平成二十一年九州場所
 初日  貴乃花理事? 千代の富士理事長? スイーツ大乃国

 週刊誌に、協会改革を目ざす貴乃花が理事に立候補するらしいということ、年功序列の世界で、若い彼が立候補すると波風が立つと書かれていた。
 先輩横綱の大乃国ですらまだ理事になっていないのに、のような論調だったが、大乃国はスイーツ評論家として我が道を行っているから、あれはあれでいいだろう。まったく、どんなところで才能を発揮するかわからない(笑)。政治力を駆使した千代の富士時代に唯一ガチンコで挑み、そのことにより中盆の板井らに文字通り痛い目に遭わされてきた大乃国が、あんな形でしあわせ?を手にしているのを見ると、こころからうれしくなる。
 しかしこのことは悪いことばかりではなく、相撲が挌闘技であることを確認したいい話でもあった。つまり、千代の富士の八百長要請に応じない大乃国は、それを仕切る板井にとって気に入らない存在なわけである。示しをつけねばならない。この辺、まさにヤクザの世界。そして何をやるかというと、平幕の板井が、両手にガチガチのバンテージを捲く。そして掌底。やられる大乃国は仕切りの時から脅えている。真剣勝負だから毎回決まるわけではない。しかし掌底が顎に決まったときは、あの大きな大乃国が一発で腰から崩れた。
 不思議と私は板井に対する憎しみは湧かず、むしろ中盆としてそういう役目なのだろうと理解していた。その代わり、そういう政策であらゆる記録を塗りかえ我が世の春を謳歌する千代の富士に対する嫌悪は増していった。さすがに周囲からの批判も高まり、優勝回数だけは大鵬の32回に遠慮する31回で止めたが、大相撲はむかしもいまもそういう世界なのだ、と思いつつも、釈然としない気持ちが残る。そんな中、ガチンコ相撲を譲らなかった大乃国はオアシスだった。

 こころある力士はみな口を揃える。千代の富士の連勝記録などより貴乃花のガチンコ30連勝のほうがよほどすごいと。
 ところがどうもこの週刊誌によると、千代の富士の理事長路線は確定らしいのだ。ケチで人望が泣く、人格に問題ありなので難航すると思っていたのだが……。まああれだけの実績を残せばさすがに成れるのか。目立ったライバルもいないし。九重理事長か……。いやだね。

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 把瑠都、順当に勝つ

 場所前、また夜遊びがばれて問題になった把瑠都(笑)。ニットの帽子でチョンマゲを隠してまで遊びに出ている。しょうがないよねえ、遊びたい盛だもの。東の関脇で今場所は何勝できるか。そろそろまた一度も勝っていない横綱に勝って欲しい。

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 白鵬、慎重

 白鵬が1分41秒という長い相撲で稀勢の里に勝った。慎重だった。取りこぼしは許されないから慎重でいい。先場所まで71勝4敗。朝青龍の年間最多勝84勝6敗を破るのには、今場所14勝1敗で可能だ。いや全勝優勝して欲しい。それで86勝4敗なら歴史的記録になる。

 バカ青龍は初日から張り差し(笑)

 それでも勝っちゃうからねえ、しょうがない。

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 龍二さんの未来

 チヨスは今場所負け越しても引退しないと早々と宣言。後ろ向きの前向き発言がすばらしい(笑)。今場所負け越して大関転落しても引退せず、来場所の「10勝で復帰」に懸けるのだとか。その場合、6敗して復帰が絶望になった時点で引退表明とか。なんかわくわくする(笑)。どうなるのだろう。

 魁皇、幕内799勝!

 明日は800勝目か。通算は966勝か? なんとかこのまま現役を続け、千代の富士の1045勝を破って欲しい。千代の富士嫌いの私の切なる願いである。1045勝はまだ遠いが、幕ノ内の勝ち星記録は千代の富士の807勝だから目前だ。
 二日目  不景気

 夕方M先輩と溝ノ口で会うので大相撲は録画。帰宅して深夜に見る。
 客が入っていない。上の方はがらがらだ。九州場所に二横綱が揃うのはひさしぶりとかで、懸賞の景気はいいようだが、客の入りが悪い。そりゃあねえ、不景気だとこういうところから財布の紐を締める。特に相撲は雰囲気を味わうものであり、単に勝負を見るのならテレビ桟敷がいちばんだ。それにしてもガラガラ。心配になる。

 武州山、いよいよ大関挑戦

 明日武州山が琴欧洲に挑むとか。後輩にさんざん追いぬかれ、33歳での歴代2位の年長新入幕。番付で上にいるのはみな後輩だ。これはこれで相撲ロマンである。今場所は注目してみよう。

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 琴奨菊、把瑠都に完勝!

 立ちあいの甘い把瑠都が琴奨菊に双差しになられる。しかし把瑠都は大きいからここからカンヌキをすれば負けないだろう。だが安易に左の上手を取りに行く。たしかにどちらかでもまわしをつかめば勝負になる。だが琴奨菊のまわしは固い。まわしにこだわったその一瞬を見逃さず琴奨菊ががぶる。休まず攻め続ける。把瑠都、必死に耐えるがとうとう土俵を割った。地元で琴奨菊、大活躍。関脇を破っただけなのに殊勲インタビュウ。昨日は日馬富士を破ったのだから当然だが、今日は地元サーヴィスか。

 高田川(安芸乃島)が言っていたように、あの態勢になったらまわしにこだわらずカンヌキで極めた方がよかったろう。その辺把瑠都はまだまだ相撲を知らない。でもいつもニコニコ顔であり、負けても苦笑という感じなのに、今日は珍しく険しい顔をしていたからすこしは勝負に対する意慾が芽ばえてきたのだろう。

 今日の解説は正面が玉乃井(栃東)、向こう正面が高田川。いつ聞いても安芸乃島の解説は最高だ。

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 安美錦の価値

 安美錦と朝青龍、膝の調子がわるいのか安美錦にしては不出来な勝負。それでもこのひとが上位とやるときはわくわくする。貴重な脇役だ。
 三日目  武州山、大関初挑戦

 今場所の武州山は前頭三枚目なので、雅山を抜いて武蔵川部屋の部屋頭なのだとか。すばらしい話だ。大学中退の雅山はあっと言う間に出世して大関になっていった。次々と追いぬいて行く後輩の出世を武州山はどんな気持ちで見ていたのだろう。なんども引退を考えたのに、まさかこの年になって部屋頭になるとは、本人も親方の三重の海も考えたこともなかったろう。
 それを言うなら、傍流の地味な横綱であった三重の海の理事長も意外な出世になる。しかしそれは北の湖の転落から始まったのだが、武州山は己の力でつかんだ座だ。
 琴欧洲戦はあっさりと負けてしまったが、ここまで這い上がってきたことには万感の思いがあったろう。感動の一戦だった。

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 魁皇、幕内800勝!

