平成十八年秋場所覚え書き


06年9月10日から
9/10──初日  愛子さまの笑顔

 楽しみな秋場所が始まった。
 今日は皇太子ご夫妻に愛子内親王が観覧された。
 愛子さまが相撲好きとは聞いていたが、琴光喜が出島に勝った一戦で、心からの楽しそうな笑顔が見られたのが印象的だった。
 ゴミマスコミが愛子さまから笑顔が消えたと憂鬱そうな顔ばかりを載せる。まさかそんなことはあるまいと思っても定番でやられると気にもなる。それがこの笑顔ひとつで霧消した。手元でなにか書いている。星取を書き込んでいるらしい。ご両親に決まり手を教えるぐらい詳しいという。なんともいい話である。
 これが自分の娘であったならもちろん、親戚や友人の娘であったとしても、大相撲ファンとしてなんといいセンスだと思う。応援したくなる。それが愛子内親王なのだから想いは尽きない。この気持ちは、愛子さまがどんなスポーツを好きだと知っても湧かないものだった。

 もしもサッカーが好きだと言い、金髪のピアスをしているようなアンチャンのファンだと知ったらどっちらけだった。うれしくてならない。
 しかし下衆の勘ぐりをするなら、そういうふうにならないような厳然たる教育方針があるのもたしかだろう。だが親や周囲がどう思おうと、こういうものはご本人にその感覚がなければ育たない。すでにご両親に教えてあげるぐらい詳しいというのはその資質があったのである。なんともうれしくなる。


──9/15

愛子さま、相撲観戦「夢じゃなかったのかしら」

 宮内庁の野村一成東宮大夫は15日の定例会見で、今月10日に東京・両国国技館で皇太子ご夫妻とともに初めて大相撲を観戦された長女、愛子さまの様子を明らかにした。

 力士の名前を暗記しているほど大の相撲ファンの愛子さまは、貴賓席に座るなり「あっ、○○がいる」と土俵上の力士のしこ名を言い当てられたという。観戦中は星取表の漢字の読み方を教えてもらいながら、熱心に印をつけられていた。

 弓取り式も「きれいだった」と喜び、観戦後は「ああ、おもしろかった」と感想を述べられた。東宮御所にもどった後の夕食時にも「本当に国技館に行ったの。夢じゃなかったのかしら」と昂奮された様子だった。



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 白鵬、雅山敗れる!
 白鵬がまた勝っている相撲を負けた。相手は稀勢の里。負けかたは優勝した先々場所の唯一の黒星、対雅山戦に似ている。完全に勝っているのに勝ちを急ぎ詰めを誤るのだ。なんとも痛い敗戦だ。
 場所前から昇進できなかったショックを引きずり本調子ではないと言われていた。それにしても初日の敗戦は痛い。
 今になって北の湖は「今場所13勝で昇進」と言い出した。連続四場所13勝以上を続けており、年80勝ペースの力士なのだから横綱にして当然と言い始めた。だったら先場所あげたらよかった。なによりも先場所、14日目に朝青龍、白鵬戦を組まなかった取り組みミスだ。もしも朝青龍が全勝優勝をしたとしても13勝をあげれば昇進できるらしい。なんか腑に落ちない流れだ。

 雅山は安美錦に敗れる。こちらはまあ10勝以上とラインが低めだからたいしたことはない。

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 把瑠都、千代大海に敗れる!
 把瑠都が龍二に負けた。しかも突き飛ばされ腰砕けのようになるひどい負けかただった。今場所も中日ぐらいまでは龍二は絶好調なのか。それはそれで楽しみだが(笑)。
 しかしこの負けはひどい。把瑠都熱がぐっと下がった。まあこれぐらいでいいのか。外人嫌いの相撲ファンは快哉を叫んだことだろう。

 大波乱の初日だった。
二日目  BSケーブルのこと
 テレビ桟敷でリアルタイムで見られたのは昨日だけ。今日からはHDDレコーダーに録画して行き、帰宅後の観戦である。
 相変わらずNHKの映像はきたない。早くBS録画にしよう。まだテレビのBS端子とHDDレコーダーのBS端子をつなぐケーブルを買っていない。未だに買っていない。はずかしい。覚えている人がいませんように。
 
