平成二十一年秋場所

2001/9/13~27


 
初日
 期待できるのか把瑠都?

 今場所、体調を崩した把瑠都はまともな稽古が出来ていない。せっかく先場所11勝をあげ小結に復帰したのに心配だ。今場所不甲斐ない成績だとエレベーター力士になってしまう。案の定朝青龍に簡単に敗れてしまった。
 場所前、捕まえれば横綱でも吊れると把瑠都が言ったのを聞いた朝青龍が激怒したとかで、朝青龍が把瑠都を一瞬吊って見せた。やってくれる。魅せてくれる力士だ。この負けん気があればまだまだ楽しませてくれるだろう。


ニッカンスポーツから借用。いい写真だ。

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 白鵬完勝

 白鵬が安美錦に完勝。安美錦の体調はどうなのだろう。それでもこのひとが小結にもどってくると楽しみだ。
 安美錦と豊ノ島は缺くことの出来ない名脇役だ。豊ノ島は4枚目の位置。どうなのだろう。

 琴欧洲、万全

 幕下時代から自他ともにライヴァルと認めあってきた稀勢の里を圧倒。充実している。今場所の優勝候補は一に白鵬、二に琴欧洲と読む。
 
二日目

 心地良い栃ノ心の緊張

 前頭筆頭まで昇ってきた栃ノ心は今場所は横綱大関と総当たりする。昨日が大関琴光喜戦。今日は結びで朝青龍戦。初顔合わせだ。

 場所前、朝青龍は春日野部屋に出稽古に行っている。本場所で栃ノ心とぶつかることが見えたからだ。今のうちに叩き潰し恐怖心を植えつけるいつもの手口である。5度も出かけたとか。
 ところが体調降り坂の朝青龍に対し充実著しい栃ノ心は、何度も勝ってしまった。四つになりまわしをつかむと力負けしない。テレビは稽古場で朝青龍を寄り切る栃ノ心の映像を流していた。
 そういうことから早くも二日目、結びの一番で横綱が負けるのではないか、栃ノ心金星かと期待が高まる。

 テレビカメラがたまりにすわった栃ノ心の横顔を映し出す。栃ノ心はカメラが向けられていることに気づくのかカメラの方を何度も向く。視聴者からすると、横顔の映っている栃ノ心がいきなりこっちを向き、「なに見てんだよ!」と凄む形になる。これはすごい。ロングで撮っているのに気配で気づくのだろうか。思わず「おまえはゴルゴか!」と突っこみを入れる。
 土俵上ではまだ前の取組なのだが、栃ノ心は全身に緊張を漲らせ、顔はこわばり何度も「生唾を飲む」のである。結びの一番で横綱に挑む気魄が伝わってくるいい映像だった。

 悪い言いかたをするなら栃ノ心は小心なのだろう。生真面目と誉めるべきか。結びの一番でここまで感情の見えた力士を近年知らない。稽古での手応えと結果から、栃ノ心にも「もしかしたら」が芽ばえていたのだろう。稽古とはいえ現実に何度も勝っているのだから単なる夢想ではない。
 栃ノ心の表情を見たなら、この一番が金で買われたなどと思うひとはいないだろう。それだけなのだ。そういうことなのだ。今の相撲に缺けているのはこれである。説得力のある緊張だった。

 稽古で朝青龍はまわしを取られると何度も負けた、それはすなわち「まわしを取らせなければいい」である。取らせなかった。朝青龍の完勝だった。出稽古の効果である。



 朝青龍は初顔合わせにめっぽう強い。それは知っていたが、今日ニッカンスポーツで興味深い一行を見つけた。

初顔相手の対戦成績は01年夏場所で安芸乃島に下手投げで勝って以来、33連勝。

 初顔合わせの連勝は安芸乃島から始まっていたのだ。このとき朝青龍は小結である。
 朝青龍が横綱になってからは安芸乃島が幕ノ内下位で低迷し、横綱朝青龍との対戦は実現していないそうだ。リアルタイムで見ているがそこまで覚えていない。

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 把瑠都、一変!

 昨日ひどい負けかたをして今場所はだめかと思った把瑠都が一変し、大関日馬富士を問題にしない勝ちかたをした。一方的な突き放しである。2秒3。日馬富士は把瑠都の体に触れられなかった。巧さを力が圧倒した一番だった。
 勝利インタビュウに現れた把瑠都は「昨日ひどい相撲を取ったので」とまず反省を口にした。把瑠都の強さを絶讃した正面アナは「この強さを昨日見たかった」と言っていたが、どうやら昨日のだらしない負けで何かがふっきれたようだった。そういう意味では把瑠都は初日に朝青龍というより乗ってきた中盤で当たった方がいいのだろう。
 決して万全ではないようだが、今場所も何番か拍手を送る相撲を見せてくれそうだ。楽しみである。まさか今日で終りということはないだろう。

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 解説は楯山

 今日の解説は楯山親方。玉春日である。解説デビューは先場所、九州場所。通りのいい声でわかりやすい解説なので評判がよかったのだろう。また声が掛かった。
 現在の北の富士、舞の海の地位──相撲番付風に言うなら東西の解説両横綱──は、誰が継ぐのだろう。次々と有望な解説者が現れて楽しみだ。それにしても解説というのは、たいしたことのない平幕力士が上手だったりして不思議だ。むしろ地位の高いひとの方が下手である。

 玉春日は現役時代から人柄がよく好きな力士だったが、ちょっとあの顔にパンチパーマはやめてもらいたい。まるっきりその筋のひとである。
 
三日目
 把瑠都、千代を相手にせず

 まあこれは当然。あえて書くこともない。

 白鵬、完調。栃ノ心、三連敗

 今日は白鵬戦。完敗。白鵬の充実度合はすごい。
 昨日は雅山を一方的に押しだした。あまりの圧力に雅山は土俵下に一回転して転げ落ちていた。後ろでんぐり返しである。ここまできれいに力士が一回転するのもめったに見られない。それも激しい攻防の果てになることはあるが、そうではなく、一方的だったのだ。いかに今の白鵬がすごいことかよくわかる一番だった。

 栃ノ心は三連敗。初日から横綱大関と連続で当たる前頭筆頭は試煉の場所である。序盤で誰かひとりでも負かしておけば、取組が楽になる後半でなんとかなる。果たして今場所の栃ノ心はどうか。
 
四日目
 把瑠都、今日も完勝

 把瑠都が今日は魁皇を破り、これで二日目から三連勝。日馬富士、千代大海、魁皇と破ってきた。まあ日馬富士以外は勝って当然の相手。いよいよ明日は白鵬戦。三大関を破っての横綱挑戦は楽しみだ。連日の勝利インタビュウに、明日も来てくださいに来ますと応えていた(笑)。日本語がうまくなった。片言のロングヘア金髪時代から見ているので時の流れを感じる。
 把瑠都や琴欧洲が結婚したことはほんとうによいことだ。(琴欧洲はまだ婚約か。)
 今の時代、有名人は自由に遊べない。早く娶った方が良い。
 
五日目

白鵬、38秒で把瑠都をくだす

 白鵬が把瑠都との四つ相撲を征して5連勝。38秒の力の入った一番だった。が解説の九重(千代の富士)は把瑠都をボロクソ。常に横綱に先手を取られ何も出来ていないと。それは事実。四つになったものの、そこから手を講じて行くのは常に白鵬、把瑠都は受けるのみ。これで把瑠都は対白鵬戦10連敗。

 九重の辛口批評はわかるが、だがあの白鵬がいま全力を出して勝とうとする力士が何人いるだろう。朝青龍、日馬富士、琴欧洲、把瑠都ぐらいではないか。地位を考慮するといかに把瑠都が特別な存在であることか。
 把瑠都が横綱白鵬にやりたい放題されているのも事実だが、視点を変えると、把瑠都に勝つために最強横綱があらゆる手段を講じていて、それを格下の把瑠都がぜんぶ受けとめているのである。だから勝つまでに38秒もかかってしまう。見ようによっては把瑠都の強さが伝わってくる取組だ。毎場所そう思う。負けるけど毎場所満足している。他の三力士が白鵬に勝っているのに把瑠都だけ勝っていないではないかと言われそうだが、それでいい。把瑠都はへたに白鵬に勝ってしまったら手がつけられなくなる。白鵬の巧さの前にどうしても勝てない、でかまわない。

 だって千代の富士の言うように把瑠都が白鵬の先手を取れるようになったら把瑠都が最強横綱になってしまう。それが出来ないから今のもう一歩物足りないエレベーター力士でいるのであって、そこが把瑠都の魅力でもあるのだ。

 九重に把瑠都に文句のない強い力士になって欲しいという気持ちがあるはずもないから、彼はただ単に大柄な白人力士のもの足りなさを指摘しているだけなのだろう。九重の解説のつまらなさはそこにある。常に自分がいちばんがあり、アナもまた彼が解説に来るたびに現役時の彼を礼讃する(というかもう媚びているように思える)から、よけいにつまらなくなる。つまり、九重が解説に来ると、その日は「九重デー」になってしまうのだ。それは千代の富士ファンには往時を思い出して楽しいだろうが、今の相撲を楽しみたいファンには無意味である。わたし的には解説に九重はいらない。

 同じ事を言っても舞の海には把瑠都に対する愛情がある。以前把瑠都の差し手争いのへたなことをアナが指摘したら、「それが巧かったら把瑠都はもう横綱ですよ」と言い、アナと一緒に大笑いしていた。
 舞の海の解説のおもしろさは、彼自身の大相撲力士に対するファン意識、愛情が見えるからである。自分が小さかったからこそ大きい力士への憧れ、羨望が見える。それがいい。「相撲ラブ」である。
 対して九重のは「俺ラブ」であるから(笑)、彼の解説を聞くたびに「おまえは自分の全盛期のヴィデオでもひとりで見ていろ」と言いたくなる。

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 鶴竜、5連勝

 先場所負け越して三役から陥落し、前頭三枚目で取っている鶴竜が5連勝。とはいえ威張れない。先場所までとは相手が違う。みな平幕だ。勝って当然である。先場所まではここまでみな横綱大関戦。2勝3敗、1勝4敗ぐらいの序盤から、後半に勝ち星を延ばして勝ち越してきた。
 出世する力士の誰もがぶつかる壁が前頭筆頭と小結。そこで勝ち越せると大関への道が開けてくる。
 そしてまた大事なのがそこから落ちたあとの場所。稀勢の里、琴奨菊、把瑠都あたりは、そこから落ちてもまた良い成績を上げて三役に復帰できるようになってきた。次の大関候補である。今場所の成績を見ると、鶴竜もそのひとりになったようだ。いま上にいる安美錦、雅山あたりが落ちてくるだろうから、来場所はまた小結に復帰できるだろう。

 個人的に残念なのは豊ノ島の体調不良である。いまのところ五分の星だが、北の富士や舞の海も誉めない。体の具合が悪くひどい内容のようだ。168センチの慎重で203センチの琴欧洲をぶん投げていたときが懐かしい。ちいさな力士だから故障箇所をもつと一気に力をなくしてしまうのだろう。なんとかまた復活して欲しいひとだ。

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 安芸乃島が高田川?

