平成十八年名古屋場所覚え書き
2006年7月9日初日
初日
●波乱の初日●

 待ちかねた名古屋場所が始まった。白鵬が連続優勝して双葉山、照国以来の「大関二場所通過」をかなえるか、雅山が魁傑以来の大関復帰を成し遂げるかが話題の場所である。あとは朝青龍復活成るか、把瑠都の活躍は、であろうか。

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 ところで私は友人のデータ会社を手伝うという、それこそ何十年ぶりか記憶にないほどひさしぶりに「真昼にオフィスで働く」ことを経験することになった。有能な友人の急病休養にともなう代打で、すくなくとも一ヶ月はこれからサラリーマンのような生活を送る。仕事そのものはなんてことないし、ここのところずっと朝型生活だから、そっち方面も問題はない。問題は通勤である。私は肉体的にきつい汚れ仕事も、それを徹夜でやるようなこともまったく平気なのだが、通勤ラッシュだけは受け付けない。それで勤め人失格したようなものだ。
 そのときもそれはわかっていたから、会社まで10分程度のところに住まいを替えた。それでも憂鬱だった。なのに今回は片道1時間以上である。その点では「生まれて初めての大冒険」になる(笑)。

 経営者もそのことはわかってくれていて、会社の寮に泊まってもいいと言っている。満員電車に乗るのがいやで泊まることになるかも知れない。いや自分の家が恋しいから無理して帰ってくるか。うん、帰りは問題ない。要は朝のラッシュか。
 いずれにせよ今までのような毎日更新はまず無理である。かといって三ヶ月遅れで後付日記を書くようなみっともないことはしないが(笑)。

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 大相撲観戦も今までのように、早朝からパソコンに向かって働き、大相撲の時間には早くも晩酌気分で楽しむというわけにはいかない。予定では、4時から6時までを録画予約して行き、帰宅した7時過ぎにそれを見るつもりでいる。当然そのとき晩酌はするだろうが、見終わったら早くても9時過ぎである。出来上がってもいるだろうし、先に風呂に入っていたならすぐにもう寝たいだろう。果たしてそれでも今までのようにきちんと毎日記録できるのか。我ながら疑問だ。

 ただしべつに使命感でやっているわけでもなし、日々の慌ただしさの中で、まともに書いたのがこの初日だけだったなら、それはそれで私の真実だから気にしない。
 ホームページというのは、なにがなんでもぜったいに書き続けるのだ、という悲壮なほどのやる気と、手抜きもまたおれらしいやというズボラ、このふたつがうまく両立しないと続けられない。どっちかひとつの人は見事なほどきれいに消えて行く。
 私にとって相撲記録が書き続けられなかったというのはさほど大きな問題ではない。だからそれはそれでいい。
 それよりも、「その他のこともなにも書けなかった」の方が痛手は大きい。とにかく、なんでもいいから書くことは休みたくない。

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●安馬 把瑠都○
 それでも勝てないか、安馬!

 安馬がうまい相撲でもろ差しになる。ぜったいの態勢。でも土俵際、右上手をとった把瑠都に軽くうっちゃられる。相手が怪物だけにしかたないが、あの態勢になっても勝てないのはせつない。
 北の富士が、片手でふりまわしただけのようだが、じょうずにお腹に載せていて、見事なうっちゃりだったとあとから褒めていた。把瑠都なりに考えた相撲なのだろう。
 今場所も把瑠都から目が離せない。いやこれからもずっと離せないけど(笑)。楽しみな人である。なにしろ大鵬が「あんな力士、見たことがない」と言った逸材だ。


●雅山 露鵬○
 雅山、転げ落ちる!

 解説の北の富士も舞の海も雅山の大関復帰(数字的には9勝で可能になる。もちろん心情的に二桁は必要だろうが)を、最低13勝2敗以上の優勝をせねばならない白鵬の横綱昇進よりもむずかしいとしていた。先場所14勝なのにずいぶんと厳しい読みである。こうなるとへそ曲がりとしては応援したくなる。
 なのに露鵬に突き落とされ土俵下まで転がり落ちていた。先場所の成績がいいだけにその負け姿が無惨だった。こりゃ前途多難である。今場所は稽古もよくできて絶好の仕上がりと聞いていたのだが……。やはり堅くなっているか。


○白露山 ●
 白露山を見直す

 白露山は北天祐(二十日山親方)が亡くなって今場所から北の湖部屋所属となった。
 変化するよい相撲ではなかったが、今場所初のインタヴュウ力士として、「大関に一度も勝ったことがなかったので、悪い相撲だったし、大関には失礼だったけど、とにかく勝ちたかった」と正直に語っていた。なにより自分から「悪い相撲だが」と認めていたのがよい。

 私はこの兄弟を顔つきの悪さから嫌っているのだが、すくなくとも弟の方は、思ったよりも好人物だと感じた。それは北天祐が亡くなったときのインタヴュウでも感じていた。
 また舞の海が、頭を下げて盲目的に突進していった琴欧州の方を責めていたのは印象的だった。今までの相撲、対戦内容から、白露山の取組をかってに解釈していた琴欧州に、大関として読みが甘いというのである。
 変化技で勝った力士には、解説者はみな手厳しい。舞の海も(小兵故変化の多かった自分のことは棚に上げ)厳しいことを言うが、こういう形での大関批判は説得力があった。


●白鵬 朝赤龍○
 いきなり黄信号

 白鵬が負けた。半端な立ち合いから──まあこれは慎重な立ち合いとも言える──いなされて、後ろ向きにされて完敗した。
 座布団が舞うかと思ったら、そういうことはなく、逆にしらけたような雰囲気が漂った。名古屋の好角家もみな、千秋楽の朝青龍戦まで白鵬が全勝で突っ走ることを期待していたのだろう。双葉山、照国以来の、戦後初の大関二場所通過の横綱が、自分たちの目の前で誕生することを願っていたのだ。
 
 名古屋場所には独特の雰囲気がある。地元力士が登場すると手拍子が始まったりする。国技館の雰囲気を好むものとしては是認しかねる軽さだが、名古屋らしいといえば名古屋らしい。

 白鵬の一年間の成績が出ていた。左足首をけがし、初の休場をしたのが一年前の名古屋場所だった。あれさえなければ琴欧州よりも先に大関になっていたし、いくつかの年少記録も更新していただろう。とはいえ、吊り上げて土俵内におろしたり、やる必要のない変化技をやってみたり、まだまだ白鵬は相撲に迷っていた。あの一頓挫は充分に価値があったといえる。
 ただそれよりも、あのけがを思い出し、「名古屋場所は縁起が悪い……」と思ってしまった。すると案の定……である。
 厳しい表情をしていた。それだけプレッシャーがあったのだろう。左足首のテーピングは、白いサポーターが見えず、なくなったと思った。あとでアップで見ると、肌色の何枚かが見えた。あれはプラスターか?

 さて白鵬はどうなる。13勝以上で優勝して、歴史的な記録を達成する予定だった。だがいきなりここで躓いた。
 これから持ち直し、14勝、13勝の優勝を成し遂げるのか。そのためにはもう千秋楽まで1敗も出来ない。
 ここでズズっと崩れ、今場所が11勝程度で終ると、綱取りは白紙に戻る。となると、朝青龍や千代の富士の大関三場所通過も無理になるから、いきなり「双葉山照国以来戦後初の」という歴史的快挙から、一気に並の横綱までランクが下がってしまう。
 そのことを思うと、今日の1敗がかぎりなく大きな敗戦に思えてくる。「歴史的横綱」と「並の横綱」の差だ。

 いやいや今場所がどうなろうと白鵬が歴史的大横綱になることはまちがいないのだが、それでも今日の1敗で「戦後初の」が、だいぶ遠のいてしまったのはたしかだろう。明日からも目が離せない。

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 とまあ今日はこれだけ書けた。明日からはどうなることやら。
 たとえ一行でも15日間書き続けたいと誓っているが。

二日目 安心の二日目

●安馬 琴光喜○
 今日も見せてくれた安馬。不利な態勢になりながら残す。もういちど残す。三度目はひっくり返されてしまった。場内から拍手。まさに金の取れる相撲。いい力士だなあ。

○把瑠都 琴奨菊●
 決まり手は引き落としなのだが、解説陣からまたも「はりま投げ」のことばが出ていたように、先場所岩木山を負かしたときのように、把瑠都のこれには把瑠都独特の力強さがある。「引き落とし」というより、「引き落としたたきつけ」のように豪快なのだ。
 今場所は朝青龍戦がある。横綱とはいえ捕まったら勝てない。速さで圧倒するのか。それとも……。
 何日目だろう。いまからわくわくする。

 昨日、場所前に白鵬と把瑠都がかなりの番数、稽古をしたらしく、その映像を流していた。あの把瑠都を捌く白鵬を見て、あらためてその底力を思った。
 今場所把瑠都に最初に土を附けるのは誰だろう。今のところ全勝優勝じゃないかという気がするが(笑)。

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 今日は昨日とちがい順当な日だった。主役の座を奪われそうな朝青龍の氣魄が目立つ。ずっと一人横綱で独走してきた彼にも、やっと尻に火がついたということか。
 稽古をしないとか慢心しているとかいろいろ言われたが、それでも勝ってしまう、優勝してしまうのだから、そうなって当然だったろう。今場所は目の色が違っているらしい。先々の展開が楽しみである。

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× 難題!
 帰宅して録画を見た。怖れていたことが起きていた。ここのところNHK総合の映りが異常にわるいのである。砂嵐状態。今日の汚い映像には白けた。
 実は先場所もそうだった。でも不満はなかった。在宅なのできれいなBSで見たからである。今もBSの映像はきれいだ。ところがHDDレコーダーとテレビをBSケーブルで接続していないので今の私はBSを録画できないのである。今日の帰りにそのケーブルを買ってこよう。力道山時代のプロレスじゃあるまいし、あんな砂嵐の相撲を見てもちっともおもしろくない。
三日目
 旭豊の立浪親方

 向正面解説は立浪親方。美男力士旭豊だ。その美男ぶりを買われて大島部屋の力士なのに立浪の後継者に選ばれた。いわば逆玉。しかし立浪の娘とうまく行かず離婚。すると親方株を返せ(3億で買え)と言われて裁判。それはまあ出て行く婿なのだから、財産を返せとなるのは当然だろう。めでたく勝訴して今も立浪親方をやっている。とはいえかなりの金を払ったのだろうが。
 これは相撲界の典型的な親ばか話である。自分のところの不細工な娘が美男力士に惚れた。娘の夢を叶えてやろうと父親は奔走する。親方株を餌に無事結婚までこぎつけたがやっぱりふたりはうまく行かない。そして裁判沙汰になった。

 これで思い出すのは初代若乃花が娘を二代目若乃花(現間垣親方)に押しつけた例。二代目にはすでにそのとき銀座のママの恋人がいた。二子山部屋継承という餌から間垣はママと別れて結婚する。この娘は「角界の山本陽子」と言われた美人だった。それが唯一この種の例の中では異色だ。
 うまく行かず離婚。間垣はその年上の銀座ママと再婚して、今や理事長すらねらえる立場にいる。私にはこれが意外だった。現役の時から彼にそんな政治色のにおいを感じなかったからである。出羽海理事長(佐田の山)の改革の時にも真正面から反対する守旧派として名が出たりした。だいたいにおいてこの種の読みは当たるのだが、間垣の出世慾は読めなかった。と書いて思った。これって女房がかなり尻を叩いているような気がする。こういう形で結婚したのだから、年上女房としては亭主を協会内で出世させ、どんなもんだとなりたいのだろう。けっこういい線行っているか。

 いい形で行っている珍しい例が佐渡ケ嶽。これまた娘さんは外国留学させたりしてお嬢様に育てはしたが、顔が琴桜そっくりで美人とは言い難い。そこに角界でも有数の美男力士琴ノ若を押しつける。琴ノ若も悩んだことだろう。父の願い、娘の希望、本人の妥協? すべてうまく行き、部屋継承も順調だった。さらに長男は中学を出たら角界入りし琴ノ若を名乗るだと張り切っている。ここまですべてうまく行った例を知らない。

 すこし形は違うが不快なのが宮城野部屋。竹葉山が宮城野親方として動いていたが先代未亡人が娘と結婚した金親にそれを継がせるから返せと言われ、いきなり金親が宮城野親方になる。竹葉山は廃業の危機だった。なにより育て上げた白鵬が日の出の勢いの時である。白鵬の今まで最大の危機はこのときだったとも言える。自分には関われない騒動にかなり落ちこんでいた。金さえあれば白鵬を連れて独立したろうに……。
 なんとか竹葉山は宮城野の部屋附き親方として残り、熊ケ谷の名跡を借りて白鵬の身近にいる。今も白鵬がいちばん慕っているのは竹葉山だ。しかし当然ながら表舞台には金親が出てくる。
 まあもともとがそういう世界であり部外者が意見を言うのは洒落にならないが、だからこそすべての面でうまくいっている佐渡ケ嶽に拍手を送りたくなる。きっと琴桜の娘も父親似で美人ではないが、琴ノ若を立てるいい女なのだろう、とすら思えてくる。

 この後継問題では東関(高見山)はどうなるのだろう。ちょっと下衆な興味がある。

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○把瑠都 旭天鵬●
 いったい誰が把瑠都を負かせるというのか。場所前の稽古で白鵬がなんども把瑠都を負かしている映像を見た。負けた把瑠都がかわいい顔で苦笑していた。それを見て思った。「白鵬ってすごいんだな、あの把瑠都を負かすんだから」。
 判断の基準が狂っている。歴史に残る大横綱になる白鵬をそんな形で評価している。どうやらいま私の中では史上最強力士として把瑠都が最有力候補らしい。

 珍しく栃東、千代大海が元気で、さらには魁皇も調子がいい。しかし早速今日魁皇が敗れてしまった。栃東、千代大海も終盤には脱落して行き、結局は白鵬と朝青龍になろう。いやいや把瑠都の全勝優勝の線もあるぞ(笑)。

○稀勢の里 琴欧州●
 琴欧州戦には稀勢の里は闘志をむき出しにする。いや琴欧州戦に限らず喧嘩を売っているような稀勢の里のふてぶてしさは好ましい。横綱すらも睨み付ける。朝青龍はそれを好ましく受け止めているらしい。いいことだ。
 それにしても琴欧州の元気のなさが気になる。

○雅山 朝赤龍●
 朝赤龍は昨日の相撲でケガをした。どこをいつ傷めたのかわからなかったが、土俵下からあがれずに苦しんでいた。足の親指の靱帯らしい。
 稽古熱心な若者が、それが実り、ひさしぶりに大勝ちして小結にあがったのに、ついてない。気の毒でならない。
 雅山はおおきな星をひとつ拾った。これはアナも「失礼ながら」と断りつつ「ついている」と言っていた。なんとしても10勝あげたい立場としては、この不戦勝は万金に値するだろう。
四日目
 把瑠都、敗れる!

