2002~2003
03/5/4 ビートルズ

 明け方、ひさしぶりにBeatlesを聴いた。タイで買ったVCD。これはあまりにすばらしいと話題になっていて、探して買ったものだ。

 ぼくがパソコンで聴く音楽は仕事のじゃまにならない歌なしが基本なので、たまに聴くといやはや新鮮で、こんなのもいいなあとしばらくは聞き惚れていた。好きなのは「Twist&Shout」とか「Please Mister Postman」のようなカヴァーもの。なにをやってもいいんだよねえ。うまい人のカヴァーってのはこのころから好きだったことになる。「ベッサメムーチョ」がなかったのが残念だ。

 起動すると下のような画面が出る。26枚のアルバムが入っている。このジャケットをクリックするとアルバム収録曲が開く。



 さらには下のように歌詞を確認しつつ聴ける。それが一枚のCD。なんとも便利である。



 このVCDは西洋で発売された値の張る商品の違法コピーになるのだろう。たぶん。私はバンコクのパンティッププラザで100バーツ(300円)で買った。
 とはいえ、ここにあるすべてのアルバムを実費で買ってもっているから、この件に関しては罪悪感はない。自分のもっているものの連続再生装置を手に入れた気分だ。

 これらのアルバムを一枚ずつ再生することを考えたらなんと便利で楽なのだと感嘆する。ソングブックや歌詞カードを見たりする手間暇を考えたら格段の差がある。パソコンのすごみになる。なにしろぼくがもっているものの基本はLPレコードだ。それ以外にも、外国で買ったテープ、CD、Beatlesの音楽を今までどれほど買ったことだろう。CDでも全集を持っているが、このVCDを手に入れてからまったく聴かなくなってしまった。それほど便利だ。

 いま売れ筋のDVDの全集があるらしい。ぼくはいいや、音だけで。
 そういえば音楽に関しては、中国でも問題はないな。そのことを書こうか。
 「Eight Days a Week (I love you)」を聴いていて思った。「一週間に八日愛している」である。これは五月みどりの「一週間に十日来い」とどっちが先だったのか。
 発表されたのはほぼ同じ時期である。あれは遠藤実かな。内容の一致はまったくの偶然なのか。それともまったくジャンルは違うのに、Beatlesからヒントを得て出来た曲なのか。いや、五月みどりのほうが早いか。するとBeatlesが五月みどりの曲にヒントを得て……。それはないと思うが(笑)。あ、とことん、とことん、と。
 著作権で言うなら、ぼくはバッハやショパンにお金を払いたい気持ちがある。いつもいつもあんないい音楽をただで聴かせてもらって感謝しきりだ。ぼくの買ったものの印税が遺族に行けばいいのにと思う。でも著作権が永遠だと、遺族がそれを当てにして働かなくなるからいいことじゃないんだろうな。
 前にも書いたが、ぼくは旅先で、「親の遺産で食っていて、今までいちども働いたことがない」って人を何人か知っている。決してうらやましいとは思わなかった。働きがいのある仕事を持っていない男はかなしい。金があればいい問題でもない。
 ところでバッハやショパンの直系の子孫て生きているのだろうか。モーツアルトの直系はいないだろうな、あの人ヘンタイだったし。(いると知る。)
03/1/22
ジョン・レノン-GS-ビートポップス


 ぼくの周囲の音楽仲間も圧倒的にジョンファンが多かった。左がかっていたサークルだから当然か。二人が不仲になり、この曲が発表になったときも、みな「ジョンよ、よくぞ言った」のような雰囲気だった。ぼくは彼らの左翼思想にもジョンのLOVE&PEACEにも懐疑的だったので、どうにもその雰囲気になじめなかったものだ。ポールが天才ミュージシャンであることは彼らも認めていたが、反体制でないやつは(=本音はそうじゃなくても表向きそういう発言をしないやつは)どんなに音楽的に優れていても認められない時代だった。サヨクがファッションだった時代だ。

 ぼくのポール支持は当時も今も筋が通っている。こういう時代でも揺れはしなかった。そのことを誇りに思うと同時に、こういうジョンファンに噛みつけなかった自分をつまらないヤツとも思う。その理由はいつもの結論になってしまうが、ものを知らないバカだったから論争できるだけの智慧がなかったのだ。あっちのほうが物知りで頭がよかった。

曲目リスト
1.シー・シー・ライダー(ザ・ジャガーズ)
2.タッチ・ミー(ザ・スパイダース)
3.オーヴァー・アンダー・サイドウェイズ・ダウン(ザ・ビーバーズ)
4.ファイア(ザ・スウィング・ウエスト)
5.ブーン・ブーン(ザ・テンプターズ)
6.シーズ・ノット・ゼア(ザ・カーナビーツ)
7.孤独の叫び(ザ・モップス)
8.夜をぶっとばせ(オックス)
9.ウインディ(ザ・ワイルド・ワンズ)
10.タバコ・ロード(ザ・ジャガーズ)
11.サマータイム(ザ・テンプターズ)
12.サマー・ワイン(ザ・サベージ)
13.ウォーキング・ザ・ドッグ(ザ・ダイナマイツ)
14.トゥインキー・リー(ザ・カーナビーツ)
15.サイレンス・イズ・ゴールデン(ザ・ワイルド・ワンズ)
16.ロック天国(ザ・リンド&リンダース)
17.レディ・ジェーン(ザ・テンプターズ)
18.アイム・ソー・グラッド(ザ・ジャガーズ)
19.ザ・ジョーカー(パープル・シャドウズ)
20.ストリート・ファイティング・マン(ザ・スウィング・ウエスト)
21.若い思い出(ザ・カーナビーツ)
22.シーズ・ア・レインボウ(ザ・ビーバーズ)
23.メイビー・トゥモロー(ザ・ワイルド・ワンズ)


 この当時、フジテレビが土曜の午後三時からやっている「ビートポップス」という番組があった。司会は大橋巨泉。
 スタジオでお立ち台に乗ったミニスカートのネーチャンが何人か踊り、照明をきらきらさせ、そこに視聴者のハガキ投票で選ばれたベストテンのレコードを流すだけという今の時代から考えたらおそろしく手抜きの番組だったが、ヴィデオクリップもない時代のぼくらには最高に楽しい最新のオシャレ番組のひとつだった。ぼくはなんとしても土曜はこの番組に間に合うよう帰ってくるのに必死だった。土曜は半ドンだから楽勝のようだが田舎だからしてちょうどいい時間のバスがないのである(笑)。高二になってからはバイクを買ってもらったので苦労はなくなったが。

 巨泉が「さて今週の第1位は!」と言うと、ドラムロールと共に安っぽい作りのカウンターがびらびらと回り、ビートルズの「ヘイジュード」と出る。巨泉が「今週の1位は、ヘイ、ジュードー一直線」とか歌っていたのを昨日のことのように覚えている。くっだらねえ~(笑)。

 「ホワイトルーム」や「ドック・オブ・ザ・ベイ」が長期間1位を独占したことなど懐かしく思い出す。ビートルズだとなぜか「オブラディ・オブラダ」が印象に残っている。カヴァーしたマーマレードってグループの「オブラディ・オブラダ」も大ヒットしたんだった。あれもポールのホンキー・トンク・ピアノがいいんだよねえ。

 たまに日本人ミュージシャンが生演奏で参加したりするのだが、みんな下手。そんな中で、ゴールデンカップスはさすがにうまいのだった。ジュリーの「スージーQ」もなかなか。CCRはあのころが全盛だった。「雨を見たかい」もかなり長い間トップに居座っていた。
 ここのお立ち台で踊っていた娘たちが後の「黄色いサクランボ」をリバイバルヒットさせる「ゴールデンハーフ」になる。「涙の太陽」を歌った安西マリアもここの踊り子出身だったか。「涙の太陽」って最近誰かにカヴァーされてたな。わすれた。ま、思い出は尽きませんな(笑)。

 で、以前「ぼくは田舎育ちだけど、東京と同じ電波が入る地域だった」ってことを書いたけど、この辺のことになると、同年代でも東京の人としか話が合わないんだよね。 NHKと民放一局しかなかった地方の人は知らない話になってしまう。当時はまだ、日本にも「田舎」というものが存在していたのである。今じゃ日本全国どこでも同じだけど。
03/4/19
ボブ・ディラン

 明け方、パソコンに向かいつつ、Dylanの{Slow Train Coming}を聴いた。マーク・ノップラーの指弾きストラト、ピッキング・ハーモニックスが冴える。ひさしぶりだ。あのころのことを思い出し胸がいっぱいになった。夜中にこんなにせつなくなってどうする。

 Dylanはアコースティックの時代から、それこそ三十数年聴いているが、どうにも胸を熱くさせるのはこれや{Desire}のあたりなのだと知る。いやあまいったまいった。数日前のここに、「カラオケなんかで、これをやられるとダメなんて曲がある人が多いそうだが、自分にはない」と書いたばかり。ないんだけどね。こみ上げてくる思いってのはいきなりだった。二十代半ばに帰ってしまった。といって、誰かがカラオケでこれを唄ったからといって胸が熱くなるわけじゃない。ことばじゃない。音だ。

 ぼくは、文章を書く気のない時も新しいテキストエディターを手にするとその気になる、という小物オタクの習性をうまくやる気につなげている。ここのところいつになく熱心に音楽を聴いているのは、前記の新しいmp3ソフトをふたつダウンロードしたことに拠る。それに引っ張られて最近になく生活に音があふれている。もう花鳥風月の世界にどっぷりなので人工的な音はいらないと思っていたのだが。

 感傷的になっては仕事にならんので、Brad Mehldauのピアノに切り替える。これまた深夜にハマってしまいそうな音だけど、時を飛ばないのがいい。これなら耐えられる。
03/1/22
Jennifer Lopez


 べつに嫌いだったわけじゃないが食わず嫌いだったJennifer Lopezを聴いた。れいのチェンマイで買ったヒット曲寄せ集めCDの中にアルバムが一枚入っていた。ホームページを作ったりする間、適当にBGMで流している内、すっかり気に入ってしまった。スターになる人は歌がうまいとかなんとか以前に声に色気がある。ぼくはそれがいちばん大事だと思っている。

 寄せ集めだから古いアルバムなのかと思いつつネットで調べてみたら{This is me… Then}という昨年11/27日発売の最新アルバム(上掲写真)だった。すごいなあ、タイの違法レヴェルは。それでいて一緒に入っているのが古い古いユーライア・ヒープにELOだからよくわからん(笑)。

