平成十九年九州場所覚え書き
2007/11/11〜
初日
把瑠都、万全!

 エリザベス女王杯が終ったあと、PCに向かっていたらいつのまにか午後四時を過ぎていた。まずいと焦り急いでテレビをつける。見たいのは把瑠都だ。もう終ってしまったか。するとまるで計ったように把瑠都の制限時間一杯だった。いいタイミング。
 前頭十六枚目。一番下っ端。幕尻である。
 前に出て、春日錦を簡単に押し出す。慎重に行け。それだけで全勝だ。


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 若ノ鵬の大物度合い

 新入幕若ノ鵬の十九歳と何ヶ月というのは史上十番目の若さなのだとか。アナがそれを言い、解説の北の富士に振る。期待の言葉を待っている。しかし北の富士はさほどのことは言わなかった。白鵬や把瑠都のときとは明らかに違っている。その気持ちがわかる。私もそうだから。
 まだ入門してたった二年。ロシア人。体もあり、マスクもいい。いかにも私好みなのだが、どうにもこの人に横綱大関の画が描けない。相撲がつまらない。だけどそれはまだなにも覚えていないのだからしかたないのだが、白鵬琴欧洲把瑠都には、それを超越したものがあった。荒削り、未完成の中に、わくわくさせるものがあった。それを若ノ鵬からは感じない。これから大化けして、私には先見の明がなかったと反省させて欲しい。

 同じロシア出身で私生活でも世話になっているという先輩の白露山との一戦。すばらしい熱戦だった。土俵下に突き落とした白露山に、若ノ鵬が手をさしのべる。相撲では珍しく、握手のようながっちりと手を握る形になり、若ノ鵬が引っ張り上げる形になった。拍手が沸く。
 新入幕初白星ということでインタヴュウ。息が切れてうまくしゃべれない中、一所懸命、私生活では兄弟だが土俵の上では別、でも土俵を降りたらまた兄弟、というようなことをしゃべっていた。まだ半端ではあるが、来日二年を考えたら充分に上手な日本語だった。

 同郷の私生活でも親しい力士同士だから、典型的な無気力相撲になりやすい取り組みである。それをふたりは稀に見る熱戦にした。観客の惜しみない拍手がその価値を語っている。相撲に未来はあるとうれしくなる一戦だった。


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 白露山のニセ髷が(笑)

 毎度書くように、白露山の頭頂に毛はない。二十五歳にしていわゆる「デンスケ禿げ」である。頭の周囲にしか毛はない。よってチョンマゲは結えない。後頭部の一部の毛を長く伸ばし、それを三つ折り(笑)にして、頭頂部まで引っ張ってチョコンと載せている。チョンマゲもどき。接着剤だろうなあ。でなきゃくっつかない。
 若ノ鵬との激しい熱戦でそれがとれてしまった。ニセチョンマゲがとれてただの禿頭になっていた。せつない。

 誰もがこの話題に触れないようにしているのが、よけいに。

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 栃乃洋溌剌

 栃乃洋が動き回る激しい相撲の末、豪栄道を破った。
 沢井が小学生のころ、栃乃洋はもう幕内で活躍していたろう。新鋭と老雄の対決である。
 老雄が意地でも若手に負けまいとがんばった、と書きたいが、それともすこし違うように思う。なんというか、伸び盛りの若手と取ることが楽しくてしょうがない、そんな感じを受けた。いい相撲だった。

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 白鵬 安馬
 安馬が琴光喜を破る。今場所の安馬は楽しみだ。
 白鵬が琴奨菊に敗れる。いつもの白鵬のだらしなさだが、琴奨菊がベストの相撲を取った。

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 なぜ龍二さんに勝てないんだ豊真将

 豊真将が龍二さんのいつもの相撲に翻弄される。押さば引け、引かば押せの極意を会得している龍二さんが変幻自在の達人とも言えるが(いわん!)、この辺を白鵬あたりは軽々と超えていった。まだ豊真将には無理なのか。龍二さんのヘナチョコツッパリをこらえていれば、あちらから引いて自滅してくれるのだが、いいように翻弄されている。なんとも歯痒い。
 二日目  把瑠都、桁違い!

 きょうもまた相撲を忘れてPC作業をしていた。それは今場所の相撲中継がまだ体に馴染んでいないことでもあるが、同時に今場所にそれほど興味がないからでもある。興味のある場所は昼から見ている。午前中からそわそわしている。今場所はこの覚え書きも休もうかと思ったほど興味がない。
 昨日に続きまた四時過ぎに気づき、「しまった!」と急いでテレビをつけた。するとまた把瑠都だった。ついている。見たいのはこれだけなのだから。

 今場所一緒に入幕した若麒麟との一番。若麒麟は新入幕。把瑠都は再々入幕。
 若麒麟の所属が尾車部屋になっている。大麒麟が廃業して移ったがそこまで記憶していなかった。そうだったか。琴風のところである。亀田三兄弟の興毅、大毅、和毅は父親が大ファンだったという琴風の四股名・琴風豪毅からとっているのだが、どうもあの父親と琴風が結びつかない。

 若麒麟といえば、新十両になり若麒麟といういい名前をもらったときのよろこびいっぱいの会見を思い出す。それから一頓挫あったが期待通り入幕してきた。初日は若手の期待株栃煌山を破っている。
 しかしまあ桁違い。相手にせず把瑠都圧勝。一方的に突き出した。観客席までふっとんで若麒麟は泣きそうな表情。若麒麟はわるくない。把瑠都はこんなところにいる力士ではないのだ。横綱大関に負けたようなものだ。
 アナが、「このまま勝ち進んで優勝争いに絡んでくるとおもしろいですね」と言う。解説が同調する。幕尻の力士にだ。それが把瑠都である。
 怪我をしないよう、前に出る相撲を心がけているようだ。そのほうがいいと解説の音羽山も言う。でも若気の至りでまたつまらない負けかたをするだろう。先場所の若ノ鵬、千代白鵬がそうだった。二敗している。全勝優勝でなければならない。今場所どこまで勝ち進み、どれぐらい上位と当てられるか。楽しみだ。

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 露鵬、つり上げる!

 昨日は弟の白露山を破った若ノ鵬を、今日は兄貴の露鵬が豪快につり出した。解説も言っていたが、160キロある若ノ鵬をあんなに豪快につり出すのは今の日本の力士では無理。ロシア人の怪力である。
 解説の玉垣が「相撲にはまだ未完成の部分があり、こういうレスリング出身の人によってまたあらたな取り口が開発されるのではないか」と言っていた。なかなか含みのあることばである。

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 安馬、のど輪一直線!

 安馬が琴欧洲にのど輪を決め、一直線に押し出した。安馬の好調、膝の怪我による琴欧洲の不調があるにせよ、なんとも鮮烈な一戦だった。安馬、大関戦二連勝。
三日目  把瑠都、栃煌山を相手にせず

 奥多摩から帰ってきて、太陽エネルギーをいっぱい吸った布団に横になっていたら猛烈に眠くなってきた。それが午後三時。毎日午前二時起きなので眠くなる時間でもある。なんとか把瑠都戦のまえに起きだし顔を洗う。
 楽勝。まあこれも当然だ。この慎重な取り組みがいつまで続くか。必ずだらしないことをして星を落とすだろうから、毎日目が離せない。

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 稀勢の里、龍二さんに10連敗

 うっちゃったかに見えた。物言いもついた。でも龍二さんの勝ち。これで稀勢の里は対千代大海10連敗。一度も勝ってない。そういや白鵬も日の出の勢いのころ、若の里に6連敗だったか、どうしても勝てない時期があった。でも白鵬は上位陣をぜんぶ負かしたりしながら唯一若の里が苦手だった。それとはちがう。
 こうしてみると、昨日の豊真将もそうだが、ひとつの壁として千代大海が存在しているのはたしかなのだろう(笑)。あの相撲を突破して行けるかどうかが試煉なのだ。

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 魁皇、二勝目

 今日は珍しく横綱大関全員安泰の日。さほど感激する一番もなかったから魁皇のことを書いておこう。これダジャレなっているな。

 あ、連日高見盛がいい相撲を取り盛り上がっている。三連勝。でも三連敗だったとしても褒められるいい内容で場内を沸かせている。これは後日書こう。

 今場所が魁皇の最後になるかもしれないと地元九州は異様な盛り上がり。二日目に白星を挙げて武蔵丸の記録を抜いた。4位。
 優勝を五回もして横綱になっていない大関はいないし、記録の上も下も偉大な横綱ばかりだし、魁皇自身は忸怩たる面もあって記録のことには触れようとしない。いや触れられても避けてしまう。でも無事これ名馬的な意味合いでは偉大な記録ではある。とにかくもう何度も書いているのだが、同期の若貴がさんざん大活躍をし、もうピークを越えたかというとき、二十七の魁皇はまだ関脇だった。それから大関になって、結果的にあの貴乃花の勝ち星を抜いたのだから、これはこれで感無量の大記録である。

 今日は同じ九州出身の琴奨菊との取り組みだったのでさらに盛り上がっていた。地元のこういう応援はいいなあ。名古屋場所もそれなりだが、やはり九州がいちばんだ。大阪がそうでもないのは地元力士がいないからか。いや豪栄道なんて大阪だよな。埼玉の栄高校に行ったからあいされてないのか。横山やすしのような口の利き方をするこってこての大阪人力士が登場したら大阪場所でも声援が飛ぶのか。

 左太股を痛めていて魁皇は踏ん張りが効かない。場所前の練習もほとんど出来なかった。白星先行だが予断を許さない。どうなることやら。勝ち越して続けるもよし、負けて辞めるもよし。

四日目  把瑠都、若ノ鵬に圧勝!

