平成二十一年春場所
 
初日
 把瑠都、新生面!

 把瑠都がのど輪で突進し、自分よりも重い183キロの雅山を一方的に突き落とした。雅山、土俵下に転げ落ちる。腕が良く伸びて、全盛期の曙のような相撲だった。まわしにこだわるから、そういう立ちあいをしても、すぐに落ちつくのかと思ったが、休まずそのままだった。新生面である。
 さらには、いつもだと心優しい面を見せるのに、今日は土俵下の雅山を気遣わず、さっさと自分の陣地に戻った。憎々しい把瑠都が開花するのか。彼の優しさと礼儀正しさが好きな私は複雑だけれど。

 把瑠都が入籍したとアナが言っていた。むろんファンである私は先刻承知。
 2歳年上のロシア娘との結婚(入籍済み)である。ロシア嫌いのエストニアで、この結婚は支持されたのだろうか。武力でロシアの支配下にあったバルト三国は大のロシア嫌いである。とはいえ日本でバルト三国の娘と出会うのはむずかしい。ロシアで妥協か。
 日本でロシア料理店をやっているひとの娘らしい。経営者の娘。経営者は母親。その母親は日本人と結婚しているとか。再婚のようだが。その料理屋に通って知りあい、4年前からつき合っていたとか。むろんこれはスポーツ紙などで集めた情報。NHKはこんなことはしゃべらない。

 北の富士はバルトの結婚を知らなかったらしく、アナに聞いておどろいていた。こういうのがよけいな打ち合わせのないNHKのよいところである。民放だとこうはゆかない。
 体力を持て余している若い力士は暴走しがちだから早めに結婚した方が良い。力士に限らず、秀でたアスリートすべてに言える。そしてアスリートではないが、将棋の棋士などもそうだ。娶るのは姉さん女房がいい。これで把瑠都は一皮剥けるだろう。

 琴欧洲も早く結婚するといいのにな。ブルガリア娘と所帯を持てばまた変ってくるだろう。でもどうなんだ、佐渡ケ嶽は琴欧洲に日本にいてほしいから、日本娘との縁談を進めているのだろうか。むかしとちがって今はマスゴミがうるさい。力士は性慾の処理に苦労するだろう。

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 魁皇、満身創痍

 終ったひとだけれど、土俵にいて欲しいと思っている。いるだけでいいと。
 しかし今日の一番を見るともう相撲を取れる躰ではないのかも知れない。
 子宮を病んでこどもを産めないとわかっている5歳年上の元女子プロレスラー西脇充子とのあいを貫き、裏切ることなく結婚した誠実さは讃えられるけど、引退が迫ってくると、もうすぐ我が子が角界入りすると琴ノ若との差を考えたりする。わたしがね、ファンとして。きっと同じ事を考える後援者もいることだろう。その分、ふたりの気持ちがより強く結ばれればそれでいいけれど。

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 張り差し2題──日馬富士、惨敗!

 張り差しをすると躰が立ち上がる。日馬富士がそれをしたために、両差しにはなったが浮きあがってしまい、自分よりも背の低い琴奨菊に両腕を極められ、押しだされた。張り差し絶滅を願う私としては会心の一番である。ざまあみろの気分だ。


 張り差し2題──琴欧洲、快勝!

 ところが続いて大好きな琴欧洲も張り差しをやった。しかもそれは出足鋭く突っこみながらの右からの張り差し。いわゆる威嚇としてのゆったりした立ちあいの張り差しではなく、右手を張って行きながら前傾姿勢で突っこんで行くもの。張っている瞬間、琴欧洲は激しくぶつかって目を閉じていた。それだけ激しい立ちあいだった。ことばを替えると、前傾姿勢での満点の立ちあいに「プラス張り」が加わったようなもの。これは理想的。張りなどなくても満点の立ちあいなのに張り手の効果まで加わったのだから稀勢の里はたまったものではない。一瞬にして両差しになられて棒立ち。なすすべもなく押しだされた。

 張り差しの最も理想的な形となった。しかし困った。こんなことをしなくてもいい琴欧洲がこれをして、そしてこんな勝ちかたをしたら満足して多用するのではないか。いつもいつもこんなふうに決まるものでもない。必ず「張り差しが原因での負け」があるはず。今後の「琴欧洲と張り差し」が懸念される。心配だ。なんでこんなことをするのか。気が弱いんだろうな。真に気の強いひとならこんなものは使わない。張らせて、その間の隙を衝くはずである。

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 白鵬、万全

 あれだけ速い相撲で左を取り、低く低く腰を落として寄られたら誰も適わない。豪栄道、いいところなし。しかししかたない。白鵬が万全なのだ。
 先場所、朝青龍に名をなさしめた反省をしているのかどうか、ともあれ満点の発進。

 
二日目
 今日は国会中継があり地上波は5時からだった。いや正確には5時からはニュースだから5時5分からか。BSもない生活なので私にはそれしかない。国会中継も好きだからなおさら困る。興味がないならそれを否定すれば済むが。
 BSがあったなら、相撲を録画にして国会中継を見るのか。

 中継が始まるといきなり幕ノ内後半戦。これはあまりに慌ただしい。主要な取組を見ればいいというものではない。4時ぐらいから、以前の対戦成績や場所前の話などを聞きながら、徐々にそこに近づいて行くのがいいのだ。その盛りあがりが大相撲の醍醐味だ。まあダイジェストよりは遥かにましだけれど。

 いきなり把瑠都である。今日は苦手の琴奨菊相手。どうなるか。

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 把瑠都、勝つには勝ったがひどい内容

 今場所前は満足できる稽古が出来たと把瑠都が自信満々とのこと。これは昨日もいっていた。けっこう珍しい。アナも解説の舞の海も昨日の相撲を絶讃して期待大。今日の相手は対戦成績2-5の琴奨菊。苦手なひとりだ。しかし今場所は吹き飛ばすかと(私も)気合いが入る。

 なのに、ぶつかって左を手繰られるともう大慌て。すぐに引く。すかさず琴奨菊は前に出る。後ろに引くのが速かったから、把瑠都はそのまま土俵下にふっとぶが、琴奨菊も目標を失ってバッタリ。軍配は琴奨菊だが把瑠都の足が残っていた。目標があまりに早く消えたものだから琴奨菊が早く倒れすぎた。行事差し違い。しかし相撲は琴奨菊のもの。

 いやはや、昨日がよかっただけに激しく失望。よい稽古が出来たと本人が自画自賛するだけ体調はいいのだろうが、すこし思うように行かないとこんなにバタバタになってしまう。
 今場所も一喜一憂、いや三喜四憂ぐらいの毎日になりそうだ。

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 琴欧洲、心配していたら、やっぱり……

 昨日の張り差しの成功を案じていたら早速味を占めたのか、今日は栃煌山相手に左から張り差し。しかしそれを読んでいた栃煌山はひるまずに懐に飛びこみ、両差しになって完勝。典型的な「張り差し破り」の一番。いやはや昨日の心配がこんなに早く現実になるとは。

 舞の海の解説は、「張られると覚悟しているのと予測していないでは大きな差。栃煌山は張られるのを覚悟していた。だから前に出られた」と。
 すると勝利インタビューでの栃煌山も「張られても横を向かないようにと、それだけを」と会心の笑み。これじゃ昨日と違って出足のないペチョンという迫力のない張り差しの琴欧洲は勝てるはずがない。相手は張られるのを覚悟で、それによる隙を狙っているのだ。だめだ、こんなことをしていては。失望した。がっかりした。

 昨日の相撲を見て、今場所、そんなこともあろうかと思っていたが、まさか昨日の今日とは……。私が琴欧洲に口を利ける立場なら、あなたの相撲に張り差しなど必要ないと言うのだけれど。

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 琴光喜、敗れる

 雅山と正面からやりあっている。捕まえようとしない。それでいて徐々に押している。土俵際まで追い詰めている。気魄のあるいい相撲だなと思っていたら、引かれてバッタリ。いくらなんでも簡単に落ちすぎる。どこか悪いのだろうか。ちょっと大関の相撲とは言い難い。

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 稀勢の里、惜しい

 稀勢の里が細い日馬富士を相手に押し潰すような相撲を取る。ほぼ勝っていたのに、土俵際でくるりと態勢を変えられると、そのままひとりで落ちてしまった。私はこどものころ、よくこんな日馬富士みたいな相撲を取っていた(笑)。
 むかしは、こどもはみんな相撲を取っていた。いま誰もやっていない。ごく一部の相撲が盛んな地域の、しかも限られた力士候補生だけだ。なんのかんの言われようと「昔は」相撲は国技だった。そう言えるだけ普及していた。野球は道具とスペースが要った。サッカーなんて無縁だった。男の子はみな相撲を取っていた。
 いま誰も取らないから、国技とは言い難い。その点、モンゴル相撲はモンゴル人の国技だ。うらやましいことである。

 初の関脇なのに稀勢の里は2連敗。日馬富士は愛称のいい相手。この1敗はもったいない。

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 魁皇、張り差しからの小手投げ

 魁皇が張り差し。そして十八番、危険技の小手投げで豪栄道を翻弄。
 私は魁皇の張り差しは否定しない。体力のない魁皇が張り差しをしたり、関節技の小手投げを多用したりするのはいいのだ。大嫌いな張り差しだが、もともとそんな技だから、正しい使いかたなら文句はない。

 下品な朝青龍にも似合っていていい。
 いやなのは、朝青龍の影響を受けて、白鵬が多用したり、稀勢の里が使ったりすることだ。稀勢の里には、朝青龍の張り差しをものともせず懐に飛びこみ、それを利して完勝し、土俵下に叩きおとした朝青龍をふてぶてしく見おろす力士になって欲しい。なのに朝青龍の真似をして張り差しを多用したりしている。それじゃだめだ。
 ましてベビーフェースである琴欧洲が使うなんて言語道断である。つまり、私の張り差し嫌いは、「猫も杓子もラリアート嫌い」と同じ観点にある。

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 龍二さん、四つになって完敗(笑)

 出足鋭く攻めこんだ龍二さんは、カモにしている旭天鵬に完勝のパターンだったが、なにをまちがったか四つになってしまい、すると懐の深い旭天鵬に簡単に寄り切られてしまった。けっこう笑える相撲だった。

 あまり適切なたとえではないが、競馬的に言うなら、「いつも出遅れて追いこんで勝ってきた馬が、たまたま出足がついてしまったものだから、逃げる形になってしまい、結果ズブズブになったようなもの」である。
 千代大海の出足と突っ張りは「逃げ馬」のようなものだから、このたとえは正しくないのだが、それでもなんか、あまりに快調すぎて、つい苦手な四つになってしまった千代大海を見ていたら、ゲートの出がよすぎて、追い込み馬が逃げて惨敗、が思いうかんだ。楽しいな、龍二さんは。
 
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 朝青龍、600勝!