 NHKの映りがわるいことは書いたが、今日のはもう想像を絶していた。「力道山時代のプロレス」を思い出した。白黒画像になってしまっていて、さらにはそれが滲んでほとんど見えない。こんなひどいものを見るのはいつ以来だろう。力道山とブラッシーのころ、こんな感じで映りが悪かった。他のテレビ局が東京タワーを使っているのに日テレだけずっと低い自社の塔から送っていたからである。「日本テレビは映りが悪い」はあの当時の常識だった。プロレスの時間になると屋根に登ってアンテナの向きを変えたりしたものだ。

 電波障害で迷惑をかけているとテロップが流れるのだが、なんでNHKばかりこんなことになるのか。民放はみなきれいに映っている。

 電気屋が開いている時間に店に行けない。よってBSを録画するためのケーブルをまだ買っていない。なんとかしないと終盤の盛り上がりがこんなことではたまらない。5時に帰れる日に秋葉原に寄るのか。それしかあるまい。
 いやなんとか今週の土日は休めそうだ。そのときでいいか。週末の休みを楽しみに待つなんていつ以来だろう。

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●把瑠都 白露山○
 把瑠都が敗れた。怖い顔で白露山を睨み付ける。決まり手は、いまネットを見たら「上手出し投げ」になっている。1秒3。変化ではないし、うまく説明できないが、かなり注文相撲の色合いが強かった。そのことに不満足で把瑠都は睨み付けたのだろう。
 白露山は変化で琴欧州に勝ってから、勝てばいいと解釈したのか。あるいは先場所の吊りで、「まともではぜったいに勝てない」と割り切ったかの。
 本気で15戦全勝かと思っていたのでこの時点での敗戦は意外だった。

○白鵬 露鵬●
 白鵬が叮嚀に相撲を取っている。舞の海が心配していたが、毎日の緊張度合いはたいへんなものだろう。笑顔がない。月並みな言いかただが「自分との闘い」である。
 把瑠都の相撲はわくわくしつつ見る。白鵬の相撲は胃が痛くなるような思いで見る。

○朝青龍 琴奨菊●
 傷めていた右を使っての豪快なぶん投げ。まだサポーターはあるが全快をアピールした。
 強い横綱健在。これでなきゃ。

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 雅山2敗目。結果、どんな形になるのかまことに興味深い。
五日目
 把瑠都、連敗!

 NHKの映りがわるいことは書いたが、今日のはもう想像を絶していた。「力道山時代のプロレス」を思い出した。白黒画像になってしまっていて、さらにはそれが滲んでほとんど見えない。こんなひどいものを見るのはいつ以来だろう。力道山とブラッシーのころ、こんな感じで映りが悪かった。他のテレビ局が東京タワーを使っているのに日テレだけずっと低い自社の塔から送っていたからである。「日本テレビは映りが悪い」はあの当時の常識だった。プロレスの時間になると屋根に登ってアンテナの向きを変えたりしたものだ。

 電波障害で迷惑をかけているとテロップが流れるのだが、なんでNHKばかりこんなことになるのか。民放はみなきれいに映っている。

 電気屋が開いている時間に店に行けない。よってBSを録画するためのケーブルをまだ買っていない。なんとかしないと終盤の盛り上がりがこんなことではたまらない。5時に帰れる日に秋葉原に寄るのか。それしかあるまい。
 いやなんとか今週の土日は休めそうだ。そのときでいいか。週末の休みを楽しみに待つなんていつ以来だろう。

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●把瑠都 白露山○
 把瑠都が敗れた。怖い顔で白露山を睨み付ける。決まり手は、いまネットを見たら「上手出し投げ」になっている。1秒3。変化ではないし、うまく説明できないが、かなり注文相撲の色合いが強かった。そのことに不満足で把瑠都は睨み付けたのだろう。
 白露山は変化で琴欧州に勝ってから、勝てばいいと解釈したのか。あるいは先場所の吊りで、「まともではぜったいに勝てない」と割り切ったかの。
 本気で15戦全勝かと思っていたのでこの時点での敗戦は意外だった。

○白鵬 露鵬●
 白鵬が叮嚀に相撲を取っている。舞の海が心配していたが、毎日の緊張度合いはたいへんなものだろう。笑顔がない。月並みな言いかただが「自分との闘い」である。
 把瑠都の相撲はわくわくしつつ見る。白鵬の相撲は胃が痛くなるような思いで見る。

○朝青龍 琴奨菊●
 傷めていた右を使っての豪快なぶん投げ。まだサポーターはあるが全快をアピールした。
 強い横綱健在。これでなきゃ。

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 雅山2敗目。結果、どんな形になるのかまことに興味深い。
六日目
 白鵬慎重、朝青龍豪快!

 NHKの電波障害についてNさんが教えてくれた。

相撲の項で拝見した「受信障害」による画像の乱れ、これは「スポラディックE層(通称Eスポ)」と呼ばれる、夏の日中特有の自然現象です。

通常であれば、超短波(VHF)と呼ばれるFMラジオやTVの電波は直進性が強く、上空の電離層も突き抜けてしまうのですが、夏の日差しが強い時期(特に午後2時~)には、太陽エネルギーの影響で、電離層の中のE層と呼ばれる部分が特に厚くなってしまい、VHFの電波を地上へ向けて跳ね返してしまうのです。

通常は、この電波の直進性を利用して、FM局やTV局は離れた地域で同じ周波数を使用し、電波の有効利用を計っています。しかし、一旦Eスポが出てしまうと、離れた地域同士の電波が電離層に跳ね返されて干渉し合い、音声の混信や画像の乱れなどを生じるのです。
(昔はよくEスポが出ると東京でFM仙台が聞けたりしたものでした)

 Eスポをの影響をもろに受けるのは、日本ではFM放送とNHKの1&3チャンネルです。NHKの周波数はFM放送にとても近いためです。4チャンネル以降にEスポの影響は出ません。

夜になれば自然に消滅するので厄介なシロモノです。
昨日は晴れて暑かったので、日本上空にEスポが発生したのでしょう。
普段私は日中にNHKなど見ないので、「受信障害」の表示をみて「ああ、夏だな」と感じるのは名古屋場所か高校野球を見ているときくらいでしょうか…


 そうですか「Eスポ」ですか、『東スポ』しか知らないので勉強になりました。感謝。

 『東スポ』が大阪では大スポ、九州では九スポになると知ったときはいかにも『東スポ』らしいと感激したものだった。っていきなり与太話。すみません。

 ありがたかったのは太字の部分。そういう現象であろうとは推測していたが、なんでNHKが? と素朴に思っていた。そうか周波数か。FM放送の仕事をしているのにぜんぜんFM放送を聞いてないのでエアポケットになっていました。
 田舎者の私の世代は「NHKは映りがよい、民放は悪い」の感覚で育った。東京タワーからの電波発射位置がそれだったからだ。
 だからそれこそ力道山時代のころ、おもしろい民放を見たいのに映るのはNHKだけ、なんてときが多く、見たくないのだが見ないよりはましかとしかたなく1チャンネルや3チャンネルを見ていたことがある。その思いこみが強く、「映りの悪いNHK」の理解を妨げていた。
 これって考えようによっては「驕るNHK」への天罰みたいで気分がいいと取れるのかも。映りがわるくて迷惑をこうむるのは視聴者であり、NHKは痛くも痒くもないか。

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 補足
「NHKは映りがよい、民放は悪い」という感覚は、関東近県で東京と同じようにテレビが映った地域の感覚になる。私の生まれ育った「東京に近い茨城」はもろにそれだった。同じ県でも福島に近い日立とかあっちのほうはもう民放は映らなかったから関係なかったろう。福島になるともうNHK2局とごちゃまぜの民放1局の地域になる。栃木、群馬がどうだったかは知らないが(常識的に考えて福島と同じと思う)、茨城や千葉はそうだった。いつもNHKばかりがくっきり映り、民放は映りが悪い。その中でも前記したように自社の電波塔から送信する日テレがいちばんわるかった。
 東京の真ん真ん中で育ったNさんにはわからない感覚と思い補足した。

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 地域によっても違うのだろうか。とにかくここまで映らないNHKを体験したことがない。なんなんだろうね、この地域は。
 砂嵐の中を幽霊がさまよっているような昨日の相撲録画は見る気になれず途中で投げた。今朝、4時過ぎにダイジェストがあり、それはかなり粒子が粗いものの、一応カラー放送になっていたので、やっと昨日の結果を知ることが出来た。このダイジェストは「たしか今頃の時間に最後の放送が?」と思いテレビを点けたら偶然やっていたので助かった。結果はネットで知ることが出来る。しかし感想を書くのだから自分の目で見ないと意味がない。ともあれ見られて良かった。スポーツ紙で結果を知るだけだったらこの日の[感想]は中断しようと思っていた。

 ところでNさん、この現象はれいのデジタル放送とかになると解消されるのですか。お時間があるときにまたその辺の理窟を教えてください。(BS2がきれいに映るのだから関係ないのだろうとは思いますが……。)

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○今日は平穏

 白鵬、把瑠都、朝青龍、安馬と、好きな力士がみなそろって勝った。とりわけ書くこともない。
 白鵬の胃の痛くなるような慎重な相撲(胃が痛くなっているのは応援しているこちらだが)と比して朝青龍は豪快。やはりこの人のいちばんの魅力は気の強さなのだろう。今日からは右肘のサポーターも取れた。
 白鵬はおおらかで動じない、緊張しないのように言われてきた。本人は緊張しているのだがヴィデオを見ると顔に出ていないとわらっていた。
 なのに今場所は明らかに顔に出ている。白鵬も人の子だったことがわかる。
 大鵬や北の湖、貴乃花はどうだったろう。記憶にない。そういう人間観察を出来る齢でもなかった。ただ当時からふてぶてしいことばかりが話題になっていたが、北の湖が顔つきよりはいい人であろうとは思っていた。

 とにかく北の湖は悪役だったので、とくに印象深い。善玉は初代貴ノ花である。練習しないのに強い相撲の天才である猫背の輪島、うまくはまるとその輪島を電車道だった高見山と、このころを絶賛する「往時を懐かしむ若いファン!」がいることが理解できる。毎度言うことだがこういう若いオタク系のファンを見ると、力道山時代のプロレスを最高と言うプロレスオタク(もちろん当時を知らない)を思い出す。

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○雅山の星勘定
 雅山が稀勢の里を引き落としで3勝目をあげた。この人の場所後が興味深い。いろんな意味で興味深い。ある意味、優勝争いよりも興味がある。もしも復帰したら魁傑以来なのだが、魁傑よりももっと劇的で価値があるように思う。

 長谷川がそうだったように5人も大関がいるから、半端な数字だと見送られる可能性もある。
 かといって今の相撲を見ていると、これから大関横綱を倒し、先場所のような文句なしの成績を上げるのはむずかしいだろう。すでに2敗している。なにしろ魁皇にすら負けてしまった。今日は千代大海だ。対戦成績はここのところ連勝しているから、なんとしてもカモにせねばならない。
 初日から4連勝だった千代大海は予定通り早くもつまづいた。北の富士が褒めたらすぐ負けたので、「褒めすぎたねえ」と苦笑していた(笑)。
 白鵬、朝青龍、把瑠都には勝てないから、千代大海、栃東、琴欧州を倒さないと大関復帰はかなわない。力士名を挙げると、これだけで10勝5敗になる。なるほど北の富士と舞の海が懸念していたように前途多難とわかる。やはり先場所の14勝は特別だったか。
 後記の三人に確実に勝たねばならない。栃東だって全勝だ。どれかを落としたら、前記三人からひとつ星を拾わねばならない。その他の取組は全勝と假定してだ。う~む、こりゃむずかしい。
 初日の露鵬戦を落としたことがいかに大きいかがわかる。そして朝赤龍で拾った不戦勝の価値も。
 どうやることやら。

 もちろん私は応援している。こういうのってそれこそ「青少年に勇気を与える」になるだろう。いや中高年、か。史上最速とも言える形で大関になり(しかも十両連続優勝の金字塔だ)、陥落し、5年も平幕をさまよったあげくの復活である。親子鷹だったお父さんは復活を見ることなく若くして逝った。いやお父さんがいなくなったからこそ本気になったと言える快進撃だ。

 しかし今の相撲では復活に黄信号だ。目が離せない。

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 今日も留守録予約して行くが、きっとひどいものだろう。明日土曜に電気屋でケーブルを買ってくるまでの辛抱だ。
 土日の休みが楽しみなんて何十年ぶりの感覚だろう(笑)。
七日目
 もしも見られる勝負が限られたら!?

