平成二十年大阪場所覚え書き

2008年3月9日〜

初日
 ●把瑠都 ○北勝力

 負けるのはしかたない。しかし「負けかた」があるだろう。無気力な立ちあいで、なにをするというわけでもなく、押し出されている。迷いの森は深い。

---------------

 ○千代大海 ●雅山

 右肘がまだ不調らしい千代大海が、重い雅山を追いつめる。引いてはくらいつかれ、また押して、へろへろになりながら、やっと勝つ。最後は土俵にへたりこむ。これはこれで感動的な一戦。

---------------

 ○白鵬 ●豪風

 豪風が両差しになる。白鵬は肩越しの上手から吊り上げ、吊り落としのようにして投げ捨てる。身長差があるとはいえ、これはまごうことなき怪物相撲。

 熊ケ谷親方によると、先場所の横綱決戦を制してから自信を持ち、稽古場での所作ひとつからが違ってきたという。

二日目
 ○把瑠都 ●露鵬

 四つになり、把瑠都万全の体勢になる。アナが「これで把瑠都勝てないと、どうしようもない」と案じることばを吐く。すなわちそれがいまの把瑠都を物語っている。NHKのアナも北の富士も、どれほど把瑠都の強さに酔っていたことか。それがいつしかこう案じられるまでに墜ちてしまった。
 そのまま寄り切って勝つ。露鵬がちいさく細く見える把瑠都の存在感は抜群だ。

 勝負前のレポートによると、本人が「落ち込んでいる」と語ったとか。「なにをしていいかわからない。体調も悪くないのに、どうしてあんな相撲になってしまうのか。何度もヴィデオを見たけどわからない」とのことだ。悩んでいる。ここから脱出するにはどうしたらいいのか。尾上はなんと言っているのだろう。
 把瑠都は「上位陣と当たりたい」と願っているとか。とりあえず慎重な相撲で白星を積み重ね、上位陣とあたるようになり、そこから厳しさを教えてもらうといいだろう。

---------------

 ○稀勢の里 ●琴光喜

 稀勢の里が大きくなっている。仕切のとき、やたら稀勢の里が大きく、琴光喜がちいさく見えた。結果もそのとおり。身長も体重も稀勢の里のほうが上だから当然なのだけれど、いままでこんなことを感じたことはなかった。これは稀勢の里の充実からくるのだろう。

---------------

 ○琴欧洲 ●豪風

 今日の解説は尾車。嘉風の取り組みのとき、アナが「あんな強いひと(=豪風)がなんでいままで三役に行けなかったか不思議だった」という嘉風のことばを紹介していた。それだけ豪風は稽古場で強いのだろう。
 今日は毎場所話題になるノッポとチビの取り組み。身長差31センチ。それでも豪風は五分に戦う。今日は琴欧洲の勝ち。
 もっともこの取り組み、もっと身長差があり、それでいて琴欧洲をぶん投げる豊ノ島の登場ですこし影が薄くなかった。

---------------

 ○千代大海 ●安美錦

 今日も懸命の相撲で勝つ。なんか龍二さん、そういう形で人気が出そう。

---------------

 ○朝青龍 ●鶴龍

 朝青龍氣魄全開。強い強い。最後に毎度おなじみのだめ押しをして、鶴龍を観客席の中につっこませていた。やはりこのひとの強さの源にあるのは気の強さだろう。騎馬民族の覇気である。把瑠都や琴欧洲もすこしはわけてもらうといいのだが。いや、把瑠都や琴欧洲が露鵬みたいになったらいやだから、いまのままでいいか。

 とはいえ鶴龍も四つになり、あわやと思わせるだけのことをした。あまり体がないが楽しみな力士である。

 三日目 手つき不十分!貴親方が朝青龍に警告 

絶好調の横綱朝青龍に注文がついた。鶴竜を寄り切って初日から2連勝としたが、十分に手をつかない立ち合いに、審判長の貴乃花親方(元横綱貴乃花)から「これ以上ひどくなれば、審判部長から話が出ると思う」と忠告。正常な立ち合いを求められた。(デイリースポーツ)


 これは目立っていたし、気になっていた。闘志が前に出すぎ、朝青龍の手がついていない。正しい注意である。
 しかしこれ、毎度言うが、北の湖時代などひどいもので、手をつくどころか、ほとんど中腰からの立ち会いである。仕切りに関しては、いまがいちばん厳しく、うつくしい。

---------------

 北の富士が張り差しに苦言

 北の富士発言は、正しくは「なんでこんなに張り差しがねえ……」だけで、「やめるべきだ」のような苦言までは行っていない。アナも「張り差しをすると、それにつけこまれて不利になることがあるとむかしは言われました」のような言い回しをするだけで、直接的な批判は控えた。それでもふたりからは品のない張り差しを嫌っているのが伝わってきて私はうれしかった。

 張り差しという相手の横っ面を張ってゆく下品な立ちあいを流行らせたのはモンゴル人力士であり、筆頭は朝青龍になる。ヒールの朝青龍がそれを連発するのだから、ベビーフェースの期待が寄せられている白鵬にはやってほしくないのだが、これも負けじと連発する。
 今日も把瑠都はやるわ稀勢の里はやるわで張り差しが横行していた。

 モンゴル人力士の味方(?)だが、この張り差しだけは容認できない。相撲に品がない。

○把瑠都 ●出島

 初日の負けかたがあまりにひどかったので絶望したのだが、だいぶまともになってきた。期待できるかも。

---------------

 ●安馬 ○若ノ鵬

 相撲をなめている若ノ鵬に厳しさを教えてやれ安馬! と期待したら、若ノ鵬の懐の深さに幻惑され、安馬が小バカにされたような敗戦。悔しい。安馬も悔しかろうが私も悔しい。
 低い立ちあいから潜り込んだ安馬を、若ノ鵬は肩越しに左上手を奪り、右手で首を押さえ、押しつぶす。おそるべき懐の深さ。でかいひとは強い。安馬、肩を痛めたか。北の富士は古傷と言っていたが。

 これからが楽しみな取り組みになる。安馬もこのままではすませまい。来場所、どうでるか。

---------------

 ○琴欧洲 ●雅山

 珍しく琴欧洲が氣魄を見せた。土俵中央で雅山と突っ張りあう。一歩も引かない。最後は突き出しではなくはたき込みだったが、この気魄を見せてくれるとうれしい。
 四日目  朝青龍、琴光喜を案じる──マスコミの怖さ

琴光喜は立ち合いから迷いなく、得意の右を差した。自分有利になりながら、朝赤龍の左上手投げに土俵中央にバッタリ落ちた。あまりにあっけない。
初日から3連敗は、03年夏以来のことだ。

「当たった瞬間まではよかったが、体が流れた感じ」と琴光喜は悔しさを押し殺して淡々と振り返った。

この日の取組前、支度部屋で、明け荷が隣の朝青龍から「大関、どうした。考えすぎじゃないのか」と声を掛けられた。屈辱的な同情の声だった。まだ対戦してない力士に心配されるほど、琴光喜の不振はひどいのだ。(東京中日スポーツ)


---------------

 いまでこそ対戦成績に大きく差がついてしまったが、かつては琴光喜が勝ち越し、互いにライヴァルと認め合っていたふたりである。朝青龍はふだんは「みつき」と呼ぶ。このときはきちんと「大関」と呼んで声をかけた。礼儀であり友情の発露だ。
 朝青龍の心配は友人を気遣うごく素直なものであったろう。しかし切りようではこうなる。これじゃまるで朝青龍が底意地悪く声をかけたようだ。小バカにしたような顔で。そう解釈する朝青龍嫌いは多いだろう。

 きのう、NHKの実況でも「支度部屋の様子」として、このことを取り上げていた。北の富士が上記と同じように「まだ対戦していない相手に心配されたらいかんね」と言っていた。もしかしたら記者の記事はそれを念頭においたものかもしれない。でも北の富士発言にこの文章のような含みはなかった。

 書きようでなんとでもなる一例である。最近のスポーツ紙の記事はおかしい。テレビ局のアナがでしゃばるのと同じように、職務からの逸脱が目立つ。
 でもまだそれほどの悪意でもない。キムチ野郎はどう書いているのだろう(笑)。このごろ不愉快なのでニッカンスポーツは読んでいない。

---------------

 ○把瑠都 ●岩木山

 左四つがっぷりからの力比べ。最後は把瑠都が上手投げで放り捨てた。いいなあ岩木山は。小細工をしないから把瑠都も正面から行ける。
 アナが「新入幕のころの荒々しい把瑠都がもどってきたような」と言っていた。新入幕のとき、この岩木山をはりま投げでぶん投げたのだった。衝撃だった。ノンストップで横綱ではないかと思った。

 アナが「左膝のケガで、悪く言うと、乱暴な相撲がなくなったわけですが、今日はあの新入幕のころを思い出しました」と言っていた。なんで「悪く言うと」なのかわからん。「よく言うと」だと思うが(笑)。

 このアナはこのあと敗れた白鵬が、控えでも憤然とした形相をしているのを、「苦笑いという感じでしょうか」と言っていた。悔しくて悔しくて叫び出したいような表情なのだ。それを「苦笑い」はないだろう。なんというアナか知らないが、感覚が違うひとだと感じた。

---------------

 芝田山の活躍

 今日の解説は芝田山。暴君千代の富士の長期政権に唯一立ち向かったガチンコ力士・大乃國だ。ここのところ大の甘党(スイーツ好き)が話題となり、バラエティ番組にも多々出演して大人気。
 人柄のいい大乃國が土俵外でも人気者になり、根性の悪い千代の富士はあれだけの実績を残しても慕うひとが少なく、理事長になる足がかりさえ作れず苦戦中。弟弟子の保志にすら抜かれて笑いものになった。よろこばしいことである。世の中は正しい。

---------------

 白鵬、安美錦の変化に敗れる

 これはこの相撲をリアルタイムで観戦したものとして書いておかねばならない。どうしても今後「変化」ばかりが一人歩きしてしまうからだ。
 たしかに安美錦は左に変り気味に立った。安美錦のそれを100パーセント想定していなかった白鵬は目の前に相手がいなくなり、土俵中央でばったりと両手をついてしまった。なんとも無念そうな顔が印象的だった。「白鵬のこんな負けかたは記憶にないですね」とアナも解説の芝田山も口にしていた。

「変化」というと、どうしてもポーンと変った姿を思ってしまう。そうではなかった。どちらかというと、肩すかしに近いか。それは勝利インタヴュウでも明らかになる。まず安美錦が「おめでとうございます」のことばに、ああいう勝ちかただからと控えめだったのがすばらしい。左を差されないよう考え抜いた立ちあいで、圧力を避けようと交わし気味だったのは事実だが、最初から計算尽くの変化ではない。いや、考えに考え抜いた計算尽くの立ちあいなのだが、変化をして勝とうとしたものではない。決まり手は「突き落とし」だった。

 だから変化技の勝利が大嫌いな私だが、この勝負に関して安美錦を嫌う気持ちはない。また白鵬を責める気にもならない。
 ただ白鵬には、相手が変化するかもしれないという予測がまったくなかった。これはあまりの絶好調から来た一種の慢心とも言えるだろう。いや慢心はひどすぎるか、気の緩みぐらいか。とにかく、相手に責めさせて勝つ盤石の横綱相撲で三連勝してきた白鵬は、今日も自信満々で圧勝するつもりだったのだろう。迷わずまっすぐ前に出た。すると相手がいなかった。
(後日記──翌日の新聞で北の湖が「不用心」と言っていた。そんな感じだ。)

 今日の敗戦で、こんな負けもあると白鵬が学べば、それは大きな教訓になる。大の白鵬ファンである私は白鵬の敗戦に厳しい。中でも対稀勢の里戦のような、勝っている相撲を逆転される負けかたは最低だと思う。しかし今日の負けは気にしない。これを糧にしてこのあとをより充実させて欲しい。

 朝青龍と星ひとつの差がついた。朝青龍は燃えるだろう。誰か彼を負かす力士が現れるだろうか。いまのところ思いつかない。稀勢の里、安美錦という期待大の候補がもうつぶされている。だが白鵬がこのまま負けずに行けば自力で並べる。優勝争いはもうふたりに絞られている。おもしろい展開になってきた。

---------------

 高見盛四連勝!