 史上1位の幕内在位98場所目を迎えた大関魁皇(37=友綱)が、関脇把瑠都を破って幕内通算800勝の大台に到達した。把瑠都の左腕にからめた右からの小手投げで仕留める今場所2勝目に「体が動いた」と振り返った。800勝は歴代3位だが、2位804勝の北の湖、1位807勝の千代の富士を今場所中に抜く可能性も出てきた。記録については「関係ない。振り返らない」と話した。ニッカンスポーツより

 昨日稀勢の里に転がされて伸びていた魁皇の幕内通算800勝の大記録が今日達成された。相手は把瑠都。アブナイアブナイ小手投げ。把瑠都は肘を気にしていた。だいじょうぶだろうか。心配だ。ほんとに怖い技である。
 これで魁皇の上にいるのは北の湖と千代の富士だけ。私は千代の富士が嫌いだから、彼の記録を魁皇に抜いて欲しいのだが、千代の富士ファンから見たら、地味で長く取っているだけの魁皇に千代の富士の記録が抜かれるのは不愉快なことだろう。だからこそ抜け! と思う。


怖い技だ、関節技。これをやられたら逆らわず投げられるしかない。写真はニッカンスポーツより。
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 当たらないけたぐり(笑)──○時天空 ●日馬富士

 時天空は当たらないけたぐり(それはもうけたぐりではないわけだが)で時々勝つ。今日もそう。なのに日馬富士は土俵に頭からつっこみ逆立ちするようになっていた。かなり奇妙な笑える相撲、とも言える。

 安美錦、負けるが

 昨日に続いて横綱戦。白鵬と27秒の相撲。順当に白鵬が勝ったが安美錦には怖さがある。ほんとに価値のあるお相撲さんだ。

 琴錦が秀ノ山

 今日の正面解説は琴錦。相変わらず「誠意のない営業マンの商品トーク」みたいで軽い解説。早口すぎる。「秀ノ山」と聞いて?マークが浮かぶ。秀ノ山は長谷川だろう。年寄株をもっていない琴錦は浅香山とか荒磯とかよく変ってきた。荒磯は稀勢の里のもの。あの若さでもう持っているのもいれば、こんなふうに次々と借用してはなんとか相撲界に存在しているのもいる。琴錦の人生のいいかげんさがよくわかる。長谷川の引退で秀ノ山を借りたらしい。今年の9月27日とか。そりゃ知らんわ。しかし荒磯を借りたのが今年の1月だというから、こんなにちょいちょい名前の変る親方も珍しい。
 どうにも軽薄で感心しない琴錦の解説だが、白鵬安美錦戦で、白鵬の筋肉に力が入る瞬間の解説は見事だった。やはり業師であり解説能力は高いのだなと確認。要は喋り方か。

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 惜しい、豪風!

 バカ青龍がまた張り差し。今日は左から。それを読んでいた豪風は見事にそれに耐えてバカ青龍を泳がせる。勝機だった。だがそこから彼を倒せるだけの技がなく、運動神経抜群のバカ青龍は見事に立ち直り、逆襲に転じる。あとは簡単に料理されてしまった。
 あそこから朝青龍に勝てる技のない豪風の限界、すばやく体勢を立てなおす朝青龍の運動神経のよさが目立った。でも相変わらず無意味な張り差し(もう癖なのだろう)をして墓穴を掘っているバカさ加減も目立つ。今日は自ら掘った墓穴に入らずに済んだが、それは豪風が無能だったから。バカ青龍に反省はあるのだろうか。ないんだろうな。彼にとっては「でも勝っている」がすべてなのだ。現実に勝っているのだから誰も文句はいえんのか。それにしてもひどい相撲。でも3連勝。

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 琴欧洲、3連勝

 安定して勝っているのだが、これでいいのだろうか。初日に難敵・鶴竜を料理したのは見事だったが、相手に合わせた丁寧な相撲で、なんだかスケールがちいさくなったように感じた。土俵際では腰を落とし、完璧とも言える勝利なのだが、豪快さはない。二日目の栃煌山は楽勝。今日は武州山をすくい投げで仕留めた。豪快さ=荒々しさ=粗雑さを封印しての成長、と取るべきなのだろうか。
 佐渡ケ嶽部屋所属の琴錦は、「実力的には何の問題もない。精神面だけの弱さなので、それを克服すればうんぬん」の解説をしていたが、あまりこの辺のこのひとの解説は信じられない(笑)。このまま順調に終盤まで行って欲しいが、どうにも安心とは言い難い。

 四日目  把瑠都、怪力相撲

 稀勢の里がうまく四つになった形。把瑠都は棒立ちのよう。だがあれだけ躰があるから、これでも稀勢の里有利にならない。稀勢の里もあれだけ大きいのだが。そこから強引に把瑠都が吊りに出たりするものだから、稀勢の里はあわててしまい、すくい投げで転んだ。勝った把瑠都が首を捻ったように、快勝ではないが、把瑠都の底知れない体力に相手が自滅してしまったような、これはこれで印象的な一番。

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 日馬富士の駄目押し

 日馬富士と鶴竜が激しく速く、しかし時折間があって相手を観察するような、おもしろい勝負。最後は手を手繰るような形で日馬富士が勝ったが、そのあともう土俵を割っている鶴竜をさらにつきとばしての駄目押し。さすが朝青龍の弟分だけあってやることが同じ。品はないが、でも挌闘技として、それほど悪印象はない。写真はサンスポより。

日馬富士が鶴竜に見苦しい駄目を押し、敗色濃厚な山本山は自分から歩くようにして土俵を割る。乱れきった土俵に武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が「お客さんも見ているんだからよくないね」とあきれ返るのも当然だろう。