 いま大相撲を一日に一番だけ取組が見られるとしたら……、と考える。なんらかの都合で見られる番数が限られてしまい、選ばねばならないのだ。

 そりゃ大変な時期だからもちろん迷うことなく「白鵬」を選ぶ。
 でも今場所を過ぎたら「把瑠都」のような気がする。とにかくもあらゆる面で大相撲の枠を飛び越えた把瑠都の相撲は見ているだけで楽しい。本人の目指す位置も高く、勝っても驕らず、不満を漏らし反省するあたりが頼もしい。大成する人にはこの感覚が大事なのだ。学習能力が高いから先日の白露山戦のような負けも、すぐに悔しさから対処法を学ぶだろう。
 把瑠都の可能性に対してくどいほど「末恐ろしい」と口にされるが、いまでも充分に驚異であり、完成されてしまう「チョイ先」より、途上の今こそが「最高におもしろい」。
 こういう力士に出会えただけで相撲好きである喜びに酔う。私は小錦にも曙にもそれは感じなかった。まったく異質の傑物である。今までに何度も書いているし、これからも何度も書くだろうが、私が史上最強と崇拝するあの大鵬が、「あんな相撲取り、見たことがない!」と驚嘆しているのである。把瑠都は雷電や谷風をも超越する存在になるだろう。

 把瑠都を超越した身体能力から見ていた私に、彼は決して己の身体能力にのぼせてはいず、研究熱心でもあるのだと教えてくれたのは宮嶋さんだった。そのことに対して私は「アンドレとライガーの違い」のような形で意見を言った。その意見に宮嶋さんも納得してくれた。基本は一緒だから対立はない。
 でももちろん意見として宮嶋さんが正しい。宮嶋さんは、「あの恵まれた体力、運動神経、それらを持ちながら、彼は慢心することなく、日々創意工夫をしているのです」と教えてくれた。私の言ったのは、「そういう工夫がすぐに結果として反映されるのは、とんでもなく恵まれた体力があるからでしょう」というものだった。これはへたしたらインネンになってしまう。それなりに本質論ではあるが。

 アンドレはあまりに超越した自身の肉体能力をもてあまし、ロシモフ時代の伸び盛りのころはともかく、ビッグネームになってからは練習などしなかった。試合前から酒を飲んだ。唯一気遣ったのは己の肉体で人を殺さないようにという遠慮だった。

 プロレスをショースポーツとして蔑視する人がいる。そういう人は人生の機微を知らないつまらない人だと思う。私にとってプロレスの最も大きな価値は、そういう判断のフィルターとなってくれたことである。
 私はプロレスに関する本質論はこのホームページで書いていない。一点だけ書くと、「ショースポーツがリアル格闘技より楽とは言えない」である。一発もパンチを受けないようにして闘うリアル格闘技よりも、思いっきり大きく投げられてバウンドしたり、空を飛んで自爆したりするショースポーツの方が蓄積する肉体的ダメージは大きい。廃人になる可能性も同じだ。それを考慮せずジャンルの上下を決めようとする人は人生の味を知らない人である。

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 もしも三番だけ見られるとしたら
 白鵬、把瑠都と朝青龍か。

 もしも五番だけ見られるとしたら
 白鵬、把瑠都、朝青龍、琴欧州、安馬、高見盛か。あ、六番になってしまった。もうここまで来ると限るのは難しい。取組次第だ。だいきらいな千代大海でも相手次第では見たいと思う。安馬までを五番にして、七番見られるとしたら高見盛と豊真将を加えよう。
 高見盛をただのショーマンとして軽視する人もいるようだ。中にはわざとらしいパフォーマンスと嫌う人もいるらしい。わかる気もする。いきなり今あれを見たらひくか(笑)。
 しかし出世前から彼を見てきた身としては、なんともいとしい力士である。いったい彼と一緒になんど気合い入れをやったことか(笑)。四十肩で出来ないときは悔しかったものだ。日々寝返りをするのにも痛む四十肩だが、いちばん悔しかったのは高見盛と一緒にあれが出来なかったことだ。
 高見盛のそれは小心を克服しようとして自然に出たものだった。受け狙いではない。そんなことで言うなら、かつての水戸泉の塩撒きや今の北桜の気合いのほうがよほどわざとらしい。それはカトちゃんこと高見盛を応援してきた人なら誰もが知っている。

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(15日土曜の相撲)
 露鵬問題

「今日は録画じゃなくてBSで見る。Eスボとかの影響でNHK総合が映りがわるくても関係ないぞ!」と鼻息荒くテレビの前に陣取る。この五日間さんざん汚い映像でイヤな思いをした。今日はBSで見られる。画像の乱れは関係ない。好きなだけ乱れてくれ。くっきりきれいなBSで見つつ念のためにNHKを見たら、こっちもきれいに映っていた。なんとも意地悪い。Eスポ現象は去ったらしい。あの嵐で吹っ飛んだか。
 先場所までやっていたように膝の上にラップトップを載せて観ながら書く。これが楽。
 あいかわらず焼酎のオレンジジュース割りをちびちびやっている。ヨーグルトはもう空いてしまった。
 朝の8時からだからさすがに酔ってきた。

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●高見盛 黒海
 引き落としで明らかに負けの体勢になった高見盛は、それでもしつこく勝利への執念で黒海の足にしがみついた。すでに高見盛の体は地に着いていたが、もろに「お願い、捨てないで」としがみつく態勢。両足にしがみつく高見盛の両肩を、黒海は上から駄目を押すように押しつぶした。
 なんとしても勝ちたいという醜いまでのこだわりが醜さを通り越して美しくさえあった。高見盛の悔しそうな顔と肩に着いた土が美しかった。
 黒海は高見盛の粘りで腰を痛めたらしい。もしも明日から休場になったりしたら、いい迷惑のくそ粘りになる。

○普天王 把瑠都●
 普天王が出足鋭く諸差しになる。そこで把瑠都は引いてしまう。普天王はその気に乗じて一気に出る。把瑠都は恵まれた体力で粘るが、普天王は休み無く攻め、寄り切った。
 アナが叫ぶように言う。「把瑠都、今場所初めての完敗です!」
 先日の白露山戦での負けとは違う。まさに完敗。子供の時から相撲を取ってきた普天王が先場所の負けを反省し、考え抜いての見事な勝利だった。
 どれほど見事だったかというと、私はテレビの前で拍手をしていた。普天王のあまりに完璧な把瑠都攻略に喝采を送っていた。把瑠都もこの完敗で学んでくるだろう。普天王、見事である。きょうのブログは多くのファンが訪れるだろう。私も把瑠都攻略に関してなんと言っているか、ひさしぶりに行きたくなった。

○白鵬 垣添
 白鵬、またも左の張り差し。やめてくれよ、この外国人力士の張り差し連発は。ほんとに醜い。
 引き落とし。悪い勝ちかた。引いちゃダメだと思っていたときに引いたものだから、思わずテレビに向かって「だめだよ、引いちゃ」と声を出してしまった(笑)。こんなこともめったにない。やはりただの大のファンである把瑠都と比して、白鵬応援には感情がこもっているようだ。いや、もう酔っていたからでもある。小柄な垣添だからふっとんでしまったが着いてこられたら負けていてもおかしくない。雑な良くない相撲だ。
 解説の芝田山(大乃國)は、足が流れていないと褒め、アナも引きはしたが落ち着いていましたよねと相槌を打っていたが、白鵬好きとしては不満の残る勝利だった。まあ考えようによっては一回りいやふた回り体力に余裕のある白鵬が、ちいさな垣添を軽くあしらったと言える相撲なのだろうが、とにかく私は不満である。

○栃東 旭鷲山
 栃東かるく旭鷲山を押し出して7連勝。
 それよりもその前に流れた旭鷲山が栃東を放り投げ圧勝する先場所のヴィデオが印象に残った。強すぎる。この人、本気と手抜きをどう考えているのだろう。これで今場所は7連敗(笑)。思いっきり星を売って負け越し、来場所もまた売って負け越し、幕尻ぎりぎりまで下がった来来場所辺りに本気になってまた二桁勝ったりするのだろう。なんとも奇妙な「旭鷲山的エレヴェイター人生」である。

○琴欧州 雅山●
 琴欧州、引き技による勝ち。これも応援している身としてはうれしくない。ただ雅山の頭の下がるのが見えたから反射的に引いたのはしかたないかもしれない。それでも好調の時にはほど遠い内容だ。
 雅山の劇的な大関復帰はこれで終ったろう。あらためてむずかしいものだと思う。先場所14勝をあげてあれだけ強かったのに……。

○稀勢の里 魁皇●
 稀勢の里が左四つから堂々の勝利。互いに右上手がとれない形で長引いたが、力で押し切ったなんとも見事な勝利。舞の海もアナも絶賛。

○千代大海 露鵬●
 千代大海の突っ張りに露鵬が引き簡単に勝負はついた。
 ところが土俵下で千代大海が口をとんがらせて何かを言っている。露鵬があの目つきの悪さで言い返す。ほとんどチンピラのケンカ(笑)。いやチンピラ以上、やくざのケンカ。
 こういうことをしてはなりません、相撲は礼に始まり礼に終るのですからと芝田山とアナはわざとらしいきれいごと(笑)。
 どうやら露鵬が張ったことに千代大海が文句を言ったらしい。立ち合いで張り手を出している。ヴィデオで見る限りそれほどのものではない。
 とにかく突きだした千代大海が土俵下で口をとがらせて露鵬に何かを言ったのは事実。それを露鵬が正面から睨み返して不穏な空気が漂った。桟敷にいた人は千代大海がなんと言ったか聞いたろう。なんだろう。「ざけんなよテメー、コノヤロー」のような汚い言葉であるのはまちがいない。
 そのあと土俵に戻った露鵬は千代大海を睨み付け、礼もせずに降りた。最低である。これは絶対に許されない。

 私は露鵬が十両のころ(初めて見たとき)から嫌いだった。いや最初は理想的な体つきに期待した。しかしどうにも顔つきが悪い。土俵上での態度が悪い。親方(当時大鵬、後に貴闘力)はなにをしているのだと苛立った。指導者としての大鵬の力量は疑問有りだが、貴闘力はそういうことに対して厳しいはずである。ところが貴闘力になってからますますひどくなっている。
 たまーに千代大海のことを書くとこんな内容(笑)。

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 栃東、朝青龍が7戦全勝。
 きれいなカラー映像で見る大相撲がいかに楽しいかを、初日以来ひさびさに知った一日だった。不自由になるといろんなことで感激する(笑)。
中日
 ×露鵬問題尾を引く

 日曜、朝6時のニュースで露鵬が風呂場の窓ガラスを割り、写真を撮ろうとしたカメラマン二人を平手で殴り、うちひとりに怪我をさせたと報じていた。やってくれたか。
 ただしこのけがは大仰に報じているところもあったが実態はたいしたことはあるまい。写真を撮ろうと群がったところを「撮るな!」と腕で払ったら、たまたまそれがカメラマンに当たった。それを「平手で殴った」と報じているのだろう。カメラが顔に当たりほんのすこし唇を切った程度でも医者に駆け込む。その程度の話と思う。
 マスコミはこういう大騒ぎが大好きだ。さんざん人をいじくり回し暴力的なくせに、自分たちに関してはかすり傷でも大げさに騒ぎ立てる。最低の連中である。推測で書いているので、もしも本当に露鵬が本格的な暴力をふるい、もしかして重症だったらかってな推測を詫びる。どうやら被害者はマイニチシンブンらしい(笑)。

 ブロレスでは日常的である。しかし誰も大騒ぎしない。出来ない。プロレスラーに取材してなんぼの世界だからだ。力道山はプロレスマスコミを自分たちのタイコ持ちとしか思っていなかった。その名残である。
 ほんの少しのこの程度で大騒ぎする新聞社はいやだなと思う。露鵬は大嫌いだが、いかにも日本のクソマスコミらしくテメーを被害者面して大騒ぎするなよ、が私の正直な気持ち。

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 三連休のあいだはメイルチェック以外ネットはやらない予定だったのに、16日の朝っぱらからこの件について調べ始める。いい迷惑だ。大嫌いな千代大海と露鵬が起こした問題である。しかしこうして大相撲の観戦記を書いている以上、看過は出来ない。

 ▽露鵬 負けて悔しかった。(敗れて)目を合わせた時(千代大海から)「なんだ、オラ」と言われて切れた。自分が何を言い返したのか覚えていない。悪かったと思っている。

 ▽北の湖理事長 正々堂々とやっている中、見苦しい。マナーが悪い。相手を敬う気持ちを重視しないといけない。露鵬の処分? (既に注意したので)ないよ。

毎日新聞 2006年7月15日 


私はリアルタイムで勝負を観ていた。だから発言できる。土俵下でインネンをつけたのは千代大海である。悪いのは千代大海だ。
 きっかけである露鵬の張り差しにそれほどの問題があったとは思わない。ふたりは前々から仲が悪かったとネットにあったが。
 あれで露鵬が礼をしていれば問題はなかった。興奮して風呂場のガラスを割ろうと、同情は露鵬にいったろう。

 この時点で北の湖が「処分はない」と言っているのが興味深い。波紋が広がり、あとからせざるを得なくなったのだ。


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 2ちゃんねるの「相撲板」を覗いてみた。三連休のあいだ2ちゃんねるには行かない予定だったのに。まったくつまらん問題でいい迷惑。

57 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2006/07/16(日) 05:07:09
この事件の裏にはやはりあの件が・・・

千代大海「おい、拒否権発動してんじゃねーぞ、こら!」
露鵬「なにお、そっちこそたった7発で過剰反応してるんじゃねー!」
千代大海「なんだと、このロスケ」
露鵬「上等じゃねーか、デブの元ヤン!」
千代大海「お前は東アジアの防衛戦略についてどういう見解をもってるんだよ。説明してみろ!」
露鵬「6カ国でまずやるべきだろうが!」