 負けてしょんぼりも味があるが、やはりあの勝って反っくり返って花道を引き揚げるのがいい。こちらまで「どんなもんだ」の気分になってくる。それが四日連続。高見盛が土俵に上がり、永谷園の懸賞が登場すると、それだけで場内が明るくなる。貴重なひとである。今場所は「足踏み」も加わって(笑)、気合い入れがエスカレートしている。

 豊真将、栃煌山も四連勝。贔屓力士が好調なので気分がいい。もっとも三人とも大きく番付を落とし、今場所負け越したら十両落ちのところまで来ている。この程度の活躍でよろこんではいかんか。

 十両はグルジアの栃ノ心がいい。来場所は入幕だろう。彼はのびる。
 五日目  今日は国会中継があり、大相撲は5時5分からだった。明日もそうらしい。困った。
 NHKとしては、その間もBSで中継しているし、いまどきBSアンテナのないひともいないだろうということなのだろうが、しっかりとここにいまだにBSアンテナもないひとがいる。

 まあ国会中継も好きなバラエティ番組(笑)でもあるのでさしたる不満はないが、豊真将、高見盛、栃煌山あたりが見られないのはつらい。今日は把瑠都も見られなかった。ヴィデオで勝負だけ見るのでは物足りない。やはり仕切りの緊張があっての大相撲である。

---------------

 ●琴欧洲 ○安美錦

 一昨日、解説の芝田山が、琴欧洲の伸び悩みに関して、すり足ではないので、バタバタしてしまうと言っていた。今場所は特にそれが出ているように思う。足が地に着いていない感じだ。
 それっていまから親方(琴ノ若)が教えても直らないのか。先場所は角番だった。今場所はこれで2勝3敗と黒星先行である。引退間際の魁皇や千代大海ならともかく、この若さでこれは困る。いや魁皇と千代大海は4勝1敗で調子がいいのだ。こまったねえ、琴欧洲。なんとかならんか。

 これで安美錦の対琴欧洲戦は7対5、ひとつ不戦勝があるので実質6対5と拮抗しているが、問題はその時期。琴欧洲が下から一気にあがってきたころ、安美錦は勝てなかった。負けていた。どうしようもない長身力士の馬力だった。しかし昨年あたりはもうカモにしている。長身の怪物である琴欧洲に手も足も出なかったが、取り組みの研究から、攻略法を見いだしたのだろう。

 相手にしていなかった安美錦にカモにされるようになってしまった琴欧洲。一度も勝てなかった若の里をいまでは相手にしない白鵬。ふたりの近年がよくあらわれている。

---------------

 ○把瑠都 ●若の里

 怪力若の里を吊り気味にもっていってしまった。強いなあ、いい相撲だ。これで4勝1敗。まあ今場所の勝ち越しはだいじょうぶか。

 六日目
 小雨。春の雨。生ぬるいのが気持ち悪い。待望の春なのに浮き立つ気持ちがない。もうしばらく冬のままで良かった、の気分。季節の移りに感じる心も状況を顕す。ちょっと複雑。
 もっとも、春だ、よかったあ、やっと春が来た、と喜ぶようだとポックリ逝ってしまうから、これぐらいでいいのか。いやほんと、よく言われることだが、年寄りがポックリ逝くのは、厳冬や猛暑ではなく、それが明けたときなのだ。生ぬるい春の風を嫌い、耳がちぎれるような真冬の風を好むのだから、まだまだ若いかな(笑)。

 今日も国会中継で五時五分から。こりゃCSの契約はともかく、BSアンテナだけでもつけないとならない。国会中継は好きだが、ピンクのスーツを着たフクシマミズホでは見たくない。質疑を見ていると、私は社民党よりは共産党のほうがまだ好きなのがよくわかった。
 それにしても保険に関する自民党のやりかたはひどい。「後期高齢者」って、なんだ。前期と後期があるのか。それに「残存能力」だって。どう考えても共産党の言い分が正しい。

 私はマスゾエというのを評価していない。いや能弁な政治評論家としては評価していた。タナカマキコが「軍人凡人変人」などと発言して人気抜群のころ、「あんなのはただの漫談で」と否定していた。人気者を妬む心が見え見えだった。タナカマキコがいまで言うタレント(どうもこの才能ということばをこんなことに使うのは抵抗がある)であることを、同じくタレントであるマスゾエは見抜いていたのだろう。
 それでもそういう人気取りの努力が実り大臣になれた。うれしくてうれしくてたまらない。だけどそのことでどの程度の器かがバレた。まあよくある話だが。

---------------

 って、相撲の欄で政治のことを書いてるが、だって相撲が始まらないんだものしょうがない(笑)。
 見られるようになったのはどこからだったか。若ノ鵬と黒海あたりからか。

 ○若ノ鵬 ●黒海──レスリングと相撲のちがい

 外人力士好きの私だが、ここのところ欧州系の力士に対する反感が育ちつつある。どう考えても露鵬や若ノ鵬らの相撲を評価する気持ちにはなれない。若ノ鵬はまだ十九歳。露鵬をしたって北オセチアからやってきてまだ二年だ。これから大化けする可能性もある。でもないのでは、と感じる。なんというか、基本的な心構えがちがうように思うのだ。心構えとも違うか、競技に対する基本的な差、とでもいうのか。要するに、レスリングは引き技なのである。これはファンク兄弟等が試合前のウォームアップで、タオルを引っ張り合っていたのからもわかる。相撲は押しだ。レスリングと相撲は真反対の競技なのではないか。

 期待した黒海が中堅止まりと判明したころ、解説の誰かが、スローヴィデオを見ながら黒海の脚の動きを丁寧に解説してくれたことがあった。なるほど、そういう説明を受けると、黒海は両足をそろえての、いわばカエルジャンプみたいな突進をしていて、そこには相撲的限界があるようだった。

●琴欧洲 ○稀勢の里

 琴欧洲も足がドタバタしている。今場所は勝ち負けはともかく、本来の相撲なら俵に足がかかって残る場面で、大きくそれを跨いで出てしまっているのが目立つ。基本的なすり足がまったく出来ていない。出来ずにここまで来てしまったこともすごいが。

 こういう不満をモンゴル人力士にはまったく感じないから、モンゴル相撲と日本相撲には共通点が多いのだろう。
 琴欧洲の迷いの森が心配だ。

---------------

 ○旭天鵬 ●出島──旭鷲山をおもいだす

 旭天鵬の強さを見ていたら旭鷲山を思った。このふたりは、その気になれば、幕内を上下しつつ四十代でも相撲を取れるような気がする。

 旭鷲山はあのヤクザとのスキャンダル、金銭問題で、幕内力士のままいやいやながら引退した。元々政治や事業に関心の強いひとで、もうたっぷり金を持っていたから、なにもなくても相撲を取り続けていたかどうかはわからないが、もしもとり続けているとしたなら、史上初の四十代、五十代の幕内力士が可能だったのではないか。

 なにしろ手抜き相撲であるから体がすり減っていない。幕内上位にあがると星を売って金を稼ぐ。5勝10敗で大もうけ。次も7勝8敗。また7勝8敗。下がってきて、十両に落ちるぞとなったら本気になって10勝5敗。それからまた星を売っての繰り返し。逆らう奴は、あの足首をとるようなケガをさせるモンゴル相撲で脅す。これは怖い。相撲は、その気になれば簡単に相手にをケガをさせられる。
 実力のある力士が、出世に興味を持たず、金稼ぎと幕内定着だけを目標にしたら、年をとっても可能なように思う。その筆頭が旭鷲山だったろう。58場所連続平幕在位という珍記録は、まだまだ伸ばせた。旭鷲山と親方襲名のための琴ノ若の引退は残念だった。

 旭天鵬はそんなあぶない力士ではないけれど、まだ三十三歳。いくらでもとれそうだ。

---------------

 ○鶴竜 ●魁皇

 鶴竜は気弱そうな、純朴な容姿をしている。時代劇の丁稚役が似合いそうな風貌を見ていると、朝青龍と同じモンゴル人とは思えない(笑)。栃東に似ている。
 大きくなってきたと言われるがまだまだちいさい。大きくなる体でもない。鶴竜ってどれぐらいなんだろう。調べる。187センチ、138キロ。187もあるのか。そうは見えないが。

 数日前の支度部屋リポートで、「出世するモンゴル人力士のお父さんはみなモンゴル相撲で大活躍したひと。自分はそうではない。そうではない自分でも活躍できることを証明したい」と話していると知る。いとしい話である。
 そうだなあ、なんのかんの言っても、ほんとにそう。白鵬の父親なんて銀メダリストで、モンゴルにはまだ金メダリストがいないから、国民的英雄である。白鵬は入門すらあぶなかったたたき上げ力士だが、血統的には名血サラブレッドだ。朝青龍の父親は関脇だったか。
 といっても鶴竜の父親は大学教授だそうだから、別の意味でエリートではある。

 井筒親方(逆鉾)は、錣山が豊真将がかわいくてたまらないように、鶴竜をかわいがっているそうだ。
 いい力士である。

「鶴竜」を辞書登録した。私はいままでずっと「鶴龍」と書いてきたように思う。あとで直さないと。「鶴龍」はもちろんプロレスの鶴田と天龍である。そのことの意識がかなり強かったこともあり、鶴竜の四股名が鶴ケ峰から来ていることに気づくのが遅れた。

 逆鉾が実父の現役時の四股名から採った、となるとちょっといい話だが、再婚した女との暮らしを優先した先代井筒(鶴ケ峰)は、逆鉾、寺尾とは不仲になり、金銭問題のスキャンダルが週刊誌を賑わした。当初は、息子三人が力士になり、しかもそのうちふたりは幕内まで出世して、理想的な親子のようにいわれていたのに……。
 若貴と言い、どうも相撲界の「いい親子」には、がっかりさせられることが多い。