 日馬富士と鶴竜の相撲は、激しい攻防の好一番だった。しかし、その後がいただけない。明らかに土俵を割っている鶴竜ににじり寄って右肩で押す。「ずっと引いてくるから失礼だと思った。大関が相手なんだから、恐れずにやればいいのに」と釈明したが、見苦しい態度に武蔵川理事長は「うーん。どうなんだかね」とまゆをひそめた。


 とニッカンスポーツは書いているが、むしろショックはこのあと。

九州場所の不入りは今年も変わらず、この日の観客は3813人でほぼ半分が空席だった。

 いやはやほんとにひどい。元来私は自分の好きなものは好きなもので世間が同だろうと関係ないのだが、いくらなんでもさみしくなる。不安になる。ほんとガラガラだ。

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 琴欧洲、連勝ストップ

 琴欧洲が安美錦に対し、なにをしたいのかよくわからない半端な相撲をして自滅した。とはいえ3連勝を「相撲が小さい」と書いたようにあまり評価していなかったから特別な思いもない。勝ったのは7-11と分の悪い安美錦。安美錦は「なにしなくても向こうが考えすぎて潰れる」と言ったらしいが、いかにもそんな内容の相撲。分の悪い相撲巧者に対して気弱な琴欧洲が考えすぎてしまうのだろう。勝負の奥深さである。

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 千代大海、行司と一緒に転げ落ちる(笑)


 初日、二日目と連勝は出来すぎと思ったら、期待通り三日目、四日目と連敗。やっぱりこうでなくちゃ。今日は豪栄道に後ろに回られ行司と一緒に突きだされる。行司は土俵下まで転げ落ちていた(笑)。
「行司さんを押し出したんだから1勝くれ」。最後は気晴らしのように軽口をたたいた。
 いいなあ、さすがは龍二さん。写真は時事通信。
 五日目  把瑠都の突き ○把瑠都 ●豪栄道

 把瑠都が両手突きのような形で出ると豪栄道はもう浮きあがってしまう。そして、引いて、お終い。すごい威力だ。北の富士もこれからもっとこれを使った方がいいと意見。

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 拍手で解る好き嫌い ○鶴竜 ●魁皇

 しかしまあガラガラ。だいたいが七分の入りでも空席は目立つものだが半分も入っていないのだからひどい状態。九州場所はそういうものだが、ちょっとひどすぎる。

 地元の魁皇に声援が飛び手拍子が起きる。私はすでに魁皇攻略法を完成させている鶴竜が勝つだろう、勝つべき、勝たなきゃおかしい、と考えている。だから見事に、危なげなくそうなったとき、思わず拍手をしていた。これは魁皇が嫌いなのではないから、自分の相撲論に立脚して、ということなのだろう。

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 日馬富士の迷い ○栃煌山 ●日馬富士

 日馬富士が「なにをしたいのかわからない」と北の富士に評される不可解な無気力相撲で栃煌山に完敗。昨日鶴竜に負けたときは、「大関相手に引き技を使う。もっと前に出て来て欲しい」と言ったりしていたが、自分は今日引き技を使っている。
 栃煌山の勝利に私は拍手をしていた。となると栃煌山>日馬富士なのだが、べつに栃煌山は好きではないから、日馬富士嫌いなのだろう。先日シンスケの「深イイ話」に出ていたが、どうにもパフォーマスンばかり目立ち、それに匹敵するだけの相撲を取っていない。私はいま日馬富士が嫌いなようだ。

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 安美錦の巧さ ○安美錦 ●琴光喜

 左に変化しつつ、左上手を取り、そのまま半身に構える。巧い。そこから琴光喜も反撃し、安美錦がまきかえたこともあって、琴光喜が上手を取る展開になる。逆転したかと思ったが、底からも土俵際で安美錦の右下手投げ。昨日の琴欧洲に続いて佐渡ケ嶽部屋の大関を破る。まさに天敵。
 勝ったときに思わず拍手をしていたので、私は安美錦>琴光喜を確認した。

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 これは変化ではない ○豪風 ●千代大海

 私は立ちあいの変化が大嫌いである。まあ好きな相撲ファンもいないと思うが。
 ただ今日の豪風のそれは、アナも「豪風、変化しました」と言い、ひとりでこけた千代大海は、悔しそうに土俵を叩いていたが、そうではあるまい。
 立ちあいが合わなかった。二度目。なんとか成立したが、それは千代大海が陸上競技ならフライングになったであろう早めの立ちあいだった。頭を下げ、こちらを見ずに突っこんでくる。あれを見たら誰でもよけるだろう。それだけの相撲だった。前を見ずに突っこんでくるのがいるのだ。なにも受けとめてやる必要はない。よければいい。豪風の変化ウンヌン以前に千代大海のだらしなさが責められるべきだ。

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 今日の朝青龍は良い!

 結びの朝青龍稀勢の里戦は今日一番の好取組なので、中継が始まったときからその話題ばかり。それも朝青龍が張り差しをしてくるのを前提にしている。張り差しが効果的な力士、そうでない力士がいるが、稀勢の里は朝青龍の張り差しで動きが止まってしまう典型的な力士。そのことから自身も張り差しを多用しているのだろう。だが残念ながら稀勢の里の張り差しは効果を上げていない。今日の話題は、いかにそれに耐えるか、そしてそのあと、という戦略のことばかり。
 ところがそういう戦略がなされていると読んだのであろう、朝青龍は張り差しでなく低い姿勢で頭からぶつかっていった。稀勢の里の躰が浮きあがる。この時点で勝負はあった。あとは引いて転がして終り。アナも北の富士も頭から突っこんだ朝青龍を絶讃。私も今日の朝青龍には文句なし。
 六日目

 栃ノ心の相撲センス

 栃ノ心が鮮やかな上手投げを決めた。投げた相手もモンゴル相撲出身でセンスのいい朝赤龍だから価値がある。グルジア人とは思えないいいセンスだなと思ったら、舞の海も同じ事を言って絶讃しているので意を強くした。相撲も柔道も知らない外国人力士としては、じつにセンスのいい投げだった。