 すっかりレンタルヴィデオにもご無沙汰してしまい、今や大スターであるらしい彼女の作品をまだ観ていない。「ウェディング・プランナー」のヒットは知っているが、やはり最初に観るとしたら傑作の誉れ高い「Selena」からか。ここで彼女は歌手役を演じることにより(実際は歌っていなかったらしいが)それが話題となって歌手への道を開拓した。女優と歌手の両方が一流なのだからたいしたものだ。

 好きな女歌手が出来ることはうれしいことだ。ダイアナ・ロス、リンダ・ロンシュタット、マドンナあたりで止まっているので(最新でもマライアか)若い歌手(といっても三十代)を好きになれるとうれしい。なにしろもっと好きなのはその前のエラ・フィッツジェラルドとかビリー・ホリディになる(笑)。

 とはいえ新しいものを聴いていないわけではない。単に聴いているだけならかなりの数に接している。でももう流行りものを知らないと恥ずかしいなんて感覚はとうに卒業しているから、どんな世界的大ヒット曲であろうと自分の感性で気にいらないものは平然と拒む。セリーヌ・ディオンもジャネット・ジャクソンもだめである。ホイットニーはそこそこだが。なかなか新たに好きになれる歌手がいないのだ。しばらくジェニファーのお蔭で楽しめそうである。
03/1/28
シャナイア・トウェイン



 前記寄せ集めアルバムの中にシャナイア・トゥエイン(Shania Twain)の最新作が入っていた。細かいことを考えずにまとめ買いしているので、こんな意外なことがあるとうれしくなる。

 彼女の写真を見てすぐにインディアン系の顔だちだと思った。Shaniaというのは芸名でインディアン語で「我が道を行く」という意味だそうな。だけど「インディアン語」ってなんだよな、そんな単純にくくれるものでもないだろう。何族の言葉かハッキリ書いてほしいものだ。それはまあぼくの課題とすればいいのか。

 ともあれ、彼女は雰囲気的にそうだろうと思わせる人だった。プロレスラーだとそれを売り物にしているワフー・マクダニエルとかじゃなくて、表にしていないけどジャック・ブリスコとかですな。と、なにもかもプロレス形容になるプロレスバカ。

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 彼女はジェニファー・ロペスとは違って前から好き。カントリー系の音、その流れをくんだ曲、歌い方がぼくは基本的に好きなようである。
 このアルバムもアレンジがすばらしく、その中にも初期のイーグルスに通じる雰囲気がある。ええもんめっけました。アルバムタイトルは「UP!」。

 前作の「カム・オンオーヴァー」は世界で3400万枚売り上げた記録的なアルバムなのに、なぜか日本では20万枚しか売れてないってのもおもしろい。癖のないいいアルバムなのにね。音楽関係者に聞くと、いま日本で客を呼べる二大女歌手はジャネットとマライアなのだそうな。シャナイアのほうがずっといい。ま、好みでしょうか。

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 下は、ネットで見つけた全米アルバム売り上げベストテン。興味深いね、実に「アメリカ限定」として見ると、この順位は興味深い。さすがにこれぐらいになると流行りものに詳しくないぼくでも全部聞いているけど、AC/DC「バック・イン・ブラック」と「ボディガード」のサントラ盤はもっていない。AC/DCは記憶にないから聞き直してみよう。「ボディガード」は、ホイットニーの歌はよかったけど、ぼくはあまりケビン・コスナーの映画は好きではないから(一応全作観ているけど。理由は「おもしろくないから」)、サントラ盤までは手が回らない。でもそれが全米10位ってのはおどろきだ。ピンクフロイドとツェッペリンがフリートウッドマックの「Rumors」より売れているってのも意外だ。とにかくあの「Rumors」の売れっぷりはすごかったものな。いいアルバムだった。

 で、これらの全体を見た場合、日本的に圧倒的に知名度が劣るのはシャナイア・トゥエインだ。これ、8番目のところを空白にして埋めろと言われたらかなりむずかしい問題になる。



◆ 『カム・オン・オーヴァー』の全米での売上枚数は1,900万枚。これは全米女性アーティスト史上最高の売上枚数であり、全米歴代では8位である(RIAA調べ)。ちなみに全米歴代アルバム売上Top 10は次のとおり。

1位: イーグルス 『グレイテスト・ヒッツ 1971-1975』
2位: マイケル・ジャクソン 『スリラー』
3位: ピンク・フロイド 『ザ・ウォール』
4位: レッド・ツェッペリン 『4』
5位: ビリー・ジョエル 『ビリー・ザ・ベスト』
6位: AC/DC 『バック・イン・ブラック』
7位: ザ・ビートルズ 『ザ・ビートルズ』
8位: シャナイア・トゥエイン 『カム・オン・オーヴァー』
9位: フリートウッド・マック 『噂』
10位: 『ボディガード』サウンドトラック(ホイットニー・ヒューストン他)




 この「全米歴代ベストテン」は9割方知っているのに、「日本歴代ベストテン」になると、たぶん聞いているのは一枚もないんだよな。いやそれどころか知っている曲もひとつもないだろう。日本に住んでいる日本人なのに。

 でもそれはぼくのせいではなく時代の問題だ。小学生、中学生がCDを気軽に買える時代になってそうなった。GLAYのアルバム売り上げ枚数は世界の歴代5位だとかそんな記事を読んだ記憶がある。その他の4人(あるいはグループ)はエルビスやビートルズなど世界的な誰でも知っている凄いメンバーだった。アルバムを出すたびに日本国内の若者だけに何百万枚も売れ、やがてビートルズやエルビスを抜く数字になる。でも世界的には誰も知らないグループでしかない。日本国内でボケーっと生きてるぼくに鼻歌で歌われない歌なんて、何千万枚売れようと自慢できることではない。だって世界のレコード売り上げベストテンを見れば全部知っている大好きなミュージシャンばかりで、知っている曲もそれぞれすべて10曲以上ある。同じ日本人なのにただの一曲も知らないGLAYのほうがヘンなのだ。数字比べだけをやるのはむなしい。

 競馬で「歴代高額賞金獲得馬」をやるのと同じ無意味さだ。今と昔じゃ賞金が違うんだから比べても意味がない。近年の馬ばかりになる。それと同じだ。「世界の高額賞金獲得馬」でも、ダントツ世界一の日本馬テイエムオペラオーを筆頭に数多くの日本馬がランクインする。でもそれは日本の競馬賞金が図抜けて世界一高いからという理由でしかない。世界的には無名の馬ばかりなのだ。GLAYも同じだろう。

 昔の中学生、高校生が一ヶ月の小遣い全部をつぎ込み友達と共同で買ったLPと現代の小遣いのたっぷりある小娘が一度に複数枚買う今のCDは同じじゃない。当時のLPと今のCDでは一枚の価値が違う。

 日本のアルバム売りあげ歴代ベストテンには、GLAYだとかB'sだとか、コムロテツヤ系などが入ってくるのだろう。まず一枚も持っていないのはもちろん、曲名も知らないと言いきれる。恥か? いや自慢する気もないけど恥とも思わない。
02/1/28
 音楽は、人と人を結んでくれる。以前、名古屋のSが自分のホームページにミッシェル・ポルナレフのことを書き込んでいたことがある。

 それまでSの店は有線で流行歌を流し続ける居酒屋だった。そこから「おしゃれなカフェバー」に店替えした。ぼくはまだ見ていないのでその「おしゃれなカフェバー」とは何なのかわかっていないのだが、とにかくたしかなのは日本語の流行歌ではなく、そっち方面の音楽がかかるようになったらしいのだ。そこで初めてSはポルナレフを聞き、惚れ込んだ歌があったらしい。もちろん古い名曲だろう。いい話である。ほんといい話で、他者のホームページに書き込んだことなどまずないぼくだが、思わずこのときは自分のポルナレフの思い出を書き込みたいと思ったものだった。それは以下の話。

 数年前、フランスに行き、地元の人と話しているとき、ぼくは自分の無知を恥じた。というのは、左の写真を見るとわかるように、ポルナレフは奇抜なファッションの目立つ人だった。音楽はきわめてまともだったけれど、むしろそっち方面が先行し、いわばキワモノ的な面があった。だからぼくはフランス人の前で彼の名を出すとき、「あの人は今」的な意味合いで言った。
 だが彼は今もフランスの大スターだった。フランス人は誰もが彼の名を出せば知っていて反応した。ぼくは、いわゆる「ミッシェル・ポルナレフ、シェリーに口づけ、ぷぷぷ」的な感覚を持っていた自分の軽薄さを恥じた。この種の勘違いはぼく以外の人にもあるだろう。

 そんなわけで、Sのホームページを読んでいて、遅ればせながら素直な感性でポルナレフを好きになったSに好感を抱いたのだった。
 Sの音楽世界がもっともっと広がることを願っている。せまいわ、いまんとこ。早く五分に話せるようになって欲しい。

02/5/18
亜麻色の髪の乙女

 島谷ひとみの「亜麻色の髪の乙女」がヒットしている。花王エッセンシャル・ダメージケアのCMソングだ。コマーシャルと新曲が最初から連動する典型的なタイアップである。オリジナルのヴィレッジシンガーズの歌が流行ったのは、ぼくが高校生の時だから三十年以上前だ。島谷ひとみは二十一歳だそうだから、生まれる前の、さらに十年以上前の曲を歌っていることになる。ぼくだとビリー・ホリディの「Lover Comeback to me」を歌うようなものか。と考えるとたいしたことはないな。名曲は死なずだ。作詞は橋本淳、作曲はすぎやまこういち、当時のゴールデンコンビである。

 この当時の歌謡曲のヒットには、「有名作品からのタイトル拝借」が多い。これの数年後になるが、なんといっても日本歌謡史上最も有名な拝借シリーズは、「勝手にしやがれ」「イルカに乗った少年」「また逢う日まで」等の阿久悠「洋画タイトル拝借シリーズ」だ。


 橋本淳のこれはドビュッシーの有名なピアノ曲からの題名拝借。1910年にDebussyが発表した当時の原題は「The Girl with Flaxen hair」。Flaxenは亜麻色の意味だが、日本人はまず滅多に使う言葉ではない。ビレッジシンガースの歌がヒットした昭和四十年代前半でもこんな言葉は使われていなかった。今ネットで調べたら、「亜麻色ってどんな色だ?」と島谷ひとみの若いファンが素朴な疑問を呈していたが、それはぼくらの時でも同じ。当時の若者だって亜麻色なんて使わなかった。知らなかった。つまりそれは、このタイトルが、現実的な「あの娘の髪の毛って亜麻色できれいだね」って感覚から来たのではなく、あくまでもドビュッシーの名作題パクリから始まっていることを示している。なにしろ当時チャパツにしていたのは、水商売の、それこそふてくされた、居直ったのか、場末の安キャバレーか、そっちの世界の話であって、まともな日本人にはいなかった。染髪剤もいいものなんてなかったろうし。当然この歌もイメイジしているところはガイジンであろう。そんなわけのわからん歌が多かったなあ。