 向こう正面解説の安芸乃島にアナが「高田川さん」と呼び掛けた。安芸乃島は千田川である。聞き間違えかと思った。高田川は前の山だ。
 何度もそう呼ぶし、絵が出たときに「高田川」とあったので安芸乃島が高田川になったことを知る。急いで調べた。

8代高田川は2010年(平成22年)3月に停年退職を迎えるため、2009年(平成21年)8月5日付で高田川親方と千田川親方が年寄名跡の交換を行い、高田川親方が17代千田川、千田川親方が9代高田川となるとともに高田川部屋を継承した。9代高田川はけいこ場にてっぽう柱を5本も立てた部屋を東京都江東区清澄に新築し、同年9日5日に部屋開きを行った。(Wikipediaより)

 もうひとつ、安芸乃島の本名は勝巳であり、藤島時代は藤島勝巳だった。ところが千田川時代は「虎央」(とらお)と名乗っていたと知る。千田川虎央なのである。知らなかった。本当か? 知った今でもまだ半信半疑。高田川になって高田川勝巳としたらしいが。そうそう「交換」であることも重要。千田川は宙に浮いたのではなく前の山が千田川として存在しているわけだ。

 貴乃花とケンカして藤島から千田川になり、そうしていま高田川か。安芸乃島の人生も変転している。虎央が本当なら(本当だろうけど)、それは二子山部屋との絶縁に心機一転を期したのだろう。
 安芸乃島も解説上手。北の富士の座を狙うひとりか。すこし辛口過ぎるか(笑)。


 
六日目

 白鵬、翔天狼に敗れる──今年4敗目

 翔天狼は白鵬と同期、同じモンゴル出身。こんな差がついて、それでもやっと結びの一番で取れるだけになった。感無量だろう。初顔合わせ。

 控室でのインタビュウで翔天狼の言った「結びの一番で取れるだけで感激」に、アナが「こうなったらそれ以上の感激(勝利)を」と振ると、解説の北の富士が「いやそれは無理だろうけど」と即座に否定。それが実現したからたいへんなことになった。

 私も昨日、明日の取組を見て「白鵬は楽勝。安全牌。楽しみは朝青龍と安美錦」と思っていた。翔天狼はまったくの無印。競馬で言うなら単勝万馬券だ。


デイリースポーツより

 相撲は、いい立ちあいをした翔天狼が一気にのど輪を使って白鵬を土俵際まで追い詰める。白鵬の体は反り、危うい形となったがここからこのひとは粘れる。まだ心配していなかった。翔天狼が寄りにこだわったらここからの白鵬の反撃があったろう。だがそこからの引き。これが決まった。白鵬は引きを予想していなかったのだろう、大きく足を開いた形(股割りのような)で前のめりに倒れてしまった。
 完勝である。一気の寄りで白鵬を慌てさせたのがよかった。形としては千代大海の突っぱって土俵際まで追い詰め、寄りきれないのでそこで引く、という伝家の宝刀(笑)みたいな形になったが、千代大海みたいなワンパターン伝統藝ではないので中身のある相撲になった。

 翔天狼は初の金星。勝利インタビュウでのうれしそうな顔がよかった。日本語もうまい。



 白鵬はこれで今年4敗目。日馬富士、琴欧洲、琴光喜に次いでだから金星配給は今年初。

「記録よりも記憶に残るウンヌン」という言いまわしは大嫌いで使わないが、どうやら一般には記録型らしい白鵬に、今年朝青龍の保つ年間最多勝84勝6敗を破って欲しいと願っていた。これで4敗目。今場所と来場所をあと1敗で乗りきれるだろうか。あとふたつ負けて同率。それでは意味がない。超えないと。
 85勝5敗で楽々と越えると思っていただけに、この4敗目を見るとキツくなってきた。朝青龍の前の記録は北の湖の82勝、千代の富士と貴乃花が80勝を記録している。貴乃花は2回だ。
 朝青龍の記録はひとり横綱時代のライヴァルのいない時のものだ。なんとしてもこれは超えて欲しいと思っていたし今年の白鵬なら超えられると思っていたのだが黄信号となった。

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 朝青龍、薄氷を踏む勝利

 平幕で朝青龍にいちばん勝っているのは6勝の安美錦ということから今日はもうこれ一色。
 それは印象的なのでよく覚えているし、私にも楽しみな取組なのだが、意外だったのは2位が若の里ということ。あの強い関脇時代のことか。その後怪我で低迷しているのでこれは意外だった。

 若の里はいい力士だ。もうこれからは無理だろうけど、それだけの成績を上げながら大関になれなかった力士と言えば、昔の長谷川、いまの若の里が真っ先に思いうかぶ。長谷川の場合は大関が五人もいたし、弱小部屋だったからと言われた。若の里の場合は11勝はあげても12勝、13勝が出来ない。一場所それをやれば安定した大関になれたろうに。

 朝青龍が安美錦に一気に寄られたが土俵際で体を交し際どく足一本残して勝利。内容は完全に負けていた。
 目の前で白鵬が負けただけに燃えてきたと取りたいが、どうにも中身が悪い。むしろ期待は琴欧洲に集まる。

 横審

 昨日横審がそろって観戦した。取組後、それを問われると白鵬も朝青龍も我関せずを通した。今場所取組後のインタビュウに応えない朝青龍が5連勝に気をよくし初めて口を開いたが、この件で振られると「そんなの知らない」と無視。
 場所前の横審総見で両横綱とも番数をこなさずれいによってボロクソに言われた。珍しく白鵬が稽古は稽古であり本場所とは違うと反論した。
 私は各界の相撲好きを集めた横審(笑)なんてのは無意味と思っているので力士を支持する。力士から見ても金をくれるタニマチなら大歓迎だろうが、なにもくれず文句ばかり言う横審などなんの興味もないだろう。いかにも今の時代的存在だ。女のウチダテをいれているあたりがよけいに「らしい」。やたら優等生キャラにされている白鵬が反撃したのが気分良かった。

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 栃ノ心、連勝

 琴光喜、朝青龍、白鵬、琴欧洲と4連敗だった栃ノ心が、日馬富士、千代大海と破って連勝。明日は魁皇。初の上位戦であり全敗でもおかしくないのにこの2勝は立派である。まあチヨスはともかく(笑)。

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 鶴竜>日馬富士

 基本的に力士はみな好きだ。嫌いな力士はほとんどいない。たとえばあまり好きではない玉乃島だが、日馬富士を破りうれしそうに勝利インタビュウを受けているのを見ると、よかったねえと心から思う。

 問題は好きな力士同士の対決のときだ。直接対決になるとどっちが好きかがわかる。今日鶴竜と日馬富士の対決があった。そこで私は鶴竜を応援していた。いまは日馬富士よりも鶴竜の方が好きな自分を確認した。

 相撲は一方的。鶴竜が引いたのに日馬富士が崩れずついて行き完勝した。アナが「鶴竜は引いてしまうんですよねえ」と言っていた。鶴竜は引くし、勝つためには変化もする。私の好みの力士ではない。なのに応援しているのは、懸命さが伝わってくるからだろう。

 大好きだった日馬富士はなんで熱意が落ちてきたのだろう。朝青龍の腰ぎんちゃくをやっているからか、ヘビースモーカーだからか。なんでだかわからないが私の中で「日馬富士熱」は下がっているようだ。
 つらつら考えてみるに、私は力士がまだ限界が見えずに伸びて行く時期が好きのようだ。(餘談ながら、先日クイズで「つらつら」の意味が出題されていた。その響きから軽い意味で使われることが多いが、正しくは真剣に熟考することである。みんな間違えていた。)

 その意味で日馬富士はだいぶ力士として固まってきた。安馬時代と比べるとおもしろさは目減りしている。かといって鶴竜が日馬富士以上の素材であり以上の地位にまでなれるかというと疑問だが、こちらはまだ固まっていないのはたしかだ。
 大好きな把瑠都だが、彼が万年大関にでもなったら私は一気に興味を失くすのだろう。そうなる可能性は高い。
 何度も書いていることだが、私にとって近年いちばん興味深かったのは「平幕時代の白鵬」である。無限の可能性を秘めた逸材がその能力を自分でも持て余していたあの時期は最高におもしろかった。横綱になってからはもう興味をなくしてしまった。
 それと比すと鶴竜の魅力は小粒だが、これはこれで大事に見守って行きたい。

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 優勝の行方

 全勝は佐渡ケ嶽部屋の大関二人、琴光喜と琴欧洲、そして朝青龍。それに1敗で白鵬。優勝候補はこの四人だろう。1敗の鶴竜はこれから上に当てられるのか。誰かを食いそうだ。
 いま序盤を終り、これから中盤。ここはみな順当に行くのではないか。終盤になって一気に星が崩れるだろう。先場所10勝5敗の朝青龍はどうか。どうにも今の相撲は心もとなく、今場所も終盤で崩れるような気がするのだが、奇跡を起こす人だからまたなにかやるのか。
 私は琴欧洲と白鵬の争いと見ているが。

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 相性

 あの曲者時天空が雅山に歯が立たない。今場所で10連敗。雅山の押しに何できず逃げるだけ。相性とは不思議なものだ。
 
七日目

 解説に出島

 先場所引退し大鳴戸親方となった元大関出島が解説者デビュウ。チョンマゲ姿に背広。貴乃花や曙からあげた金星、最後の輝きとなった大関白鵬、横綱朝青龍に連勝した相撲等がヴィデオで紹介されていた。
 出島と言えば、金沢でこども時代からライヴァルだったのが栃乃洋。出島と栃乃洋に続く金沢の力士は誰がいるのだろう。
 中央大学で活躍したときの一年先輩が楯山となった玉春日。中央大学相撲部の全盛時代だ。