いやあ、こういう遊び、大好きです。
 ここに春日王が出てきて韓国の意見を言い、朝青龍も内モンゴルとチベットに関して意見を言ってくれると理想的ですな。でも元ヤンの千代大海がロスケという蔑称を知っているかどうかは疑問。無知でもやたらこんなことには詳しかったりして(笑)。


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58 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2006/07/16(日) 06:38:45
記者って本当に大げさに書くのが好きだな
露鵬がかわいそうだよ

怪我もしてないのに病院に行って金を取ろうとしてるのはどこのなんて奴だよ
こういうのにはまじで死んで欲しい

59 名前:待った名無しさん[] 投稿日:2006/07/16(日) 06:55:24
記者やカメラマンは、力士とは持ちつ持たれつの関係だ。
観客や単なる一般人と同じ扱いするな。
あの状況で、カメラ向けられてたら誰だってあの程度のことするぞ。
芸能人や事件の被害者や加害者相手の場合もよくある。

プロなら、そうした状況判断をして、そのくらいの覚悟でカメラを向けろ。
嫌がる相手を盗撮して、見つかったら殴られるのと同じ覚悟を。


これは決して相撲オタクの力士贔屓ではない。極めて真っ当な意見と思う。
 ほんとにマスコミってのはテメーが人を傷つけることには鈍感なのに、自分たちがやられると敏感に大騒ぎする。その典型例だろう。


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 大相撲名古屋場所7日目の15日、東前頭3枚目の露鵬(26)=本名ボラーゾフ・ソスラン・フェーリクソビッチ、ロシア出身、大嶽部屋=が取組後に毎日新聞社と中日新聞社のカメラマンの顔面を平手で殴るなどの暴行騒ぎを起こした。毎日新聞社のカメラマンは顔面打撲で4日間の休業加療を要すると診断された。中日新聞社のカメラマンにけがはなかった。

 露鵬は大関千代大海に押し出しで敗れた後に千代大海をにらみつけ、土俵下で口論。そのまま引き揚げると支度部屋近くにある風呂場のガラスを素手で割った。審判部で注意を受けた後、写真を撮ろうとした2人の男性カメラマンに襲いかかった。

 露鵬は「大関に“何だこら”と言われて、キレてしまった。自分をコントロールできなかった。すみませんでした」と話した。露鵬の師匠、大嶽親方(元関脇貴闘力)も2人のカメラマンに謝罪。「部屋に戻って厳重に注意しておきます」と頭を下げた。

 露鵬と千代大海は日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱北の湖)からも注意を受けた。

 毎日新聞社は「取材記者への暴力行為は誠に遺憾であり、スポーツマンとして許されないこと」などとコメントを発表、16日に露鵬と相撲協会にあらためて抗議する。

 ▼千代大海の話 自分も悪い。非常に申し訳ないことをした。お互いが熱くなってしまった。自分から理事長のところへ行って、すいませんでしたと言った。(『スポニチ』より)

これはマイニチシンブン系のスポニチの記事である。うんざりするほど大げさだ。露鵬が本気で「写真を撮ろうとした2人の男性カメラマンに襲いかかった」ら殺されている。
 私はこの内容に納得しなかったのでもうすこし詳しく調べてみた。すると以下の記事を見つける。



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 ▽気遣う白露山「兄は気合が入り過ぎる」

 怒りの収まらない露鵬は風呂場のガラス戸をたたき割った際に右手を負傷。手には血染めのタオルが巻かれていた。

 支度部屋に戻って来た時には落ち着きを取り戻しており「すいませんでした」と報道陣に平謝り。しかし「負けたことは悔しいけど、(取組後の)大関の言葉もいけない」と話した。
風呂場で一緒になった千代大海に「これからも頑張りましょう」と話し掛けたが大関は無言だったという。

 敗れた外国出身力士が感情をあらわにすることはよくあり、マナーの悪さを指摘する関係者は多い。結びの一番を控えた弟の白露山は問題の一番を土俵下で見ており、役員室で注意を受けた兄に付き添った。「露鵬の顔を見ていて何かあると分かった。昔から気合が入りすぎて相撲が終わってもなかなか抜けない」と心配顔で話した。(中国新聞より)



ここには報道のこわさがよく出ている。あるいはTBSに代表される事実のねじ曲げである。
 マイニチシンブン系スポニチの記事を読むと露鵬に一切の反省はない。ひたすら風呂場のガラスを割り、マイニチシンブンカメラマンに暴力をふるい、と悪いことばかりだ。

 しかし中国新聞の記事を読むと、露鵬は風呂場で千代大海に話しかけている。それを千代大海が無視した。それで再び頭に血が上りガラスを割り、怒りの表情を撮ろうと群がってくるカメラマンを振り払ったのだ。たまたまその中のマイニチシンブンカメラマンに手が当たった。それだけである。

 もしも風呂場で千代大海が、「おお、おれも悪かった」とひとこと言っていれば、そのあとのガラス割りも暴行(なんて私は思っていないが)も起きていない。

 露鵬はたしかにわるい。どんなに腹が立っても土俵を降りるときに礼をしなかったのは許されない。それは異国から来た青年にそれを仕込めなかった大鵬と貴闘力の責任である。

 露鵬は以前にも問題を起こしている。横綱に対してだ。
 巡業で稽古をつけてもらったのに頭を下げなかった。朝青龍が横綱に稽古をつけてもらったのだから「ごっちゃんです」と言えと注意した。露鵬は「土俵の上ではそんなことは関係ない」と反論した。こんな感覚の人間が幕内にいることが問題だ。
 私は大鵬を史上最強の力士と崇拝している。しかしこの人は相撲以外ではいくつもの点で問題がある。スキャンダラスなことをしったかぶりするつもりはないので省くが、天才力士とは(本人は天才ではなく人の何倍も努力した努力型だと主張している)相撲の天才であり人育てとそれは無関係ということだろう。
 貴闘力のファンは多く、私は長州力が嫌いなように彼のファンとは相容れない。餘談ながら貴闘力の四股名は長州力からとっている。もちろんルーツも同じ。このことにも露鵬の件でひとつの結果が出たように思う。

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 16日午前10時、コンビニで競馬用にサンスポを買ったら一面がこの事件だった。



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 16日午後4時、せっかくの三連休なのでインターネットは切ったままだった。どうにもこの事件が気になりサンスポサイトに繋いでみる。と、以下のことが速報で載っていた。おどろいた。これって前代未聞だよね?
 ないな、記憶にないもの、こんなこと。

 どうやら私の生まれる前に一度あったらしい。そんな大昔のことどうでもいい。「初の出来事」と言っていいだろう。

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露鵬が3日間の出場停止-取組後、カメラマンに暴行

大騒動の発端は土俵下で千代大海との“口論”から始まった=撮影・佐藤豊行(7/16付紙面より)大騒動の発端は土俵下で千代大海との“口論”から始まった=撮影・佐藤豊行(7/16付紙面より)

日本相撲協会は16日の理事会で、大相撲名古屋場所7日目(15日)の取組後にカメラマンに暴行を加えた幕内露鵬に対し、8日目から3日間の出場停止処分を決めた。(サンスポより)

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露鵬処分:3日間の出場停止、親方3カ月10%減俸

 日本相撲協会は16日の理事会で、大相撲の東前頭3枚目、露鵬関(26)=本名、ボラーゾフ・ソスラン・フェーリクソビッチ、ロシア出身、大嶽(おおたけ)部屋=を同日から3日間の出場停止、師匠の大嶽親方(元関脇・貴闘力)を3カ月間の10%減俸と処分した。力士の出場停止は1943年に無気力相撲で例があるが、戦後は初めて。

 理事会では大嶽親方が、写真記者らに対する暴力行為について「スポーツ人としてあるまじき行為。指導を徹底したい」と謝罪。生活指導部長の伊勢ノ海理事(元関脇・藤ノ川)が各部屋の師匠と力士に再発防止の通達を出した。現行の罰則には出場停止がないが、事態を重く受け止め、特別動議を出して出場停止を決めた。

 また、北の湖理事長は「土俵の態度が著しく乱れている。礼儀作法は自覚をもって臨むこと」という厳重注意の張り紙を支度部屋に掲示した。【上鵜瀬浄】

 ◇通路での立ち止まり取材は禁止

 露鵬の暴行を受けて日本相撲協会は16日、愛知県体育館の理事室、審判部室、力士風呂場の前の通路で立ち止まって取材しないよう報道各社に口頭で伝えた。異例の取材規制だが、通路が狭く再発防止を優先した判断という。取材対象となる理事室、審判部室への入室はこれまで通り認めた。北の湖理事長は「力士がすれ違う時に同じ行為が起こってはならない。再発防止はさらに検討する」と説明した。

 暴力に対しては「深く反省し、指導する」と話した。処分には解雇、番付降下、給料手当減額などがあるが、出場停止は日本相撲協会の施行細則にない。しかし落ち度のない取材への暴行を重視し、「状況に応じて考えた」と言う。さらに露鵬の成績(4勝4敗)を挙げて「勝ち越しが難しくなる重い処罰」と話した。土俵下でにらみ合った7日目の取組は、千代大海とともに既に注意を受けている。【上鵜瀬浄】

 ▽露鵬関の話「悪いと思っている」

 殴るつもりではなく、悪いと思っている。これからは気をつけたい。(ロシアの)父から電話があり、怒られた。インターネットにサッカーのジダンと並べて、自分の写真が使われていたらしい。場所に戻ったら思い切り相撲を取る。

 ◆これが施行細則94条、同95条だ

 日本相撲協会施行細則94条 年寄、力士として相撲の本質をわきまえず、協会の信用もしくは名誉を毀損(きそん)するがごとき行動をなしたる者、あるいは品行不良で協会の秩序を乱し、勤務に不誠実のため、しばしば注意するも改めざる者ある時は、役員・評議員・横綱・大関の現在数の4分の3の特別決議により、これを除名することができる。

 同95条 年寄・力士・行司・職員およびその他協会所属員に対する賞罰は、解雇、番付降下・給料手当減額・けん責の四種とし、理事会の議決により行うものとする。

 ◆毎日新聞社が協会に抗議

 この問題で毎日新聞中部本社は16日、日本相撲協会に抗議した。
 同本社の中山義彰編集制作総務が(1)ルールを守って写真取材をしていた記者への暴力は極めて遺憾(2)今後、こうした行為が起きないよう協会の対応を求める--と口頭で申し入れた。これに対し、日本相撲協会の伊勢ノ海理事(生活指導部長)は、毎日新聞社に対し謝罪したうえで、「力士が土俵内外でマナーを守るよう協会として各部屋を指導する」と述べた。
毎日新聞 2006年7月16日


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○八日目の相撲

 肝腎のことがおろそかになってしまった。観ながら書いていたので文はある。

○雅山 琴奨菊●
 土俵際まで押し込み、引いて勝つ雅山の相撲。いつもこれをやるから嫌いだった。千代大海も同じ。
 ところがここ二場所、雅山はこの引きをやらず、押した場合も、突っ張った場合も、そのまま押し出した。だから相撲が変ったと応援する気分になっていた。結局はまたこの形になった。
 解説の琴錦(竹縄親方)は「不調なときはこんな勝ちかたでもいいでしょう。白星がなによりの薬ですから」と軽薄に語っていた。いやとにかく琴錦、軽い軽い(笑)。
 思えば天才力士として騒がれ幕内最年少の時期もあった人だった。結局大成しなかったが平幕で二回優勝している。天分は誰もが認めていた。問題は精神だったのだろう。
 ここのところ旭豊、琴ノ若とごく普通に話す親方らしくない親方が連続していた。琴錦になるともうその辺のインチキ不動産の営業マンのよう。いくらなんでも軽すぎる(笑)。

○琴光喜 把瑠都●
 把瑠都3敗目。これまたいい勉強になったろう。立ち会いの上手下手。ぶつかった瞬間、琴光喜はうまく中に入っている。どんな形でもまわしを取れば何とかなる把瑠都は右上手にこだわる。つかんだと思った瞬間、はたき落とされていた。左足が流れている。ついていっていない。敗因はあれだ。

 琴錦が把瑠都はそんなに重くないと琴光喜と話していたと、自部屋の力士が勝ったものだから勝てば官軍の解説。ああいう大きい人は棒立ちにすれば重心が後ろにかかるのでウンヌンと言いたい放題。けったくそわるい。
 把瑠都、来場所琴光喜を叩きつぶしてくれ!

 戻ってくる把瑠都がかわいい顔で悔しがっている。ほがらかに悔しがっている。この笑顔がこの人の魅力だ。そこが露鵬と違う。
 立ち止まっている控えの通路にテレビがあるらしく、勝負の終った力士はみな、そこで自分のヴィデオを見るらしい。そこにいる把瑠都を意識して、アナが「ヴィデオを見せて上げましょう。勉強をしてもらわねばなりません」と笑いながら言う。不快。
 今の世の中、みんなこうなって行く。いちばん嫌いなのがフジのアナ。競馬中継などもう音を消す。実況を聞いて不愉快になりたくはない。NHKまでそうなれなれしくなりなさんな。まったくもう何様のつもりだ。力士になれなれしいことがいい中継ではない。
 とはいえ彼もまた私の把瑠都に対する気持ちと同じく、ファンであり、いとしくてかわいくてはしゃいでいる、とも言える。でもそこに一線を引くのがプロの仕事だろう。

 誰よりも多く把瑠都の怪物性と前代未聞のすごさを口にしていた北の富士が、琴光喜に完敗したのを見て、「相撲はそんなに甘くありませんよ」と一転しての辛口。この人、それが持ち味なんだろうけど、ころころ変りすぎる。
 とにかく把瑠都、来場所琴光喜を突き飛ばしてくれ!