 この年のヒット曲にはスパイダースの「あのとき君は若かった」、タイガースの「花の首飾り」、テンプターズの「エメラルドの伝説」、ゴールデンカップスの「長い髪の少女」、ピンキーとキラーズの「恋の季節」などがある。「重いコンダラ」の「巨人の星」主題歌もこの年からテレビで流れ始めている。

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 チェンマイでみんなでカラオケをやるとき、ぼくはよく「亜麻色の髪の乙女」を歌っていた。海外在住が長く日本の最新ヒット曲を知らないあいさんやふみさんに、「これが今、日本の最新ヒットね」なんてふざけながら。もちろん彼女らもそれが冗談で、自分たちが生まれる前のとんでもなく古い曲なのだろうと解釈し、笑っている。そんな冗談が現実となった。

 と、仮想CD-ROMに納めたドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」を聴きつつ書いた。
 これはバンコクで買ってきた「Classic Vol.1」。バッハ、モーツァルト、ショパン、ドビュッシーがたっぷり一枚のCDに入っている。違法コピー商品だけど著作権の切れた世界だから許してもらおう。

 ヴィレッジシンガーズとドビュッシーと島谷ひとみと、三つひっくるめて楽しめる"ようなこと"が、齢を重ねることの楽しみなのだと、ぼくは思う。

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※後日記入
 この曲のヒットにより当時の話を拾っているワイドショーを偶然に数分見た。最初別の人のための曲だったと知る。それは青山ミチ。古い人なら誰もが知っているアメリカ米兵との間に出来た、戦後を象徴するような混血の歌手である。当時は混血がスキャンダラスな売り物だった。彼女の人生もそれに集約されていて、日本人離れした歌唱力とかを売り物にし、結局は覚醒剤で何度も逮捕されるスキャンダラスな人生を送っていった。
 橋本淳の書いた原題は違うタイトルだったが、詞の中のイメイジである「栗色の髪」は青山ミチからなのだそうだ。後に奔放な男問題や覚醒剤で話題になる彼女だが、この頃はまだ乙女イメイジで売ろうとしていたのか。といって混血の彼女が天然の栗色の髪だったとは思えない。後に覚醒剤で逮捕されてカムバックがどうのこうのと何度もテレビや週刊誌で話題になる頃は黒髪だったから、間違いなくこの栗色の髪は混血であることを売り物にするためのブリーチであろう。

 彼女がスキャンダルでぽしゃった後、作って二年後にヴィレッジシンガーズの新曲としてリスタートしたらしい。
 ぼくのほうの勘違いは、この曲が「パラ色の雲」でデビューしたヴィレッジシンガーズの連続ヒットの延長にあると思っていたことだ。彼らはデビューしたのはぼくが中学二年の時。これはよく覚えているから間違いない。だからこの曲も当時のものと思っていたのだが、これがヒットしたのはぼくが高校二年の時なのだった。これは忘れていた。とすると三年の間があることであり、順調にヒット曲を連発していたというより、埋もれていた曲をやけくそで引っ張り出してきてリメイクしたら、うまく当たったと解釈するほうが自然だろう。なにごともいろいろと奥深い。
(02/6/13)
02/5/31
倉木麻衣と元ちとせ

 倉木麻衣の「Feel Fine」がお気に入り。こんな「えんやとっと」を思い出させるようなタイトな8ビートはわかりやすくていいやね。この曲はグループサウンズ(笑)を思い出させるような作りになっている。モー娘のラブマシーンなんかももろにそうだった。あの種の曲はつんくがモンキーズなんかからパクってきてるから当然なんだけどね。これを書いたTokunaga Akihitoって人はどんなバックボーンなんだろう。どんな曲からインスパイアされてこの曲を書いたんだろ。興味あるな。間違いなくオールデイズが好きな人だ。

 バスドラムのドン・ツク・ドンドンってのがたまりません。一拍でひとつ、三拍で二発のパターンね。ぼくも打ち込みで曲を作るとき、このバスドラパターンはよく使う大好きな形だ。シンプルだけどいちばん楽しい。カラオケで聞いて見ると、シャリーンなんて流すギターカットまであって遊びまくり。テンプターズの曲だって言われたってわからんほど。こりゃ夏のドライヴで若者にもうけるでしょ。遊びっていえばPuffyってのも奥田民生が思いっきりビートルズのパロディやって遊んでたな。まだいるんかいな。


 こちらは元ちとせの「ワダツミの木」。もうすぐニューシングルとのことだが、早くアルバムをだしてくれないかな。必ず買う。
 こちらの作者は上田現。歌詞に外来語がひとつもないってのは気分がいいや。先日「情熱大陸」で元ちとせのドキュメントを見たが、あれってデビュー前から追っていたから、かなり早くからごく一部で注目はされていたんだろう。一度聞けばただ者じゃないってわかるよね。なんてったって奄美の島歌の最年少チャンプだもの。初めて聞いたとき涙が出たとか寒気がしたとかいう人が多いのは当然だ。

 今から終夜営業のコンビニにクルマで行き、夜が明けるまでクルマの中で小説を書くのだが、元ちとせでしんみりするより、気分としては倉木麻衣だろうなあ。ズガチャカズガチャカの8ビートのノリは楽しくやる基本だものねえ。たまあにだけど、こういう邦楽にも出会えるから捨てたもんじゃないと思う。こういうMusicアイテムがあってもまだハイになりきれない。
03/7/1
 タトゥー BGMのことば

 t.A.T.uがやってきて、約束通りお騒がせの後に帰っていった。このしちめんどくさい名前を日本のマスコミがどう扱うかと思っていたら、スポーツ紙なんかみんな平然と「タトゥー」とカタカナでこなしていた。やるもんだ。それでいい。過日「外国人の名前をカタカナで書くことすら失礼なのにうんぬん」なんて書いてある素人文章を読んだ。こういうヤツって「おれの名前をアルファベットで書くのは失礼だ」とは怒らないんだろうな。「タトゥー」おおいに結構である。ぼくは一回目だけ面倒だけど正しく書いた。二回目からはカタカナ。

 嫌いで嫌いで半径10メートル以内には近寄らないというぐらい大嫌いな日本の女子高生のファッションをパクって成功したこのロシアの傍若無人なネーチャン二人のことをぼくが取り上げるのは、このホームページのテーマにおいて最も不似合いと思われるかもしれないが、ワタシ、デビューした頃からこのネーチャンたちのサウンドはけっこう好きだったのである。プロモーション・ヴィデオのレズっぽいキスシーンとかには興味ない。あくまでもBGM的音楽としてだ。もちろんルックスはいいに超したことはないが、自分はサウンドが好きなのだと思っていた。


 それからしばらく後、日本の女子高生ファッションをパクったタトゥーをまたさらにパクった日本のネーチャンデュオというのを深夜テレビでチラっと見た。それにはまったく食指が動かなかった。というか、そこにいるのは、選ばれた娘であるから多少ルックスはいいものの、私の大嫌いな日本の女子高生でしかなかった。数日前、送られてきたアサ芸で見ると「推定少女」という名の二人組だった。あらためて見ても、やはりなんの興味もない。見たくもない。今は何匹めかのドジョウを狙った同じようなのがあと数組いるらしい。

 話は違うが、いまテレビでは「二人組」を「ニニングミ」と言いますね。犯罪の場合は「犯人はニニングミのオンナと思われます」と言います。「ジョセイ」と言いませんね。おもしろいです。「ニニングミのオンナ」と「フタリグミのジョセイ」は意味が違うのでしょうか。

 タトゥーは好きなのにそれを真似した日本人ネーチャンには拒否反応が出てしまうというのは、私は千昌夫的パツキン好きなのかと一瞬自分を疑った。それなりに美少女ユニットなのだろうが、タトゥーがやっていると魅力的に映る「日本の女子高生ファッション」も、ニセモノ日本人ユニット(ほんとはホンモノなんだけど)がやったら、その辺の女子高生に見えてしまうのである。いやそりゃそうだよな、もともとそうなんだもの。そうなると今の日本は美というものが画一化しているから、その「推定少女」もエロ雑誌でセーラー服で裸になっているネーチャンも同じになる。選別された美がそこにはない。

 そこから自分自身の趣向を分析してゆくと、ぼくは上揚写真にあるような若い娘のファッションを嫌いではないとなる。要は、それを身につけている日本の娘のだらしない立ち居振る舞い、ひどい大根足、バカ面、乱暴な言葉遣い等が嫌いなのであって、まさにここに使うには適切な表現である「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」になっていただけで、ファッションそのものは好きだったらしいのである。れいによって他人事風だが、どうやらそうらしい。

 それからもうすこし考えて、コトバのことに気がついた。もしもタトゥーが日本語で唄っていたら興味をもたなかっただろう。異国のコトバは理解できないからこそBGMに最適なのである。ぜんぜん聴かない「モーニング娘。」一族の音楽も、もしもフランス語だったりロシア語だったりしたら好んで聴いていたかもしれない。ユーミンとかサザンの歌をフランス語でカヴァー、とかいう企画ものが好きだから、そういうことなのであろう。

 ビートルズが出てきた頃、イギリスは落日の帝国だった。外貨を稼ぎまくってくれた彼らに女王陛下は勲章を贈った。すなおにそれを受け取るからビートルズっていいんだよな。オオエケンザブローとは違う(笑)。あ、でもあれは拒んだオオエが正しく、ノーベル賞が出たから急いで文化勲章を出そうとしたジミントーがかっこわるかったんだな。オオエが正しい。その辺、オオエ嫌いでもワタシは筋を通す。

 落ち目のロシアで外貨獲得のために使える最終兵器は、冷酷な強さを誇る格闘家と、誰もが絶賛するロシア美人であろう。今後も第二第三のタトゥーが出現することは間違いない。きれいな娘の唄う適度に心地いい音楽を好むこちらとしては大歓迎である。彼女らはあくまでもロボットだから、あとはプロデューサーの腕次第だ。そういうことを考えると、真の意味での「ロシアのピートルズ」がそろそろ出てきてもいいのではないか。



 余談として。
 土曜か日曜の夕方、日テレの番組に彼女らと仕掛け人のロシア人プロデューサーが出演したのを見た。日曜だろうな。『笑点』のあと。でないとこの時間、テレビは見ていない。
 なんでもテレ朝のミュージック・ステーションに出演しときながら直前で唄わずにキャンセルしたとかで問題になっていたらしい。テレ朝だからザマーミロって気持ちはある。
 スタジオ出演した彼女らは片方がソファの上であぐらを掻けば、もう片方は、そこに足を投げ出して重ねるという無礼な振る舞い。でもそれをかっこいいと思っているのだからしょうがない。せいいっぱいのつっぱりだ。わらえるし、かわいいと思う。といって同じ事を耳輪だの鼻輪だのベロ輪だのの目つきの悪い男がやったら憤慨してスイッチを切るから、やはりかわいい女は特別だ。