 先場所、ほとんど砂嵐のようなひどい状態になり、買わねばと焦った。しかし連日帰宅は遅い。電気屋の開いている時間ではない。電気屋にゆける休日の土日はBSのきれいな映像で見られるものだから、ついついそのままになってしまった。喉元過ぎれば熱さを忘れるで、相撲さえなければNHKを録画することなどない。なにしろ見ない。よって未だに買っていない。
 今場所はひどいといっても先月よりはだいぶまし。それでも他チャンネルと比べるとボロボロだ。なんとかしないと。
(後日記・パソコンの調子が悪いこともあって連日秋葉原やビックカメラに出入りしている。手帳にもケーブルのことはメモしてあり意識にはあるのだが、なぜか買い忘れ、深夜に相撲のヴィデオを見るとき、「買わねば!」と思う毎日。買わねばと思ってすぐに店に駆けつけ速攻で手にするものもあれば、買わねば買わねばと言いつついつまでたっても買わないこういうものもある。)

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 琴欧州の気魄
 互いにライバルと意識しあっている(いた)琴欧州と稀勢の里の一番。ここのところ稀勢の里が勝っている。稀勢の里は調子が悪いときでも琴欧州戦だけはむき出しの闘志を見せる。
 今場所はひさびさに琴欧州が気魄の相撲で勝つ。そして彼には珍しい「どんなもんだ、バカヤロー!」的な荒々しい顔を見せた。稀勢の里に連敗していることはかなり悔しかったのだろう。
 あとは平穏な一日。

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 稀勢の里の心意気
 なるべく週刊誌やスポーツ新聞を買わないようにしているのだが、例外的に月曜のスポーツ新聞は買う。目的は競馬の結果である。レースを見ているし結果は知っている。それでもあらためて最終的な人気や負けた人気馬の位置取り等を確認するのが楽しみだ。まして昨日は3連単を二本奪っているのでその楽しみもある。

 白鵬に勝った稀勢の里が「あれしかなかった。でもあんな相撲を取っているようではダメだ」と言っていたと書いてあった。好ましい姿勢である。
 昨日の稀勢の里は勝ち残りで結びの一番まで土俵下にいた。それに皇太子ご夫妻と愛子さまの退席の様子が流されたのでインタヴュウがなかったのである。
 勝ち急いだ白鵬を土俵際で突き落とした形になった。私は物言いがつくと思ったがつかない。ヴィデオで見るとたしかに白鵬が先に落ちている。
 決して自慢できる勝ちではなかったが謙虚な姿勢は美しい。
 
三日目  白鵬、変調!
 白鵬がとりあえず連勝したが立ち会いに迷いが見られる。精神面が安定していないのだろう。

四日目  露鵬の強さ
 露鵬が把瑠都に完勝した。これはすごい。いま把瑠都とがっぷり四つになってこういう勝ちかたを出来る力士はいまい。いかに露鵬の底力がすごいかあらためて確認した。

 私は当初、露鵬が好きだった。十両に上がってきたころである。私の挌闘家好みの基本はヘビー級である。鶴田や前田好きもそれだった。藤波や長州に興味がなかったのもそれに通じる。
 露鵬は上背も体重も理想的だった。勝ち相撲を見て、大関は堅いと思った。

 ところが引き技が目立つ。これはレスリングをやっていた連中の癖らしいが、あの理想的な体格で闘牙みたいな相撲を見せられてはしらける。おまけに悪人顔だった。順当に勝ち越して出世はしてくるが相撲内容は変わらない。相変わらずの引き技だ。時折すばらしい一番を見せるがすぐにまた引き技が顔を出す。なにしろそれで勝てるのだからやめないだろう。本来の親方は大鵬、それから娘婿の貴闘力になった。両親方とも引き技はやめろと言っているらしいがつい出てしまう。
 先場所の千代大海との問題も出るべくして出た事件だと思った。それ以前にも横綱に対して無礼な態度をとっていたからだ。

 しかしそういうこととはべつに、こんな相撲を見せられるとこの人の底力に驚嘆する。
 取り組み前にアナが、「把瑠都の大きさばかりが注目されますが、露鵬は身長195センチで把瑠都が197センチ……」と紹介していた。体重で把瑠都が20キロほど重いにせよ、理想的な体格の大男同士の一番である。
 がっぷり四つになり、露鵬は真っ向から把瑠都を破った。なんともすごい力士である。