 昨日、栃ノ心と旭天鵬の一番の時、栃ノ心22歳、幕内最年少と出ていた。そうか、稀勢の里や豪栄道たちは23歳で、最年少は栃ノ心なのだ。相手の旭天鵬がヴェテランなので、年齢差が一回り以上あるとそれを強調していた。というか、昨日の特集は、そういう「年齢」だったのだろう。やたらその話をしていた。栃ノ心のこれからが楽しみである。毎度書くけれど、彼は下半身の方がどっしりしている白人には珍しい相撲にあった体形なのだ。

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 把瑠都、怪力相撲 ○把瑠都 ●鶴竜

 関脇対決。先場所絶好調だった把瑠都だから鶴竜は軽く料理と思ったら、必死の外掛けに敗れた。あの一敗がないと優勝にすら絡む惜しい一番だった。
 四つになり、そこから怪力で吊るのだが、先場所のことがあるからか、すこし慎重だった。それでも豪快な吊りに会場が沸いた。

 共に明日のある素晴らしい、大好きな力士だが、ふたりの対戦になると、やはり把瑠都を応援している。これはプロレスの新人で言うなら、鶴田と藤波みたいなもので、私はやはり大きくて強いものが好きなのだ。晩年の猪木が、藤波が最高に輝いていたときでも、藤波を自分の後継者にとは一度も考えたことがないと、藤波ファンからしたら身も蓋もない言いかたをしたことがあるが、そういうものなのだろう。一方、躰のある前田にはその期待をしていたとも。
 鶴竜はよくて「名大関」だ。把瑠都には白鵬と並ぶ可能性がある。

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 空席ばかり

 とにかく客が入っていない。見ていて切ない。空席ばかり。これが一日限りのプロレスなら、カメラに映る席に客を集めたいところ。さすがに15日興行の大相撲ではそんなことも出来ない。いやはやひどい。がらんがらん。
 そんな九州場所が唯一盛りあがるのが魁皇の相撲。声援が飛びかいコールが起き、唯一の熱気。しかしここまで客が入らないと九州場所そのものを考えねばなるまい。

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 武州山、琴光喜に勝つ!

 三日目に、33歳にして初めて大関挑戦をした武州山。今日はふたりめの大関琴光喜戦。ふたりは同い年。武州山が一ヵ月早く生まれている。武州山は大東文化大。琴光喜は日大。
 日大時代の琴光喜こと田村は、学生相撲の歴史に残る強豪。学生横綱、アマ横綱とタイトルは27。
 武州山との差は、新十両で5年、新入幕で8年。琴光喜が初優勝したときはケガで三段目まで落ちていたとか。それが今日、大関と前頭三枚として対戦。幕下時代に一度あり10年ぶりとか。なんとも万感迫る一番だった。
 そして軍配が武州山にあがる。テレビではそう見えなかった。行司差し違いに思えた。だがヴィデオを見ると武州山の足が残っている。舞の海が「行司さんはよく見てますねえ」と感心していた。もの言いがついたが軍配通り武州山の勝ちとなった。
 勝利インタビュウ。「一生の思い出になります」が微笑ましい。遅咲きの武州山に心からおめでとう。

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 力の差──○朝青龍 ●琴奨菊

 バカ青龍がまた右の張り差し。もうこれしか出来ないのか。なんの効果もなく琴奨菊がいい態勢になった。右の前褌を取ったように見えたが取れていなかった。あとでヴィデオを見ると下がりを掴んでいた。この取らせないのも朝青龍の巧さ。そこから内無双で崩し、突きおとした。
 朝青龍の張り差しという缺陥が出ているのだが、いかんせん力の差がありすぎて、豪風も琴奨菊もそれを勝機に結びつけられない。それだけ両横綱の力が抜けているわけで、そのこと自体に不満はないのだが、朝青龍のだらしない張り差しの隙をつけない力士はなさけない。



 七日目  八分の入りにほっとする──解説は九重

 土曜だからか八分の入り。いつものように半分が空席とはちがう。それだけで熱気が伝わってくるよう。協会はもっと客を入れるよう努力せねばダメだ。
 いやいや「今場所初の満員御礼」なのだとか。どうも満員には見えないのだが。それでもガラガラとはちがうのでほっとする。

 今日の正面解説は九重。どうしても話題は魁皇の幕内勝ち星になる。現在魁皇802勝。北の湖が804勝。最高の千代の富士が807勝。今場所にも抜かれる数字だ。「どんどん抜いて欲しい」と言う。わざとらしい(笑)。
 通算勝ち星は千代の富士の1045勝。魁皇はいま970勝。「これはまだまだですね」とアナが言うと、「いやあ、がんばれは来年にも抜けますよ」と九重。これまたわざとらしい(笑)。

 しかしほんとうに九重が理事長になるのだろうか。文句なしの実績なのでなって当然なのだが、これまた文句なしに人望がない(笑)。どうなるのだろう。

 場所前から噂されていたように、四日目に貴乃花が正式に理事への立候補を表明した。しかし隆の里も表明したので、何年ぶりかの選挙が確実なようだ。狭い狭い村社会。その中でも1票をあらそってたいへんな確執がある。名横綱でもなれないひといれば、意外な平幕力士が信頼されたりする。それはそれで人格が見えて興味深い。
 貴乃花は村社会の中でどうなのだろう。誰もが千代の富士のような政略勝ち星でなく、ガチンコ横綱だった貴乃花の相撲は絶讃する。認めている。だがそのことと人格的尊敬はまたちがってくる。貴乃花の相撲も、協会改革の理想も意義あるものだが、彼が尊敬を集めているかとなるとまた話はちがう。果たしてどうなるか。

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 モンゴル相撲の価値──○白鵬 ●把瑠都

 今日の大一番は誰もが認めるこの一番。白鵬の11戦全勝だが、先場所のヴィデオを見るだけでも把瑠都の強さが伝わってくる。あの強い白鵬が、倒すのに全精力を傾注している。それだけ把瑠都は規格外の怪物なのだ。

 さて今日は、四つになり、またすごい力相撲になるかと思われたとき、白鵬の内掛けという意外な技で決着がついた。あそこで内掛けが出来る白鵬にほれぼれする。それはモンゴル相撲の底力だ。おとなになってから相撲を覚えた白人力士には決して出来ないことである。土俵のないモンゴル相撲では倒すのが決着だ。足首を掴むような技とかじつに多彩である。長身の横綱がひょいと内掛けを決める。白鵬もまたモンゴル相撲に通じたモンゴルの少年であることを確認した一番だった。