 それに対して司会の福沢朗が強い態度で臨んでいたのが印象的だった。彼女らに「どうしてここでそういうかっこうをするのですか」と問う。表情は硬い。彼女らは「あたしたちはこうすることが自然なの」と、ニヤつきながら、待ってましたとばかりに応える。突っ張り少女の精一杯のパフォーマンスだ。「あした飛行機で帰るそうですが、機内ではあぶないので、そういうかっこうはしないほうがいいでしょう」と福沢が締める。
 この「最後にチクリ」は、政治的なニュースで、与党に対しクメが得意とするパターンだ。ただしクメの場合、自民党にしかできず、タレントには、まして美人系には大甘になってしまう。おそろしくパターンが限られている。この時の福沢はさすがだった。プロレス中継で「ジャストミート」と叫んでいる頃は嫌いだったが、「ズームイン朝」を経て、りっぱな人になりました。ありがたいことである。なんまんだぶ。日テレとフジがなかったらニュースを見られない。硬派に育てよ。
 もっともこの場合には、日本のマスコミに対して失礼なことをした彼女らに、たまたま日テレが出演の機会を得たから、「失礼なロシアの芸能人に対する日本のマスコミ代表」のような立場があったのだろう。「きょうはちょうどビートルズが来日した日です。当時不良といわれたビートルズでさえ決められたスケジュールは守りました。なのにあなたたちは」なんて感じの導入部。向こうに「ビートルズがなにをしたかしらないけど」と応えられるのは当然で、見ようによっては妙に肩に力の入ったチグハグな司会進行と言えなくもない。って褒めてんのかけなしてんのかどっちなんだ。



 はい、その二組です。一応アサ芸には二組が写真入りで載り、ジュエミリアとかいうのがモデルの二人をくっつけて作ったとか、そんな説明もありました。ジュエミリアの名を省き、推定少女の名を出したのは、ぼくの文にある「夜中のテレビで偶然見た二番煎じ」が彼女らだったからです。
 そうですか、タトゥーよりも先にデビューしていたのに売れなくて、今年に入ってからあのスタイルにさせられたんですか。それはあわれですね。なんちゅうなさけないプロモーションをしてるんでしょ。そんな事務所だから売れないんだね。イエローキャプでも見習えってんだ。あれは見事ですね。タイプの違う巨乳娘を見事に使い分けて売り出してます。


 異国の山奥に移住しようとしているぼくとしては、彼女らの存在に興味のない自分を心強く思います。これはそっちのコーナーに書きますけど、外国にいる男と話をすると、みな「日本の女が最高だ」と言います。異国の女と一緒になって異国に住んでいると、日本の女が恋しくてたまらず、たまに帰国するとソープランドに直行するそうです。
 と、長くなりそうなのでやめますが、「タトゥーには興味ないが推定少女っていいな、ぞくぞくする」というタイプだったら、ぼくは移住の決意が出来なかったでしょうね。最近の日本のむすめっこが嫌いでよかったです。

03/7/8 好きだけど嫌い

 六時起き。今朝のBGMはマライア・キャリー。CDを整理していたら出てきた。二年ぐらい前の作品か。スキャンしてファイル保存するとき、半角英数でタイトルをつけねばならない。マライアがMariahであることを学ぶ。
 このCDはタイトルRAINBOWの上に「彩虹」(中国語の虹の意)とあるように、中国で買ったもの。12元(180円)だったか。新品を立派なCDショップで買った。こういうのは違法コピーとは言わないだろうな。なんていうんだ、中国が国際著作権に加盟していないから関係ないのか。違法コピーではあるのだろうが、こっそりとやっている──いや堂々とやっているんだけど、こっそりとでもあるからパッケージなんかはお粗末だ──のとは違って、大量生産だろうから、ジャケットも歌詞カードも完全。こちらとしてはありがたい。ミュージシャンはいい迷惑か。

 買ったときに云南で、パソコン再生し、一、二回は聞いているはずだが思い出はない。今回それなりの音量で、まともに聞いて首をかしげた。というか、途中で不快になって止めてしまった。
 マライアは天才的に歌がうまく声域がひろく、美人でスタイルもいい。サーヴィス精神も旺盛だ。最高の素材である。だけどなにをやりたいのだろう。このアルバム、ぼくの大嫌いなラップまで入っている。なんで歌姫がこんなことまでやるのか、よくわからない。これじゃなんでも出来るけど、なにが売りなのかわからない器用貧乏になっちゃうんじゃないか。彼女はただの歌姫だからいいとして、ブレインの方針に疑問を抱く。間違ってるぞ、売り方が。

 つい最近のニュースで、白人社会でマライアの人気凋落が激しく、アジアを出稼ぎツアーに回っていると揶揄されていた。それは意地の悪い見方なのだろうけど、こんな形の時代に媚びを売るようなアルバム作りをしていたらほんとにそうなっちゃうぞと心配した。マライアは好きだけど、このアルバムは嫌いだ。
03/7/20
夏の音楽──スタン・ゲッツ

 今朝(といってももう昼だ)のBGMはウェス・モンゴメリー。名盤かな。どっかの安物寄せ集めのような気もする。あとでたしかめよう。

 夏の音楽といえばバカのひとつ覚えでボサノバになる。もう条件反射のようになっている。ミュージシャンはなんといってもスタン・ゲッツ。そうして夏が過ぎ、涼しい風が吹き始め、冬が近いと感じたとき聞くのがマイルスの「枯葉」。ぼけてきているので四季折々のパターニックな音楽がパッと出てこない。春も秋もあるはずなのだけど、とにかくこの二つだけはすぐに思い浮かぶほど固定している。



 先日来の整理整頓でCD棚も場所を移動し中身を整理した。頻繁に聞くものをスライド式の本棚(文庫本専用の区分け棚)に入れ、仕事机の真後ろにセットした。夏場用の音楽としてスタン・ゲッツはいちばん取りやすい場所に置く。
 最も愛聴する4枚組はこの写真。スキャンした写真からもなんとなくプラスチックケースが傷んでいるのがわかる。ここまでぼくが繰り返し聞いているものも珍しい。なにしろ「真夏のクーラーの聞いた部屋。パソコン仕事のBGM」としてここ十数年の定番になっているのだ。これを聞いて夏が来たと納得するぐらいである。カセットテープにも落として(ぼくのクルマにはカセットしかないので)クルマでも聞く。もうほんとにバカのひとつ覚えとしか言いようがないほど定番となっている。湯上がりのビールとか、そんなのと同じだ。

 そういえばチェンマイにもこのCDをもっていって、クーラーを効かせた部屋で聞いたものだった。目を閉じるとナティコートの轟音クーラーとゲッツの「イパネマの娘」が聞こえてくる。これは「懐かしい風景」として後々まで胸に刻まれそうだ。
 チェンマイのよくない点はジャズとクラシック商品がうすいことである。売れないのだろう。商売だから売れないものが品薄なのはしょうがない。タイのネーチャンに聞くと「音楽とは歌」であるらしい。むかしつきあっていた女もインストゥルメンタルのどこがおもしろいかわからず、ぼくがJazzをかけるのをいやがった。チェンマイの音楽屋は、歌のないジャズやクラシックが品薄である分、西洋物でもクラプトンのスローなバラードのようなものは溢れている。

 ここでも便利なのは一枚のCDに十数枚のアルバムをM-pegで詰め込んだ違法コピーのJazzCDなのだが、その寄せ集め具合が気に入らず、その価値を認めつつも蒐集していない。たしか「Jazz 17」というのを見た記憶があるから1からそろえれば旅先で、ほんの10枚ほどのCDを持参するだけでいつでもほとんどのJazzの名曲を聴けることになる。便利この上ない。次の機会には買いそろえよう。さすがにやり放題のこの種の違法も制限時間が迫っているはずだ。

 たいして聞きもしないロックを集めたCD等は買っているのに必須のJazzとClassicがないのは、お気に入りを日本から持参しているからだろう。たしかにタイのネーチャンの言うように「音楽は歌」かもしれないと思う。しかしそれは逆に言うと「BGMに歌はいらない」にも通じるのである。特にぼくは日本語があると集中できない。競馬エッセイで何度か「競馬場でうるさく日本語の歌を流すのはやめてほしい」と書いた。まったく締め切り数分前の必死で買い目を絞ったりしているとき、天井から日本の流行歌を流されたらたまったもんじゃない。最近はなくなったからあれはぼく以外にも不評だったのだろう。

 違法コピーCDを買えばチェンマイでもほぼ同じような物を聞けるのに、わざわざこれらのCDを持参したのは、このCDにある曲順で、このCDを聞きたかったのだろう。定番とはそういうものだ。
 これ、それほど気に入っている愛聴盤なのに、実は見本盤である。M先輩から十数年前にもらったものだ。Jazzの見本盤CDも有名プロデューサー(当時はディレクターか)のM先輩のところには続々と寄せられるのだが、先輩の作っている番組はロック系であり、使用することもなければ、先輩もJazzは好きでなかったので、これらの見本盤はぼくがもらえたのである。

(と、ここまで書いたらBGMのウェスが終わってしまった。つまり45分ぐらい経過したってことか。さて、きょうの2枚目はなにをきこう。一休み。)



 ところが今年はこの「夏の定番CD」をまだ一度も聞いていない。部屋でもクルマでもだ。すなわちそれはもう7月20日なのだけど、部屋でクーラーを効かしたりクルマでクーラーをかけたりしていないということだ。涼しい日が続いている。これらをかけるべき夏が来ていないのである。まあクルマのクーラーは、すでに5月末の引っ越しの時にも都内を走るとき、蒸し暑くていられず既に入れていた。でもそれはカンカン照りのボサノバを聞きたくなる夏ではなかった。不思議とどんなに蒸し暑くてもぼくが「ああ、真夏だあ!」と感じない限り聞きたくはならないのである。

 これはお気に入りの1枚。もらいものばかりじゃなくちゃんとお金を払って揃えてもいる(笑)。トロンボーンのJ.J.Johnsonとの競演。伝説の一枚になる。云南までもってゆくことが確定している。
 これらの文章を書いている合間に、「仮想CD-romソフト」で上記スタン・ゲッツ4枚組を仮想CDにしてハードディスクに収めた。ハードディスクに入れてある50枚ほどのCDになぜ今まで入ってなかったかと考えると、真夏はほとんど日本にいなかったからであろう。チェンマイに持ってゆくか、日本にいても、テープに落としたものをクルマで聞くぐらいだったのか。でも去年は日本で夏を過ごしている。なにを聞いていたのだろう。去年の『作業記録』を読んでみよう。こんなとき書いておくと役に立つ。

