平成二十年夏場所覚書 2008/5/11〜

 初日
 高見盛との時間

 今場所前は、なぜか高見盛がけっこうヴァラエティ番組に出ていた。かなり見ている。反応も早く、頭のよさを感じた。早くいいお嫁さんを迎えて欲しいひとだ。
 どんな質問も上手に交わし、的確なコメントをしていたが、恋人いない歴が「今までずっと」だそうで、そのことを問われたときだけ、珍しく露骨に嫌な顔をする(笑)。この辺も正直だ。

 毎場所高見盛と再会するたびに、「また今場所も遇えた」と思い、すぐに「いつまで遇えるのか」と思ってしまう。こんな貴重なひとはいない。代役がいない。高見盛の価値はいなくなってからあらためて見直されるだろう。
 と湿っぽいことを言わず、今いる彼を楽しまねば。

 今日は32歳の誕生日。残年ながら豪栄道に完敗した。
(後日註・誕生日は明日でした。31歳最後の日、が正しいです。)

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 琴欧洲、最高のスタート!

 休場明け、角番の琴欧洲が、電車道で若ノ鵬を押しだした。最高の一番である。これで気をよくして勝ち越して欲しい。勝ち越しを願うような低いレベルのひとではないのだが、今の不調を思うと、まずはそれを願う。

 琴欧洲や把瑠都を下にいるころから好きで応援しているのに対し、露鵬や若ノ鵬を好きになれないのは、そこから見える性格なのだろう。「相撲道」とまでは言わないが。

 でも「相撲道」からいちばん外れている朝青龍(笑)は、最初から好きだった。その差はなんだ? ああ、朝青龍は「逃げる相撲」はしなかった。さして大きくない体を躍動させ、全身で相撲を取っていた。彼は横綱としての品格や礼儀では失格だが、「闘争道」とでも呼ぶべきものがあったら、そこでは満点だ。私が、でかい躰で、「勝ちさえすればいい」と変化する露鵬や若ノ鵬が嫌いなのは、その辺に理由があるらしい。と自分分析。

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 把瑠都、完敗……よりも、魁皇、完勝!

 初顔合わせ。意外だ。把瑠都がケガをする前、上位にいたころは魁皇が休場で実現していなかったのか。
 把瑠都の完敗だったが、それよりも魁皇の巧さが光った一戦。
 魁皇に押しこまれたとき、アナが「把瑠都、右脚で残しています」と言った。左は踏んばりが効かない。というか、またケガをすることが恐いので、踏んばらないようにしているように見えた。この古傷の存在は痛い。

 それでも四月末の横審総見の映像では、把瑠都の強さは圧巻。楽しみは大きい。

 魁皇の巧さに翻弄され、負けても爽やかな笑顔だった。土俵を降りる際の礼も丁寧だ。
 さて今場所は何番勝てるか。

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 稀勢の里、完勝!

 私は朝青龍も好きだから、こんな下品な感想を持つことはめったにないのだが、今日の一番は「ざまーみろ!」と思った。立ちあいがまたチンピラのケンカのような、大嫌いな「張り差し」だったからである。あれは相手を怯ませる効果はあるが、前ミツを取ったり、差し手争いをすることに関しては一手遅れることになる。邪道だ。なにより品がない。いきなり相手の横っ面を張ってゆくのだ。すくなくとも横綱が常時使うものではないし、今までもそんな横綱はいなかった。モンゴル人力士の唯一大嫌いな点になる。

 気魄十分の稀勢の里は鋭い立ちあいをした。張り差しをして一呼吸遅れた朝青龍の浮いた態勢に一気にもぐりこみ、横綱は腰くだけのような完敗をした。

 ざまーみろ! である。張り差しなんて寝惚けたことを連発しているからこんなことになる。
 反省しろ。反省する能力があるなら、品のないあの下品な張り差しを反省しろ!

 「立ち合いが中途半端だった。負け方がよくない。すぐ、勝負にこだわるのがよくなかったね。あんなこと(倒れたこと)なかったけど…」。無残な敗戦に首をかしげながら、歯切れも悪かった。

 立ち合いでの右の張り手は不発。左を差されたところを強引に小手に振って、墓穴を掘った。しばらく土俵に座り込み、思わず舌をぺろりと出した。「自分のやったこと(小手投げ)が失敗しただけだよ」と、“自滅”を口にした。(サンスポより)



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白鵬おいっ子の前で白星発進/夏場所

<大相撲夏場所>◇初日◇11日◇東京・両国国技館

 2場所ぶりの賜杯奪回を狙う横綱白鵬(23=宮城野)は順調に白星スタートを切った。

 低い姿勢で踏み込んできた小結朝赤龍(26)を冷静に2度はたき、危なげない勝利。「いい立ち合いだった。相手が低いからどうしてもああいう風になるね」。花道奥では、出迎えた体験入門中のおいアラトオチルくん(15)と祝いのキスを交わした。「(おいが)来てくれたから勝ったということで。娘の誕生日もあったしね」と、10日に1歳になった長女愛美羽ちゃんへのプレゼントに胸を張っていた。(ニッカンスポーツ)


 花道の奧で少年を抱き締めてホッペにキスしていたので誰だろうと思ったら甥だったのか。
 二日目 朝青龍、強い!

 一昨年秋場所以来の対戦。把瑠都が横綱相手にどんな相撲を取るか楽しみだった。
 しかし仕切りを見ているときから勝てる感じはしなかった。というのは、朝青龍が鋼の塊なら、把瑠都はふわふわのパンのように見えたから。とにかく軽く見えた。あれはなんだろう。すぐにそれは現実になる。

 ぶつかって動きを止めた。低い態勢で組みあい、これからどういう流れになるかと期待したとき、把瑠都が宙を舞っていた。両前ミツを引きつけての下手捻り。強烈だ。別角度からのカメラだと、把瑠都の両足が宙に浮き、全身が風車のように回転しているのがよくわかった。強いわ。鉄とパンの比重の違いだ。ものがちがう。

 私の中で把瑠都の「怪物伝説」は完全に終ってしまった。でもそれは「相撲道」にとってはよいことだ。外国からやってきた大柄の怪力青年が簡単に天下を取っては今までの歴史がふいになる。いやあ、いい相撲を見せてもらった。
 朝青龍や白鵬に、その「外国からやってきた青年が簡単に天下を取った」というイメージはまったくない。これはやはりモンゴロイドの共通感覚なのだろう。

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 白鵬、充実一途!

 今日の白鵬は黒海に肩から烈しく当たり、あっと言う間に両差しになり、がぶるように寄り、さらには腰を低くして、万全の態勢で寄りきった。ケチのつけようがない完璧な相撲。
 烈しい当たりから両差しになり一気に寄ってゆくのは以前から出来た。だが最後で腰高になり、足が流れ、私の最も嫌いな「稀勢の里に負ける相撲」が白鵬の缺点だった。

 解説(小野川か?)が、「稽古場でも餘裕で勝っている。100%力を出さなくても勝てるようだ」と語っていた。充実一途なのだろう。いちばん安定して強くなる時期か。今日のような相撲を取っていれば全勝優勝のように思える。果たして今後どんな展開になるのか。

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 琴欧洲、安定

 琴欧洲が安定した相撲で旭天鵬に勝つ。二連勝。
 顔から覇気を感じないが、アナが「控室でも、インタヴュウしても、明るい」と言ったから、体調はいいのだろう。先場所、佐渡ケ嶽に休場を申しいれるときは「泣きそうだった」と佐渡ケ嶽が語っていた。「明るい」のは、膝の恢復が順調で調子がいいのだと信じたい。

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 龍二さん、逆転!

 稀勢の里に押しこまれ、片脚立ちの態勢から、反撃して押しだした。土俵上でもううれしそうな顔(笑)。でも笑ってはならない。笑いを噛み殺すというのはああいう顔のことだろう。よほど逆転勝利がうれしかったようだ。

 稀勢の里はヘンな相撲。完全な勝ちパターンになりながら決め手を闕き、懐に呼びこんでしまったような形。稀勢の里がだらしないのだが、勝負を諦めず反撃した千代大海を誉めるべきか。



 今場所前、千代大海が「平成教育委員会」のスペシャルだったか?に登場し、すばらしい勘のよさを見せていた。見直した。
 私はいわゆる難読漢字、あて字のようなものを当ててもまったくなにも感じない。むしろ最近そんなことばかりやっているクイズ番組にうんざりしている。
 千代大海が正解を連発していたのは、そういうものではなく、常識的な簡単な漢字なのだが、その組合せの妙のようなもので、山本モナや八田亜矢子が苦労しているのをすいすい答えていたのは見事だった。
 龍二さんは中学時代ワルなので勉強は不得手のはずなのだが、ひととしての頭はよいのだろう。本当に見直した。いや恥を掻くのではないかと心配していたのだ。すまん。

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 高見盛、誕生日に敗れる……

 高見盛の誕生日は今日12日だった。昨日は「31歳最後の日」ということだったらしい。
 今日も敗れてしまい、ひとりで誕生日を祝いますと言っていたとか。
 早くいいお嫁さんを。
 高見盛って角界に残るのだろうか。まだ名跡は取ってないよね? 東関親方の跡を継ぐのかな? どうにもこのひとを見ているだけで楽しいので、現役なのに、いなくなる日のことばかり思ってしまう。ネガティブ。

 三日目  把瑠都、いいとこなし

 今日は白鵬との対戦。昨日と同じくふわふわのパンに見える。勝てる気がしない。なぜこんな感覚を受けるのだろう。
 後ろ向きにされ、すそ払いで処理される。最初、決まり手は「切り返し」だった。そのときからアナがすそ払いを主張していたのは見事だ。

 魁皇、朝青龍、白鵬と三連敗はしかたないとして、それでも上位と当たるいい時間に見られるのがうれしい。復帰してきたときなど、急いでテレビを点けたが終っていた、なんてことも多かった。

 しかしあれだな、いまの把瑠都を、怪物として、「壊されるかも知れない」と怖れている上位力士はいないだろう。膝のケガで、ただの大きい人になってしまった。

 今日の白鵬との一戦も一昨年の秋場所以来。ふたりは同い年。横綱になってからの白鵬との対戦は初めてになる。この一年半のあいだに、最高位に登りつめ、結婚し、こどもも出来、充実一途の白鵬。膝のケガでエレベーターを繰りかえしていた把瑠都。
 これはひとの運なのか。それとも相撲の基礎の出来ていない白人の大男を連れてきて相撲を取らせたらこうなるという、起こるべくして起きた人災なのか。