 朝青龍が600勝目。150敗だそうで、ちょうど勝率は8割。
 速くて隙のない相撲。鶴竜になにもさせなかった。ぜんぜん先場所の序盤とはちがっている。これだけ本場所を経験することは価値があるのだろう。

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 白鵬も文句なし

 白鵬も速い。腰が低い。よく割れている。文句なし。
 アナが千秋楽の全勝決戦を見たいと言っていた。昭和58年の千代の富士と隆の里以来ないのだとか。
 へえ、そうなのか。朝青龍はほとんどひとり横綱だから知っているが、貴乃花、曙、武蔵丸には、それはなかったのか。先場所白鵬が日馬富士に負けていなければ実現していたことになる。

 今場所、早くも大関がだめなことは確認されたから、その可能性は高い。でも安美錦や豊ノ島に横綱キラーぶりを発揮してもらいたい、と書いて番付を確認すると、先場所ケガをして番付の落ちたふたりは今場所は対戦はないのかな? それでいて当たる番付には安全牌が揃っている。楽しみなのは稀勢の里ぐらいか。把瑠都にも期待するけど。

 白鵬は万全だし、朝青龍は先場所と違って完全復活だから、昭和58年以来が実現するか。白鵬がそこで全勝優勝しないとどうしようもないことになる。

 
三日目
 把瑠都、うっちゃられる……



 雑な相撲で豪栄道にうっちゃられる。両腕を極めたときはそれで勝ったと思ったが……。
 雑である。なぜあそこで腰を落として、もうすこし慎重になれないのか。

 しかし昨日も本来は負けていた相撲だからこんなものか。3日か4日に一度、型破りの相撲を見られれば満足、と、そんなふうに割り切るべきなのだろう。なんとも。

 著作権の問題があるのでスポーツ紙のサイトにある写真はなるべく載せないようにしている。でもこの写真にコピー出来ないようにプロテクトがかかっていたので、妙に反骨心が湧いて(笑)コピー破りをしてもらってきた。
 この程度の写真を相撲ファンが自分のサイトに貼るぐらい見逃してもらいたいと思う。またこの写真が大金を産みだすようなことにもなるまい。なぜそんなにむきになって守るのか。
 いくらプロテクトをかけても破る方法はあるのだから。写真をお借りした場合、私はいつも出処を明らかにして感謝のことばを添えているが、そういうこともあって今回はなし。

【後日記】
 把瑠都はカンヌキで極めた経験がなく、極めはしたものの、そのあとどうしたらいいかわからなかったとのこと(笑)。うっちゃられたのも初めてでいい経験だったようだ。

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 稀勢の里、圧勝

 稀勢の里が琴光喜に、どっちが大関かわからないような強い勝ちかたをした。琴光喜は、もしかしたら魁皇より先に引退か。しかしまあ今場所も大関陣はひどい。とりあえず魁皇と日馬富士は白星先行だが内容がひどすぎる。
 琴欧洲が頑張ってくれないと困る。


 両横綱万全

 白鵬が強い。琴奨菊の料理のしかたは見事だった。
 朝青龍も先場所とは全然違う。いつどこで破綻があるのか。目が離せない。
 
四日目
 隠岐の海を見る

 今日は国会中継が3時で終り、3時5分からの中継。
 4時の土俵入り後の時間に隠岐の海が登場。美男力士である。声もいい。落ちついている。大物感がある。NHKのインタビューコーナーで、こんなに堂々としている新十両力士をみた記憶がない。美男で背も190ある。スター力士候補だ。




島根県出身の関取は、忍の山(春日野部屋、1976年(昭和51年)11月場所十両最終在位)以来33年ぶり、戦後6人目。また隠岐島出身の新十両は1958年(昭和33年)9月場所の隠岐ノ島(時津風部屋、1960年(昭和35年)3月場所まで十両に在位)以来、51年ぶり2人目である。Wikipediaより

 ネットでこれしか見つからなかったのでこれを載せるが、あまりいい写真ではない。もっといい男だった。



 親方は八角。北勝海だ。隠岐の海は角界入りに当たって、八角の人柄を全面的に信じ、「この親方ならすべてを任せても安心」と思ったとか。そのあと録画で北勝海も登場。先々場所の幕下筆頭で5勝を上げながら十両にあがれなかったことを、「順調すぎるほど順調だったので、あれはあれでよかったのではないか」と語っていた。師弟関係も良好のようだ。北勝海は兄弟子の国民栄誉賞をもらった某チヨなんとかとは違って人望がある(笑)。
 そして先場所、7戦全勝で十両入りを決めた。

 隠岐の島が相撲が盛んであり、《「隠岐古典相撲」は、神社の改築など島の行事を記念して相撲を奉納したのが起源とされ、300年の伝統を持つ。島内の中学生以上の男性、約300人がほぼ全員参加し、夜通し行われる。事前の番付編成会議で大関を頂点として関脇、小結の役力士を決め、下から対戦。同じ相手と2度対戦するが、勝負のしこりを残さないよう、必ず1勝1敗にすることから「人情相撲」とも呼ばれる。 》とある。
 隠岐の海もこどものころから相撲を取っていた。十両昇進決めての凱旋帰国には、700人ものひとが集った。
 隠岐の島は行ってみたい島だ。隠岐の島、屋久島、対馬に行ってないのは悔いている。海外に行くよりも先に行くべきだった。未だに行っていない。恥ずかしい。

 隠岐の海も、豪栄道、栃煌山と同じ世代とか。高校を出ている分、ひとつ年上になる。
 こういう価値のある特集を見られるから、相撲はこの時間から見なければならないのだ。
 順当に出世して欲しい。なんとも楽しみな青年だ。十両を見る楽しみが増えた。テレビに出てもまったくびびっていず、男としての大物感がある。これはすごいことである。美男ぶりも半端ではないので幕内入りしたらあっと言う間に人気者になるだろう。

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 豊真将のお辞儀

 今日は早くから見たので豊真将のうつくしいお辞儀を見られた。あれを見ていると、日本人である自分が誇らしくなってくる。いいお相撲さんである。成績は2勝2敗だが、もう幕尻に落ちるようなことはなく、安定した勢力になるだろう。

 豊ノ島も安美錦も高見盛も見られた。満足の一日。

 把瑠都がまた脆さを……

 ポンコツ魁皇、同時にキラー魁皇でもあるけれど、左腕を手繰られるような形であっけなく膝を突く。しかしこれもまた小手投げであったらしい。ビデオを見るとなるほど、小手投げになっている。腕が伸びていないので、いわゆる「あぶない小手投げ」とは違っているが。
 これはキラー魁皇を誉めるべきなのか。

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 豪栄道の千代大海超え

 毎度同じ事を書くが、こういうのを見ると、ちょっと感動的だ。千代大海は前に出て思いっ切りつっぱっている。いい相撲だ。だがそれに正面から耐えて、豪栄道がやがて押し勝ってしまうのである。息子に腕相撲で負けるようになってしまった父親を見る感覚で、ちょっとせつなくなった。

 同じく、先場所も同じ事を書いたけど、同じ茨城出身の稀勢の里と雅山戦。稀勢の里が元大関の雅山を圧倒した。これもまたせつなさを感じる。

 かといって平幕の白鵬が千代大海をぶんなげたときは、こんな感情はなかった。なんなのだろう、これは。おそらく、白鵬のように横綱間違いなしと思っている超大物だとそれを感じないのだろう。

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 腰高の琴欧洲

 反省したのか張り差しはせず、琴欧洲がまっすぐ突っこんで旭天鵬を攻める。四つになり一気にがぶっていった。ところが腰高なものだから、これまた四つになると強い旭天鵬に楽々と逆転され投げられる。決まり手は突きおとし。
 寄り切るとき土俵際でしっかり腰を落とす白鵬の磐石の相撲と比すと、まさに浮足だった腰高の相撲。これじゃ酷評されてもしょうがない。こどものころから相撲を取っていればこんなふうにはならないように思う。欧州人の悪さがでた一番。

 34歳で三役に戻った旭天鵬は、いつみてもすごい。天然の強さだ。プロレスラーで言ったらドン・レオ・ジョナサンのような資質である。悪いところもないし、このひとなら40歳になっても幕内にいられそうだ。でも親方になって部屋を継ぐからそうも行かないのか。もしもそのために、まだまだ現役でいられるのに引退するようなことになったら(琴ノ若がそうだった)残念でならない。今から心配している。

 朝青龍はさっさとモンゴルに帰って大統領にでもなんにでもなってくれ。ライヴァルは旭鷲山か(笑)。旭天鵬は日本人になって相撲界の発展に尽くす。

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 日馬富士、今日も冷や冷や

 北勝力ののど輪で土俵際まで持って行かれたが、そこでまたクルリと体を替えると、北勝力がひとりで落ちた。連日のクルリ相撲。勝っていた相撲だけに北勝力はさすがに悔しそう。日馬富士に笑顔はない。それでもこれで3勝1敗。無難な序盤か。運動神経のよさでひやひやの勝利。でもその運動神経は豊富な稽古量から来ていると考えれば否定的にもなれない。タバコやめたほうがいいんだけどな。

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 栃煌山、完敗

 琴欧洲、千代大海を破っている栃煌山が朝青龍に挑戦。
 朝青龍の下品な張り差しにひるまず栃煌山はつっこんでいったが、いかんせん力が違いすぎ完敗。しかし確実に張り差しが無意味であることは見ていても判る。マイナスだ。誰かあの下品な張り差しを受けとめ、それを利して朝青龍を叩きふせる力士は出ないものか。待ち遠しい。

 今場所は地位の落ちた嘉風は当たらないのか。先場所の張られた朝青龍が嘉風を睨みつける姿は今も覚えている(笑)。あれを見たいなあ。

 五日目
 WBC日本キューバ戦

 連覇を目ざすWBCで、韓国に負けたため、このキューバ戦を勝たねばお終いと盛りあがっている。平日昼12からの中継。見事に勝って、明日はまたも因縁の韓国戦となった。明日は祝日で午前中から生放送だから日本中が湧くことだろう。

 それにしても日本韓国戦は盛りあがる(笑)。最初、コールド勝ち。次ぎに1-0で負けて、その後も4-2で負け。明日はなんとしても勝たねばならない。
 しかしまあガムをかんでいる男ってのはみっともないな。なんであんなカッコ悪いことをすぐに真似るのか。むかしから大リーグでは噛み煙草をやっていて、バッターボックスに入るとき、ペッと吐くのが醜かった。
 ガムをかむことによって緊張感の緩和だとかリラックス効果だとか言っているが、日本人としてみっともないと感じないのだろうか。それだけで見る気をなくす。サムライJapanて、試合中も口をモグモグさせているサムライがいるものか。原監督とイチローが噛んでいないのに救われたが。



 いやはや暑いのなんのって。7月の陽気だとか。狂っている。長袖では暑くて半袖一枚で過ごした。さわやかとは思わない。狂った陽気に腹が立つ。3月の春分の日前に、なんで7月の陽気なのだ。

