平成十八年九州場所覚え書き
06/11/13  今場所はお休み
 九州場所が始まった。
 白鵬は休場。朝青龍に9勝の差をつけていた年間最多勝記録もこれで逆転されるだろう。朝青龍が9勝で並び10勝で追い越すことになる。
 階段を使ったトレーニング中に足の親指を骨折したという。これで大鵬や北の湖に続く年少横綱等の記録もすべて水泡に帰した。それは先場所の8勝止まりでわかっていたことだが、ここでの休場は予想外だった。いま願うのは古傷にならないように、だけである。もっとも白鵬のためにはみょうに早い出世よりもここで一頓挫したほうがいいのかもしれない。今でもあの朝青龍との優勝争いに関する取り組みには不満があるが……。

 琴欧州の膝といい大型化した今の相撲では最大の敵は怪我なのだろう。破竹の勢いがぴたっと止まってしまう。
 むかしからそうだったといえばそうである。だが今のほうが如実になった。相撲のいちばんの魅力は体重制がないことだ。柔道のいちばんのつまらなさは体重制なことだ。だけどやっぱり体重別が正しいのだろう。力士もみな大きくなろうとした。曙、武蔵丸に対抗して無理矢理大きくした貴乃花が好例だ。大型化すればするほど「怪我をしたら終り」になってきた。

 相撲を知らない人が稽古を見ておどろくのが力士の体の柔らかさである。股割を見るとみなおどろく。稽古では怪我をしないための柔軟性を重視する。だからみなぺたっと180度股が開く。もうひとつが無用な踏ん張りをしないこと。だめな体制になったらすんなり投げられて負けることが大切だ。琴ノ若との勝負でブリッジのような体制になりつつ粘った朝青龍など言語道断である。あれで庇い手が認められないのだから今の審判はおかしくなっている。
 股割で泣いた高見山が腰に粘りがないためアッサリとした負けが続き、結果的に長寿力士になったのは皮肉である。私は全盛期の高見山を見つつ、ああいう足の長い体型の力士は短命だと思っていた。

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 負けなれていない?把瑠都は、先場所へんな形での負けが続き途中休場した。解説が「あぶない!」というような足首をうちに巻き込んだ奇妙な形だった。これなども「正しい負ける形」をきちんと指導していないつけ(=指導され覚える前に出世してしまった)だろう。
 盲腸での休場をべつにすれば初の挫折になる。今場所はろくに稽古も出来ないままとりあえず出てきたが相撲がおかしくなっている。持ち前の体力での強引な引きにより勝ってはいるがあんな相撲は見たくない。

 そんなわけで今場所は豊真将の美しいお辞儀以外にはさして興味のない場所になってしまった。史上最悪10度目の角番の魁皇はなんとか勝ち越せそうだ。優勝は朝青龍か。
 白鵬の休場、把瑠都の頓挫、琴欧州の遅れる復活を見ていると、あらためて朝青龍の偉さを思う。
 過日の報道に「強運」ということが書かれてあった。どこだったか?
 千代の富士も双羽黒を始め自分の地位を脅かす連中がみな自滅していってあの記録を作った。たしかに朝青龍は強運である。

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 興味とは上昇線にあるときに盛り上がるのだろう。今回パソコンが壊れ、どうしようもないところから一歩一歩部品を買い集めて這い上がっていった。そのときはつらかったのだが、いま思うと最高に充実していた。パソコン雑誌を目を皿にして読みまくりあれやこれやと夢想していたころ。いま安定した情況にもどったらもうパソコン雑誌すら読む気がなくなってしまった。

 思えば白鵬の新入幕から初優勝までは楽しかった。我が事のように一喜一憂して応援した。今場所の怪我休場で私の糸も萎えた。来場所から出直しとして今場所は私の観戦記も休場である。


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