 あれこれ考える。でもとにかくケガをせず、無事十五日間相撲を取ってくれ。

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 稀勢の里が大きくなってきた

 体重が順調に増えているようだ。貴乃花が曙や武蔵丸に力負けしないよう体を大きくしているときは、無理が見えたものだったが、稀勢の里にそれは感じない。自然に大きくなっているようだ。
 いまさら魁皇を負かしたぐらいでおどろく存在ではないが、確実に日本人ホープとして成長している。楽しみだ。

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 琴欧洲、順調

 あいかわらずさみしげな横顔だが、順当に雅山を突きだして三連勝。解説の尾車(琴風)も、調子がいいようだと言っていた。尾車が自分の出身部屋である佐渡ケ嶽部屋を誉めていたのは気分がいい。今の佐渡ケ嶽親方は尾車の弟弟子だ。先代(琴櫻)は名伯楽だったんだなとあらためて思う。

 昨日まで最高の相撲内容で二連勝の琴光喜が「今場所は期待できますね」とアナと尾車が声をそろえたら旭天鵬に完敗してしまった(笑)。尾車が指摘していたように、仕切りに手も着かず、「あまりの快勝の連続に浮ついていた」のかも知れない。でももうひとつ書いておきたいのは旭天鵬の強さ。懐が深いから、このひとは横綱相撲を取ることがある。今日なんかもそれで、たしかに琴光喜が浮ついた相撲を取ったのだが、それを見事に処理した旭天鵬の強さもまた際立っていた。

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 龍二さん、若ノ鵬に敗れる

 千代大海が若ノ鵬に負けてしまった。目に指が入ったようだ。若ノ鵬にいなし気味にされ、つっかい棒が外れた感じで龍二さん、自らこけていった。これを若ノ鵬の変化と言ったら気の毒か。
 私以外にも誰もが「若ノ鵬が変化するのではないか。それだけはやって欲しくない」と思っているようで笑える。アナも解説もみな口にしている。いまのところすなおに前に出ているのは好ましい。
 殊勲インタヴュウでは、ブツ切りの日本語。語尾が乱暴なガイジン特有のもの。まだ来日して二年。とんでもなく早い出世の北オセチア共和国の若者だ。
 私もあまり文句ばかり言わず、長い目でみてやろう。でも第一印象って当たるものだけど。

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 原因をさぐってみると

 今場所は五時から中入り後を見ているだけ。だからいまだに十両や前半戦のことを書いていない。相撲好きの私としては今場所の熱意度合は低い。燃えているときはBSで昼から見ていた。
 その原因を考えてみると、やはり先場所の決定戦での白鵬のだらしない負け方がある。その前は白鵬が出場していた横綱の誇りとして優勝し、その分、先場所は朝青龍優勝的な予定調和に対する反感なのだろう。こういう白けってのは大きい。先場所のあの優勝のかかった一番はいまだに納得できない。
 四日目  琴光喜対把瑠都

 おもしろい一戦だった。把瑠都が左上手を取って四つになった。まわしを取ると力が発揮できる。
 外国から来た相撲を憶えて数年の青年と、こどものときから相撲を取り、学生時代には史上二番目のタイトル獲得数を誇る相撲の虫の対決である。
 以前のこわいもの知らずの把瑠都なら、上手を取った時点で力任せに寄っていき、簡単に勝ったろう。それは解説陣も口をそろえていた。だがケガをしてからは怖くなり、じっと構えてしまう。ここからのやりとりがおもしろかった。
 琴光喜は腰を振り、上手を切り、態勢を低くして、頭を着け、ともてるかぎりの技術を発揮する。そこからの内無双で把瑠都をころがした。把瑠都も見様見真似の内無双をやるが、こちらのほうが本格的である。

 負けても「いやあ、強いなあ、勉強になったよ」という感じで、毎日さわやかな笑顔だった把瑠都から笑みが消えた。さすがに四連敗は堪えたのだろう。始めての経験だ。
 かといってどうしようもない。悩みの根は深い。挌闘技も心だ。

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 琴欧洲、四連勝

 琴欧洲が黒海を倒して四連勝。相撲ぶりから角番脱出はまちがいない。よかった。あとは優勝にからむ活躍まで期待したい。膝さえまともなら、このひとも問題は心だから、そこから一気に弾ける。

 敗れた黒海が足の親指をひっかける形で痛がっていた。控えからのレポートは、「琴欧洲らしいですね、もどってくるなり、相手のケガはだいじょうぶ、と尋いてきました」と好意的。琴欧洲のやさしい性格をよくあらわしている。こういう話を聞くと琴欧洲ファンであることが誇らしくなる。アナは「餘裕ですね」と応えていたが、餘裕の問題ではないだろう。ひととしてのありかただ。

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 若ノ鵬、惜しかった!

 また朝青龍がみっともない張り差し。稀勢の里に負けたのにちっとも反省していない。というか思うに、彼としてはもうケンカの手法として、思わず出てしまうのだろう。つまり内心の不安だ。チンピラのガンつけと同じである。やらずにはいられないのだ。

 それを利用してまともに当たった若ノ鵬が両まわしを取った。いい態勢で寄る。左に回りながらの小手投げで投げられ敗れたが、勝った朝青龍は首を捻る。なぜ稀勢の里戦から学ばないのか。

 私は朝青龍バッシングのときも一貫して朝青龍を庇う論陣を張ってきたが、しだいに彼のこのへんの姿勢が厭になりつつある。彼がどんな言行をしようと、強い力士として庇えるが、あのみっともない張り差しをして、それでつけこまれて負けるのでは触れる気にすらならない。
 若ノ鵬、惜しかった。今日ここで金星を挙げたら、朝青龍にも反省が生まれたかも知れない。惜しかった。
 若ノ鵬もまた、まっすぐ行く相撲で勝ったなら、相撲のおもしろさを知ったろう。

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 白鵬、左上手を取る!

 白鵬の理想の形は低い態勢から左上手を取った形だ。
 今日の解説は芝田山と玉垣。アナが白鵬に関し、「強さは出てませんが、勝っています」と言って、芝田山に振る。大乃國はすこし間をおき、「まあ、横綱は勝たねばなりませんから」と応じる。
 そうか? 私は今場所の白鵬の相撲は気に入っている。今日のアナは誰なのか、前記の琴欧洲に対する反応など、なんどかカチンと来ることがあった。続けてアナは、「左上手を取ると万全なのだが取れない」のような言いかたをした。たしかにあれが白鵬のいちばん強い形だと思うが、離れて取って相手にしなかった対把瑠都戦など白鵬の強さは際立っていた。どうもこのアナ、気に入らん。

 すると白鵬がまるでそれが聞こえたかのように素速く左上手を取り、豪快に旭天鵬を投げすてた。強い相撲である。ここまでの対旭天鵬は12対2。新入幕してモンゴルの先輩旭天鵬を越えるのは早かった。なぜか若の里に勝てなくて苦労したのが不思議だった。

 フジテレビの「報道2001」の黒岩がそうだが、アナは番組を自分のものと思うと傲慢な姿勢が目立つようになる。
 なんだかしらんけど今日のアナは、職分を越えて評論家気どりの面が見えて不快だった。

 五日目  把瑠都の体つき

 今日の解説は舞の海。痒いところに手が届くようになんでも解説してくれる。
 把瑠都に関して、「膝のリハビリをせねばならない」と、「稽古で力士らしい躰に」と言っていた。私が「ふわふわのパンのよう」と感じたのは気のせいではなく、把瑠都の躰は締まっていないのだろう。充実していればそれが見えるはずだ。
「ケガをして下位に落ちたりするのを見ていると、他の力士が『把瑠都って怖くないな』と思ってしまう」は私と同意見。今の把瑠都を怖れている上位力士はいないだろう。
 まあ、出なおしである。長い目で応援する。

 今日は千代大海の十八番、闘牙のような、押して、すぐ引く、みっともないエコ相撲。見事に引っ掛かって転げていた。今どき龍二さんのこれにここまできれいに引っ掛かるのも珍しい。足が躰についていっていない。

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 琴欧洲、本格的復活!

 琴欧洲がすばやく四つになって寄り、万全の相撲で勝つ。
 相手が曲者朝赤龍だけにいかにもなにかやりそう、琴欧洲が引っ掛かりそうだったが、力強く引きつけて、なにもさせなかった。
 足の運びが先場所とはぜんぜん違う。精神的な不安もあってか先場所のばた足はひどかった。完全に摺り足ではなくドタバタしていた。それが今場所は治っている。復活は本物のようだ。土俵上では笑顔は見せないが控えでは笑顔も見られるとのこと。楽しみだ。

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 白鵬、張り差し

 白鵬が琴奨菊に張り差し。見事に右手で相手の顔を張っている。いやな立ちあいだ。しかし踏みこみが早く、躰が前に出ている。そのまますばやく左上手を取って投げすてた。張り差しの理想的な勝ちパターンと言える。しかし下品であることに変りはない。

 アナが「白鵬は過去の名力士のDVDを見て研究している」と話を振ると、舞の海が「貴乃花と蹲踞が同じ。インタヴュウの応え方はイチローと同じ」と応えていた。イチローと同じは知らなかった。今度意識して見てみよう。


 朝青龍、張り差し

 同じく朝青龍、またも張り差し。これはもう考えぬいた戦法でもなんでもなくクセでもう右手が出るのだろう。だがこちらは白鵬と違い躰は前に出ていなかった。張り差しのマイナスである立ち遅れである。雅山チャンス。なのにこのひと、引いている。それで朝青龍は前に出られた。寄り切り。
 ここで雅山が張り差しの立ち遅れをついて勝つとよかったのだが、あそこで引いている力士にそんな期待をしても無理。