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 把瑠都、日馬富士にあしらわれる

 これで豪栄道、魁皇、日馬富士と三連敗。しょうもない。
 どうやら豪栄道にうっちゃられた初体験がショックとして尾を引いているらしい。そんなレポートを聞いた。ならそれを励みにすればいい。あれは豪栄道にとっても自信になったろう。地元の大阪で大声援を受けながら、あのでかい把瑠都をきれいにうっちゃったのだ。
 把瑠都の、「極めはしたが、初めてなので、それからどうしたらいいかわからなかった」ってのも微笑ましくていい。体格の差から、これからもちいさな力士に両差しになられることは多いだろう。もぐったら極められる、身動きできなくなる、把瑠都に対して両差しは危険だ、と言われるぐらいに、カンヌキを究めればいい。
 といって、さて把瑠都にカンヌキの極意を教える親方は誰がいいだろう。貴ノ浪のところにでも行ってみるか。

 千代白鵬、不快

 大麻の尿検査を受けなかった極めて黒に近いグレーの千代白鵬(個人的には真っ黒だと思っている)が幕内で相撲を取っているのを見ると不愉快になる。若麒麟のみならず、千代白鵬もクビになるべきだし、親方は責任を取って理事を辞めるべきだ。

 垣添、あきらかな反則

 垣添が豊真将に勝ったが、完全に髷を掴んで投げていた。速い展開だったから判らなかったのか。もの言いはなかった。
 しかし豊真将の髷はそれによってほどけていた。ざんばらである。抗議があったら問題だったろう。なによりビデオは髷を掴んで投げる瞬間を鮮明に捉えていた。

 それが、勝負の流れの中で出た不可抗力と審判員が判断し、明らかにそれを判っている豊真将がそう納得していて抗議しなかったのなら、それはそれで大相撲の規則として受けいれる。

 ただし、これで一切お咎めなしなら、かつて同じような形で前代未聞の横綱の反則負けを取られた朝青龍は不満であろう。



 ということでネット検索してみた。適切な意見は見つからなかった。唯一、錣山部屋のブログに、もの言いがつかないのはおかしいとのファンの書きこみがあった。

 それで、忘れていたことを思い出した。垣添は2007年の11月場所で旭天鵬の髷を掴んで投げ、反則負けになっていたのだ。前科持ちである。なら今回も厳しく対処すべきだったろう。なぜ不問なのか理解に苦しむ。
 
六日目
 WBC日本韓国戦──日本、勝つ!

 今日は春分の日。祝日。WBCの日本韓国戦がTBSで午前10時から中継。日本中のスポーツファンはこれに釘づけだろう。視聴率はどれぐらい行くことか。
 さしたる野球ファンではないが、このWBCはおもしろい。国別対抗は盛りあがる。楽しんでいる。かといってオリンピックが好きなわけではない。オリンピックに野球やサッカーは必要ない。すでに独自の世界戦を持っているのだから。
 次回からはなくなるオリンピックの野球でどこが優勝したのか知らなかった。星野ジャパンが負けて叩かれていたのは覚えている。そんな程度だった。今回「9戦全勝で韓国が優勝」と伝えきく。ふうん、たいしたもんだねえ。
 どこかのワイドショーが「国別野球人口」というのをやっていた。すると韓国の野球人口は「人口4800万人で6500人」とか出ていた。日本は1億2千万人で16万人だったか。アメリカが百万人以上いてさすが野球大国だった。
 これっぽっちの基礎人口で世界一になっているのだから、朝鮮人てのは身体能力高いんだよなあ。すばらしい。

 選手のみならずコーチまでガムをかんでいる日本チームと比して、韓国チームにはそんなのはいなかった。わたしゃ心情的に韓国を応援した。



 相撲人口を考えてみた。数字は見つからなかったがすくないのは見当がつく。だって今のこどもは相撲を取らないから。空手なんかの方がずっと多いのだろう。
 モンゴルの人口はいま270万人しかいない。そこからやってきた数少ない青年が日本の大相撲を席巻していることをなさけないというひともいるが、国技的観点から見たら、モンゴルのこどもは百人が百人こどものときから相撲を取る。おとなの大会にはお父さんも出る。モンゴル相撲は国技として庶民の生活に馴染んでいる。
 二十歳近くなって相撲を知った琴欧洲や把瑠都のような欧州の青年達の基礎体力の高さによる強さは脅威だが、モンゴル人は今の日本人以上にみなこどものときから草原で相撲に親しんでいるのだから驚くには価しない。そういうこどもの中から、さらに選ばれた少年が日本にやってくる。しかもハングリーガッツもある。出世して当然である。



 制度について。いま「外国人力士は一部屋ひとり」と決められている。制限のないときは大島部屋から旭天鵬、旭鷲山、若松部屋から朝青龍、朝赤龍と複数出世していた。
 この制度はどうなのだろう。制限してもこれだけ外国人力士が活躍しているのだから、とっぱらったら、モンゴル人、ロシア人(グルジア、エストニア等を含む)の天下になってしまうのだろう。というか両横綱はモンゴル人だしもうそうなっているけれど。
 考慮すべきは、旭国の大島部屋、朝潮の若松部屋は弱小部屋だったことだ。名門の出羽の海や、独自のスカウト網を作りあげ、熱心なスカウト活動をしていた佐渡ケ嶽や武蔵山のように有力力士を勧誘できない。モンゴル人力士を入門させたのは苦しまぎれ。ブランド品を買えない貧乏OLがまがいものに手を出したようなものだった。これが大当たり。我も我もと手を出す。そして制限が出来た。

 私はこの制限を無意味と考える。制限すべきではないと思う。もしも無制限にし、力士の8割が外国人、日本人は2割になったとしても、それが格闘技大相撲として充実していれば不満はない。
 しかし礼儀は重要だ。朝青龍問題に代表されるように、あるいは把瑠都が浴衣を着ず、髷も結わず、アロハシャツにポニーテールで六本木に遊びに行っていたように、外国人青年をきちんと教育指導できなければ大相撲の価値はなくなる。それが約束されるのなら、外国人力士の数に制限をつける必要はないだろう。



 いまの相撲協会では、というか協会以前に各部屋の親方の能力として、それは期待できないようだ。十両と幕内に力士がひとりいるかいないかでは状況がちがってくる。米櫃だ。それに強くは言えない。それは間垣が若ノ鵬を甘やかしていたことでも判る。朝潮と朝青龍の関係は言うまでもない。どの部屋でも、どの親方でも同じだろう。

 となると、日本人的情による周囲のブレーキがない外国人力士を無制限に増やすことはやはり禁じるべき、となるのか。
 元々大相撲界は躰のデカい悪ガキを力で矯正するような場所でもあった。それがいま体罰を禁止する方向に行っている。そういう社会の流れに協会や親方が対応できないのであれば、制限はしかたないのかも、とも思えてくる。

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 把瑠都、千代大海に勝つ

 千代大海が前に出るいい相撲をした。それを把瑠都が受けとめ、耐え、最後はいたわるような形で寄り切る。おとながこどもに相撲を教えているような形。
 千代大海はこれで1勝5敗。負け越すだろうし、その前の休場もあるか。躰にテープが目立つ。来場所角番でも取るのか。引退か。

 キラー魁皇、快調

 一方、キラーと仮した魁皇は順調。満身創痍のポンコツながら凄味のある相撲を取っている。これは味わいだなあ。千代大海のような前に出る相撲、むかしなら富士桜のようなタイプは、力が衰えるとごまかしが効かないが、魁皇にはこんな奥の手があった。関節技小手投げをちらつかせたら、怖くてよけいなことは出来ない。朝青龍のような速い相撲には役立たないだろうが、その他の力士には充分に脅威である。相撲の奥深さである。

 琴欧洲、腰を落として寄り切る

 今日の琴欧洲は、鶴竜を落ちついた相撲で追い詰め、最後寄り切るとき、まるで白鵬のように、股を割り、腰を落として万全の態勢で押しだした。やれば出来るじゃないか。あれはたぶん腰高の問題から、親方と一緒に稽古したのだろう。ひとつひとつ学んでくれるといいのだが。

 栃煌山、日馬富士に完勝!

 両差しになって一気の電車道だった。軽いからなのか、ずいぶんと脆い。しかし栃煌山の充実を讃えるべきか。稀勢の里、豪栄道、栃煌山という同年齢の三人は、日本人力士を応援するひとには希望の星だ。
 その豪栄道は、同い年ながら入門が早く出世も早かった稀勢の里に勝つ。相撲歴もなく、もちろんタイトルなんてものとは無縁のまま中学を出てこの世界に入った稀勢の里は、少年相撲の世界で多くのタイトルを取り、鳴り物入りで高卒入門(正しくは直前に中退)してきた豪栄道と栃煌山にだけは負けたくあるまい。今までリードしていたが、ここにきてその差を縮められつつある。
 いまのところ三人とも3勝3敗。内容がいいので、勝ち越して三役に定着するだろう。

 安美錦と豊ノ島

 横綱大関キラーのこのふたりが先場所のケガ休場により、中位にいるのでつまらない。安美錦は4勝2敗だし、来場所は上位に復活してくると思うが、豊ノ島はまだケガを引きずっているようだ。ちいさいひとだから辛いだろう。好漢の復活を願う。朝青龍の豊ノ島いじめには腹立つが、それはそれで力を認めているからでもあるのだろう。

 栃ノ心と阿覧

 あれこれ迷っているようだ。いくら体力がある力士でも、この辺ですこし苦しんでもらわないと困る。あがっくるのにはもうすこし時間が掛かるのだろう。

 
七日目
 控え座蒲団の話

 今日のテーマは「控え座蒲団」。いいテーマだ。幕内力士だけに許される特権である。十両では使えない。力士からの「早く幕内にあがってあの座蒲団を自分も使いたいと思った」というエピソードがいい。
 後援会が作ってくれるが、それが間に合わず自分で作った話。「高くて驚いた」に、普通の座蒲団の5倍の綿がいるし、名入りだから、「5万から10万ぐらいするんだろうなあ」と思ったら20万円だとか。たいへんな世界である。
 こういうテーマは勉強になって楽しい。4時台の話。この時間がいい。

 中立の解説

 今日の解説は正面が九重、向こう正面が中立の小城錦。相変わらず九重はエラソー(笑)。中立は分かり易くていい。
 阿覧と普天王。四つになり、なかなか突破口を見出せず苦労する熱戦だった。結果は阿覧の勝ち。それに対して中立、「仕掛けているのはみな阿覧。普天王はあれではダメ」との評。漫然と見ていたのだが、言われてビデオを注視すると、がっぷり四つから、突破口を見出そうと仕掛けているのはみな阿覧で、普天王はそれに耐えているだけだった。いい解説だ。