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 鶴竜、善戦、しかし力の差

 鶴竜が朝青龍とがっぷり四つになり、いい相撲。熱戦。最後は力の差で朝青龍に投げすてられた。
 勝った朝青龍は不機嫌。ヴィデオを見てダメだと吐きすてるように言ったとか。気持ちは判る。鶴竜と五分の相撲を取っていてはプライドが許さないのだろう。80対20ぐらいで勝たないと不愉快なのだ。今日の相撲は55対45になっていた。朝青龍の不快がとてもよくわかった。


 八日目  ゲストに小松政夫

 好きな役者なのでどんな発言をするか楽しみにしていたが、意外に相撲には詳しくなくすこし落胆した。これはデーモン小暮は特別にしても、歌手の野口五郎、競馬の小島太とか、みなそれなりに詳しいのである。
 とはいえ今日は午後三時から。私は競馬に必死だったので早い時間は見ていない。小松さんの好きな「人間起重機」明武谷の映像なども流れてそのあたりでは大いに盛りあがったらしい。見逃して残念だ。とはいえ競馬に必死だったのでしょうがない。

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 把瑠都の送り足

 日馬富士が素速く二本を差す。双差しだ。だが相手は把瑠都である。動じない。先日の琴奨菊戦では出来なかったが、カンヌキに極めて振りまわしてやれ、と思う。日馬富士は動けない。押して出た際、肩越しに右上手を取った把瑠都が、ひょいと一回転させてつり出した。
 ところが勝ち名乗りを受けない。どうしたのかと思ったらもの言い。把瑠都の足は出ていた。しかしあれはつりに適用される「送り足」だろう。平幕のころの白鵬がそのルールを知らず慎重につった相手をおろしたらまだ土俵内だったことがあった(笑)。今日は日馬富士の躰が完全に空中に浮いていたので、把瑠都の爪先は蛇の目を嘗めていたが「送り足」解釈だったようだ。

 今日の解説は大好きな錣山(寺尾)。「把瑠都の相撲は私には解説できないです」と苦笑。それだけ常軌を逸した相撲なのだ。スケールの大きい勝ちだったのがうれしい。



 そのあとの勝利インタビュウで、送り足を知らないことが判った。それと、爪先が先に出ていたことを本人が自覚していたことも。
 テレビを見ていて私は、勝った把瑠都がさっさと背中を向けて土俵を降りてしまったのが不思議だった。アナも解説も、そのあとにもの言いに気づいた。把瑠都ももの言いがついたので勝ち名乗りを受けたなかったのではなく、負けたと思っていたのだ。それがインタビュウで確認された。
 アナから「送り足ってしってました?」と問われ、「付き人サンからあとで聞きました。噂では聞いたことあるけど思い出せませんでした」と応えている。
 
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 龍二さん、6敗目 ○魁皇 ●千代大海

 千代大海が魁皇に敗れて6敗目。いよいよ大関陥落がカウントダウンに入った。でも早々と引退はしないと言明しているので、話題はもう来場所10勝して復帰できるかどうか。8勝できないのに10勝は無理と読むのがすなお。大関も関脇も対戦相手は同じだ。来場所はどんな千代大海マジックが炸裂するのか。楽しみだ。それとも今から勝ち越すのか。

 勝った魁皇はこれで幕内勝ち星803勝。明日にも北の湖に並ぶ。千代の富士の807勝まであと4勝。いま5勝3敗。今場所9勝で並ぶが一年間ずっと8勝7敗なので(笑)無理か。

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 張り差しの効果 ○朝青龍 ●栃煌山

 バカ青龍が今日も張り差し。今日は左から。強烈なのがもろに決まったので栃煌山は横を向いてしまった。そのまま後ろ向きにされて相撲にならず。バカ青龍がバカのひとつ覚えで張り差しにくるのは読めているのだから、張られても怯まないような心懸けは出来ないのか。なんとも意気地のない相撲だった。

 白鵬も張り差し ○白鵬 ●鶴竜

 これはひさしぶり。錣山も「ここしばらく封印していたんですけどね」と言っていた。白鵬であれ誰であれ張り差しは嫌いだが、今日の相撲の速さは格別だった。張り差しが嫌いなのは、そのことによって隙が生じるからだが、白鵬のは一連の流れの中にあり、張ると同時にもう前進し、掴まえて、土俵際まで追い詰め、上手投げで投げすてていた。文句を言わせない相撲。ここ何場所かの中でも特筆できる出来のよい相撲だった。

 すでにもう優勝は両横綱と琴欧洲に絞られている。平幕で嘉風と栃ノ心ががんばっているが。
 そして琴欧洲も終盤で崩れるだろうから、ひさしぶりに千秋楽全勝決戦になるか。とにかく白鵬に全勝優勝で、年間最多勝を更新して欲しい。願いはそれだけだ。

 九日目  解説は武蔵丸

 今日の正面解説は振分親方の武蔵丸。横綱の一代年寄りとして五年間活動し、去年から借りた株だ。このあとどうなるのだろう。
 武蔵丸のたどたどしい解説を聞いていると曙を思い出す。同じく日本語は下手だったが解説に味が出て来て、いい親方になるだろうなと思った矢先の格闘家転身だった。結果として曙は力士最強説の幻想を地に落とした戦犯となってしまったが、彼の格闘技デビュウ戦、最前列に陣どった貴乃花、とあれはあれで楽しみな時間だった。

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 把瑠都、朝青龍に敗れる!