 毎日毎日横綱の張り差しを見せられて相撲を見る気力が萎えてきた。

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 稀勢の里、完勝

 稀勢の里が琴光喜相手に一方的な相撲。左の脇を締め、琴光喜にまわしを取らせない。そこから十分な形になり一気による。琴光喜懸命に防御したがもう無理。しかしまあ強い勝ちかた。舞の海が「朝青龍に勝ったときとまったく同じ勝ちかた」と言っていた。朝青龍は腰くだけになって転がされ、背中に土をつけたので違う形になったが、勝つまでの攻めこんだ形は同じか。これを身に着けると力になる。舞の海もそれを強調していた。いやいや完勝である。

 六日目  千田川の辛口──同調する錣山(笑)

 稀勢の里が張り差しで立った。相手は朝赤龍。それでも前に出ていたので、昨日の白鵬と同じように張り差しのマイナスはなかった。でも意味のない張り差し。
 朝赤龍が粘り、最後は投げの打ちあい。ぎりぎりの勝負を制した。終始、攻勢ではあったが、誉めるほどの相撲でもない。むしろ問題点が目立った。

 しかしアナは大はしゃぎ。「稀勢の里、十分の態勢です」に始まり、勝った瞬間は「場内の拍手の大きさが期待の大きさをあらわしています」とか、ひとりで昂奮していた。
 それに促された正面解説の錣山(寺尾)は、なんとなく同調する。つまらん。

 だが向こう正面の千田川はそうはゆかない(笑)。自分と同じく稀勢の里讚歌を言わせようと話を振ったアナに、開口一番「張り差しはいらなかったですね」と言い、アナをしらけさせる。
「張り差しをすると腰が軽くなるんですよ、あれはよけいでしたね。やる必要ないです」
 よくぞ言ったと拍手を送っていたら、ここから錣山が同調したので笑った。
「張り差しをすると相手に圧力が伝わりにくくなるんです。ですから私もどちらかというと千田川さんと同意見です」

 アナが稀勢の里を絶讃したときには、アナに賛成するかのようなあやふやな態度を取り、千田川の厳しい意見を得て、「じつは同意見」と言う錣山。でもアナにも気を遣って「どちらかと言えば」と遠慮気味(笑)。
 ここに、相手のことをおもんばかり、相手を真っ向から否定するようなことは言わない錣山の慎み深さ(一面の気弱)と、そんなことは気にせず、自分の意見を最優先する千田川の性格の差が出ている。
 友人として「いいひと」なのが錣山であることは論を待たない。だが「相撲の解説」としては断然千田川が優れている。そう痛感する出来事だった。



アナの獨善性

 どうにもこのアナの獨善というのは不快である。それはK−1や『PRIDE』などでも共通だ。
 たとえばK−1で「日本人代表」ということから異常に「武藏」を持ちあげたりする。「日本人最後の砦として、がんばれ、武藏!」のような感情を入れた実況だ。本人は日本人全部がそうだと思ってやっているのかも知れないが、武藏になんの思い入れもなく、すこしも強いと思わず、むしろ「日本人枠」で優遇されているだけの、不細工なやっちゃと思っているこちらからすると、その偏った実況は不快でしかない。

 相撲でも「日本人ヒーロー」が欲しいのはわかるが、NHKアナがそれに走る必要はない。K−1と相撲はまた違うのだから。
 だからこそアナに同調しない千田川の辛口は気持ちが良かった。まあ辛口でもなんでもなくごく平凡な意見なのだが、稀勢の里讚歌で熱狂している中でそれをいうと、そう聞こえてしまう。

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 琴欧洲、六連勝!──千田川の琴欧洲論

 千田川が、今場所の琴欧洲を「腰が落ちているからいい」と言い、「それだけで勝っている」と発展途上の評価。「これで腰を寄せられたら横綱です」と言いきった。わかりやすくてかっこいい解説だ。
 気弱になっているときの琴欧洲は「ケツが引けている」。なるほど、わかりやすい。ケツが引けてのばた足だ。それだと小さい力士もワザを仕掛けやすい。自ら相撲を小さくしている。それを「腰を落として」そこから「寄せてこられたら」もう小さい力士はなにも出来ないのだと千田川は言いきる。

 先場所の琴欧洲の目を覆うばかりの不調に、私は音羽山でも特別に助言してくれないかと願った。とにかくもうばた足でひどい状態だった。この間になにがあったのだろう、琴欧洲はがらっと変ってきた。膝の調子がよくなった以外にも、貴重なアドバイスを誰かから得た気がする。



 今日は把瑠都戦。対戦成績は1勝1敗。でも1勝は不戦勝。一昨年の初対決のとき、把瑠都は前々から琴欧洲との対戦を楽しみにし、その理由を「自分より背の高いひととやるのは初めてだから」と言っていた。そして簡単に琴欧洲越えを果たした。まったくあのころの把瑠都はノンストップで横綱かとすら思えた。
 相撲は一方的に琴欧洲だった。素速く左下手を取って寄ってゆく。それでも把瑠都は踏んばったが無理は出来ない。琴欧洲6連勝、把瑠都6連敗。
 この一番は私にとって今場所のハイライトだった。熱心に応援しているふたりの対戦である。私が応援しているふたりの力士が極端な成績となってしまった。しかし今の把瑠都は負けて当然だし、把瑠都の不調を嘆くより、琴欧洲の復活ほうがうれしい。
 残年なのは把瑠都の6連敗が、相手がみな横綱大関だからということ以前の問題であることだ。果たしてこの闇から脱出できるのか。

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 安馬はもう千代大海に負けないのではないか

 安馬が千代大海に正面から突っ張り、喉輪でせめ、押しだした。千代大海得意の引き技も、出せるタイミングがない。完勝である。
 錣山が「千代大海には引き技があるんですが、安馬は恐がらずに前に出てますね」と言っていた。安馬は千代の引き技にも堪えられる自信があるのだろう。安馬なら堪えられる。引っ掛からない。とすると、千代大海にはもう

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 白鵬の速い左上手

 今場所は私の大好きな「白鵬の低い位置からの左上手」が連発している。これこそが白鵬相撲の集大成であると確信している身にはたまらない。
 今日もそれが出た。若ノ鵬はあっと言う間に土俵を割った。腕が決まり加減になっていたと錣山が言っていた。若ノ鵬があっさり土俵を割ったのもそれだったろう。上手投げなのだが小手投げ気味に腕が決まると千代大海がやられたように腕を壊される。おそろしいまでの破壊力である。

 辛口千田川が「負けるイメージが湧かない」と言った。私も同意見。このままなら全勝優勝だろう。ライバルは朝赤龍だが、こちらは辛勝が続いている。今日も旭天鵬に結果的には完勝だが、一瞬四つになり、不利な態勢から頭をつけて巻きかえしている。内容的には必死とすら言える。対して白鵬は圧勝続きだ。

 なにがあるかわからないので、場所後の最終的な結果がどうなるかはわからないが、すくなくとも今日までの相撲で、白鵬は餘裕タップリの完勝続き、朝赤龍は必死で重ねる白星、とは言えそうだ。

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◆ 今日は横審の連中が観戦に来ていた。ウチダテオババの妖怪ぶりは遠目からも目立つ(笑)。

 七日目  稀勢の里、張り差しの負け!

 なんといっても今日いちばんの注目はこれ。互いにライヴァルと認めあってきた同期生の対決だ。対戦成績も8対6と拮抗している。

 まだ三番も前から、「もうすぐ両力士が入場してきます」と、アナも最大級の持ちあげ方をする。
 仕切りのときから緊張感が漂う。稀勢の里がタイミングをずらしている。これも戦略か。琴欧洲が、いかにも好青年らしく、ずらして苛立たせる稀勢の里に丁寧に付き合っている。

 結果はあっけなくついた。稀勢の里が張り差しをしたのだ。それも相手の背が高いから、上を向いてびんたをするような形になる。それが外れた。思いきり張った右手が空を切り、躰が横を向いた。左に動いていた琴欧洲が後ろまわしを取り、簡単に送りだした。

 両方とも好きな力士なのでどっちが勝ってもよかった。だけど張り差しをしたほうは負けた方がいい。その通りになった。気分のいい結果だった。
 懸命に考えた戦略の結論が張り差しという時点で稀勢の里は負けていた。

 今日のニッカンスポーツの記事。昨日の張り差しに対して北の湖理事長は、
張り差しの立ち合いは上体を高くするので、好ましくない。体を生かして頭からいけばいい。琴欧洲戦は面白い取組になりますよ」と言ったとか。
 その忠告が届いていなかったようだ。見事に状態が高くなり、それが裏目に出た。
 稀勢の里はもともと張り差しをするような力士ではない。こういうのも両横綱の多用により、一種の流行り技になっているのだろう。稀勢の里にだけはぜひやめてもらいたいものだ。

 琴欧洲、明日は魁皇戦。早いな、もう大関同士の対戦があるのか。
 全勝で勝ち越し、角番脱出だ。

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 把瑠都、初日

 把瑠都が旭天鵬を破って初日を出した。好きなふたりがこれで共に1勝6敗というのはつらい。
 今日の把瑠都は巻き返しを見せ、器用な一面を披露した。
 もう上位との対戦はすべて終っている。これから何番勝てるか。勝ち越しは厳しいか。

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 魁皇、突如復活!