 と書くと、私には相撲を分析する能力が闕如しているようだが、そういうわけでもない。私は相撲を見つつ、まったく別のことを考えていることが多い。それが楽しい。たとえば海外の旅社で知りあい、一時は親しくしたが、もう十年もあっていないひとを、あのひとは元気なのだろうか、とふと思い出したりする。寝転んで大相撲を見ながら、時には一杯やりつつ、そんなことを考えているのが愉楽の時間なのだ。そしてそんなときに、こんな解説をしてもらい、あらためて終った一番を見直し、なるほどと肯くのがまた楽しいのである。

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 嘉風対高見盛

 場内を沸かせる熱戦。嘉風の勝ち。しょんぼりして帰る高見盛。

 栃煌山の充実

 鶴竜を格下扱いするかのような完勝。強くなっている。これから充実一途の時期か。

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 ○日馬富士 ●豪栄道 

 ここのところ豪栄道の3連勝。押して、引いて、残して、日馬富士が両差しになる。それからも豪栄道は残すが、体が起きてしまっては無理。力の入ったいい一番だった。これからも何十番も続くゴールデンカードか。

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 把瑠都対琴欧洲

 今日いちばんの楽しみはこれ。わくわくする。
 把瑠都が突っぱったが、上体の起きているあまり威力のないもの。琴欧洲には通じない。両差しになられて簡単に寄り切られた。
 把瑠都が突っぱり相撲を覚えようとするのはよいことだが、これもなんか自己流で適当にやっているように見える。濱ノ嶋はきちんと指導しているのだろうか。部屋に所属しているプロの力士が、指導者から正当な指導を受けているというより、相撲好きの欧州の青年が、相撲同好会を作り、自己流であれこれやっているようにしか見えない。
 琴欧洲がよくなってきたのは、琴ノ若が一緒に考えたからだろう。濱ノ嶋は親方らしいことをしているのか。不満である。

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 横綱の張り差し

 朝青龍と稀勢の里のここ4戦のビデオを流していた。朝青龍の3対1なのだが、負けた一番が張り差しなのである。それによる立ちあいの遅れを、痛みを無視して突っこんだ稀勢の里が見事についていた。

 毎度の意見だが、くだらんよなあ、張り差しって。なにより下品だ。それをモンゴル人ふたりの横綱が多用している。民族性なのだろう。朝青龍がてめえは多用するくせにやられると腹を立てるのも嗤える。野球のガム噛みと相撲の張り差しは見るたびに不愉快になる。

 万全だとか磐石だとか言われる白鵬も多用している。張り差しで立つ速い相撲の朝青龍の陰に隠れているだけで、白鵬もまた毎日のように無用なこれをやっている。今日もやっていた。くだらん。横綱の相撲に触れる気になれない。品格のある横綱が欲しい。しかし絶望。どこにもいそうにない。確かにその意味じゃ暗黒の時代だ。


白鵬が左の張り手におとぼけ/春場所

<大相撲春場所>◇7日目◇21日◇大阪・大阪府立体育会館

 横綱白鵬(24=宮城野)が、初日から7連勝とした。まわしを引けなかったが、東前頭3枚目雅山(31)を突き放し、タイミング良く左を差してから寄り切った。

 「いい流れでやったな、という感じじゃないですか」と淡々と振り返った。立ち合いで見せた左の張り手には「誰が? オレがやった? まあ、入ってないでしょ」と、とぼけていた。(ニッカンスポーツより)


 
八日目
 盛り沢山の一日

 今日は朝から東京マラソン。午後がWBC、競馬、大相撲とあり、私の場合、競馬に加え、午前中に羽生対森内のNHK杯決勝戦もあるので忙しい。家の中でごろごろしているだけなのだが、ものすごく多忙の感覚(笑)。
 ほどよい具合に天気が崩れた。小雨が降っている。関西はどしゃぶりらしく高校野球が中止になったようだ。こちらは肌寒い春の日。

 これでいい天気になると一日中テレビ桟敷が恥ずかしくなったりする。昨秋、ジャパンカップの日、あまりにいい天気になったので、これは馬場に行くべきなのだろうと競馬場に出かけ、馬券を外してしまった。予定通り家で買っていれば当たっていた。晩秋の薄ら寒い日だったなら出かけなかったのだが、それはそれはもう陽光がきらめくすばらしい秋晴れの日だったのだ。
 今日の雨模様の半端な天気は一日中テレビ観戦に似合っている。

【附記】
 高校野球が中止になるほどどしゃぶりだった関西はもちろん、中山も、とんでもない強風だったらしい。競馬実況アナも何度も「荒天」ということばを使っていた。
「ほどよい具合に天気が崩れた」というのは私だけのピント外れの感覚らしい。ただ私の住んでいる地域は、風も強くなく、しっとりと雨が降り、そんな感じだった。

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 錣山と千田川

 今日の解説は寺尾と安芸乃島。両者の対戦は40番。安芸乃島の22対18。最初寺尾が6連勝し、そのあと千田川が8連勝、最終結果はこういうものとか。
 その思い出を語ると、寺尾は「最初6連勝したが、そのご8連敗し、勝てなかったイメージが強い」となり、安芸乃島は、「最初に勝てずに連敗した思いが強いので、勝ち越していると知って意外」とのこと。



 この安芸乃島の感覚はわかる。私は学生時代、隣室の友人に将棋の相手をさせられて、将棋を本格的に覚えた。ならべ方はこどものときから知っていたし、自己流では小学生のころからやっていたがそれとはぜんぜん違う。
 この友人も私と同じようなものだった。それがきちんと戦法や定跡を知っている友人にこてんぱんにやられた。何度やっても勝てない。それが悔しく彼は本格的に勉強を始める。私はその実験台にさせられた。あちらは戦術書を読んでの訓練。こちらは自己流。勝てるはずもない。いやいやながら相手をしていた。彼は戦術書で覚えた新戦法を私で試し友人に挑んで行く。でも通じない。あちらもまた進歩している。ますます勉強する。そもそも手筋を知らない私をいくら負かしても勉強にはならないのだが、彼には身近な実戦相手が私しかいなかった。私の方も本気で応じるつもりもない。
 それでも頼まれるまま相手をしてやり、200連敗ぐらいしたとき、ふいに悔しくなって私も勉強を始めた。彼と競うように戦術書を買って読み、街の将棋道場に通ったり、もともとが凝り性なので狂ったようにやった。彼も負けじと勉強する。この切磋琢磨が役だった。
 何カ月か経ってたまに彼に勝てるようになった。ますます勉強に身が入る。部屋の中に将棋関係の本が溢れた。半年後に彼との成績は五分になり、やがて彼の師匠である友人にも勝てるようになった。
 と書くと安易なレヴェルの話のようだがそうではない。八級から二段まで駆けぬけたのだ。我ながらよくやったと思う。後々それが趣味として、仕事先でも海外の旅行先でも役だってくれる。
 彼といったい何局ぐらい指したのか。彼が卒業して田舎に帰るまでの通算成績は、私がまともに指せるようになってからは五分ぐらいだった。それ以前は私の指していたのは将棋と呼べるレヴェルになかったから、まともな時期だけに限ればもしかしたら勝ち越しているかも知れない。だが何も出来ないころ、いいようにあしらわれた思い出が強すぎて、負けた思い出が強烈だ。
 通算では寺尾に勝ち越している安芸乃島が、最初のころ寺尾に歯が立たず、突っ張りで負けていた記憶の方が強いという思い出は、まことによくわかる感覚になる。



 初対戦の時の寺尾が一方的に突きだす一番と、最後の、安芸乃島がつかまえて料理する一番をビデオで流していた。ともに思うところの多い対戦であり、最初と最後ではなく真ん中のあたりにいいのがあると口を揃える。アナは、「今度おふたりに出ていただくときには、その真ん中のあたりを揃えておきます」と応じていた。たしか、初対戦が平成元年、最後の勝負が十三年と出ていたから、十三年間の対戦成績になる。いい話だった。
 午後4時台の話題。相撲中継の醍醐味である。

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 ○豊真将 ●嘉風

 その錣山が正面解説席にいる前で、愛弟子豊真将の一番。応援に力が入り、親方が思わず声を出してしまうのを、マイクは拾っていた。「顎を引け」と、師弟は言いあってきた。勝負の最中、親方はそれを声に出す。勝った弟子はインタビューを受けて、真っ先に「顎を引くように心懸けて」言っていた。いい師弟である。二人三脚だ。
 豊真将の相撲を花道の奧から、まるで日蔭の女があいする男を見守るように瞶める寺尾の姿は、今まで何度も見てきたが、今日のように思わず声が出てしまうのもいい。厳密には解説としてよくないのだろうが。

 九重は嫌いだが、一貫して千代大海に厳しいのは好感が持てる。昨日も琴奨菊の変化にばったりだったのに対し、変化した琴奨菊を責めるのではなく、あれほど露骨に変化しそうな雰囲気を見せていたのに、それを見ぬけないのが情けないと弟子を叱っていた。たしかに千代の富士は現役時代、相手の挙動をよく観察し、それを見ぬいたので有名だ。彼からしたら千代大海のそれはあまりに不様だったのだろう。

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 ○鶴竜 ●日馬富士

 鶴竜が日馬富士を破り、「三大関に勝つ」のだが、成績は3勝5敗。その他に全敗じゃしょうがない。そういえば安馬時代の日馬富士がそうだった。前半下位に負け、後半上位に勝って星を揃えていた。
 そういや鶴竜は寺尾の兄の逆鉾の井筒部屋。鶴は鶴ケ峰から来ているのだった。

 白鵬の父は国民的英雄のモンゴル相撲の横綱、朝青龍の父も関脇と、モンゴル人力士の父はみなモンゴル相撲をやっているが、鶴竜の父親は大学教授と異色だ。モンゴル相撲をやっていない。そういう経歴だからこそ意地でも強くなりたいと願ったと鶴竜は言っていた。おとなしそうな顔の頑固者である。
 私がモンゴル人力士を好きなのは、鶴竜も時天空も、そしてもちろん旭天鵬も、みな個性的で魅力的だからだ。彼らを嫌うひとというのは、その魅力をわかろうとしないひとだ。
 あのヤクザとの揉め事がなかったら、今も旭鷲山はひょうひょうと幕内をエレベーターしつつ現役だったろう。国会議員になるのはもっとあとでよかった。

 今はもうさらに、玉鷲、翔天狼と新顔も増えてきている。それでもいま私の語れるのは鶴竜まで。まだこのふたりは心に響いていない。

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 ○白鵬 ●把瑠都

 四つから、すぐに白鵬が巻きかえて両差しになり、把瑠都が懸命に耐えたが、寄り切った。勝負時間50秒2。
 終始横綱が攻勢で、把瑠都はひたすら耐えるのみという巧さの差がもろに出た一番だったが、あの白鵬に両差しになられて、それでもここまで耐える体力にはほとほと感心する。カンヌキを覚えたら、ここからの逆転もありうると思える内容だった。

 昨日琴欧洲にいいところなく負けたのはひどかった。それと比べたら、今日もまた粘ったものの内容的にはいいとこなしなのだが、あの大きな最強横綱白鵬相手にここまでがんばるのだから不満はない。白鵬にも雑な把瑠都になどまだ負けて欲しくない。満足の結果である。

 両横綱の全勝決戦となるのか。ふたりとも負けそうにない。というか、負かす力士がいない。それは理想的な展開なのだが、もう一歩盛りあがりに缺けるというのも本音である。第三の男がいないからか。
 大相撲に対する本来の熱意が下がり、横道からの興味で見ている自分がいる。でもそれは私の責任ではないだろう。
 
 
九日目

 WBC、日本、アメリカに勝つ!