 せっかくハードディスクに収めたのでどんなものかとちょっと聞いてみた。つまらない。似合わない。あらためてそう感じた。きょうなど肌寒いぐらいの天気なのである。そこに「イパネマの娘」は楽しいどころか不愉快なほどですぐに止めてしまった。それほどぼくにとってこの音楽はパターンが決まり切ってしまっている。たとえば夏の湯上がりに湯豆腐に熱燗でも、それはそれで乙だと思う。でも涼しい日にこの音楽を聴きたくはないのである。マイルスの「枯葉」も関係ない季節には聞きたくない。かなり単純だが思いこみは激しい。一種の条件反射のようになってしまっている。やたら日当たりのいいこの二階屋に地獄の真夏が来るまでしばしスタン・ゲッツは封印である。 あと何日だろう。

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ザ・ピーナッツ(03/7/21)

 夏といえばザ・ピーナッツも定番だ。「恋のバカンス」なんて聞くと昭和30年代の日本を思い出してたまらない。そして、懐かしいだけではなくこれは今も通じる高度な名曲である。宮川泰さんは優れた作曲家だ。
 数年前、しんぼうたまらんという感じで「ザ・ピーナッツ ベスト」を買ってしまった。以来、年に数回聞く夏の定番となっている。ザ・ビーナッツもぼくにとって、「真夏、夏休み、浴衣、スイカ、花火」という連想になってしまう。
 いま作詞作曲者を確認するためにそのCDを手にしてみた。ぼくの好きなピーナッツの曲は「岩谷時子作詞 宮川泰作曲」が多い。

 後年、売れなくなったピーナッツは演歌路線を強要される。本人たちはいやだったようだ。それでも「大阪の女(ひと)」というヒット曲が出る。その前なのか後なのか「東京の女(ひと)」というのがあり、その作曲家を見たら沢田研二とあったのでおどろいた。といってもジュリーファンのぼくは彼が作曲をかなりやっていてタイガース後期の曲をいくつも作っているのを知っているから作曲家ジュリーにおどろいたのではない。ピーナッツの曲を作っていたことが意外だったのだ。ご存じピーナッツの片割れはジュリーの最初の奥さんである。十代の時から面倒を見てくれたかなり年上の女と、どんな女でもよりどりみどりのジュリーが責任を取って一緒になったときは、男としてえらいなと益々好感度を増したものだった。この「東京の女」時代は二人が恋人のころである。マスコミは知っていたがどこも書かなかった。いい時代だったとも言えるし、渡辺プロの力が強くてそれを管理できた時代とも言える。今のジャニーズ事務所のようにだ。恋人同士とまでは知っていたが、まさか作曲まで関わっているとは思わなかった。
 ぼくは二人を祝福していた。しかしそうして出来た子供に「一人(ひとり)」と名付けたと知ったときは、なんとなくその名に不幸の兆しを感じた。やがて田中裕子を好きになってしまったジュリーは(「男はつらいよ」の競演がきっかけ)、糟糠の妻を捨て、田中と再婚する。

 芸能人の子供に関して、どうしているんだろうと思う数少ないものに、この「沢田一人」君がいる。
 もうひとりは「吉田彩」さんだ。タクローの最初の奥さん、四角佳子との娘である。もしかして二人とも有名人なのか。ジュリーもタクローももう孫がいるのだろうか。
 学生時代、近所にまだ売れない泉谷しげるが住んでいた。六畳一間。渋谷のフォーク喫茶「青い森」でRCサクセッションや古井戸なんかと時給700円で歌っていた頃だ。当時の泉谷の奥さんの名は「ふくちゃん」。やがてエレックでデビューしてからも、愛妻「ふくちゃん」の名を連発して、いい夫婦だなと思っていた。ふくちゃんと離婚し、再婚していたと知ったのはつい近年だ。テレビで孫がかわいいとのろけていたが、それはふくちゃんとの娘の子だろう。
 ザ・ピーナッツの音楽の魅力を語るつもりがとんでもなく脱線してきたのでここまでにする。後で音楽的魅力をきちんと書き足してアップしよう。彼女らの曲をいろんな女歌手がカヴァーしているが本家を超える出来映えはない。それが彼女らの能力を証明している。

La Bamba Vol.2 見本盤

 今朝の音楽は「La Bamba Vol.2」。サントラ盤かと思ったら、そうじゃなくて、ロス・ロボスがリッチー・ヴァレンスをカヴァーしたサントラ盤がヒットしたので急遽この第二作を作ったらしい。コンセプトは「ラバンバのリッチーが活躍していた1950年代後半にヒットしていた曲」だって。安易(笑)。
 でも寄せ集めアルバムが大好きなぼくとしては、一枚でリトル・リチャードやチャック・ベリーまで聞けてしまうこれはなかなかお買い得だった。って買ってないけど。
 ご存じない人に見てもらおうとわざと「見本盤」と入っている方をスキャンしました。ただであげるかわり売ったりできないように牽制しているわけです。レコード時代からそうでした。なかなか剥がれないように作ってあるし、これを痕跡なく消すのは大変だろう。見本盤でもらったものを中古屋に売って小銭を稼ごうという人はむかしからいたようだけど。

 上揚写真をスキャンして入れたら、「フリートウッド・マックやグレン・フライも入れなければ不公平ではないか」と考え、スキャンして入れる。いったい誰に不公平なのか(笑)。なんだかしらんがこういう考えかたが好きなのである。ホームページ容量は残りすくなくこんなものをスキャンして入れている状況じゃないのだが。



 ところで、ライナー・ノートを読んでいたら、音楽関係のレビュはVの表示がしっかりしていると気づいた。COVERはカヴァーValensはヴァレンスと書いている。Bambaは「バンバ」だ。書くたびにこれを記入するのもあれだから、《『お言葉ですが…』論考──ヴのこだわり》を書くことにする。
03/7/26
雨の日の午後はテレサ・テン

 雨の日の午後はテレサ・テン。これは中国で買ったものか。中国に関してはきらいなことばかりだが、「中国語の歌」は数少ない好きなものになる。違うな、なんて言うんだ。「歌に使われている中国語が好き」か? 中国語は好きではない。中国の歌も好きではない。でもサントリーウーロン茶のCMのような、中国語で歌われる「鉄腕アトム」や「ライク・ア・ヴァージン」が大好きなのだ。どういえばいいのか。
 これはテレサが中国語で歌っているCD。中国のスタンダードナンバーを歌っているのが実にいい。「北国の春」はいらないと思う。あれは詞曲とも名品だけど、あまりに知りすぎているから、今更テレサのこういうアルバムでまで聴きたくはないのだ。まったく曲名が違っているので歌の内容も違うだろう。イントロ、間奏のアレンジは同じだ。
 中国名のアルバムタイトルや曲名に関して論じたいが(いや論じる能力はない。野次馬的にしゃべりたい、か)、簡体字が多いので表記できない。Windows2000やXPはIMEをを切り替えれば出来るというのだが、日本文字と中国簡体字、繁体字、ハングル、タイ文字の混在表記に関して未だにわかっていない。「××が中国語じゃこうなるんですねえ」なんて話はおもしろいんだけど。
 このジャケットの「テレサのフルート」は笑える。テレサは吹けないよなあ、吹けるの? むかしグループサウンズ時代にスパイダースのサカイマサアキが吹けもしないのにライバルのブルーコメッツの井上忠夫(後、大輔、先年自殺)に対抗してこんな感じの写真をよく「明星」や「平凡」に載せていたのを思い出す。とうとうただのいちどもマチャアキのフルートは聞かないままだった。

 そうそう、あまり関係ないがどこかで書くときのためのメモしておこう。
 中国のホテルにいると隣接しているカラオケ店や、市場にあるカラオケ(ジュークボックスのような形でお金を入れて歌う)から、聞き覚えのある日本のメロディ(もちろん彼らは自分たちの歌と思っている)が流れてくる。ナンバーワンは「北国の春」であり、続いて「」なのだが、ぼくがおどろいた意外な普及曲に「竹田の子守歌」がある。これは被差別部落の子守歌を採譜して曲にしたといわれている。「赤い鳥」が歌ってヒットした。なにゆえにこの曲は中国人民に受けたのだろう。あれは中国的な音律なのだろうか。とにかく浸透している。歌詞を見たことがないのだがラブソングになっているかもしれない。きっとそうだろう。赤い鳥の最大ヒット曲は「翼をください」だと思いこんでいたら、段違いでこの「竹田の子守歌」なのだと近年知った。価値のある曲だとは思うが、かといってああいう歌のレコードを買う気にはなれないけどなあ。
03/7/22
歌うギター──高中正義讃歌

 夜の十時。いまBGMはタカナカのCD。ちょうど「サンダーストーム」がかかっている。好きなんだよなあ、この曲。天龍のテーマ曲として知ったから、そういう背筋がぞくぞくするような勇ましいものとしてとらえていた。買ってみて知ったが、これ「虹伝説」というファンタジックなトータル構成をしたアルバムの中の一曲なんだよね。いわばおとぎの世界。そこからこれを見つけテーマ曲にしようとした天龍のセンスはいい。本人が選んだのか?スタッフが見つけてきたのか。知りたいなあ裏話が。プロレス雑誌類は長年こと細かく読んでいるがそのことに触れたものを読んだ記憶はない。長州の「パワーホール」が彼を大好きなミュージシャンによって作られたとか知っているのだが。

 アルバムが出たのは81年となっている。先日聴いたテープが79年のライヴだったから81年はもう日本一の人気ギタリスト(異論はあるでしょうが)の頃か。ほんとにこの人のギターはよく歌っている。
 プロレスのテーマ曲というとクリエイションの竹田が作った「スピニング・トー・ホールド」が有名だ。ヨネスケのプロレス好きは信じないが竹田はすなおに信じられる(笑)。これを作った頃のファンク兄弟はかっこよかった。後にテーマ曲として採用される。ファンク兄弟も日本にはそんなにプロレスが好きなミュージシャンがいて、自分たちの技を曲名にして作ってくれたのかと感激したそうだ。いい話だなあ。なにより打算なしに作った曲が大好きなプロレスラに届いたってのがいいやね。
 その点この「サンダーストーム」は天竜川、もとい天龍側が惚れ込んでテーマ曲にしただけだから、そこにいたる経緯はまったく違っている。いまこのジャケットをスキャンしようとしたら「81年発売の高中の最高傑作が復活」とあるから、もしかしたら天龍のテーマ曲として人気が再燃し、再プレスされたのかもしれない。ぼくがこのCDを買ったのは90年代だからその可能性は大きい。