 把瑠都と若ノ鵬じゃものがちがうので話にならない。ところが先場所、把瑠都はだらしない相撲を取って若ノ鵬に負けた。それで連勝が止まった。若ノ鵬はガッツポーズ。
 しかも力負けなら納得もするがどうしようもない半端な相撲をとっての敗戦だった。たまらん気分になった。だから今場所、把瑠都の相手で気になっていた一番手が若ノ鵬だった。負けることを心配しているのではない。先場所の負けで対戦成績は一勝一敗。おまえなんかとは力が違うんだよと、そんな勝ちかたを期待していた。
 右四つで攻め込まれたがうまく巻き替えて諸差しになる。一気に突き飛ばして若ノ鵬は三列目のお客さんのところまで転げ落ちていった。痛快。
 把瑠都は相手を案じることなくさっさともどる。非情。そのあと、勝負のあとの礼で、若ノ鵬は一応ちいさく首を下げはしたが(豊真将の美しいお辞儀と比べたら礼には入らないお粗末なもの)、把瑠都に外人力士特有の「ガンとばし」をした。ふてくされた顔で相手を睨みつける。これをよくやるのは若ノ鵬の兄貴分露鵬だ。把瑠都は無視したが気づかないはずはない。これはマニアだけの気づく(笑)ちいさな遺恨である。

 思えば把瑠都はエストニア出身。ソ連崩潰で喜び勇んで獨立した国だ。ソ連邦のひとつにされていたがロシアが嫌いで嫌いでしょうがない国である。あの近辺の国でロシアを好きな国はない。トルコの親日だって憎いロシアをやっつけてくれた東洋の国、という敵の敵は味方的な感覚だ。バルト三国はもちろん北欧の国でもロシアを好きな国はない。フィンランドなんて恨み骨髄である。それだけひどいことをロシアはしてきた。
 エストニア把瑠都対ロシア露鵬、白露山、若ノ鵬か。楽しみだ。
 いま午後四時半、リアルタイムで書いた。きょうは良い取り組みが多いのだが、私の今日の相撲観戦はもうこれで半分以上終った気分。

 今日もまたアナが「このまま勝ち進んで優勝争いに」と話を振り、解説が同調していた。幕尻なのに。まだ4連勝しただけなのに。
 誰もが把瑠都が横綱大関クラスの実力であることを知っている。同時にヘンな相撲を取り、怪我をしてまた明日から休場のこわさも感じている。
 私もまたそれをしないかと、毎日冷や冷やしてながら見ている。


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 安馬、惜しい!

 安馬が九分九厘勝っていた星を落とした。惜しい。相手は龍二さん。
 龍二さんに投げられた安馬は最後の最後まで勝負を捨てなかった。かつての若貴がやった究極の粘り「顔から落ちる」である。手を出さない。手で顔を庇わない。勝敗は微妙になった。軍配は千代大海にあがる。
 礼をしても安馬は不満げだった。物言いはつかない。それでも土俵から降りるのをためらった。ほんの一秒、二秒だが。それをアナは勝っていた星を落としたから悔しいのだろうと解説したが、そうではあるまい。あれは行司差し違い、最悪でも物言いが着くのでは、の期待だった。それはヴィデオを見ると解る。千代大海が投げた股のあいだからカメラは安馬を見ている。一瞬掛け投げのような体勢になり、ふたりは大きく股を開いて落ちていった。千代大海の股のあいだから見える安馬は、投げられながらしっかりと目を見開き、顔から落ちながら千代大海の手を見ている。千代の右手のほうが自分の顔より先に土に着くのを、目を見開いて確認している。だから差し違いか、悪くても物言いが、と思い、不満を顔に出したのだ。それは土俵を降りた今でも変るまい。付き人に「おれが勝っていたよな」と語っているかもしれない。

 だが安馬よ、それは違う。ヴィデオをコマ送りすれば何フレームかの差で安馬が勝っているだろう。千代大海のほうが先に右手を着いている。それは確かだ。だけどそれは庇い手だ。体勢は完全に千代大海に安馬が投げられている。安馬の体は裏返っていた。九分九厘勝った勝負だったが、土俵際に限って言えば、安馬は千代大海に投げられた。千代大海の勝ちだ。あれで千代の手が先に着いていると物言いやら取り直しになったなら、あの問題の「朝青龍対琴ノ若戦」と同じになってしまう。だから安馬よ、今日の勝負はおまえの負けなのだ。

 それにしても惜しい。あそこで龍二さんがあんな芸が出来るとは……。
 偉大な壁である。そろそろ息切れしそうだが(笑)。まだ大丈夫かな。

 柔道の内股

 土俵際、安馬を投げたワザは掛け投げのように足を使っていた。
 今日の読売新聞によると「とっさにむかしやっていた柔道の技(内股)が出た」ということらしい。なるほど、内股と言われればたしかにそんな感じではあった。


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 白鵬完勝、もう大丈夫!

 十両時代から一途に白鵬を応援してきたものとして、なんとも情けない敗戦に稀勢の里との三敗がある。勝っている勝負を、土俵際でズリっという感じで自分から倒れた。上半身に足が着いて行かない、という感じで。白鵬の致命的缺陥のような気がして思い出すのもいやだ。

 今日が八度目の対戦。ここまで白鵬の4勝3敗。とにかくその3敗の内容が悪い。
 ここ四戦のヴィデオが流れた。二戦が稀勢の里の勝ち。私の言う見たくもない相撲。ズル、ベチャっと最後に自分から土俵にうつぶせに倒れている。
 あとの二戦は白鵬の勝ち。特に先場所は完璧。

 今日も激しい相撲になったが、白鵬は落ち着いて捌き、土俵際も腰を下ろしてあわてることなく寄り切った。稀勢の里を相手に、先場所と今日のような相撲が取れるならもう二度と稀勢の里に負けることはあるまい、とすら思える内容だった。負けた三戦も自分に負けているのだ。ほっとした勝利だった。

 しかしまあ地元贔屓的に考えると、先祖代々茨城の人間なのに茨城出身の期待の星よりモンゴル人青年を応援しているのだから私は変人なのだろう。でも子供のころから力道山よりルー・テーズのほうが好きだったから、これはこれで筋金入りである。


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 朝赤龍に朝青龍?

 相撲好きの友人IJがメールをくれた。
今、ウェス・モンゴメリーを聞きながら仕事をしつつ、
大相撲のダイジェストを音無しで見ていて思い出したのですが、
今日、朝赤龍が時天空に勝った取り組みで、
行事が勝ち名乗りをする際に、「朝青龍う〜」って
言っていたんです。
朝赤龍が手刀を切りながら「なんだよ、こいつ」ってな顔で
行事を見ていたんですよ。実況のアナも柴田山さんも
まったく気づいていないようでしたが、たしかに
間違っていたんです。

 ぼけっとしていたので気づかなかった。IJの言うことだから間違いない。どこかで話題になっているはずだ。2ちゃんねるの「相撲板」ならあるか。だけどなんというスレにあるだろう。「朝赤龍スレ」なら確実にあるだろうけど、そんなのあったかな?