 今日はWBCの準決勝。日本対アメリカ。朝9時からの生中継。独占中継のTBSはだいぶこれで視聴率を稼いだろう。なにしろ裏番組でもその話ばかりしている。野球中継の裏番組のワイドショーが、こまめに状況を伝え、それでいて当然ながら「チャンネルはこのままで」というのも異常な事態だ。ふつうは他局が中継しているそれには触れない。

 私が見たときは6-2で日本が勝っていた。あとは7回、8回、9回を逃げきるだけ。セーフティリードと思ったが、7回に2点を取られて6-4になる。急にあぶなくなってきた。が、そのあと加点して、結果9-4で勝ち、明日韓国と決勝になる。しかしまあアメリカ発祥のベースボールがアメリカの舞台で日本と韓国で決勝戦て、笑える(笑)。

 日本中が注目していたらしく、ニュースはもうそれ一色。昼休みにサラリーマンが電機店のテレビに群がる様子や、スポーツバーというのか、そういう店で群れて応援する様子とか、日本中が異様な盛りあがりである。

 明日、就職の面接に行く学生が、それをキャンセルしてテレビを見るのだと言っていた。気持ちはわかる。明日は因縁の韓国との決勝戦。日本人ですら燃えているのだから、在日朝鮮人は燃えるだろうなあ。新宿あたりの韓国料理店で、マッコリでも飲みつつ在日朝鮮人のふりをして彼らの様子をウォッチしてみたいものだ。このごろ思うのだが、いろいろあったからこそ、日本に勝ったとき、朝鮮人のうれしさは格別だろう。そういう意味じゃ、楽しみを見つけられない腑抜けの日本人より、屈折した在日朝鮮人の方が屈折しているからこそずっと人生を謳歌している。

 明日は日本中が大いに盛りあがるだろう。
 その点、我が大相撲はまったく盛りあがりに缺けている。

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 若の里の落日

 若の里が豊ノ島に敗れて4勝5敗。あっさりした負けっぷりを北の富士が嘆いていた。まだまだ幕内で取れるにせよ、関脇に定着し、毎場所10勝していた当時を知っている身には淋しい。連続して10勝、11勝して関脇の地位を守っていたが、どうしても大関にあがるための12勝、13勝という大勝ちが出来ないひとだった。そして体調を崩し、一時は十両まで落ちる。千代大海のように一度あがってしまえば、あとは「二場所に一度勝ち越せば」ずっと大関でいられる。若の里はあがってさえしまえば落ちることなく大関でいられたろう。
 あのころ若の里と隆の若、十代の新鋭の稀勢の里を擁して、鳴戸部屋は我が世の春だった。隆の若はもう引退した。私はむかしもいまも若の里が大好きなので、これはこれでいいのだけれど、好きな力士の落日を見るのはつらいものである。

 ○栃煌山 ●雅山

 栃煌山の雅山超えである。今まで苦手としていたのが不思議なほどの圧勝だった。もう負けないだろう。今場所の栃煌山の充実はすばらしい。実が入った。

 ○鶴竜 ●豪栄道

 北の富士もアナも期待の日本人力士豪栄道が鶴竜にいいようにあしらわれて負けたことが気に入らないらしく、豪栄道はだらしない、こんなことでは困ると、そればかり言っていた。そうではない。鶴竜は強いのである。巧いのだ。今場所も3大関に勝っている。それを言ってくれないと困る。最後の方に、とってつけたように言っていたが、私としては大いに不満である。

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 ●把瑠都 ○朝青龍

 朝青龍が全力を出しきって勝つ。1分14秒。息が切れていた。内容は終始朝青龍が攻めていた。把瑠都は防戦一方。北の富士が言うように、苦労はしたが内容的には危なげのない完勝と言える。
 しかし朝青龍は必死だった。死に物狂いである。勝つためにあらゆることをした。
 把瑠都ファンの私としては、把瑠都の怪物ぶりがよく出ていて、負けはしたがほくそ笑むような一番だった。昨日の白鵬戦といい、あらためてすごい力士だと思った。

 朝青龍のMaxを100とするなら、朝青龍は100を出しきって勝った。把瑠都は80しか出せず、100対80で完敗した。しかし把瑠都のMaxは180ぐらいあり、それが開花したら朝青龍どころではないことがよく見えた。
 といって、この比喩は把瑠都を持ちあげているわけでもない。Maxの数字は高くても、一生80しか出せない可能性もある。要は現実にそれをだせるひとだ。100の100を出せる朝青龍は最高だ。凄い力士なのである。



 私はこどものころから、力道山よりもルー・テーズが、馬場や猪木よりも、フリッツ・フォン・エリックが、ボボ・ブラジルが、ジン・キニスキーが、ドン・レオ・ジョナサンが好きだった。確実に日本人の(力道山は朝鮮人だけれど)彼らよりも強かったからである。あたらしいところだと(私の中ではあたらしいが世間的には充分古いか)ハンセンやブロディになる。私は馬場、鶴田、猪木、藤波、長州より、ハンセンやブロディの方が好きだった。彼らの身体的能力は日本人の彼ら(長州は朝鮮人だけれど)よりも優れていたからである。
 しかしかといってハルクホーガンは好きではなかった。木偶の坊だからだ。この辺はきちんとしておきたい。

 私の把瑠都、琴欧洲贔屓は、彼らがハンセン・ブロディだからだ。白鵬は鶴田、朝青龍は長州か。

 結果的に完敗ではあったが、私は終始、先場所の嘉風戦のように、攻めこんだ朝青龍を、把瑠都が片手でぶん投げてしまうとんでもない結末を夢想していた。そういう夢を見させてくれる力士が好きなのだ。
 これで把瑠都は白鵬に8戦全敗、朝青龍に5戦全敗となった。それでもそのうちそれは起きる。写真のような形から、肩越しの上手一本で横綱を抛り投げる日が来る。その日を待つ。


横綱朝青龍(28=高砂)が、関脇把瑠都(24=尾上)を押し出して9戦全勝とした。立ち合いから左を差して頭を付けたが、179キロの相手を攻めあぐねて1分を超える大相撲に。
最後は右前まわしを引いて何とか土俵外まで持って行った。
自身の今場所最長相撲に「疲れた…。しんどいなぁ」を連発。左腕は相当な力でまわしを握っていたようで「もう握力ないよ」と苦笑いしていた。
(ニッカンスポーツより)

 
十日目
 WBC、日本連覇!

 今日は日本中が日本と韓国のこの決戦に熱狂していた。しかも、1-0を1-1に追いつかれ、2-1、3-1としてもう大丈夫かと思ったら、8回に3-2にされ、9回裏で3-3にされるという展開。こんなおもしろいシナリオ、誰も書けない。9回裏、韓国サヨナラ勝ちの場面、「サヨナラのランナーが出ました」には、もうだめかと思う。ダルビッシュ踏んばれと応援を送る。いちばん冷や冷やしたのはここか。これは韓国にとっても盛りあがったろう。
 なんとかこれを乗りきって延長戦。10回表にイチローで2点を取る。不調なのに最後の最後でまた決めるのがスーパースターだ。その裏を押さえてダルビッシュ、マウンドで仁王立ち。いやはやたいへんな盛りあがり。前回もおもしろかったけどWBCは最高だ。

日本 0 0 1 0 0 0 1 1 0 2 5
韓国 0 0 0 0 1 0 0 1 1 0 3

●醜悪なガム噛み

 しかし野球選手のあのガム噛みはなんとかならんのか。勝負の最中の男が口許をくちゃくちゃしているのはなんとも醜い。アメ公がやっているからと真似る日本人のバカらしさ。
 といっても、もう習慣になっているから、ガム中毒の選手が今からあれをやめるのはたいへんだろう。タバコと同じだ。習慣になってしまっているから、ガムを噛まないと口淋しく、落ちつかなくなり、試合に集中できなくなる。くだらんものが流行る。コーチまで噛んでいるのには笑った。

 先日も書いたが、原監督、イチロー、松阪、ダルビッシュ等が噛んでいないから見られた。もしも原やイチローがアップのたびにクチャクチャやっていたら、たとえどんなに盛りあがった大会であれ私は見なかった。いや、見なかったのではなく見られなかった。不快感の方が強くてだ。小笠原というのがどんなに優れた選手なのか知らないが、あの口許を見ているだけで不愉快になる。

 以前も書いたが、プロレスラーの高田延彦が、引退試合にフードを被って顔を隠して登場した、それはいいのだが、そのフードの中でガムを噛んでいるので嗤った。ガムを噛むと緊張感が解れるとか、脳によい刺激を与えるとか、ガム会社の工作で話題になっていたころだ。このバカはなんにでも乗るんだなと思ったものだ。すくなくともヒクソンはそんなことはしまい。日本刀を持って臨んだ船木もしないだろう。しないと思いたい。勝負の場に向かう男が口許くちゃくちゃしていては様にならない。この辺に高田の機を見るに敏なようでいて基本的な頭の悪さが出ている。

 相撲協会も今のうちに「土俵上でガムを噛んではならない」という内規を作っておかないと、そのうち朝青龍あたりがガムを噛みつつ土俵にあがりそうだ。するとロシア系の連中が続き、日本人からも稀勢の里あたりが真似しそうである。

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 ○豊真将 ●安美錦

 激しい相撲。行司とぶつかる。行司、こける。這いつくばる。それでも必死に軍配を上げる。なかなか感動的なシーン(笑)。
 これで豊真将は7勝目。安美錦は敗れて6勝のまま。ふたりとも順当に勝ち越して来場所は順当に番付を上げてくるだろう。とにかく今場所は横綱大関キラーの安美錦、豊ノ島が下位なのでつまらない。

豊真将-安美錦の一番で、安美錦の右足に引っかかった行司式守錦太夫がこけてしまった。立ち上がろうとしてバランスを崩し、再びバタリ。ばたつく間に勝負がついたが、寄り切った豊真将にしっかりと軍配を上げた。錦太夫は「勝負の場面を見られて良かった」と淡々。昨年九州場所で行司の烏帽子(えぼし)を飛ばした安美錦は「オレ、行司泣かせだね」と話した。(ニッカンスポーツより )
 
 
そういや安美錦が烏帽子を取ってしまい、行司の禿頭が晒されるという事態があったな(笑)