 安馬相手に魁皇が圧倒的な強さを発揮。アナも北の富士も全盛期の魁皇が一瞬もどってきたようだと感嘆。安馬の右腕を決めるようにして一気にもっていった。
 明日の琴欧洲も安心は出来ない。

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 琴奨菊の変化、若ノ鵬の変化

 琴奨菊が苦手の千代大海に変化気味に突きおとして勝った。北の富士が「これから大関を狙う力士がこんな相撲では」と苦言を呈す。まあ、なんとしても勝ちたかったのだろう。千代大海もこれをやるから文句は言えない。
 変化技で負けるのはみな不本意らしく、下がるときに相手を睨みつけたりするが、それが先場所やっていた力士だったりするから、「おいおい、おまえにその資格はないだろう」と言いたくなる。

 若ノ鵬が安美錦をはたきこみで破った。これも変化技。横綱大関戦では封印していたが、ここに来て出してきた。でも安美錦も白鵬をそれで破ったりしているから文句は言えない。

 今日は、肩透かし、はたきこみ、突きおとしが連続した。みな正面からの力相撲ではない。北の富士が「こんな相撲が続くとつまらんね」と言っていたがごもっとも。
 八日目  思いつきでしゃべるターザン

 以下はターザン山本氏が御自身のブログで書いていたもの。昨日のこと。金がなく、外出も出来ず、ふてくされて珍しくテレビで相撲を見たらしい。

http://www.ibjcafe.com/talk/tarzan/b/2008/20080517120253.htm

 それからテレビで大相撲を見る。駅前のコンビニで50円のコロッケ二つとおにぎり2個を買って食べた。

 初めて気が付いたが相撲の土俵ってものすごく小さい空間だ。身長180センチ以上で体重150キロもある大男たちがなぜあんなきゅう屈な狭い土俵で勝敗を争っているのだ。

 土俵の外に出たら負け。土俵に足以外のものがついたら負け。ルールはそれだけなのだ。

 なるほどなあ。あの土俵は我々が生きている小さな宇宙そのものなのだ。わずか
半径4.5メートルの世界。(註・直径の間違い。

 土俵は丸い。太陽系とか地球の公転運動の軌道を象徴している。あるいは原子の原子核と電子の構造をイメージさす。

 すごいなあ、相撲って。そこに2人の人間がはいるというのも意味深なものがある。そこがまた一つのミソだ。



 こんな相撲を初めて見た中学生みたいなことを得意気に書きちらしているのに呆れる。半径と直径のまちがいに、いかに思いつきだけで書いているかが判る。が、以下の段になると相撲好きとして呆れてばかりもいられない。



 ところでこの日の取り組みはなぜか“はたき込み”が多かった。解説者の北の富士は「つまらないね・・・」と嘆いた。

 せこい。ずるい。楽をして勝とうとしているからだ。だからいいんじゃないの? 勝負はバカ正直にやっていたら負ける。

 そこには駆け引きしかないのだ。はたき込み最高。正直者はバカを見るなのだ。それが勝負の世界の非情さなのだ。

 相撲道なんて本当はフィクション。その美意識や美学はすべて人間が持っている俗っぽい感情と表裏一体なのだ。

 その表裏一体にこそ真実があるのだ。勝てば正義。誰もそれを批判する権利はない。しかし相撲は“相撲道”でないとジャンルとしてもたない。

 「道」という言葉ほど都合のいいものはないのだ。便利だなあ、まったく。「道」の思想なんて絵に描いた餅だよ(笑い)。

 じゃあ、それを見せてよと言いたくなってくる。はたき込みでいいのだ。はたき込み人生? けっこうじゃないか。


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 このひとはもうなんにでもクチバシを突っこむ。思いつき。こわいものなし。言いたい放題。
 しかしそれは己の底の浅さを見せるだけだ。
 相撲のことなど何も知らず、好きでもなく、見たこともないひとが、たまたまテレビで見ると、わかったふうなことを垂れながす。たまったものではない。

 いやそれは、ひとは何を言ってもいい。だが、このひとがかつてプロレスという限られた世界の中で闘ってきた人であるなら、「知りもしないことに言いたい放題するひとの不快」は知っているはずなのだ。彼がプロレス雑誌編集長時代、プロレスを知らないひとからこんなことを言われたら顔をまっ赤にして反撥したろう。

 その心を持っていたら、知りもしない相撲に、こんな「はたこきみ人生」なんて言えるはずがない。なんともたまらない気持ちになる。このひとにとってプロレスは「たまたま」だったのだろう。それはいま言われている。映写技師だった彼が『週刊ファイト』に関わるのも、そこからベースボールマガジン社に移るのも、たまたまの人生であり、彼がプロレス大好き青年でなかったことは白日の下にさらされている。

 この文章を読んでそれを実感する。真にプロレスが好きで、そこに関わって生きてきたなら、こんな無神経な文章が書けるはずがないのだ。

 このひとが思いつきで何を言っても苦笑するだけなのだが、どうにも相撲に関してわかったようなことを言われると不快になる。
 はたきこみ人生はけっこうじゃない!



【附記】

 2ちゃんねるのターザンスレにあった情報。2004年には以下のような意見(=今回とまったく逆のこと)を言っていたらしい。その日の気分で意見がころころ変るようだ。いやはやなんとも。相撲ファンとしてたまらん気持ちになる。

ひまなので大相撲春場所を見る。雅山、引き落とし。玉乃島、はたき込み。
相撲はつまらない。
あれは一種の手抜き相撲だ。相撲は様式美が売りものなんだろう。
それなのに力士は勝負にこだわって、駆け引きで勝とうとしている。
駆け引き相撲全盛だ。
様式美とは駆け引きを問答無用で拒否している世界のことなんだけどなあ。


http://www.ibjcafe.com/talk/tarzan/b/2004/20040323135900.htm

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安馬の見事なうっちゃり──張り差しのマイナス

 安馬が若ノ鵬を豪快にうっちゃり場内を沸かせた。うっちゃりというよりプロレスのサイドスープレックのような投げだった。これはすごかった。
 場内も大昂奮、アナも解説もゲストの杉良太郎も絶讃なのだが、終りよければすべてよしとは言えない。

 安馬は張り差しをしたのだ。自分より背の高い若ノ鵬に。よって一瞬棒立ちになる隙を衝かれ、一気に攻めこまれた。大逆転のうっちゃりで場内を沸かせたが、そもそも張り差しさえしなければあんなふうに攻めこまれることもなかった。対千代大海戦のようにまっすぐ前に出ればいいことだ。

 安馬もまたこの件に関しては張り差しを多用する嫌いなモンゴル人になる。



 どうやら先場所若ノ鵬に引かれて負けたのが悔しかったらしく、「相撲の厳しさを教えてやる」と燃えていたらしい。それが立ちあいの張り手になったようだが、あれがなければもっとよかった。しかしこのサイドスープレックスはよかった。理事長室で北の湖も昂奮し、「櫓投げか」と言ったとか。まあふつうの「うっちゃり」ではない。アナは「モンゴル相撲の技でしょうか」と言っていた。正解は本人から語られるだろう。

 負けた若ノ鵬が荒れくるい、その辺のものをぶち壊して手をケガしたとか。ロシア系は気が荒い(笑)。兄と慕う露鵬とおんなじ。

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 琴奨菊の固いまわし

 把瑠都が琴奨菊を掴まえようとするが、琴奨菊が「がぶって前に出る」ものだからまわしがつかめない。がぶり寄りではなく、その前の状態、いわば「休みなく腰を動かしている状態」である(笑)。
 把瑠都の指はまわしにかかるが、つかめない。それは休みなく琴奨菊が腰を振っているからであり、もうひとつは琴奨菊のまわしの締め込みがきついから。これは有名。

 でも固いまわしはいい。ゆるふんよりもずっといい。
 両方とも戦法だ。固いまわしは自分の腹を圧迫し苦しい思いをして絞める。相手に取らせまいとの自己犠牲の精神がある。
 対してゆるふんは、取られてもすぐにずれてしまい、効果を発揮させないための方法だ。ずるい。手抜きの戦法である。せっかくまわしを取ったのに、それがすぐに伸びきってしまい、腹の上にほうに来ているのを見ると腹が立つ。けっこう常習犯がいる。

 ビデオを見ると、まわしさえ取ればなんとかなると懸命に手を伸ばす把瑠都が、何度も手が掛かりつつも、琴奨菊がバイブレーターのように腰を振り(笑)、まわしが固いものだから取れないまま押しだされるのがよく見える。

 把瑠都、これで1勝7敗。出なおしの場所となった。
 しかし把瑠都の膝の具合はどうなのだろう。たしかに悪いのだろうが、それ以上に、もうケガが怖くて無理が出来ないという精神的な病のほうが大きいように感じる。

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 髭を剃って黒海、初日

 黒海が千代大海を破って初日。殊勲インタビュウ。だいぶ日本語がうまくなっている。
 髭が濃く、それでいて肌の弱い黒海は毎場所それで苦労している。
 昨日まで熊のようだったが(笑)、今日は髭を剃ってきた。それで初日。よかったね。

 そういえば高島俊男先生も、髭が丸まってしまうようなくせ毛?で、しかも肌が弱いので、いつも無精髭をうっすらと生やしているような状態でいると悩みを書いていた。その文章で印象的だったのは、「電気カミソリは刃のカミソリより肌に悪い」ということだった。ブラウンの最高級シェーバーでこまめに剃れば黒海の濃い髭も問題ないと思うのだけれど、そういうものでもないのだろう。

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 琴欧洲、全勝で角番脱出!

 昨日魁皇が全盛期並の強さを発揮したので、琴欧洲も苦労するかと思えたが、楽々と完勝だった。
 膝がまともになり、心の悩みさえふっきれれば、このひとの身体能力はずば抜けている。
 今場所はさして燃える場所でもないが、とにかく琴欧洲が復活したことだけは嬉しい。

 幕内勝ち越し第一号としてのインタヴュウを期待したが、勝ち残りでもあり、時間の関係でそれがなかったのが残念である。

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 朝青龍、今日も張り差し

 今日も張り差し。ほんとにもうチンピラのケンカである。確実に隙は出来ているのだが、それに時天空が乗じることが出来ず敗れた。「張り差しをしてくる」と読みきって勝負すればいくらでも勝機はあるだろうに。

 私はこのことだけで朝青龍が嫌いになりそうである。ここのところもうこのひとの相撲を見たくない。

【附記】 御満悦
 翌日のスポーツ紙によると「うまく一発はいったので両差しになれた」と張り手の効果に御満悦のよう。こりゃなくなるどころか益々連日連続しそう。不快。

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 白鵬、稀勢の里を寄せつけず

 今日の白鵬は肩から当たるいい立ちあい。下手投げで放り捨てた。
 とにかく対稀勢の里戦では、「勝っている相撲を詰めが甘く負けた」というのを何番も見ているので、いつも気になる。だがもうその心配は無用のようだ。稀勢の里の乾坤一擲の勝負により敗れることはあろうが、以前のような私が不快になるだらしない負けかたはしないだろう。

 スポーツ紙の記事にあったが、白鵬は金星配給に関してはえらいらしい。つまり負けるとしても三役以上で、平幕に負けての金星配給がほとんどないとか。言われてみるとそうなのかと気づく。
 安馬、琴奨菊、安美錦、それに朝青龍か。最強横綱としての完成を願う私からすると物足りないが、記録的には立派な横綱のようだ。
 今場所はぜひこのまま全勝優勝して欲しい。

 でなきゃ琴欧洲の初優勝がいい。張り差しの朝青龍だけは避けて欲しい。
 九日目  把瑠都、負けこし

 把瑠都が若ノ鵬に負けて負けこした。1勝8敗。
 ケガに関係なく初めて幕内で負けこしたのは先々場所の7勝8敗が初めてだった。しかしそのあと奮起して、先場所は12勝3敗の準優勝の成績を上げている。
 そして今場所のこの結果である。それをどう解釈すべきなのか。

 把瑠都は負けが込んでも、土俵を降りるとき、いつも丁寧に礼をする。気持ちがいい。
 こういうひとを応援したい。



 負けこしはしかたないが、若ノ鵬には勝って欲しかった。負けこしを記録した相手が若ノ鵬というのが悔しい。しかも内容はいいとこなしの完敗である。



 向こう正面解説は把瑠都の師匠の尾上(濱ノ嶋)。まるで把瑠都の不調と連動するかのように解説にキレがない。把瑠都の問題点、今後に関してはしかたないとしても、その他なにを聞かれても曖昧でつまらない。解説者失格である。以前のときはそう思わなかったから、彼なりに悩みは深いのだろう。しかしそれならなぜこの日にNHKは解説に呼んだのか。尾上が来る必然性はまったくない。

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 琴欧洲、完勝9連勝!