 勝利インタヴュウがあった。私としては大喜びだが、しかしよく考えてみると、西前頭筆頭の露鵬が東前頭筆頭の把瑠都を破っただけなのだ。まるで横綱大関を破ったかのよう(笑)。「重かったです」と応えていた。息が切れていた。表情がすこし落ち着かない。やはりカメラの前に出ると先場所のことを意識するのだろう。私もアナが「先場所のことは吹っ切れましたか」とか尋くのではないかと気にした。尋かないよね(笑)。

 露鵬の日本語が上達しているので驚く。把瑠都も場所ごとにうまくなっている。そして彼らには小錦、曙的なへんなナマリがない。欧州系はアメリカ人とは違うようだ。不思議である。

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 琴欧州、敗れる!
 膝の怪我も癒えて復調しつつある琴欧州が敗れた。勝ったのは安美錦。
 ただし、復調とはいえ勝ち越しがやっとのここ数場所よりはまとも、程度である。だからここで負けたのは見えていた。まだまだ本調子ではない。早く完全復調して欲しい。まわしを取ったときの琴欧州の強さとあの笑顔が見たい。
 
五日目  安馬五連勝!
 先場所小結で負け越し幕内六枚目まで落ちた安馬が絶好調である。場所前の稽古もよくできたと周囲も本人も言っている。体が良く動いている。五連勝は入幕後初めてとか。朝青龍と並んで先頭を行く。
 幕内最軽量の体でこのまま行くとは思わないがとりあえず今場所の勝ち越しは堅い。うまくゆけば二桁行き三役復帰もあり得る。課題はそのときだ。あの初日から連続して横綱大関と当たる小結を突破できるかだ。
安馬の課題はそこである。

 好き嫌いの構図
 栃乃洋が露鵬に勝ったとき、思わず「よし!」と叫んで手を叩いていた。こんなとき好き嫌いが出る。もともと栃乃洋は大好きな力士だが、まさか露鵬に勝っただけで手を叩くとは思わなかった。やはり私は露鵬が嫌いらしい(笑)。


六日目  白鵬二敗目、朝青龍敗れる!
 白鵬が安美錦に敗れて二敗目。今場所後の横綱昇進は絶望となった。横綱に成れる相撲ではない。今場所は十勝五敗とかそんな成績に終り、来場所から白紙にもどしての横綱取りになる。それでいい。こういう試煉も後の栄養になる。
 今日の白鵬は両手突きの立ち会い。とにかく毎日立ち会いが違う。いかに迷っているかだ。終始突き放しての攻め、白鵬の相撲である。だが安美錦が容易に土俵を割らない。攻め疲れたかのように強引な小手投げに行くところを外掛けで敗れた。白鵬の相撲だったが、見方によっては冷静な安美錦が白鵬の攻め疲れを待っていたともとれる。くずれない安美錦の粘り強さが目立った一番だった。

 稀勢の里が朝青龍に完勝。外連のない相撲で見事に押し出した。いま決まり手を見ると「寄り倒し」になっている。どうもこの辺がいまだにわからない。なんであれが寄り倒しなのだろう。右を取らせなかったからか。でも「寄り切り」ではないのか? わからん。
 いずれにせよこれは「完勝」である。真っ向から破った。朝青龍がこんな形で年下に完敗したのは白鵬だけである。稀勢の里がここまでやるとは思わなかった。

 勝利インタヴュウでは佛頂面。うれしさを表に出しては恥と思っているのか。これはこれでいいのかもしれない。
 でも私は勝利騎手インタヴュウでいつもふてくされていた横山を思い出してあまりいい気分ではなかった。満面笑みとまで行かなくてもすこしはうれしさを出してもいいのではないか。とはいえあれが稀勢の里の美学であり、「笑顔を見せてなるものか」なら、それはそれで認めるべきか。

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 三賞に安美錦当確!
 初日に白鵬を破り、今日は横綱に完勝した稀勢の里の活躍が目立つが、前頭三枚目の安美錦もまた琴欧州、魁皇、白鵬と大関に三連勝しているのだった。初日には関脇の雅山も破っている。負けたのは横綱と岩木山である。これからの対戦相手を考えると勝ち越しは間違いあるまい。となると三賞はほぼ確定か。八勝七敗だときついから、あとは星の上乗せ次第。