 大関陥落後8年間48場所は元大関としては最長だとか。先場所、十両陥落が決定したとき、それでもまた取って欲しいと思ったが、やはり元大関としては十両は屈辱なのだろう。というか押しに力がなくなっていたからしかたがないのか。
 関脇で優勝して大関にあがったときの金沢の熱狂ぶりをよく覚えている。こどものころから高校横綱になるなど話題のひとだったし、ひとりっこであり、故郷の先輩輪島のように本名の出島にこだわった。それだけ話題を呼び期待が大きかったから、平幕に落ちて取るのは辛かったと思う。また御両親も大関までが一気だったからその後はきつかったろう。よくもがんばったものだ。

 私が出島で好きだったのは色白。相撲とりは色白がいい。
 現代医学とは矛盾した無茶な体作りをする力士の健康の規準は肌。内臓の調子を肌で判断する。
 相撲上がりの天龍にいろいろ節目はあったが、私からすると、日焼け路線に転じたときがいちばんショックだった。木戸や長州など、黒く焼いて強く見せようという路線の逆に相撲上がりの色白路線があった。

 出島の話しかたはぶっきらぼうで、語り口も棒読みに近く、残念ながら名解説者の素質はないようだ。
 出島のことは先場所書くべきかと思ったが、今場所でよかったようにも思う。

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 把瑠都の押し相撲

 まともにやりあうと巧さの違う安美錦相手に突き押しで一方的に勝つ。今場所は日馬富士にこの勝ちかたをして話題になっている。これで5勝2敗。負けたのは両横綱だけ。まわしにこだわらないこの取り口は評判が良いようだ。私はまわしをとっての怪物相撲が好きなのだけれど、これはこれで強さの証か。

 正面解説は音羽山(貴ノ浪)、向こう正面は大鳴戸(出島)、アナが「把瑠都と貴ノ浪の相撲は似ていると思うが」と振ると、ともに否定。出島は、貴ノ浪はもっと懐が深くて掴まえられるとなにも出来なかったと貴ノ浪を把瑠都よりも讃える感じの評、貴ノ浪はさすがに「自分はそれしかできなかったので」と謙虚だが、把瑠都との共通性は否定。

 私は、貴ノ浪は嫌いではなかったけれど、共通性は同じく否定。貴ノ浪は長身を活かしたあれしか出来なかった。いわば変態相撲。把瑠都はそれとはちがう。なんでも出来る正当な?怪物相撲だ。

 貴ノ浪のことばで思うのは琴欧洲のこと。琴欧洲が相手に合わせてちいさな相撲を取り負けているとき、解説でもっと自分の相撲を取ればいいのにと苦言を呈していた。琴欧洲こそ貴ノ浪的変態相撲が取れるひとだった。長身を活かしたより変態的な相撲で獨自の形を作れたろう。しかしまたそうではない正統派の路線に行ったのは賛成。琴欧洲に貴ノ浪になってほしくはなかった。
 いずれにせよ貴ノ浪の変態相撲は貴ノ浪だけのものであると思う。似ている似ていないを論じることが無意味だ。

 同じくアナは、出島に「白鵬と貴乃花は似ていると思うが?」と振っていた。これには出島も、同部屋であり今も貴乃花に着いている貴ノ浪も、「懐が深く体が軟らかい点が似ている」と同意していた。私は貴乃花も白鵬も大好きなのによく言われるこの話が楽しくなかった。それで自分はこういう誰と誰は似ている、のような話があまり好きではないのだと知る。競走馬でも強い馬を似させて評価したがる傾向があるが、どうやら私はそういう感覚が好きではないらしい。と相変わらず自分のことを他人口調。

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 鶴竜の取ったり

 鶴竜が取ったりで全勝の琴欧洲を破った。これは巧い相撲。さすがとしか言いようがない。負けた琴欧洲を責める気になれない。奇襲ではなく、正面からのやりあいから生まれた変化。文句なし。
 勝利インタビュウでの鶴竜は無愛想。まるで琴欧洲を破ったごときで騒ぎたてなさんなと言いたいかのよう。肝が据わっている。

 4人の全勝者の中から、白鵬、琴欧洲が全勝で行くのと思っていたら、朝青龍、琴光喜が生き残り、白鵬、琴欧洲が1敗になってしまった。とはいえまだまだの流れ。むしろふたりが追う方がおもしろい。

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 朝青龍、膝蹴り(笑)

 玉乃島を後ろ向きにし送り出す朝青龍が、玉乃島の尻に膝蹴り。プロレス技で言うとニーリフト。このひとらしい。笑った。

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 白鵬、異様に慎重

 琴奨菊相手の白鵬が異様に慎重な立ちあい。相手を見すえ、すこし遅れて立った。変化する力士ではないが、昨日の今日なのでどんな立ちあいをされようとも絶対に負けないという意識が見えた。こちらも昨日の今日なので、ここでへたしたらたいへんなことになると心配していたので、この慎重さは望ましい。これで落ちついたことだろう。

 昨日横綱を破って金星を挙げた翔天狼は、今日も元気いっぱいに突っこんでいったが、時天空のけたぐりで0.5秒で負け。相手を見ずに突っこんでいったので、あれではやられると解説陣はみな苦笑。昨日の勝ちで勇みすぎか。

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 明日は中日だが、それほど目立った取組はない。琴欧洲が天敵の豊ノ島とやる。いまの元気のない豊ノ島なら問題はないと思う。ここで負けたら琴欧洲の今場所は終りだ。
 
中日

 解説に出島

 先場所引退し大鳴戸親方となった元大関出島が解説者デビュウ。チョンマゲ姿に背広。貴乃花や曙からあげた金星、最後の輝きとなった大関白鵬、横綱朝青龍に連勝した相撲等がヴィデオで紹介されていた。
 出島と言えば、金沢でこども時代からライヴァルだったのが栃乃洋。出島と栃乃洋に続く金沢の力士は誰がいるのだろう。
 中央大学で活躍したときの一年先輩が楯山となった玉春日。中央大学相撲部の全盛時代だ。

 大関陥落後8年間48場所は元大関としては最長だとか。先場所、十両陥落が決定したとき、それでもまた取って欲しいと思ったが、やはり元大関としては十両は屈辱なのだろう。というか押しに力がなくなっていたからしかたがないのか。
 関脇で優勝して大関にあがったときの金沢の熱狂ぶりをよく覚えている。こどものころから高校横綱になるなど話題のひとだったし、ひとりっこであり、故郷の先輩輪島のように本名の出島にこだわった。それだけ話題を呼び期待が大きかったから、平幕に落ちて取るのは辛かったと思う。また御両親も大関までが一気だったからその後はきつかったろう。よくもがんばったものだ。

 私が出島で好きだったのは色白。相撲とりは色白がいい。
 現代医学とは矛盾した無茶な体作りをする力士の健康の規準は肌。内臓の調子を肌で判断する。
 相撲上がりの天龍にいろいろ節目はあったが、私からすると、日焼け路線に転じたときがいちばんショックだった。木戸や長州など、黒く焼いて強く見せようという路線の逆に相撲上がりの色白路線があった。

 出島の話しかたはぶっきらぼうで、語り口も棒読みに近く、残念ながら名解説者の素質はないようだ。
 出島のことは先場所書くべきかと思ったが、今場所でよかったようにも思う。

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 把瑠都の押し相撲

 まともにやりあうと巧さの違う安美錦相手に突き押しで一方的に勝つ。今場所は日馬富士にこの勝ちかたをして話題になっている。これで5勝2敗。負けたのは両横綱だけ。まわしにこだわらないこの取り口は評判が良いようだ。私はまわしをとっての怪物相撲が好きなのだけれど、これはこれで強さの証か。

 正面解説は音羽山(貴ノ浪)、向こう正面は大鳴戸(出島)、アナが「把瑠都と貴ノ浪の相撲は似ていると思うが」と振ると、ともに否定。出島は、貴ノ浪はもっと懐が深くて掴まえられるとなにも出来なかったと貴ノ浪を把瑠都よりも讃える感じの評、貴ノ浪はさすがに「自分はそれしかできなかったので」と謙虚だが、把瑠都との共通性は否定。

 私は、貴ノ浪は嫌いではなかったけれど、共通性は同じく否定。貴ノ浪は長身を活かしたあれしか出来なかった。いわば変態相撲。把瑠都はそれとはちがう。なんでも出来る正当な?怪物相撲だ。

 貴ノ浪のことばで思うのは琴欧洲のこと。琴欧洲が相手に合わせてちいさな相撲を取り負けているとき、解説でもっと自分の相撲を取ればいいのにと苦言を呈していた。琴欧洲こそ貴ノ浪的変態相撲が取れるひとだった。長身を活かしたより変態的な相撲で獨自の形を作れたろう。しかしまたそうではない正統派の路線に行ったのは賛成。琴欧洲に貴ノ浪になってほしくはなかった。
 いずれにせよ貴ノ浪の変態相撲は貴ノ浪だけのものであると思う。似ている似ていないを論じることが無意味だ。

 同じくアナは、出島に「白鵬と貴乃花は似ていると思うが?」と振っていた。これには出島も、同部屋であり今も貴乃花に着いている貴ノ浪も、「懐が深く体が軟らかい点が似ている」と同意していた。私は貴乃花も白鵬も大好きなのによく言われるこの話が楽しくなかった。それで自分はこういう誰と誰は似ている、のような話があまり好きではないのだと知る。競走馬でも強い馬を似させて評価したがる傾向があるが、どうやら私はそういう感覚が好きではないらしい。と相変わらず自分のことを他人口調。

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 鶴竜の取ったり

 鶴竜が取ったりで全勝の琴欧洲を破った。これは巧い相撲。さすがとしか言いようがない。負けた琴欧洲を責める気になれない。奇襲ではなく、正面からのやりあいから生まれた変化。文句なし。
 勝利インタビュウでの鶴竜は無愛想。まるで琴欧洲を破ったごときで騒ぎたてなさんなと言いたいかのよう。肝が据わっている。

 4人の全勝者の中から、白鵬、琴欧洲が全勝で行くのと思っていたら、朝青龍、琴光喜が生き残り、白鵬、琴欧洲が1敗になってしまった。とはいえまだまだの流れ。むしろふたりが追う方がおもしろい。

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 朝青龍、膝蹴り(笑)