 すばやく左下手を取り、文句なしの快勝。解説の九重(千代の富士)も、「こういう相撲を取られたらどうしようもない」と絶讃。

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 白鵬、万全

 左上手で素速く前ミツを取り、その時点で寄りながら圧力をかけている。最高の相撲。
 全勝優勝の予感。

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 朝青龍、御約束の立ちあい

 はいはい、今日も出ましたよ、張り差し。もう立ち上がるときには右手を出して相手の顔を張らないといられないんだろうな。もうどうでもいいや。なにをやられても安馬は朝青龍には通用しないようだ。

 白鵬と琴欧洲のどちらかに優勝してもらいたい。この張り差し横綱はもういやだ。

 十日目

  白鵬また安馬にやられた痛い黒星/夏場所

<大相撲夏場所>◇10日目◇20日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(23=宮城野)が、またしても天敵に土をつけられた。昨年秋場所から3連敗した関脇安馬(24)相手に攻め急いで墓穴を掘り、投げの打ち合いの末に敗れて初黒星。土俵下に落ちた際には左足首をひねり、つけ人の肩を借りて引き揚げるなど、終盤戦に不安を残す1敗となった。ニッカンスポーツ

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 隙のない今場所の白鵬が敗れるとしたらどんなパターンなのだろうと想像したが浮かばない。安美錦の変化に敗れたときのようなとんでもない奇襲でもないかぎり、まず負けないだろう。
 と思っていたら安美錦に投げられ、完敗した。敗因はあわてたからだ。ニッカンの記事の続き。

 3日目の夜。横浜市にある興禅寺の市川智彬住職(67)と会食した。06年には座禅を経験し、精神面のアドバイスを受ける住職に「小さくて速い者に慌てることがある」と打ち明けた。「焦りが墓穴を掘ることがある。横綱はバタバタしないで、威風堂々とすればいい」。金言を与えられた直後だったが、落とし穴があった。

 あわててバタバタしての敗因だが、バタバタさせるだけの動きをする安馬も称えねばなるまい。朝青龍に対しての安馬は、弟分としして他部屋所属なのにモンゴルまで迎えに行ったりする。兄貴分なのだろう。同期生で、父親の実績からエリートである白鵬に対するライヴァル心は強いようだ。
 白鵬もまた朝青龍から弟分としてかわいがられていた。朝青龍も才能のある後輩はかわいいだろうし、勘繰るなら、手なづけておくべきとの考えもあったろう。私は仲の良すぎる朝青龍と白鵬があまり好きではなかった。というのは、このころ(白鵬はまだ平幕)から、本場所で負けた白鵬が大相撲トーナメントや慈善相撲のようなイベントで朝青龍を破ることがあり、そこに「談合」のにおいを嗅いだからである。

 看板である東西の横綱になってそれはもうなくなったかというとそんなことはなく、謹慎明けの朝青龍を破って白鵬が優勝したあと、大相撲トーナメントでは、白鵬は早めに消え、朝青龍が優勝して新記録の三連覇を達成している。みのもんたに祝福されて朝青龍大はしゃぎ。
「休んでいた横綱に優勝させるわけには行かない」と言い、見事に本場所で優勝した白鵬なら、ここも勝つべきだ。本場所は自分だったので、こちらは朝青龍、という、どうもこの辺、「談合」に思われてならない。
 実際花相撲であるこのトーナメントには、旭鷲山が貴ノ浪に勝ちを譲るよう持ち掛けたとか、焦臭い話が付きまとう。



 と、脱線してしまったが、これも前から書きたかった話。
 とにかく全勝優勝をして欲しかったので、ここでの1敗でだいぶ白けたのは事実。

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 朝青龍、また張り差しの立ちあい

 はいはい、もういいです。書きたくありません。

 朝青龍500勝、史上4番目

 同じ日に出島も「幕内500勝」を達成したのだが横綱と被り霞んでしまった。

 これは翌日の新聞を読んで書いているのだが、朝青龍の500勝は45場所で達成。めちゃくちゃ早い。新入幕から常に11勝以上を挙げてやっとたどりつく数字である。
 なのに「大鵬、北の湖、貴乃花に続いて史上4番目」なのだとか。彼らはもっと早かったのだ。あらためてそのすごさを知る。

 朝青龍は優勝回数で貴乃花を抜き、北の湖も抜くだろう。25回はいけそうだ。すると大鵬、千代の富士についで史上三番目か。千代の富士の31回はどうだろう。今のままならまだ27歳だから充分届くが、琴欧洲が本格化して横綱になってきたら、白鵬、琴欧洲に囲まれてむずかしくなってくる。

 ウチダテオババの上手な皮肉(笑)──朝青龍選手(笑)

 オババが朝青龍と琴欧洲の一番に対する意見を聞かれ、「朝青龍選手と琴欧洲関の対戦ですからお相撲さんにいい相撲を取ってほしい」と迷セリフ(笑)。
 これは「(朝青龍を)運動選手としては最高に尊敬するが、力士とは思っていない」の発言に基づくもの。なかなかうまいと思った(笑)。

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 琴欧洲、10連勝!

 鶴竜を破って10連勝。忘れていたが、先場所左腕を痛め休場になったのは鶴竜との一番が原因とか。そうだったか。きっちり先場所の借りを返したことになる。
 自分の感覚だけで書かず、スポーツ紙の記事も確認しつつ書くべきと反省した。
 いよいよ明日は朝青龍との一番。がんばれカロヤン。

 十一日目  琴欧洲、朝青龍に完勝!

 出先なので相撲中継が見られない。だがそのために持っているワンセグケイタイだ。朝からもうその時間にはケイタイで相撲を見るのだと決めていた。

 夕方。電車の中でその時間になった。ところが東京と埼玉の境目辺りだからかやたら映りが悪い。ビルと擦れちがったりすると電波が跡切れる。エリアを東京23区したり、埼玉の秩父に切り替えたりするがうまく映らない。電車の中では無理と判断した。

 途中下車する。新興住宅地の田舎駅。込んでいる時間に並んで得た座席だが、それどころじゃない。
 すると駅のホームでも無理だ。建物の中では映らない。光のはいっているところを求め、ホームの最先端まで歩く。フェンスのあるギリギリまで来た。ここでやっと、なんとか、映る。電車が止まる。目の前が最前部。運転手と目が合う。彼はホームの端でケイタイのアンテナを右に左に動かしつつ画面を凝視する私を不振げに見た。まあ好きじゃないひとから見たら、異様に映るだろう。



 そこで見た琴欧洲対朝青龍。右上手を取り、投げて崩す。左下手も取り、強烈に引きつけて寄ると、朝青龍はなにも出来なかった。完勝である。ケイタイのちいさい画面を見ながら、「よし! よし!」と何度もこぶしをにぎった(笑)。こんなのいつ以来だろう。

 琴欧洲が大事な一番で勝ったのが嬉しい。もしもここまで五分の星のような立場で勝ったとしても、私の「よし!」は出なかった。それは単なる大関が横綱に勝った1勝でしかない。昨年夏場所の勝ち星がそれに当たる。ひさびさに琴欧洲が勝ったが、それは不振の横綱にひさしぶりに大関が勝ったに過ぎなかった。(本人はガッツポーズをして大喜びだったとか。それはもうあの朝青龍に勝ったのだからうれしいだろうけど。)



 帰ってくる琴欧洲にいい笑顔が出た。こんな笑顔を見たのは今場所初めてだ。そりゃあよい成績だから控えでは御機嫌だったようだが、人前では見せなかった。さすがにこれは彼にとっても嬉しい勝ち星だったのだろう。満面の笑みだ。アナも「おっと、笑顔が見えます」と伝えていた。
 スッと出て握手し、すぐに消えたのは佐渡ケ嶽親方の琴ノ若。花道の奧で土俵を見まもっていたのがわかる。テレビに映ったのは2秒程度だろうがいいシーンだった。
 迷いの森を流離う琴欧洲が立ちなおるために、琴ノ若よ、なにかいいアドバイスはないのかと念じていただけに、先場所のあのばた足が止まり、見事に立ちなおった今場所は信じがたいほどである。いったいなにがあったのか。場所後の相撲雑誌が楽しみだ。



 さあ明日は白鵬戦。今場所最大の一番だ。ここで勝ったほうが優勝だろう。琴欧洲は勝てば一気に初優勝、そしていきなり全勝優勝が見えてくる。叶えて欲しい。見たい。琴欧洲の全勝優勝。しかし白鵬は全力を出せる状態になった琴欧洲へも、唯一正面から対抗できる力士だ。
 もしも白鵬が勝っても、琴欧洲がそのまま行けば優勝できる。白鵬は千秋楽で朝青龍を破って、やっと優勝決定戦。琴欧洲有利は動かない。これでもし朝青龍に敗れていて、ここで白鵬にも負けたら琴欧洲は一気に三番手まで後退するところだった。
 白鵬に勝つにせよ負けるにせよ、朝青龍に勝って臨むのと負けて臨むのでは心意気が違う。受ける白鵬もまた同じ。朝青龍戦の勝利の価値は大きい。