 琴欧州完敗
 琴欧州が二敗目。この負けは問題だ。相手は出島。まわしをとって四つになった。相手の出島はまわしがとれない。そこからひねられて横転する。決まり手ははたき込みだった。
 このもろい負けかたは膝の故障から考えるべきなのか。それとも相撲を知らない(=相手にすもうを覚えられてきた)ということなのか。四つ相撲ではない出島にこういう負けかたをしているのでは、まるで高見山のときに言われた「外人力士は下半身が弱い」みたいである。もっとも高見山は下半身がもろくてころころ負けたからこそ致命傷になる怪我を負わず長寿力士になれたのだろうという。人間なにが幸いするかわかったものではない。それはともかくこの琴欧州の負けかたは納得できない。あの強さはもどってくるのだろうか。心配である。選ばれたアスリートに心配などはよけいだが。

 栃東、宙を飛ぶ!
 把瑠都が引き技のへんな相撲で栃東に勝つ。引いて交わしたとき、またしても背中越しに右でまわしを取り、それで投げた。アナが「最後ははりま投げのようになった」と言ったが、なんといってもすごいのは、その右手一本で投げたとき、体が泳いで土俵を割る栃東が宙を飛んだこと。あまりの怪力に思わず笑ってしまった。ほんとに、そのままだとオットットットという形で土俵を割る栃東が、右片手で取ったまわしで把瑠都が加速をつけたものだから、そこからヒョイと飛ぶのである。どうにもそのすごさが文章では説明できないが、いやはやこれはこれですごい相撲だった。

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 肝腎の一番を前に……
 今日は会社を休んだ。思うところあって昨日から通知していたので今朝は目覚ましもかけず自然に起きるまで寝ていた。とはいえいつもの時間には目覚めるのだから習慣とはおそろしい。
 平日にやりたくて出来ないことといえば昼酒である。
 会社の近くのスーパーで売る弁当に生寿司がある。大きなオフィス街があり数が捌けるからだろう、その生寿司が私の行く住まいの近くのものよりも新鮮でうまそうなのだ。食いたくなる。しかし酒なしの寿司には興味がない。一緒に弁当を買いに行く親しくしている人はまったくの下戸なので、「酒が飲めないなら寿司など食わない方がましだ」という私を異星人のように見る。
 ということで今日はひさしぶりの寿司と昼酒になった。酒は「菊水ふなぐち 熟成」にした。ただの「菊水ふなぐち」を一年間寝かせただけだというので軽く見ていたが、この酒、めちゃくちゃうまい。癖になりそうだ。いやはや今まで軽んじて損をしていた。

 せっかくの休みとはいえ、いやせっかくの休みだからこそ時間を無駄にしてはならないと、午前十時から机に向かっていた。寿司と酒を準備してテレビの前にすわったのは三時過ぎ。十分時間はあるようだがそうでもない。昨日の分二時間がまだ見ていないのだ。
 それを、あまり興味のない取り組みは早送りしたりして見終ったのが五時前。そこからやっと今日の取り組みになる。だがそのときにはけっこういい気持ちになっていた。よって今日の大波乱である白鵬と朝青龍の負けた一番を私はリアルタイムで見ていない。うとうとっとして目覚めたら相撲は終っていた。
 九時のニュースで「白鵬、朝青龍の敗れる波乱の一日」と知って「ええっ!」と思う。記憶にないのだから見ていない。

 深夜一時半からのダイジェストで見る。これがあるようになってほんとうに助かる。テレ朝のあのくだらん「大相撲ダイジェスト」が終ってよかった。番組そのものがテレ朝のあれよりも良くできているが複数回やってくれるのも助かる。
 琴欧州が出島に敗れる一番、雅山が魁皇を突き出す一番を見た記憶がある。どうやらそこで眠ってしまい、最後の三番を見なかったようだ。なさけない話だが、酒を飲んでテレビを見つつ、いつしか眠ってしまうというのは極楽気分であり、ここのところそれとは無縁の生活をしているから、ひさしぶりにそれが出来てうれしいような気もしている。
七日目  白鵬三敗、朝青龍完勝!
 今日の注目はなんといっても朝青龍と把瑠都。場所前の稽古で五番取り、把瑠都の四勝一敗だとか。
 しかし本番は朝青龍が早い相撲で相手にせず。今場所は把瑠都の非力な面が目に附く。露鵬との力負けとかあの千代大海に腰砕けのようになるとか。想像を超えたスケールで一気に頂点へと思っていたが、それほど相撲の世界は甘くなかったようだ。これはこれでよいことである。