 玉乃島を後ろ向きにし送り出す朝青龍が、玉乃島の尻に膝蹴り。プロレス技で言うとニーリフト。このひとらしい。笑った。

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 白鵬、異様に慎重

 琴奨菊相手の白鵬が異様に慎重な立ちあい。相手を見すえ、すこし遅れて立った。変化する力士ではないが、昨日の今日なのでどんな立ちあいをされようとも絶対に負けないという意識が見えた。こちらも昨日の今日なので、ここでへたしたらたいへんなことになると心配していたので、この慎重さは望ましい。これで落ちついたことだろう。

 昨日横綱を破って金星を挙げた翔天狼は、今日も元気いっぱいに突っこんでいったが、時天空のけたぐりで0.5秒で負け。相手を見ずに突っこんでいったので、あれではやられると解説陣はみな苦笑。昨日の勝ちで勇みすぎか。

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 明日は中日だが、それほど目立った取組はない。琴欧洲が天敵の豊ノ島とやる。いまの元気のない豊ノ島なら問題はないと思う。ここで負けたら琴欧洲の今場所は終りだ。
 
九日目

 相撲は挌闘技!──高見盛の美意識

 阿覧と高見盛の一番。すごい相撲だった。阿覧が土俵中央で張り手を仕掛けたのだが、相撲の技の張り手というよりほとんどケンカである。高見盛の顔面を張り続ける。張られつつも高見盛は前に出る。同時に飛びだす。軍配は阿覧。ヴィデオでは同体と思われたが、ここで舞の海はするどく「阿覧が髷を掴んでいた」と指摘。アナは気づかなかった。私も気づかなかった。しかし角度の違うヴィデオを見るとたしかにひどい形で掴み振りまわしていた。舞の海はさすがである。
 結果は阿覧の「反則負け」。

 張られ続けた高見盛はほとんど記憶が飛んでいてなにも覚えていまいと舞の海は言う。誇り高く胸を張って下がっていった。なんといっても気分が良かったのは、ロシア人の阿覧に顔を張られつつも高見盛は同じ手でやりかえさず、ひたすら前進していったこと。日本人らしい美しい勝利だった。
 漫然と観ていた取組をガバと起き出し刮目したのなんていつ以来だろう。いい相撲だった。いや相撲としては美しくない。しかし高見盛の力士として美しさが際立った名勝負だった。今日はこの一番を観ただけで満足できる。

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 猛虎浪の出自

 白鵬は色が白いから名づけられた四股名だ。猛虎浪は黒い。まるでサモアンのような肌の色だ。顔も朝青龍のような典型的モンゴル顔とはぜんぜんちがう。今日は同じモンゴル人の時天空との取組だったが時天空も色白なので肌の色の違いが際立っていた。
 人類史上最も多く自分の血脈をもっているのはジンギスカンなのだそうな。世界最大の王国を築き血を広めたからさもありなんと思う。人口わずか200万の小国になったとはいえモンゴルの血は多彩なのだろう。

 「蒙古」とは漢民族がモンゴル人を呼んだ蔑称だ。モンゴル人は日本でも「蒙古」と呼ぶのを廃止する運動をしている。「蒙古」の蒙の字の意味がよくないことは私にも判る。「啓蒙」からも推測できる。「無智で古臭い」の意か。
 だから「モウコナミ」という響きはよくないらしい。とはいえ親方に決められてしまったのだからしょうがない。なんでも阪神ファンなのだとか(笑)。まあ大関にでもなったら改名か。でもそこまでの器でもないか。

 シナはChinaだからこれからも使うが、モンゴル人が漢民族に押しつけられた「蒙古」を嫌うなら使わないようにしよう。日本人を「倭人」(チビ)と呼んだのと同じ発想だから。

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 鶴竜、琴光喜に完敗

 1敗同士の対決。対戦成績も五分。琴欧洲に完勝している鶴竜がここも突破するのではと思ったが琴光喜の勝ち。決まり手は押したおし。足が流れたのか脆い最後だった。時間は4秒。
 鶴竜は明日は白鵬と当たるようだ。残りの日数を考えると不自然。これはやはり負け越し目前の千代大海なんぞとやらせるより盛りあがるとの読みか。

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 把瑠都、横綱以外に負けなし!

 翔天狼を相手にせず勝つ。これで7勝2敗。残された横綱大関は佐土が嶽の二人だけ。どちらかには勝つだろう。

 ところで以前から把瑠都に関して気になることがある。それは勝ったとき、倒れた相手の肩や腰をポンと叩くことだ。それは労りの気持ちであり悪気はないと思うが、相手は圧倒的に先輩が多い。先輩にそれをやるのは失礼である。どう考えてもそれは格下の相手に、「強くなったな」「よくやったよ」になるからだ。これは選挙のとき小泉進次郎が年輩の支持者にやっていて気になったことだった。
 尾上はちゃんと教えてやらないとダメだ。

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 白鵬、薄氷の勝利

 稀勢の里に攻めこまれた白鵬が土俵際、強引なすくい投げでかろうじて勝った。最悪の内容。
 舞の海もアナも翔天狼に負けてから、昨日の琴奨菊戦、今日の稀勢の里戦と、内容が悪いと批判。まったくそのとおり。ひどい内容だ。あの一敗で混乱しているのだろう。こうなると白鵬絶対有利とも言えなくなってくる。
 朝青龍は相手が千代大海なので楽勝。こうなるとこのひとは燃えてくる。いよいよスタミナに問題のある終盤に突入。どんな結果になるにせよ朝青龍が元気な方が場所は盛りあがる。

 把瑠都がすでに両横綱との対決が済んでしまっているのが残念だ。今の調子でぶつかるとおもしろかったのに。この辺、小結は横綱大関と序盤に、関脇は後半に、という明確な取組の順序があるから仕方ない。今場所は稀勢の里も琴奨菊も関脇の座をなんとか守りそうだから把瑠都は大きく勝っても昇れないか。いやいや三人関脇でもいいだろうし。

 
十日目

 琴欧洲、2敗

大関琴欧洲(26=佐渡ケ嶽)が小結安美錦(30)を送り出しで退け、1敗をキープした。過去7勝11敗と負け越している難敵だったが、相手の動きを見ながら落ち着いて取り切った。5月30日に麻子夫人(30=旧姓安藤)との婚姻届を提出し、来年2月14日に都内のホテルでバレンタインデー挙式を行うことも判明。今場所で逆転優勝を実現させれば、その日を横綱として迎えられる可能性も出てくる。横綱朝青龍(28)は全勝を守り、琴欧洲、横綱白鵬(24)大関琴光喜(33)ら3人が1敗で追う展開となった。(ニッカンスポーツ)

 てな記事がせっかくあったのに、魁皇のとったりに完敗。
 この一番の向こう正面立田川(湊富士)の解説が秀逸だった。魁皇は最初から琴欧洲の左をとってのとったりを狙っている、そういう立ちあいをしているのだから琴欧洲は気づかなければダメだというのだ。それはアナも正面解説の玉乃井(栃東)も気づかなかった視点だ。ちょうど土俵真上からの映像があり、それで観るとまさに魁皇は立ちあいの時から仕切り線からして右寄り(琴欧洲から見ると左寄り)で立っており、警戒さえしていれば簡単に見ぬける見え見えの立ちあいだったのだ。とはいえそれは立田川だから気づいたことで琴欧洲が見ぬけないのはしかたないか。でもこれは勉強になったろう。

 その前に琴光喜が日馬富士に敗れて同じく2敗。これも当然か。だからこそ琴欧洲には1敗を護って欲しかったのだが残念だ。

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 解説の楽しみ

 今日は正面解説が業師だった玉乃井なのでそれを中心にした中継をしていた。「玉乃井の視点」である。
 安美錦が翔天狼に一気に寄りきられそうになったのだが、翔天狼の足が流れひとりで倒れてしまった。安美錦はかろうじて土俵際で残していた。それに対して玉乃井こと栃東が、「自分は体が硬かったからああいう残しかたはできなかった。立田川さんはそれがうまかった」と言い、立田川こと湊富士も「自分にはそういう勝ちが多かった」と認めていた。が、湊富士のそういう勝ちが浮かんでこない(笑)。いいかげんな相撲ファンだ。たいして好きじゃなかったのだからしょうがない。今回の解説上手で見直した。
 栃東は体が硬かったのか。なるほどね。
 私はこのひとも世間が認めているほど好きではないのでどうでもいいや。

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 朝青龍10連勝

 稀勢の里を楽に料理してただひとり10連勝。相撲内容がよくなってきた。もしかしてこれは優勝があるか。
 白鵬が鶴竜を一蹴。これは力が違った。鶴竜は当たらなくてもいい横綱に当てられたが10勝して三賞をとれそうだ。
 佐渡ケ嶽ふたりの大関が崩れて、もう優勝は横綱のどちらかに絞られた。

 そんな中、龍二さんがまたも負け越し。来場所は史上最多の14度目の角番(笑)。いつまで取るのだろう。

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 把瑠都勝ち越し

 把瑠都が楽々と勝ち越して勝ち越しインタビュウ。先場所は11勝、今場所も二桁いけそうだ。明日は琴欧洲、そして琴光喜。ふたりを倒せば13勝も見えてくる。横綱にしか負けていない成績は極めて順当。下位に負けないようになったのはよいことだ。

 栃ノ心、負け越し

 今場所はいい勉強になったろう。初めての横綱戦も結びの一番もあった。来場所からの精進が楽しみだ。このひとは今場所の経験を糧にして伸びそうだ。

 翔天狼もまだ1勝のみ。それが金星の白鵬戦。まだ相撲が見えていないか。相手を見ずに突っこんでいったりしている。でも今場所の経験は貴重だ。

 雅山、旭天鵬も負け越し。玉乃島も風前の灯火。でもこの辺はエレベーター力士だからすぐにまたもどってくる。
 大好きな安美錦も7敗してあとがないが、今場所は横綱大関戦で勝ったのがチヨスだけだからしょうがない。このひとにはいつも横綱大関と当たる地位にいてほしいのだが三役で勝ちこせなくなってきた。さすがに力が落ちているのだろうか。

 14枚目の北勝力が8連勝で勝ち越し。このひとはこんなひと(笑)。大勝ちと大負けの繰りかえし。

 怪我で十両まで落ちていた若の里が、先場所優勝してもどってきた。7勝目。このひとは大好き。早く上にもどってきて欲しい。朝青龍に5勝している。白鵬は平幕時代、歯が立たなかった。
 今場所10勝して来場所は前頭3枚目ぐらいまで上がれるか。

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 グルジア第三の男・臥牙丸

 幕下の臥牙丸(木瀬部屋──肥後ノ海)が5戦全勝。黒海、栃ノ心に続くグルジア第三の男の十両昇進が見えてきた。
 しかしまあニックネームの「ガガ」からつけたというがこんな四股名は以前ならありえなかった。まるでアニメの世界だ。呼びだしも面くらうだろう。でもわるいとは思わない。こんな遊びもありだ。
 
十一日目

 高見盛の美

 一昨日の阿覧との再戦のよう。今場所好調ですでに勝ち越している北勝力が突っ張る。ヴィデオのアップで見るともろに「掌底・掌打」である。それが顔面にバシバシ決まる。顔が歪むほど強烈だ。それを何発も受けつつも高見盛は前進する。怯むことがない。両腕をなんとか北勝力の脇に差しこんで掴まえようと前に出る。なんとも美しい。阿覧の時も書いたが殴られたから殴りかえすではないのがいい。その血気もまた相撲の魅力だが、ここにはそうではない日本人の美学がある。掴まえれば高見盛のもの。寄り切った。場内からの大きな拍手。
 阿覧戦の後遺症がありまだふらふらしていると語っていたとか。力持ちの大男の掌打を顔面に何発も受けているのだ。それこそ歯はがくがくになり顔は腫れているだろう。
 誇り高く、天井を向いての凱旋。なんとも魅力的なひとだ。



 高見盛嫌い!?

