2010
2/24  R1ぐらんぷり優勝2010 あべこうじ優勝



 ピン芸人日本一戦「R-1ぐらんぷり2010」の決勝戦が23日、東京・台場のフジテレビで行われ、06年準Vで昨年5位のあべこうじ(34)が初の栄冠に輝き、賞金500万円を獲得した。

 1回目の得点上位3人によって争われるファイナルステージには、07、08年の覇者・なだぎ武=1回目661点=、昨年5位のあべこうじ(34)=同658点=、昨年準優勝のエハラマサヒロ(27)=同655点=が進出し、あべが見事に優勝を飾った。

 今回のR-1は大会史上最多の3539人が出場。バカリズム(34)、いとうあさこ(39)、G(グラップラー)たかし(31)、麒麟の川島明(31)、我人祥太(26)、ザ・プラン9のなだぎ武、エハラマサヒロ、あべこうじの8名に、21日の敗者復活戦で勝ち上がったCOWCOW山田與志(35)を加えた9名によって争われた。

「R-1」決勝戦は23日午後7時からフジテレビ系で完全生中継され、司会はお笑いコンビ、雨上がり決死隊とタレント、優香(29)で、審査員は高田純次(63)、板尾創路(46)、伊東四朗(72)ら7人が務めた。(sanspoより)


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 去年の優勝は断然バカリズムだった。あれは決勝のシステムがおかしい。その点ことしは改良された。
 ということから本命にしていたバカリズムがいきなりのおおスベリ。いわば3連単の1着固定にしていた馬が大出遅れのようなもの。まずこれで的中はない。あとはなんとか3着までに届いて(ぎりぎりの決勝進出)押さえの3連複でせめて元取りを、と願うが、あのネタでは無理。早々と消える。ということで序盤から楽しみのない番組となった。



 Cowcowの山田はよくネタを練ってきて、流れも良く、もう素材を作るだけでたいへんだったろうなと感心するぐらいの出来だった。藝人はこんなことで感心されてもしょうがないし、敗者復活で見たネタだった。自信のこれで確実に決勝戦進出を狙ったのだろう。

 チイタケオもアトウカイもおもしろかったけど、爆発的な笑いには繋がらない。これっておおきいことだ。たとえば、「もう中学生」が、色を塗り忘れた段ボール素材だったり、それが本番中にひっくり返ったりする失敗を繰り返し、そもそもネタ自体がちっともおもしろくないのに、「でもなんだかみょうにおかしい」というのは大事なことだろう。私は「もー中」に興味はないけれど、そのことはいつも感じる。

 山田は「もうアニメーションのように」とスピードアップ=笑いのアップを図っていたが、むしろ以前の「ゴルゴネタ」のまったり感の方が笑いに繋がっていたのは皮肉。テンポを早めて画を一杯見せれば笑いも増える、のではないのがお笑いの奥深さ。



 グラップラーたかしはプロレス挌闘技好きにはおもしろかった。なにをやっても登場人物がボビー・オロゴンと猪木というくどさも楽しかった。でもあのネタではファンが限られる。挌闘技好きではない清水ミチコが「くどい」と批判したのは当然。まったく笑えない人もいたことだろう。ミニ劇場向けの藝人。「自分がおもしろいと思っているものは誰にもおもしろい」という勘違いがある。あれしかできないのだからそんなことを言ってもしょうがない。ああいう偏った藝人(笑)が決勝戦まで来たことはわたし的には大歓迎だけれど。

 麒麟川島はTake5をBGMにシャレたネタ。決勝戦に行かせたかったが、フリップ藝が全盛の今、あれではすこしネタが細いのか。本藝の漫才がゆきどまっていたので新味。

 我人祥太の暗いネタは個人的には大好きでおもしろかったけど、あれもまた裏の世界。あんなのが優勝して朝のワイドショーに「R1ぐらんぷり優勝の我人さんでーす」と拍手で迎えられるシーンは想像しがたい(笑)。「グランプリ」なんてのとは縁のない路線。よくぞ決勝戦まで来たものだ。これ誉めコトバ。

 いとうあさこのワンパターン自虐ネタは評するほどのものではない。決勝戦まで来たのは今まで頑張ってきた御褒美だろう。これを思い出に、寿引退をして欲しい。
 彼女が雙葉出身なのにはおどろいた。芸能人の「ほんとは御嬢様(お坊ちゃま)」的話はふくらませたウソが多いが彼女の場合は本物だ。雙葉出身であんなことをやっているのは創立以来だろう。



 もう見あきてる三人が決勝に出て、「R1の笑い飯」が涙の優勝。「むかしの天皇賞は勝ち抜け制だったが」と、これはM1のときに笑い飯優勝を予想して書いた。あちらはハズレたが、こちらはもろにそんな感じの結果となった。
 涙のあべこうじが「これでやっと卒業できる」と言ったらしい。こちらも「やっと卒業してくれた」の感。常連あべこうじはR1のポテンシャルを保つのに貢献していたが、同時にマンネリの因ともなっていた。ステイゴールドみたいなもの。無事優勝で卒業はめでたい。来年も来そうだけど。あべちゃん、うざいから(笑)。