---------------

 今日は大相撲ダイジェストをしっかり見よう。
 相撲を見ながら一杯やるつもりだったのに、国会中継を見ながら、になってしまい、フクシマミズホで悪酔いして、肝腎の相撲内容がいいかげんだ。

---------------

 貴乃花初マイク──○若麒麟 ●白露山

大相撲春場所6日目、審判部の貴乃花副部長(元横綱)が初めて幕内の物言いの一番を裁いた。
白露山を倒れ込みながら押し出した若麒麟に軍配が上がり物言いがついたシーンを振り返り「来たな、という感じがしました。緊張しましたね」と照れ笑い。結果は軍配通りとなり、貴乃花親方は「確認のため協議しましたが軍配通り東方力士の勝ちとします」とマイクを通して説明した。
控室にもどった後、1度も力士のしこ名を呼ばなかったことを指摘されると「これからはしこ名を言ったほうがいいですね」と苦笑いしていた。(スポニチより)


 この勝負はとても印象的だったのでメモしておこう。
 若麒麟が白露山を倒れながらつきだした。軍配は若麒麟。物言いがついたが、記事にあるように、貴乃花は「確認のためであり軍配通り」と言い、あっさりとしたものだった。

 しかしこの一番、ヴィデオで見ると、白露山の体が宙に浮いているうちに若麒麟の膝が土俵で土についている。つまり、ここのところ横行しているヴィデオ至上主義で言うならあきらかに白露山の勝ちなのである。だが、相撲は完全に若麒麟のものであり若麒麟の勝ちである。
 相撲界はヴィデオ至上主義を捨て、本来の相撲の勝ち負けを主観とする方向に動いているようだ。よいことである。すばらしい。うれしい。完全に勝っている相撲なのに、突き飛ばした相手が落ちるのが0コンマ何秒か遅いから負け、なんて馬鹿な判定があるものか。

 願わくば、あの朝青龍琴ノ若の一戦のように、大一番でも迷うことなく裁定して欲しい。


 七日目
 テレビの映りが悪くて困っている。といってもNHKと教育テレビのふたつ。その他のチャンネルは問題なし。ふだんNHKは見ないのでかまわないのだが、いまは相撲があるので困る。
 これは毎年夏に起きる現象だ。その悩みを日記に書いたら、詳しい友人が教えてくれた。なんとか現象。ぜんぜん覚えていない(笑)。喉元過ぎれば熱さを忘れるという奴で、ろくに見ないNHKが夏場に映りが悪くなり、相撲のときの映像が汚いわけで、夏場の相撲になれば毎年思い出すが、それ以外はわすれている。せっかく教えてもらったのに。とにかく気象現象によって起きるものらしい。
 しかしいまは春だ。なぜNHKの映りが悪いのだろう。せっかくの熱戦もだいなしである。これもBSアンテナを取りつければ解決する問題だ。

 取りつけると、相撲が早くから見られる。名人戦(年に一度のA級順位戦)、竜王戦の将棋が見られる。あとは、たまに気に入った映画があるかもしれない。それぐらい。
 今時BSアンテナもなく、つけるかどうかで悩んでいるというのもアナログな悩みだ。私は、デジタル好き、あたらしいもの好きなのだが、そのことを恥じている面もあり、時代遅れのこの部分を気に入ってもいる。あと携帯電話に詳しくないこと。このふたつの時代遅れはなかなかよいのではないかと思っている。

---------------


 白鵬対稀勢の里、熱戦!

 いい相撲だった。ダントツで今日の一番である。稀勢の里が責める。白鵬が受ける。必死に受ける。稀勢の里が責めまくる。以前の白鵬なら負けていた。粘り抜いて、最後に逆転勝ちしたのは、先場所の経験等が役立っているのだろう。この勝利は大きい。ここで二敗になるともう優勝の目はなくなる。いままでさんざん稀勢の里に負けるところを見てきただけに心配だったが、大きな勝利を得た。
 あらためてまた稀勢の里の充実を思う。横綱と五分にわたりあっていた。大関は近い。

 と書いて思う。どっからどうみても、この文は熱烈な白鵬支持者のものだ。私は白鵬が大好きだが一所懸命応援していたの十両から新入幕、大関になるあたりまでで、日の下開山したいまは、さほどでもない。ならなんで白鵬の勝利にこんなによろこぶのか。稀勢の里が嫌いなのか?
 そんなことはない。彼のように中学を出てこの世界に飛び込み、安易な笑顔を安売りしない青年の精神と凛々しさはいとしい。
 では白鵬の勝利、優勝を願うなら、朝青龍が嫌いなのかというと、そんなこともない。私は朝青龍が大好きである。マスコミがバッシングすればするほど燃える。

 と、書きつつ自分分析をしているのだが、どうやら私の願いは「星を落とさず、このままの成績で横綱決戦をしてくれ」という「場所の盛り上がり」にあるようだ。朝青龍の優勝でもなんの不満もないが、ここで白鵬が星を落としてつまらない場所になることがいちばんの懸念であるらしい。と他人事のような書きかただが。そのためには稀勢の里に負けてはいけないと思ったようだ。とこれまた他人事風。
 とにかく白鵬よ、星を落とさず朝青龍にくっついていってくれ。

 と、そこでまた、

○朝青龍 ●豪風

「豪風が、なんとか朝青龍を負かさないかな」と思っていた自分に気づく。
 それは朝青龍嫌いではなく、星が並んだほうがおもしろいと思ったからだろう。
 思えば私はプロレスでも、大好きなレスラーがいて、彼に連戦連勝してくれと願うのではなく、プロレス界全体の盛り上がりのような視点で応援していた。そういう形の楽しみかたのようだ。

---------------

 琴欧洲、琴光喜、絶不調!

 いやはや佐渡ケ嶽部屋のふたりの大関がひどい。
 琴光喜にはあまり関心はない。あれほどの逸材でありながら肝腎の場面で弱かった彼は、紆余曲折の末、史上最年長の大関昇進という物語を作った。あれで彼は完結したと思っている。
 問題は琴欧洲である。どうしようもない。弱々しい。いま幕内力士で琴欧洲を怖いと思う力士はいないのではないか。覇気がない。ただの気弱なノッポだ。なんでこうなったのか。救いはあるのか。琴ノ若はなにを考えているのか。落ち込んでいる友を案じる気分。心配でならない。

---------------

 ●把瑠都 ○旭天鵬

 強いなあ旭天鵬。大きい把瑠都と五分にやりあい、見事に勝った。まあ旭天鵬も大きく、懐が深く、理想的なお相撲さんなのだけれど。

---------------

 立浪一門と外国人力士

 今日の『夕刊フジ』に興味深い記事があった。買って読んだ記事である。週末だけ買う(笑)。
 引用したいのでネットに載っているといいなあと探したら、ZAKZAKにあった。よかった。引用させてもらおう。



思わぬ“弊外”で一門崩潰?年寄株流出で立浪アタフタ

 大相撲界は、5つの派閥、いわゆる一門ごとに親方たちがまとまっている。その根幹をなすのが年寄(親方)株。これを数多く占めている一門が主導権を握っている。目下、この年寄株を最も多く擁しているのが、貴乃花親方らの属する二所ノ関一門。以下、北の湖理事長らのいる出羽ノ海、立浪、時津風、高砂の順になっている。

 昨年末、この3番目の立浪一門から2番目の出羽海一門に「若藤」株が流失した。獲得したのは今場所、史上3番目となる通算11度目の入幕を果たし、4連勝スタートを切った幕内最年長、37歳の皇司。

 「先代若藤(元幕内和晃)は自分と同じ愛知県の蒲郡市出身。去年の早い時期から話がありました。こういうものは、一種の縁ですから」と、師匠の入間川親方(元関脇栃司)は入手の経緯を話している。

 親方株の一門外への移動は勢力の衰退につながる。このため、流失を食い止めることができなかった立浪一門は大あわて。判明したのはちょうど1月末の役員改選を控えた時期で、親方たちが一堂に会した一門会でも、「一門として何らかの手を打てなかったのか」と反省や批判の声が相次いだ。

 しかし、一門内に留めようにも留める手立てがなかったのも事実。親方のひとりは、こう言って嘆く。

 「ウチの一門の関取の顔ぶれをみてよ。年寄株は日本国籍を持った者でないと持てない。ところが、春場所現在、8人いるウチの一門の幕内力士の中で、日本人力士は魁皇と安美錦のたった2人だけ。横綱の白鵬をはじめ、ほかの6人はそろって外国人(旭天鵬は日本に帰化)で、譲り渡しのしようがない。いずれ遠くない時期に、ウチの一門は消滅するな



 興味深かったのは下線部分。なるほどなあ、こんな問題も起きてくるわけだ。旭天鵬が帰化したとき、モンゴルでは非難された。白鵬はどうするのだろう。日本人と結婚したことも非難されたらしいから、帰化はないのか。それはともかく、假に白鵬が日本人になって親方株を手にするとしても、それはずっと先のことである。目先の理事選での一票には役立たない。

 外国人力士がどこの一門に多いかとは考えていなかった。
 いまは一部屋ひとりと限定されているが、旭鷲山、旭天鵬のころは制限がなかった。もっとか、朝青龍、朝赤龍と若松部屋にもふたりいるから、彼らの時代にもまだ自由だったことになる。私はこの制限には反対だ。制限せず、もしも大相撲幕内力士が外国人力士だらけになってしまっても、それはそれでいいと思っている。そういうことにはならないと思うが、なったらなったで、それが大相撲の現実なのだと割り切れるし、応援して行ける、私は。
 そういう制限をしているということからも、相撲がスポーツではないことがわかる。

 外国人力士が立浪一門に多いということは、すなわち立浪一門が傍流ということだろう。傍流だから学生相撲で活躍したような有望新人が入ってこず、外国人に新弟子を求めた。するとそれが大活躍して米びつは潤ったが、結果としてこんな問題が生じたということである。



 もうひとつこの記事で私が驚いたのは、すでに二所ノ関一門のほうが出羽の海一門より数が多いということだった。私は「角界の名門、覇者出羽の海一門」の時代に育った。
 当時の理事長は出羽の海である。次はその娘婿の佐田の山だ。暗黙の了解である。まだ若いので傍流の栃若がワンポイントリリーフをする。それから佐田の山。その次は出羽一門の北の湖。三十年前からそう噂されていた。そして現実にそうなってきた。でももうそれは通用しないらしい。たしかにこれから先は読めない。願うのは千代の富士がならないことだけだ。不人気でなれない感じだが(笑)。

 まさか『夕刊フジ』に相撲好きの私が注目するような相撲記事が載るとは思わなかった。うれしい誤算である

---------------

 今日は挌闘技「Dream」があった。よかったのはブラック・マンバぐらい。さんざんミルコで引っ張って最後のあれだけか(笑)。
 八日目
 今日は史上初の「NHK杯戦決勝生放送」があった。10時20分から午後2時まで3時間40分とってある。将棋ファンとしては絶対に見ねばならない。
 しっかりチャンネルはあわせたのだが、昨夜徹夜だったので、中盤のあたりでもうろうとする。気づくと終っていて検討に入っていた。12時に終ったらしい。放送時間がたっぷりあまった。そこからまた朦朧として午後の競馬中継から目覚めた。
 今日は馬券は休み。よかった。かすりもしない大荒れ。