 仕度部屋で把瑠都はいろいろな立ち合いを想定し、あれこれ試していたという。そんなレポートが入る。それに対して向正面解説の舞の海は、意見を求められると、「ひとつに絞ってぶつかって欲しい」と短くコメント。舞の海は把瑠都を高く評価しているので好きだ(笑)。
 相撲は、突っ張り気味に出た把瑠都だったが、朝青龍に中に入られ、まわしも取れず、苦しい態勢。しかしそこから朝青龍も動けず、把瑠都が仕掛けてくるのを待つ。把瑠都が上手を取りに言った瞬間を待って動いた。この辺の策略は見事。櫓投げのような形になった。アナもその技の名を口にしたが、決まり手は掛け投げだった。1分22秒の相撲。

 武蔵丸は把瑠都は無策だと厳しいコメント。これではいつまで経っても勝てないと。
 しかし、だ。把瑠都はこれで相変わらず両横綱から一度も勝っていないのだが、両横綱が必死になって把瑠都を倒しに行っている。把瑠都の底知れない強さは両横綱がいちばん知っているのではないか。

 猪木はアンドレやブロディやハンセンよりも弱かった。もちろんプロレスの話。殺しあいをしたらどっちが強いかは知らない。プロレスという肉体を使ったショーにおいては、彼らの方が体力に恵まれ圧倒的だった。
 だがスターであるから猪木が勝つ。最悪でも引き分けになる。それが今回はどんな手段でそうなるのかと推測することが大いなる楽しみだった。そのひとつに猪木のあの「相撃ちラリアート」があった。

 相撲の場合はガチンコだから、すくなくとも把瑠都と両横綱の取組はガチンコだから、プロレスとは違うのだけれど、私は「猪木対ハンセン」と同じ感覚で「把瑠都対朝青龍」を見ている。毎場所の楽しみだ。

 朝青龍という精密機械がほんのすこしでも狂ったなら、日馬富士と同じように、把瑠都に片手廻しで抛り投げられてしまう危険性がすぐそこにある。横綱の権威失墜となるたいへんな場面だ。いまのところ両横綱はそれを許さない。こどものころからやってきたモンゴル相撲のすべてを出しきって、体力に勝る白人力士に勝ち続けている。

 今場所も把瑠都対両横綱が終ってしまった。私の大相撲の楽しみの半分はこれでおしまいである。あとは白鵬がどんな形で優勝を決めるか、琴欧洲がどこまでがんばるかだけだ。

 十日目  豪風、巧い! というか把瑠都がへた(笑)

 把瑠都と豪風の対戦成績は2対2。把瑠都も琴欧洲と同じで小柄な力士に弱いのだ。それが相撲のおもしろさ。今日も何をやっても勝てるはずの把瑠都が何をやろうかと迷い、結果まったく力の入っていない無意味な左張り差しをしているうちに、豪風は懐にもぐりこみ、下から突きあげて一方的に押しだしてしまった。把瑠都の未熟さと豪風のためらいのなさがよく出た相撲だった。把瑠都ファンとしてはひどい内容の相撲なのだが、これはこれで相撲の味がよく出ていると感心してしまった。
 今日まで5勝4敗の把瑠都の成績を問われ、北の富士が「両横綱も全力を出して倒しに来ますからね」と言っていた。つまりあの2敗はしょうがないという意味。あの強い両横綱を本気にさせる強さと、豪風にあしらわれてしまう脆さ、それも把瑠都である。

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 キラー魁皇にびびる琴欧洲

 魁皇の小手投げで肘を壊されることを琴欧洲が怖がっているという話を取り組み前にアナが北の富士にしていた。北の富士は怖がるとよけいに引っ掛かってしまうと言っていたが、キラー魁皇の小手投げは怖い。誰だってあれは怖い。琴欧洲がいやがるのは当然だ。しかし北の富士の発言も正鵠を射ていて、あの小手投げに掛からないための最善の手段は、それを出す暇のないほどの速い相撲で責めることなのだろう。
 今日は魁皇が右に変りつつ、「それらしき態勢」になったら、それだけでもう琴欧洲は自分から崩れていた。魁皇が勝ったと言うより琴欧洲が自ら小手投げの恐怖に負けたのである。取組前のその話があっただけに、なんとも印象的な一番だった。琴欧洲にしっかりせいと言いたくもあるが、いやああれは怖いもんなあ。魁皇の小手投げを怖がらずに前に出て勝つか、びびってしまうか、力士のひとつの踏み絵になりそうだ。今場所把瑠都もあぶないことをやられ、さいわいケガはしなかったが、肘を気にしていたと伝えられた。恐怖は染み込んでいる。来場所、どうだろう。

 魁皇は昨日北の湖に並び、今日それを抜いて単獨の805勝。千代の富士の807勝まであとふたつ。これから両横綱との対戦もあるし、今場所はもう無理か。

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 大関千代大海最後の日



 朝青龍につり出されて史上最長期間保持してきた大関陥落が決まった。史上最長が何場所かなんて調べる気にもならん。なんの意味もない。強ければ横綱になる。なれない大関止まりでもいいが、かつて初代貴ノ花のころ「クンロク大関」という優勝も出来ず、下位にも負けて毎場所9勝6敗を繰り返す大関を侮蔑した呼称があったように、悪くてもクンロンが大関の基本だろう。千代大海はそれですらない。魁皇がここの所ずっと8勝7敗で失笑ものの成績だが、チヨスはそれよりもひどい。負け越しと8勝の繰り返しによる大関維持の連続には、見ているこちらが疲れた。
 2ちゃんねるの相撲板には、そういう千代大海を長年ウォッチしているスレがある。しばらく言っていないが、今日はいまから出かけて、彼らと一緒に龍二さんの大関最後の日を楽しんでこよう。来場所10勝すれば大関復帰できるが、どう考えても無理だ。

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←稽古はしないが眉の手入れはバッチシ。さすがもとヤンキー。

本人も認めるように、大関陥落に同情の余地はない。ここ2場所に限らず、近年は大関の責務を全うできていない。11日目から休場する予定で、今年の成績は30勝52敗8休となる。1場所平均の白星が5勝では目も当てられない。

 現行の大関陥落制度となった昭和44年名古屋。翌年以降、引退せずに年6場所在位した大関の年間白星が30勝以下になったのは、自身の平成13年(29勝)と今年のみ。仮に今年初場所時点の番付が関脇だったとしたら十両転落は確実で、大関陥落制度に疑義を投げかける醜態だ。産經新聞