○千代大海 白露山●
 弟が出場停止になった兄の敵?をうつとおもしろかったがあっけなく負け。
 露鵬の問題は、風呂場のガラスを割り、カメラマンを手でなぎ払って結果的にけがをさせたということで完全に露鵬が悪役になってしまったが、私の見解では、土俵下で「なんだ、おら」と言ったという千代大海にも問題がある。しかし露鵬はそのあと、礼をしなかったのが致命的。これは絶対に許されない。

○白鵬 稀勢の里●
 白鵬がいい相撲で勝った。左四つ。左下手投げから巻き替えて諸差し。稀勢の里もよくやった。
 勝っても負けても不満げなふてぶてしい顔をしている稀勢の里が、寄り切られたあと、すがすがしい「まけたあ」というさっぱりした顔をしていたのが印象的だった。

○栃東 露鵬●
 栃東不戦勝で角番脱出。栃東は朝青龍、白鵬に分がいい。後半の台風の目か。
 なんとしても今場所は白鵬は勝つだろうが。

○琴欧州 魁皇●
 魁皇が諸差しになってしまい(笑)、あっけなく寄り切られる。琴欧州の圧力の強さなのだろうが、アナも解説の琴錦も「諸差しになられたことがないので戸惑ったのではないか」と言って笑っていた。

○朝青龍 安馬●
 四つになり、寄り切られるかと思った安馬が土俵際で残り、場内が沸いた瞬間に強烈な右からの下手投げ。安馬ファンとしてはせめてあと数秒、わくわくさせてもらいたかった。
 横綱は昨日からまたサポーターを巻いているがいらないだろう。
「右でも左でも投げを打てますからね」と北の富士。
 やはり優勝一番手は横綱だ。次いで白鵬。それ以外は問題外。

九日目

海の日



 露鵬問題──みのの糾弾!?

 朝7時40分、みのの『朝ズバ!』。この問題を取り上げていた。みのは朝青龍や白鵬と飲みに行くあいだがらだけあって朝のワイドショーではいちばん熱心に相撲を取り上げる。

 まず気になったこと。
 前記の新聞記事では
「風呂場で一緒になった千代大海に「これからも頑張りましょう」と話し掛けたが大関は無言だったという──中国新聞」
 だった。露鵬から千代大海に近寄ったのに千代大海が無視したのだ。このあと露鵬は風呂場のガラスを割り、しつこくくいさがるカメラマンを手で払うことになる。

 ところがみのは写真入りのフリップを指しつつ、「風呂場まで千代大海を追いかけた露鵬が、『おい、おれに対して『なんだ、おら』と言ったな」と言い、ガラスをたたき割った」と言ったのである。絶対に許せないと。

 この違いは大きい。中国新聞が真実だとすると、露鵬は自分から頭を下げたのに千代大海に無視され、憤懣やるかたなくガラスをたたき割ったことになる。
 ところがみのの報道が事実なら、露鵬は大関を風呂場まで追いかけていって罵詈雑言を浴びせ、そのうえ威嚇のためにガラスをたたき割ったことになる。

 さて真実はどちらだろう。

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 私は中国新聞の報道が真実と思う。いや「事実に近いと思う」。しかしこれは「露鵬の独白」でもある。じつは大嘘で、TBSが正しいのかも知れない。とにかく好きな力士なら誰がなんと言おうと、後々笑いものになろうと、力士側の肩を持つのだが、大嫌いな露鵬なのでどうにも足場が心許ない(笑)。

 みのが強調していたのは「マイニチシンブンのカメラマンが気の毒でならない」だった。捏造のTBSである。マイニチシンブン系である。これで他局の報道と異なっていたらまた恥を掻くことになる。
 まあ露鵬のことだからそれぐらいやっていてもおかしくはない。この辺はそのうちわかることだから新情報が出たら後日また書く。まちがっていたら謝罪する。

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 それを別件としても、なんともみのの意見でひどいと思ったのは、「暴力をふるったスポーツマン、けがをしたカメラマン、カメラマンが気の毒でならない」という大仰な主張だった。
 コメンテータの弁護士もそれを受け、「これはもう立派な刑事事件です。処分が軽すぎます」と続き、みののコメントは「力士に取材しなければならないから、こういうことをされても涙を呑んでがまんするのでしょう。カメラマンが気の毒ですよ」となってゆく。ああ、その前には「今朝はそのためにも弁護士の大沢さんに来てもらってます」と言ったのだった。とにかく力士が暴力をふるい無垢なカメラマンが大けがをした、という路線にもって行きたいらしい。その後の目隠しをめくってのフリップ解説では、つい「カメラマンが四ヶ月のけが」と言ってしまい、周囲から「四日です」と言われていた。そのことからみのがどんな切り口で語ろうとしていたかがわかる。たまらん気持ちになってチャンネルを替えた。みのの番組を見ていてチャンネルを替えるのはフクシマミズホが喚いていたとき以来だ。

 この人は良くも悪くもいい加減だから逆に安心してみていられるのである。本人の「ぼくはジャーナリストじゃありません。ただの芸能人です。だから言いたいことを言います」という姿勢がいいのだ。
 だが今回は「露鵬は絶対に許せない。マイニチシンブンのカメラマンが気の毒だ」で一貫していた。思わずみののお気に入りの力士が、みのの大嫌いな新聞社に同じ事をしても、同じ意見を言うだろうかと考えてしまった。

 とにかく露鵬というのは前々から無礼な力士である。みのは朝青龍と飲んだときにも前記した彼の無礼について聞いていたかも知れない。とにかく礼儀知らずである。みの個人にとっても好ましい力士ではあるまい。あるいは朝青龍との会話で露鵬に憤っていたのか。
 しかし、だからこそ相撲好きのみのには、土俵を降りるときに一礼をしなかった露鵬の無礼、それを教えられなかった大鵬と大嶽の未熟、そこから責めて欲しかった。ひたすら「カメラマンへの暴行」ばかり言いつのる姿勢には不満である。

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 それを聞いていて政治家のことを思った。
 閣僚はあの「ぶらさがり」と呼ばれる取材で、顔の周りに何十本ものマイク、ICレコーダを向けられる。そのままそれにぶつらかないよう、みんなでそろそろと移動する。マイクを突きだした何十人も一緒に移動することになる。なんとも奇妙な光景だ。見ているだけで憂鬱になる。
 まともにしゃべることがある政治家なら記者会見する。そこまで行かなくても立ち位置でしゃべる。そうではなく出来事に対してコメントを求められるだけだし、だいたいにおいてそれは応えられることではないから、ひたすら黙るだけである。口をへの字に結び黙ったまま顔の周囲に何十本をマイクを突きつけられ、そろそろと集団が移動して行く。まことに気味が悪い。
 あれでもし「いいかげんにしてくれ」とそのマイクを手で払ったなら、たかがそれだけの行為なのに、あっという間に「暴力行為、マイクが壊れ、メガネが割れ、記者全治三日」「絶対に許されない政治家の暴力行為」と大騒ぎになるだろう。日本のマスコミはそれを待っている。記者会見して謝罪し、それでも騒ぎ立てられて辞任か。政治家もそれはわかっているから必ず両手は下げたままで、どんなに不快でも手は動かさない。

 比較的これに露骨な反感を見せたのは故・橋本首相だった。なんどか手で払うような仕草を見ている。顔の前に突き出されるマイクを、「あぶないな」と手で払いつつ声を荒げたこともあった。
 ああいうのも「暴力閣僚」として「けがをしたけがをした」と足を引っ張ろうと、切れるのを待っているようなものだから、政治家としてはひたすら我慢になる。いやな世の中だ。
 もっとも中にはそんな取材をして欲しいのに、誰一人寄ってこなくて寂しいと思っている政治家もいるだろう。

 小泉首相は毎日の定例会見というパターンを作ってしまった。これは彼の功績である。今まであんなふうに毎日自分の声を国民に聞かせた首相はいなかった。これから、そういうことが苦手な首相は苦労することになる。功績ではなく罪悪だと罵る首相も出てこよう。

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●私的露鵬事件のまとめ
 露鵬という力士は前々から大嫌いである。何度も苦々しく思った。不愉快にもなった。
 今回の場合も、そもそも大関にいきなり張り手を見舞って行くという無礼な立ち合いが元兇としてある。大好きな白鵬等もしばしばこれをやるので心底うんざりしていた。圧倒的に外国人力士に多いから、この辺は日本人とは感覚が違うと思わざるを得ない。番付による格付けの感覚が稀薄なのだろう。しかしそれはそういう道徳教育をしなかった相撲協会の落ち度になる。

 そういえば琴欧州だったか把瑠都だったか、「力士になっていちばん苦労したこと」に関して、「先輩」と応えていた。つまり「みな平等」と思う彼らからすると「人間の上下関係」というのがわからないのだ。そりゃ年配の人にもファーストネームで呼びかける世界から来た人にはわかりづらいだろう。日本人でも運動部的なそれが大嫌いな私のようなのもいるのだから、外国人が相撲界独自の上下関係を理解するのはむずかしいだろう。

 そこに「外人枠は各部屋にひとり」というくだらない決まり事が出来たために、才能ある外国人力士が小部屋に散った。旭鷲山、旭天鵬や朝青龍、朝赤龍が同部屋というようなことはもう起きない。外国人力士はみな部屋が違うことになる。こういうのは同郷の先輩が教えるのがいちばんわかりやすい。それすらもなくなってしまった。
 その結果、十両あたりまで出世する外国人力士はみな小部屋の部屋頭になってしまった。トップである。下である厳しさを知ることなく上にいる気持ちよさだけを覚えることになった。これは問題だろう。露鵬問題の根幹にはこれがある。

 今回の場合も、テレビを見ていると、土俵下に飛び出してまず千代大海が文句を言っている。それは「なんだ、おら」だったそうだ。大関の自分に無礼な立ち合いをしてきたことにもんくを言ったのであろう。
 何かを言い返した露鵬は、そのあと千代大海を睨み付けたまま一礼をせずに土俵を降りた。
 このとき露鵬が何を言ったかは言えないと千代大海はいま話題の「頭突きサッカー選手」みたいなことを口にしている(笑)。
 真に問題にすべきはここである。礼をせず土俵を降りることは許されない。見たことがない。三日間の出場停止の理由はこれだと私は解釈することにしている。

 そのあと「風呂場のガラス割り事件」がある。そこに至る流れは、「露鵬から言葉を掛けたのに千代大海に無視されて切れ、ガラスを割った=中国新聞説」と、「風呂場まで追いかけていった露鵬がさらに千代大海に恫喝の言葉を投げかけ、威嚇気味にガラスを割った=TBS説」がある。これはどちらが正しいのかぜひとも明確にすべきだ。そのことによって事件のニュアンスがまったく変ってくる。
 前者であったなら千代大海の大人げない姿勢も責められるし、無視された露鵬の気持ちもわかる。私が今回の件で最も重要とするのは、「異国から来た若者に礼儀を教えられなかった大鵬と大嶽の責任」である。指導者がだらしなかったら今後も第二第三の露鵬事件は連続するだろう。

 と言っていきなり矛盾することを言うが、把瑠都の明るい笑顔を見ていると、これは露鵬だから起きた事件だとも思う。朝青龍への無礼のようにすでに前々から因子は萌芽していた。

 そのあと、写真を撮ろうとするカメラマンを手でなぎ払い、そのうちのひとりマイニチシンブンのカメラマンが、全治四日(かすり傷だわねえ)のケガを負った。そのことにより露鵬は三日間の出場停止。親方の大嶽は三ヶ月の減俸1割となった。

 千代大海におとがめなしは不自然に思う。土俵下に落ちたふたりのうち、最初に明らかに口をとんがらせて文句を言ったのは千代大海だった。映像として残っている。力士は基本として土俵上では口を利いてはいけないことになっている。勝負のあととはいえあの場合の土俵下もその管轄だろう。
 千代大海がなにも言わないのに露鵬が睨み付け、そのあと礼もせず、カメラマンに、なら露鵬がすべて悪いのだが、千代大海の大人げない態度が事件の発端だ。ケンカ両成敗にすべきだし、責任は、大関である千代大海と、指導者の大鵬、大嶽によりあると私は考える。

 一部マスコミは「暴力力士を許すな」と騒いでいる。
 しかしスポーツ取材に関わっていたらこの程度のことは必ずあり、大騒ぎしているマイニチシンブンにこそくだらなさを感じる。
 というのが私の意見になる。

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 というところでそのマイニチシンブンの記事。

暴行の露鵬、出場停止も3日だけ

<大相撲名古屋場所>◇8日目◇16日◇愛知県体育館

 大相撲の東前頭3枚目の露鵬(26=大嶽)が、史上初めて暴力行為による出場停止となった。日本相撲協会は名古屋場所8日目の16日に愛知県体育館内で理事会を開き、前日15日にカメラマンを殴り負傷させた露鵬について協議。露鵬は8日目から3日間の出場停止、師匠の大嶽親方(38=元関脇貴闘力)に10%減俸3カ月の処分を下した。戦前の幕内で無気力相撲による出場停止はあったが、土俵外のことでは初めて。北の湖理事長(元横綱)は謝罪し、再発防止を強調した。

 カメラマンへの暴行によって、露鵬は3日間の出場停止処分を受けた。理事会では約50分の議論の末に処分を決定。午後1時前に大嶽親方が理事室に呼ばれ、通達された。「これくらいの軽い処分で済ませていただき、ありがたく思っています。重く受け止め(2人で)もう1度反省したいです」と異例の処分を受け止めた。7日目まで4勝3敗だった露鵬はこの日の栃東戦は不戦敗、その後2日間は休場で4勝6敗から出直しとなる。

 相撲界の規則をまとめた寄付行為では(1)除名(廃業)(2)番付降格(3)けん責(4)厳重注意の4段階がある。出場停止は明記されていないが(2)と(3)の中間。処分に関しては一部の理事から千秋楽まで8日間の出場停止を求める厳しい声もあった。最終的には北の湖理事長が決断。「人を傷つけるというあるまじき行為であり、出場停止は非常に重い処分だ」と話した。

 常人離れした体力を持つ力士が、カメラマンに殴り掛かっただけに、大けがにならなかったことは幸いだった。処分が甘いとの声が出てもおかしくない。それだけに、今回の協会処分については意見が割れた。

 露鵬のかつての師匠で現相撲博物館の納谷幸喜館長(元横綱大鵬)は、大嶽部屋で露鵬を諭した後、同体育館を訪れて関係者にわびた。そして「相撲取りにとって、相撲を取ることが許されないほどつらいことはない。内部の人間がかばっていてはダメだ」と話した。

 一方でこの日午前中に、愛知県警中警察署から連絡が入った。名古屋場所担当部長の秀ノ山親方(元関脇長谷川)は「報道で(暴力行為が)あると知ったと連絡してきた。カメラマンが訴えなくても、事情を聴取することらしい」と話した。
毎日新聞、中日新聞の2人のカメラマンは被害届を出さないもようだが、衆人環視の中で暴力が振るわれたことが公になり、警察が動きだす可能性が出てきた。

 北の湖理事長は打ち出し後「殴ったことは悪い。そのことを認めた上で、こうしたことにならないよう、どうしたらいいか研究する」と言った。だが、この日も一部幹部がフラッシュに不快な表情を浮かべるなど、騒然とした空気と険悪なムードの中、節目の中日は終日混乱した。[2006年7月17日9時7分 紙面から]


ペンは怖いよね。なんとでも書ける。まるで露鵬がカメラマンに襲いかかったようだ。それが本当だったら殺されている。「常人離れした体力を持つ力士が、カメラマンに殴り掛かった」だって(笑)。よくそれで「全治四日間」のかすり傷で済んだものだ。こういう記事を書く人間は自分のペンが滑っていることを恥ずかしいと思わないのだろうか。


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大相撲九日目

●白鵬、横綱昇進絶望!

