心から感謝を込めて
(愛用フリーソフトへの御礼)



番外篇・「オンラインソフトの決定版」



 私がを知ったのは「オンラインソフトの決定版」というサイトだった。CtrlキーとCapsLockを逆にするAltIME以外はそれほど便利ソフトを必要としていなかった私は、やがてネット上には私の想像を超えたそういうものがあふれていると知る。検索していて偶然このサイトを知った。これは「窓の杜」や「Vector」等で紹介されているフリーソフトを、ひとつひとつ制作者が自分で使用してみて感想やお勧め度を書くという、ネットに不慣れな私のようなものには案内サイトとして便利この上ないものだった。しかもその数は厖大なものである。サイトを作るのはたいへんだったろう。私の利用しているフリーソフトは、ここで教えてもらったものが多い。

 このサイトは、タブ型ブラウザーNetCapterを強烈に推薦していた。作者は「このソフトを世に広めるためにサイトを作ったようなもの」とまで言っていた。今でこそタブ型ブラウザーは主流だが、初めて知ったこの外国製タブ型ブラウザーの便利さは、インターネットエクスプローラーしか知らない身にはまさに驚愕だった。いわばMs-Dos時代のひとつしかアプリを起動できない環境からWindowsのマルチタスク環境を知ったようなものである。さらには日本語パッチを作ってくれた人がいて、その解凍法、導入法も親切に教えてくれていた。NetCaptor時代がどれぐらい続いたのだろう、わすれられないブラウザーである。そしてこれを教えてくれたこのホームページも。

 昨年の『作業日誌』に次のようなことを書いた。



02年7月28日
「オンラインソフトの決定版」というすばらしいサイトがある。その名の通り、オンラインソフトの優れものをジャンル別に紹介している。「窓の杜」や「Vecter」などよりも説明が親切でわかりやすい。なによりご本人が試した上での意見であるから信頼できる。さらには99%がフリーソフトであることもありがたい。インターネットを始めた頃からお世話になってきた。

http://www.onlinesoft.jp/

 最初にここからダウンロードして感謝したのはNetCapterだった。今でこそタブブラウザも一般的になったが、当時はこれぐらいしかなく、ここで紹介されていた日本語パッチを当てて日本版にして使った。IEやネスケしか知らなかった身には、タブブラウザーの便利さは衝撃的だった。サイト制作者も、「NetCapterの便利さを知らせるためにこのサイトを立ち上げた」と言うほど力を入れていた。懐かしく思い出す。

 その後フリーソフトのタブブラウザーが連続して登場し、今じゃIEをそのまま使っている人も初心者以外いなくなった。あのNetCapterですら重くてつまらなく使う気がなくなってしまったぐらいだから、昨今のその種の充実ぶりはすばらしい。

 いま私はDonutPを愛用している。これが軽くて最高だ。Donut本体にはいくつか不満があったのだが、それをまた別の人が改良したPになり満足している。Rもあるそうで、これの使用者も多いらしいが、私はこれでいい。

 その後、便利ソフトにもそれなりに精通し、私の中では飽和状態になったので、しばらく覗いていなかった。きょうひさしぶりに、なんか作者のお薦めソフトはあるかなと覗いて驚いた。今年の二月から更新されていないのである。

 掲示板を三月まで遡り、その原因を探ってみると、どうやらアラシにやられて、すっかりやる気がなくなってしまったようなのだ。その関連には2ちゃんねるがあった。怖い世界である。フリーソフトを集めて、みんなに紹介しようとするサイトまで荒らされ潰される世界なのだ。なんとも嫌な気分になった。
 これからの規制で2ちゃんねるがどうなってゆくのか知らないけれど、あれは「匿名性の悪意の発露」として歴史的にも特筆される存在となるだろう。自分の正体を知られることなく匿名で他人の悪口が書けるなら、人間はいくらでも安易にそれをやるのだと、「性悪説」を証明したようなものである。そこのところが怖ろしく、また悲しい。後藤さんと私の場合も、書き込んでいる人が誰かわかるのである。そちらはわからないと思ってやっているだろうが。怖いのは2チャンネルではなく人の心だ。

 ただそれは、以前も書いたけど、関わらなければ防げるものでもある。私は2ちゃんねるを、覗かない、読まない、書き込まない(あたりまえだ)の原則で絶対に近寄らないようにしてから、現在極めて快適なネット環境にいる。もしもそこから気違いが絡んできたとしても、掲示板のようなものを閉鎖してしまえばそれで終りだ。
「オンラインソフト」の場合は、他人の作ったソフトに辛辣な評価をしていたことが原因になったようだ。といっても彼が取り上げるのは気に入ったものばかりだから悪口批判はなかったと思うのだが。
 怖いね、ネット世界は。普段なら知り合わずにすむ連中といきなり正面衝突してしまうのだから。

 しかしこういうのを見ていると、世の中にはほんとにくだらない奴がいると思い知る。「私はここのサイトを利用していたものではないのですが、今回の問題を見ると」などと、書き込んでくるのがいる。利用していなかったなら口を出してくるなよと言いたくなる。つまり、もめ事が起きたからはしゃいで首を突っ込んでくるだけの野次馬だ。



 今年になって訪問すると、更新されることなくしばらく存在していたそれは、跡形もなく消えていた。毎日のように更新され、多くのアクセスを誇っていたサイトが半年以上停止していたのだから、それはすでに完全な死に体だったのだろう。一度叩き消された炎がそこからまた燃え上がることはまずない。それでもその充実ぶりは、更新されることなく存在しているだけでも抜群のものだったが……。
 インターネットにおけるサイトの消滅には獨特の感慨がつきまとう。ずいぶんとお世話になったところだったから、かつてないほど格別のものがあった。いや、冷静に考えてみると、私は他者のホームページの熱心な訪問者ではないから、大好きなサイトが突如消えてしまって寂しいという思いはしたことがない。ここが初めてのところだったか。

 同じようなサイトを訪ねて見たが、心惹かれるものはなかった。出来不出来も、サイト構成に対する私の好き嫌いもあろう。作者のお人柄もあろう。あるいはそれは、ネット初心者だった私にとって必要なものが、中級者になって卒業したから、と言えるかもしれない。

 悔やむのは、お世話になっている頃にお礼のメイルを書かなかったことだ。今はもうメイルアドレスすらわからなくなってしまった。感謝のことばは思ったとき、すぐに伝えたほうがいい。今更ながら思う。
 このホームページがまた復活することはないだろう。彼にとってのインターネットは終ったのだ。失礼な言いかたをするなら、彼はクリエイターではなくガイドだった。インターネット旅行者がガイドを必要としなくなったら次第に活躍の場所は狭くなる。直接「Vector」や「窓の杜」に行くようになったら、こういう「他者のソフト評価サイト」の存在意義はうすれてゆくのだろう。いや、違うか。ソフトウェアがあふれる時代だからこそ、益々ガイドの存在意義は重要になったのか!?

 ここを運営していたかたと私が、実人生はもちろんネット上でも、もういちど出会うことはないだろう。お礼のメイルを書いておけばよかったと悔やまれる。感謝の心をのこしておきたかった。ありがとうございました。とても勉強になり、お世話になったことを感謝しています。
(03/5/10)



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