 なだぎのネタは見飽きていてつまらなかった。「レッドカーペット」や「エンタの神様」で見たことのあるネタでR1決勝戦というのはいかがなものか。それがどんなに磨きあげられたネタだったとしても、わたしとしてはつまらなかった。

 M1のときのサンドウィッチマンがまさにそれで、メジャーな番組は唯一「エンタ」しか出ていない全国的にはまだ無名だったからうまくハマったが、ネタはもう何度も見飽きたものだった。もっとも彼らはそれをポリシーとしていて、使いまくったネタを封印していく藝人もいる中、これからも好きなネタは何百回でも何千回でもやる、やればやるほどおもしろいものにしたい、と宣言している。それはそれでいいことだ。言いたいのは、見事にワンチャンスをものにした、ということ。

 なだぎはもう出なくていいだろうし、出るならツータイムスチャンピオンなのだから、他では披露しないR1専用のネタを用意して欲しい。それぐらいはすべきだろう。それがチャンピオンのプライドだ。




 日曜の夕方に「サバイバルステージ」=敗者復活戦が生中継された。おもしろかった。結果は図の通り。



 たいした中身ではなかったが、本番への期待という意味でおもしろかった。何事もこういう盛りあがりの課程がいちばん楽しいようだ。期待が大きかった分、期待外れの本番だった。

 ここで落ちた昨年優勝の中山はおもしろくない。このひどい点数からも内容がうかがえる。「優勝したのにちっとも売れへん」と嘆いているそうだが、優勝そのものが「サイレンススズカが故障して優勝した天皇賞馬」みたいなものなのだから当然だ。



 「旬」というのは大切だ。あらためて思う。もしも昨年が今年のシステムだったなら、バカリズムは、一回戦を「贈るほどでもないことば」で突破し、決勝戦を「地理バカ先生」でぶっちぎりの楽勝だったろう。いまごろ大ブレイクしていた。これからまたこれらに匹敵する新ネタを磨きあげて優勝するのはたいへんだ。タイミングは重要である。
12/26  最後のM1──笑い飯が優勝




 10年目の今年で最後とか。
 そのことから前祝いの特番もいくつか組まれていた。深夜にやっていた「おもしろかったネタベスト50」も、当日夕方大井競馬場からの敗者復活戦も見た。大井でやるあれは出演者がみな寒そうで、声も風に飛んでしまい、漫才が屋内芸能であることを思い知る。あの環境では「あったまる」ことが不可能だ。毎年のことだが今年はずいぶんと寒そうに思えた。有馬記念を負けてこちらも寒かった。

 一応10年ぜんぶ見ているしDVDにも焼いてある。有馬記念の日と重なることも多く、酔って帰宅したあと録画で見たり、外国に行っていて帰国してから録画で見た回もあった。「ベスト50」は、あれこれ思い出して楽しかった。





 中川家、ますだおかだの優勝は順当だった。ここまではお馴染みの実力派の当然の戴冠。
 このますだおかだの回に笑い飯は初出場している。結成されたばかり。初めて見たときのダブルボケは新鮮だった。

 フットボールアワーは関西では有名だったらしいがM1まで知らなかった。
 アンタッチャブルは関東だからよく知っていた。このとき南海キャンディーズが初出場で強烈な印象を残している。ここから大女のシズちゃんは役者としても花開いた。ここをきっかけとして世に出たコンビ(というか彼女ひとりだが)ではこれが一番か。

 ブラックマヨネーズも知らなかった。私の歴代のネタ一番は彼らになる。「挌闘技を習おうと思うんやけど」のあのネタは今でも笑える。
 この回でもう目立っていたからチュートリアルの翌年優勝は順当だったろう。「自転車のチリンチリンを盗まれて……ヤケになり……、行きずりの女を抱いたこともあったよ」になる獨自の流れはおもしろかった。「ベスト50」でも1位になっていた。シュールな獨自の世界だが、私は吉田がぐじぐじと悩むブラマヨの笑いの方を上に取る。
 チュートリアルは新人賞で常に2位、いつも1位なのがフットボールアワーだったとか。このへん関西のお笑いファンはよく知っているのだろう。関東ではこの番組がなければ二組は無名だった。みんな売れっ子になったなあ。

 敗者復活戦から優勝して話題になったサンドウィッチマンは「エンタの神様」でお馴染みだった。彼らのはコントだから、漫才としてはどうなのだろう。文句なしにおもしろかったけれど。

