2004


04/1/20
 朝青龍問題──横審の不快

 昨日読んだ『週刊ポスト』にモンゴルで猪木と握手する背広姿の朝青龍が載っていた。曙以上の話題性を集めるために引き抜きにかかったのだとか。日附は12/17。曙『K−1』参戦で話題を獨占され、なんとしても「猪木祭り」を成功させねばならなかった猪木ならやりそうなことである。現役横綱をそのまま引き抜きにかかったというから猪木らしい。その他の週刊誌も「朝青龍格闘家転身」をうたってかまびすしい。なんでも元付き人(いや運転手だったか)を名義的な社長として、兄二人(格闘家)とともに個人事務所を設立したのだとか。この種の話はみな「曙転身」の余波である。

 毎日朝青龍の相撲を堪能している身としてはたいしたニュースではないと思ったのだが、このポストの記事を一面で取り上げたスポーツ紙があったらしく、朝のワイドショーでも大騒ぎしていた。問題はその写真で、「公式の場に出るときは着物着用」という相撲界の不文律があるにも関わらず朝青龍がスーツ姿であったことらしい。この辺は高砂親方(元若松親方、大関朝潮)の教育の問題だ。
 ぼくは相撲びいき、朝青龍びいき、高砂親方びいきであり、両者の不仲(=好き勝手なことをする横綱、それを指導できない親方)をおもしろおかしく取り上げるマスコミが不快だった。ただしこれに関しては朝潮の教育不足と思う。あまりに出世が早かったからそこまで教えきれなかった、朝青龍も学んでいる時間がなかったとも言える。なにしろ小錦、曙、武藏丸、若貴という今までの最短出世力士をはるかに凌ぐスピード出世なのだ。
 それぐらい早く出世した力士だから、それだけ強い。魅力がある。今の相撲界ではちいさな体なのに、一回りふた回り大きな力士を豪快な技でぶんなげるから、モンゴル人だとか横綱の品位だとか、そんなことを無視してみれば、これほど魅力的な力士もそうはいない。圧倒的にでかいことが威力だった小錦や曙とは魅力の根元が違っている。それはまた、そういうことにこだわる人から見たら、やることなすこと、目線ひとつ仕草ひとつが不快な存在なのだろう。それを敏感に嗅ぎ取ったマスコミが、悪人に仕立てて悪いニュースを流す。これだけ揚げ足取りをされたら誰だっていやになる。さっさとやめたいだろう。これで旬を過ぎた力士なら曙のように数億の契約金で転身する。ところが朝青龍は今が華だ。今場所も全勝でつっぱしっている。まだまだ大相撲で頂点にいられる。相撲にもお金にも未練があるだろう。こんなすぐれた力士を辞めさせてはならない。

 横綱審議委員会のウチダテマキコが「親方の指導に問題あり」と毎日新聞で発言したとかで、フジの「とくダネ!」では、今まで朝青龍に比較的好意的だったウチダテさんが今回は厳しい姿勢を、と報じていた。このブスおばさんの存在は女が相撲に関わって来るというそれだけでぼくには不愉快なのだけれど、今回の意見としてはまともだ。いや横審の中では今までもナベツナなんかよりも一貫してまともだ。それは素直に認める。
 それにしても横審てなんなのだろう。聞くところによると純粋な名誉職らしくお車代以外は出ないらしいのだが、なんともわざとらしい存在である。とはいえ相撲はもともと大名の庇護の元にあった伝統芸能みたいなものだから、こういうのがあるのも相撲らしいとも言える。でも、だったらそれらしく、むかしの大名や豪商が関わったように、毎月うん百万ぐらいは力士に貢いで散財し、相撲に言いたい放題のお大尽遊びというのがふさわしい。どうも今のは、金も出さずしかつめらしい意見を言うだけの著名人による監視機関みたいでうさんくさい。まして女を入れるなんておかしい。この辺は断髪式に女を土俵に上げないことでフェミニストから攻撃されたことを、ウチダテという女を横審に入れることで交わそうとする姿勢のブレにつながっている。土俵は母なる大地なのだ。そこで男は相撲を取る。女が乗ったら女に女になってしまう。