 行ってみたら「萌える行司スレ」というのがあった(笑)。まったくなあ。覗いてみると、みんなもう行司に詳しい詳しい。式守と木村しか知らない私なんかとは桁違い。趣味はいろいろだ。探してみたら、あった。ほんのすこしだけど、IJの聞き間違いでないことを証明していた。


467 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2007/11/14(水) 17:28:38 O
玉光、朝青龍って言ったな

468 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2007/11/14(水) 17:29:07 0
かわいそうな朝赤龍…

469 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2007/11/14(水) 18:06:46 0
間違いない、赤を青と呼びあげたな。


475 名前:待った名無しさん[sage] 投稿日:2007/11/14(水) 19:51:25 0
呼びあげの時だけかと思ったら、勝ち名乗りも「青」だったのね。
ダシは昔も、ヨダユに朝青龍と間違えて勝ち名乗りを受けたことがあった。

 
この475情報により、朝赤龍が朝青龍とまちがえられたのはこれが初めてでないことを知る。しかし詳しいなあ(笑)。

479 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2007/11/14(水) 20:40:17 O
>>469
なに、櫻井さんも武双山を武蔵丸と勝ち名乗りを挙げたことがあるぞ伊之助時代に


 そうか、武双山も武蔵丸と言われたことがあったんだ。行司マニアはそこに注目しているからこんなことに気づくのだろう。

 IJはこれを「小ネタ」と書いてきたが、いやいや大ネタである。この場合、罰則はあるのだろうか。めったにないことである。聞き逃してくやしい。

 と、そこにまた情報。

480 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2007/11/14(水) 20:49:49 0
あーあ、記事になってる

出場停止では?行司が朝赤龍を3度も「朝青龍」と呼び上げ
http://www.yomiuri.co.jp/sports/sumo/news/20071114i513.htm


出場停止では?行司が朝赤龍を3度も「朝青龍」と呼び上げ

 朝赤龍と時天空の一番をさばいた三役格行司の木村玉光が痛恨のミス。勝ち名乗りを与える場面などで計3度、出場停止中の朝青龍の名を呼んだ。

 訴えかけるような朝赤龍の視線にも全く気づかず、「アサショーリュー」。会心の相撲で勝った朝赤龍は「最初から間違っていた。(懸賞金を)受け取るのをやめようかと思ったくらい」と、ぶぜん。

(2007年11月14日19時39分  読売新聞)


 日本一発行部数の多い新聞(世界一か)に「出場停止では?」とまで書かれてしまった。どんな罰則が下るのか。
 私はこの記事を書いた読売の相撲担当記者に好意的だ。というのはこれ、注目していないと気づかないことだからである。ただし生き馬の目を抜く記者世界であるから「他社のやらないことをおれがやる」「俺様が天誅を下してやる」との視点で書いた可能性も高い。でも私はこの記者が力士の気持ちをおもんばかった真の相撲好きであると信じる。

 この問題、NHKも無視は出来まい。今日の中継の中で触れる箇所があるはずだ。どうなることやら。



 注意だけのようだ

 ということもあり、五日目の朝赤龍の相撲には注目していた。するとやはりアナがそれに触れた。「昨日、行司の玉光が朝赤龍を朝青龍と三回まちがえた」と回数まで言い、「今日の午前中、審判部に呼ばれて厳しく注意を受けた」とのこと。減俸とかはないようだ。人のやることだからまちがいはしかたない。

 ところで、肝腎の力士すら入門希望者ゼロのご時世、行司や呼び出しの入門希望者はいるのだろうか。


五日目  第二の白露山発見──しかも日本人

 昨日、新十両紹介に磋牙司(さがつかさ)が出ていた。東洋大出身の二十五歳。身長167センチ、現在関取衆の中でいちばんちいさい。新十両まで三年半かかっている。小兵が活躍してこそおもしろい相撲界だ。がんばってほしい。日本人である。

 この人も髪が薄い。インタヴュウのときはきれいに梳いて整えた髪だったが、それでもほとんど地肌が見えていた。それは「今日の一番」として紹介された相撲であらわだった。髪が乱れる激しい相撲になったので、頭頂部にはもうほとんど毛がないのが見えていた。
 いま十両下位の番付だが、このまま出世して幕内に入ってきても、あの髪は三十まで保つまい。

 とこのように毛の話を書いていると、「テメーのハゲを心配しているのでは」「同病相憐れむなのでは」と思われそうだが、そうではない。この「髷が結えなくなったら引退」という規定か内規か知らないけど、そのことを子供のころから知っていて興味を持っていたのだ。でも子供心にも「三十歳の若さで引退しなければならない世界」というのは特殊だったから、「チョンマゲが結えないほど禿げたら引退しなければならないといっても、そんなに若く禿げる人などいるはずがない」と思っていた。実際そうだった。アブナクなってきた力士はもう三十過ぎの引退間近だったし、そうなるまえにみなやめていった。

 しかしここに来て、「チョンマゲが結えないのに力士を続けているひと=しかもまだ若い=白露山」という、長年の相撲好きとしても初めての経験をしているのである。そこに「第二の白露山候補=しかも日本人」を発見したのだから書かずにはいられない。

 白人は禿を差別しない。親からの遺伝で不可抗力だからだ。対して自力でコントロールできるはずの肥満と喫煙は侮蔑の対象になる。(真偽はともかくとりあえずの切り口。)でも世の中には、毛がないと出来ない競技がある。白露山の胸中を思うと胸が痛む。


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 高見盛、休場

高見盛が休場、嘉風戦で右足首痛める…大相撲九州場所

大相撲の西前頭8枚目の高見盛(31)(青森県出身、東関部屋)が、福岡国際センターで開催中の九州場所5日目の15日朝、日本相撲協会に休場届を出した。
初黒星となった前日の嘉風戦で右足首を痛めた。全治6週間と診断されたが、師匠によると、腫れが引けば再出場する可能性もあるという。高見盛の休場は2001年初場所以来、4度目。(2007年11月15日11時12分  読売新聞)


 昨日、攻め込んだが、土俵際、嘉風にうっちゃられて惜しい星を落とした。脚を引きずり、痛そうに引き上げていった。そのあとすぐ「脚はぶつけただけ。たいしたことはない」とレポートが入ったので安心していたが……。
 せっかくの勝ち越しのチャンスのある場所だったのに。残念だ。悔しいだろうなあ。六年ぶりの休場か。六年間、勤続だったんだなとあらためて感激する。この人の存在価値は絶大だ。
 高見盛がいないだけで幕内取り組みの盛り上がりが半分になる。テレビをつけたまま何かしていても、獨特の歓声で高見盛の出番だとわかる。貴重なひとだ。勝ち越せそうだから腫れが引いたら出てきそうだけど、無理をしないで欲しい。力士は古傷を負ったらおしまいだから。

 この件に関して友人IJがくれたメール。

私は高見盛の挙動に受ける観客の笑顔が好きでしてね。
老若男女、誰もがみな実に嬉しそうで、
世の中善男善女ばかりでよかったと錯覚するぐらいです。
どんな悪人でもにっこりさせてしまう力がありますね。


 ほんとにそうだね。入場するときから沸かし、あの仕切り、相撲、そして花道を引き揚げるときの、勝って胸を張り、負けてしょんぼりまで、エンタテイメントを知り尽くしたスターである。そして天然なのがいい(笑)。同じ形に北桜がいるがこちらは演技が見えてしまう。北桜もいい人だろうけど、高見盛のはまた格別だ。恋人なし歴は生まれてからずっとだそうだけど、誰かいい嫁さんはいないものか。

 世の中にはいろんな人がいる。いろんな人がいていい。みんなが白と言うと反射的に黒と言う人がいる。みんなが黒なら必ず白だ。そんな人の存在も必要なのだろう。だけど高見盛の魅力を認められずケチをつける人はつまらない人だと思う。


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 把瑠都完勝にも師匠は厳しい

 エストニア把瑠都が北オセチア白露山に完勝。しかも両上手で寄り切るという珍しいもの。豪快だ。でかい人しかできない。白露山もでかいのに。
 アナは絶賛。私も慎重で確実でよい相撲だと思った。なのに解説が「立ち会いで、もういっぽ踏み込みが足りない」とキツい意見。えらそうに、いったいだれだ、と思う。すると解説が「尾上親方」と言う。ああ、師匠の濱ノ嶋である。まあ濱ノ嶋もついこのあいだまで幕内で相撲を取っていて親方というイメージもないが。師匠なら厳しく言うのもいい。言って当然だ。
 そこに控えにもどった把瑠都のコメントが届く。「立ち会いで、もういっぽ踏み込まないと」と反省していたとか。師匠と同じ。師匠と弟子はさすがに同じ考えだとアナが感心。私も感心。

 尾上が心配しているのも怪我。本人もそうだろう。けっきょくそれにより、100の力のある人が60の力を出して勝ち進む、のような形になっている。それでも楽勝しているのだからいかに強いかだが、以前のはりま投げのような「この世のものとは思えない怪力」に驚嘆した私には物足りない。しかしそれは相撲のリクツを超えた無茶な相撲であり、それで怪我をしてエレベーター力士になってしまったのだから、今の相撲を受け入れねばならない。

 ヴィデオを収集するという趣味がない。今後もこういうことに落ち着くとわかっていたなら、把瑠都のあの「相撲漫画でしか見られないようなとんでもない相撲」を録画蒐集するのだったと悔やまれる。
 順当に出世して人気を得、「把瑠都──怪物伝説」なんてDVDでも出る日まで待つしかないのか。

 怪我をしないのがいちばんだから今の取り口でよい。と思いつつ、かつての無茶な相撲に思いをはせるという矛盾。

 今日までの把瑠都の幕内成績は、41勝26敗43休である。まだ勝ち星より休みのほうが多い。26敗には休場による不戦敗がみっつ含まれている。
 それを思えば、無事に出ているだけでいいのか。


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 琴欧洲の悩み、重症

 覇気のない相撲で黒星が先行した。このままで行くと負け越し、来場所、初の角番が現実になる。よほど膝の具合が悪いのだろう。
 それとはまたべつに、相撲の難しさという迷路に入ってしまったように思う。