 今年、大好きな我が家が準決勝まで残っていたらしい。大井からの中継でも映っていた。でも彼らのもコントであり漫才ではあるまい。
 ふさわしくないと言えば、ハリセンボンの決勝進出なんていう不可解なこともあった。そのときにリアルタイムで書いているが、春菜の反応の良さは芸人として特筆ものだが、どう考えてもあのおもしろくない漫才が何千組の中から8組に残るものだとは思えない。銓衡の偏りだ。

 ノンスタイルはおもしろくなかった。低調な回だった。売れっ子になれなかったのも納得。
 オードリーが敗者復活から2位になりブレークしている。南海キャンディーズと並んで成功した例。二組とも、そのとき準優勝だったが翌年出れば優勝というタイプの笑いでもない。準優勝の何年後かに南海キャンディーズが出て来たがまったくおもしろくなかった。かといってネタの仕上がりがというような話でもない。新鮮度、衝撃度の話だ。見馴れたらつまらない漫才だった。

 去年のパンクブーブーはおもしろかった。以前から芸人仲間がみな高く評価していた実力派だ。よくできた流れるようなネタだった。
 去年残念だったのは、それももう書いているけれど、好きなハライチがつかみで小犬が死んだことを話し、そこから初めて失敗したことだ。あれが若者のいきがりなのだろう。



 というわけで今年。
 去年売れ始めで新鮮だったハライチももう食傷気味。会場も沸かない。
 ピースは最高のネタを決勝に回したのか、半端なネタだった。
 ナイツはあんなもの。
 銀シャリはレッドカーペットでのネタとかおもしろかったのに今回のはちょっと。
 カナリアは決勝に来られたのが不思議。

 スリムクラブの、間を置いた笑いはたいしたもの。すこしでもネタを詰めこみたい4分間に、あの間を入れたのは初めてだろう。いつもの彼らのネタではあるが大舞台で新鮮だ。

 笑い飯は昨年の「鳥人」の続き物。
 敗者復活戦から参戦したパンクブーブーの最初のネタは最高だった。



 当然のごとく三組が残ったのだが、決勝では三組とも最初のネタと同じパターンだった。
 さすがに連続だと飽きるのか、あれほど沸いたネタなのに熱気はだいぶしぼんでいた。
 スリムクラブはまだ新鮮だったことと、「なんとかしてくださいよ」「民主党ですか?」が受けて沸いたが(去年の準決勝では「自民党ですか?」だった)、パンクブーブーなど、まったく同じ事をしているのに反応がすくない。

 決勝三組のネタが最初のネタと同じ路線というのは、去年の笑い飯の失敗から来ているのだろう。安全策だ。
 そうなるとピースなどは別路線のネタを用意していたはずで、見たかったという気になる。逆にもうハライチは何度やってもあれだったろうから、もういいや、になる。

 会場の熱を冷ましてしまったパンクブーブーは論外として、新鮮なスリムクラブと「今年こそ」の笑い飯の決勝と思われた。
 4対3で笑い飯。これは今回が最後のM1も影響していたろう。来年以降も続くなら、今年もまた新顔スリムクラブの優勝で、彼らは一気に売れっ子となり、笑い飯はまたも涙を呑む、というパターンだった。押しだされるような優勝であまり誉められたものではない。去年好評だった「鳥人」のパターンで楽々と決勝に進出し、そこでまたあらたなネタを見せてくれたなら、他の二組が同じパターンだっただけに、完成度の高さを見せつけられたのに。
 それよりも、「結成10年以内のコンビ。今年で笑い飯は卒業」という去年の話はどうなったのだろう。今年のM1で一番おどろいたのは決勝メンバー発表に笑い飯の名があったことだった。たぶんあれやこれやあって「まだ10年以内」という解釈がなされたのだろうが、もっと公的に発表してもらいたかった。昨年見ていてそう思い込んでいたから、そこがスッキリしなかった。



 M1は今年が最後とか。
 多くのスターを送り出した意義あるイベントだった。シンスケが企劃し松本を取りこんだのがうまかった。そういや立川談志が銓衡をしていたこともあった。
 F1からK1が生まれ、それを真似てM1が生まれ、さらに多くの派生を呼んだ。
 SoftBankが大金をばらまいて話題になろうとしてならないイベントとは対象的だ。もっとも始まった当時は1千万も話題になる大金だったが。

 発案者のシンスケの元には続けてくれとの歎願が殺到しているとか。たしかに「暮れの名物」として、若手漫才師が狙う登龍門として、まだまだあってもいいようにも思う。今回見ていて、マンネリであるとは感じた。でもマンネリと思われてからが本物の始まりである。

 最近の若手の笑いは漫才というよりコントが多い。それらはまだ「キンクオブコント」とかあるからいいだろうが、今回の出場者で言うならナイツや銀シャリのような純粋な漫才タイプは目ざす頂点がなくなって淋しいだろう。
 すこし休んでまた始まるのか。
 この10年、楽しませてもらった。ありがとう。


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