inserted by FC2 system

2005

05/6/26
 PRIDEミドル級GP二回戦(6/26)



[感想]
 まずは試合順に。
 ハリトーノフの残忍な強さが印象的だった。

 いちばん期待していたショーグン対ノゲイラ弟は、ショーグンの強さに畏怖している身としては圧勝だろうと思っていたから、ノゲイラの粘り強さにあらためてこの兄弟の強さを思った。判定は3-0だがみな微差だったろう。よく「事実上の決勝戦」のような言われかたがするが、この試合で勝ったほうが決勝でシウバと戦うのではないかと思っていた。「ノゲイラ弟を見直した」がこの日の二番目に印象的な出来事になる。

 オーフレイムが軽くボブチャンチンを料理してしまった。ヘビー級から一気に体重を落とし、新生ボブチャンチンとなってミドル級に参戦した彼だが、これで決定的に過去の英雄になってしまった。私はボブチャンチンが北の最終兵器と呼ばれ勝ちまくっているころから大好きだったけれど、それでも彼の大振りのパンチを見ると、あれはボクサーには見切られてしまうのではないかと思ったものだった。SLG風にたとえるなら彼のロシアンフックは破壊力抜群の斧であり、堅固なアーマーをも一撃で砕くが、身軽な剣士には当たるまいと思えたのだ。どんな強いパンチも当たらなければ効果はない。
 ボブチャンチンの落日にせつなさを感じたかといえばそうでもない。それ以上にオーフレイムの充実ぶりがうれしかった。そういう意味で私は浮気性である。だからこの歳までこういうものが好きで来られた。

 ミルコの勝利は予想通り。でも思った以上に強そうな相手で充分に昂奮させてもらった。アバラをへし折ったミドルキックである。こちらの身まで痛くなるような結末だった。

 タムラは好きではないがオリンピックメダリストに野育ちの強さを見せつけたのはうれしい。

 ノゲイラ兄はポーランドの柔道王と決戦。柔術の勝ち。

 実際のメインはチャンピオンのシウバを立て、そっちだったようだが、テレビでは桜庭をメインにしていた。
 中村は惜しかった。柔道着を脱ぎ捨てる一瞬の隙をついて一気にシウバが襲いかかり、そのままラッシュで決めた。その一瞬を見逃さないシウバの集中力は抜きんでている。
 それまでは五分だっただけにあれさえなければ、とも言える。だが自分で好んで着ていった柔道着を試合中に脱ぎ捨てようとし、その隙をつかれたのは間抜けだったとも言える。サラリーマンの街のケンカなら、「やってやろうじゃねえか!」と上着を脱いでシャツ姿になるのは様になるかも知れない。だがプロが同じく「やってやろうじゃねえか!」と試合中に柔道着を脱ぐのはどうだったのか。シウバはその一瞬のもたつき、隙を見逃さなかった。シウバはブロであり中村はアマだった。そういうことであろう。
 だがあのシウバとそれまで互角に渡り合っていたのは確かであり、中村という選手は、年齢的にもこれから期待を持てそうだ。

 テレビではメインだった桜庭とアローナ。
 対峙した二人を見て、「これって同じ階級なのか?」と思った。これが今回最も印象的だったことである。ひとまわりアローナの方が大きく見えた。それも肉ではない。骨骼からして一回り違うのだ。これはキツいだろうなと思った。案の定桜庭は抱きかかえられたまま身動きできず頭部に膝蹴りの連打を食うことになる。
 アローナは本来100キロの体重をミドル級リミットの93キロまで絞ってきた。シウバもそうらしい。シウバにはあまり重さは感じないが、彼には骨の太さを感じる。骨太で思ったよりも体重があるのだろう。
 対して桜庭は本来80キロの体を85キロにして闘っている。これでもすこし動きが重いそうで、とても90キロには出来ないと言っている。本来の肉体の差があまりに明確に現れていた。その壁を突破するからかっこいいのだが、アローナはあまりに強かった。桜庭はなにも出来なかった。桜庭はシウバに三戦全敗だがみな一気に片が付いていた。顔の腫れ上がったこんななぶり殺しのような桜庭を見るのはつらかった。
 翌日の新聞に引退説ともに、「階級を下げることも」とあった。ボクサーが絞れるだけ絞る階級でやるように、桜庭にいまのミドル級はきつすぎる。というより私は彼にもう引退して欲しい。コーチになって若手を育てて欲しい。ブラジル勢の強さを見ていると、桜庭の戦い方が通じる時代ではなくなってしまったと思えてならない。

 とにかく格闘技はヘビー級だという信念の私にとってミドル級はさほど興味を引かれる対象ではなかったが、今のこの『PRIDE』ミドル級の充実ぶりは筆舌に尽くしがたい。
 もっともこれがほんとのミドル級である。K-1MAXやはミドル級と称しているが、体重70キロ級はライト級だろう。『PRIDE』だと「武士道」になる。五味がどんなに強いとしても、やはり70キロ級の戦いは街のケンカのようで、みていてつまらない。それがおもしろいのだという人もいようが。

 シウバが次の対戦者としてオーフレイムを指名したという。立ち技のシウバに寝技のオーフレイムだから水と油でおもしいろ。寝技にもちこめばオーフレイムにも充分に勝機はある。この対戦の勝者と、ショーグン、アローナの勝者が決勝戦を戦うことになる。私は開幕時からシウバとショーグンの決勝戦と読んでいたのだが、いまのオーフレイムとアローナの強さを見たら、この組合せもあろう。なんとも楽しみでならない。いずれにせよ四人の内三人がブラジルだ。ブラジルがミドル級の王国であることには変わりない。