 そんなわけで同じプロレス好きということから、ぼくのギタリストへの好意は高中より遙かに竹田へのほうがつよい。だけどこうして聞き比べていると全然違うと思わざるを得ない。竹田は歌えるのか? そういう事実があるかどうかはともかく、「ギターが歌う」ということではちょっと違いすぎる。竹田の曲は、ギタリストがギターを弾きまくっている感じなのに対し、高中のフレーズは歌っているのである。これはほんと、ぼくは竹田のほうが人間的な意味(?)でも好きだし、タカナカはむしろ嫌いだった。このスキャンした写真にもあるように彼はYAMAHAのSGモデルを弾いている。高級なスペシャルモデルを贈呈されて宣伝にも一役買っている。商業主義のYAMAHA大嫌いのぼくとしては益々竹田贔屓になる。でもギターフレーズが歌うということでは高中のほうがすぐれている。これは対竹田ではなく高中が日本のギタリストとしては図抜けているのだが。

 世界のギタリストで図抜けてギターフレーズが歌っているのは誰かと問われたら、これはもう文句なしにクラプトンだろう。なにしろデレク&ドミノス時代の彼のギターフレーズをパクって筒見京平はヒット歌謡を連発したほどだ。ジンジャ・ベイカー(プロレスでベイカーならオックス・ベイカーだ)と組んでいた頃のクラプトンは自分は音痴だからと決して歌わなかった。細面の超ハンサムな頃だ。ベッカムなんて目じゃなかったね。いま渋いヴォーカリストとして大成したのはあの「歌うギター」からして順当な進展だった。ああ、そういえば巧いけど歌っていないという意味でジェフ・ベックという人にぼくはあまり興味がなかった。あの人はクラプトンを総合ミュージシャン(?)とするなら、単なるギタリストである。
 タカナカの才能はクラプトンに通じる。この「サンダーストーム」も上手に歌詞をつければ歌になるだろう。それが「歌っている」の基本だ。

 無関係の余談ながら、アリ戦後発売された「猪木ボンバイエ」のシングル盤B面は、倍賞美津子があのバンボイエのメロディに日本語歌詞をつけて歌う、さわやか風味のラブバラードだった。出だしの歌詞は「い~つも~い~しょなの~」である。知っている人はボンバイエのメロディをスローにして歌ってみてください。いま藤田がテーマにして使っているぐらいのテンポか。あれもそれだけすぐれた曲だったんだね。先日の東京でこのレコードも捨ててきた。
03/7/25



チェット・アトキンスとマーク・ノップラー


 やたらカントリー・サウンドが聴きたくなるときがある。よってきょうの音楽は「Neck&Neck」。チェット・アトキンスとマーク・ノップラーの競演。二人とも指引きだから音がやさしい。いい気分である。インストが5曲、歌入りが5曲。「悲しきサルタン」でダイアー・ストレイツが出てきたのはいつだろう。26年ぐらい前か。アトキンス大好きなノップラーが初めて競演したのは10年前と、この10年前に出たアルバムに書いてあるから、もう20年の親交になるのか。世に出ることによって子供時代からのあこがれの人と競演できるのは楽しいだろうなあ。
 と、ここまで書いて、アトキンスはまだ元気なのだろうかと思った。
 ライナーノートのアトキンスの影響を受けたミュージシャンに「マール・トラビスレス・ポール」とある。そうなんだなあ、今の世の中、ギタリストのレス・ポールを知らなくて「レスポール・モデル」のギターを弾いている人がいっぱいいるんだろう。
 チェット・アトキンス・ギタースタイルってのはかなり熱心に勉強した。なつかしいや。
 きょうは気分的にもっともっとカントリーなハンク・ウィリアムスでも聴きたい気がする。あったろうか。手元にはない。今は夜中だから荷物をひっくり返して探す気にもならない。明日にしよう。でも明日になったらもうカントリーを聴きたくないかもしれない。

 ハンクと言えば彼の曲をそっくりパクったかまやつひろしのヒット曲があった。「どうにかなるさ」か。ぼくの対人評価で徹底しているのは盗作するやつを絶対に認めないということだ。チカダハルオのコラムなんてゼッタイに読まない。だけどそれは、ぼくが偏狭すぎると認めつつもある。チカダハルオがミュージシャンとしてクソであることと彼の書く音楽コラムの質がどうであるかはまったくの別物なのだ。むしろ創作することに無能であったからこそ他者の評論をすることには才能があるということもあろう。だから思わず盗作してしまったのか(笑)。あれだけ連載が続いていることからも彼の音楽評論はそれなりの水準にあるのだろう。と一応認めても、ぼくは絶対に今後も読まないが。
 そういう他者の作ったものを丸々盗用していたヤツ、カトウカズヒコ、ウザキリュウドウ、カマヤツヒロシ、チカダハルオ、レベッカの誰か(マドンナの曲を盗作したやつ)とか、ジャンルは違うが、アメリカの番組をそっくり真似て作っているのに自分で考えたふりをしていたキョセンとかを、ぼくは大嫌いなのだけど(というか他者の創ったものを自分のものとして登録し、金を儲ける彼らの感覚を軽蔑を通り越して憎んでいるといっても過言ではない)、彼らの存在がなければそれを知ることは何年も遅れたわけだし、たとえばカトウカズヒコの「僕のおもちゃ箱」なんてあいつが盗作しなかったら一生本歌を知らないままだったろうから(「悲しくてやりきれない」も「イムジン河」を逆回転させて作った猿まねだ)、それはそれなりに彼らにも存在価値はあったのではないかと、いわばクリエイタではないがコンダクタ、ガイドとしての価値はあったのだからと、最近では思えるようになってきた。

 アトキンス(といえばフレッド・アトキンスの名も浮かぶ。馬場の鬼師匠だ)とノップラーのことを書こうと思っていたのに脱線してしまった。《日々の雑記帳》に収めるとき、音楽的なことを附記しよう。演奏されているジャンゴ・ラインハルトのこととか。
 いま調べたら、アトキンスは2001年に亡くなっていた。知らなかった。といってそう残念に思うのでもない。彼の作品は永遠だ。功成り名を遂げた優れたアーチストの死には、胸が痛まない。作品がある。大往生だ。先日の頭のくっついたイラン人姉妹の分離手術失敗には痛むが。
03/8/2
真夏到来! Stan GetzとJ.J.Jhonson


 真夏到来ってんできょうは聴きました。Stan GetzとJ.J.Jhonson。ボサノヴァじゃないけどね。いいですねえ。最高。
 このアルバムは、ゲッツ以上にJ.Jの超絶技巧が炸裂しているうっとりもの。あのトロンボーンでなんでこんな速いパッセージがこなせんるんだって驚嘆する。天才だあね。
 これの中に「Crazy Rhythm」って曲がある。クレイジーキャッツのテーマ曲だ。これを聴くとどうしてもそっちを思い出す。毎日5分間帯でやっていた「おとなのマンガ」。クレイジーキャッツの全盛期を知っている(テレビでみただけだが)のは誇りになる。
 ぼくはコミックバンドが大好きなのだが、その後のドンキーであれドリフであれ──この人たちが既に伝説だ──、あとはなにがあるんだビジーフォーか、足元にも及ばない。その基本はそれぞれがジャズ・ミュージシャンとして実力があったからだろう。ドリフはみんなヘタクソだったことを本人たちが認めている。いかりやチョーさんが音を拾えないことをコントの中でワダアキコにからかわれているのを見るのは辛かった。その後のCMでサイレントベースを弾くチョーさんはかっこよかったが、あれはあのミスを取り繕うためではなかったか。でも正しいのはワダアキコのほうだ。チョーさんが音を拾えないのは見ていてぼくにもわかった。自分がハモるのがヘタで引っ張られてしまうほうなので(恥笑)。
 近年の流行りものになにも興味はないが、ネプチューンがやっていた「ネプハモ(ハモネプ?)」という企画はすばらしかった。バイクとかああいうモノにこだわる熱中より、ダンスやハーモニーのようなモノのない世界のほうがすばらしい。「元気が出るテレビ」の「ダンス甲子園」ての好きだったな。
 GetzとJhonsonの話からずれてしまった(笑)。

 名盤だあ! 聴くと夏だなあ。今年は来ないかのかと思ったが、やっぱり来ました。地獄の灼熱二階屋になるが、この熱がないと作物に悪影響があるから暑くなって正解か。あ、きょうなんかはあの海に行く近道の田舎の橋、渋滞かな。
03/9/3
10連装CDチェンジャのこと

 もう10数年前になるだろうか、10連装のCDチェンジャを買ってクルマにつけた。軽自動車だからバッテリの負担はけっこう大きかったろうな。すまんすまん。ぼくがクルマに乗るようになったのは取材に必要と判断した三十代になってからだから、このクルマはマイカーとしては二台目だったか。小さなクルマにこんなものをつけたのは、いかにぼくにとってクルマとは音楽を聴く場所だったかである。最近はすっかり飽きてしまいカーステレオすら壊れたまま放り出してある。次のクルマではまた音楽環境を整えたい。
 そのCDチェンジャは6年前、クルマを替えるときに取り外した。トランクにセットして、そこから配線を運転席まで引っ張り、リモコンで動かす形式である。素人では出来ず工場でやってもらわねばならない。それが面倒なので取り付けることをせずそのままにしておいた。その理由は「究極のウォークマン」で書いているように時代が変ったからである。CDチェンジャという装置に対する熱意の薄れだ。カーステレオもそのうちハードディスクに何百枚ものCDを入れておいて、になるだろう。そんなリッパなカーステレオはぼくとは無縁だろうが、ノートパソコンを繋いだりしてCD自由自在にはなるはずだ。要するにCDチェンジャは過去の機械である。いわば落ち目になったアイドルタレントのようなもので、なんの魅力も感じず放り出しておいた。買うときはうれしくてスキップしつつ買いに行ったものだったが、取り外して野ざらしにしたままだった。いつしか壊れていた。
 それはあきらめるとして、その中に入れたまま取り出せなくなっているCD10枚には未練があった。野ざらしのとき雨露がかかっているがCDだから影響はないだろう。そしてまた、たまに聞きたくなるJazzのCDが見つからなかったりすると、きっとあの中に……と思ったりする。
 それできょう、そのCDチェンジャを分解してCDを取り出した。ネジを十数カ所外すなかなかの作業だった。わくわくもんである。6年前、ぼくは毎日クルマの中でどんなCDを聞いていたのか。探し求めているあのJazzCDはあるのか。