●豊真将 玉乃島○
 ひさしぶりに豊真将の美しいお辞儀を見た。NHKの映りが悪いことや時間的なことからしばらく見ていなかった。玉乃島に敗れての土俵を降りる際のお辞儀を見たらが胸が洗われる思いがした。舞の海も角界一だと褒めていた。
 あの露鵬の礼をせずに土俵を降りたふてくされた態度はやはり許せない。カメラマンうんぬん以前の話だ。

○玉春日 北勝力●
 9日目で勝ち越し。新入幕の十年前以来とか。人柄のいい人の好調はうれしい。玉春日のインタヴュウを見ていると、千代大海と露鵬の問題は、起きて当然と思われる人物同士のあいだで、起こるべくして起こった事件と思える。

 露鵬問題に関し、相手を睨み付けるマナーの悪い力士として把瑠都や稀勢の里の名をあげていたいいかげんな新聞もあった。まったく質が違う。ふだん相撲など見ていない連中が露鵬問題が起きると我も我もと参戦し、知りもしないのに口を聞き出す。マスコミの醜悪きわまれりだ。

●白鵬 雅山○
 白鵬が雅山の引き技に負ける。思わず「ああっ」と叫んでしまった。
 雅山ガッツポーズ。
 舞の海が雑な立ち会いだと批判。

 朝青龍が全勝で絶好調だけにこれで白鵬の横綱昇進はまずなくなった。残念である。1敗のまま千秋楽まで行き、朝青龍に勝っての優勝を願っていた。もうだめである。万が一奇蹟的な優勝があったとしても(99%ありえない)この13勝2敗は内容が悪すぎる。横綱になる資格がない。

 これで今場所12勝3敗だったとして、来場所優勝すれば横綱への道は繋がるのか。来場所全勝優勝すればだいじょうぶか。白鵬の場合恵まれているのは、一人横綱時代が長く、それを協会もよいとは思っていないから望まれて成れることだ。一方大関は五人で餘っているし雅山は出戻りだからあまり望まれていない。この点に関しては雅山に味方したくなる。
 もしも白鵬が今場所11勝だったら横綱取りは白紙だろう。来場所全勝優勝したとしても見送るのが正しい。まあ焦ることなく着実に行けばいい。

 大関を二場所で通過して貰いたいという気持ちは強かったが、まだこういう負けかたをするのだから上がるには早いということだろう。貴乃花も北尾のことがあったりしたから、なかなかあげてもらえず、文句なしの二場所連続全勝優勝を成し遂げて昇進した。
 白鵬も文句なしの全勝優勝をして横綱になって欲しい。朝赤龍と雅山にこんな負けかたをするのだから横綱はまだ早いのだ。

○千代大海 栃東●
 栃東が敗れて1敗に。これでますます朝青龍有利に。
 千代大海の突いて引く、突いて引くに栃東が翻弄され、引き落とされた。笑ってしまった。これはこれで千代大海の藝か(笑)。どうにもこの「突いて、引く」という相撲が嫌いだ。

○把瑠都 琴欧州●
 夢の一番である。きょうは朝からこの一番を思ってわくわくしていた。
 あいにくその直前に、軽く勝つと思っていた白鵬が敗れて調子が狂った。

 把瑠都も初めて自分より大きい相手とやるのが楽しみだったとか。先場所も「いま一番やりたい相手」として琴欧州の名を挙げていた。その理由は「自分よりも背が高い相手とやったことがないから」だった。稽古もしたことがないとか。

 そして内容も期待通りの熱戦になった。
 把瑠都のすさまじい怪力が見事に発揮された。四つになったら琴欧州以上の力であることが証明された。

 大好きな二人の勝負だとどっちを応援したらいいか困る。
 テレビを見ていて把瑠都の勝ちがわかったが本人は負けたと思ったようだ。土俵を降りようとした。琴欧州は勝ったつもりで勝ち名乗りを受けようとしていた。珍しいことだ。ただ内容は圧倒的に把瑠都であり、あれで琴欧州の勝ちになったとしても、それは勇み足のようなものだった。

 なんといってもきょうのハイライトはこれである。期待通りのいい相撲だった。

 不満はひとつだけ。琴欧州、まわしがゆるかったぞ。

○朝青龍 琴光喜●
 網打ち。土俵中央で琴光喜の右腕を見事な網打ち。こんなきれいにきまる網打ちも久々に見た。だいたいにおいてこれは土俵際で出る逆転技だ。まことに横綱は奥が深い。モンゴル相撲に通じるのか。

 しかし相撲は琴光喜。20連勝中の相手に苦戦した内容。苦笑い。三年以上勝てない琴光喜だが紙一重であるのも見えた。朝青龍ってのは、紙一重の部分を、絶対に越えられない紙一重にして勝ち続けてきたんだよな。いとしい横綱である。


 そういやあ兄貴がモンゴル相撲の横綱になったんだった。おめでとう。お父さんは関脇止まり。お兄さんも準優勝で関脇までだったから今回の優勝(本来は大関だが特例として横綱に)は嬉しかったのだろう、うれし泣きしていたとか。

 今日のゲストは野口五郎。つきあいのある朝青龍はお茶目で、いきなりカラオケから「いま『青いリンゴ』を唄ってまーす」と電話してきたりするとか。こういう形で朝青龍の陽気な面を知らせることはいい援護になる。
 旭天鵬と朝青龍と親しいようだ。となると旭鷲山とはつきあいがないのだろうか。
十日目
 朝青龍絶好調!

○旭天鵬 安馬●
 安馬、美しい負けだ。悔いはない。いい相撲だった。
 二場所連続負け越しは関取になって初めて。幕下以来とか。
 悔やむことはない。おまえの美しい精神と心意気は相撲ファンなら誰もが知っている。

○高見盛 垣添●
 高見盛快勝。燃えるなあ、この人の相撲は(笑)。

 高砂の解説がくだらねえ。腹が立つ(笑)。あまりに当たり前のことばかり。どれぐらい当たり前か書く気にもならん。
 三流大関の朝潮は高砂一門の若松親方で終るはずだったのに、朝青龍という弟子が大化けし、朝赤龍も出世し、おまけに水戸泉が高砂相続でドタバタしたものだから、高砂一門の総帥にまで出世してしまった。
 地味な庶務課長が、あれよあれよというまに社長になってしまったようものである。まあ社長は理事長だとすると取締役かも知れないが、万年庶務課長のはずだったのだから、大出世である。

 朝青龍が何度か礼儀的な問題を起こしたが、あれも朝潮のせいである。現役時の自分より上の横綱になってしまうと強いことが言えないらしい。朝青龍が自分で自分を律するようになったからいいようなものの、そうでなかったら北尾の二の舞いだった。

●琴欧州 千代大海○
 ものすごく悔しかった。どれほど自分が琴欧州か好きか、千代大海が嫌いか、よくわかった(笑)。でも平幕から大関に登るころの千代大海は好きだったのだ。きょうの相撲も引くことなく突っ張り通したのだから認めるべきか。
 でも9勝1敗の千代大海が優勝争いに絡んでくるとはまったく思わないけどね。

 というところできょうの目玉、白鵬対把瑠都。白鵬が2敗、把瑠都が3敗。なのに千代大海が1敗。よくわからん(笑)。

○白鵬 把瑠都●
 把瑠都、強いな。突っ張る。白鵬、いちどは押し込まれたが、相撲のうまさでしのぐ。把瑠都のまともな敗戦は普天王以来だろう。把瑠都、帰りの花道でマウスピースを出していた。そんなのあり? 笑顔はなかった。それでいい。思いっきり悔しがれ。スポーツ感覚でいつも負けて笑顔がいいわけではない。

 白鵬勝ち越し。そんなの当たり前だけど。
 把瑠都、6勝4敗。15戦全勝と思った私は不明を恥じねばならない。しかし把瑠都が10日目で4敗もするとは思わなかった。なかなか上位陣もやるじゃない(笑)。
 いや本気。そのうち把瑠都は15戦全勝だ。負けるとしても朝青龍と白鵬以外にはいない。
だからこそ今場所の把瑠都を目に焼き付けておかないと。

○魁皇 栃東●
 強いぞ魁皇! 最高だ。
 栃東2敗。でも横綱と白鵬に強い。特に対朝青龍10対10は驚異だ。これは朝青龍の問題だ。あれは不思議だ。朝青龍があれだけ苦労するのだから栃東は相撲がうまいのだろう。でも下位力士相手に変化までするこの大関は買ってない。

○朝青龍 雅山●
 雅山5敗で大関復帰完全消滅。
 北の湖は11勝以上と言い厳しい条件だったが、先場所の勢いをもってすればそれぐらいは勝てるように思っていた。朝青龍と白鵬に負けても2敗だ。把瑠都に負けても3敗と読んだ。こうなると勝ち越しまで怪しくなってくる。せめて9勝しておかないと来場所に繋がらない。
 しかしまあ朝青龍の強いこと。完璧だ。このままだと全勝優勝もある。
 把瑠都戦が見たかったが今場所はない。来場所の楽しみとしよう。
(18日夜にヴィデオを見ながら書いた文。UPは19日。)
十一日目
 朝青龍全勝! 露鵬復帰

○高見盛 豊桜●
熱戦だった。場内は沸きに沸いた。高見盛4勝目。4勝7敗。ぎりぎり粘った。

○露鵬 琴奨菊●
きょうから再出場の露鵬、琴奨菊を上手投げでぶん投げる。
取り組み前には大嶽親方と一緒に謝罪会見をしたようだ。その映像も流れていた。

【大相撲】露鵬ペコペコ謝罪行脚…復帰戦で“みそぎの一勝”
大相撲名古屋場所11日目(19日、愛知県体育館)名古屋場所7日目の15日にカメラマン2人に暴行し、日本相撲協会から3日間の出場停止処分を受けていたロシア出身の露鵬(26)が土俵に復帰。琴奨菊(22)を上手投げで下し、“みそぎの一勝”を挙げた。前代未聞の不祥事を起こし、大相撲の歴史に汚点を残した露鵬は、「心から反省しています」と謝罪し、出直しを誓った。

想定外の温かい声援が、心にしみた。露鵬は立ち合いで琴奨菊に突っ張られ上体を起こされたが、右四つとなり左上手を取ると、土俵中央から豪快な左上手投げ。出場停止明けとは思えない、完璧(かんぺき)な相撲を取り切った。

「土俵に上がるまでは集中できなかったけど、きょうの相撲はよかった。この3日間は長かった。これからの自分を見てください」

7日目の取組で大関千代大海に敗れたあと、土俵下でにらみ合い、風呂場のガラス戸を右手で粉々に破壊し、カメラマンを平手で殴る暴挙。日本相撲協会からは、3日間の出場停止という厳罰が下された。あれから4日。右手首のテーピング、指にはられた無数のばんそうこうが乱行を物語る。一からの出直しとなる白星に、露鵬の表情は徐々に緩んでいった。

この日、愛知県体育館に向かう前、師匠の大嶽親方(元関脇貴闘力)とともに、自らが暴力を振るったカメラマンが勤務する毎日新聞社と中日新聞社を訪問し謝罪。場所入り後も名古屋相撲記者クラブ、中部写真記者協会で頭を下げ、理事室、審判部、先発事務所と日本相撲協会の各部署を回り、非をわびた。また、千代大海と同じ西支度部屋となったが、混乱を避けるため接触は控えた。

白星にホッとしたのか、支度部屋で笑みがこぼれる露鵬
支度部屋に入ると、真っ先に実弟の白露山が声をかけてきた。出場停止の3日間、愛知・愛西市の大嶽部屋を毎日訪れ、励まし続けた。露鵬の暴挙は母国ロシアのテレビニュースでも放送され、出身地の北オセチア共和国に住む親類の元にも、心配する地元の人々からの電話が鳴りやまなかった。父・フェリックスさん(49)には国際電話で、「おまえのしたことは絶対にだめなこと」と諭されたという。