---------------

 千代の富士・朝青龍──最強談合横綱考

 今日の目玉は審判部を辞めて十五年ぶりに解説に登場する九重である。光るものがあるかどうか、じっくり見てみたい。

 中入り休憩で、千代の富士の過去の勝負と、平成二年の、小錦、霧島、北勝海のともえ戦を見られた。このともえ戦を見られたのはうれしい。北勝海の優勝。

 前々からわかっていたことだが、映像を見ると、あらためて朝青龍の相撲が千代の富士に似ていることに気づく。白鵬が大鵬のビデオを観るように、慕う方向性がよくわかる。

---------------

 最強のふたりがなぜ歴史に残る談合横綱なのか。そういう噂をされるのか。
 私はそれを体力の問題と考える。
 
 朝青龍と白鵬をクルマに例えると、朝青龍は最高にチューンナップされた2000ccの国産スポーツカー、白鵬は5000ccのベンツ、とは何度も書いてきた。国産スポーツカーは素早さもスタートダッシュも最高だが、排気量に餘裕はないし、剛性も低い。能力を発揮するために常に最高の状態に保たねばならない。ベンツと比すと剛性は低い。問題はこの「剛性」のあたりにあるだろう。

 両横綱のやった(とされている)ことを、私は八百長とは呼びたくない。99%勝てる相手なのだ。100回やって99回は勝つ。ものが違う。その相手に100%にするために、万が一の100回に1回が起きないように、懸賞金等からの金を回す。そのことによって分配というよい効果も出る。受けるほうは百にひとつの可能性を売ることになる。勝てる相撲を負けてやるのではないから罪の意識はないだろう。お金が入ってありがたくもある。色よい返事をしないと稽古で叩きつけられる。実力の差をいやと言うほど思い知らされる。まともにやって勝てない相手にふつうに負けることでお金が入るのだから受けて当然だ。
 強い横綱でなければ出来ないこれを八百長とは思わない。八百長というなら、琴櫻や三重の海の無気力相撲だろう。

 興味深いのは、最もそれを囁かれるのが千代の富士と朝青龍という似たタイプの横綱であることだ。剛性の低い精密機械だから、念には念を入れねばならないのだろう。スポーツカーは老いぼれのダンプカーでも体当たりされると負ける。チューンナップされていれば触れさせもしないが。

 一切それをしなかった大乃國や貴乃花の価値が時とともにあがるのは当然だ。力士からすると、貴乃花が横綱にあがる前の、ガチンコ二場所連続全勝優勝30連勝は奇蹟的であり、千代の富士の53連勝などとは価値が違うものであるという。

---------------

 把瑠都、こ器用な相撲(笑)──○把瑠都 ●栃煌山

 把瑠都が左張り手から素早く左前みつをとり、ぐっと引きつけて、楽々と寄り切った。なんとも器用な相撲でアナも絶賛していた。張り差しは嫌いだが、それによって栃煌山は顔を背けてしまったから、それなりの効果はあり、今回のこれは否定できない。あの体力でこれをやられたらたまらない。進歩であろう。引き上げるとき、向こう正面解説の舞の海が、「舌をちろっと出して笑っていた」とのレポート。把瑠都なりにしてやったりだったのだろう。

---------------

 高見盛、絶好調! ○高見盛 ●垣添

 高見盛が場内を沸かせる大熱戦の果てにを垣添を破り7勝1敗。入幕以来最高の成績とか。解説の九重がひっくり返るほど胸を張って帰るのではないかと言い注目されたが、それほどでもない。そのあと、「息が切れて胸が張れなかった」とレポートが入る(笑)。

---------------

 下位力士の上位挑戦はあるか!?

 今日、残念ながら下位の豊真将、栃煌山の全勝力士が負けてしまった。全勝は朝青龍しかいない。
 両横綱の争いなのはまちがいないが、下位力士が終盤でも優勝に絡んでいて、特別に大関戦。横綱戦が組まれたりするのは楽しみなものである。今場所それはあるか。

---------------

 九重の張り差し批判

 舞の海が問うような形で九重に言った。そのことから舞の海が横行している張り差しに批判的であることがわかる。九重は「すこしでも早く自分の型にもちこみたいということなのだろう」との返答。「その代わりあぶないですよね。中腰になるから」との見解。

 十五年ぶりの九重の解説は可もなく不可もなし。ただどうしてもアナも舞の海も、大横綱千代の富士に敬意を表して接する形になるから、遠慮が見えてつまらない。たとえば安馬と千代大海の対戦のとき、舞の海は大関を狙う安馬に千代大海の突っ張りを土俵中央で受け止めるぐらいになって欲しいと言うのだが、その際も「親方がいるのに失礼ですが」と千代大海の師匠である九重に気を遣っている。九重の態度にもあれだけの実績を残したから不遜な態度が見え隠れする。それはしかたない。現に最高の成績を残しているのだから。
 味のある解説が、現役時にたいしたことのなかった親方に多いことを思い出す。ひさびさの登場に千代の富士ファンはよろこんだろうが、わたし的には解説に九重はいらない。

---------------

 若ノ鵬、横綱初挑戦 ○朝青龍 ●若ノ鵬

 相手にならなかったが、それでも十七で相撲を覚え、十九で横綱に挑戦する地位まで来たのだから、文句なしの逸材なのだろう。どうにもまだ褒める気にはならない。

 九日目  豊真将、高見盛、栃煌山、勝ち越し!

 成績上位は下位のこの三人と両横綱のみ。一応魁皇もまだ2敗だが。
 九日目勝ち越しは高見盛、栃煌山が初めてなのに対し豊真将は三度目。それだけ話題の力士だった。
 栃煌山はまだ若いから初めては当然として、ここにきて初めての高見盛(7年前の十両時代に一度あるそうな)は嬉しそう。インタヴュウでは息が切れてうまくしゃべれない。見ているだけで心からおめでとうと言いたくなる。
 今場所の高見盛はじつにしぶとく、いままでなら負けていた相撲を何番もひっくり返している。唯一負けた日は国会中継で引き上げる姿を見られなかった。私の見た高見盛は、今場所はいつも上を向いていることになる(笑)。

 三人がこのまま勝ち続けていって上位とぶつかるようなことになるか。明日は豊真将と栃煌山で星をつぶさせるようだ。誰かひとり抜け出すか。三人の千秋楽の星はどうなっているだろう。三人とも十勝以上であって欲しいが。

---------------

 把瑠都、内無双! ○把瑠都 ●黒海

 把瑠都が先場所に続いて内無双を出した。決まらなかったが、これで体勢を崩して寄り切る。把瑠都の小器用な技はおもしろい(笑)。
 昨日のすばやい左前みつといい期待できるのか。

---------------

 白鵬、満点!

 朝青龍が連日強さを発揮しているのと比すと、勝ってはいるが昨日など時天空をしとめるのに1分もかかったりして、白鵬の強さは目立っていない。もっともあの一番は、なんとしても負けられないという慎重さの発露ととればわるいものではない。
 今日は強かった。時間一杯の仕切り前、琴奨菊が白鵬をにらみつけた。こういう露骨な挑発も珍しい。かっとなった白鵬がこれでまた張り差しでもやり、懐にもぐりこまれるのではと心配したが、低い体勢から琴奨菊の十八番(おはこ)を奪うかのような、がぶり寄り気味に一気に押し出した。これはもう満点である。この低い体勢からの攻めは白鵬のもっともほれぼれする相撲だ。先場所はやたら投げまくり、見た目には豪快だったが、私はちっとも満足していなかった。あんな不自然で強引な投げを連発したら腰も痛める。慢性腰痛とあれは無縁ではあるまい。今日みたいな相撲を取れば最強である。

 出来れば星が並んで千秋楽の一番が優勝決定戦であるのが望ましいが、朝青龍はとまらない。誰もとめられない。いやはや強いこと。今日も安馬はなにもできなかった。むしろ白鵬が星を落とすのではないかと冷や冷やする毎日。
 千秋楽で白鵬が勝って並び、さらにまた決定戦も勝つということがありうるのか。この一勝差はおおきい。でもあのアクシデントのような負けであることに救われる。

 明日白鵬は安馬か? 先場所の負けがある。なんとしても勝たねばならない。確認。いや若ノ鵬との初対戦だ。慎重に料理することを願う。

 今日から琴欧洲が休場。来場所は二度目の角番になる。鶴竜戦で腕を痛めたとのことだが、それよりも精神が心配だ。
 十日目  なま暖かい春はつまらんなあ。凍える冬に湯豆腐で熱燗は楽しかった。こんな生ぬるい時期はなにを肴に、なにを飲めばいいのだろう。刺身に冷や酒をやってみたが、なんとなくもう一歩。浮き浮きすべき春の訪れをわずらわしく感じるとは夢にもおもわなんだ。

---------------

 今日も国会中継があって相撲は五時過ぎから。それはいいのだが、なにしろいまの国会は内容がつまらない。そのうえ今日もフクシマミズホだった。いまごろ把瑠都と高見盛かと思うと腹が立ってくる。
 でもまあ相撲は趣味の世界だ。それをBSでやり、総合で国会中継は正しい姿勢。BSアンテナを買わねばならない。

---------------

 栃煌山、一歩リード ○栃煌山 ●豊真将

 解説は錣山。ということから豊真将の勝利が期待されたのだろうが栃煌山の勝ち。
 明日は苦手の黒海。二連敗中だ。

○把瑠都 ●高見盛

 高見盛も敗れて二敗目。平幕唯一の一敗は栃煌山となった。
 しかしこのいちばん見たい二番がヴィデオで勝負シーンのみなのだからつまらない。把瑠都と高見盛なんてそれこそ場所を通じても見たいベストスリーに入るような勝負。気合いが盛り上がってゆく高見盛と、あっさりそれをつり出す把瑠都を仕切りとともに見たかった。まあこれも「BSアンテナ買えよ」で終る話だ。これでBSが優良だとこちらも反論があるのだが、無料だし、1万円もしないアンテナだから、買えばいいことだ。ところで通販で買ったら取つけはどうなるだろう。自信がない。隣室と同じ向きにすれば何とかなるか。機械好き、工作好きなのだが、どうにも電波関係は自信がない。興味のないものは知識も薄くなる。

 明日は豊真将。相撲はほんとつぶし合いをさせるから残酷だ。二敗力士がまたひとり消える。

---------------

 ○千代大海 ●魁皇

 連敗して三敗になり、そろそろ息切れかと思った千代大海が、全盛期を思わせるような突っ張り相撲。肘の調子がもどってきたようだ。ならまだまだ在位記録更新は行けそうだ。

---------------

 安美錦戦の教訓 ○白鵬 ●若ノ鵬

 若ノ鵬は変化がある。それを心配していたが、先日の安美錦戦があるので、たとえ変化されても簡単には引っかからないと思っていた。万全の状態で片づける。

 明日は安馬。ここを突破すれば千秋楽決戦はまちがいない。

---------------

 朝青龍、、完璧! ○朝青龍 ●旭天鵬

 相性のいい旭天鵬とはいえ、膝を押さえてのすくい投げは、うまいなあと感嘆する強さ。
(後日註・アナもすくい投げと言い、私もそう思ったが、翌日の決まり手は「出し投げ」になっていた。)