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 把瑠都、今場所初の怪物相撲

 朝赤龍と四つになる。肩ごしの右上手を取る。ここでは流れた四つの形。
 そこから把瑠都が力を入れ、引きよせる。ウインチにスイッチが入り、引きよせに入ったよう。万力の吸引力。この怪力に逆らえるひとはいない。あの曲者朝赤龍が、おとなに抱えこまれたこどものようになり、なにも出来ずかんたんに土俵を割った。把瑠都の怪物相撲。ひさびさに見た。うれしいなあ。やっぱり、とんでもないひとなんだよな。今場所はいいとこなしで負けこしているけど、この一番を見られただけでもいいや。

 グルジア出身の栃ノ心を応援していたのだが、負けたとき、ふてくされたような態度で下がることが多い。やはりロシア系か。把瑠都よりも露鵬に近い。かなりいま、引いている。

 外人力士なのに丁寧なお辞儀をする把瑠都はいい。

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 千代大海、負けこし

 来場所はまた角番か。大関在位最多記録を毎場所更新している千代大海にも、確実に引退がせまっている。以前はこのひとの押しては引く相撲を毛嫌いしていたのだが、なんだかこのごろ魁皇と同じく「いるだけでいい」存在になってきた。来場所もまたうまくしのぐのだろうか。



 大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花の一代年寄りを送られた四人(千代の富士は辞退。でもそう解釈すべきとの相撲協会の公式見解)のなかで、弟子を大関にまでしたのは千代の富士が唯一。いろんな面で評判が悪く人格的に見るべきところのない千代の富士の勲章。
 これから北の湖部屋から横綱大関が出るとは思えない。貴乃花には可能性はあるがどうだろう。幕下すらまだ育っていない。

 とすると、千代大海は師匠のために、すごいプレゼントをしていることになる。
 意外に千代大海、いい親方になったりして……。

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 琴光喜、勇み足

 琴光喜が勇み足で負けた。それを見ていた行司はさすがと思った。
 これだけ熱心に見ている。貴重な映像(笑)。


 十二日目  琴欧洲のブログ

 琴欧洲がブログを開設することはだいぶ前から話題になっていた。「外国人力士、初めてのブログ」ということで。代理人ではなく自分でやるつもりらしく、漢字も入れたいと語っていた。
 そしてそれはなんとタイミング良く「五月場所が終ってから」になっていた。
 いま最初に書きこまれる漢字は「優勝」ではないかと盛りあがっている。

http://kotooshu.aspota.jp/

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 垣添の張り差し自滅

 背の低い垣添がなぜか高見盛に張り差しで向かい、そんなものにはひるまない高見盛に簡単にやっつけられた。
 北の富士が苦言を呈す。なぜ垣添が張り差しなどするのかと。高見盛はいつでもひたむきに自分の相撲を取る力士だから、あのようなことをしても効果はない。無謀だと。
 北の富士とアナで、高見盛が人気があるのは、決してあのパフォーマンスだけではないのだとひとしきり誉める。
 張り差し垣添が自滅し、高見盛が誉められて私はすこぶる機嫌がいい。
 それにしても垣添はなぜあんな「もろに横っ面を張る」ような張り手をしたのだろう。高見盛人気に嫉妬してか? 先日高見盛に勝った安美錦は、それらしきことを口にしていた。つまり、高見盛のパフォーマンスに苛立っていて、露骨にやっつけてやろうと思ったと。安美錦は見事にそれが出来たが垣添は失敗したことになる。
 まあ理由はひとそれぞれだが、張り差し自滅は気分がいい。今日もモンゴル人横綱は張り差しかな(笑)。

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 把瑠都、心配させないでくれ……

 把瑠都と雅山の対戦。ふたり同時に転げる相撲だったが、またも把瑠都が脚を投げだすようなへんな転び方。またも大怪我かと背筋が寒くなった。
 さいわいにもそれはなく、ふつうに立ち上がったので安心した。自分の勝ちに自信があったのか、把瑠都は、もの言いはつかないかと未練げに審判員を見まわしていた。しかしこれはビデオを見るまでもなく、あきらかに把瑠都が早く手をついていた。

 なんかおかしい。なんであんな倒れかたをするのか。外人力士は相撲の受身がわかっていないとはいえ、あれは把瑠都特有の現象だ。尾上(濱ノ嶋)はどんな指導をしているのだろう。気になる。

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 安美錦の巧さ

 栃乃洋の「黄金の左」をうまくうまく封じこめ、なにもさせずに勝っていた。巧いなあ。
 関脇の地位を守っていた安美錦にさほどの強さは感じなかった。朝青龍を破ったりもしているが、基本的に上には敵わず、確実に下を射とめて地位を保っていた。上を破るが下に負けてしまう安馬と大将的だった。それが下にも負けたからここ(前頭4枚目)まで落ちた。

 ところがここにくるとぜんぜん違う。番付とはこんなにも違うものなのだろうか。
 今場所は格下に稽古をつけてやっているように簡単にあしらう一番がいくつかあった。
 やはり三役格のひとなのだと納得した。
 今日勝ち越した。上がみな負け越しているから、来場所は豊ノ島と並んで前頭筆頭か。関脇小結の座は空きそうにない。いや朝赤龍が負け越しそうだ。安美錦、豊ノ島の星がいいほうが小結になれる。

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 稀勢の里、若ノ鵬に敗れる

 若ノ鵬が張り手。不快な立ちあい。それに稀勢の里が負けてしまった。悔しい。ああいう腰高な張り手など無意味だと教えて欲しかったのだが……。でも稀勢の里もそれをやったりするから同じか。
 モンゴル人力士による張り差し流行はいくつもの影を落としている。

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 砂かぶりの金髪の娘

 砂かぶりに金髪の娘がいた。十五歳ぐらいか。琴欧洲戦にそなえて座った白鵬の右肩の向こうに映っている。どういうひとなのだろう。どういうコネなのだろう。誰の縁者なのだろう。

 その娘が美少女で興味を引かれた、というようなことではない。
 私はコネがなく非力だったので、大の相撲ファンである父に砂かぶりで見せてやることが出来なかった。今も悔やまれる出来なかった親孝行になる。
 だから以前も書いたが、砂かぶりという特別席にいながら、相撲など見ずにケイタイでしゃべりまくっている男とか、今日のような異国の娘を見ると、自分の不甲斐なさを思いつつ、気になってしまう。

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 はいはい、張り手横綱、今日も負けました(笑)

 今日も張り差しのバカ横綱。それを右に変りつつ交わした龍二さんが軽々と料理。お腹を天井に向けての一回転。不様。
 飛んだ座蒲団もほんの数枚(笑)。琴欧洲初優勝と白鵬に注目する館内では忘れられた存在。
 憎まれるほど強いから「不人気という名の人気」を得ていた。ワイドショーの報道も多かった。だらしない相撲で自滅していたら話題になることすらない。なにしろ品格、人格、行動、発言、なにひとついいところはないのだから。
 私のように朝青龍を嫌うマスメディアに対抗して庇ってきたファンを相撲内容で呆れさせたらもう終り。死ぬまで張り差しやってろ、ボケ!

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 わからないテーピング

 前々から思っていることなのだが、力士のあのテーピングがわからない。むろんひどい古傷を庇うために、グリグリ捲きにしているのはわかる。そういうのではなくほんのすこしのテーピングだ。いやテーピングとすら呼べない張り物についてである。

 たとえば今日の朝青龍。脇から後ろにかけて、腰の辺りに幅10センチ、長さ50センチぐらいの肌色のテープを貼っている。そのことに何の意味があるのか? 私にはあれだけの体格のひとがそれっぽっちのテープを貼っても、あの烈しい戦いになにかの効能があるとは思えない。
 もしも私なら、控室では痛みを取るためにミイラのようにテープを捲いていたとしても、土俵に上がる前には外してゆく。たったあれっぽっちのテープをわざとらしく貼ってくる感覚がわからない。
 貴乃花にはその美意識があり、極力サポーターのようなものを嫌った。力士の躰に白いものがあると興醒めだ。
 もっとも朝青龍は、黒いサポーターを捲いてきて物議をかもした人だから、そんな美意識などあるはずもない。



 プロレスでも同じ事を思った。鶴田がテーピングが好きだった。
 だがプロレスの場合は、そこに痛みがあると客にアピールする意味もあるし、そのテーピングを剥がされて攻撃され悲鳴を上げるのも御約束のひとつだ。
 ただ鶴田の場合は、「自分はここをこんなに傷めている。でもリングに立つのだ」という気持ちをファンにわかってもらいたいという甘えがあったように思う。
 なぜか今回の朝青龍にも同じ甘えを感じた。「もう2敗しちゃって優勝戦線から一歩引いてるけど、おれってあちこち痛いんだよ」という。

 ま、張り差しバカのことはどうでもいいや。


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 琴欧洲、勝ったあ!