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 ○栃煌山 ●琴奨菊

 栃煌山の充実ぶりが目につく。いわゆる「ひと晩寝る毎に強くなる時期」か。アナも舞の海も絶讃していた。私にも、単に体調が良い、ではなく、ぐんぐん強くなっているのがわかる。闘志が表面に出る豪栄道(これはこれで魅力的だ)とは対象的にもっさりしているので判りづらいが、これからが楽しみである。次の日本人の大関候補は衆目一致して稀勢の里だが、逆転の目もあると思う。

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 把瑠都辛勝、北勝力10連敗

 黒星先行の把瑠都が今場所9連敗の北勝力に順当に勝って星をひとつ稼ぐと安心していたら、のど輪からの引き技にかかり、危ない場面があった。そのまま押し潰すような形で勝ったのでほっとする。

 北勝力、10連敗。このひとの大勝ちと大負けには慣れているのでなんてことはない。今場所、こんないい位置にいるのも先場所大勝ちしたからだ。今場所全敗かひとつふたつ勝つのかはともかく、そのまま来場所がだめとも限らない。以前、力士の勝ち負けを予想して得点を競う「大相撲トトカルチョ」をやっていたとき、このひとのこういう成績には泣かされたので、特に感想もない。



 把瑠都は倒れた北勝力を起こそうと手を差しのべていた。仕種がやさしい。
 いつも把瑠都をいいなあと思うのは、負けたあとの丁寧にお辞儀だ。日本人力士も負けた相撲では態度の悪いのがいる。稀勢の里が筆頭だ。もう辞めたが、

 なんといってもひどかったのはロシア人の露鵬だった。ふてくされて礼すらしない。見るからに悪相だが、假に彼が「あんな顔をしているけど、ほんとはとても心優しくて」と伝わってきたとしても絶対に信じない。お辞儀ひとつに人格が出ている。

 豊真将のうつくしいお辞儀は本人の性格、錣山の指導と、どこからでも納得できるのだが、このエストニア青年の外国人力士には珍しい丁寧なお辞儀は誰の影響なのだろう。濱ノ嶋とも思えない。やはり彼個人の人柄から来ているのだろう。假に親方や先輩が厳しく教えたとしても、彼個人の資質がなければ続かない。それはたしかだ。

 逆に、人柄の評判が良く、稽古にも厳しく、大鵬部屋の入り婿として高い評価を得ていた貴闘力(大嶽親方)は、露鵬を御せないことで馬脚を現した。今後彼がどんな立派なことを言おうと、私はそのことだけで彼を信じない。

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 ○琴欧洲 ●豪風

 琴欧洲が速い相撲で左上手を取り、右下手も豪風の巻きかえに乗じて両差しの態勢になり、そこから白鵬ばりに腰を割り、低く落として、万全の態勢で寄りきった。
 大きな大関がちいさな平幕に勝ったからといって大騒ぎするほどのことでもないのだが、琴欧洲にはバタ足になってはちいさな豪風や豊ノ島にぶん投げられるみっともない相撲があるので、この完勝には感心した。バタ足ではなく摺り足だった。わたし的には今場所いちばんとも言えるいい内容だった。

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 どうでもいい

 龍二さん、負け越し。来場所は史上最多の角番。
 豪栄道、琴光喜に完勝。
 稀勢の里、魁皇に完勝。
 
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 日馬富士、朝青龍に勝つ!


 日本がWBC連覇を決めた約3時間後、朝青龍が日馬富士に翻弄(ほんろう)された。

 右で張り、「左差しを狙った」と言うが、相手が左に変化した上、自身の体重は右にかかり、差し手が遠のいた。日馬富士に右上手を引かれ、横につかれて土俵際へ。上手出し投げにバランスを崩し、背を見せて万事休した。

「昨日(把瑠都戦)また左ひじを痛めた」とポツリ。初場所前に自身を引退危機に追い込んだ古傷の再発を打ち明けた。
(ニッカンスポーツより)






 張り差し撲滅委員会(笑)としてはまことに気分の良い一番だった。
 勝った相撲に対して舞の海とアナが「考えてみれば、朝青龍の速さに対抗できるのは日馬富士しかいないのですから」と言っていた。たしかにその通り。なのにここまでの対戦成績は14-2と一方的。白鵬には勝てても朝青龍には安馬は勝てないのだった。

 私流のクルマ比喩で言うと、朝青龍はチューナップされた2000ccのスポーツカー。対して白鵬は5000ccのベンツ、というのが基本である。
 これで言うなら、日馬富士は1800ccのスポーツカーだ。車種のちがうベンツには出足比べて勝てることもあるが、同じタイプ同じエンジンでの朝青龍には、完璧にチューンナップされていても排気量の差の分、馬力が劣る。

 ところがバカ青龍がまたしても張り差しで立ったため、一瞬出足が遅れる。その瞬間に排気量の差がなくなった。あとは振りまわし、最後はうしろに廻っての送りだしだった。すべては張り差しのマイナス効果である。
 ドルジもこれで立ちあいをすこし考えてくれるといいのだが、このひとの張り差しはもう癖のようになっているから直らないだろう。
 大嫌いな張り差しによるマイナス効果で、それさえしなければ負けない相手に負けたという、私には楽しくてたまらない敗戦だった。

 
十一日目
 朝からWBCフィーバー

 昨日の夜は、深夜までWBC優勝フィーバーだったが、今日はもう朝から特集に次ぐ特集。いやはやすごい盛りあがりである。イチローの勝ち越し点と最後の打者を三振にとってのダルビッシュのガッツポーズは何度見ても感動的だが、やはり結果を知っているからそれだけのものでしかない。昨日リアルタイムで見られたのはよかった。9回裏に追いつかれたときは韓国のサヨナラ勝ちかと覚悟した。あのハラハラドキドキは結果を知ってからのものとは違う。

 どこかのワイドショーで、「亭主が韓国人、女房が日本人の夫婦。一緒にテレビ観戦」の様子を流していた。それぞれ韓国、日本を応援している。一喜一憂である。こういうのが見たかったのに意外にない。テレビが触れたくないテーマなのか。

 最近いいことのない暗い日本には珍しい明るいニュースだったから号外まで出る大騒ぎ。各地からの応援と興奮の様子はおもしろかったが、もっと韓国の様子を見たかった。半島の様子はともかく、コリアンタウンあたりではどうだったのだろう。ドジャースタジアムに駆けつけた日韓のファン数では、韓国が日本の3倍だったとか。ものすごい声援だった。負けて悔しかったろうな(笑)。とは勝ったから言える餘裕。負けたら日本はどうなっていたのだろう。

 こういう国別対抗で盛りあがると、だれもが国を意識する。みな日本人になる。最後にでっかい日の丸が登場したように国旗は格別の意味を持ってくる。サヨクはおもしろくないだろう(笑)。韓国がマウンドに太極旗を立てると歓び、日本が日の丸を振ると「暗黒の戦前が」というワンパターン。

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 ○翔天狼 ●栃ノ心

 翔天狼が頭から当たる会心の相撲で栃ノ心を突きだした。決まり手は「突き倒し」。栃ノ心は翔天狼のあまりに強い当たりに引いてしまい、最後は土俵下に転がりおちていた。解説の栃東も絶讃するいい相撲だった。
 私は翔天狼の相撲に関して語るほどの知識を持っていないのだが、これが彼の取り口なら、今までのモンゴル力士とは異なったタイプになる。相手の胸板に頭から突っこんで行く相撲を見たのはいつ以来だろう。安芸乃島以来か。いい相撲だ。応援したい。こういう相撲には張り差しのような外連は通用しない。張り差しで相手をびびらせようとしたら、そんなもの眼中になく頭から突っこんでこられてふっとぶ、というような相撲が見たい。翔天狼、上がってこい。

 ところでここのところ十両や幕下に「狼」が目立つが、これって同じ部屋か? あとで調べよう。

 どうでもいい

 平幕最初の勝ち越しは大麻疑惑グレーの千代白鵬。11日目での勝ち越しは初めてとか。一所懸命稽古をしたのでそれが出ていると自慢気。そりゃあれだけ疑惑まみれで騒がれればさすがに九重も怒るだろうし、稽古もせざるを得なかったろう。二桁勝利が夢だとか。そのうち捕まるよう願っている。

 豊真将勝ち越し!

 続いての勝ち越しは豊真将。これはうれしい。相手はデブの山本山。真正面から当たり、見事に突きだした。うれしいなあ。充実してきたぞ。先場所も11日目に勝ち越しているがあれは16枚目、幕尻だった。今場所は7枚目。ぜんぜんちがう。今場所も二桁いけるか。

 そういえばまったく興味がないので書かなかったが、デブ山本山は把瑠都と同じ尾上部屋なのだった。もうすぐ新部屋が完成するとか。濱ノ嶋が「デカいのばかりなのでたいへんです」とコメントしていた。これはなんだったか、スポーツ紙で読んだのか。

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 旭天鵬、隠岐の海の負け越し

 昨日、旭天鵬が負け越した。三年ぶりにもどった三役だったが一場所で陥落である。でもまだまだ幕内でエレベーターしつつ活躍するだろう。すごいひとである。
 新十両で話題になった隠岐の海も昨日負け越した。肩の怪我が治らず苦労していた。こちらも一場所で無給の幕下陥落である。怪我を治せば十両にはすぐに復帰できるだろうが幕内までは遠いのか。期待して待ちたい。

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 ●把瑠都 ○鶴竜

 鶴竜は把瑠都と3回やって一度も勝っていない。鶴竜の技がこの怪物には通用しないのだ。どうしても勝ちたい。なら今日の変化は充分に予想できた。楽々と3回勝っている把瑠都は4回目もそうだと思ったのか。立ちあいの変化についてゆけず1秒9で負けた。
 これで7敗。負け越しての関脇陥落が目の前に迫ってきた。それはそれでいい。勉強だ。すこしは工夫するようになるだろう。

 ●栃煌山 ○魁皇

 充実一途と誉めたら、魁皇の引きおとしにバッタリ。足がついて行かず、土俵に寝た。なさけない。しかしキラー魁皇はいいな。なんでもありだ。

 ●琴欧洲 ○豪栄道

 これまた圧倒的に勝っている琴欧洲が右に回りこむようなヘンな相撲を取り、小手投げのような態勢になったが、琴欧洲は小手投げをマスターしていない、落ちずに着いてきた豪栄道に押しだされた。最後は際どかったが、とにかく相撲が豪栄道のもの。
 把瑠都がカモの鶴竜に負けたのは変化にひっかかったから。つまり、読みが甘く、しかたなかったと言える。しかしこの琴欧洲が今までカモの豪栄道に負けたのは、半端な変化技のようなことをしたからだ。自滅である。昨日のあのすばらしい相撲のように正面から行けばなんの問題もなかった。
 把瑠都、栃煌山、琴欧洲と負けて、なんとも気分の乗らない日になってしまった。

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 日馬富士、急上昇!