 白鵬が琴光喜に完敗して三敗目。もう今場所はこれでいい。十勝五敗とか九勝六敗からやりなおしたらいい。あんな迷っている相撲では横綱には成れない。成ってもやってゆけない。そう思うと、あらためて朝青龍の気の強さに感嘆する。あれこれ言った日本人もいたが(桟敷席にウチダテのブス顔を見ると気分が悪くなる)異国に来て体ひとつでやっているのだ。あれぐらいの気の強さがなければやっていられまい。
中日  取り組みのありかた
 結びの一番は朝青龍と全敗の玉春日。先場所大活躍した玉春日は今場所絶不調。先場所の技能賞が引退の花道か。
 しかし中日の結びの一番にこれはないだろうと思う。機械的に組み合わせるのではなく、中日の結びの一番にふさわしい取り組みを持ってくるべきだ。安馬など最高だったろう。先場所の十四日目に朝青龍白鵬戦を組まずに場所をしらけさせた反省が活かされていない。

 月曜のサンスポで、裏一面のコラムがまったく同じ事を書いていた。
「明日は中日なのだから、結びの一番がこの取り組みではいかんでしょう」と進言するものはいないのだろうか。あきれた話である。

 白鵬対把瑠都
 本来なら全勝同士で結びの一番に期待したいのに(遠からずその日はくるだろう)今場所は白鵬がすでに三敗しているので盛り上がりに闕けた。なんとか白鵬は凌いでほっとした様子。もう横綱は無理なのだから開き直った相撲をとって欲しい。
九日目  安馬、把瑠都に勝つ!
 幕内最軽量の安馬が、ほんのすこしだけ最重量ではないが身長体重のバランス的には実質最大の把瑠都を熱戦の末に破った。場内大歓声。
 勝敗の分け目はぎりぎりでテレビではどちらが勝ったかわからなかった。いや把瑠都が勝ったようにも思えた。でも物言いはつかない。ヴィデオで見ると把瑠都が勇み足(とは違うか)のような形で土俵を割っていたのだった。土俵の外に出た足を軸に体を入れ替えていたので、こらちからは把瑠都の勝ちにも見えたが、近くの審判からは迷いようのない結果だったことになる。決まり手は、最初なんと出されたのだったか、しばらくしてから「踏み足」と場内アナウンスされていた。いまスポーツ紙のサイトを見たら「踏みだし」となっていた。
 たとえ負けたとしても安馬の敢闘精神に大きな拍手が湧いたことだったろう。
 とはいえあんな大きくて怪力の相手の脇に頭を埋めるような形になるものだから、首を痛めないかと見ていて冷や冷やする。

 栃東のうまさ
 膝ががたがたでなんで休場しないのだろうと思う栃東が琴欧州を翻弄した。こういう相撲を見ると体力に優れた欧州勢に席巻されてしまうのではないかと思う大相撲界にも一分の救いがあるのだと思う。今場所は把瑠都の敗戦を見て、そのことを学ぶことが多い。把瑠都の圧倒的体力の前には技術は通用しないのではないかと思っていたがそうではないようだ。把瑠都もいい勉強になったろう。ここで相撲の奥深さを学べばまた大きくなれる。やはりこのまま把瑠都が無敵で進軍してしまっては相撲の歴史とはなにか、となる。

 朝青龍、全力!
 一敗同士の対決となり、朝青龍が露鵬を破った。しかし心に残ったのは露鵬の強さ。朝青龍は巧さで勝った。それが大相撲を知らない体力のみの欧州勢とは違い、モンゴル相撲の基礎、高校から日本相撲に飛び込んだ経歴の違いなのだが、横綱に餘裕はなかった。全力を尽くして露鵬退治をしたという感じである。朝青龍の強さに酔うが、同時に露鵬の圧倒的体力にうんざりした。
 私は外人力士が好きで彼らの均整のとれた体力を応援している。つまり小錦や曙とはまたちがったものに対してだ。
 だがこんな形で力の相撲を見せつけられ、理想的な力士である朝青龍が追い詰められるのを見ると、また違った[感想]も浮かんでくる。
十日目  ゲストに小島太!
 ゲストに調教師の小島太が来ていた。今は髪は染めてないようだ。あいつが茶髪にしたときは気が狂ったのかと思った。