 いま若ノ鵬が195センチ、160キロという大きな体で変化したりしている。相撲を始めて二年半、いまはなんでもやってみたいだろう。かつての琴欧洲も白鵬もそうだった。いくら師匠からまっすぐ行けと言われても、変化ワザというのがあるだから、やってみたくなる。外国人力士の俊英は恵まれた体力を活かし、悩むことなく一気にあがって来るが、さすがに幕内上位に行くと「壁」にぶち当たる。体力だけでは勝てない世界がある。そういえば黒海も、私はノンストップで大関ぐらい行けるのではないかと思ったものだった。露鵬ももっともっと強くなると思っていた。それが歴史ある相撲の奥深さだと思えばうれしくもなる。
 
 琴欧洲の悩みは、好きな力士なので心配だ。相撲がちいさくなってしまった。この人に朝青龍の気の強さがあれば無敵なのに。

六日目  把瑠都、お約束の敗戦

 そろそろかと思っていたら思った通り小兵の垣添に把瑠都が負けた。苦笑しつつ下がってゆく。
 リポートによると、把瑠都は「負けたけど前に出たからいい」と悔いなし。勝っても険しい表情を崩さなかった垣添は、下がってからも厳しい表情のままだったとか。
 ああいうアッサリ風味の相撲じゃ上位には通じない。とにかく下位陣営に勝ちまくって後半で上位に当たってほしい。そうすればもっと相撲に厳しくなれるだろう。
 今日はこれしか感じたものがない。

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 隆の若インタヴュウ

 午後四時、土俵入りが終り、幕内戦が始まる前、先場所で引退した隆の若のインタヴュウが流れた。場所前に撮ってあったものだとか。十両を陥ちたときに引退を考えたが、周囲のすすめで二場所幕下(無休)でとった。先場所幕下四連敗で引退した。一時、いかに期待の大きかったひとなのか知っているのでなんとも言えないものを感じる。そういえば長崎県出身だから、本来ならご当地力士として声援を受けているところだ。

 思い出の一番として、どうしても勝てなかった武双山に、ご当地九州場所で、千秋楽の取り組みで勝った映像が流れていた。ということは横綱不在の場所だったのか。この辺も調べればわかるけれど。

 隆の若と若の里は鳴門部屋の二枚看板だった。ともに最高位は関脇。若の里も怪我により十両まで陥ちたが、また幕内に復帰して活躍している。いまは稀勢の里がいる。鳴門部屋は安泰だ。そうして去ってゆく隆の若がいる。角界には残らないという。この夜遊びもせず稽古ばかりしていた美男力士はこれからの人生をどう設計しているのだろう。「十五年間お世話になった親方には人生のすべてを教えてもらいました」と語っていた。中学を出て入門していま三十歳。相撲界以外のことはなにも知らない。
 引退相撲は来年の二月。第二の人生に幸あれと祈る。

七日目
 M先輩の事務所引っ越しの手伝いに池尻まで出かけた。午前九時から始めて終ったのが午後三時過ぎ。食事をごちそうになって電車に乗る。時計を見ると四時半。大相撲は午後四時から六時まで録画予約してきてある。でもケイタイのワンセグでも見られるのだと気づく。四時半だから幕尻の把瑠都はもう終ってしまったか。NHKにあわせるとちょうど把瑠都だった。まったく今場所は相性がいい。テレビをつけるといつも把瑠都だ。

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 連敗把瑠都、でも気にするな!

 把瑠都が露鵬の変化に何もしないまま一直線に土俵を割る。197センチと195センチの激突を楽しみにしていた場内から失望のため息。昨日垣添に負けたときはいかにも白人らしいアクションを交えた苦笑いをしていた把瑠都も今日は露鵬の変化にきつい表情。
 この負けは気にする必要はない。解説の千田川(安芸乃島)も露鵬は変化が多すぎると苦言を呈していた。心配なのは把瑠都が「だったらおれもやってみよう」になること。変化で負けたからといってこんなことはしないでくれ。それだけである。


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 懐かしの映像──熱戦、大受対鷲羽山

 午後四時の土俵入りのあと、NHKは特集を流す。これがおもしろい。今日は「三賞の歴史」だった。三賞を獨占した大受、大錦、貴花田、出島らの一番を見せていた。え〜と、私の覚えているのはこの四人だがあとふたりぐらいいたなあ。誰だろう。あとで調べるか。気になる。
(調べたらあとひとり、琴光喜がいた。貴花田、出島がそうだから、琴光喜も話題になったあの優勝の場所だろうと思ったがちがうようだ。優勝の場所でもないのに琴光喜が13勝2敗で三賞を獨占した場所……記憶にない。2000年だというから外国ばかり行っていたころだ。おそらく日本にいなかった。確認したらそうだった。この年の秋はずっと海外だった。)

 この中の「大受対鷲羽山」はすばらしかった。負けた鷲羽山の動いて動いて動きまくる相撲は感動的だった。小兵の速さと輝きである。むろんそれを振り回されつつ、最後にしとめた大受もすばらしい。

 大受というと身長検査のとき挿れたシリコンが抜けないままのとんがり頭、朝日山親方としてなじみ深いが、現役時はこんなに光っていたのか。元大関と聞いてもたった五場所だったからあまり実感がない。

 2ちゃんねるの「相撲板」で、若者たちがやたら輪湖時代を賞賛したりしている。私にそれはない。当時の映像を見てもさしたる感慨もない。だからこそ今日の一番には感激した。あの弟子の指導もできない高砂親方も横綱北の湖の点滴として溌剌としていた。四時から相撲を見る楽しみはこの特集にある。

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 琴欧洲初の休場

 今日から琴欧洲が休場。膝の痛みに医者に行ったという。無理して悪くするより休んだ方がいい。来場所は初の角番だ。がんばってくれ。

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 白鵬、勝つには勝ったが

 白鵬が時天空に粘られ苦戦する。寄り切る態勢に二度もなりながら二度とも時天空に我慢され、むしろ逆転のあぶない形になったりした。三度目に寄り切った。
 翌日のスポーツ紙では、それを「慎重で焦らない好ましい姿勢」と評価していたが、私は万全の寄り切る態勢に二度もなりながら耐えられてしまう横綱に不満だった。
 時天空ががんばったとも言えるのだが、白鵬の詰めが甘いのも事実だろう。まだまだ安心して見られる横綱ではない。何年後かには「憎いほど強い横綱」になるのだろうか。

中日  龍二さん、そろそろ……

 と思っていたら負けました。七連勝したからもう充分。破ったのは出島。押しに耐えていれば必ず引くのだから要点はそこだけだ。引いたとき出島は落ちずについていった。完勝。

 なのに琴光喜、白鵬が……

 一敗で並ぶかと思ったのに琴光喜が時天空に、白鵬が安馬に敗れる。安馬はいいように白鵬をあしらっていた。大関が見えてきた。

 低調な優勝争いになりそうである。

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 把瑠都、奇策に走らず

 昨日露鵬に変化された把瑠都が小柄な海鵬相手にばかなことをしなければいいがと案じて見ていた。まっとうな相撲だった。安心した。いや明日は黒海。まだ心配だ。

 今日はマラソンの野口が復活し、スケートの浅田が優勝し、マイルチャンピオンシップもあれば、オシム監督の容態も心配され、スポーツ情報があふれた日だった。
九日目  把瑠都、ひどい立ち会い

 腰高の最悪の立ち会い。黒海にふところに潜られ一気に土俵際まで下がる。完敗のパターン。土俵際で黒海がこけたので勝ちはしたが、いやはやなんともひどい内容。解説の寺尾もこれでは上位陣には通用しないと厳しい意見。まったくそのとおり。優勝争いの水準が低くなってきたので二敗の把瑠都も上とぶつけられるだろう。だけど破壊力がまったく感じられないいまの把瑠都では通用しまい。すごいなあと驚嘆するものがいまの把瑠都にはない。

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 寺尾の解説

 今日の解説は錣山親方。残念ながら愛弟子の豊真将が負け越してしまった。でもいつものあの美しいお辞儀を見るとすべてが許せる。東前頭筆頭。もう上位陣との対戦はすべて終ったから、後半戦でひとつでも白星を増やすようがんばってもらいたい。

 出島が好調だ。琴欧洲、千代大海、魁皇に勝ち、白鵬、琴光喜に負け。いま二敗。十勝はゆけるか。
 寺尾が出島を「首がまっすぐ当たるときは調子がいいとき」と分析し、アナが感心すると、「自分だけの考えですが」とひかえていた。こういうプロのひとことを聞くと満足する。

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 龍二さん、絶好調!

 このあたりまで調子がよく、このあと息切れして結果は九勝か十勝は毎度のことなのだが、今場所の千代大海はよく前に出ている。もしかするともしかするのか。それとも千秋楽には、ああやっぱり、なのか。

 優勝争いがおもしろくなったというが、低調は低調である。責任はこの時期にもう二敗している横綱にある。朝青龍がいないのだし、したはロートル大関のみだ。全勝でなければいかんだろう。
十日目 把瑠都、いい笑顔!