 ナベツネは各種マスコミに呼び捨てされることを、「犯罪者でも呼び捨てにはされないのになぜおれだけ!?」と不満らしい(笑)。そりゃそれだけの人柄を感じたら一般人もマスコミもそんな呼び方はしない。ナベツネと憎たらしい響きで呼ばれるのは彼に責任がある。人徳があったらナベツネで始まってもいつしか「ナベツネさん」になっていたりする。
「こんどあんなことをしたら引退勧告をする」とナベツネはエラそーに言うのだが、なんか二十二歳の朝青龍よりぼくには彼のほうが子供に見える。
「ナベツネが嫌いだから読売はとらない」という知人に、「ナベツネと読売のすぐれた面を混同しないでくれ」と言ってきたのだが……。
04/1/24
 祝・朝青龍優勝!

 朝青龍14戦全勝で優勝決定。強い。気分がいいや。強いことが最大の説得力だ。
 あとは明日も勝って貴乃花以来7年4ヶ月出ていない全勝優勝である。優勝11回の曙の相撲人生唯一の悔いが全勝優勝できなかったことだった。武藏丸はしている。
 曙もほんとそれに関してはだらしなく、13戦全勝で早々と優勝を決め、そのあと14日目、15日目と連敗し、13勝2敗の優勝なんてのがあった。
 ぼくの父は割合開かれた感覚の人だが、どうにも相撲に関しては日本人が弱いことは我慢がならないらしい。朝青龍の強さは認めつつ応援は出来ないようだ。母も同じ。一階で二人で嫌っている。ぼくと妻は二階で朝青龍を応援している(笑)。
 ぼくに人種偏見はない。朝青龍大好きだし、黒海(グルジア人)も応援している。それでもむかしを振り返ると、あの最強時代の小錦は応援していなかった。おおきすぎて強いものには感情移入できない。ぼくがプロレスラでいちばん強かったと思うのは全盛期のアンドレだが、彼には名勝負はない。一方で藤波長州のように決して大きくも強くもないが拮抗した体力で多くの名勝負を残しているレスラもいる。名勝負とはそんなものだ。相撲で言うなら若乃花琴錦戦のような早くて技の豊富な相撲がプロレスの「名勝負数え歌」に匹敵する。
 朝青龍は長州藤波のような体でアンドレをぶん投げるのだ。格闘技好きとして応援せずにいられるものか。

 たとえばロシア出身の露鵬という力士がいる。地位は十両。所属は大鵬部屋。大鵬がロシアの血を引いていることからの縁だろう。部屋の名は今場所から娘婿が次いで大嶽部屋。大嶽親方は貴闘力。
 露鵬は今場所、十両の優勝巴戦にまで駒を進めた。「巴戦」なんてのもいいコトバだなあ。そういえば『お言葉ですが…』の高島さんも「相撲界はいい日本語の宝庫」と書いていたっけ。
 前々から注目していたこの露鵬がいま引き技にはまってしまっていて相撲がよくない。勝ち星以前の問題だ。どうにもこれは陥りやすいワナだ。黒海も一時そうだったがそれをやめて押しに徹してから伸びた。露鵬もいま勝ち星は順調だが大成するかどうか、ここは正念場である。解説の北の富士、舞の海も引き技には苦言を呈していた。というわけで外人力士大好きだがなんでもかんでも応援しているわけではない。あらゆる面から朝青龍は最高なのである。

 来場所から二子山部屋がなくなって貴乃花部屋になる。今まで伝統的にやらなかった「大学相撲力士にも手を伸ばす」と言う。相撲は中卒に限る。田舎から出てきて鍛えられ、二十歳で幕にあがる。同い年の奴らがまだ学生で仕送りをもらっているときに高給取りだ。それがかっこいい。二十歳過ぎの学生相撲出身が幕下つけだしなんてつまらない。貴乃花の美もそこにあった。今後の部屋経営もその路線で行ってもらいたかった。残念だ。だいたいが大学に進んで相撲を取るってのは「もしも相撲で食えなかったら困る。大学から転校しても遅くはない」っていう二股かけたこそくな人生選択なのだ。中学を出て相撲一本に懸けるほうが美しい。これはまたべつにまとめるとして。

 きょうは27本の懸賞がかかって結びの一番は盛り上がった。
 どっからみても朝青龍は最高である。朝青龍の強さを堪能できず、こまかいことでケチをつけている連中を見ていると、力道山時代のプロレスの見方から基本的に日本人は変っていないのだなと思う。シャープ兄弟は反則はしなかった。それでも日本人は日本人(実は朝鮮人)の力道山を応援し、悪い外人(実は悪いことはしていない)をやっつけろと昂奮したのである。当時から力道山よりルー・テーズのほうが好きだったぼくがいま朝青龍好きなのは道理である。
 さあ朝青龍、明日は全勝優勝だ!