 アナがしきりに話しかけ競馬の話を振る。マンハッタンカフェの話をしていた。しかし小島から競馬の話を聞き出すならもっといくらでもあると思うが。まあこういう場合、あまりマニアックになっても困るのでこの辺でいいのか。
 なんだか無理矢理競馬と相撲をつなぎ合わせて話させようとするアナの意図に無理があり、というかそのアナの底の浅さが不快で、私はすこしも楽しくなかった。ただ小島が本当に相撲が好きであり、古くからの好角家なのはわかり、そこのところは気分が良かった。

 安馬、豊真将にエルボー!
 安馬が豊真将を破る。エルボーを放っていた(笑)。一生懸命取っているときに出たものだから許されるらしい。解説も「わざとやってはもちろんいけないんですが」と言っていた。顔面ではなかったが完全なエルボーである。

 把瑠都、足を痛める!
 把瑠都は昨日安馬に敗れ4勝5敗と黒星が先行した。初めての経験だろう。私もまさかこんなに把瑠都が負けるとは思わなかったから意外である。把瑠都は苦労知らずで天井まで行ってしまうと思っていた。もちろん相撲の難しさを知ることはいいことである。
 しかし雅山には負けて欲しくない。なのに突き落とされヘンな形で足首を捻った。だれもが心配するあぶない形だった。
 本人はなんとか自力で立ち上がり、やがて「足首ではなく膝の裏にビーンと痛みが走った」とレポートが入った。休場だろうか。心配である。
十一日目  安馬、変化する!
 安馬が稀勢の里相手に立ち会いで変化した。負けた稀勢の里は憤然とした表情。まあこの人はいつもそうだ(笑)。
 安馬は「やっちゃった」と反省したそうだが失望した客は多かったろう。
 前々から安馬は変化すれば勝ち星は増えると思っていた。だれもが思っていたろう。だが幕内一小さい体で大きな相手に真っ向から行く。だから安馬は人気があった。
 果たしてこの変化はどんな評判になるのか。本人はどうするのか。
 なにしろ変化したのが入幕して初の好成績の時である。つまり「なんとしても勝ちたいと慾が出たら変化する」ということになる。これは清貧だった人が金を持ったら性格が変ったと同じだ。「なんだ清貧はただ貧乏だったからか」となる。今後にどう影響するのか。

 白鵬四敗目
 とにかく相撲がバラバラなので当然だ。来場所からまた出直すといい。
 雅山も6敗となって大関昇進が消滅した。

 把瑠都、休場
 今日から把瑠都が休場である。おおきな楽しみが失われた。

 今場所の成績は4勝11敗になる。正しい表現はちがうがそんなことはどうでもいい。とにかくそうなる。
 これでどれぐらい番付は落ちるのか。来場所は再起の場となる。今場所学んだことも多いからまたひとまわり大きくなってくることだろう。あるいは相撲の深さを知り、出口のない迷いに踏み込むか。いやそうだとしても圧倒的に強いから負け続けるということはあるまい。
 今場所の負けで私が認めるのは朝青龍と白鵬のみ。あとはぜんぶ勝たねばならない。でも露鵬には力負けしていた。来場所からこのふたりの取り組みが楽しみである。龍二と雅山に連敗しているのが気に入らない。なんとしても来場所は勝ってもらいたい。
十二日目  朝青龍、単獨トップ!
 安馬が白鵬に敗れ2敗に。朝青龍は栃東に完勝して単獨トップ。結局はこの展開になった。
 しかし朝青龍を追うのが安馬だけというのはわびしい。

 解説は錣山
 4時過ぎにテレビをつける。解説が錣山なので豊真将の一番があるといいなと思ったらちょうどそのときだった。豊真将勝って、いつ見てもほれぼれする美しいお辞儀。両手をつけての姿勢。他の力士のように手をぶらぶらさせていないのが美しい。先日、錣山が豊真将の取り組みを通路から心配げに見ていたとのレポートがあった。今日は「満面の笑み」とアナにからかわれていた。似合いの師匠と弟子である。

 因縁の一番──露鵬と千代大海
 アナが「この取り組みですと、どうしても先場所のことを話さないと」と話しにくそうにしゃべっていた。
 相撲は露鵬の完勝。千代大海苦笑い。
 露鵬は自分の型を持ったらもっともっと強くなるだろう。どうにも好きになれない顔だけど。