 誰が朝青龍和負かすかだが、私は琴光喜に期待している。28連敗中だがここ何場所かは白熱したいい相撲を見せてくれる。でも調子のいいときでもダメなのだから、不調の今場所は無理か。張りつめているいまの朝青龍には誰もかなわない気がする。先場所とは全然相撲内容が違う。二場所休んでいたのと出場したのとではこんなにも違うものか。
 明日は千代大海。これは問題ない。全勝優勝も見えてきた。

全勝──朝青龍
一敗──白鵬 栃煌山
二敗──把瑠都 高見盛 豊真将

 好きな力士ばかりでうれしい場所。残念なのは琴欧洲のみ。

 十一日目
 琴欧洲と貴ノ浪

 解説が誰なのか知らないまま聞いていた。的確に力士の心理を指摘するいい解説だなと思ったら音羽山だった。こんなにいい解説者だったのか。見直した。貴ノ浪は才能があり、獨自の相撲を開発しながら、結果的には大関を陥落して辛酸をなめた。異能のひとである。その苦労が解説者としていい味になっているのだろう。

 音羽山が、ふつうの相撲を取るようになって負けが込んできた琴欧洲を、相手にあわせることなく、自分の相撲を取ればいいのにと心配していたことがあった。彼自身、そう割り切って伸びた。形にとらわれず、長身を活かした獨自の相撲を取れば、琴欧洲に勝てる力士などいないと、自分をさらにひとまわりおおきくした感じの琴欧洲に、音羽山も歯がゆい思いのようだ。琴欧洲の再起に音羽山の力を借りることは出来ないのだろうか。琴欧洲の指導者としていちばん適任ではないか。そんなことを思った。

------------------------------

○把瑠都 ●豊真将──気づけば好成績

 苛酷な星のつぶし合い指令。二敗同士の対決。把瑠都が勝ち残り、豊真将は三敗に後退した。
 私はこういうのを見ると、もったいないなあと思ってしまう。こういう取り組みを組まず、平幕にも全勝や一敗力士をおいておいたほうが全体的に盛り上がると思うのだが、そこは相撲協会はえらいというか、全勝同士、一敗同士を戦わせて、どんどん減らしてゆく。

 先場所、初めて実力で負け越し、今場所初日のあまりにだらしない北勝力での敗戦に、このままただのひとになってしまうのかと心配した把瑠都だったが、徐々に立ち直り、終盤にはこれだけの成績を残している。何番かいい相撲もあった。ファンとしてはほっとした気分。破天荒な怪物ぶりは消えたが、小技を覚え、進歩していると解釈すべきなのだろう。把瑠都がただのひとになったらこの覚え書きもやめるつもりでいた。

------------------------------

○豪栄道 ●露鵬──相撲道の違い

 変化した露鵬だったが豪栄道は落ちない。ふところにもぐって寄り、切り返してぐらつかせ、しっかりと勝ちきった。その相撲の構成を音羽山が褒めていた。前記の「しっかりした解説」はこのときのこと。「いい解説をするひとだなあ、誰だろう」と思ったら貴ノ浪だった。
 相撲をなめている露鵬を、しっかりと相撲の心をもっている豪栄道が負かしたまことに気分のいい一番。

------------------------------

○黒海 ●栃煌山──黒海の充実

 黒海が勝ち越し。栃煌山は二敗に後退。
 勝ち越しインタヴュウで黒海が日本語がうまくなっているのに気づく。ことばを発する前の「そうですねえ」が多すぎるが、これは競馬の騎手や将棋の棋士も、だれもが連発しているからしかたない。聞き苦しいのでやめるべきと思うが。とにかく黒海の日本語が上達している。

 ここ二場所、連続して九勝。今場所も勝ち越し。変身の理由は四つ相撲がとれるようになってきたから。馬力突進型のひとだったので、相手に対策を練られたから、もうこのままかと思ったが、また一変身ありそうである。よいことだ。

------------------------------

○旭天鵬 ●高見盛──夏はモンゴル場所

 高見盛がよく攻め込んで勝っていた相撲。両差しで追い込んだ土俵際、ふところの深い旭天鵬にうっちゃり気味に負かされた。決まり手は「巻き落とし」になっている。

 これで旭天鵬は勝ち越し。交通事故を起こして(力士は現役中は運転してはならない)謹慎の休場とかいろいろあったが、しっかりと復活し、前頭四枚目での勝ち越し。これで三役が見えてきた。
 やはり視野には今夏のモンゴル巡業があるようだ。本人もそれを口にしていた。

 朝青龍の熱意でやっと悲願のモンゴル巡業が実現する。白鵬、朝青龍の両横綱に加え、三役や前頭上位に、安馬、旭天鵬、朝赤龍、鶴竜、時天空あたりがいるだろうから、モンゴルでの熱狂が想像できる。

 人口一億二千万の経済大国(ではもうないそうだがそれでも世界有数であることは事実)に、人口三百万の国から来て、上位を獨占しているのだから、モンゴル人にとってこれはうれしいだろう。
 ブアカーオの活躍を見るたびに、在日タイ人の昂奮と感動を思うのだが、大相撲における在日モンゴル人の誇りはその何万倍だろう。最高位を獨占し、そのあとにもぞくぞくと続いている。一度モンゴル料理屋で、相撲観戦したいものだ。と、前々から思っているのだが、私はあまり羊料理が好きではないので、いまだに実現していない。

------------------------------

○琴光喜 ●若ノ鵬──若ノ鵬は目覚めるか!?

 今場所は若ノ鵬の初めての上位挑戦の場所。朝青龍、白鵬、琴光喜と連続して負け。相手にされていない。(内一番、琴欧洲に不戦勝がある。)明日は魁皇。いま五勝六敗。勝ち越せるか?
 そこそこ好感をもつのは、真正面から行っている。変化はしていない。今場所の苦杯で学ぶものがあるといいが。

------------------------------

○朝青龍 ●千代大海──龍二さんの闘志

カド番の千代大海が突き押し相撲で魁皇に快勝。勝ち越しにあと1番と迫り、 「自分より年配が頑張ってるんだから発奮するよ」と満面の笑みだ。とはいえ、 11日目の相手は朝青龍。「(勝ち越しを)決めたいねえ。勝ったら盛り上がるだろうな。 あと1番だ」と気勢をあげたが、支度部屋のテレビで圧勝する横綱を見て「強いじゃねえかよ」。
最後は「バリバリの新車と車検切れ間近の中古車じゃなあ。けがしないようにするよ」と弱気だった。(マイニチシンブン)


 これに対してあった2ちゃんねる「相撲板」の書き込み

チヨスさんは「アクセルとブレーキを間違えた」とか抜かしてコンビニに突っ込むババアの運転みたいな取り口だもんな。
前に進んでるつもりが後ろに下がってたりとか。


 なんとも(笑)。

 異常な前傾姿勢で千代大海がぶつかっていった。横綱はしっかり受け止めたけど、いくらなんでもあれは極端すぎる。ちょいと横にずれたら、千代大海はひとりで土俵外まで吹っ飛んでいったろう。卑怯なことをしない朝青龍はさすがである。
 真正面から受けたから、のど輪で一気に持ってゆかれたが、その手を外せた。あとはつかまえて料理。
 朝青龍の真の意味での横綱相撲になる。あそこまで異常につっこんでくることが見えたら、誰でも変りたくなるだろうなあ。引退間際の貴乃花が千代大海相手に変化したことがあった。あれが自信のなさなら、いまの朝青龍はあの前傾姿勢の千代大海でも受け止められる自信があるのだろう。
 千代大海の精一杯のいい相撲だった。本人も満足したのか、礼をして土俵を降りるとき、すがすがしい表情だった。

 音羽山が、朝青龍には細いというイメージがあったがいまはなくなったと語っていた。まったく、筋骨隆々、内からの充実がパンパンに体を張らせている。全勝優勝かなあ。

------------------------------

○白鵬  ●安馬──じっくりと料理

 白鵬はドタバタしなければ安馬には負けない。その辺は連覇の自信からかよくなってきている。向こう正面解説は竹葉山の熊ケ谷親方。朝青龍を追うために重要な一戦である。
 いま両横綱の精神状態はどっちがきついだろう。「追われるほうが」なんて言いかたもあるが、この場合はすでに一敗している追う白鵬か。
 今場所は緊迫感があっていい場所だ。思えば朝青龍が謹慎で缺場している二場所はつまらなかった。

------------------------------

 竹葉山の読みについて

 どうでもいいメモ。
 白鵬の師匠、宮城野親方の現役時の四股名として竹葉山を知ったとき、タケバヤマだと思った。記憶にない力士だった。最高位は幕内というが一場所だけである。覚えていなかった。
 だが読みはタケバヤマではなくチクバヤマだった。これがわからなかった。ふつうならタケバヤマ。あるいはチクヨウザンである。

 その理由を最近になって知った。福岡出身のこのひとは本来「筑葉山だった。筑豊からだろう。これならチクバヤマと読める。それをケガや伸び悩みがあって「筑」を「竹」に変えたのだ。それでへんな読みになった。

 十二日目  ○高見盛 ●豊真将──高見盛、九勝目

 豊真将が攻め込む。土俵際まで追い込まれながらも高見盛が逆転勝ち。解説の舞の海によると、高見盛の「あえてまわしを取らないのがよい」のだそうな。なるほどなあ。四つになったらまわしを取りたくなる。高見盛はそれをせず、相手の背中に手のひらを当てて、そこから力を出させなくさせてゆくのだという。とにかく今場所は負けの形からしぶとく逆転勝ちが多い。たいしたものである。
 そっくり返りの九勝目。

------------------------------

 ○把瑠都 ●普天王──舞の海の辛口解説

 普天王が一気に土俵際まで攻め込む。うまい相撲。把瑠都の甘さが出た。負けたと覚悟したが、右上手をとっていたのが幸いした。普天王はユルフンなので一枚まわしは伸びきっていたが、土俵際、それ一本で逆転する。

 先場所千秋楽、普天王を内無双で破ったVTRが流れた。舞の海は褒めると思っていたのだが案に相違して、「膝の怪我でパワー相撲が取れなくなったから、こういう小技に」と手厳しい。アナが「四つになるといまでもすごいパワーが」と把瑠都ファンらしく?反論するが、舞の海も「まわしをとってからじわじわ出るパワーはありますけど、一気のパワーはもう無理ですね」と譲らない。どうやら舞の海の中では、「膝の怪我をした把瑠都にはもうかつてのパワーがない」と結論が出ているようだ。そうなのだろうか。私は「また怪我をすることが怖くて、あっても出せない」のだと思っていたので新鮮な意見だった。
 今日の逆転も、「支えになる足が痛くないほうなんですね」と、痛くない右足が軸になる展開だったことが幸いしたとの評。辛口である。