 きょうは今場所初めてどっちが勝ってもいい取り組み。七勝二敗同士、若の里と把瑠都。大好きな若の里が相撲の厳しさを把瑠都に教えてくれるなら、それもそれでいい。
 若の里がうまく攻めたが、把瑠都も押っつけ気味にして右上手を取る。ここに成長が見えた。そのあとまたも把瑠都の両上手。こちらが両上手ということは向こうはもろ差しになる。大きな人にしかできない相撲だ。そのまま寄って行き、土俵際では左上手を離して慎重に寄り切った。把瑠都、幕内での勝ち越しは一年ぶり。千代大海に続いて幕内勝ち越し第二号になった。

 花道を引き上げるときからもう最高の笑顔をしていた。アナの勝ち越しインタヴュウ。このときも笑顔。うれしかったろう。良い相撲で勝ったから後味もいい。これで入幕してケガ、十両落ちして優勝のエレヴェイターからは卒業だ。

 さて、あといくつ勝てるか。今後の展開では上位に当てられる。今日のような相撲なら充分今の大関クラスには通用する。楽しみだ。

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 残酷な時期

 把瑠都と若の里のように七勝二敗同士で勝ったほうが勝ち越し、というつぶし合いをさせる一方、終盤戦にはいると「負けたほうが負け越し」の取り組みも組まれてくる。早速今日も「二勝七敗同士、負けたほうが負け越し」の一番があった。厳しい世界である。

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 残ったのは四人

 二敗で残ったのは白鵬、千代大海、琴光喜、把瑠都の四人になった。それにしてもまだ十日目で二敗がトップ。しかも四人のみというのはずいぶんと低レベルだ。誰でもいいが、なんとか13勝2敗の優勝になってほしい。3敗以下の優勝はみっともない。

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 魁皇五勝五敗

 まるでお祭り騒ぎのような異常な雰囲気の中、魁皇が豊ノ島に敗れる。まるで粘れない。もう限界なのだろう。今場所負け越したら引退と明言している。上位陣と当たる残り五日で三勝以上はきつい。名大関最後の場所になるのか。
 勝った豊ノ島には「空気、読めよ」のようなヤジが飛んだとか。(翌日のスポーツ紙から。)しかし今の力のない魁皇に負けてやるとしたら、かなりわざとらしい相撲になってしまうだろう。

 陥落しても体調さえ良くなれば来場所軽く十勝して復帰は可能だろうが、どうにもその程度の期間で治る怪我ではないらしい。なにしろこの一年、関取とは稽古をせずに土俵に上がり続けてきたのだから。

 先日、土俵下で勝負審判の貴乃花親方と並んだとき、アナが同期生であることを強調していた。貴乃花は160キロの体を90キロまで落とし、パーマを掛け(不評なのでやめたようだが)もう現役時を彷彿させるものはなにもない。どちらがしあわせかはわからないが、力士として土俵にいることはよろこびだろう。

 魁皇は二十七のとき長年つきあっていた五歳年上の元女子プロレスラー西脇充子と結婚した。このとき西脇は子宮筋腫から子供を産めないことがすでに確定していた。後援者筋からどんな美女でも娶り放題であったろうに。男である。
 引退しても琴ノ若のように我が子が四股名を継ぐことを夢見ることは出来ない。一場所でも多く土俵に上にいてほしい力士だが、状況は厳しい。

十一日目  高見盛再出場

 きょうから高見盛が再出場する。理由は「十両に陥ちたくないから」だとか。現在、三勝 二敗、内一不戦敗 五休だが、実質は三勝七敗扱いである。このまま休んでいると三勝十二敗になる。十両陥落の可能性が高い。再出場して二勝し、五勝になれば番付の位置からして陥落の危機はだいぶ軽減される。それが狙いのようだ。それと、体が動くようなら出たいだろうなあ、本場所は。二ヶ月に一度の大舞台なのだから。
 けがの具合はどうなのだろう。より傷めてしまうようなことにならないといいが。心配である。



 四つになり、力強く春日王を寄り切った。前頭八枚目だからこの四勝目は心強い。一気に十両陥落の危機は遠くなった。一週間ぶりに胸を張って花道を引き揚げる高見盛と、あたたかな拍手(笑)を目にして、この人の存在価値をあらためて知る。残り四日、いるだけでうれしい。

 勝ち越し負け越し

 そしてまた一勝九敗同士の豊真将対鶴龍の取り組みもキツい。残酷である。勝ち星一番は誰か、と同時に負け星一番の負け犬は誰だ、も世に晒される。
 豊真将負けて一勝十敗。来場所は出直しの場所となる。肘の具合が悪いらしいがどうなのだろう。まったく粘れない。

 出島対琴奨菊は勝った方が勝ち越し。出島勝って勝ち越し。明日は把瑠都。

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 把瑠都九勝目

 把瑠都が土佐の海を破って九勝目一番乗り。あぶない相撲をよくはたき込みで勝った、という言いかたも出来るが、その後の千代大海、琴光喜、白鵬の安定した勝ちかたと比べるといちばん心細い。解説もアナも颱風の目のような言いかたをするが、千代大海あたりが引き技で勝ち、それと比すと怪物把瑠都は、というならともかく、今場所の把瑠都の相撲が大関横綱に通用するとは思えない。それでもとにかく、最上位でせめぎあう横綱大関と併走して幕尻でこの星をキープして欲しい。低調な場所の唯一の救いだ。
 明日は出島。かつての破天荒な時代ならともかく、いまのパワー60%の地味な相撲だと懐に潜り込まれて一気に「出る出る出島」をやられる可能性もある。今場所好調な出島は好きな力士なので把瑠都が三敗を喫して優勝戦線から脱落も納得できる相手だが、盛り上げるためにはぜひとも把瑠都に勝って欲しい。

 上位はつぶしあい

 明日は琴光喜対千代大海がある。白鵬と把瑠都の結果はともかく、確実に一人戦線から退く。どっちだろう。
 今日「三強の対戦成績」が出ていた。白鵬が千代大海、琴光喜に大きく勝ち越していることに今更ながら驚く。そうでなければ横綱になれるはずがないのだが、対千代大海11対5と見ると、初めて平幕の白鵬が千代大海を破ったのをつい昨日のことのように思う身としては、時の流れの速さを感じる。休場もあるから三年経っていることになる。いま二十二歳、十九の白鵬。うん、当然か。
 とにかくこれ以上の低レベルはやめてもらいたい。把瑠都も白鵬も勝ち、三人が二敗で並ぶ、を続けてもらいたい。
 今場所の低調の責任は白鵬にあると今日の解説の千賀ノ浦(舛田山)、不知火(青葉城)も言っていた。横綱ただ一人全勝、二敗で大関と把瑠都が続く、でなければいけない。なさけないな、白鵬。

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 若ノ鵬の評判

 外国人力士の逸材に目がない私なのに、記録的な早い出世をしている、幕内最年少、十九歳の若ノ鵬に興味がない。初土俵が平成十七年の三月、ほんの二年半で幕内にまであがってきたまだ十九歳、体もありマスクもいいロシア人力士は、本来なら私の最も好きなタイプである。流れからして毎日取り組みの結果をここに書いて応援しておかしくない。白鵬や琴欧洲、把瑠都がそうだったように。なのにまったく私はこの力士に惹かれない。
 そのことをすこし気にしていた。その感覚は「大ヒットしている最近の曲をちっともいいとは思わない」に似ている。自分の審美眼に自信を持っていながら、すこし揺らいでいた。

 今日の解説(千賀ノ浦か不知火か忘れた)を聞いて納得した。「十九歳なのに話題にならないですしね」と口を揃えていたのだ。本来もっともっと話題になるべきスピード出世なのに取り口がつまらないので人の口にあがらないという缺陥は私だけの感覚ではなく一般的であるらしい。その理由として大きな体なのに変化したりするつまらなさが指摘されていた。スター候補は多い方が楽しい。気づくことを祈る。

 天賦の才能に恵まれながら半端な横綱だった二代目若の花が、過激な意見を言う理事として台頭してきたのは意外だった。奥ゆかしいシャイな青森人というイメージがあり、我こそはと手を挙げる人には思えなかったからだ。
 脳梗塞で倒れたがもう心配はないらしい。また理事選にも出るらしい。北の湖の次を狙って、それはそれでがんばってほしい。だけど師匠としてこの十九歳のロシア人青年にこんな相撲を取らせていたのでは立派なことは言えない。

十二日目  若ノ鵬、八艘跳び?

 八艘跳びとは違う。なんというのか、プロレスでロープに振った相手にカウンターの回転エビ固めを決めるようなジャンプ。吉村道明を思い出す(笑)。
 負けた黒海が険しい目つきで睨みつける。若ノ鵬、しらんふり。場内、沸く。北の富士、あきれる。「こんな相撲を取っていちゃだめだ」
 なんでもやってみたい若ノ鵬の気持ちはわかるのだが、これを叱らない間垣の感覚がわからない。理事の椅子にこだわるより弟子の相撲を直すことが先だ。

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 把瑠都完勝!