 左に変り気味に長いリーチで左上手を取る。上手で白鵬を振りつつ、右下手も取った。あとは休むことなく攻める。寄る。さすがの白鵬も防戦一方。こらえきれず土俵を割った。
 笑みがこぼれる。うれしいのだろう。

 中継されているブルガリアではどんなに盛りあがったことか。ここのところの不振で御両親も心配していたろう。これはもう町中たいへんな盛りあがりのはず。場所後、どこかが必ずレポートをする。なんとしても見たい。もしかしたら朝のワイドショーでもうどこかがやっているか。チェックしないと。優勝が確定したら必ず現地レポートをやるはずだから(つまりもうスタッフは飛んでいる)見のがさないようにしないと。



 優勝は出来る。いや今まで出来なかったけど、そのうち出来ることだ。風が吹けば、12勝3敗とかそんな成績で。横綱が自滅とか休場に助けられて。魁皇や栃東の優勝のように。
 そんなもんじゃない。元気な両横綱を力で圧倒しての優勝だ。価値が違う。これからの心理的影響が違う。やってくれるな、カロヤン。

 十両当時から人後に落ちない白鵬ファンだった。同じく琴欧洲も当時からの大ファンだ。
 今日は迷わずに琴欧洲を応援し、勝ったときも拍手を送っていた。その心理的背景は、すでに白鵬が日の下開山ということもあるが、どうもモンゴル人横綱同士の「談合」に対する不快が尾を引いているように思う。張り差しへの反感もある。そして、なんといっても琴欧洲の人柄だ。これが露鵬だったら(笑)まちがっても応援などしない。
 水は流れなければ腐る。モンゴル人同士だと腐りやすい。その中に琴欧洲がはいったほうがいいに決まっている。

 琴欧洲の大きな相撲がちいさくなっていた。それがまた大きくなって帰ってきた。これほどうれしいことはない。

 場内警備係の佐渡ケ嶽親方と笑顔で瞬間的な握手。そのあとのペコンというお辞儀がいい。いい師弟関係だ。あらためてまた朝青龍の不幸な師弟関係を思う。



 さてもう課題は全勝優勝のみ。
 明日は安美錦。日本人らしい巧さが凝縮している力士だ。昨年も琴欧洲に大きく勝ち越している。最初は琴欧洲だった。並外れたパワーに安美錦は為すすべもなかった。ところがうまく攻略法を見出して、逆にカモにするようになる。

 琴欧洲不振の原因は「相撲がちいさくなった」であり、さらにその原因は「相手の相撲に合わせている」だった。その典型例がこの安美錦戦。安美錦の相撲に合わせて「巧さ比べ」をしても敵うはずがない。しかしまた初対戦のころのように「琴欧洲の相撲」を取れば、安美錦の巧さは木っ端微塵のはず。

 安美錦も対戦成績と内容から自信があるようで不敵な笑みを浮かべている。これまた見のがせない一戦になる。
 そのあとは安馬。これまた気が抜けない。千秋楽は千代大海。これまた(笑)。なにしろやらなくてもいいことをやるのが龍二さんだ。今日も北の富士が朝青龍批判をしつつも、まあ今日は勝つだろうけどと、千代大海には失礼な安全牌宣言をしたら勝った(笑)。だから琴欧洲も油断は出来ない。

 あの強い両横綱を破ったのだ。どうか取りこぼしをせず全勝優勝して欲しい。その自信はとんでもないものになるはずだ。
 優勝はほぼ確定したが、まだまだ気の抜けない日々が続く。それは大相撲にとってはよいことだ。でもきっとにわかファンには、両横綱を倒したのに、安美錦、安馬に油断がならない、緊張が続く、という感覚はわかってもらえないだろう。その辺が相撲ファンの楽しみになる。

 十三日目  「とくダネ!」がやっていた

 フジテレビの朝のワイドショー「とくダネ!」が、琴欧洲特集をやっていたのを知る。今日で3回目だった。見のがした。失敗した。
 肥ることを拒んでいた琴欧洲が、今場所前は「チーズ掛け御飯」を何杯も食べたりして体重を増やしたという話はスポーツ紙でも書いていたこと。それらが映像つきで見られたのを見のがした。これは悔やまれる。

 そういやここのところずっと朝のワイドショーを見ていなかった。私がそれを見るのは政治が主になる。その政治的テーマに見たいものがなかったことから離れていた。琴欧洲絶好調に、すこしはアンテナを伸ばすべきだったと反省。

 やるとしたら相撲好きのオヅラかみのだった。でもみのは朝青龍贔屓だし、正統な相撲好きとしてはオヅラのほうが本物。それに番組も、スタッフの作った流れに乗っているだけのみのと違い、オヅラはかなり自分の色(好み、趣味)を出そうとする。見のがしたのは悔やまれる。

 だが全勝優勝すれば、まちがいなくブルガリアの様子なども報道されるはずだ。日曜の夜の琴欧洲生出演と、月曜のその辺の特集は見のがさないようにしないと。

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 稀勢の里の張り差し

 稀勢の里が張り差しの立ちあい。無意味。なんでこんなことをするのか。やはりモンゴル人力士が流行らせた流行なのだろう。なんとか鶴竜を寄りきって勝ち越す。
 向こう正面解説の境川(両国)が、「稀勢の里にはこんなことはして欲しくない」と苦言。

 誰が解説に来ても、どの親方もみなこの下品な張り差しの流行には否定的なのが救われる。しかし稀勢の里が使ったように、現場にいる人間は両横綱が多用するのだからやってみたくなるのだろう。

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 把瑠都のお辞儀

 把瑠都が黒海に敗れて10敗目。それでも丁寧にお辞儀をしてさがった。このひとの心がわかる。来場所は態度の悪い若ノ鵬に番付も逆転される。しかも若ノ鵬はなんとか今日も踏んばって負け越さなかった。
 とにかく覇気のない相撲になっている。どこから立ち直せばいいのか。

 2ちゃんねるの把瑠都応援相撲板には、琴欧洲が体重を増やして好調なことから、「体重を増やせ」とあった。それはちがう。ふとるのは良くない。中身だろう。私が「パンのよう」と感じたのが問題だ。身を引き締めろ。どんな稽古をしているのやら。

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 なんというくだらない日

 琴欧洲、一歩も足が出ず、安美錦に一方的に押しだされる。なんじゃこりゃ。
 音羽山(貴ノ浪)が言っていたが、「まわしを取りに行く必要はない」だろう。「取らせて胸を合わせる」ぐらいでいいのだとか。苦手意識があるのに、先場所の悪い相撲にもどっていた。両横綱を破った殊勲が御破算。どっちらけ。
 これで明日、また苦手の安馬に負けたら優勝のゆくえが判るなくなる。と思ったら。

 左手で張り差し立ちあいの白鵬、琴光喜に完敗。いつまでもそうして張り差しをやってろ、ボケ。これで3連敗。だめだなあ、まだまだ。

 魁皇、朝青龍を上手投げでぶん投げる。張り差しばかり毎日やってるからだ(笑)。(今日はやらなかったが。)落ち目だな、朝青龍。強いだけが取り得なんだ。強さがなくなったらただの嫌われ者なんだ。そこをよく理解しろよ。

 いやあくだらんくだらん。昨日が千秋楽ならよかったのにな。

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 昨日の朝青龍対千代大海のコメント

 昨日の朝青龍対千代大海に関する千代大海のコメント。『スポニチ』より。

不調の千代大海が2敗で優勝争いに踏みとどまっていた朝青龍を突き落としで破り、波乱の主役を演じた。左に変化する注文相撲でなりふり構わず勝ちにいった。
張り差しがくるんで早めに動いた。右から強引に(突き落としに)いけたかな」。
来場所は史上最多の通算12度目のカド番が決まっているが、師匠の九重親方(元横綱・千代の富士)から「みっともない相撲は取るな」とゲキを飛ばされ、大関の意地を見せた。


 やはり「張り差しに来ることを見ぬいての対応」だった。千代大海の頭脳の勝利である。これに対して朝青龍は、《「汚ねえよ、あいつ。びっくりした」と吐き捨てた》とか。自分のおろかさに気づいていない。だめだこりゃ。
 十四日目  琴欧洲、優勝!

 朝から動いていた。友人のIさんのために。
 ケイタイがあるので、肝腎の何番かは見られると思っていた。

 用事が済み、Iさんが得意の川口オートに行く。開催は船橋。ここは場外。しかしまあコアな場。私は異邦人。新鮮な気分。

 レースが終る。降りだした大粒の雨の中を、歩いてIさんの家へ。
 そこで琴欧洲の勝つ場面、客席のおとうさんが喜ぶ場面をかろうじて見られた。
 それが私の今日の相撲。

 よかったなあ琴欧洲。インタヴュウを聞いていたら目が潤んでくる。
 Iさんのインターネット接続、PCセッティングという仕事があったので助かった。相撲を見て泣くところを見られたくない。

 初日から追ってきた相撲なのに、優勝決定の場面はこんなことになってしまった。
 でもそれはそれで忘れられない場所。記憶に残る一日になった。
 おめでとう琴欧洲。最後もきっちり締めろよ。

 日曜夜のNHK生出演を楽しみにしよう。月曜朝のワイドショーも。
 千秋楽  琴欧洲、有終の美

 千代大海に完勝。龍二さんが変化するのでは、という臆測も飛んでいたが、正面からの相撲。まともな勝負でよかった。
 来場所、琴欧洲は綱取り挑戦。龍二さんは角番。極端な明暗。

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 モンゴル人横綱の醜態

 今日いちばんの話題はこれ。
 勝った朝青龍が四つん這いになっている白鵬に駄目押し。むっとした白鵬がやりかえし、険悪な雰囲気。こんなもん、初めて見た。

 醜悪だったが、個人的には悪いとは思わない。
 やってしまった朝青龍は、「しまった、またやっちまった」という顔をしていたし、白鵬が同国人で先輩であり、かつてはよく飲みに連れていってもらっていた朝青龍に、臆することなくつっかかっていったのもいい。

 私の嫌いなのは「モンゴル勢のなれあい」である。その点、これはまちがいなくガチンコだったから、私は歓迎する。まあでもほんとに「ドキッ」とする、みっともなさだったけど……。



 明日の『日刊ゲンダイ』は、これをとりあげてたたくだろう。相撲バッシングが大好きなクソ新聞である。
 来週の『週刊現代』もとりあげる。

 だけどこれは、とてもみっともない場面ではあったけれど、講談社が取り組んでいる「八百長」とは正反対の出来事である。
 こういう剣呑なのはこまるが、仲好し互助会よりはずっといい。

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取消

 26日月曜朝。いまテレビでやっていた。私はまだ読んでいないのだが、スポーツ紙によると、朝青龍はまったく反省していないとのこと。それどころか逆につっかかってきた白鵬を「若いな」と苦笑したとか。白鵬に突っ掛かられ、「おっ」という顔はした。中継のアナも、それを「反省」と好意的に評価していた。私もそう思ってしまった。
 しかしそれは白鵬の勢いに愕いただけで、自分の行動を反省したのではないようだ。事実だとしたらなんともはや、である。どうしようもない。ただソースが「キムチ野郎」のニッカンスポーツなので真偽はわからない。それでも上記の好意的な解釈は取り消したい。