【附記】朝青龍全勝優勝に横審沈黙
 ウチダテが苦言を呈するのを抑えたってんだけど、横審てナベツネとウチダテばかり目立っている。他の委員はなにをしているんだ。それと、頻繁にあのブスオババのアップを流して横審が横審がと放送することは、日本全国に横審とウチダテへの反感を招いてよくないのではないか。相撲ファンの根底には「女なんぞに口を出されたくない」がある。ウチダテも調子に乗るとせっかく築いた「プロレスと相撲好きのオババ」の好感度の地位を失うぞ。失ってもいいけど。(26日記)
04/2/3  相撲を貶したフランス内相

 『Yomiuri Weekly』の記事から。
「フランスの内相が、日本の相撲を醜悪だと否定し、京都もいったいどこがいいのかわからないと言い、一方で香港を絶賛した。これは次の大統領候補としても有力な彼の、日本びいきのシラク現大統領への皮肉であり、中国の好感を得ようとした政治的発言であろう」というもの。「シラク大統領は大の相撲好きで、全取り組みのヴィデオを取り寄せ、それをドイツのシュレッダー首相にダビングしてプレゼントするほど」だとか。
 新聞のニュースで知ったときから書いておこうと思っていた。きょう『Yomiuri Weekly』でもういちど読んだことをきっかけに書くことにする。内容はすべて記事の通りで書き足すこともないのだけれど。

 シラク大統領には日本人の女に生ませた子供がいる。前々から噂されていたが確定のニュースとして流れたのは昨年だった。今まで話題にならなかった理由がいい。「フランスでは政治家のセックススキャンダルにはマスコミは触れないのが原則」なんだとか。おとなだねえ。色を好むものすべてが英雄のはずもないが、政治家という激務が愛人を二、三人囲って子供を作るぐらいの元気のある人のものである確かだろう。ひからびた清廉潔白の人が出来る仕事ではない。そういう意味でも小泉さんは変人であり私の好きなところでもある。
 ヤマタクの首を取ったと自慢げの『週刊文春』のキマタ編集長にこのフランスの原則を聞かせてやりたい。一連のヤマタク報道でどれほど読者が離れたことか。文春読者が読みたいのはあんなことじゃない。ヤマタクを落としたが、同じく『週刊文春』もまた堕ちているのだ。

 立花隆は「田中角栄金脈研究」で権力の絶頂にいた田中角栄首相を泥沼に突き落とした。そのことによってペンの強さを世にしらしめ一躍彼自身がマスコミ界のヒーローとなった。が十数年の時を経た後、「あれをやったことはよかったのかどうか……」とつぶやいた。私は基本的に彼は嫌いだがこの自身への疑問は好意的に解釈する。彼は「時の大きな権力にペン一本で立ち向かい、勝利した自分」を孤高の鉄人と思って酔った。だが時が過ぎ冷静に解釈してみると、それは「時の権力をつぶそうとする、より大きな権力に利用された猿回しの猿だった」ことに気づいたのである。
 ロッキード疑獄とは、自分たちに逆らおうとした田中角栄をつぶそうとしたアメリカと、無学な成り上がりを気に入らなかった東大学閥のタッグによる陰謀である。今のイラク侵略も同じだ。アメリカのキリスト教原理主義は、自分たちの気に入らないものはすべて力づくで排除しようとする。

 それと比べるとあまりにスケールがちいさいが、ヤマタクの問題も小泉政権をつぶそうとしたノナカヒロムの指令でキマタが画策したものである。時が過ぎたとき、キマタにも、「つまらんことをした」と思う日が来るのだろうか。

 
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