 若ノ鵬のそんなくだらない相撲があり、把瑠都の今日の相手は真正面から来る出島である。こそくなことを考えなければいいがと心配した。変化で勝ってもつまらないし、ましてそれを読まれて一気に突き出されたりしたら今日までの勝ち星になんの意味もなくなる。杞憂だった。すまん。

 把瑠都がいい相撲を取った。出島の猛突進を真正面から受け止め、力で起こし、上手を取り、態勢を低くして、盤石の形で寄り切った。残り三日ががぜん楽しみになる最高の相撲だった。
 上位三人と比べると優勝争いまではどうかと否定的だった北の富士も認識をあらたにしないとと絶賛。ここにきていい相撲が出たのはうれしい。明日は千代大海。今日の相撲なら相手にせず勝てるはずだ。いやはや楽しみになってきた。

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千代、琴光喜に勝つ

 ふだんはこの辺で息切れしているはずの龍二さんが今場所は元気。琴光喜を一方的に突き出す。四年半ぶりの優勝成るか。
 明日は把瑠都と千代大海。いやあ楽しみだ。

十三日目

 把瑠都完敗

 把瑠都が千代大海に敗れた。これで優勝争いはふたりに絞られ、絶対的に白鵬有利だろう。

 過去の対戦成績が1対1ということで二番が流されたが、把瑠都が勝ったのは変化で、対して千代大海は正攻法でだった。平幕時代の白鵬が大関千代大海をぶん投げたのとは内容が違っている。一年半前のことなので中身を忘れていた。この内容はショックだった。正攻法で圧勝していると勘違いしていた。まだ把瑠都は千代大海超えをしていなかった。今場所のおとなしい相撲では絶好調の千代大海には勝てないか。希望は昨日の内容のよい勝利である。しかし突きを入れられると自分から横を向いてしまいあっけなく土俵を割っていた。

 解説の立田川(湊富士)が「把瑠都はケガを怖がっていますね」と指摘。「自分から横を向いてしまっています」とのこと。下の方で六割の力で勝っているときはいいが、上位と力一杯の勝負になると、ケガをしたときの恐怖とその後の苦労がよみがえってきて竦んでしまうのだろう。勝ち負け以前に勝負になっていなかった。
 救いは敗れた把瑠都が叮嚀なお辞儀をしたことである。この辺が露鵬あたりとは違う。

 舞の海はもちろんだが、今日は立田川の解説もよかった。

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 豊真将二勝目

 お辞儀といえばその美しさが際だっている豊真将が、きょうやっと二勝目をあげた。それも互いに頭を下げた勝負最中に豊真将コールが起きるという異常事態の中である。九州のファンはいいね(笑)。
 おっつけがまったく効かないからよほど左肘が悪いのだろう。早く完治して欲しい。豊真将の美しいお辞儀は角界の宝である。

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 安馬勝ち越し

 今日いちばん充実していたのは安馬と時天空の一番。安馬が勝って勝ち越し。敗れたが時天空の地力充実はすばらしい。

 大関への足固めになんとしても十番勝ちたい。あと二日、どうなるか。明日は把瑠都戦。安馬の速さに今の把瑠都ではついて行けまい。だが体力では圧倒している。どうなるか。楽しみだ。

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 朝青龍スキャンダル

 謹慎中の朝青龍が禁じられている夜遊びをしていて、しかも酒場で暴れたと、モンゴルの新聞が伝えたらしい。これは大相撲を見たあと、テレ朝のニュースでやっていた。紙面が紹介されている。
 不思議なのはこれが『東スポ』でもあるならともかく、モンゴルの新聞だったことだ。あちらは母国の英雄を護るのではなかったか。それに多大な朝青龍マネーをばらまいて権力もあるはずである。これが事実としても簡単にもみ消せたろう。どういうことか。なぜいまこの大事な時期に足を引っ張るこんな記事が出たのだろう。

 探してみたらYahooに載っていた。

モンゴルで療養中の横綱・朝青龍に新たな疑惑が持ち上がった。17日付の地元紙「ネゲオードル」が報じたところによると、朝青龍は13日にウランバートル市内のバーに女性同伴で来店し、泥酔した揚げ句に椅子やテーブルなどを破壊。関係者が弁償したという。

朝青龍は、假病疑惑で世間を騒がせたことを理由に現在、九州場所千秋楽の25日まで謹慎中。8月の理事会で治療に専念する条件で帰国が認められた。その期間中に夜の街に繰り出し、飲酒したうえに暴れたとあれば、解雇を含めた厳罰の対象になるのは間違いない。

ただ、ネゲオードル紙はモンゴル国内ではゴシップ紙の扱いを受けており、記事が事実かどうかは確認できていない。朝青龍は30日に帰国するが、協会の対応を含めて今後が注目される。


 なるほど、モンゴルにもゴシップ誌があるのか(笑)。
 当初来日予定が26日と伝えられ、その日開かれる横審で謝罪かと言われたが、30日に変更になり、それは消えた。横審は不満だったようである。ウチダテオババなんぞに謝る必要はないと思っていたのでわたし的には正解。


 30日には記者会見を開くという。すなおに謝れるかな(笑)。朝青龍はいまも悪いことをしたとは思っていまい。自分が理不尽にいじめられていると思っているはずだ。ただ、金を稼ぐためには相撲を取らねばならないとは気づいたろう。また、自分がいなければ火が消えたようになるはずだった相撲界が、自分抜きでもつつがなく進行すると知ったのもショックだったはずだ。勝ち負けで言うと朝青龍の負けである。だからたぶんしおらしく頭を下げるだろう。再び勝者になるために。

 朝潮は次期理事選に出ないことにしたとか。当然だ。人の上に立つ資格のある人ではない。

十四日目  把瑠都、安馬に敗れる

 把瑠都の安馬との対戦成績は1勝1敗。昨日の千代大海戦と同じだ。れいによって四時過ぎ、そのふたつの取り組みを見た。これは昨日とはまったく違い把瑠都が勝っていた。負けた相撲も勇み足のようなものだ。(のちにこの「勇み足のような負け方」は「踏みだし」という呼称と知る。)
 安馬はいつものようによい相撲を取っていたが把瑠都との体力の壁を越えていない。だが丸一年以上取っていないし、解説の琴風はこの一年の安馬の成長をあげていた。

 安馬が勝った。関脇の風格が漂っていた。安馬はこれで来場所につなげる貴重な九勝目。把瑠都四敗で賜杯争いから陥落。それはまあ幕尻なのだからしかたない。千代大海、安馬に完敗の把瑠都、まだまだ課題は多い。

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 魁皇勝ち越し

 魁皇が渾身の相撲で琴光喜を破り勝ち越した。左でかちあげ、もろ差しになる。完勝。持てる力をすべて出し切った相撲だった。昨日の新聞で「勝ち越しても今場所限りで引退と後援者に伝えた」との記事を読んだ。今日の相撲は全盛時のような力強い相撲だった。それは今までが悪いところをより悪くしてしまうからと力をセーブしていたとするなら、今日はもしそうなってももう引退するのだからと、ストッパーを外して、全力を出したかのような相撲だった。
 しかしこんないい内容で勝ち越したらもっと取りたくなるだろう。来場所まで休んでいるあいだに体がよくなる可能性だってあるし。引退なのだろうか。

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 白鵬千代大海、白熱の一番!

 白鵬は受けて光る力士だから、この取り組みがいい相撲になるか否かは千代大海がどこまで攻められるかにある。半端な相撲を取ったらすぐに捕まって投げられる。
 攻めた攻めた。今場所を最後のチャンスと思っていたのかどうか、とにかく今場所の千代大海は褒めていい。突っ張って攻める。のど輪で攻める。
 白鵬が捕まえてとったり。それを振り切ってまた突っ張るのを、また取ったり。関節技の世界である。千代の腕が折れるのではないかと心配になる。
 場内大歓声の大一番だった。

千秋楽  把瑠都十一勝目 敢闘賞

 栃乃洋と力のはいるいい相撲だった。場内も沸いた。最後をいい相撲で飾れてよかった。本人も最高の相撲が取れたと笑顔だった。来場所はどこまで番付があがるのか。相手も強くなってくる。へんな動きでまたケガをしないか心配だ。
 私からすると怪物ぶりはすっかり影を潜めてしまったのだけれど、肩越しの両上手で相手を振り回してしまうのだから今でも十分にそうなのか。引き技が減り前に出るようになったと解説の親方衆からは評判がよい。

 露鵬のように十勝しても引き技ばかりで北の富士にボロクソに言われる力士よりははるかにましか。露鵬の変化で負けたとき、仕返しに把瑠都も変化をするのではないかと冷や冷やしていたがそれをしなかった。成長したのだろう。