 のってきた。昨日の勝利もあってか、速い相撲で琴光喜を翻弄。完勝だった。強い強い。前半の、勝ちはするものの内容は最悪、が嘘のよう。いつも白鵬戦を前に調子を上げてくる(笑)。いよいよ明日。白鵬は正念場だ。私は、今場所は「白鵬の全勝優勝」と読んでいる。

 稀勢の里、変化気味に……

 白鵬相手に稀勢の里が半端な変化を見せ、何も出来ず敗れる。
 辛い夜になったことだろう。
 
十二日目
 玉鷲もいい!

 昨日、栃ノ心の胸板に頭から突っこんで行く翔天狼を見て、モンゴル力士にはまだまだ掘り出し物がいると思ったら、今日は玉鷲が同じような頭から突っこむ相撲を取った。四つも出来るのにこれもやるのはすごい。
 遅ればせながら次のモンゴル力士世代、玉鷲や翔天狼がやっとわかってきた。

 せっかく誉めたのに翔天狼……

 と、昨日絶讃した翔天狼が今日は岩木山相手に変化相撲。落胆。
 変化というよりも右に回りこむような相撲。いずれにせよ圧力の強い岩木山から逃げたのは事実。北の富士は「まっすぐ当たって欲しかった」と言いつつも、「相手がよく見えているのも」ともかばった。なんでもかんでもまっすぐ突っこめばいいというものでもないが、昨日の今日なので複雑である。

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 高見盛 安美錦、大相撲の醍醐味

 熱戦は投げの打ちあいで同時に落ちる。軍配は安美錦。すぐにもの言い。ヴィデオで見ても同時。取り直しは必須。観客は大沸き。「高見盛の相撲がもう一番見られるんですからね」とアナ。
 取り直しに安美錦は苦い顔。膝が痛そうだ。
 取り直しもまた熱戦。しかし土俵際、安美錦が古傷の右ヒザから崩れる。北の富士が「イッチャッタかな」と心配する。自力で立てず呼びだしが助けに入る。
 だがビデオを見た北の富士が、「自分から崩れているから、だいじょうぶかも知れない」と語る。たしかに、無理に踏んばらず、自分から崩れている。なんとか自力で歩いて帰るが心配だ。先場所もこの膝で途中休場。だいじょうぶだろうか。
 勝った高見盛も心配げ。相手を心配し、花道をいつものようにふんぞらずに帰る。それもまた好印象。
 この二番を見ただけで満足できる大相撲の醍醐味。

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 嘉風、デブを翻弄!

 体重で100キロ、身長で13センチ劣る嘉風が山本山を圧倒。気分がいい。以前も書いたが、大デブの小錦が上がってきたころ、彼は固太りで動きも速く、本当に凄かった。外人嫌いの私の父も、彼が横綱になることを認めていた。稽古場では、みな壊されると彼との稽古をいやがった。それと比すと、山本山はただのデブである。

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 把瑠都、怪物相撲!

 土俵真ん中で右四つ。いきなりそこから把瑠都が吊る。栃煌山、おとなに抱き抱えられたこどものように土俵外に運ばれる。今場所の怪物相撲。こういうのを見られるからたまらない。今場所は負け越しかも知れないがこれを見られたからいいや。先場所の嘉風戦。今場所はこれだった。わたしゃテレビの前で大はしゃぎ。
 北の富士が栃煌山を叱る。「せめて足をバタバタさせるとか逆らえ」と。アナが「そうすればどうかなったか」と問うと、「いやそれでも負けるけど、すこしは逆らえ」と(笑)。

 四つになった状態を見て、北の富士は「こうなったらもう把瑠都が有利なんだけど」と言う。しかしむしろ栃煌山が低い態勢で把瑠都は棒立ちのよう。ここからいきなりあんな吊りを出されたら誰も適わない。もう今日はこれを見られたからいいや。酒を飲もう。

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 ○琴欧洲 ●魁皇

 琴欧洲が右に回りつつ上手を取りに行った。こうなると魁皇は何も出来ない。形としては完勝なのだが、どうもスッキリしない。なんであんな回りこむようなことをするのか。これでやっと勝ち越し。
 北の富士が「誉められた相撲ではない」「なんでこんなちいさな相撲を取るのか」と苦言。納得。解説者北の富士の人気は、こういう形での辛口なのだろう。私は大の琴欧洲ファンだが、こんな相撲、勝ったからといってうれしくない。そこで苦言を呈してくれる北の富士はありがたい。

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 ●千代大海 ○雅山

 雅山の楽勝。完勝。だが物言い。髷に指が入っていた。
 アナは「故意じゃないですね」と庇うが、北の富士は髷を掴まれたときの力士の不快感、やる気の消失という自身の体験から、「故意でないとしても取り直しとか、決めるべき」との意見。これもいい意見だ。
 けっきょく「故意じゃない」とのことから軍配通りとなるのだが、北の富士の「重要な一番だったらたいへんですよ」もまた正鵠を射ている。これが優勝に関わるようなたいへんな一番だったらどんな結末にするのだ。「故意じゃない」と言うなら、故意で髷を掴む力士もいまい。相撲の流れでなるのだ。
 すでに負け越している大関というどうでもいい一番だったからこんな判断になったのか。先日の垣添のように物言いがつかない一番もある。史上初横綱の反則負けという不名誉な記録を作った朝青龍だって故意じゃなかったろう。もっち明確に規定すべき問題だ。

 千代大海は全身テーピング。醜い。わざとらしい。本来なら「いたいたしい」とでも言うべきなのだろうが、痛い箇所は隠すのが基本だろう。土俵下ではミイラのようにテーピングをしていたとしても、土俵に上がるときはそれをすべて剥がしてくるのが力士の美学だ。貴乃花以降、そんな力士はいなくなった。

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 ○琴光喜 ●朝青龍

 昨日パパになった琴光喜が意地を見せた。パパ初勝利。完勝。入幕したころは朝青龍を圧倒していて、自他ともに認めるライヴァルだった。その後、長いあいだ勝てず(26場所だっけ?)話題になっていたが、いつもけっこういい相撲は取っていた。謎のひとつである。琴光喜は下手なくせに花札バクチが大好きで、いつも金がなかったと言われている。初優勝のときの賞金もそれですってしまったとか。朝青龍からもらう80万で毎場所星を売っていたとしても納得できる成績だった。
 ここのところの注目で注射相撲が減っている。いいことだ。
 先場所の朝青龍優勝が感動的だったのは、序盤よれよれだったことにある。本場所を離れているとあんなにも相撲勘がなくなるのかと新鮮だった。その後の立ちなおり。今場所は万全だ。今日の勝利は価値がある。

 ただ、先場所朝青龍が星を買ったとするなら今場所返すという読みも出来る。しかしすばらしい相撲内容と朝青龍の表情からそれはないと思う。
 大鵬のオフレコ発言だと、星を売り買いした相撲なのに場内を熱狂させるのが本物のプロらしい。
 などとひねくれることなく、すなおに琴光喜の健闘を称えよう。
 もっとも何があろうと今場所は白鵬の全勝優勝と確信している私としてはかえっておもしろくなくなった。

 朝青龍も肘をサポーターを当て、しきりにマスコミに「把瑠都との一戦でまた肘を痛めた」とアピールしている。わざとらしい。
 アナが北の富士にそれを言うと、「なんで肘を痛めたの?」「把瑠都との長い相撲で」「長い相撲で肘を痛めるなんて、そんな話あるわけないよ」。いいなあ北の富士(笑)。

 今さらながらだが、初場所は白鵬が優勝せねばならなかった。朝青龍は12勝程度でも充分に合格点だった。それをいきなりの優勝という形で名をなさしめ、土俵上で万歳を見せられ、そこまではいいとしても、その夜の夜を徹した朝青龍祝賀会に、あとから参加したという。しみじみしらけた。
 もしも先場所を真に屈辱と感じているのなら、今場所は全勝優勝しかない。

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 ○白鵬 ●日馬富士

 白鵬楽勝。だいたい日馬富士に負けることがおかしいのだ。いや日馬富士は本当にすばらしい力士だ。今日も何かを出すのではないかとのハラハラ感はあった。しかし白鵬が落ちついて磐石の対応をするなら決して負ける相手ではない。いつも白鵬が速い相撲に翻弄され墓穴を掘っている。今日は文句なしだった。こういうふうに落ちついて行けば日馬富士には負けない。

 これで朝青龍が二敗。白鵬の優勝は決まったも同然だが、問題はこれからだ。これで千秋楽で朝青龍に負け、14勝1敗だったりしたらそんなのは優勝じゃない。ところがそういう力士なのだ。まだまだ半端である。全勝でなければ優勝と認めない。私は。

 
十三日目
 豊ノ島、惜しい!

 豊ノ島と山本山。身長体重でどれぐらいちがうのか。テレビで言っていたが覚えていない。おとなとこども。なにしろ豊ノ島は私より背が低い。169センチだ。
 豊ノ島が翻弄して勝つと信じていたが、今日はデブもがんばった。豊ノ島も後ろ向きになってしまい土俵でくるりと一回転するなど観客を沸かせたが、最後は大人がこどもをつまみあげるような形で放り投げられた。山本山は嫌いだし興味はないが、今日の一番に関する限り怪物だった。豊ノ島、悔しいだろうなあ。

 北勝力、初日

 12連敗中の北勝力が勝った。全敗か、もしも片目を開けるとしたらその相手は誰かと思っていた。正解は時天空だった。

 ●栃煌山 ○豪栄道

 こどものころからのライヴァル対決は豪栄道の勝ち。栃煌山は強くなってきたなあと誉めたら惨敗の連続。赤っ恥。
 でも舞の海は、将来性として栃煌山の方があると言っていた。まあ体格的にはそうなのだが、どうなのだろう。もう恥を掻くので本格化したとか素人評論はやめよう。関脇小結が陥落してくるので栃煌山が小結にあがるかと思っていたのだが、それどころか勝ち越しもあぶなくなってきた。

 稀勢の里、負け越し

 鶴竜に負けて負け越し。鶴竜は勝ち越して三役の可能性が出て来た。
 世間ほど日本人横綱大関に興味はないし、そもそもそれだけの素材がいない。稀勢の里への期待が強くなるのはわかるが、それもかなり「押しだされての人気」だ。
 こういう形で迷っている青年が突如変ることってあるんだろうか。遠からず魁皇、千代大海、琴光喜の大関の座はあくのだが、どうにもそんな形での昇進も押しだしだし……。

 これで関脇稀勢の里、小結旭天鵬の陥落が確定。豪栄道が勝ち越して小結死守。このあと把瑠都が負け越して陥落だと初の関脇になる。

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 把瑠都、まだクビの皮一枚

 長身の旭天鵬と四つになってまだ餘裕があるのだからすごい。まだ負け越さない。どこまで頑張れるか。

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 ●琴欧洲、堂々の相撲

 最強の白鵬と四つになり五分の相撲を取るのだからたいしたもの。負けはしたものの白鵬を必死にさせていた。いま琴欧洲が負けてもいいのは琴欧洲より強い白鵬だけだ。だからこれで12勝1敗でなければならないのに現実は8勝5敗。栃煌山、旭天鵬、時天空、豪栄道に負けている。なんとも。早くもっと安定した強さを身につけてくれ。

 
十四日目

 豊真将、反則勝ち

 翔天狼が髷を掴んで投げているとの判断で反則負けになる。豊真将が勝ったことはうれしいし、ひどい反則なので当然とも思うが、じゃあ先日の垣添はどうだった、雅山はどうだったとなると変りはない。それらがお咎めなしで自分だけ反則負けでは、翔天狼が「おれがモンゴル人だからか」と思っても当然である。髷に関する明確な規定を作るべきだ。この三番とも髷を掴んだ感覚は同じである。この一番だけ反則負けは奇妙だ。
 垣添に掴まれたのも豊真将。髪がざんばらになっていた。豊真将はこれで11勝だから垣添のあれが反則負けになっていれば12勝だったことになる。まだ2敗。準優勝だった。惜しい。
 今日の解説は音羽山だった。ユニークに意見もあるがおとなしい。やはり北の富士の歯に衣着せぬ解説がいい。

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 安美錦、勝ち越し!