 結果はなんとも気落ちするものだった。入っていたのは、ショパン、ベートーヴェン、カラヤン指揮コレクションというClassicもの、ロックベストオムニバス、アダルトポップヴォーカルオムニバスという秋葉原の街頭で買ったのであろう安物寄せ集めCD、なぜかピーター、ポール&マリーのベスト盤(これも安物だ)、アストラル・ジルベルトのベスト盤、コンチネンタルタンゴ・コレクション(これをカセットテープに落としてタンゴが好きな『サクラ』のパパにプレゼントしたものだった)、唯一Jazzはデューク・エリントンのこれまたベスト盤があったのみだった。
 それが自分の趣味だから不満はない。ドライヴのBGMとしてベスト盤がいいのも事実である。クラッシク、ロック、ポップス、ジャズ、タンゴ、フォークと多分野にわたっているのも気分次第で聞き分けるための気配りがよく現れている(笑)。これには苦笑しつつ納得した。ぼくは「これさえ聞いていれば文句はない」というタイプの音楽好きではない。その場の雰囲気で聞き分ける方だ。聞きたいときにそれがないと気になっていられなくなるので、ぼくのちいさなクルマは、まるでなにかの卸商のようにカセットテープとCDを山のように積んでいたものだ。
 きょう出てきたCDは、みな代替えのものがある。唯一絶対の品ではない。おもいつきで金に飽かせて買っていたから同じようなものが何枚もある。ほんとにもうショパンなんて何枚あることやら。
 残念ながら見つからなくなっている何枚かの欲しいCDがここから出てくるのではという期待は裏切られた。

 企画もの、寄せ集めCDの「サックスでミッドナイトトリップ」(ダッセエ~タイトル)ってのが聞きたくなってさがしていた。これも風が秋めいてきたからいきなり気になったのだ。風の色で聴きたい音楽も変る。見つからない。どこにいったのだろう。保存がいい加減だとこんなツケが来る。そしてまた、名盤だともういちど買うことも可能だが、こういうのって再入手がかえって難しかったりするのである。どこにいったんだろうなあ。ミッドナイトトリップ出来ないぞ(笑)。
03/8/30
グレーテストギタリスト100


金曜朝八時のフジテレビ「とくダネ」だったか、木曜だったか、どっちでもいいんだけど、冒頭で司会のオグラトモアキがいきなり「やっぱりジミヘンでした!」と高揚した口調で話し始めた。ジミヘンと言えばジミヘンしかいない。中崎タツヤのマンガ「じみへん」もあるが。なんだろう、いきなり、と思った。
 オグラは大のポール・マッカートニファンである。ポールの日本公演は全回行っているのが自慢だ。意外だったのは熱心なギター・フリークスだったことだ。これは偶然観たテレビ東京(かつてオグラがアナとして所属していた東京12チャンネル)の深夜マニアック番組で知った。リッケンバッカーやレスポールに関するうんちくを披露していた。かなり詳しい。自分もいいものを持っているらしい。だから今回のいきなりジミヘン話にも意外感はなくついてゆけた。

 この番組は、毎朝彼の選んだテーマのフリートークで始まる。ここのところ数日は「世界陸上」だった。彼は小学校からずっと陸上をやっていたそうで、200メートルのスエツグ(普通の字じゃなかったのでカタカナ)の決勝進出には、自分が生きているあいだには日本人の平地短距離決勝進出(ファイナリスト)は観られないと思っていたので、あまりの感激に涙が出たと語っていた。それは私もそう思う。どう考えても平地短距離に日本人の出る幕はない。快挙である。
 私は陸上競技に興味がないので毎朝のそれを軽く聞き流していた。そんな日々が連続する中、唐突に出た「ジミヘン」の話題だったから戸惑ったのだった。そうして流れてきたのがジミヘンの「Little Wing」である。

 なんでもなにかの選ぶ「グレートギタリスト100」というのが発表になったらしい。オグラはベスト10をフリップにして感想を語った。1位のジミヘンは当然、5位にロバート・ジョンソンがいてうれしい、なんで10位にキース・リチャーズがいるんだ、と。まとめは「ロック雑誌の選んだものですからロックギタリストに甘いのはしかたないでしょう」だった。このあたりでそれがローリングストーン誌の選んだものと知る。そうそう、「クラプトンとジミー・ペイジ、ジェフ・ベックは三人ともヤードバーズというバンドにいたんです。いかにそれがすごいことか」と熱論しても、周囲のアシスタントの女子アナやゲストが誰も乗ってこないのが笑えた。年齢は関係ない。いま十代、二十代の若者でもロック好きなら必ず目を輝かすテーマなのだが、いかんせん「音楽はまったく興味がありません」という連中ばかりだった。
 40代か50代かのノンフィクションライターがひとり、「いいじゃないですか、キース」と、「なんでキースごときが10位に」と言ったオグラに絡んでいたのも楽しかった。



2 Duane Allman of the Allman Brothers Band
3 B.B. King
4 Eric Clapton
5 Robert Johnson
6 Chuck Berry
7 Stevie Ray Vaughan
8 Ry Cooder
9 Jimmy Page of Led Zeppelin
10 Keith Richards of the Rolling Stones
11Kirk Hammett of Metallica
12 Kurt Cobain of Nirvana
13 Jerry Garcia of the Grateful Dead
14 Jeff Beck
15 Carlos Santana
16 Johnny Ramone of the Ramones
17 Jack White of the White Stripes
18 John Frusciante of the Red Hot Chili Peppers
19 Richard Thompson
20 James Burton
21 George Harrison
22 Mike Bloomfield

24 The Edge of U2
25 Freddy King
26 Tom Morello of Rage Against the Machine and Audioslave
27 Mark Knopfler of Dire Straits
28 Stephen Stills
29 Ron Asheton of the Stooges
30 Buddy Guy
31 Dick Dale
32 John Cipollina of Quicksilver Messenger Service
33 & 34 Lee Ranaldo, Thurston Moore of Sonic Youth
35 John Fahey
36 Steve Cropper of Booker T. and the MG's
37 Bod Diddley
38 Peter Green of Fleetwood Mac
39 Brian May of Qeen
40 John Fogerty of Creedence Clearwater Revival
41 Clarence White of the Byrds
42 Robert Fripp of King Crimson
43 Eddie Hazel of Funkadelic
44 Scotty Moore
45 Frank Zappa
46 Les Paul
47 T-Bone Walker
48 Joe Perry of Aerosmith
49 John McLaugEF="/games/trivia/choosetrivia.asp?



 夜、このことを知ろうとスポーツ紙のサイトに繋ぐ。なぜ見逃したのだろうと不思議に思っていた。ぼくはほぼ毎日、サンスポとニッカンをネットで読んでいる。格闘技、競馬、社会の三分野だ。これは芸能の話題になるのだろうか。芸能も流し読みだが二日に一度ぐらいはさっと観るので見逃すはずはないのだが……。
 その理由はすぐにわかる。どこでもちいさな扱いだったのだ。たとえば「ローリングストーン誌がグレートギタリスト100を選出した。1位はジミ・ヘンドリックス、日本でも人気のエリック・クラプトンは3位、ライバルのジミー・ペイジは9位、ジェフ・ベックは14位だった」程度の短いベタ記事なのである。これじゃ見逃したはずだ。
 となるとオグラの見せた「ベスト20」のフリップは特別に作ったものだったことになる。今ではこの種のものは、たとえば「ハリウッド映画歴代興収ベスト10」なんてのは新聞が表にするから、それを画面に取り込んで、指でポンとタッチするとそこがアップになる、なんてことをよくやっている。だからぼくはこのベスト10はどこのスポーツ紙でも表にしていると思っていた。残念ながら日本のスポーツ紙はこの記事を表にするほど熱心ではなく、メインキャスタのオグラの要請により「とくダネ」のスタッフが特別にフリップにしたもののようだった。まあそれは日本人一万人が選ぶ、とかではなくアメリカの一雑誌の記事なのだから当然であろうか。
 ここに簡単にその「ベスト10」をコピーして貼り付けようと思ったら、どのスポーツ紙もベタ記事で表になっていない。それで本家のローリングストーン誌の英語サイトまで行き、見つけてきたのが上記になる。ベスト49(半端だな)になる。

 納得できるなかなかいい順番だと思うが、これどうやって選んだのだろう。評論家か? 読者投票? その辺は英語サイトをじっくり読まないとわからない。読んでません。
 オグラが「ロバート・ジョンソンが5位にはいっていて嬉しい」なんてマニアックになことを言っていた。朝の八時に「とくダネ」を観ていた視聴者に果たしてロバート・ジョンソンを知っていた人が何人いたか(笑)。

 ひとりひとり思い出やら意見を書き出したらきりがないのでひとつだけ書いておこう。キースのことである。彼はへただ。へただけどいかに簡単なことでかっこよく見せるかのテクニックは抜群だ。それは初期のストーンズのヒットナンバーを観ればわかる。いわゆるヘタウマの典型になる。ロックにおいていちばんたいつせなのはそれだろう。だからベスト20の中では技量的に図抜けてヘタ(笑)だろうけど、10位に選ばれる資格はある。これでいいのだ。
03/10/5
2ちゃんねるは奥深い

──筒美京平ベスト盤


 ひさしぶりに徹夜でダウンロードをした。先日一晩がかりでダウンロードしたOCRソフトはDualCpuの起動ディスクに入っている。ハードディスクを取り出し、そこからもってくることは可能だがそれは意味がない。そのトライアル版はWin-XPと同じように「一台にひとつ」である。DualCpuにダウンロードしたものをコピーしたとしても試用は出来ない。使えないようになっている。よって自作二号用にあらためてダウンロードする。面倒だけれど、逆に言うと、トライアル版の試用はひとり一回のみ、二週間限定なのだが、パソコンの数だけ複数使えることになる。ぼくの場合もDualCpuでの試用期間はもう残り一週間だったが、今回のドタバタと新たなダウンロードにより、自作二号であと二週間試用できることになった。とはいえこの最新式の重いソフトは自作二号では使いづらく、あまり活用することはないだろう。
 
 徹夜でダウンロードのあいま、「お気に入り」に入っているサイトを見て歩いた。これは二号であるから、三号のDualCpuよりも前のものである。作ったのは二年半ぐらい前だ。「お気に入り」はモバイルVAIOのものを引き継いでいて内容が一世代古い。現在閉鎖中のサトシのホームページが「毎日チェック」という項目に入っていたりする。「旅関係」というフォルダとはべつに「タイ」というのがあり、びっしりとアドレスが記録されている。今よりもずっと熱かったようだ。その「タイ」の最初には「NetThai」があったりする。これももう今はない。
 行きたいところもとくにないので、そういう中から「すでに閉じていると思われるところ」をクリックして、予想通り閉じられているのを確認して削除する、なんて整理作業をやっていた。