 しかし早いなあ。もう残すところ三日となった。
 今場所の不調を全力士で反省すべきだろう。魁皇、栃東、琴欧州、白鵬、千代大海の大関勢。雅山、琴光喜の関脇。琴光喜は6勝1敗で「優勝に絡んでゆきたい」と言った後4連敗した。
 褒められる力士は、稀勢の里、安馬、安美錦、露鵬ぐらい。ひどい場所である。
 そうして、どんな時でも結果を出す朝青龍は、もっともっと賞賛されるべきだ。
十三日目  安馬、横綱戦!
 安馬が急遽横綱に挑むことになった。東六枚目から大関琴欧州戦を変更しての取り組みである。果たしてこれはよいことだったのかどうか。私は従来通りの取り組みでよかったと思う。それなら共に白星を挙げて優勝戦線はまだ混沌としていた。しかしここで両者を対決させたために朝青龍優勝が見えてしまった。もちろん安馬が勝てば安馬の優勝が見えたのだから話は一方的ではないし、十四日目の千代大海、千秋楽の白鵬戦は動かせないとの決断だったのだろう。でもこの方法だとむかしのような「平幕が横綱大関とは戦わないままの優勝」はなくなってしまう。それはもう幕尻の貴闘力の優勝の時にわかっているが。
 と物言いをつけておいて、かといって上位とまったく戦わないまま幕尻力士が全勝優勝でもいやだからこの辺は難しい。私としてはこの十三日目は本来の闘いで共に勝ち進み十四日目の千代大海戦で当てた方がよかったのではないか、あるいは共に十四勝一敗で決定戦がよかったのではないかということ。

 この一番の盛り上がりは凄かった。アナもおどろいていたが私もこんな異様な国技館の雰囲気は初めてだ。手拍子が起きたりしている。それだけ安馬という一所懸命のヒーローの誕生をみんなが願ったのだろう。そのぶん、このあとの十四日目、千秋楽のしらけぶりは強烈だった。十四日目の千代大海、千秋楽の白鵬が意地を見せ盛り上げたが。

 安馬の来場所が楽しみである。
 今場所は体が動きよく稽古が出来たと語っていた。体調的に絶好調だったらしい。しかし白鵬、朝青龍、栃東と終盤三連敗したようにその辺には限界がある。先場所小結で大きく負け越したように正念場はそこにある。
 今場所を盛り上げたのは安馬、安美錦、稀勢の里、露鵬。盛り下げたのは白鵬と雅山を筆頭に数多い。

十四日目  朝青龍、優勝!
 安馬が栃東に敗れて4敗になったためこの時点で朝青龍18回目の優勝が決定。勝っている力士を上位に当てるのは当然だし安馬本人も臨むところだろうが、白鵬、朝青龍、栃東との連戦は気の毒だった。
 しかしそのあとの朝青龍対千代大海戦は大乱戦となりチヨが勝つ。朝青龍、せっかくの優勝に大きな味噌をつけた。

 私はこの日、飲み会があったのでいつものよう録画していった。帰宅して深夜に観たが金沢のKが来ていて、ふたりとも酔っていたので記憶に薄い。次の日のサンスポを読んで「へえ」と思ったほど。だったら深夜に観た取り組みはほとんど覚えていないことになる。まだ録画は消してないので見直してみよう。
 「素首落とし」という決まり手。髷にチヨの指が入ったかどうかでもめたとか。今日の新聞の写真で見ると明らかに入っている。物言いがなく朝青龍が帰りかけた花道で中村審判(富士桜)からあったとか。正しくは富士桜はすぐに物言いをつけていたらしいが場内の大歓声で聞こえなかったらしい。

千秋楽  安倍総裁、二度目の登場
 競馬場からの帰り、金沢のKを東京駅まで送る。その途中、ビックカメラの46インチブラズマテレビで琴欧州対千代大海戦、朝青龍対白鵬戦を観る。琴欧州が勝って拍手。10勝5敗。来場所はもっとがんばってくれ。朝青龍と白鵬は大熱戦。白鵬がうっちゃったので最悪物言いがつくと思ったがあっさりそのまま朝青龍の勝ち。横綱とあれだけの相撲を取れる白鵬が今場所は8勝7敗だ。わからん。来場所から心機一転して欲しい。