 この産經新聞の論説はするどい。大関陥落制度に護られて大関にいたが、もしも関脇だったら十両まで落ちている成績なのだ。

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大相撲九州場所10日目(24日・福岡国際センター)――最後、朝青龍がいたわるようにつり出したのは、同じ高砂一門の大関に対するせめてもの温情だったのだろう。
11年近くにも及んだ大関の座を明け渡す千代大海はつぶやいた。
「笑われるかもしれないけど、もう一回チャンスがあるのなら挑戦したい」
初場所で10勝を挙げれば、規定上、大関に復帰できる。挑戦するのは当然の権利でもあり、過去にも、三重ノ海(武蔵川理事長)のように大関復帰後、横綱に駆け上がった例だってある。
だが、千代大海の今回の決断には違和感が残る。大関在位は史上1位の65場所。賜杯も3度抱いた。数字上は立派な「名大関」だ。従来の尺度なら、「落ちたら潔く引退」という選択が重んじられる立場でもある。
一方で、最近の成績は大関の名に値するものだったのか。カド番は史上最多の14度。ここ2年、大関の合格点とされる二けた白星は一度もなく、勝ち越しにも四苦八苦している。劇的に体調が恢復するとも考えにくく、初場所に引退を先延ばししただけと受け取られても仕方がない。せっかくの「名大関」が晩節を汚している印象を抱かせる結果となったのは、何とも寂しい限り。
万人を納得させる美しい「引き際」の判断は本当に難しい。
(2009年11月24日19時37分 読売新聞)

 十一日目  把瑠都対琴欧洲

 203センチの琴欧洲が頭をつけた。197センチの把瑠都、棒立ち。それでもなかなか動かない。慎重に寄り切った。向正面解説の舞の海が、棒立ちのままかろうじて上手を取った把瑠都に対し、「ここから抛り投げないかなと思ったんですがね」と言った。舞の海も把瑠都の常軌を逸した怪物相撲が好きなんだなと思った。怪物相撲なら琴欧洲にもあって然るべきなのだが、なんだかこのごろただ背の高いひと、になってしまっている。それはそれで生きかただが。
 これで把瑠都は5勝6敗と黒星が先行した。先場所の大関総なめと比べると今場所はだいぶ負けている。アナが「大関取り、出直し」と言っていたが、そんなものはまだ期待していない。私が望むのは、ひたすらスケールの大きな、「すげえや」と思う相撲を毎場所一番でもいいから見せてもらい、凡庸になっている大相撲の魅力を再確認させて欲しいということだ。

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 白鵬、完勝

 今場所は調子が悪いと言っても、白鵬ファンは対日馬富士戦は緊張する。過剰な闘志を燃やしてくるからだ。今日は白鵬が完璧な相撲を取りつけ入る隙を与えなかったが、土俵際で粘れないあたり、日馬富士も調子はわるいようだ。

 朝青龍、魁皇を料理

 朝青龍の魁皇対処法を見ていたら、昨日北の富士が琴欧洲対して言った「小手投げを怖がっていたら、よけいに相手の策略に嵌る」が実感できた。琴欧洲が怖がることなく速い相撲を取れば、今の魁皇にそれを掴まえての小手投げは出来ないだろう。

 これで両横綱決戦がほぼ確定した。明日白鵬は魁皇に負けることはない。朝青龍は日馬富士。元気なときでも兄貴分の朝青龍には分の悪い日馬富士だけに、これも楽勝だろう。ポイントは琴欧洲がどちらかに勝てるかどうかだけ。千秋楽全勝決戦が望ましい。

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 三役不調

 今場所は関脇小結の調子がわるい。把瑠都の5勝6敗はだいじょうぶと思うが、関脇鶴竜、小結稀勢の里、豪栄道、三人とももう4勝7敗である。ちょっと勝ち越しはきついだろう。
 前頭上位も悪い。いいのは琴奨菊だけ。7勝4敗。これは勝ち越して小結復帰か。あとはそのしたで9勝の豊ノ島が二桁勝って小結。8枚目の栃ノ心も二桁勝利で筆頭ぐらいにもどってくるだろう。先場所横綱大関とやった経験をしっかり活かしている。この力士は出世する。嘉風も好調で前頭筆頭ぐらいに来るだろうが、このひとはここまで来ると壁にぶつかる。
 関脇は、把瑠都は保持するとして、もうひとりは誰が上がるのだろう、琴奨菊か? そして小結に豊ノ島と7勝8敗ぐらいで落ちる鶴竜。あるいはいま前頭筆頭で5勝6敗の豪風が勝ち越して小結にあがるか?
 楽しみは、今場所の反省を活かす把瑠都と、また上に上がってきて上位とぶつかる来場所の栃ノ心だ。
 十二日目  安美錦、負け越し

 安美錦が鶴竜を翻弄した。しみじみうまいと思う。ところが土俵際、若さゆえの運動神経か、くるりと身をかわされ飛びだしてしまった。九割方勝っていた相撲。もったいない。相撲内容から、鶴竜に対する讃美の声は解説陣からは出ず。むしろこんな相撲を取っていてはダメだとみな溜め息。まあしかたない。鶴竜ってのは栃東レヴェルの力士だろう。あまり期待するのも酷だ。

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 琴奨菊も二桁勝利

 これで鶴竜の陥落する関脇にあがるか。

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 琴欧洲の苦手意識

 苦手とするちいさな豊ノ島にいいようにとられて突きだされた。これで豊ノ島は二桁勝利。身体中テーピングしているが調子はいいとか。来場所は小結も見えてきた。
 アナも北の富士も、琴欧洲は安美錦にしろ豊ノ島にしろ苦手が多すぎると苦言。


 把瑠都、楽勝

 把瑠都が琴光喜に楽勝。どっちが大関かわからない相撲。これで6勝6敗。勝ち越しはだいじょうぶと思うが。

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 朝青龍、自滅

 朝青龍が日馬富士に敗れて土が附いた。その負けかたが張り差しによる自滅なので私としては拍手喝采。このバカはまた張っていった。右から。日馬富士は右に変化していた。だからよけいに張り手の力学?で、体が泳ぎ、あっと言う間に送り出されていた。バカ青龍には左の張りもある。もしも左の張り差しだったなら、日馬富士は変化して行こうとしているところにストップをくらい、まったくちがった結果になっていたろう。
 というか張り差しなんてバカなことをしなければ負けないのだ。いくらか反省すればいいが。しないだろうな。

 白鵬、83勝目

 白鵬は魁皇を簡単に料理して北の湖の記録を抜く年間83勝目。史上二位。明日勝てば84勝で朝青龍に並び、明後日勝てば史上最多になる。全勝優勝で86勝4敗の史上最多勝を決めろ。それだけを願っている。
 十三日目  相撲を見られなかった。何も知らない。ネットが止まっているので調べられない。NHKニュースを見るがわからないまま。いかにネットから情報を得ているか知った。
 十四日目  朝青龍が昨日も負けて二敗になったことを知る。まあ11連勝の方がまちがいであって、あんな相撲を取っているのだから負けて当然だ。
 白鵬は勝って年間84勝。朝青龍の記録に並んだらしい。

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 白鵬優勝!