 膝が悪い。ぼろぼろだ。でもなんとか勝ち越した。このあと休んで来場所までにどれぐらい直るか。大物食いのこのひとがいないともつまらない。前頭筆頭ぐらいまでは番付を上げるだろう。

 鶴竜、初の三役確定

 鶴竜が北勝力に勝って9勝目。西の前頭筆頭。まわりがみな負け越しているから、これで来場所の小結はほぼ確定だ。魁皇、千代大海、日馬富士に勝っているから三賞ももらえるだろう。小結というのは初日から横綱と当たるたいへんな地位だが、対戦相手を見てみると、前頭筆頭もぜんぶ当たっている。つまり、当たる相手は同じだ。今場所の調子を維持すれば来場所も勝ちこせる、となる。さてどうなるか。

 把瑠都、千秋楽決戦へ

 稀勢の里との関脇対決を制して7勝7敗とした。1分を超える力のはいったいい相撲だった。
 千秋楽は琴光喜。対戦成績は琴光喜の4-1。先場所は把瑠都が勝っている。私にとっては千秋楽、最も力の入る一番となる。勝って関脇の地位を守れ。
 ここまで負けたのは、豪栄道、魁皇。これは勝てる相手だった。日馬富士、琴欧洲、朝青龍、白鵬、鶴竜。鶴竜の変化に負けたのはしかたない。あれはあれで勉強だ。やはり豪栄道と魁皇に勝って2勝が欲しかった。


 琴欧洲、朝青龍に完勝

 いい相撲だった。四つになり、文句なし。昨日も白鵬相手に負けて強しの内容だったから、これぐらい取れて当然。
 これで白鵬の優勝が決まった。先場所奇蹟的な優勝を遂げさんざんいい思いをした朝青龍は、今場所はこれで充分だろう。


 白鵬、10回目の優勝

 年令的に、24歳での10回目優勝は、大鵬、貴乃花に次いで史上三番目の早さとか。朝青龍より3カ月早いのは入門年齢のこともあり自慢にはならない。4番目が朝青龍。5番目が北の湖。北の湖より早いのは、あらためて凄いと思う。私の好きな白鵬はあの北の湖を超えているのか。それは朝青龍の時も思ったけれど。

 とにかく明日。全勝優勝をしろ! すべてはそれからだ。
 
千秋楽
 把瑠都、勝ち越し

 4勝7敗から4連勝して勝ち越した。7敗したときにはさすがに今場所は無理と諦めた。すなおに拍手を送りたい。琴光喜との一番は熱戦。四つになって動かなくなると、琴光喜の内無双が炸裂するのではないかと足もとが気になる。足が前に出たら琴光喜の手が飛んでくる。
 琴光喜をさすがに強いなと思った。という言いかたは失礼だが、把瑠都贔屓のこちらとしては、逆に大関だと、というか歴史に名を残す最強のアマ力士、エリートだと感じる、いい内容の相撲だった。思えば、琴光喜は把瑠都が生まれる前から相撲を取っている。把瑠都が相撲のスの字も知らないころ、将来の横綱とだれもが認めていた超逸材だったのである。

 来場所は東の関脇だ。西に豪栄道。小結は鶴竜と栃煌山か。
 三賞は鶴竜と豊真将。鶴竜の10賞は見事だ。豊真将の11賞とは当たった相手が違う。負けたのは両横綱、琴光喜、琴欧洲、栃煌山。ただ非力だから両横綱に勝てるイメージがない。問題はそこか。勝てなかった把瑠都には変化で勝った。来場所は把瑠都は引っ掛からない。どうなるか。

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 千代大海、ワースト記録

 15日間皆勤の大関ワースト記録は3勝12敗なのだとか。これは5人いるらしい。しかし2勝13敗はかつてない記録。
 という話をしていたらやってくれました龍二さん。
 これはこれで歴史的記録か。
 本人もそんなことを自嘲気味に言ったらしい。

 昔は大関は陥落しなかった。ひどい成績をとったら引退しかなかった。それだったらとうのむかしに引退していたひとだ。せねばならなかった。ところが「二場所連続負け越して陥落=二場所連続負け越さなければ地位確保」というくだらん規則が出来た。最初にこれで落ちたのは前の山だったか。それからは陥落はよくあることになった。しかし逆に考えると、二場所に一回勝ち越せば地位を保てるのである。となると当然それを利用してくるヤツが出て来る。その代表が師匠譲りの談合がうまいチヨスだった。

 2ちゃんねるの相撲板にあった批判。

0勝15敗
8勝 7敗
0勝15敗
8勝 7敗
0勝15敗
8勝 7敗

年間24勝66敗でも大関安泰 


 極端な話、これが可能なのだ。

 来場所は注射相撲でとりあえず勝ち越すのか。みんなに見離されて負け越して引退か。
 どうでもいい話だが、まことにくだらん制度である。

 誤解されたくないので。日の出の勢いのころの千代大海を、私が大好きだったことを附記しておく。嫌いになったのは、あの「押す、押しきれないと思った時点で、鮮やかに引く、そして勝つ」という、闘牙のような相撲になってからだ。
 親方譲りの政治力でここまで大関で来た。出島や雅山のほうがよほど清々しい。
 どうなってもどうでもいいが、来場所は興味深い。

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 白鵬、全勝優勝

 まあ、そういうことだが、私にとっては、とりあえずの合格点でしかない。
 これでもってすべて万々歳になるかと思っていたが、まったく気が晴れない。先場所での失望がいかに大きいものであるかとあらためて感じた。
 贔屓の力士が完璧な全勝優勝を成し遂げたのである。なのにブルーだ。すこしも白鵬を誉める気になれない。世間では星取から讃えているが、朝青龍もどきのくだらん張り差しもまだ乱発している。不満である。50連勝ぐらいしないと誉める気にならないが、それをしても不満のような気がする。今ごろになって遅ればせながらのモンゴル嫌いになりつつある。

 
総論
 私にはつまらん場所だった。先場所のあのあってはならない「朝青龍復活劇」の続きとして、あまりにありふれた結果である。
 先場所、あの優勝のあと「大相撲トーナメント」という花相撲があった。怪我をしないようにだけ気を遣ったつまらないショーである。これを見るといかに本場所が真剣勝負かと感じる。なんと本場所のおもしろいことか。私はこの種のトーナメンや慈善相撲はもう見る気になれない。といいつつ缺かさず見ているが(笑)。それでも録画はしなくなった。

 この花相撲、誰が考えても白鵬優勝だろう。案の定、準々決勝だったか、朝青龍は早々と笑顔で負けて優勝は白鵬だった。見ていて惨めになる。
 その続きとして、今場所の白鵬優勝もまた見えていた。

 横綱全勝決戦が望ましいが、朝青龍の終盤大崩も読めた。
 このひとは優勝がもうダメと判ると連敗する。
 それは「気力が萎えた」「緊張が切れた」のように言われるが、別の解釈も出来る。「星返し」だ。
 1敗して「今場所はヤメ」となった朝青龍は一気に連敗する。その相手は琴光喜や琴欧洲が多い。
 今場所も日馬富士に負けて1敗になったとき、「琴光喜、琴欧洲が勝つのでは」と思ったら案の定そうなり、千秋楽も白鵬に負けて11勝4敗だった。まったく同じパターンだった場所がすぐに思いうかぶ。

 こういうのを見せられると、「またあるのか」と思ってしまう。
 何場所か後、白鵬絶対となっても、また「朝青龍劇的優勝」が演出されるのではないかと。
 やはり先場所のあれはあってはならないことだった。

 猪木は「絶対猪木優勝だろう」と誰もが思っていた初代IWGP優勝戦で、誰にも言わずにベロ出し失神劇を演じた。予定調和にしないことでプロレスの格上げを狙ったのだ。見事というしかない。それを知らなかった坂口の驚き、いや坂口だけではなく誰も知らなかったことなのだが、そこからの猪木不信がよくわかる。ホーガンも戸惑ったろう。かくいう私もあのとき、アクシデントが起きたと思った。猪木の天才的演出である。

 先場所の序盤、2勝3敗で引退とまで言われていた朝青龍の相撲内容はひどかった。ひどいからこそ、それでも勝ち続ける相撲は感動的でもあった。そのまま勝ちすすみ、そしてあの誰もが思わなかった優勝。土俵上での万歳ポーズ。連日スポーツ紙の一面を飾った話題性は文句なしである。朝青龍は猪木だ。だがうさんくさいプロレスではなく国技という看板をしょった猪木だ。猪木がどんなにがんばっても『東スポ』以外のスポーツ紙の一面は飾るのは、アリやストロング小林と闘ったときぐらいだった。

 白鵬が優勝せねばならなかった。すべきだった。それでよかった。14勝1敗。出来すぎの成績。12勝でも充分だったろう。満点の復活劇だ。そして最後に勝つのは、スキャンダルまみれの朝青龍のいない間、ひとり横綱として責任を果たしてきた白鵬でなければならない。朝青龍はケガで休んでいたのではない。言行に問題ありで謹慎をくっていたのだ。そういう休場。そして出場してきての途中休場二場所。引退を囁かれるその横綱がいきなり優勝なんてことはあってはならない。なのに決定戦で負けた。その夜は部屋に閉じこもり、家人も近づけないほどの鬼の形相であって欲しかった。なのに朝青龍の徹夜バカ騒ぎの御祝いに駆けつけている。
 今場所全勝優勝したが、私はあのときの無力感からまだ復活できない。

 来場所も全勝優勝して欲しい。そうなってからまた考えよう。
 劇薬は劇的に効くが、後遺症もまたひどい。




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