幕内土俵入りのさい、露鵬には、この日一番の歓声が飛んだ。「おかえり」や「がんばれよ」という励ましの声ばかりだった。
(サンスポより)

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○把瑠都 千代大海●
 把瑠都が変化して簡単に勝つ。
 インタヴュウで、琴欧州との大一番のとき腰を痛めたと告白。痛くて力が入らないからと。正直(笑)。
 いいよいいよ。千代大海も勉強になったろう(笑)。来場所は正面が突き飛ばしてくれ。

○白鵬 琴欧州●
 今の琴欧州の体調なら白鵬が勝って当然だし、今場所は勝ってもらわないと困るのだが、なんとも琴欧州の元気のなさが気になる。やはり膝を痛めたとき、休ませるべきだったのか。

○朝青龍 栃東●
 朝青龍と栃東の対戦成績が10対10なのは私にとって七不思議にはいる。不思議でならない。しかも「かつて」ではない。絶好調なのに栃東にだけは負けたりするのだ。私が栃東を認めているのはこの一点だけになる。
 今場所は圧勝。先場所休んで主役の座からおり、白鵬の台頭で尻に火が点いた朝青龍は強い。

十二日目
 把瑠都失望

○豊真将 玉春日●
 豊真将勝ち越し。おめでとう。
 昨日自己タイの10勝をあげた玉春日は未知の11勝目に挑んだが無念。果たして叶えられるか。

○岩木山 高見盛●
 高見盛、2勝7敗から3連勝でがんばってきた。ついにここで負け越し。名古屋場所は幕下時代から負け越したことがないとか。験のいい場所なのだが今場所はだめだった。勝っても負けてもいるだけでいい。

○時天空 豪風●
 今場所の時天空は猛々しい。一皮むけたような気がする。

●把瑠都 玉乃島○
 今場所でいちばん落胆した把瑠都の相撲。当たってすぐに引いている。しりもちをつくような負けかた。
 北の富士はそういう取り口を覚えられた、上位には通じないと言っていたが、そうではなくやはり琴欧州戦で体をおかしくしたのだろう。まったく力の入っていない相撲だった。
 二桁勝利はまちがいないと思っていただけに意外な成績である。琴欧州、千代大海と二大関を破っているのだがそんなのは当然であり物足りない。今場所の成績は初めての挫折になるのか。まさか負け越しはないと思うが。これで7勝6敗。

○旭鷲山 琴奨菊●
 旭鷲山2勝目。強いなあ。この人は謎だ(笑)。何を考えているのやら。

○黒海 琴光喜●
 黒海9勝目。9勝の内これで引いて勝ったのが6勝目。非難囂々だがここまでその戦法で勝てば居直ろう。第二の千代大海、闘牙路線を進むのか。やっぱり前に出る相撲がいい。

○白鵬 千代大海●
 完勝。当然。千代大海4敗。9勝1敗のときから優勝に絡んでくるとは毛ほども思わなかった。

○雅山 栃東●
 雅山勝ち越し。これでなんとか来場所に繋げられる。
 栃東5敗目。8戦全勝のときから優勝に絡んでくるとは……、あ、もう上で言ってるな。

●琴欧州 露鵬○
 琴欧州、一回転してぶん投げられる。朝青龍にはしかたないが露鵬ごときにこれはないだろう。がんばってくれよカロヤン。

○朝青龍 魁皇●
 強いのなんのって。興味は千秋楽での白鵬戦に勝っての全勝優勝か、白鵬が来場所に繋がる意地を見せるかの一点に絞られてきた。
 白鵬が勝って朝青龍は14勝1敗での優勝、白鵬13勝2敗の準優勝の場合、横綱昇進が審議になるようだ。私は昇進させるべきではないと思う。大好きな力士だから横綱になってからより充実すればいいとも思うが、お情けの準優勝で昇進しても威張れない。貴乃花のように連続全勝優勝をしてあがるのがいい。来場所全勝優勝で昇進が望ましい。
 でもきょうの解説の熊ケ谷親方(竹葉山)は、「13勝2敗でも可能性はあるのだから」と準優勝でも昇進に望みを託しているようだった。手塩に掛けて育てたから親方の気持ちはそんなものか。白鵬の場合は北尾とちがいこういう形で昇進させても問題は起きまいがファンとしてはビミョーである。まともなファンは昇進を望むのか?

十三日目
 朝青龍優勝確立100%!

 正面解説は間垣。二代目若乃花。
 向こう正面の解説は巨砲。巨砲は楯山親方なのか。なかなか覚えない。でもそれって解説に味がないってことだ。味があればすぐに覚える。

○玉春日 安美錦●
 玉春日が10勝目。平成14年秋場所以来とか。それは結果としての10勝。こんなに早く10勝したのは初めてである。まだ11勝したことはない。今場所はまだ三日ある。自己記録更新なるか。
 玉春日や出島がいたときの中央大相撲部は最強だった。そんな巡り合わせもあるのだろう。私は大学の相撲部というと輪島の日大や朝潮の近大を思う世代だが。

○時天空 普天王●
 休み無く動き、じつに激しい攻防。いわゆる銭のとれる相撲。いい勝負だった。時天空勝ち越し。この人、なんか雰囲気が変わってきた。決まり手は「すそはらい」。
 普天王は星は伸びないが言い相撲を取っている。

○玉乃島 黒海●
 黒海がいい突っ張りをするが、玉乃島はじっと我慢している。まるでもうすぐ疲れて引くはずだとでも言うように。土俵中央。
 突っ張り疲れた黒海がやはり引いた。そこを出て勝つ。今場所の黒海の相撲はこればかり。きょうの負けでいくらか反省してくれるといいが。とにかくこういう相撲は嫌いだ。

○高見盛 安馬●
 安馬うまく攻めこみ諸差しになるが土俵際で高見盛のうっちゃりのような形で負ける。決まり手は寄り切り。高見盛の十八番。安馬、惜しかった。高見盛、7敗から3連勝で踏みとどまる。ほんと誇らしそう(笑)。貴重な存在だなあ。

○雅山 把瑠都●
 はたき込みで雅山の勝ち。雅山の引き技なのだが、なんであれで把瑠都が落ちてしまうのかわからない。もろすぎる。
 でも間垣の解説だと、雅山のよく考えた相撲なのだという。把瑠都は右を差そうとしたのに左に回ってしまったと反省していたとレポート。

○白鵬 栃東●
 栃東、左膝を痛めて元気なし。白鵬に寄られると崩れ落ちるような負け。元気のいい栃東を負かして欲しかったので勝ちはしたものの残念。

○朝青龍 琴欧州●
 朝青龍がすくい投げで琴欧州を一回転させた。強いの何のって。
 琴欧州には、本割りで勝ち、決定戦で負けたあの当時の勢いがない。どうしたのだろう。心配でならない。あのとき星ふたつの差を逆転したのだから朝青龍の精神力はすごい。そしてまたあのとき初優勝をしていたら琴欧州のその後も変っていたろう。
十四日目
 朝青龍優勝!

 木曜日、12日目の相撲日記をつけていなかった。その日の内にヴィデオは見ている。そうでないと金曜日がつまらない。でもヴィデオを見ながら観戦記は書かなかったし、そのあとパソコンにも向かわず寝てしまった。
 今朝は、まずはそれをやらねばと書き出す。記憶が薄れているので──どうしてもすでに13日目が終っているからその前の12日目の記憶は薄くなる──もう一度見直す。まだ消してなかった。いや観戦記を書いてないからと意図的に消さずに残しておいたのだった。二日前の相撲中継を観るのも奇妙な感じである。

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 十両の結果を見ていたら弓取りの皇牙が負け越していた。思わず「ええ?」と苦笑してしまう。だって初日から横綱と同じく6連勝して、支度部屋では朝青龍から「強いな」と褒められ照れていたのだ。同じ高砂部屋なので、朝青龍の幕内と皇牙の十両で同時優勝が夢だと語っていた。もしもそうなったら皇牙が優勝旗をもってパレードするのだろう。
 そんな記事を読んだから、優勝はともかく10勝はするかと思っていた。6連勝したのに14日目で負け越すってことは、それから8連敗=全敗したってことか(笑)。なんともはや。

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◎解説によるその日の雰囲気
 正面解説は尾車親方。琴風である。思えば豪風、嘉風と自分の「風」をあげた弟子が二人もいるのだった。(琴の字は自身が所属した佐渡ケ嶽部屋の決まりだから。)
 琴風は現役のころにケガで幕内から幕下まで陥落し、もういちどはい上がって大関になった人である。また力士には珍しく成績が良く、小学校時代のオール5の成績表を公開したこともあった。
 苦労と人柄からいい親方になるだろうと思っていたらその通りだった。かわいい息子を預ける親方として信頼できるのである。ただし解説はたいしたことはない(笑)。
 このごろアナと解説によって相撲中継のおもしろみが断然違ってしまうことに気づいた。すこし遅いか? いやだいぶ遅いか。つまりそれは相撲中継を独占しているNHKだけあって、さすがに練れているので普段は不満を感じなかったのである。

 世の中には対象物の缺陥を探し出すのを楽しみにしているような人もいる。私にその感覚はない。良いところだけを見るようにしているというほど立派な人ではないが、6対4でいいところが多かったらそちらを見る癖が付いている。7対3や8対2、9対1なら文句なしである。と書くとそんなのあたりまえだと言われそうだが、世の中には8対2でも、缺点の2ばかり見る人もいるのである。そこばかり気になってしまう人が。かわいそうな人である。

 NHKの相撲中継には九割方満足している。だから不満はなかった。なのにこれだけ熱心に見て感想文を書いていると、90点の日と95点の日があり、それがアナや解説によるから、90点を物足りなく思ったりするのである。欲張りはよくないことだ。


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○出島 玉乃島
 出島の変化で玉乃島バッタリ。玉乃島、土俵上で睨み付ける。露鵬と違いチョコっとだけ礼はしたが、花道でも振り返ってガンをつける。玉乃島の根性の悪さが良く出た瞬間だった(笑)。
 これで勝ったのが好きな出島でなく、負けたのが玉乃島でなかったら私は憤慨したろうか。そうでもあるまい。ヴィデオを見ると玉乃島はもう前など見ず、頭を下げて低い姿勢で突っかけている。あれが見えたら誰でもよけるのではないか(笑)。そうすれば勝てるのだから。
 向こう正面解説の千田川親方(安芸の島)は、アナに「いつでもきれいな礼をした千田川さんでしたが」と玉乃島の態度について問われ、あっさりと「玉乃島がわるいんですよ。負けた自分に腹を立てないと」と言ったのが印象的だった。安芸の島の解説には感心させられことが多い。能弁ではないのだがキラリと光ることを言うのだ。

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◎憮然と憤然
 ガンをつけつつ引き上げる玉乃島の様子をアナが言おうとしたので、思わずまたも誤用の「憮然」が出るかと思ったら、正しく「憤然として」と言ってくれたのでほっとした。このアナは「むっとするの憮然はまちがい」を意識している人なのだろう。

 浅田次郎の短編集(初期のもの)を読んでいたら誤用の「憮然」が連発するので白けてしまった。しかし藤沢周平でも一時連発していた(その後なくなった)ぐらいだから、どんな物書きも一度は勘違いするものなのか。
 顔を売ろうと居直ったのか、このごろなぜか山崎洋子がやたらワイドショーのコメンテイタとして顔を出す。この人で思い出すのは高島さんが指摘していた「茫然」を「呆然」とした誤用連発だ。ことばは怖い。残るから。

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○把瑠都 玉春日●
 把瑠都、勝ち越し。玉春日に頭をつけて「こまたすくい」。ほんとに毎日楽しませてくれる。自分よりも遙かに小兵に頭を付けたのだから彼なりに必死だったのだろう。
 ただこれって小兵のやる小技のこまたすくいではないように思う。あのまま足を持ってそのままかつぎあげ、プロレスのエアプレンスピンでもやろうと思ったのではないか(笑)。あるいは後ろに落とすブロックバスターか。ジョージ・ゴーディエンコふうに。ゴーディエンコは180もなかったけど。
 立ち会いはまたも張り差し。よくない。やめてほしい。尾車も張り差しはやめて欲しいと言い、アナも、白鵬もそれを減らして大成したとフォローした。
そこにレポート。把瑠都は「こまたすくい」という技は知らなかったとか。


○安馬 土佐ノ海●
 安馬、うしろに廻って持ち上げて送り出す。場内おおいに沸く。いい力士だなあ。悪く言う人を聞いたことがない。
 でも誰もが言うのは、「ちいさいのに正攻法でえらい」であり、「だけどちいさいから正攻法では無理」になる。

○旭鷲山 北勝力●
 旭鷲山の変化で転がった北勝力が旭鷲山を睨みつけ、礼をせずに土俵を降りた。安馬も解説もそれを叱らなかった。よくない。露鵬を礼に引いて批判しなければいけない。

○稀勢の里 露鵬●
 稀勢の里が2勝6敗から6連勝して勝ち越した。
 朝青龍、千代大海、白鵬、栃東という横綱大関、関脇の雅山、琴光喜に負けて6敗。
 琴欧州、魁皇という大関二人を破っている。それで2勝6敗。
 そうして自分より下位の力士には全勝して勝ち越した。たいしたものである。

 これをすれば小結の座を守れる。ところが初小結のときはみな、前半に立て続けに横綱大関戦があって負け続けボロボロになるものだから、後半戦の下位力士との取り組みでも負けてひどい成績になる。3勝12敗とか4勝11敗とかの。
 稀勢の里も2勝6敗になったときはそうなるかと思った。そこからの盛り返しだから、かなり地力がついている。いやほんと、初小結での、大きく負け越してからの挽回は本当にたいしたものである。拍手。