 琴光喜とはいつも大相撲になる。朝青龍ともそうなるが、朝青龍との場合は変幻万化の速い相撲が多いので、がっぷり四つの大相撲は対琴光喜戦がいちばんだ。今年白鵬は4敗しているが、その中には琴光喜との一敗がある。今場所も大相撲となりあぶない場面もあったが、左上手を取ったときに安心した。
 投げすてたときはうれしくて涙が出た。「このバカが!」とつぶやく。応援している私のようなのを、どれほど惨めな思いにさせたことか。全場所優勝に絡み、常に14勝以上をあげていながら優勝は2回。決定戦で3回も負けるみっともなさ。なさけなかった。くやしかった。みじめだった。ともかく明日も勝って全勝優勝をしろ。それでもおまえの、おまえのファンに対する責任は果たしていない。

 ATOKで「万化-ばんか」が出ないので辞書登録する。不思議だ。

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 アナの思い込みのみっともなさ──優勝インタビュウ

 NHKアナが、後続がなく14戦全勝で優勝を決めた白鵬にインタビュウする。
 アナとしては、「白鵬が尊敬しているという双葉山の優勝12回に並んだこと」「それを双葉山の故郷の九州で決めたこと」の感慨で迫りたい。その気持ちはわかる。前々から決めていたのだろう。相撲雑誌もそんな切り口だった。白鵬は双葉山が口にしたという「木鶏」の故事を知り、口にしてもいた。だが勝ったばかりの白鵬はそれどころではない。まだ明日がある。優勝決定は「まずはめでたい」に過ぎない。だからアナがしきりに「優勝回数が双葉山と並んだこと」を言わせようとするが言わない。当然だ。そんなことを勝ったばかりで汗も引かない今、思うはずもない。白鵬が正しい。もしも白鵬がアナの期待するようなことを言ったら私は白けていた。そしてまた白鵬も思うところがあって敢えて口にしないのではない。それどころではないのである。そしてまた、それはそれほど重要なことではないのだ。

 アナとしては白鵬から「これで尊敬する双葉山関の12回に並んで感無量です」ぐらいを言わせたいのだろう。まったく言わないので自分から双葉山のことを振ったので笑った。しかしそれにも白鵬は「明日があるので」としか応じない。白鵬は双葉山のことを避けているのではない。栄光と屈辱のこの一年、最後の場所でやっと優勝を決めた、あとは明日も勝って全勝優勝だけだ、という今の白鵬にとって、会ったこともない双葉山のことなど浮かんでも来ないのだ。なのに無理矢理それをこじつけようとするアナ。醜い。アナはさらに振る。もうむきになっているとしか思えない。誘導尋問だ。まるでお笑い藝人が十八番のパターンが受けなかったのに、なんとしてもそれで受けようと、しつこくそれを繰り返すような形。なんとも醜悪だった。

 白鵬が双葉山を尊敬しているのは本当だと思う。しかしそれを大々的に取りあげ記事にしたのは相撲マスコミの切り口だ。当面の優勝回数として12回の場合、必ず双葉山の名が上がる。白鵬の相撲は大鵬に近い。さほど躰もなく、モノクロフィルムの双葉山の相撲に関係つけるのは無理がある。いくら「木鶏」の話があり、白鵬がそれに感動したとしても、汗も引かない今、それを引きだそうとするのは無茶。
 だがNHKアナが、かってにそういう切り口でインタビュウに臨み、思うような答がないからと、しつこくそれにこだわるのはいかがなものか。冷静に考えれば、モンゴル人の白鵬に、戦前の大横綱である双葉山に、その故郷九州に、さほどの思い入れがないことはすぐにわかることだろう。いやはやひどいインタビュウだった。

 私はテレビ局に苦情の電話なんてしたことがないし、これからもすることはないけれど、どなたかそんなことが好きなひとが、NHKに「あんな返答を決めつけたインタビュウはするな。横綱に失礼だ」としてくれないかと願った。こんなこともまためったにない。
 というのは、これは「アナの藝人化」だからだ。アナは「優勝おめでとうございます。いまのお気持ちは?」だけでいいのである。そこで横綱が「まだ明日があるので」と応える。それだけだ。それですべてが伝わる。アナが双葉山のことを振り、白鵬が「これで尊敬する双葉山関の12回目に並びました。感無量です」なんて言ったら白ける。
 勘違いアナが気づくことを願う。

 千秋楽  鶴竜の変化にブーイング

 鶴竜が変化し、稀勢の里がバッタリ倒れた。場内からはブーイング。こんなことも珍しいとアナが言う。さらには罵声も飛んだとか。鶴竜はこんなことをしてはならない。それでは栃東になってしまう。
 舞の海は簡単に倒れる稀勢の里を批判。相手が変化してくることも想定していればあんなに簡単には倒れない、と。
 いずれにせよ鶴竜は、あれをやめるべきだ。勝てばいいというものではない。

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 把瑠都、また怪物の片鱗を

 豊ノ島が一気に攻めこむ。肩越しに右上手を取った把瑠都は、押しこまれながら、おとながこどもを抱くように、右腕一本でひょいと持ちあげてつり出した。いやはやなんともすごい。アナも北の富士も舞の海も感嘆。
 これで9勝6敗。課題のある場所だったが、とりあえず東関脇の座を守った。

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 白鵬、全勝優勝!

 白鵬か朝青龍を倒し全勝優勝を決めた。当然だ。年間最多勝も86勝4敗。アナが、北の湖が82勝の記録を作ったときはもう誰も越えられないと思った、朝青龍の84勝もとんでもない記録だった、なのにそれを凌ぐこれは空前絶後だろうと絶讃。白鵬を越えるのは白鵬のみ。私は白鵬ならまだ超せると思う。88勝ぐらい出来るのではないか。期待したい。ともあれ年末の場所を全勝優勝し、朝青龍との力のちがいを見せつけ、白鵬ファンとしてはほっとする結果となった。


 総論




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感謝して記します。

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