 場内が沸くあの高見盛の気合い入れアクションだが、あれを映さない日がある。いつもは気合いを入れる高見盛を正面から映し、場内の掛け声とともに盛りあがる。
 ところがたまに画面には気合いを入れている高見盛の背中が遠景で映っていて、いつものよう気合いを入れているのだが、アナも解説もそれにはまったく触れず淡々と別の話をしていることがある。そして取組になる。

 なぜだろう。考えてみるに、おそらく世の中には、あの気合い入れが始まると目を背けるぐらい高見盛が大嫌いな相撲ファンがいるのだろう。私がヒサモトマサミの汚い歯ぐきが剥きだしになった笑い顔が映ると目を背けるように。
 私のその不快はヒサモトの出る番組は一切見ないという方法(たとえそれがたけしやダウンタウンのおもしろい番組であろうと)で避けられる。
 が、大相撲はひとつしかない。好きな力士を見るためには毎日大嫌いなあの高見盛にも接せねばならない。

 そのひとは大嫌いだが世の中にはあんなものが好きな相撲ファンが多く、中継するNHKも、これみよがしにアップで映し、好意的に放送する。腹が立ってならない。贔屓である。電話で抗議する。なんであんなくだらないものを大袈裟に取りあげるのだと。

 というようなことがあってNHKも、たまには高見盛のあのアクションをまったく無視する日があるのではないか。と推測した。

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 受身の豊真将

 豊真将の相撲がつまらない。負けないように負けないように慎重に取り、結果負けている。もともと売りは低く構え、叩かれても落ちない強靭な足腰なのだが、ここのところずっと責められ、ひたすら耐えるだけの相撲になっている。今日も玉飛鳥にずっと責められたあと、反撃に出たところをうっちゃられた。

 もの言いがつき、ヴィデオで見るとほとんど同体であり、いや玉飛鳥の肘が先に落ちていた(庇い手だが)のような解釈も出来るきわどい勝負だった。だがきれいなうっちゃりが決まった形だからこれはこれでいいだろう。0コンマ何秒どっちが先に落ちた、なんてことより勝負の流れで決めるべきだ。

 豊真将の負けないように負けないようにという、それでいて負けてしまう相撲を見ていると切なくなる。それは私の弱気の馬券と似ている。金がないからハズレないようにハズレないようにと買う。負けてもともとの勝負が出来ない。そして結果負けている。負けてもともとで買っていれば大金を得ていた結果も山とある。心が縮んだならなにをやっても負ける。豊真将が化けてくれれば私の馬券も変るかも知れない。そんな想いで毎日見ている。

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 栃ノ心3勝目

 栃ノ心が翔天狼を破って3勝目。負け越しているが充実著しい。ほんとうに来場所以降が楽しみだ。

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 鶴竜、稀勢の里に完勝

 稀勢の里が攻めこんだのだが、押しこまれた鶴竜はすばやく右を巻きかえすと逆に寄って出る。その速さと技巧はまことに見事だった。鶴竜のほうがひとまわりちいさいだけに、ちいさな力士が大きな力士を圧倒するのは相撲の醍醐味だ。本当に強くなった。来場所は三役に復帰するがもう文句なしの大関候補だろう。

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 把瑠都、勝つには勝ったが……

 把瑠都対琴欧洲。2敗対決。ここのところ琴欧洲が4連勝。把瑠都は勝てなくなっている。立ちあい、いきなり把瑠都が首を押えに掛かる。これは低く立った琴欧洲にも問題があった。そのまま力任せの押し潰すようなはたき込み。それで決まってしまった。舞の海が「そっ首落としのような」と言っていたが、奇妙な取り口だった。

 ところが勝利インタビュウに現れた把瑠都は御機嫌なのだ。あれが「考えに考えた相撲」だったのだとか。以前は連勝もしたことのある琴欧洲に4連敗して把瑠都なりに考えた作戦だったらしい。しかしあれは琴欧洲の立ちあいが低すぎたのであり(それは舞の海も向こう正面解説の熊ケ谷も指摘していた)決まらなかったら惨敗だった。ともあれ把瑠都は今日もかって横綱以外に負けていない。

 チヨスが今日から休場で琴光喜は不戦勝で二敗を堅持。こんなに早く琴欧洲が優勝レースから陥落するとは思わなかった。

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 朝青龍、充実

 朝青龍の調子が上がってきた。日馬富士相手にいい相撲。上手投げの25秒。

 千秋楽で白鵬と対決。白鵬が勝てば優勝決定戦。白鵬の調子が良くないので全勝優勝まで見えてきた。
 白鵬は明日は難敵日馬富士。明日が天王山か。白鵬が負けたら朝青龍の優勝は決まったようなものだ。
 
十二日目

 琴錦の解説──のつまらなさ

 解説は荒磯(琴錦)。平幕優勝をするなど出世も早く天才力士だった。ぎりぎりで大関にはなれなかった。不運でもあった。
 一方、若くて巧くて人気もののそこそこいい男だったから女性スキャンダル(重婚約だったか)でスポーツ紙の一面を飾るなどスキャンダル力士でもあった。
 また大関を諦めてからは常に八百長相撲の噂がつきまとったひとだった。

 毎度書くことだが相撲における八百長は大関互助組合のようなものを除けば、千代の富士や朝青龍が多用している「なにをしてくるかわからない力士になにもするなよと因果を含めて金を渡す」が主である。これはそれによって上位が獨占する金が下位にもまわるので「内輪社会の経済活性化」として、よいことでもある。

 弱い力士が言っても話にならない。強い力士が言ってこそ価値を持つ。100回やって99回勝つ力士が万が一のことを封じるために払う金だ。いわば安心料である。大関を諦めて人生にふっきれた、多彩な技を持つ実力者の琴錦がこの種の話の中心になったのは当然だった。最も「なにをやるかわからない」恐怖をもっている。大関になれないのなら毎場所入ってくるその金(50万で4番なら200万になる)は大きい。あとは実力があるのだから勝ち越し負け越しでエレベーターをしていればいい。琴錦とはそんな力士だった。

 好角家の友人IJと話していたとき、彼が「初めてふつうの話しかたをする力士と言われましたね」と言ったことがあった。それまでの力士は嗄れ声とか無口とかふつうではなかった。琴錦が初めてふつうのひとのトーンでふつうにしゃべったのである。当時は新鮮だったが……。



 今日琴錦の話を聞いていて軽薄だと思った(笑)。
 いまはもう力士のだれもがふつうに話す。むしろむかしのような話しかたをする力士の方が珍しい。いない。
 そうなると「ふつうの話しかたをする」のが当たり前として、さらにそのうえの「人格・人柄」が重要になってくる。先日の楯山(玉春日)は誠実さを感じさせたし、大好きな千田川(安芸乃島)は辛口だが親愛を感じさせる。

 琴錦の話しかたは頭抜けて軽薄と感じた。声のトーンが高い、軽々しいしゃべりかたで、しかも早口である。まるで「口だけ達者な誠意のないセールスマンの商品説明を聞いているよう」である。まったく重みが伝わってこない。聴いていて私は不快になった。
 初めてこれが登場したときは、珍しいそのふつうっぷりが好意的に捉えられた。しかしそれが当たり前になれば中身を求められる。このひと、中身がない。

 もっともアナは「ああ、なるほど」と琴錦の解説に何度も感嘆していたから、耳を傾けるべき獨自の鋭い解釈もあったのだろう。好意的にそう解釈したい。しかし私にはひたすらヘラヘラとしゃべるだけで何も伝わってこなかった。安芸乃島の千田川、おっと今場所からは高田川か、のひとことがズシンと響いてくるのとは逆である。

 じっさいお粗末な間違いもあった。伸びなやむ稀勢の里(今日も栃ノ心に負けて5勝7敗)のことをアナがどうしたらいいのかと振ったときも、「琴欧洲のように相性のいい力士もいるのだから、もっとその辺を相手によって」などと言い、アナに「いえ大関になってからは琴欧洲のほうがずっと勝っています」と訂正されて照れ笑いをしていた。彼は佐渡ケ嶽部屋の所属なのである。いわば自社製品の説明をしていてまちがっているセールスマンだ。「誠意のないセールスマン」という所以である。



 いきなりワタクシゴトになるが、努力のかいあってタイ語が話せるようになったころ、話したいと思うことがいくらでも出て来るようになったのがうれしくて早口でしゃべりまくっていた。話したいことがいくらでも話せるとは、たとえば「右」は知っていても「左」は知らないとき、「右の反対」と言えることである。これが出来るようになると相手が「左」と教えてくれるからいくらでも語彙が増えて行く。と、あまりに水準の低いたとえをしたので笑われそうだが、むろん右左のことではない。政治的なことも含めてのもうすこし高い水準での話である。

 つまらない冗談を言えばそれもきちんと通じて相手が笑ってくれるものだから、ますますもううれしくて、ヘラヘラと早口でしゃべりまくっていた。いま思うとそれはあの難しい声調もいいかげんだし、へたくそな日本語をしゃべりまくる外人に閉口するようにひどいものだったにちがいない。書いていても赤面する。でもそのときの私はうれしくて止まらなかった。しゃべりまくっていた。