 私の場合の救いは、「内無双をする把瑠都を嫌いではないこと」だ。これが「あんなことをやるようになったらもうダメ」だと白けてしまう。そうは思わない。あれもまた把瑠都の魅力だ。その辺にまだ楽しみが残っている。

 膝が完治して、舞の海が「おそれいりました」と言う一番を見られる日を夢見よう。

------------------------------

 ○栃煌山 ●北勝力──栃煌山、10勝目

 これも北勝力が攻め込んだが、栃煌山がのど輪をやりかえして勝利。10勝目。北勝力も今場所は7勝1敗で好調だった力士。

 高知県の栃煌山の出身中学で、「部員がひとりになってしまったので相撲部が休部」のニュースが載っていた。数日前のスポーツ紙。そういう時代だ。栃煌山が「ぼくの活躍でまた部員が増えれば」と語っていた。最後の「たったひとりの部員」のことを思うと切ない。みなサッカーや野球に行ってしまうとのこと。そういう意味で相撲は国技ではない。いまのこどもは相撲を取らないし。

------------------------------

 張り差し論

 ゲストにラグビーの大八木。舞の海と張り差しについて話していた。アナから「むかしは威嚇のような張り差しはありましたが、いまのようなのはなかったですよね」との言。

 張り差しが大嫌いで、見るたびに不快になる私は、舞の海や北の富士が先頭に立って、張り差し批判をしてくれることに期待している。あんな品のない不快な立ちあいはない。

------------------------------

 ●豪栄道 ○黒海──これまた舞の海の辛口解説

 舞の海の解説。「黒海とあまり稽古をしていないので、栃煌山は相手がよくわかっていない」と、これまた勝った黒海を褒めるのではなく豪栄道に苦言。「黒海の突っ張りにはかつてのような威力はないから、稽古で相手の取り口がわかっていれば、相撲が見える、耐えられる」とのこと。なるほど、たしかにそうだろう。豪栄道に期待する気持ちはわかる。でも黒海だっていい相撲を取っていた。
 今日のあまりに雄弁で完璧な舞の海の解説は、すこしうぜえとも思った(笑)。

------------------------------

 ○雅山 ●稀勢の里──意外な熱戦

 雅山変化の立ちあい。つまらない相撲と思ったが、そこから熱戦。激しい突っ張りあい。場内から拍手が沸く。そしておどろくことに、がんばった雅山がここのところ連敗中の稀勢の里をつきだした。

 代々茨城の家系なのだが郷土愛は薄い。いやむしろ嫌いなのだ。それでもこのふたりの取り組みに、「茨城出身同士だなあ」と思った。数少ない自分の出自を意識する瞬間。

------------------------------

 ○安馬 ●朝赤龍──すばらしい熱戦

 頭がぶつかり、ごつんと音のする立ちあい。相撲の凄味、醍醐味でもある。激しい動きから四つになり、投げが連発する熱戦。場内から拍手と歓声。今場所はいい相撲が多い。満員御礼もよくわかる。熱戦への拍手と、変化技による失望のため息を見ると、観客は正直だといつも思う。

 朝青龍と五分の成績を残し、玄人筋には評価の高かった栃東だが、私は勝ち越しを掛けた一番で格下相手に平然と変化するあの大関をどうしても好きになれなかった。

------------------------------

 ●魁皇 ○若ノ鵬──引き技の勝利

 魁皇に負けるなよと声援を送る。このロシアの若者に相撲の厳しさを教えてやれと。だが……。
 若ノ鵬、両手突きの立ちあい、すぐに引いた。魁皇は相手の体に触ることなく落ちる。

 勝利インタヴュウ。来日してまだ二年。ひさしぶりにへたな日本語を聞いた(笑)。幕下のころの把瑠都を思い出す。
 勝ててうれしいと言っていた。まあうれしいだろうけど。
 魁皇は絶対に負けてはいけない一番だった。
 力で突き出されたなら、まだあきらめがつく。いやそれは若ノ鵬にもいいことだ。

 若ノ鵬は連日横綱大関に相手にされてないので、そろそろ引き技、変化をするのではないかと案じていた。案の定、それが出た。しかも決まってしまい、大関に勝った。よくない流れである。

------------------------------

 龍二さん、よけいなことを……

●千代大海 ○白鵬

 出なくてもよい引き技、龍二さんスペシャルが大爆発。上半身に力の入った甘い立ちあいをした白鵬は、のど輪の押しのあと、身をかわされると一直線で土俵を飛び出していた。龍二さんのフォローは必要なかった。ひとりで飛び出していた。まさにやらなくてもいいよけいなことをやる空気の読めない千代大海の面目躍如。どうせスペシャルを出すなら昨日出ていたほうが盛り上がったのに。
【附記】──白鵬の背中には千代大海の手形がついていたとか。それだけ一発、強く背中を押していたことになる。白鵬がひとりで飛び出したのではなかった。)

 これで今場所は終った。こんなにのに引っかかるバカ白鵬が悪い。「上半身に力が入っていた」とは舞の海の解説だが、これは聞かなくても私にもわかった。白鵬には上半身にばかり力が入り、下半身がついてゆかない相撲がある。今回も下半身を置き去りにして上半身が勝手に前に出ているような形だった。だから千代大海のワンパターン引き技に引っかかる。この人、これが直らないと大成はない。稀勢の里に負けていたときもこれだった。だけど、せっかくの安馬戦を乗り切ったあとに、こんな負け方をするかあ……。

 アンチ朝青龍は血の出るほど唇を噛んでいるだろう。これで朝青龍優勝が確定した。私は朝青龍が大好きだし、今場所の充実した文句なしの相撲を見ているから、彼の優勝で不満はないが、場所全体がこれでどっちらけになったのはたしか。朝青龍の全勝優勝は決まったも同然。アナと舞の海も、「これで14日目にも優勝が決まりますが、朝青龍としては白鵬に勝っての優勝でないと満足はないでしょう」と、すでに優勝が決まったことを前提に、千秋楽の予想。話題はもう全勝か否かに絞られた。
 そこでハッと気づいて、「ええ、千秋楽の話はまたにしまして」。

 優勝は朝青龍で決まった。あとは白鵬が土をつけるかどうかだけだが、假に勝つとしても白鵬に優勝の目がないのではさして価値のあるものではない。こんなにいい場所だったのに、ここでどっちらけになるとは。安美錦戦での負けは痛かった……。あれさえなければ……。


 琴奨菊、よくやったあ!

○琴奨菊 ●朝赤龍

 舞の海は「勝てる可能性はある」と言う。朝赤龍が必ず張り差しをしてくるから、それを利用して潜り込めばチャンスはあると。たしかに、朝赤龍が張り差しでくる可能性は高い。そこにつけ込む隙はある。でもなあ琴奨菊はここまで7回やって一度も勝っていない。白鵬には勝っているが。琴奨菊タイプを片づけるのは朝赤龍には容易なのだろう。まったく期待していなかった。今場所はもう終った気分だった。

 意外に張り差しではなかった。だが琴奨菊満点の立ちあい。まっすぐに飛び込んだ琴奨菊が攻め込む。がぶって寄る。土俵際まで追い込む。それでもまだ無理と思っていた。がぶってがぶっているうちに朝赤龍が棒立ちになってくる。もしかして、と思ったとき、ついに朝赤龍が土俵を割っていた。背筋がぞくぞくした。それはこれで今場所の興味がつながったという安心感だった。ありがとう琴奨菊、と感謝していた。

 そう、私はアンチ朝青龍ではないから彼の優勝でいい。しかしここで後続と二差がつき優勝確定ではつまらない。要は「場所全体の盛り上がり」なのだ。
 白鵬のだらしない負けで一気につまらなくなった場所が、朝青龍の一敗で逆に混戦となりおもしろくなった。二敗の把瑠都や栃煌山にだって優勝の可能性が出てきたのだ。琴奨菊の勝利の価値は絶大である。こうなると白鵬を負かしてよけいなことをした龍二さんにだって価値が出てくる(笑)。

 把瑠都と栃煌山の活躍も意味がある。これで両横綱だけではつまらない。この二人がいることの価値は絶大だ。把瑠都と栃煌山が二敗のままで行くとする。すでに両者の戦いは済んでいるからつぶし合いはない。千秋楽で白鵬が勝つ。すると四者の決戦になる。これは楽しみだなあ。それともそのまえに把瑠都を両横綱に当てるなんてことをするか? いや、琴光喜、魁皇戦で組まれているからそれはもう無理だろう。わずかだが二敗の四者決戦の可能性はある。

 明日栃煌山は2戦2敗の旭天鵬戦。これも見逃せない。旭天鵬も今場所好調だ。この壁を越せるか。
 把瑠都は先場所負けている朝赤龍戦。なんかこれも朝赤龍のうまい相撲にやられそうで怖い。
 朝青龍は28連勝中の琴光喜戦。結果はともかくこれは楽しみな一番。琴光喜の奮起に期待する。
 白鵬は魁皇戦。若ノ鵬に負けている魁皇に負けるとは思わないが。

 両横綱は大丈夫だろう。問題は平幕のふたりだ。負けてしまうと両横綱に絞られてしまう。可能性を残す意味で、なんとかして明日を乗り切って欲しい。明日の注目は平幕のふたりだ。

 というような興味も、すべて琴奨菊が勝ったから。よかったよかった。
 よかったといえば、勝利インタヴュウで気持ちを聞かれても、まだ息が切れていて、喜びの実感がない琴奨菊が、インタヴュウ最後のころ、「よかったぁ」とひとこと言った。なんとも実感のこもったいいひとことだった。今夜はうれしいだろうなあ。よかったねえ、横綱に勝てて。真っ向からの勝負であの横綱を破った自信は大きく花開くことだろう。

 来場所前は朝青龍が出稽古に来て、いじめられそうだ。以前新三役として伸びてきたときに、いじめられて話題になった。息が切れて倒れている琴奨菊にニースタンプをしている朝青龍を見たときは嫌悪を感じたものだった。見事な恩返しをしたことになる。
 今日の晩酌は琴奨菊に乾杯しよう。

------------------------------

 琴奨菊のブログより──喜びの聲

 琴奨菊がブログをやっていることを知らなかった。普天王のことは何年も前から知っていたが。
 2ちゃんねるの「相撲」板で知る。行ってみた。
 すると六時半にもう更新されていた。早いなあ、風呂からあがってすぐか。
 よかったねえ、こっちまでうれしくなる。

嬉しいです!!!

嬉しいです!!!

すっごく嬉しいです!!!

横綱朝青龍関に初めて勝ちました!!!

自分でも、まだ実感が湧いていません!!!

あぁ〜、よかった!!!

自分のイメージ通りの相撲がとれました☆

今日の1番は自分にとってすごく自信となりました!!

皆さんのコメントや応援、ご声援が本当に自分の力になっています!!