 三日間出場停止の露鵬は、復帰後も勝ち続け、勝ち越しを千秋楽に懸けることになる。

○雅山 琴光喜
 今場所の雅山を象徴するような相撲。先場所のように積極的に前に出る。あきらめない。でも疲れると以前のように引いてしまう。結果、二度目の引きが決まって勝ったが、尾車が言っていたように負けてもおかしくない半端な相撲。先場所なら押し切って勝っていた。以前なら引いて負けていた。今回はたまたま引いて勝ったに過ぎない。褒めるほどでもなく、ボロクソにも貶せず、なんとも半端。
 ともあれこれで9勝。もしも明日の玉乃島戦に勝つと10勝になる。そうなったら大関昇進を一応は話題にせねばなるまい。北の湖理事長は11勝と言い、高いハードルをあげていたからおそらくダメだろうが、来場所に繋げるためにもここは二桁勝利をあげておきたい。玉乃島戦はすなおに見逃せない。

○白鵬 魁皇●
 左上手をとってからは頭を抑えての強引な上手投げ。回り込みつつ、それで怪力魁皇を転がした。あまりいい勝ちかたとも思えないが、それでも危なげはない。よくぞ2敗から立ち直ってここまで来た。それでも立ち会いでのまわしのさぐり合いから一度突っ張って体勢を替えた即座の変化はさすが。この突っ張りから上手がとれた。あとは明日の朝青龍戦だけだ。よく千秋楽まで2敗で来た。えらい。
 しかし逆に言うと、全勝で来なければいけない。全勝で朝青龍と千秋楽で闘い、勝って優勝、勝って横綱でなければならない。それでこそ白鵬だ。

 次の次の次が結びの一番、朝青龍対千代大海。朝青龍の優勝はもう決まっている。
 明日負ければ12勝3敗で話にならないが勝って13勝2敗の準優勝だと審議にあがるのか。
 とにかく確かなことは、横綱朝青龍は取りこぼしがなかった。大関白鵬はふたつも取りこぼした。朝赤龍と雅山にあんな負けかたをするのでは、まだ横綱の器ではない。と大の白鵬ファンである私は思う。

○朝青龍 千代大海●
 こんなもん取り組みの遙か前から○●を書いていた。天と地がひっくり返っても朝青龍はこんなのには負けない。でも白鵬はまだ「至芸」の引き技に負ける可能性がある。その点でも朝青龍の方が上だ。
 兄貴スミヤバザルのモンゴル相撲優勝(特例で横綱になる)の話を振られると、「モンゴル語でひとこといいですか」と断って(これもえらいな)、モンゴル語で故郷でテレビを見ている兄貴に報告した。いいシーンだった。

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 明日の楽しみは、初対戦の把瑠都と稀勢の里。まともな体調なら把瑠都だが、琴欧州戦以来力の入っていないようだから、あっけなく稀勢の里に負けるシーンもあるかも。

 二桁勝利を目指す雅山は玉乃島。対戦成績は11対3と圧倒している。そうだったのか。でも今場所は年に一度の玉乃島の狂い咲きの場所だ。11勝3敗である。雅山の懸命度合いは見物だ。

 そして結びの朝青龍対白鵬。どちらが勝つにせよどんな相撲になるのか。力の入った一番になる。楽しみだ。
千秋楽
 理事会招集せず!

○玉春日 時天空●
 玉春日、初の11勝目を勝つ。十年ぶりの三賞、技能賞獲得。
 ほんとにこの人は人柄がいいなあ。画面を通して伝わってくる。いい親方になるだろう。もう株はもっているのだろうか。
 時天空も10勝は立派。今日の相撲は悪かったけど。
 この一番は玉春日の押し相撲だったが土俵際で時天空が身をかわしたかのように見えた。行司軍配は玉春日。時天空は勝ったつもりでいる。玉春日は負けたと思っている。物言いはつかない。時天空不満げ。
 だがヴィデオを見ると、時天空の片足が土俵から出たあと、身をかわしているのだった。複数の審判はそれだけを見ているのだから当然として、毎度こういうとき行司のプロ根性に感心する。

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◎行司の価値

 行司のプロ根性というとお笑い芸人のうんちくにあるように、軍配を間違えたときには腹を切る覚悟で真剣を携えている、それほどの覚悟を持って、なんて話になりそうだが、私はもう何十年も前にアサヒシンブン(だったと思う)で読んだ木村(式守?)の談話が印象に残っている。
 そこで彼は「行司はピエロなんです」と言っていた。いやピエロなんて言葉は使ってなかったが、あくまでも勝負に関する判断は審判員がくだすものであり、行司にはそこまでの権限はなく、だからこそあんな派手な衣装で場を盛り上げるために飛んだり跳ねたりしているのだ、と語っていたのである。決して自嘲ではなく、何だか妙に説得力のある話だった。

 物言いがついたとき行司も審判員の輪に加わる。しかしあれは一目撃者から証言を得る程度だ。だからこそ名行司と呼ばれた人が審判員の判断に納得せず食い下がったことが語り話になったりする。

 その一藝に精進し誇りと覚悟を持って軍配を揚げる。だから当然とも言えるのだが、今日のような勝負で、力士本人も誤り、こちらもヴィデオを見るまでわからない部分を正確に見抜いているのを知ると、あらためて職人藝に感嘆する。もっと讃えられるべきと思う。

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○高見盛 旭鷲山●
 仕切のときからなんども睨み合っては場内を沸かす。名物の一戦。それが今場所は千秋楽での一番となった。これがいいのは千代大海と露鵬のようにほんとうに仲が悪いのではなくふたりが演出として楽しんでいること。千両役者である。
 高見盛の気合い入れに場内が唱和する。名古屋の客はおもしろくていい。思いっきり相撲を楽しんでいる(笑)。
 勝って胸を反りかえして花道を引き揚げるとき、笑いと拍手がわき起こる。
 いいなあ高見盛。また二ヶ月後に会おう。


○把瑠都 稀勢の里
 把瑠都突っ張りで完勝。途中腰砕けになりそうな瞬間があり大ファンである私からすると点数は辛いのだが、アナと北の富士は大絶賛。「こんなこと(突っ張って前に出る相撲)を覚えたらたいへんなことになりますよ」と北の富士。二人して「上位に当たるこの位置で9勝は立派ですね」「ああ、たいしたものです」「来場所は新小結の目が出てきました」「楽しみですね」
 北の富士は負けるといきなり違うことを言うから信じない(笑)。
 最低でも12勝はいくと思っていた私には、この「たった9勝」は多いに不満。


○露鵬 琴光喜●
 変化して露鵬が勝つ。なんとも言えないどよめきが地元力士琴光喜だけに場内に蔓延するが、でもヴィデオを見ると、相手なんか見ないで突っ込んでいる。北の富士が呆れたように「琴光喜もねえ……。猪突猛進というか」と言ったが、その通りだ。変化する力士は大嫌いだ。露鵬も大嫌いだ。だが相手をよく見ていれば変化は読めるし、変化さえ読み切ればあとは簡単に勝てる。立ち会いの変化は怖くないのだ。一か八かなのだから。
 今場所は立ち会いの変化相撲のヴィデオを真剣に見たので特にそう思った。
 私にとっては千代大海や雅山の「突っ張って引く」の方が重要問題である。あれは引っかかるよなあ(笑)。


○雅山 玉乃島●
 雅山突っ張って引かない。玉乃島も同じようなことが好きだが、今場所は引かない。だから途中までは互いに突っ張り合ういい相撲になった。
 結局は雅山がすかして送り出しになった。
 アナは絶賛。そうも思わないので私はビミョウ。
 そこに向こう正面の舞の海がいい意見。
「(雅山が)最初はおっかなびっくりで突っ張っていた見たいなんですよね。それが途中からこれではいかんと思い直して本気で突っ張ったみたいな」
 なるほどその通りである。玉乃島も突いて引くは十八番だから、自分の得意技のそれをやられるかもと雅山も慎重だったのだろう。互いに引かれることを怖れて気合いのない突っ張りをしていた。相手が引くのを待っていたのだ。引いたら押そうと。相手が本気で押してきたら引こうと。相手の玉乃島もまったく同じ事を思って至ろう。
 しかしその瞬間、もう勝っても負けても本気で押そうと雅山は思った。それを受けて玉乃島もそう思った。その瞬間雅山がすかした(笑)。それが決まった。
 なんだかな(笑)。ただ雅山の一所懸命はそれなりに見えて、心理戦としてはおもしろかった。
 終盤5連勝はたいしたものだ。


○琴欧州 栃東●
 半分ケガ人の栃東を破って琴欧州やっと勝ち越し。早く膝を治してくれ。千秋楽に勝ち越す琴欧州なんか見たくない。


 「けが」を「怪我」と書くのは単なる当て字でありまったく意味がない。よって私は「けが」と書くことにしている。
 ところがいま上記、先ほど書いた「半分けが人の栃東」を読み返していたら、「半分・けが人の栃東」を「半分け・が・人の」と読んでしまい、誤字かと思ってしまった。しかたなく「ケガ人」とカタカナにした。無意味な漢字は避けるようにしているが、いつもこの平仮名の読みの難しさが立ちはだかる。自分で書いた文ですらこのざまである。


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○白鵬 朝青龍●
 すばらしい大相撲。四つになって白鵬が攻める。横綱が残す。これぞ千秋楽結びの一番。場内大歓声。朝青龍、それでもうっちゃろうとするが、まわしをしっかりとっている白鵬は流れない。なんとも見事な、大相撲の華とも言える一番だった。
 アナが「人事を尽くしました! あとは天命を待つだけです!」と叫ぶ。実況もよかったな。刈谷アナ。

 さて審判はどう下るのか。私は審議にかけられて見送りと読んでいたが……。

 そこに速報。審判部長の魁傑(放駒親方)のコメント。白鵬も雅山も理事会の集合はないと発表。雅山は11勝してないからダメ。白鵬は優勝条件だからダメ。まあそれはそれでただしいだろう。私はそう思っていた。だがアナがそう絶叫し、場内も横綱誕生の瞬間を目撃したと盛り上がっていたから、ずいぶんと早い決定に感じた。私はそう結論していたからいいのだけれど……。

 場内での朝青龍インタヴュウのとき、アナが白鵬の横綱昇進が見送りになったことを伝えた。朝青龍は「来場所もがんばります」とトンチンカンな答をしていたが、これは優勝インタヴュウでそんなことを訊くアナが悪い。それよりも名古屋の客が失望にどよめいのが印象的だった。

 私個人は大ファンの白鵬より、むしろ雅山が気の毒な気がする。今場所、白鵬以外の大関は、魁皇、千代大海は9勝、栃東、琴欧州は8勝だ。雅山は同じような対戦相手で10勝している。いいではないか。
 それにしても雅山、5敗の内、どれかひとつを勝っておけばなあ。初日に露鵬に負けたのが痛い。その意味でも露鵬は今場所の隠れ主役だった。でも来場所10勝なら無視は出来まい。来場所決めてやれ!
 雅山の五年ぶりの大関復帰に駄目だししたのが唯一その記録を成し遂げている魁傑だというのは皮肉。

 白鵬は何度も書いてきたが、戦後初の大関二場所通過なんて大記録を作るなら全勝でなければダメ。朝赤龍、雅山に負けた白鵬にその資格はない。来場所全勝優勝で決めろ。


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 楽しかった15日が終った。今場所はこんな異常事態の中で苦労して書いた観戦記なので、記憶に残る場所になりそうだ。昼から晩酌をやりつつ見た先場所とはあまりに違う。夜の九時過ぎに目をしょぼしょぼさせつつヴィデオ観戦して書いた感想文だ。

 相撲を見ていると、今も父に語りかけたくなる。朝青龍の強さを、白鵬の充実を父と語りたくなる。今はまだ痛い。せつない。やがてこれは消えるのか。癒すのは時間しかない。
 生涯を通じて父と同じ趣味を持ち、語り合えたことを誇りに思うべきなのだろう。
 大相撲を見るたびに父のことを思うから、いい供養をしていると身勝手に解釈するか。

大相撲星取表──ニッカンスポーツより

【東】

【西】
10 11 12 13 14 15
10 11 12 13 14 15
朝青龍
(14勝1敗)































     
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
白鵬
(13勝2敗)































千代大海
(9勝6敗)






























魁皇
(9勝6敗)































琴欧州
(8勝7敗)






























     
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

栃東
(8勝7敗)






























雅山
(10勝5敗)































琴光喜
(8勝7敗)































朝赤龍
(1勝2敗12休)







  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

稀勢の里
(8勝7敗)






























琴奨菊
(3勝12敗)
































旭鷲山
(3勝12敗)






























白露山
(2勝13敗)
































旭天鵬
(6勝9敗)






























露鵬
(8勝5敗2休)

















  
  

  
  












垣添
(4勝11敗)






























安馬
(6勝9敗)
































把瑠都
(9勝6敗)































普天王
(6勝9敗)
































黒海
(10勝5敗)






























若の里
(3勝2敗10休)











  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  

  
  


出島
(8勝7敗)






























北勝力
(4勝11敗)
































安美錦
(8勝7敗)






























時天空
(10勝5敗)
































高見盛
(7勝8敗)






























嘉風
(6勝9敗)
































土佐ノ海
(6勝9敗)































玉乃島
(11勝4敗)
































10
岩木山
(9勝6敗)






























豊ノ島
(9勝6敗)
































11
春日王
(5勝10敗)






























栃乃洋
(10勝5敗)
































12
玉春日
(11勝4敗)






























十文字
(8勝7敗)
































13
豪風
(9勝6敗)






























豊真将
(9勝6敗)
































14
豊桜
(5勝10敗)































栃乃花
(8勝7敗)
































15
武雄山
(4勝11敗)






























北桜
(5勝10敗)
































16
大真鶴
(2勝13敗)
































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