 ある日ある日本人に言われた。「もっとゆっくりしゃべればもっともてるのに」と。そのひとは徒手空拳でタイに行き、地を這うような様々な仕事をこなし、それなりの金を掴み、タイ人女性と複数回の結婚(離婚)をし、自宅まで持った、いわば伝説上の人物(笑)だった。あくどいこともやってきたから日本人の中で評判はよろしくない。いやかなり悪い。
 それでもそのときはそのひとの経営する店で飲み、彼にも奢っていたときだから彼のそれは誠意あるひとことだったと思う。彼は軽薄に得意気にしゃべりまくっている私へたなタイ語を聴いて、「もっとていねいに、ゆっくり、ぼそっとしゃべった方がもてる」とアドバイスしてくれたのだ。つまりそれはタイを這いずりまわってきた彼の覚えた実用智識だった。

 のんびりしているタイでは、というかタイに限らずどこの国でも共通と思うが、発音不明瞭なことばを連発する異国人よりも、穏やかに頬笑んでいて、こちらのことばは話せないのかなと思うと、ぼそっとだが口を突いて出る、どうやら話せるようだ、ぐらいの方が信用される。
 そのひともタイに行って数年で話せるようになり、私のようにどんなもんだとしゃべりまくっていた時期があったのだろう。だがそれから多くの恋愛をし辛酸をなめ、女に信用される男のパターンを会得した。それはゆっくりと丁寧にしゃべることなのだ。そういうことだろう。いまも覚えている忠告である。



 高田川も荒磯も言っていることに大差はないのかも知れない。問題はそれを披露する口調だ。「藝風」だ。
 安芸乃島は意図して訥弁なのではないし、琴錦もわざと早口なわけではない。それは人柄でしかない。
 でも琴錦が北の富士の座を狙うなら、いまのしゃべる速さを半分にし、言葉数も減らした方が良い。そのほうがずっと説得力を持つ。それは意図した、経産尽くの藝風として身に着けねばならない。いまのままでは「荒磯の解説は嫌いだ。早口でわかりにくい。軽薄に感じる」という視聴者が増えるはずである。

 荒磯の解説を聞きつつ、自分への反省も含め、そう思ったのだった。
 もっとも最近の私はしゃべりまくるどころかしゃべるべき最低限のことすらもしゃべらず、そのことによって大切な人間に誤解され絶縁されても、「それはお互いに縁がなかったということなのだろう」と諦めてしまう。しゃべりまくり、誤解を解く努力をすべきなのだろうが、所詮誤解して絶縁するようなひととはそこまでの縁だったと思えてしまう。なんだかみんなどうでもよくなってきている。

 琴錦の冗舌に苛ついたのは、かつての自分を思っての反省と同時に、いまの自分の無口ぶりにも腹立っていたのかも知れない。

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 把瑠都、琴光喜をぶん投げる!

 2敗同士の対決。最初把瑠都が突っぱった。それから四つになり、豪快に左からの上手投げでぶん投げた。強い強い。ファンとしてはたまらない一番だった。

 勝利インタビュウでは、突っ張ったことに関して「相手が組ませてくれないから」と言っていた。今場所連発しているこの突っ張りは脅威だ。四つになると白鵬とも五分にやれるだけの力があるから誰もがなるべく四つにならないように取り組む。それが四つになれないならとあんな強烈な突っ張りを身に着けてきた。みな誉めるはずである。アナも解説も絶讃だった。超大器、ついに本格開花か!?

 荒磯(琴錦)が話の合間にひとことだけだが「昨日の相撲は良くなかったけど」と言っていたのがうれしかった。琴欧洲の首を上から抑えつけての強引な勝ちであり、とても誉められたものではなかった。勝った把瑠都より負けた琴欧洲を責めたくなる相撲だった。ところが把瑠都自身は考えぬいた作戦と言って自慢気だったのだ。あらためてあれが良い相撲ではないことが確認できたようでうれしかった。

「5大関総なめ」は86年の保志以来ということだが、これはたいしたことではない。5大関もいることが珍しいからだ。千代大海、魁皇がやめたら3大関、琴光喜も長くはない。すると2大関、日馬富士と琴欧洲。そこに把瑠都があがって3大関。そこまではわかる。そのあとは誰なのだろう、稀勢の里? どうもピンと来ない。鶴竜? う~む、力はあるが。栃煌山、豪栄道という日本の期待(私は期待していないけど)がしばらく遠ざかったのはたしかだ。琴奨菊も三役と前頭往復が精一杯で大関の器ではない(先々はわからないけど)。

 もう取り得のない千代大海にはさっさとやめてほしいけど、魁皇にはがんばってもらいたい気持ちがある。あの「キラー魁皇」の小手投げはあぶない技だけど、まだまだ売り物になる。

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 琴欧洲、ボロボロ……

 今場所、私の優勝予想は断然白鵬、それに朝青龍と琴欧洲が続くが、終盤になって朝青龍失速、全勝の白鵬を追う1敗の琴欧洲、というものだった。大外れ。恥ずかしい。朝青龍が全勝で突っ走り白鵬が1敗で追っている。それよりもなによりも琴欧洲の大崩が恥ずかしい。まったく……。
 今日は時天空に転がされていた。4敗目。時天空も自力のある力士だから不思議ではないが、魁皇、把瑠都との連敗から気力の糸が切れてしまったのだろう。なんとも残念な結果だった。

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 稀勢の里の張り差し迷走

 もうさんざん書いてきたことなのでいまさら書きたくないのだが、稀勢の里の張り差しはなんとかしたほうがいい。

 いま張り差しを多用しているのは朝青龍と魁皇、稀勢の里である。
 朝青龍のそれは不快だが、力の衰えてきた狼はああいう形の威嚇しかできないのだろうし、まがりなりにも勝利に結びつけて場所を盛りあげているから、しかたないとしても。でもみっともない。朝青龍の全盛期を知っている身にはあの張り差し多用はしみじみなさけない。
 魁皇のそれは、体力のない死期の近い象のなんでもやってやれみたいで、勝つためならなんでもやれ、もっとやれと許容できる。

 いちばんのバカはこの稀勢の里だろう。周囲の期待の大きさと、早く出世してきたのに足踏みしている現状への苛立ちと、いろんなことが積み重なり、そして多用しては負けているのがこの張り差しだ。師匠はなぜこれを禁じないのだろう。理解できない。

 今日は栃ノ心相手に右からの張り差し。見事に音が聞こえてくるぐらいに決まった。すると栃ノ心も右手でやりかえす。この辺がグルジア人だ。されても耐える高見盛との違いを思う。しかしやられたらやりかえすが基本か。
 ところが栃ノ心のやられたからやりかえした右手の張りは稀勢の里にブロックされたのかハズレたのか、稀勢の里の左肩に当たっただけで効果がなかった。むしろそれがハズレてつんのめるような形になった。これが功を奏した。まったくなにが吉と出るかわかったものではない。一瞬決まったかと思うほどつんのめった栃ノ心は結果として体を低くして稀勢の里の腰にしがみつくことになったのだ。そのまま寄り切ってしまった。

 解説の荒磯(琴錦)は、やりかえした張り手がハズレてつんのめり、結果としてそれが低い態勢なっての「たまたま」だと言っていた。あの軽薄な調子の早口で「こんなのはたまたまなんですけどね」と。だったらその「たまたま」を呼んだ稀勢の里の無意味な張り差しにも言及してくれ。安芸乃島は言う。平然と「こんなことやってるからダメなんですよ」と。あらためてこのふたりの違いを思った。

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 白鵬、日馬富士を投げる──が……


 力の入った一番だった。今場所を占う最重要取組である。

 決まり手のこの場面だけ見れば豪快な上手投げであり白鵬圧勝のようだが私には辛勝にすら見えた。
 首を抑えつけて投げる「千代の富士スペシャル」を、技そのものがもともと強引なのに、さらにもう力尽くで無理矢理ねじ伏せているから決まったこの瞬間は日馬富士は宙を飛び壮観である。でもなあ……。

 毎場所日馬富士の白鵬戦を見るとしみじみ「日馬富士ってのは強いんだなあ」と思う。彼も同期の白鵬にだけは特別の感情で向かってくる。出世前の身なのに将来は大関になるからと太刀持ちを拒んだぐらい意識している相手だ。せめてこの迫力がもうすこし対朝青龍戦にも出たらいいのだが、あちらは世話になっている兄貴分なのでそうはならない。対白鵬戦以外では、日馬富士を巧いと思うことはあっても「強い」はない。

 素速い立ちあいから四つになり、牛が角突きあわせたような低い姿勢で動かない。勝負後の解説で荒磯が、「ここから日馬富士が仕掛けて行かねばならない。仕掛けて行けば投げが決まるチャンスも出て来た」と指摘していた。その態勢から、徐々に徐々にではあるが仕掛けて、日馬富士の体を起こし、白鵬が自分に有利な形に持っていった。そして最後にこの豪快で強引な上手投げ。傷めている左肘を思いきり使ったことが白鵬の必死さを顕している。上の写真はニッカンスポーツ、別角度からの下の写真はサンスポ。ともにこれだけ見ると白鵬圧巻のようだがそれほどの差は感じなかった。

 同じく白鵬の結果的圧勝に対把瑠都戦があった。あれも今日と同じく、四つになってるが、そこから常に先手先手と仕掛けて自分の住もうにしたのは横綱だったと絶讃された。今日も同じ。

 そのとき、でもなんのかんの言おうといま白鵬が勝つために全力を尽くすのは朝青龍、日馬富士、把瑠都ぐらい、と書いた。もろにそれを確認できる一番だった。今場所把瑠都はその日馬富士を一方的に突きだしている。今場所の開花が本物なら、いよいよ来場所把瑠都の横綱破りがあるかもしれない。

 珍しく白鵬が勝ったあとけわしい顔をしていた。このひとに缺けているのはそういう「表情」だから、よいことである。白鵬が「近寄るのが怖い」と思うほどの迫力を顔に漲らせたのを初めて見た。それだけこの一戦に懸けた想いがあったのだろう。ここで負けたら今場所は終っていた。勝ってくれたよかった。これでなんとかこれからもまだ楽しめる。

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 優勝の行方

 序盤に済んでしまった把瑠都の両横綱への挑戦がこれからだったら大いに盛りあがった。でもそれは詮なきこと。琴欧洲、琴光喜がいまのふたりを倒せるとは思えない。となったら千秋楽決戦である。それしかない。

A.千秋楽に朝青龍が白鵬に勝って全勝優勝。
(その前に白鵬が負けての脱落を含む。)

B.千秋楽に白鵬が朝青龍に勝ち14勝1敗同士の優勝決定戦。
 B①朝青龍が勝っての優勝
 B②白鵬が勝っての優勝

C.琴光喜、琴欧洲のどちらかが朝青龍を破り、千秋楽結びの一番が決定戦。
 C①朝青龍の優勝
 C②白鵬の優勝

 これらのパターンの内、白鵬ファンの私が決してあってはならないと思うのがB①だ。本割では勝ったが優勝決定戦で負ける形。白鵬は既に今年これを2回やっている。朝青龍と日馬富士に負けて名を成さしめている。実質的に優勝者と同じ14勝1敗であり準優勝だ、年間勝率がすごいと言っても、ここ一番の勝負弱さを露呈した赤っ恥である。これならまだAの朝青龍全勝優勝の方が良い。割りきれる。先場所10勝5敗だった朝青龍復活はそれはそれでよいことだからだ。でもB①になる可能性は高い。予定調和だ。願わくばB②になって欲しいと願うしかない。

 
十三日目

 把瑠都、11勝目!