本当にありがとうございます!!

http://ameblo.jp/kotosyo-blog/


------------------------------

【附記】──朝青龍の挌闘精神

 たしかに朝青龍は日本人の好む相撲精神は理解していない。問題のある横綱だ。
 だが挌闘家として見た場合、自分の地位を脅かす可能性のある存在には、自ら出稽古に出かけて観察し、対戦し、自分の怖さを教え込もうとしたりする積極性がある。だいたいが横綱が出稽古に行くってこと自体が異常であり笑い話なのだ。それでも彼は自分の敵になりそうだと判断すると、そいつが平幕であり、弱小部屋所属であろうと迷わずに出かけてゆく。
 日本人的美意識に適った横綱ではないが、ひたすら勝ち続けようとする挌闘家として見た場合、きわめて魅力的なひとである。
 私が朝青龍嫌いを嫌うのは、そこのところを理解していない、いわば「気分だけ、形だけの相撲ファン」が多いからだ。真の相撲ファンなら、多少の反感は抱くとしても、彼の強さに惹かれないはずがない。


 十三日目  見えていた変化

○普天王 ●露鵬

 普天王が明らかに早い仕切りでつっかけ、待ったが二回続く。私は、露鵬が変化するなと思った。普天王が猪突してくるのが目に見えてくる。エコ相撲で出稼ぎしている露鵬が得意の立ちあい変化で経済相撲を取るだろう。しかし普天王の露骨すぎるつっかけもヘンだ。これはそう見せて露鵬の変化を誘っているのではないか。

 三度目の立ちあい。予想通り露鵬が変化し、見切っていた普天王はついていって簡単に勝った。やはりあれはそう思わせての変化を誘っていたのだろう。引っかかった露鵬がアホか。普天王のブログってもう一年以上行ってないけど、ひさしぶりに覗いてみようか。誘ったと書いてあったらおもしろいんだけど。

【附記】
 いってみたが、なかった。そんなこと書かないよな(笑)。

------------------------------

 ●栃煌山 ○旭天鵬──力の違い

 今日は酒と肴を用意してテレビの前に陣取った。栃煌山と把瑠都の相撲が楽しみだ。
 そのまえに明日の取り組みを知る。栃煌山は関脇の琴奨菊と、把瑠都は大関の千代大海と組まれた。ふたつともふたりが今日も勝って二敗のまま優勝争いに絡むと読んでのものである。たのむぞ、盛り上げてくれよ。

 しかし案じたとおりあっさりと旭天鵬に負ける。完敗。力負けであり、技術の負けでもある。いいとこなし。これでだいぶしらけた。それはまた続く。


 ●把瑠都 ○朝赤龍──朝赤龍の巧い相撲

 これまた昨日案じたとおり、朝赤龍の巧い相撲に把瑠都が翻弄された。
 朝赤龍が左に変化してまわしをとり、寄る。半身のまま、把瑠都がなんとか耐えた。耐えたからもう大丈夫と思う。が、粘りなく寄り切られる。
 ずいぶんとあっさり負けたなと思ったら、これは踏ん張るのが怪我をした左足なのだった。北の富士が「怪我をしている足だから怖くて踏ん張れない」と言う。なるほど、そういうことか。朝赤龍の変化が右だったら踏ん張れた。それを計算しての左への変化だ。

 あの大怪我さえなかったら、と思う。観ていてドキっとするような不自然な膝の折れ方だった。しかしそれは相撲を知らないままの「早すぎる出世」から来たものだ。運命だったのか。
 勝ち越せばいいと思った今場所だ。ここまで来たのだからよしとしよう。

 ふたりの二敗が消えてどっちらけ。酒がまずい。栃煌山が負けるまであんなにうまかったのに。同じ酒がこんなにも味が違うとは。飲む気がなくなった。あとは今日はつけ足しのようなもの。

------------------------------

 ○豊ノ島 ●千代大海──龍二さんの引きのタイミング

 千代大海がのど輪で一気に土俵際まで押す。そこで停まる。豊ノ島踏ん張る。頭をつけあっての膠着状態。
 こうなるともう「いつ龍二さんが引くか」「それに豊ノ島がついてゆけるか」になる。一瞬のタイミングだ。見逃してはならない。瞬きも出来ない。これは緊張する(笑)。
 引いた、豊ノ島ついて行く、四つになった。こうなると龍二さん、絶対不利(笑)。
 体勢が崩れて龍二さん、倒れる。ちょんがけのような外掛けがあったが、あれはなくても倒れたろう。
 これで豊ノ島、対龍二さんに4連勝。もう勝ちのメソッドを入手したようだ。

------------------------------

  琴光喜、五年ぶりの勝利!

○琴光喜 ●朝青龍

 いきなり両差し。絶対的有利の体勢。そのまますぐに攻めろと思ったが攻めない。なぜか慎重。朝青龍に下手まわしを取られる。五分の体勢。結局いつもの善戦マンかと思ったところで上手投げ。かつて出世を競ったライヴァル朝青龍を土俵に転がした。座布団が舞う。

 控えの白鵬の表情をカメラが映す。その向こうに、舞った座布団が顔に当たって痛そうに顔をしかめる女観客の顔(笑)。
 私は枡席までしか観戦経験がないのでこの感覚はわからない。プロレスではよくあった。リングサイドにいると、ビールの入っている紙コップが降ってきたりした。

 対朝青龍の琴光喜の連敗記録には、花札バクチの負けを精算するための明らかな手抜き相撲もあったが、あまりの連続敗戦が話題になってからは心を入れ替えたのか、むしろ記憶に残る熱戦が多い。先場所の負けなどその最たるものだ。九割方勝っていたのに土俵際で逆転された。
 今場所も熱戦になるのはまちがいなく、それこそ場所前から期待していた一戦だった。

 立ちあいが成功して(朝青龍の立ちあいがだらしなく)両差しになったのに攻められなかったのは、五年以上も続く連敗の重みだったろう。
 でも勝った。完璧な投げで長年の屈辱を晴らした。今場所はいいことのない佐渡ケ嶽部屋だったが、琴奨菊、琴光喜の朝青龍戦勝利は、かすかなともしびである。負け続けの精神的負荷を断ち切れば、琴光喜は朝青龍と五分にとれる数少ない力士だ。

------------------------------

 両横綱の決戦となったが……

○白鵬 ●魁皇

 場所前からの予想通り両横綱の一騎討ちとなったが、そこに至る経緯には不満が残る。
 願いは全勝での千秋楽決戦。しかしそれは白鵬が敗れて夢となる。
 さらには白鵬が二敗してどっちらけの場所となる。
 ところが朝青龍が敗れて、把瑠都や栃煌山も絡む混戦かと、これはこれでおもしろくなる。
 なのに栃煌山、把瑠都と敗れてまたしらける。
 朝青龍が敗れる。白鵬と二敗で並ぶ。
 横綱決戦ではあるが、十三日目で二敗という低レベル。
 横綱の優勝は全勝か一敗まで。その他の優勝も二敗まで。と思っている私には、十三日目で二敗の横綱同士の決戦というだけで白ける。いくらなんでもこれ以下にはならないと思うが。

 せっかく昨日の波乱で盛り上がったのに、今日までまたしらけてしまった。
 しかし昨日のしらけは、「これじゃもう朝青龍全勝優勝確定だな」というしらけだったから、まだ救いがあった。今日のは、横綱決戦という楽しみがあるのに、なんとも脱力するしらけだ。低レベル優勝決定である。

 朝青龍は昨日から立ちあいがおかしいという。それは疲れではないかとの推測。その根拠は稽古不足。たしかに場所前、抜群の強さは発揮していたがスタミナはたいしたことないと言われていた。このあたりでそれが出て息切れするものなのかどうか、よく言われることだが、十五日間相撲を取るという経験をしていない身には、わかったようなことは言えない。ただ巡業に復帰した先場所前もそうだったように、普遍的な意見に耳を貸さず獨自の調整をして稽古量自体は多くない朝青龍──しかしあれだけの実績を残してきた──の課題がスタミナであることは事実だろう。
 
 今日は、朝青龍が敗れて白鵬と二敗で並んだという、「さあ、いよいよ横綱決戦だ!」と喜ぶべき日なのかもしれないが、どうにも脱力した感が強い。
 わるいのは敗れた栃煌山と把瑠都だ。彼らが勝っていて二敗四人で並んだらどんなによかったことか。だが両方とも完敗だからケチもつけられない。勝った旭天鵬と朝赤龍がえらい。
 でもまあこういうふうに一喜一憂させてくれるのだから、今場所はよい場所か。
 十四日目  千田川は辛口

○高見盛 ●露鵬

 今日の解説は正面が武蔵川、向こう正面が千田川。
 またも変化した露鵬をしっかり掴まえて高見盛10勝目。誇らしげに天井を向く。
 アナが今場所の高見盛の充実を絶賛しようと千田川に振るがのってこない。千田川(安芸乃島)の解釈は、露鵬が変化したので腰が軽くなり、高見盛でも簡単に運べた、というもの。つまり勝った高見盛が強いのではなく、露鵬のだらしなさの批判。まあそれは正しい。同窓の貴闘力(大嶽親方)に文句を言ってやれ。露鵬の土俵態度の悪さで、私の中で先代親方の大鵬、現親方の貴闘力も、激しく価値を落としている。

 二桁勝利の高見盛を褒めるどころか「もっと鉄砲や四股を踏んで、上位定着を目指して欲しい」とむしろ苦言を呈す。それを聞いていたら私も高見盛の久々の二桁勝利を喜ぶどころか、稽古好きだった安芸乃島がそう言うのだから、高見盛は鉄砲や四股が嫌いなのかと、そっち方面に興味が向いてしまった。

 安芸乃島を信じられるのは、婚約発表直後、「金星(美人)じゃないですよ」と語っていたから。力士はもてる。世の中にはデブフェチの美女がたくさんいる。部屋の稽古場の周りにはそういう女が群がっている。好みひとそれぞれ。力士の女房は美女が多い。
 安芸乃島の婚約者は美人とはいいがたかった。私は拷問にあっても言わない。もてもてなのに彼女を選んだのだからすばしらいひとなのだろう。
 自らそう言った安芸乃島だから厳しいことばにも納得できる。自分を冷静に観られるひとのことばは信じられる。

------------------------------

 黒海、初めての11勝!

○黒海 ●豊真将

 星のいいもののつぶし合いをさせることで、前半星のよかった豊真将はただのひととなり(でも9勝しているけど)、黒海はここにきて優勝の可能性まである3敗力士となった。
 伸び盛りの黒海に注目し、相撲パターンを覚えられて伸び悩んでいた時期も知っているから、四つでもとれるようになってまた星の伸びてきたことは喜ばしい。
 10勝までは経験があるが11勝は初めてとのこと。NHKアナが話を聞こうとしても、「相撲が終ってから」と断ったそうだ。この11勝(明日勝てば12勝の可能性もある)が、転機になることを願う。

------------------------------

 栃乃洋、8連勝で勝ち越し!