 三賞は予想通りに安馬、稀勢の里、安美錦。
 安馬は今日も勝って11勝4敗にした。正念場は来場所だ。でも今場所は関脇小結がみな勝ち越したから三役にはなれない。こんな場所も珍しい。露鵬も同じ。西筆頭で10勝したのに三役になれない。

 安倍総裁が奥さんと会場で観戦。総理大臣杯を代理で朝青龍に渡した。「何度かやっている」そうだが、朝青龍には二度目である。(後日註・一度目は2003年秋場所と知る。)

 千秋楽の7勝7敗
 今日アナが言っていたことで印象的だったのは、幕内で7勝7敗の力士(たしか6人)がみな負け越したということ。むかしは千秋楽7勝7敗は必ず勝ち越した。まっとうな時代になったものである。
 が腐っている十両はみな勝ち越していた。きれいにみなそろいも揃ってだ。まだ互助組合があるのだろう。ほんとに十両がつまらない。

総論  低調な場所だった。途中から感想日記を書くのがいやになったほど。いくら安馬が好きでも「もしかしたら安馬が優勝か」とは私には思えず盛り上がらなかった。来場所が充実することを心から願う。

 朝青龍は千秋楽の勝ちが「幕内通算400勝目」で、それは貴乃花の記録を抜き「大鵬に次いで史上2番目」だとか。大鵬の強さが光っている。このままだと貴乃花の優勝記録は21回は抜きそうだ。現在18回。



平成18年秋場所 星取表
(サンスポより拝借)

  西
  10 11 12 13 14   10 11 12 13 14
朝青龍
13勝2敗

 





















 


































 















 






 






 














 






 
 
白鵬
8勝7敗









 




















 


























 













 






 



























 
千代大海
10勝5敗















 



























 






 














 













 






 




















魁皇
1勝6敗8休

 






 






 





















 











 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 

 
琴欧州
10勝5敗





























 






 














 






 







 


























 












 
 
栃東
9勝6敗















 



























 






 






















 






















 







 







雅山
9勝6敗

















 






 













 






















 



































 













 
琴光喜
8勝7敗

 






 













 




















 










































 






 






 





稀勢の里
8勝7敗

 




























 













 














 













 






 

























 
黒海
8勝7敗








 













 






 













 




















 






 


































把瑠都
4勝7敗4休






















 













 













 






 






 











 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 



露鵬
10勝5敗

 







































































 




















 






 







玉乃島
4勝11敗
















 






 













 






 












 





















 







 


























時天空
7勝8敗

 




















 













 









































 






 





















出島
7勝8敗








 






 



































 














 













































安美錦
11勝4敗

 






























 







 


























 





















 














 






玉春日
1勝14敗







 




























 






 



























 






































旭天鵬
6勝9敗







 








































 























































栃乃洋
7勝8敗






























 




















 















 




































 









岩木山
10勝5敗
















 




















 






 































































安馬
11勝4敗















 






























































 













 

















豊ノ島
4勝11敗

 






















































 




















 





















 





普天王
9勝6敗








 




















 




















 


































 






 















琴奨菊
10勝5敗






















 




















 






 




















 


































旭鷲山
6勝9敗

 





































 






















 



























 






 

















垣添
9勝6敗
















 






































































 






 













高見盛
7勝8敗






















 














































































 









朝赤龍
7勝8敗








 




















 






























































 






 






豪風
10勝5敗
















































































 





























10

白露山
5勝10敗

 














 
























































 






 


























豊真将
7勝8敗








 




















 













 




















 










































11

十文字
4勝11敗






















 






















 






 























































嘉風
5勝10敗





































 


























 




















 






















12

土佐ノ海
7勝8敗

 













 













 























 
























































北勝力
10勝5敗









 













 













 
































































 







13

栃乃花
7勝8敗























 






 


































 



































 





若の里
全休
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 


14

宝智山
5勝10敗
















 













 




















 






 













 




























 





春日錦
6勝9敗









 






 















 







 






 



















 







 






 













 






 








15

春日王
8勝7敗

 













 













 












































 






 






 




















琉鵬
4勝11敗








 















 



































 






 













 













 














16

霜鳥
7勝8敗





































 






 













 



























 






 







 





【注】☆は勝ち越し、★は負け越し、◎は優勝



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