 曲者時天空の引き技にぐらっときたが倒れなかった。見直した。そのあとの決め技ははたき込みで両者とも引き技が多く誉められた相撲ではなかったが。花道を上がってくるとき付き人に笑顔で話し掛けていた。場所前、体調の悪かった今場所なのにわからんものである。
 明日は鶴竜戦。楽しみだ。一気に弾きとばすか、それとも相撲巧者の鶴竜に相撲の難しさを教えられるのか。

 鶴竜は魁皇に快勝して9勝目。一回り大きい魁皇に出足鋭く低く当たると、前褌を取って攻めたてる。両前褌をとってからは一気。土俵際では魁皇が浮きあがっていた。見事な内容だった。往年の短命横綱栃ノ海のような相撲。前褌を取っての速攻相撲はかっこいい。ここのところいなかっただけにひさびさにいい一番を見た。
 アナも北の富士も大絶賛で、早くも北の富士からは今場所の「技能賞」の声も出た。これ、ほとんど確定だろうな。出来るならあと1勝で二桁勝利が理想。え~と、あすは把瑠都で千秋楽は誰になるんだろう、玉乃島か?

 把瑠都の千秋楽は稀勢の里。5勝7敗と追い詰められていたが今日豪風を負かしてなんとか踏み止まった。また今日も張り差し(笑)。アナも北の富士も呆れていた。北の富士の箴言にアナが「一度封印したんですけどね」と言っていた。知らなかった。のべつまくなしに出している。いったいいつどれぐらい封印したんだ。明日は雅山との茨城対決。雅山が勝って負け越させてやるといいのだが対戦成績から無理か。となると千秋楽に東関脇の座を懸けての把瑠都との対戦となる。把瑠都が楽々と勝ってくれるといいが、ここで稀勢の里が勝ったりすると「7勝7敗は千秋楽に勝ち越す」ネタになるし、やだなあ。

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 朝青龍13連勝!

 琴欧洲は縮こまっていて相撲にならなかった。ほんと気が小さいんだろうなあ。そこも好きだけど(笑)。

 琴光喜、大善戦!

 今日の琴光喜はすばらしかった。先場所白鵬を堂々と負かしたのが自信になっているのか、昨日把瑠都に相手にされなかった体たらくなのに、今日は横綱相手に五分以上の相撲。盛りあがった。白鵬ファンは肝を冷やした。こういう相撲を見ると琴光喜は強いなあと思う。白鵬の相撲と相性もいいのか。でも昨日は把瑠都はぶん投げられた。把瑠都が生まれる前から相撲を取っていたのに。
 白鵬、今日は右の下手投げ。最後は豪快に決めた。昨日は左の上手投げ、今日は右、アナも感嘆していた。北の富士も白鵬の足腰のよさにあらためて感心していた。

 今日の琴光喜を見ると明日の朝青龍が楽しみだ。対戦成績は悪いけどいつもいい相撲になる。結果はともかく明日も熱戦になるだろう。もしも琴光喜が勝てば千秋楽が決戦になる。その方がいいな。

 明日の楽しみは把瑠都対鶴竜。朝青龍対琴光喜か。
 
十四日目
 予想通り千秋楽決戦

 両横綱が順当に勝ち、大方の予想通り千秋楽決戦となった。佐渡ケ嶽部屋の二大関は終盤崩れて場所を盛りあげるまでには行かなかった。
 14日目が終って琴光喜、日馬富士が9勝、琴欧洲が8勝、魁皇は7勝でまだ勝ち越しできず、千代大海は2勝で休場。なんともひどい大関連だ。それでも両琴は前半無敗でがんばってくれたからまだいいが序盤2勝3敗で早々と優勝戦線から脱落した日馬富士の罪は重い。魁皇も序盤3勝2敗だが、このひとはいるだけでいい置物みたいなものなので別格。同じく序盤2勝3敗の千代大海は置物でももう捨てたい置物(笑)。来場所またもどってくるのだろうか、大関という美味しい地位にしがみつきたくて。

 問題は優勝のしかただ。昨日もう書いたから書かないけど、またも決定戦で負ける白鵬だけは見たくない。本割、決定戦と連勝できるだろうか。

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 鶴竜、把瑠都を破る!

 ちいさい鶴竜が把瑠都を破って10勝目。技能賞確定の二桁勝利だ。
 じつは今日いちばん注目のこの取組、まだ見ていない。いまからヴィデオで見るところ。

 ワインを飲みながら寝転んでテレビを見ていたら、ふっと眠けに襲われた。ほんの一瞬うとうとしてしまった。まずい、寝てはいかんと目を醒ます。両横綱の勝負もしっかり見た。見すごした勝負はないつもりでいたのだが、放送終了時にアナが「今日は把瑠都が鶴竜に敗れて」と言うのを聞いてその一番を見ていないことに気づいた。
 いま取組表を見て確認すると6分ぐらい眠ってしまったらしい。そのあいだに楽しみにしていた把瑠都鶴竜戦があったのだ。録画しているかいいようなものの。

 このテレビを見つつのうとうとというのは気持ちが良い。つい先年知ったばかりだ。これを好きなオヤジの気持ちが初めてわかった。以前の私はそんなことは絶対にせず、起きているときはしっかり起きているし、眠くなったらきちんとテレビを消して寝た。そういうことをするオヤジを軽蔑していた。ところが一度味を知るとこれってたまらなく気持ちいい。たんに堕落しただけだが。

 これに関して不思議なのは、眠ってしまった時間の不確実さ、である。つい先日私は好きな番組を見つつこれをしてしまった。それは深夜の30分番組だった。番組が始まった。うとうとする。「いかん、寝てはいかん」と思って起きる。番組を見る。しかしまた眠くなってきて目を閉じてしまう。ハッと起きる。「見なくては」と見る。しかしまた眠くなって……を何度も何度も繰り返した。おそらく7.8回は繰り返した。覚えているのは、ずっとその番組をやっていたことである。何度も「うとうと」と「ハッ」を繰り返しているあいだ、それは私が見ようと思っている番組だった。だから朧気に思った。今日は特番で1時間番組なのだろうと。それにしても長い。まさかこんなマイナーな番組が2時間特番のはずもないし。
 番組が終ると眠けが覚めた(笑)。
 あとで調べるとそれはいつものように30分番組だった。つまり私がうとうとしてしまった時間、ハッと目覚めて「見なければ」としっかり見ている時間、ともにほんの数分でしかなく、私はそれをなんども繰り返していたことになる。

 1時間だけ寝るつもりで5時間も寝てしまうことがある。10時間も寝たような気がするのだが時計を見ると2時間しか寝てないこともある。
 そういう体験は昔からしてきたから知っているが、この「テレビを点けたままうとうとする」という体験はついこのあいだから始めたばかりなので、獨特の時間感覚が不思議でならない。中でも上記の30分番組での体験は、本人的には30分寝て1時間起きているを何度も繰り返しているぐらいの感覚だった。じっさいには3分程度の繰りかえしだったことになる。なんとも不思議である。
 しかしこの「テレビを点けたままうとうと」は言うまでもないことだが、どんなに気持ち良くても「疲れを取る睡眠」にはならない。ぜったいにやめたほうがいい。

 ところでぜんぜん関係ないどうでもいいことだが、昼間から寝転んでワインを飲みつつテレビを見ているとはいい御身分だと思われそうなので弁明しておくと、競馬中継を見ていたら、勝負は明日にしようと断念した馬券が見事に当たっていて、当初の予定通り10レース、11レースと転がしていたらともに的中だったからそれなりに金になった、おれってこんな運命なんだよなあ、これで馬券を買う明日はハズレるんだろうなあ、とヤケで飲んだ酒だった。ワインもワインというよりワインもどきのド安物である。決して安らかな酒ではないのである。と誰に弁明しているのか知らないが。(翌日記。馬券はほんとうにそうなった。ひどい話だ。)
 
千秋楽

 最悪の結果に

 以下は2ちゃんねるからのコピー。サンスポの記事らしい。最悪の結果にめんどうでもう書く気にならん。それでも把瑠都、豊ノ島、安美錦とか、記憶しておきたい何番かはあるのでズルしてコピー。

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琴欧洲は低く当たってきた日馬富士のまわしを肩越しに右上手に掴むと、体勢が低くなりすぎた日馬富士をひっくり返すような上手投げで下した。

魁皇は琴光喜の激しい突き押しをかわし、右上手を掴むと得意の上手投げで勝ち越しを決めた。
魁皇は5場所連続の8勝7敗。

今場所優勝争いを演じた把瑠都は稀勢の里のもろ手突きを難なくしのぐと左上手と相手の左手首をつかみ土俵外へ軽々放り投げた。
把瑠都は小結で12勝し、今後の大関獲りへの足場を固めた。
稀勢の里は負け越し。

豊ノ島は立合いで双差しとなり十分な体勢。
琴奨菊のお株を奪うがぶり寄りで攻め込むと、土俵際での投げの打ち合いをすくい投げで制した。

鶴竜は土俵際まで攻め込まれたが最後は安美錦を引き落とした。
鶴竜は11勝目、安美錦は負け越し。
琴奨菊、安美錦とも三役からの陥落が濃厚になった。

再度の上位進出を目指す豪栄道は首投げで垣添に勝ち、白星を二けたに乗せた。
栃煌山はすばやく二本差して高見盛を寄り切り11勝目。
再入幕の北勝力も豊真将を力強く押し出し11勝。
武州山は阿覧の注文相撲の前に叩きこまれ5敗目を喫し、敢闘賞を逃した。