○栃乃洋 ●時天空

 6連敗から8連勝で勝ち越し。おめでとうございます。石川県出身で同い年、小学校時代からのライヴァルである出島と栃乃洋は大好き。ところでこのふたりがいなくなったあとの石川県出身力士はどうなのだろう。誰かいるのか?
 茨城の私は稀勢の里でしばらくは安心だけれど。

------------------------------

 鶴竜、負け越し

●鶴竜 ○朝赤龍

 鶴竜が前に出る。攻めたが土俵際、朝赤龍に投げられた。解説の武蔵川は鶴竜を褒める。来場所が楽しみだ。鶴竜も朝赤龍もモンゴル人力士には不満がない。

------------------------------

 稀勢の里、勝ち越し

○稀勢の里 ●旭天鵬

 旭天鵬の左下手からの投げで決まったと思ったのに逆転。すごいなあと思う。
 それを千田川が玄人好みの解説をしていた。むずかしいのでよくわからん。私は相撲を取っていたわけではないし。わかるのは、ほとんどの力士がやられてしまうあの旭天鵬の投げに耐えて逆転した稀勢の里のえらさ。この調子で強さが安定すると来年は大関だな。
 控えでは、とにかく勝ち越しにほっとしていたとのこと。それだけ勝ち越しはおおきいのだ。

------------------------------

 安馬、なんとかふんばる

○安馬 ●雅山

 安馬、なんとか勝って7勝7敗。関脇の座を守れるかどうかは明日にかかった。落ちたら大関取りはまた一から出直しになる。稀勢の里とどっちが先か。

------------------------------

 把瑠都、強い!

○把瑠都 ●千代大海

 こわかったのは龍二さんの変化。大関の誇りも見栄もかなぐりすてて変化し、ばったり倒れた把瑠都の苦笑い。
 だが龍二さんは大関らしく堂々と立った。ありがとう。それだけでもういい。把瑠都も出足よく出た。がっぷり四つ。肩越しに上手をとる。もう負けない。負けるはずがない。完勝。
 昨日負けていなければなあ……。

------------------------------

 白鵬、最強!

○白鵬 ●琴光喜

 猪木のプロレス論に「7の力の相手を9にまで引きあげ、それをつぶして10の自分をアピールする」とか、そんなのがあったが、今日の白鵬はそういう満点の相撲。
 琴光喜の強さを十分に引き出し、一見熱戦のよう見えたが、じつはもう一分の隙もなし。完璧な勝利。一方的に突き出したり、ぶん投げたりするのも横綱相撲なら、今日のこれはそれの上を行く究極の横綱相撲。強いのなんのって。

------------------------------

 というわけで優勝は千秋楽の横綱決戦となった。どっちがかってもいいや。
 横綱相星千秋楽決戦は十三年ぶりとか。

 それにしても昨日の把瑠都の敗戦が惜しまれる。もしも勝って二敗だったら、明日の横綱の勝った方と決勝戦だった。いやその決勝戦の前に、明日負けて三敗になって脱落してもいい。とにかく栃煌山と把瑠都が二敗でいたら、もっと盛り上がったのになあと、そればかりが惜しまれる。
 でも昨日と同じ結論、今場所は、朝青龍のいなかった二場所、先場所と比べたら、ずいぶんとおもしろかった。文句を言ったら罰が当たりそうだ。

 白鵬が勝ったら四場所連覇(といっても二場所は朝青龍はいなかった)になり、「白鵬時代」と騒がれる。アンチ朝青龍は大喜び。
 朝青龍が勝ったら、また東の横綱の地位にもどり、傲慢が復活し(笑)、白鵬の築いてきたものは水泡に帰す。
 さてどうなるか。

------------------------------

 コールの人気──テレビと現場

 そういえば今日、千代大海把瑠都のとき、把瑠都コールをやっている何人かがいた。こういう場合、負けじと千代大海コールが起きるのだが、それはなかった。
 2ちゃんねるの「相撲板」を見ると、それなりに千代大海ファンはいるらしい。でも会場まで行くファンではないようだ。2ちゃんねるでいくら応援してもコールにはならない。

 プロレスのときいつも感じたことだが、世の中には会場には行かない熱心なプロレスファンがいる。活字プロレスとテレビには熱心だが会場には行かないひとたちだ。私もそれに近かった。といっても7対3ぐらいでは行っていたから10-0や9-1のひととは違う。
 インターネットの時代になり、相撲も10-0のひとが言いたい放題しているようだ。私の場合、父が死んでから(正確に言うなら、父が国技館に行ける体力がなくなってから)現場に行っていない。もう7,8年になるか。でも国技館には40年近く前からかなり通っているし、輪湖時代に徹夜で並んで切符を買ったりしているから2チャネラー相撲ファンとは違うと言い切れる。
 2ちゃんねるで千代大海を応援しているひとも、インターネット世界だけではなく、国技館に行って応援して欲しいと願う。あれはまたあれでまったく違うものだ。「龍二さん」もそれを願っていると思う。

 朝青龍魁皇戦でも、魁皇コールが聞こえた。これはまあ魁皇人気朝青龍不人気を考えれば納得。


 千秋楽  横綱決戦の特集映像

北の湖対輪島──二番 それぞれ一勝

千代の富士対隆の里──三番 隆の里二勝

貴乃花対曙──二番 それぞれ一勝

 毎度の意見だが、むかしの立ちあいはきたないなあ。輪湖なんて、中腰からの立ちあいである。両腕は仕切り板どころか膝よりも上にある。ほとんどぶつかり稽古だ。
 千代の富士時代もそう。やっと貴乃花時代になってまともな仕切りになっている。

 隆の里の強さがよく出ていて、千代の富士の政治力による獨裁政権がかいま見えた三番だった。

 曙がでかい。貴乃花が肝臓を悪くしてまで体をむりやり大きくした気持ちがわかる。そうしないと対抗できなかった。
 そして挌闘家としての曙の弱さ。お笑い路線の今。あれこれ時の流れを感じる特集だった。

------------------------------

 つまらんつまらん

○把瑠都 ●雅山

 半端な立ちあい、引き技、物言いがついての結果としての勝ち、相撲は雅山のもの、把瑠都は宙を飛んでいた。最悪である。せっかくの12勝目をこんな形にするとは。

○黒海 ●魁皇

 両手でついて、すぐに引き技。せっかく四つでもとれるようになってきたのに、これまた有終の美ならぬ有終の醜悪。

○琴奨菊 ●稀勢の里
○安馬   ●旭天鵬

 ふたりとも好きな力士なので勝ち越して関脇の地位を守ったのはうれしいけれど、千秋楽にすでに勝ち越している相手に7勝の力士が勝つというのは、むかしから批判の対象の定番だ。

○琴光喜 ●千代大海

 これもそう。琴光喜やっと勝ち越し。角番の千代大海は8勝していた。

○朝青龍 ●白鵬

 極めつけはこれ。なんなのだ、あの雑な寄りは。両まわしも取っていないし、あんなに急いで寄る必要はまったくない。予定調和と言われても仕方あるまい。

 総論  今場所はおもしろかったのか? 朝青龍のいなかった二場所よりは確実におもしろかったけど、なんだか終盤でわけがわからなくなってきた。いま正直な気持ち、しらけている。

 先場所白鵬が優勝して「休んでいた横綱に優勝はさせない」という誇りを守る形になった。
 そのあとのトーナンメントでは、白鵬は早々と二回戦で負け、朝青龍が史上初の三連覇とかで盛り上がっていた。これはこれで読める形。譲り合いの精神。
 そうなると今場所は、先場所白鵬は形を作って名誉を守ったから朝青龍か、と誰もが思う。
 それでいいのだけど、せめて横綱決戦は「手に汗握る名勝負」であって欲しかった。

 上記の琴奨菊の勝ち相撲はいい相撲だったし、安馬に負けて10勝目を逃した旭天鵬は悔しそうだった。安易に予定調和とか互助組合なんて言うつもりはない。ただ、そういう解釈も可能な結果にはなっている。ならないようにすべきだ。

 なんだかしらんが、不満があれこれくすぶる納得行かない千秋楽になった。

------------------------------

★勝負後の「にらみ」で若ノ鵬に注意

 若ノ鵬・栃乃洋戦で、若ノ鵬(19)が寄り切って栃乃洋(34)に勝った際に、にらみつけた。これに対し貴乃花審判長は取組後に若ノ鵬を審判部に呼んで注意した。貴乃花審判長は「勝負だから熱くなるのは分かるが、お客さんの面前ですので」と注意した理由を説明。若ノ鵬は「気合が入って訳が分からなくなった。先輩に申し訳ない。後日謝る」と話した。(マイニチシンブン)

 【大相撲春場所・千秋楽】勝ち越しを決めた若ノ鵬が、取組後に審判部の注意を受けた。栃乃洋を寄り切り、土俵下に落ちた後に駄目押し。その勢いで栃乃洋がたまり席に倒れ込んだ。勝った後の見苦しい態度に貴乃花審判部副部長らが激怒。支度部屋にもどった若ノ鵬を審判部に呼び出し、厳しくしっ責した。貴乃花親方は報道陣に「あまり大げさにしないでください」と話していたが、若ノ鵬は「親方全員、みんなに謝った。かなり怒られた」と反省しきりだった。(スポニチ)

 若ノ鵬が一方的に攻めて、それが決まるかと思われたが、土俵際で栃乃洋が粘り、熱戦になった。最後、とうとう栃乃洋が土俵を割ってしまうのだが、勝負が決まってから栃乃洋が不快な顔をしていた。その理由がわからなかった。若ノ鵬は画面では背中だったからである。

 今日月曜の報道でこれを知った。さすが北オセチアから露鵬を慕ってきただけに、兄貴分の露鵬と同じく気性は激しいようだ。十九の新米なのに大先輩の栃乃洋を睨みつけていたのか。知らなかった。

 注意した貴乃花はえらい。こういうヤカラは、何度でもしつこく注意し、あらためるまで叱らねばならない。朝青龍が、「叱れない親方」のせいで、あんなふうになってしまった轍を踏まないためにも。

------------------------------

 あっさり風味のニッカンスポーツ

 朝青龍の天敵ニッカンスポーツは、4場所ぶりの朝青龍優勝にあっさり風味の記事。カメラマンに「死ね、コノヤロー」と言ったと一面で大騒ぎしたのとはぜんぜんちがう。まあそれもマスコミのありかたか。
 ただ、ネットのスポーツ紙をあれこれ見て、ニッカンスポーツが相撲報道には熱心なのは認める。たとえばスポニチなど、相撲記事の更新が遅めなのに対し、ニッカンはリアルタイムで取り組み速報までしている。相撲ファンとしてニッカンのこの姿勢はありがたい。
 そのスポニチですら、朝青龍復活に熱い長文の記事を書いている。だからこそ朝青龍優勝にみょうにあっさりなニッカンが目立った(笑)。

 朝青龍も、ニッカンスポーツは「キムチ野郎」のスポーツ紙だから、ウチダテマキコと同じく、天敵と意識していることだろう。




壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

inserted by FC2 system