 退屈でつまらない作業なのですぐに倦きる。なにかおもしろいところはないかと2ちゃんねるに出かけた。先日「音楽──ジャズ」を覗いて、いかにも2ちゃんねるらしい足の引っ張り合いの応答で不快になったのだが、それがすべてというわけでもなく、たとえば「ロック好きの自分にジャズを勧めるとしたらなにがいいか」ノヨウナのはけっこうおもしろく読めた。
 「懐かしの邦楽」というのがあるので行ってみる。まったく期待はしていない。というのは、以前「懐かしのテレビ」のようなところに行ったら、ぜんぜん懐かしくないことをみんなで大騒ぎしていて、仲間はずれにされたようでさびしくなってしまったのだ(笑)。それはぼくが悪い。場違いだ。二十歳の青年にとって十年前の番組は、まだ毛も生えていない小学生の時のもので、とんでもなく懐かしいと騒ぐ対象なのだろう。二十年前ですらつい昨日のようなこちとらとは感覚が合わない。
 今回も「懐メロ邦楽」とはいっても、どうせまたすこしもなつかしくないことをおこちゃまたちが大騒ぎしているのだろうと思ったらあにはからん。ずいぶんとおじさんが騒いでいた。いくら若者が背伸びが好きだといってもここまでの無理は出来ないだろう。昭和40年代の歌謡曲を語るにはそれだけの齢になっていなければならない。みな熱心に語っている。ぼくはこの辺のことに関してはカルト的な知識があるのだが、そんなぼくが思わずうなってしまうようなことも書いてある。ひさびさに読み込んでしまった。
 
 作曲家・筒見京平のベストを語ろうというスレッドがあり、すぐに誰かが「筒見ではなく筒美」と指摘していた。それでぼくは以前《日々の雑記帳》で彼のことを語るとき「筒見」にしていたのではないかと思い、気に入っているフリーソフトのグレップ使って全ファイルを検索してみた。
 やはり「筒見」になっていた。「筒美」という名字は変換されない。この苗字はあるのか? 堤さん、筒見さんが一文字当て字で藝名にしたのかな? 一括置換で修正する。便利だねえ、コンピュータは。そのうち公開するつもりの実験的小説があるのだが、何百カ所も出てくる主人公の名前を替えるときなど、しみじみと思う。一瞬でやってくれるものね。

 そこで筒美京平のファンサイトがあることを知り出かける。また8枚組だかのCDヒット集があるとのこと。いやはやすごいことになっている。とはいえ買うかとなると悩むが。
 以下は、そのCDに収められた曲名と歌手。続きはまた書こう。きりがない。筒美京平はエリック・クラプトンのギターフレーズからアイドル歌手のヒット曲を作ったりする盗作の天才なので、その辺のことを語り出すと「うんちく合戦」のようになっておもしろいのだ。


【ソニー】『筒美京平 ULTIMATE COLLECTION 1967-1997』 VOL.1 & VOL.2
(発売日:97/12/12) SRCL-4071~4078
 筒美京平の30周年のヒット曲の歩みを、シングルリリースされた作品を中心に、時代毎に8枚に分けて収められた30周年を記念する代表盤。メジャーなヒット曲を中心に収録されているが、力のこもった作品を中心に厳選されている。筒美京平マニアを満足させるブックレットはどうやってサウンドが創り出されていったのかという研究もされており、非常に読み応えがある。マニアにとってまさしく宝物のボックスセットになるだろう。

Disc 1
ブルーライト・ヨコハマ / いしだあゆみ, 太陽は泣いている / いしだあゆみ,渚のうわさ / 弘田三枝子,可愛い嘘 / 弘田三枝子,バラ色の雲 / ヴィレッジ・シンガーズ,マドモアゼル・ブルース / ジャガーズ,星空の二人 / ジャガーズ,ガール・フレンド / オックス,ダンシング・セブンティーン / オックス,スワンの涙 / オックス,さよならの後で / ブルー・コメッツ,京都・神戸・銀座 / 橋幸夫,ヘッド・ライト / ロス・プリモス,あなたが選んだ僕だから / 美樹克彦,くれないホテル / 西田佐知子,粋なうわさ / ヒデ&ロザンナ,涙の中を歩いてる / いしだあゆみ,フランス人のように / 佐川満男,傷だらけの軽井沢 / ブレッド&バター,愛すべき僕たち / ブレッド&バター,悲しみのアリア / 石田ゆり,あなたならどうする / いしだあゆみ,くやしいけれど幸せよ / 奥村チヨ,雨がやんだら / 朝丘雪路,サザエさん / 宇野ゆう子

Disc 2
また逢う日まで / 尾崎紀世彦,真夏の出来事 / 平山三紀,さらば恋人 / 堺正章,お世話になりました / 井上順,さいはて慕情 / 渚ゆう子,夜が明けて / 坂本スミ子,誰も知らない / 伊東ゆかり,雨の日のブルース / 渚ゆう子,雨のエアポート / 欧陽菲菲,愛する人はひとり / 尾崎紀世彦,かもめ町みなと町 / 五木ひろし,フレンズ / 平山三紀,恋の追跡 / 欧陽菲菲,ひまわりの小径 / チェリッシュ,愛の挽歌 / つなき&みどり,恋の十字路 / 欧陽菲菲,あの場所から / 朝倉理恵,青春挽歌 / かまやつひろし,恋の風車 / チェリッシュ,今夜かしら明日かしら / テレサテン,恋のダウンタウン / 平山三紀,或る日 / ザリバ

Disc 3
17才 / 南沙織,青いリンゴ / 野口五郎,恋する季節 / 西城秀樹,男の子女の子 / 郷ひろみ,約束 / フォーリーブス,純潔 / 南沙織,芽ばえ / 麻丘めぐみ,初恋のメロディ / 小林麻美,私は忘れない / 岡崎友紀,哀愁のページ / 南沙織,小さな体験 / 郷ひろみ,女の子なんだもん / 麻丘めぐみ,オレンジの雨,野口五郎.赤い風船 / 浅田美代子,娘ごころ / 水沢アキ,私の彼はひだりきき / 麻丘めぐみ,色づく街 / 南沙織,処女航海 / 優雅,恋のインディアン人形 / リンリンランラン,しあわせの一番星 / 浅田美代子,ひとかけらの純情 / 南沙織,花とみつばち / 郷ひろみ

Disc 4
よろしく哀愁 / 郷ひろみ,甘い生活 / 野口五郎,雨だれ / 太田裕美,夏しぐれ / アルフィー,忘れ雪 / オフコース,にがい涙 / スリーディグリーズ,誘われてフラメンコ / 郷ひろみ,二重唱 / 岩崎宏美,ロマンス / 岩崎宏美,センチメンタル / 岩崎宏美,木綿のハンカチーフ / 太田裕美,やさしい都会 / 平山三紀,セクシー・バスストップ / Dr.Dragon & オリエンタル・エクスプレス,ラブ・ショック / 川崎麻世,哀愁トゥナイト / 桑名正博,しあわせ未満 / 太田裕美,恋愛遊戯 / 太田裕美,九月の雨 / 太田裕美,東京ららばい / 中原理恵,飛んでイスタンブール / 庄野真代

Disc 5
魅せられて / ジュディ・オング,シンデレラ・ハネムーン / 岩崎宏美,リップ・スティック / 桜田淳子,ディスコ・レディー / 中原理恵,モンテカルロで乾杯 / 庄野真代,青い地平線 / ル・ミストラル,たそがれマイラブ / 大橋純子,グッドラック / 野口五郎,時代遅れの恋人達 / 中村雅俊,女ともだち / 高田みづえ,日曜日はストレンジャー / 石野真子,ROBOT / 榊原郁恵,マンダリン・パレス / 平山三紀,TOKYO通信 / マナ,ラストトレイン / 宮本典子,よろしかったら / 梓みちよ,来夢来人 / 小柳ルミ子,セクシォルバイオレットNo.1 / 桑名正博

Disc 6
スニーカーブルース / 近藤真彦,E気持 / 沖田浩之,センチメンタルジャーニー / 松本伊代,ギンギラぎんにさりげなく / 近藤真彦,君に薔薇薔薇という感じ / 田原俊彦,情熱熱風・せれな~で / 近藤真彦,原宿キッス / 田原俊彦,TVの国からキラキラ / 松本伊代,ドラマチック・レイン / 稲垣潤一,19:00の街 / 野口五郎,夏色のナンシー / 早見優,まっ赤な女の子 / 小泉きょう子,エスカレーョン / 河合奈保子,夏のクラクション / 稲垣潤一,モロッコ / 森進一,ト・レ・モ・ロ / 柏原よし恵,ヤマトナデシコ七変化 / 小泉きょう子,ビリーブ / 松本伊代,摩天楼ブルース / 東京JAP,卒業 / 斉藤由貴

Disc 7
Romanticがとまらない / CCB,あなたをもっと知りたくて / 薬師丸ひろ子,殺意のバカンス / 本田美奈子,Lucky Chanceをもう一度 / CCB,夏ざかりホの字組 / Toshi & Naoko,情熱 / 斉藤由貴,空想kiss / CCB,なんてったってアイドル / 小泉きょう子,仮面舞踏会 / 少年隊,1986年のマリリン / 本田美奈子,ツイてるね、ノッてるね / 中山美穂,Waku Wakuさせて / 中山美穂,夜明けのMew / 小泉きょう子,Temptation / 本田美奈子,さよならの果実たち / 荻野目洋子,JOY / 石井明美,野性の風 / 今井美樹,君だけに / 少年隊

Disc 8
人魚 / NOKKO,カナディアン・アコーディオン / 井上陽水,タイムマシーン / 藤井フミヤ,17才 / 森高千里,泣いてみりゃいいじゃん / 近藤真彦,ABC / 少年隊,抱きしめてTONIGHT / 田原俊彦,肩幅の未来 / 長山洋子,色は匂へど / ちあきなおみ,夏のニ週間 / 谷村新司,ときめいて / 西田ひかる,泣いてないってば / 裕木奈江,TENCAを取ろう / 内田有紀,泣かないぞェ / 鈴木蘭々,TOKYO FANTASIA / 山下久美子,Must Be Heaven / 中西圭三,強い気持ち、強い愛 / 小沢健二,恋のルール・新しいルール / ピチカート・ファイヴ


 作家の高橋源一郎が筒美京平の大ファンらしく、カラオケでも彼の作品ばかりを歌うらしい。どこかでこのCDの存在を知り、即行で買ったと書いていた。(04/5/7)

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