時天空は嘉風を引き落として千秋楽で勝ち越し。
黒海も給金を直した。
初日から5連勝した将司は後半に崩れて負け越した。
白鵬から金星を奪った翔天狼は13敗。

三賞は鶴竜が4度目の技能賞、把瑠都が4度目の敢闘賞を獲得した。
十両は玉鷲が海鵬を押し倒し、11勝4敗で優勝した。


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 初場所の白鵬対朝青龍戦、朝青龍が優勝して奇蹟の復活と言われた千秋楽の本割、決定戦をいま見ると(今日流していた)不自然な気がする。
 本割で朝青龍は棒立ちの立ちあい、簡単に白鵬に寄り切られている。これでともに14勝1敗。白鵬が追いついた。そして決定戦。今度は一方的に朝青龍が責めて勝っている。勘繰るなら「本割ではおまえに負ける。その代わり優勝決定戦ではおれに勝たせて優勝させろ」との約束があったかのようだ。「結果として星はともに14勝1敗。おまえは横綱決戦の本割に勝っている。面子は立っている。おまえは若い。これからいくらでも優勝できるんだからここはおれに優勝させてくれ」とでも言われたのか。私がいまもって腹立ってならない「朝まで続いた朝青龍のどんちゃん騒ぎに、深夜になって白鵬が駆けつけた」のもこの場所だ。

 そしてまったく同じ展開になった今場所。本割は白鵬が圧勝する。朝青龍はなにも出来ず寄り切られ、すでに足が出て勝負は決まっていたのだが、それを知らない白鵬は左上手投げでぶん投げた。

 さて重要なのはこのときの両者。白鵬からは「どんなもんだ、今場所はぜったい優勝するんだ、もうあんな惨めな思いはしたくないんだ、しないんだ!」という気魄が伝わってきた。一方朝青龍からは、彼には珍しく覇気が消え、「いやあ、こいつ強くなったわ、もうかなわんな」という気弱な表情が見えた。それは花道を引きあげるときにも、控えで決勝戦にそなえているときにも伝わってきた。だから私はこれで完全に「白鵬一強時代」が始まるのだと思った。朝青龍の14連勝は花火の最後の輝きなのだと。

 なのに決定戦になったらいきなり朝青龍が速い相撲で白鵬を振りまわし、必死に耐える白鵬を右上手投げ(途中でまわしから手が離れたので決まり手はすくい投げ)で転がしたのでおどろいた。白鵬は終始後手に回っており、見応え充分のいい相撲だったが、内容はみな朝青龍のものだった。

 朝青龍は勝利のガッツポーズ。もちろん禁じられているから、あとで朝潮が理事長に謝ったとか(笑)。なおらんものはしょうがない。

 花道で蛇革のスーツを着た、まだら金髪の、いかにも日焼けサロンで焼いた色黒男が抱きついて祝福する。大袈裟にふたりで抱きあって喜んでいる。カメラはそれを映している。長渕剛だ。
 しかしアナは長渕を知っていたろうがそれに触れなかった。こういうとき思わず、「これあ、あ、歌手の長渕剛さんですね。朝青龍の優勝に駆けつけてきたようです」ぐらい言ってしまうものだが、一切ふれなかったのは小気味良かった。それはアナも、前回きつく言われて反省したはずなのに、またも土俵上で万歳ポーズを二回もした朝青龍にそれなりの反感を持ち、負けた白鵬に同情していたからだろう。ガッツポーズと言えば、朝青龍は寝ころがってすでにやっていた(笑)。白鵬をぶん投げて自分も土俵上に倒れた。そのとき土俵に倒れた状態でガッツポーズをやっているのである。このひとらしい。

 朝青龍の熱心なタニマチは、細木数子、アドマイヤの馬主・近藤利一、そして親友に長渕とじつにわかりやすい(笑)。みな同じような性格だ。敵も多い。そういうひとって朝青龍が好きなんだろうな。
 一方、白鵬はキャイーンのウドちゃんに「おともだちになってください」なんてやってた(笑)。これまた白鵬らしい好みだ。ってもうやけくそで「(笑)」ばっかし。

 今夜の祝賀会にも白鵬は行くのだろうか。なんだか応援するのがばかばかしくなってきた。

 解説の北の富士も舞の海も、勝負前から「白鵬が勝たねばならない。勝って優勝しなければならない。そうでなければ稽古の意味がなくなってしまう」と、とりようによっては公平でなければならない解説者が片方の力士に入れこむという問題発言を連発していた。それが相撲の道のはずだった。白鵬がそれを体現し、大団円になるはずだった。だが結果は朝青龍が勝ち、誕生日に優勝、しかもあの北の湖と並んで史上3位タイの優勝回数という「朝青龍デー」になってしまった。憎まれっ子ますます世にはばかり、大島を始めとする協会幹部は苦虫を噛み潰すばかりである。
 朝青龍が勝って優勝が決まってからも、ふたりは「立派だ」とは一応形式的に誉めたが、なんとも言えない重い気分を振りまいていた。全国で快哉を叫んだのは憎まれっ子朝青龍のファンだけであり、多くの相撲ファンがこの結末を憂いたろう。

 すべて丸く収まってめでたしめでたしにならないのは、それはそれでおもしろい。だからまあこれでいいんだけど、白鵬がまた朝青龍の祝勝会に駆けつけたという記事だけは読みたくない、と思う。
 
総論
 白鵬という横綱……
 
 年6場所の内5場所が終った。ここまで白鵬の成績は71勝4敗。全勝が1回。14勝1敗が4回。朝青龍の年間最多勝84勝6敗を凌ぐ勢いだ。来場所13勝2敗でタイ記録。14勝以上なら新記録になる。なにしろ朝青龍の84勝という記録が北の湖の82勝を抜く大記録だった。北の湖のそれは抜かれまいと言われていた。あの大鵬ですら81勝、千代の富士、貴乃花も80勝が精一杯なのだ。いかにすごい数字であることか。それを白鵬は超えようとしている。なのに……。

 今年5場所すべての優勝争いに絡み、2場所優勝。残り3場所はすべて相星の優勝決定戦になり、3回とも敗れている。なんという勝負弱さであろう。なさけない。それが今場所の総括。

 先場所案じたように、記憶ではなく「記録に残る横綱」になってゆくのか。しみじみ脱力した。

 いまネットで知ったが、5場所連続14勝1敗以上というのは新記録なのだそうだ。大鵬や北の湖、千代の富士ですら出来なかった記録を達成しているのか。偉大なんだけど、なんというか、白鵬ファンとしてはむなしい……。

 というところでまた新たな智識を得る。
決定戦で年間3敗するのは、1947年6月に決定戦制度が導入されて以来初のケースだ。(9/28 サンスポ紙面)
 だよなあ、こんな話、記憶にないもの。たしかに確実に記録に残る横綱になっている。

 ついでにまた千秋楽で琴光喜から御約束の勝ち越しをした魁皇は「5場所連続8勝7敗」だと知った(笑)。盛りを過ぎた貴ノ花(初代)が9勝6敗が多く「クンロク大関」と嗤われたものだが「ハチナナ大関」か。まあこんな大関と比べたら立派としかいいようのない成績なのだが。



 把瑠都の能力

 把瑠都が稀勢の里を抛り投げたのだけが唯一の快感になる。あれで把瑠都が7勝7敗の稀勢の里に負けてやり、関脇の地位を保たせてやっていたらどっちらけだった。すでに11勝をあげているから相撲的常識で言うなら稀勢の里が勝つのである。なのにおとながこどもを抛り投げるような怪物相撲。溜飮が下がった。
 なんとしても日本人の大関をと願う相撲ファンからしたら、その一番手の候補をエストニア人が投げすてて溜飮が下がるというのは国賊ものか(笑)。でもそれが私という相撲ファンだ。



 小結で7勝7敗の安美錦がすでに10勝をあげている鶴竜に負けて陥落もスッキリしてよかった。いい相撲だった。この辺にも談合はないようだ。安美錦は小結は陥落するが幕内上位はまちがいないから来場所も楽しませてくれるだろう。

 けっきょく、稀勢の里、琴奨菊という両関脇は負け越し、小結把瑠都は12勝の大勝、しかも内容がいい。幕下3枚目の鶴竜が11勝。ふたりの関脇と小結ひとりが陥落。把瑠都の東関脇は当然として、その他がみな負け越しているので幕内3枚目から一気に鶴竜が西関脇になるのか。あとはどうなのだろう。4枚目の時天空、5枚目の豪栄道、豪風が勝ち越しているが、これが一気の小結はないだろう。7勝8敗とひとつだけ負け越しの稀勢の里が小結だとしてあとひとりは誰だろう。

 いま検索して毎日新聞の来場所番付予想を見つけた。5枚目の豪栄道が10勝しているので東小結、西小結に陥落した稀勢の里、のようだ。毎場所、千秋楽にこの「来場所番付予測」が欲しかった。でもいつも見るサンスポもニッカンスポーツもネットでは載っていない。そうか「毎日新聞」がネットでも載せているのか。来場所から見ることにしよう。

 蛇足の蛇足。「来場所番付予測」はいわゆる大新聞のスポーツ欄には必ず載っていた。こどのころからこれを見るのが好きだった。もちろん紙媒体の話である。スポーツ紙はどうなのだろう。載っていないものが多い気がする。もちろんこれも紙媒体の話。ネットではとんと見掛けることがなく、だいたいの予測は出来るものの自信がないときは新聞紙の意見が欲しかった。毎日新聞が毎場所やると知って安心した。来場所から確認しよう。



 いずれにせよ来場所の注目が両横綱以外は把瑠都と鶴竜であるのはたしか。それは北の富士も舞の海も口を揃えていた。鶴竜は関脇で勝ち越せるだけの力をつけつつある。把瑠都の期待はもっと大きい。大関陣は話にならないから両横綱との優勝争いに絡んで欲しい。来場所は東の関脇なので取組が今場所の東小結とはまったくちがう。前半は下位の力士、後半で横綱大関だ。そのときに乗っていたら初の横綱越えがあるかもしれない。まだ両横綱には一度も勝っていない。

 HDDレコーダに録画しておいた先場所と今場所の相撲をみな削除した。しばらくは相撲のことには触れたくない。白鵬はどれだけ多くの相撲ファンを失望させたか気づかないのだろうか。なんとも後味の悪い場所になった。




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感謝して記します。

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