 若ノ鵬も新入幕で九勝したが変化が多く評判は悪い。周囲が指導しないと第二の露鵬になる。この辺のロシア人はみな出稼ぎ感覚なのだろうか、態度の悪い露鵬を兄と慕っているのは問題だ。
 一方同じ新入幕で十勝した若麒麟は評判がいい。舞の海はひたすら突っ張って前に出る若麒麟を、「負けても気持ちのいい相撲」と絶賛していた。

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 安馬十勝 殊勲賞

 連続十勝して来場所は関脇である。いよいよ大関が見えてきた。上位に強い関脇だから期待大である。
 安美錦もなんとか勝ち越し関脇の地位を守ったが連続十勝以上をして大関昇進というイメージが湧いてこない。やはり次は安馬だろう。

 琴奨菊が小結で九勝。技能賞受賞。初日に白鵬を破っているのだからなんとしても勝ち越したかったと、十四日目で勝ち越したとき、笑顔で細い目がなくなっていた。

 朝赤龍が関脇から陥落。来場所は安美錦、安馬が関脇で、小結に琴奨菊と稀勢の里が復帰か。

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 千代大海休場

 やはり昨日のとったりは後遺となった。千代大海のケガがどの程度か心配である。この種のあぶない技では久島海が連発した小手投げがあった。大きくて重い人たちだから肘への関節技は大けがに繋がる。
 今回の白鵬のとったりは相撲の流れから出たものであり、意図的な仕掛けとは思わないが、頂点に立つ人が相手をケガさせるああいう技を多用してはならない。昨日、取り組みを見ていて冷や冷やしたぐらいだから相当なものだったろう。千代大海は昨日はなんともなかったが今日になったら肘が動かなくなっていたと語ったそうだ。完治することを願う。

 魁皇、現役続行

 結果として九勝をあげた魁皇は現役を続行するとのこと。まだ勝ち越してないときに「たとえ勝ち越せても今場所で引退」と報道されたが(後援者筋からの情報だから信頼できるものだったろう)、現実に勝ち越せば現役でいたくなる。来場所も魁皇が見られそうだ。


 白鵬、敗れて優勝

 三敗の千代大海が休場で白鵬が優勝となる。なのに琴光喜に完敗して三敗になる。なさけない。私はそこでテレビを消してしまった。とても優勝授賞式など見る気になれなかった。低調なひどい場所だった。すべての責任は早々と二敗した横綱白鵬にある。

【大相撲】気持ち切れた?千秋楽にコロリ!白鵬“赤っ恥”連覇

勝って、すっきり優勝を祝いたかった白鵬だが、琴光喜の下手投げにコロリ(撮影・佐藤豊行)

勝って、すっきり優勝を祝いたかった白鵬だが、琴光喜の下手投げにコロリ(撮影・佐藤豊行)

 九州場所千秋楽(25日、福岡国際センター)5度目の賜杯は“3敗”のほろ苦い味だった。1差で追う大関千代大海(31)が右ひじ関節ねんざで休場したため、取組前に優勝が決まっていた横綱白鵬(22)は大関琴光喜(31)に下手投げで敗れ、有終の美を飾れなかった。賜杯を争う力士の不戦敗で取組前に優勝が決まったのは、不戦勝制度が確立された昭和3年以降初。

12勝での横綱の優勝は平成11年九州場所の武蔵丸以来の“ロースコア”。サンスポより)

 「赤っ恥連覇」である。横綱の12勝優勝は8年ぶりだ。千代大海が出場していたら満身創痍の魁皇に勝っていたろう。すると負けるわけには行かない。結果は違っていたか。しかし負け方に問題がある。こんな千秋楽結びの一番でぶん投げられる横綱がいるか。
餘談  砂かぶりのケイタイ男

 二日目だったか、砂かぶりに金髪に染めたスーツ姿のアンチャンがいて、取り組みの最中に何度もケイタイで電話をしていた。正面にいるから見たくなくても見えてしまう。見たくない光景である。こういうマナーはなんとかならんものか。

 砂かぶり(たまり席)は一般人は入手できない。私は生前の父に一度でいいからたまり席をプレゼントしたかったがつてがなく叶わなかった。一般に買える枡席どまりだった。そういう個人的な恨み辛みもあって(笑)、相撲に興味のない金髪だか茶髪だかのアンチャンがあの特等席にいて、しかもケイタイでへらへらと話しているのを見ると不快になる。

 ケイタイで話しているのは花道にたむろする主婦にもいる。よくないことだがまだ許せる。なぜならそれは子供の手を引いた主婦が、「今ね、今ね、魁皇が目の前を通ったの」と亭主にでも伝えていることがわかるからだ。表情もうれしそうだ。これは興業でありお祭りでありショースポーツだから、安い券で入った一般客の、そういうマナーの悪さはまだ見逃せる。

 砂かぶりは特別な場なのだ。他の席と違って飲食が出来ない。相撲を間近で見られる特別な場であると同時に150キロの力士が飛んでくる危険な場でもある。客はみな傷害保険に入らねばならない。砂かぶりの客が途中で退席すると目立つので結びの一番までいるように義務づけられてもいる。そんなこと、あの特別な席に行く人は誰でも知っていよう。その特別な場での茶髪ケイタイ男だったから腹が立つ。

 砂かぶりのケイタイ男も相撲に昂奮していたのなら許せたかもしれない。いややっぱり土俵の向こうに勝負の最中もへらへらとケイタイで話している髪を染めた男がいるというのは画として許せないが、それでもまだそいつが「高見盛なんだよ、いま目の前で高見盛が気合い入れてるんだよ!」とでもしゃべっていたなら話は違ってくる。だがそいつは土俵など見ていなかった。退屈していた。「券もらったから来たけどさあ、全然つまんなくって、もう帰りたいよ」と、そんな感じなのだ。

 今後はぜひとも「砂かぶりでの携帯電話の禁止」を規則化してもらいたい。中入り後の相撲を砂かぶりで見るだけの時間に、ケイタイで連絡を取り合わねばならない緊急の用事などそうもあるまいし、あるほど忙しい人なら相撲見物になど来なければいい。
 
餘談
 大器発見!

 序二段で優勝した旭秀鵬はいい力士だ。モンゴル出身。四股名からもわかるように大島部屋(旭国)所属。旭天鵬がいるからかまだ来日して日も浅いのに日本語も上手だ。背も190センチあり、マスクもいい。この人は伸びるだろう。三段目、幕下を突破して十両まであがってくるのはいつになるだろう。楽しみだ。

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 境沢と市原

 十両は学生相撲出身の境沢と市原の優勝決定戦になり境沢が優勝した。前相撲からとった境沢は記録的なスピード出世をしてきているし、アマチュア横綱の市原は幕下つけ出しから順調な出世である。期待の新鋭というべきなのだろうが、私には学生相撲出身力士らしく、相撲がまとまってしまっているように思える。よい意味で裏切られることを願う。


大相撲星取表  九州場所千秋楽

表内の☆=勝ち越し、★=負け越し、○=勝ち、●=負け、□=不戦勝、■=不戦敗、や=休場

【東】 【西】
横綱 白鵬
(12勝3敗)
●琴奨 ○豊真 ○雅山 ○稀勢 ○出島 ○鶴竜 ○時天 ●安馬 ○豊島 ○旭天 ○朝赤 ○安美 ○魁皇 ○千大 ●琴喜 横綱 朝青龍
(休場)
大関 琴光喜
(10勝5敗)
●安馬 ○稀勢 ○出島 ○雅山 ○鶴竜 ○豊真 ○旭天 ●時天 ○豪風 ○朝赤 ○豊島 ●千大 ●安美 ●魁皇 ○白鵬 大関 千代大海
(11勝4敗)
○豊真 ○琴奨 ○稀勢 ○安馬 ○雅山 ○安美 ○鶴竜 ●出島 ○朝赤 ●時天 ○旭天 ○琴喜 ○把瑠 ●白鵬 ■魁皇
大関 琴欧洲
(2勝5敗8休)
○雅山 ●安馬 ○豊真 ●出島 ●稀勢 ●時天 ■安美 大関 魁皇
(9勝6敗)
●稀勢 ○雅山 ○琴奨 ○豊真 ●安馬 ●出島 ○朝赤 ○鶴竜 ●時天 ●豊島 ○安美 ○旭天 ●白鵬 ○琴喜 □千大
関脇 安美錦
(8勝7敗)
●出島 ○鶴竜 ●時天 ○琴奨 ○豊真 ●千大 □琴欧 ●雅山 ●稀勢 ○豪栄 ●魁皇 ●白鵬 ○琴喜 ○旭天 ○朝赤 関脇 朝赤龍
(3勝12敗)
○鶴竜 ●出島 ○安馬 ○時天 ●琴奨 ●雅山 ●魁皇 ●豊真 ●千大 ●琴喜 ●白鵬 ●稀勢 ●旭天 ●豪風 ●安美
小結 安馬
(10勝5敗)
○琴喜 ○琴欧 ●朝赤 ●千大 ○魁皇 ●琴奨 ○豊真 ○白鵬 ●雅山 ○出島 ○稀勢 ●豊島 ○時天 ○把瑠 ○若里 小結 琴奨菊
(9勝6敗)
○白鵬 ●千大 ●魁皇 ●安美 ○朝赤 ○安馬 ○雅山 ○稀勢 ○豊真 ○鶴竜 ●出島 ●時天 ○豊島 ●豪栄 ○豊響

