあまりに下品な張り差しに嫌気がさし、アンチになっていた。
 彼が今回優勝したのはえらいと思う。だがやはり、あの言行の横綱が、常にガチンコで躰をボロボロにして築いた貴乃花の記録を抜いたことには釈然としないものを感じる。誤解のないように繰り替えしておくが、それはモンゴル人とかはまったく関係ない。ひたすら「相撲内容」に関してだ。

 朝青龍は千代の富士を見習っての談合相撲を取ってきた。確実に勝てる相手に、約束としての金を渡してきた。もらう方も100回やっても1回勝てるかどうかの相手から保証金としてもらうのだから抵抗はない。このことは相撲界にとってもお金が循環してよいことだと言われている。私はそれを否定しない。相撲とはそういうものだ。それは俗に言う八百長ではない。
 だがそれをしなかった稀有な横綱である貴乃花の築いた記録を、それをしてきた千代の富士型朝青龍が抜くことには、どうしても悔しいものを感じてしまう。それが今場所の私の結論である。

 総論




壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

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