 白鵬が手をついた後、朝青龍の両手がダメ押しのように背中を押す。ムッとした白鵬が立ち上がる際、右肩で「何だ」とばかりにショルダータックル。朝青龍の右手がビンタのように白鵬の顔をとらえる場面もあった。

 「怖かった。殴られるかと思ったよ。相手が熱くなった。彼は若いね」

 支度部屋にもどった朝青龍はそう冷静に振り返ったが、腹の虫がおさまらなかったのは白鵬。風呂から出てもぶ然だ。

 「先に仕掛けられ、ダメ押されたから(熱くなった)。(朝青龍には)何もいってない。手が当たったかも覚えてない。嫌なことは忘れたい? そうすね」

 今場所はともに横綱としての期待を裏切る11勝4敗。取組後、日本相撲協会には30本を超す苦情電話が相次いだ。役員室のテレビで一番を見ていた北の湖理事長(元横綱)は「(朝青龍の)あれはダメ押しじゃない。勝負はとっさにつくものだから(あえて両手で押した)。カーッとしている白鵬の方がおかしい」と指摘し不問にする考えを示したが、苦々しい表情は隠せなかった。(サンスポより)

 と、北の湖は言っているが、あきらかにあれは不要な駄目押しであり、悪いのは朝青龍だと思うけどね。反省していると思ったから気にしなかった。でもしていなかった(笑)。

 ところで、サンスポはこういうふうにネットでも早めに記事を流す。アサヒ系ニッカンスポーツは、もったいぶって流さない。つまり、紙の新聞が売れるよう、無料のネット新聞では記事を抑える。
 そんなことをしようとしまいとどうせ買わないのに、とアンチである私などからすると笑止千万。ついでにいうと、「右クリックでコピーされないような措置」も、ニッカンがいちばん熱心。しかしまたそれを破るのも簡単なので、ニッカンの記事を引用したいのではないが、引用できないようにしているので、わざと引用することはある(笑)。

 スポニチはより詳しかった。だめだ、朝青龍(笑)。被害者気分。

「まだ彼(白鵬)は若いね。その辺はしっかりしてほしいな。オレもそういう時はあった。熱くなることもあるで」

 総論  琴欧洲活躍がすべて

 あまり燃えない今場所だったが、琴欧洲復活が元気のもととなった。
 逆に言うと、今場所それがなかったら、はなはだしくつまらない場所だったように思う。
 優勝は最初から最後まで両横綱に絞られ、大関陣はだらしなく、そこそこ活躍するのが、稀勢の里、安馬あたり……と。
 まして私は贔屓の把瑠都が絶不調なのだから、見る気も失せていたかも知れない。
 大好きな琴欧洲復活はうれしかった。今場所はそれに尽きる。

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 十両への期待

 新入幕のころの、白鵬、琴欧洲、把瑠都が大好きだった。私の大相撲に対するいちばんの興味はそれになる。
 横綱になった今じゃだいぶ興味をなくしているが、ほんとにねえ、新入幕のころの白鵬を見るのは楽しみだった。あの、「吊りだしたが、自分の足が出てしまうのではないかと相手を降ろしたら、まだ土俵の中だった一番」なんて、今でも憶えている。送り足のルールすら知らずに、いろんな技を験していたのである。なんともいとしい時代だ。まあ変化をしたりとか、不満も多かったが。



 ということで私の興味は、功成り名を遂げた日の下開山より次の大物になる。だが十両にそれがいない。ほんとにいない。むしろ「十両になったのが精いっぱい」みたいな力士ばかりである。
 あらためてまた、そこをサっと通過した、白鵬、琴欧洲、稀勢の里、把瑠都らの大物ぶりを感じる。豪栄道、栃ノ心あたりもそれらのなかに附け加えるべきか。

 私としては宝の山の十両に、二十歳前後の横綱大関候補が常に5人ぐらいいて欲しいのだが、現実はもっとシビア。実態は幕内から陥落したヴェテラン土佐の海が、楽々と勝ち越してまた再入幕するように、よくもわるくも、大きな壁となっており、そこを楽々と突破してくる大物は、めったに登場しないようだ。
 だから──と、これは自分自身に言いきかせているのだが──次の琴欧洲や把瑠都を探すのではなく、今は目の前の大物達に集中すべきなのだろう。



 ま、それはわかっている。稀勢の里はいよいよ大関取りに本格化してきたし、すこし薹が立っているが、安美錦の巧さは顕在だ。青森県人の渋い安美錦の大関取りを応援するような感覚も私には必要かと思ったりする。

 心配なのは把瑠都。今日は鶴竜に勝ったけれど、ふてくされたような態度だった。辛口舞の海が「親方の指導が必要」と、いわば「尾上批判」をしていた。その通りだと思う。
 来場所の私のテーマは、「琴欧洲、綱取りなるか」と「把瑠都、なにを学んだか」になる。

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 友人IJの特異性

 というところに、ここを書いている深夜、友人IJからメールが届いた。彼は大学の後輩。大の挌闘技ファン、相撲ファンである。
 彼との感覚の差を書きだすと切りがないのだが、今回もまた衝撃的。彼は張り差しが好きなのだという。あの卑怯さがいいというのだから、私とは感覚が違う(笑)。なにしろ今場所のこの文章は、ほとんど「アンチ張り差しキャンペーン」みたいなもんだ。

 以前も、私は千代の富士のひととしての下品さが嫌いなのだが、彼が「その下品さが好き」と書いてきたことがあった。あれも新鮮だった。
 それが「わたしは千代の富士が好きなのよお。千代の富士様は私の王子様なのよお。千代の富士様を否定するヤツは認めないのよお」のようなバカ女的文章だったらまだいいのだが、そうではないのだ。彼は私以上に千代の富士の下品さを認めており、そこから来る強さ、その味わい?を絶讃しているのだ。そうなってくると反論のしようがない。むしろ下品だと嫌っていた自分が心の狭い人間に思えてくる。IJは私なんかより「人間認定の範囲」が広いのだろう。



 IJは、うすらばかの私なんかとは違って優秀な成績で大学院まで出ているインテリだ。どんなに彼が賢かろうと彼の意見に唯々諾々と従うつもりもない。というかべつにふたりで正義をあらそっているわけじゃないから(笑)、こんな言いかたもヘンなんだけど。

 私はこれからも「張り差し大嫌いキャンペーン」をやりつづけてゆく。ほんとに嫌いだ。
 そういやIJは「まことに申し訳ないのですが把瑠都に魅力を感じないのです」と書いてきたこともあった。これは彼なりの先輩に対する礼儀で、あまりに私が把瑠都好きなので、ボロクソには言えず、遠慮がちに自分の嗜好を示したことになる。IJは今場所の把瑠都のように、必ず伸びなやみ、大成しないと読んでいた。その点に関しては、彼のほうが正しいことになる。

 把瑠都、頼むぞ、その弛んだ躰を引き締めろ。IJに最強のおまえの自慢をさせてくれ。
 それから今日のような、ちょっとふてくされたような態度はよくないぞ。気持ちはわかるが、あれは決してしてはいけないことだ。
 ああ、おれに力があったら尾上部屋に通いつめて把瑠都に力士の心懸けを伝えるのだが。
 金の餘っている谷町でなきゃ幕内力士と接することなどできやしない。
 把瑠都とくっついてくる付き人に飯を奢って20万。車代だと別れぎわに20万ほど渡す。それぐらいが力士と付き合う最低の礼儀だ。優勝したら最低でも百万はつつまないと。
 貧乏人にはホームページで、こんな応援ぐらいしかできない。でもおれは把瑠都、いちばんの谷町のつもりでいる。いつの日か、あえることもあるだろう。ずっと応援しているからな。

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 月曜日の琴欧洲

 今日はあわただしくチャンネルを替えつつ琴欧洲特集を追った。どこかでまた若い女が殺され、バラバラ殺人らしい。そんなものは見たくないのだが、どこもかしこもそればかり。
 やるならフジのオヅラだと思っていたら、やはり生出演があった。むろん部屋との中継。おとうさんも同席し、時間は短かったが、リアルタイムの琴欧洲を見られてよかった。日テレもすこしやっていた。こちらも時間をずらして生出演するのかと思ったが、それはなし。

 午後二時からのワイドショーは、日テレとTBSが特集。とはいえ私には知っていることばかり。残念ながら感激するほどの出来ではなかった。それでも佐渡ケ嶽部屋は地元の松戸で親しまれているから、御約束の絵柄とはいえ、地元商店街の盛りあがりは楽しかった。

 誰かが言っていたが(オヅラかな?)、「外国人の力士が優勝して、地元の町のひとが嬉し泣きするなんてパターン、初めてだよね」には、なるほど。あらためて朝潮や朝青龍の性格、立場、佐渡ケ嶽部屋の地元との親交が浮き彫りになっていた。
 いろんな意味で、いいひとが伸びてきた。相撲が充実する。



 ところで、私は土俵下での琴欧洲の優勝インタヴュウがあまり好みではなかった。
 なぜかと考えたら、あれは朝青龍なのである。両手を挙げて周囲を見まわすとか。
 つまり、朝青龍の優勝ばかりずっと見てきたから、琴欧洲は、優勝インタヴュウとは、あんなふうに応えるべきものと勘違いしてしまったのだろう。
 まともな日本人横綱がいて、歓びを噛み締めるような優勝シーンから学んでいたら、琴欧洲のあれもなかったと思う。手本が朝青龍なのだから、ああなってしまうのもしかたない。
 大の琴欧洲ファンだからこそあえて書いておきたい。

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 夕方のニュースショーもみな項目として取りあげていた。しかしメインは人殺しの話。女の死体をトイレで流したという事件。見たくないそれを見つつ琴欧洲を待つのも辛い。

 TBSに生出演。ジャイアント馬場のころから、いつも思うことだが、背の高い人をバケモノ扱いして盛りあがるのはいかがなものか。TBSのメインはそれ。

 まあこれだけ相撲が好きなんだからしょうがないけど、感激するものがすくなく、むしろいいかげんな作りに腹が立ったのは残念。
 相撲を好きでもないワイドショーがネタとして構成したら、背の高さと「角界のベッカム」ぐらいしか思いつかないのだろう。
 しかたないか。




壁紙とGIFはhttp://sports.kantaweb.com/より拝借しました。
感謝して記します。

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