【東】 【西】
前頭1 豊真将
(3勝12敗)
●千大 ●白鵬 ●琴欧 ●魁皇 ●安美 ●琴喜 ●安馬 ○朝赤 ●琴奨 ●雅山 ●鶴竜 ●春王 ○玉島 ○白露 ●旭天 前頭1 雅山
(7勝8敗)
●琴欧 ●魁皇 ●白鵬 ●琴喜 ●千大 ○朝赤 ●琴奨 ○安美 ○安馬 ○豊真 ●豪風 ○鶴竜 ○春王 ●稀勢 ○豪栄
前頭2 稀勢の里
(9勝6敗)
○魁皇 ●琴喜 ●千大 ●白鵬 ○琴欧 ○豊島 ●出島 ●琴奨 ○安美 ○豪風 ●安馬 ○朝赤 ○普天 ○雅山 ○時天 前頭2 出島
(10勝5敗)
○安美 ○朝赤 ●琴喜 ○琴欧 ●白鵬 ○魁皇 ○稀勢 ○千大 ○鶴竜 ●安馬 ○琴奨 ●把瑠 ○若麒 ○豊響 ●豊島
前頭3 鶴竜
(4勝11敗)
●朝赤 ●安美 ●豊島 ○旭天 ●琴喜 ●白鵬 ●千大 ●魁皇 ●出島 ●琴奨 ○豊真 ●雅山 ○高盛 ●春王 ○嘉風 前頭3 時天空
(9勝6敗)
○旭天 ●豪風 ○安美 ●朝赤 ○春王 ○琴欧 ●白鵬 ○琴喜 ○魁皇 ○千大 ●豪栄 ○琴奨 ●安馬 ○若麒 ●稀勢
前頭4 豊ノ島
(9勝6敗)
○豪風 ●旭天 ○鶴竜 ○春王 ○豊響 ●稀勢 ○玉島 ○豪栄 ●白鵬 ○魁皇 ●琴喜 ○安馬 ●琴奨 ●栃洋 ○出島 前頭4 旭天鵬
(4勝11敗)
●時天 ○豊島 ●豪風 ●鶴竜 ○玉島 ●豪栄 ●琴喜 ●豊響 ●春王 ●白鵬 ●千大 ●魁皇 ○朝赤 ●安美 ○豊真
前頭5 豪風
(6勝9敗)
●豊島 ○時天 ○旭天 ●豪栄 ●玉春 ●栃洋 ●豊響 ○普天 ●琴喜 ●稀勢 ○雅山 ●高盛 ○白露 ○朝赤 ●黒海 前頭5 春日王
(4勝11敗)
●玉島 ●豪栄 ○栃洋 ●豊島 ●時天 ●豊響 ●普天 ●玉春 ○旭天 ●嘉風 ●高盛 ○豊真 ●雅山 ○鶴竜 ●垣添

【東】 【西】
前頭6 玉乃島
(4勝11敗)
○春王 ○豊響 ●豪栄 ●栃洋 ●旭天 ●若里 ●豊島 ●北力 ●普天 ●白露 ○嘉風 ●海鵬 ●豊真 ●栃煌 ○高盛 前頭6 豪栄道
(8勝7敗)
●栃洋 ○春王 ○玉島 ○豪風 ○普天 ○旭天 ○玉春 ●豊島 ●北力 ●安美 ○時天 ●土佐 ●露鵬 ○琴奨 ●雅山
前頭7 豊響
(7勝8敗)
●若里 ●玉島 ●高盛 ○普天 ●豊島 ○春王 ○豪風 ○旭天 ○玉春 ○若鵬 ○黒海 ●露鵬 ●北力 ●出島 ●琴奨 前頭7 栃乃洋
(8勝7敗)
○豪栄 ●高盛 ●春王 ○玉島 ○若里 ○豪風 ○嘉風 ●土佐 ○露鵬 ○北力 ●若鵬 ●若麒 ●黒海 ○豊島 ●把瑠
前頭8 若の里
(8勝7敗)
○豊響 ○玉春 ○普天 ○北力 ●栃洋 ○玉島 ●若鵬 ○黒海 ○白露 ●把瑠 ●若麒 ●垣添 ○春錦 ●露鵬 ●安馬 前頭8 高見盛
(5勝5敗5休)
○玉春 ○栃洋 ○豊響 ●嘉風 ■北力 ○春王 ○豪風 ●鶴竜 ●土佐 ●玉島
前頭9 玉春日
(8勝7敗)
●高盛 ●若里 ○北力 ●白露 ○豪風 ●露鵬 ●豪栄 ○春王 ●豊響 ●黒海 ○垣添 ○嘉風 ○栃煌 ○春錦 ○海鵬 前頭9 普天王
(6勝9敗)
●北力 ○嘉風 ●若里 ●豊響 ●豪栄 ●土佐 ○春王 ●豪風 ○玉島 ○栃煌 ○海鵬 ○春錦 ●稀勢 ●垣添 ●若鵬
前頭10 北勝力
(8勝7敗)
○普天 ●土佐 ●玉春 ●若里 □高盛 ●栃煌 ○垣添 ○玉島 ○豪栄 ●栃洋 ○露鵬 ○白露 ○豊響 ●黒海 ●若麒 前頭10 嘉風
(4勝11敗)
○土佐 ●普天 ●露鵬 ○高盛 ●海鵬 ●黒海 ●栃洋 ●栃煌 ●春錦 ○春王 ●玉島 ●玉春 ●垣添 ○若鵬 ●鶴竜

【東】 【西】
前頭11 土佐ノ海
(7勝8敗)
●嘉風 ○北力 ●黒海 ●垣添 ●栃煌 ○普天 ●若麒 ○栃洋 ○海鵬 ●露鵬 ●把瑠 ○豪栄 ●若鵬 ○高盛 ○春錦 前頭11                                                
前頭12 露鵬
(10勝5敗)
●黒海 ○若鵬 ○嘉風 ●若麒 ○垣添 ○玉春 ○把瑠 ●春錦 ●栃洋 ○土佐 ●北力 ○豊響 ○豪栄 ○若里 ○栃煌 前頭12 白露山
(3勝12敗)
●若鵬 ○黒海 ●垣添 ○玉春 ●把瑠 ●春錦 ●海鵬 ●若麒 ●若里 ○玉島 ●栃煌 ●北力 ●豪風 ●豊真 ●栃花
前頭13 黒海
(9勝6敗)
○露鵬 ●白露 ○土佐 ●春錦 ○若麒 ○嘉風 ○栃煌 ●若里 ●把瑠 ○玉春 ●豊響 ●若鵬 ○栃洋 ○北力 ○豪風 前頭13 若ノ鵬
(9勝6敗)
○白露 ●露鵬 ○海鵬 ●把瑠 ○春錦 ●若麒 ○若里 ●垣添 ○栃煌 ●豊響 ○栃洋 ○黒海 ○土佐 ●嘉風 ○普天
前頭14 垣添
(9勝6敗)
○海鵬 ●栃煌 ○白露 ○土佐 ●露鵬 ○把瑠 ●北力 ○若鵬 ●若麒 ●春錦 ●玉春 ○若里 ○嘉風 ○普天 ○春王 前頭14 海鵬
(6勝9敗)
●垣添 ○春錦 ●若鵬 ●栃煌 ○嘉風 ●豊桜 ○白露 ●把瑠 ●土佐 ●若麒 ●普天 ○玉島 ○栃花 ○宝智 ●玉春
前頭15 栃煌山
(7勝8敗)
●若麒 ○垣添 ●把瑠 ○海鵬 ○土佐 ○北力 ●黒海 ○嘉風 ●若鵬 ●普天 ○白露 ●皇司 ●玉春 ○玉島 ●露鵬 前頭15 若麒麟
(10勝5敗)
○栃煌 ●把瑠 ●春錦 ○露鵬 ●黒海 ○若鵬 ○土佐 ○白露 ○垣添 ○海鵬 ○若里 ○栃洋 ●出島 ●時天 ○北力

【東】 【西】
前頭16 把瑠都
(11勝4敗)
○春錦 ○若麒 ○栃煌 ○若鵬 ○白露 ●垣添 ●露鵬 ○海鵬 ○黒海 ○若里 ○土佐 ○出島 ●千大 ●安馬 ○栃洋 前頭16 春日錦
(7勝8敗)
●把瑠 ●海鵬 ○若麒 ○黒海 ●若鵬 ○白露 ●岩木 ○露鵬 ○嘉風 ○垣添 ○白馬 ●普天 ●若里 ●玉春 ●土佐

星取り表はニッカンスポーツより拝借


壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

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